結論
オルガノは、半導体工場の超純水装置を軸にした水処理エンジニアリングの会社だ。親会社は東ソー(議決権 44%)。2026 年 3 月期は営業利益率が 21% と過去最高で、AI 向けの先端半導体投資が追い風になった。
筆者の結論は、今の値段は割高というものだ。理由は 1 つに絞れる。稼ぎの大半が大型プラントの競争入札で、史上最高の利益率が 10 年続くとは見ないからだ。中立では利益率は 17〜18% に戻る。
強みははっきりある。超純水は栗田工業との実質的な二強で、台湾に強く、米国にも進出している。2027 年 3 月期は受注が 2,300 億円と過去最大の見込みだ。それでも筆者は、この山を売上に変えた後に新しい山が来るかを見ている。会社の 2031 年 3 月期の目標(売上 2,600 億円以上)に近い道を中立に置いても、10 年後の時価総額は、中立でも今の 8 割台半ばだ。
財務は健全だ。自己資本比率は 6 割を超え、ほぼ無借金。弱いのは利益の質で、薬品や保守の比率が栗田工業より低い。
見るべき点は、山のあとだ。売上の山は 2028 年 3 月期にあり、その先は新しい受注次第になる。 確率をかけた価値は今の 6 割弱で、総合は割高になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、オルガノは事業の質が高く、今の値段が高すぎる会社だ。
オーナー利益(株主が自由に使える利益)は、今の純利益 284 億円にほぼ近い。設備はあまり要らず、運転資本も大きくない。ここは評価できる。ROE が 20% あっても、その高さは新しい投資を増やせる余地ではなく、利益率が高い状態の結果だ。
気になるのは、利益率の水準の持続性だ。10 年前は 3〜5% で、2026 年 3 月期に 21% になった。大型案件の入札で、この利益率が続くとは筆者は見ない。中立でも 17〜18% に戻る前提を置く。
経営の資本の使い方は堅実だ。借金は膨らまず、配当は増えている。ただ東ソーが 4 割超を持ち、少数株主として資本の配分に口を出しにくい。
安全域は薄い。今の PER は 20 倍で、会社計画の利益が出たとしても、先で薄れる超過利益を考えると、10 年後の価値は今の時価総額に届かない。筆者は、事業は買いたいが、この値段では買わない会社と見る。
事業の質と値段の安さは別の話だ。質の高い会社でも、高く買えば長く報われない。オルガノはその典型的な例になりうると筆者は考える。
何で稼ぐ会社か
オルガノの稼ぎは 2 本ある。水処理エンジニアリングが売上の 85%、機能商品が 15% だ。
水処理エンジニアリングは、半導体・電力・化学などの工場に超純水や排水処理のプラントを設計し、納める事業だ。2026 年 3 月期の売上は約 1,520 億円、営業利益は約 343 億円(利益率 22.6%)。収益の中心は半導体・電子部品の工場向けで、台湾・米国・日本の先端工場が主な顧客になる。納めたあとの運転・保守・部品交換も受ける。ただし売上の大半は 1 件ごとの工事で、受注の波がそのまま業績の波になる。
機能商品は、水処理薬品、標準型の機器、食品向けの機能性素材、分離精製の製品などだ。売上は約 257 億円、利益率は 12.9%。水処理エンジニアリングが好調な年は薄く見えるが、景気で動きにくい安定した土台になる。
足元の受注は勢いがある。2027 年 3 月期の受注は 2,300 億円(前期比 37% 増)、売上は 2,000 億円、営業利益は 400 億円の計画だ。米国・台湾・日本で大型案件を取る前提になっている。一方、同期の第 1 四半期は売上が 10% 増えても営業利益は 5% 減っており、大型案件の立ち上がりで利益率が揺れる様子がすでに出ている。
機械メーカーというより、工場の水まわりを請け負う技術サービス業と考えるとわかりやすい。顧客が先端工場を建て続ける限り、設計と施工の仕事が続く。逆に、工場が建たない年は、プラントの売上がまとまって欠ける。
優良さと弱いところ
オルガノの堀は、超純水の技術と、顧客の工場に入り込む関係にある。半導体の微細化が進むほど、水の純度への要求は厳しくなる。失敗の許されない工場では、実績ある業者が選ばれやすい。栗田工業とは国内で二強の関係にあり、台湾でも存在感がある。
資本効率は高い。ROE は 20% 前後、営業利益率は 21%。10 年前は 3〜5% だった利益率が、5 倍近くに上がった。ここが評価の分かれ目になる。筆者は、これを構造的な変化というより、半導体投資の山と大型案件の好採算が重なった結果と見ている。
弱点は 3 つある。1 つ目は、売上の大半が競争入札のプラントで、薬品・保守で守られる栗田工業より利益の質が低いこと。2 つ目は、米国などへ広げる中で、遠隔地の大型案件の採算管理が難しくなること。3 つ目は、東ソーが 4 割超を握るため、資本の配分が親会社の意向に左右されうることだ。
財務は強い。自己資本比率は 63%、純有利子負債はほぼゼロ。営業利益は支払利息の 100 倍を超え、赤字の期は過去にない。
筆者は、経営の見立てには慎重な姿勢を感じる。目標を何度も引き上げながら、利益率の目標は 18〜20% と、足元の 21% より低く置いている。会社自身も、今の利益率が続くとは考えていないように読める。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
半導体向けの水処理は、需要が強い領域だ。AI 向けのデータセンター投資で、先端ロジックやメモリの新工場が台湾・米国・日本で建つ。超純水の世界市場は 2025 年で約 85 億ドル、2030 年に 130 億ドルを超えるという推計がある。
競合は国内に栗田工業と野村マイクロ・サイエンス。海外にも欧米の水処理大手と、台頭する中国・韓国勢がいる。栗田工業は薬品・保守を厚く持ち、オルガノはプラントの設計・施工に強い。野村マイクロ・サイエンスは海外比率が高く、インドなどで大型案件を取る。
国内の水関連市場は足元で年 4〜6% の拡大が見込まれるが、10 年の中立では年 3〜5% に落ち着くとみる。電子産業の水処理は、この中でも上振れ側に近い。
循環のどこにいるかは大事だ。受注 2,300 億円は史上最大で、まさに山の途中にいる。この山のあとに来る谷で、半導体メーカーが投資を止めると、プラント案件は最初に落ちる。リーマン級では、電子産業向けのプラント売上が 3 割近く減りうる。一方、既設工場の保守と薬品は落ちにくい。
10 年の構造的な負け筋は、入札の価格競争と、海外勢の技術的な追い上げだ。
水の問題は半導体だけではない。排水規制の強化や水資源の不足は、化学・電力・食品の工場にも広がる。これらは景気の波が小さい需要で、機能商品と保守の下支えになる。
資本政策と M&A
還元の方針は「配当性向 30% 以上」で、2026 年 3 月期の配当性向は約 32% だ。2027 年 3 月期の予想は増配で、配当性向は約 34% になる。2026 年 10 月 1 日に 1 株を 5 株に分ける。自社株買いの大きな実績は確認できなかった。
東ソーが議決権の約 44% を持つ。東ソーの子会社でありながら上場を続ける構造で、TOB(公開買い付け)で完全子会社化される可能性は、市場の見方として無視できない。ただし、利益が 2 倍以上に増えた今の水準で東ソーが買い増す動機は薄いと筆者は見る。
会社は ORGANO 2030 で、2031 年 3 月期に売上 2,600 億円以上、営業利益率 18〜20%、ROE 20% 以上を掲げる。当初の目標は売上 2,000 億円、利益率 15%、ROE 12% だったが、2 回引き上げた。目標は達成のたびに上がっており、経営の自信と現実の好調が重なっている。M&A も選択肢に入っているが、規模や相手は開示から確認できなかった。
株式分割は株を買いやすくするためのもので、企業価値は変わらない。大事なのは、増えた利益をどう株主に返し、どう再投資するかだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI 向けの先端半導体投資は一過性ではなく、2030 年代まで続く世界の設備投資だ。工場が増えるたびに、超純水と排水の設備が要る。オルガノは栗田工業と並ぶ二強で、台湾の大型案件に強く、米国でも受注を取り始めた。2027 年 3 月期の受注 2,300 億円は、その勢いの表れだ。
利益率の上がり方も構造的だ。10 年前の 3〜5% が 21% になったのは、受注の質の向上と原価の低減が積み上がった結果で、会社は 18〜20% を目標に掲げ、ROE は 20% 以上を狙う。目標は過去 2 回引き上げられ、実績が上回ってきた。
加えて、財務はほぼ無借金で、自己資本比率は 6 割を超える。東ソーが 4 割超を持つ安定した株主構成のもと、配当性向は 3 割から着実に上がっていく。半導体投資の山を取り切れば、利益は 2 倍近くになる余地があり、今の PER 20 倍は成長を考えればむしろ妥当だ。
最後に、東ソーという化学の大手が議決権の 4 割超を持ち、経営の後ろ盾になっている点も、安定感につながる。
慎重な見方
利益率 21% は、大型案件の好採算と半導体投資の山が重なった一時の高さだ。10 年前の 3〜5% が本来の水準に近い。受注の大半は競争入札で、栗田工業や野村マイクロ・サイエンス、台頭する中国・韓国勢が値を競り合う。山が過ぎれば入札の値は下がり、利益率は戻る。
足元の 1 四半期は、売上が 10% 増えても営業利益は 5% 減った。大型案件の立ち上がりで、すでに利益率の頭打ちが見える。受注 2,300 億円の山は、2 年かけて売上になるだけで、そのあとに新しい山が来る保証はない。
米国など遠隔地の大型案件は、追加費用や契約の見直しで損失が出やすい。栗田工業が米国で減損を出した例もある。
今の PER 20 倍、PBR 4 倍は、利益率 21% が続くことを前提にした値段だ。利益率が 17% に戻るだけで、利益は 2 割落ちる。倍率の縮みが重なれば、株価は業績が崩れる前に半分近くへ下がりうる。
加えて、強気の筋書きは、利益率が今の水準で続く前提に立つ。一般に、受注産業の変調は、まず利益率に現れる。
どちらに重みを置いたか
事業の質については強気の見方に分がある。超純水の二強という地位と、無借金の財務は本物だ。ただ値段の評価では、慎重な見方が強い。利益率が史上最高で、受注も史上最大という、山の頂上付近で値が付いているからだ。確率は中立に最も重みを置きつつ、やや悲観にも同じ程度の重みを置いた。悲観は、半導体投資の停滞と構造的な入札競争の悪化を考え、5% を大きく上回る確率を置いた。 結論は、事業は強いが値段は高い、というものだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,576 円5,923 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 879 円2,021 億円)。 今の値に割り戻すと 1,826 円4,199 億円、今との差 −20.9%、 期待の年率 +4.1%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,248 円1.21 兆円 | 1,088 円2,502 億円 | +174.4% | +10.6% | 507 円1,165 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,164 円9,574 億円 | 1,024 円2,355 億円 | +124.7% | +8.4% | 1,038 円2,386 億円 |
| 中立 | 31% | 3,174 円7,297 億円 | 936 円2,152 億円 | +78.0% | +5.9% | 1,274 円2,929 億円 |
| やや悲観 | 27% | 1,121 円2,577 億円 | 814 円1,872 億円 | −16.2% | −1.8% | 523 円1,201 億円 |
| 悲観 | 14% | 264 円608 億円 | 549 円1,263 億円 | −64.8% | −9.9% | 114 円262 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,576 円5,923 億円 | 879 円2,021 億円 | +49.6% | +4.1% | 3,455 円7,944 億円 |
今の株価時価総額 2,309 円5,309 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 電子産業の水処理で世界の上位に定着し、利益率 20% を保つ 利益 649 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 5,248 円1.21 兆円
2036 年 3 月期までに、AI・先端ロジック・メモリの工場が台湾・米国・日本・東南アジアで相次いで稼働する。オルガノは超純水の設計から保守まで一括で受け、世界の電子産業向け水処理で上位に定着する。受注は積み上がり、売上は 4,500 億円規模、利益率は 19% 台を保つ。機能商品も食品・分離精製で新しい分野を開く。東ソーの後ろ盾のもと、資本を無理に膨らませず、配当と自社株買いで ROE を高く保つ。会社が描く最良の 10 年だ。 国内の電子産業向けも、先端工場の更新需要が途切れない。栗田工業との二強の構図は変わらず、価格を競る場面でも、技術と実績で値を保てる。会社が掲げた ROE 20% 以上の目標にも近い水準を、10 年を通じて保つ。
- 水処理エンジニアリング:数量 24,500(世界の産業用水処理エンジニアリング市場(超純水・排水・電力向け、億円、今の値段で測った実質))× 価格 16.8%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 4,104 億円・営業利益 821 億円。今の値段で測った市場 2.45 兆円×シェア 12.5%、営業利益率 20.0%
- 機能商品:数量 5,700(国内外の水処理薬品・標準機器・食品素材などの市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 405 億円・営業利益 57 億円。市場 0.57 兆円×シェア 5.3%、営業利益率 14.0%
倍率:事業の純利益 649 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.7% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍。全体の PER 18.59 倍、時価総額 12,065 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10 年で複数の半導体投資の波を取り切り、入札でも値を保つ必要がある。実現すれば強いが連続成功の確度は高くない。
やや楽観 20% 電子産業の成長が続き、シェアを少し広げる 利益 531 億円 · PER 18.0 倍 · 株価時価総額 4,164 円9,574 億円
電子産業向けの水処理が成長の中心として定着する。台湾と米国での工場増設に加え、既設工場の更新・保守が積み上がり、シェアは 11〜12% 台へ少し上がる。売上は 4,000 億円近くまで伸び、利益率は 18% 台で安定する。大型案件の採算管理も進み、過去のような谷は浅くなる。機能商品は食品と分離精製が育つ。配当性向は 3 割台後半へ上がり、自社株買いも使われる。 栗田工業との二強の構図は変わらず、価格の競り合いも一定の範囲に収まる。機能商品でも、食品や分離精製の新分野が売上の底上げになる。会社の 2031 年 3 月期の目標をほぼ達成し、その後も高い水準を保つ、うまくいった 10 年になる。
- 水処理エンジニアリング:数量 22,800(世界の産業用水処理エンジニアリング市場(超純水・排水・電力向け、億円、今の値段で測った実質))× 価格 15.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 3,575 億円・営業利益 679 億円。今の値段で測った市場 2.28 兆円×シェア 11.7%、営業利益率 19.0%
- 機能商品:数量 5,500(国内外の水処理薬品・標準機器・食品素材などの市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.8%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 376 億円・営業利益 49 億円。市場 0.55 兆円×シェア 5.1%、営業利益率 13.0%
倍率:事業の純利益 531 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.9% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.0 倍。全体の PER 18.03 倍、時価総額 9,574 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電子産業向けの水処理が成長の主役として定着する、業種ノートの 10 年楽観寄りの想定。
中立 31% 中立:成長は鈍るが、普通に強い水処理エンジニアリング会社でいる 利益 424 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 3,174 円7,297 億円
電子産業の水処理は世界で伸び続けるが、伸びは実質で年 3% ほどに鈍る。オルガノのシェアは 11% 前後で、売上は 3,400 億円近くになる。うち 3 分の 2 は物価の分だ。利益率は 2026 年 3 月期の 21% から 17% 台へ戻る。大型案件は入札で競るため、好況の利益率が続くとは見ない。機能商品は物価分の値上げで伸びるが、利益率は 12〜13% どまりだ。東ソーが 4 割超を持ち続け、配当性向は 6 割弱まで高まって、ROE は 14% 台に落ち着く。 栗田工業との二強の構図は続くが、大型案件の入札で価格を競る状況は変わらない。山と谷を繰り返しながら、平均では物価を少し上回って伸びる。事業は強いままだが、利益率が史上最高の水準にとどまる理由は見えない。
- 水処理エンジニアリング:数量 20,500(世界の産業用水処理エンジニアリング市場(超純水・排水・電力向け、億円、今の値段で測った実質))× 価格 14.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 3,022 億円・営業利益 544 億円。今の値段で測った市場 2.05 兆円×シェア 11.0%、営業利益率 18.0%
- 機能商品:数量 5,300(国内外の水処理薬品・標準機器・食品素材などの市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 355 億円・営業利益 44 億円。市場 0.53 兆円×シェア 5.0%、営業利益率 12.5%
倍率:事業の純利益 424 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.21 倍、時価総額 7,297 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの 10 年中立(年 3〜5%)の中心。電子産業はやや高く、一般産業・機能商品は物価並みの数量に置いた。
やや悲観 27% 海外勢との競り合いで利益率が 14% 台へ戻る 利益 276 億円 · PER 9.3 倍 · 株価時価総額 1,121 円2,577 億円
中国・韓国勢や野村マイクロ・サイエンスとの競り合いが強まり、大型案件の入札で値が下がる。世界の電子産業向け水処理は伸びるが、オルガノのシェアは 10% に低下する。売上は 2,700 億円台で伸び悩み、利益率は 14% 台へ戻る。米国の大型案件で追加費用が出る年も混じる。保守と薬品の収益は残るので、ROE は 11% 前後で資本コストをわずかに上回る程度になる。配当は守られるが、成長は物価分にとどまる。 国内の人口減少で一般産業向けの需要も伸びず、機能商品の数量はほぼ横ばいになる。保守と薬品は残り、財務は堅いが、利益の伸びは物価分にとどまる。事業の質は保たれるものの、高い倍率を支える成長は見えにくくなる。
- 水処理エンジニアリング:数量 18,500(世界の産業用水処理エンジニアリング市場(超純水・排水・電力向け、億円、今の値段で測った実質))× 価格 13.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 2,429 億円・営業利益 352 億円。今の値段で測った市場 1.85 兆円×シェア 10.0%、営業利益率 14.5%
- 機能商品:数量 5,200(国内外の水処理薬品・標準機器・食品素材などの市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.4%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 334 億円・営業利益 37 億円。市場 0.52 兆円×シェア 4.8%、営業利益率 11.0%
倍率:ROE 11.3%。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 7.75% + 残る割合 1/2 ×(11.3 − 8.50)= 9.9%、長期の成長率 g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)= 13.3 倍。半導体投資が停滞し、入札競争が厳しくなって利益率が下がる筋書き。ROE は k を上回るが、先で薄れる稼ぎを多めに見て、上限の 7.0 割の 9.3 倍に置いた。
確率:利益率が 21% の山のまま続く例は他の資本財にもほとんどない。入札競争の激化で利益率が戻る筋書きに、中立と同じくらいの重みを置いた。
悲観 14% 価格競争と海外案件の失敗で、並の水処理会社に戻る 利益 95 億円 · PER 6.4 倍 · 株価時価総額 264 円608 億円
入札で値が崩れる状況が定着し、米国など新規に広げた市場の案件で大きな損失が出る。電子産業でシェアを失い、売上は 1,900 億円台で物価分しか伸びず、利益率は 7% へ沈む。保守・薬品の継続収益と無借金の財務は残るが、もう高収益の優良会社とは評価されない。ROE は 5% 前後で、配当を保つために利益の 7 割を出す。世界の水処理大手と同じ並みの会社に戻る 10 年だ。 国内の工場の海外移転が進み、国内の優位も薄れる。東ソーは親会社として支え続けるが、成長の見込みは小さい。会社の目標だった ROE 20% からは遠く、安定した配当を出すだけの、地味な水処理会社として評価される。
- 水処理エンジニアリング:数量 16,000(世界の産業用水処理エンジニアリング市場(超純水・排水・電力向け、億円、今の値段で測った実質))× 価格 10.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 1,595 億円・営業利益 112 億円。今の値段で測った市場 1.60 兆円×シェア 8.0%、営業利益率 7.0%
- 機能商品:数量 5,000(国内外の水処理薬品・標準機器・食品素材などの市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 302 億円・営業利益 24 億円。市場 0.50 兆円×シェア 4.5%、営業利益率 8.0%
倍率:ROE 4.8% が k 7.75% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値。PER は 1÷k = 11.8 倍が上限で、目減りは ROE÷k = 0.57 に比例するので、上限 × 0.60 × 0.9 で 6.4 倍になる。6.4 倍に置いた。やや悲観の 9.3 倍より低い。構造的に入札競争に負け、利益率が戻らない筋書き。
確率:海外勢の攻勢と、米国など新しく広げた市場での大型案件の失敗が重なる構造的な負け。大型プラントはこの種の損失が起きやすく、確率を厚めにした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
水処理エンジニアリング
半導体・電力・化学などの工場向けに、超純水・排水処理のプラントを設計・施工し、運転・保守まで受ける。電子産業向けが中心。
| 数量世界の産業用水処理エンジニアリング市場(超純水・排水・電力向け、億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。3 年 1.09・10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15,200 | 10.0% | 1,520 | 343 |
| 10 年後 中立 | 20,500 | 14.7% | 3,022 | 544 |
取り方:世界の超純水市場は 2025 年で約 85 億ドル(約 1.3 兆円)との推計があり、電力・一般産業の水処理プラントを加えて市場を 1.52 兆円と置いた(推定)。2026 年 3 月期の売上約 1,520 億円から、シェアは約 10%。数量は今の値段で測った市場(実質)で、物価の分は価格(シェア × 物価の倍率)に入れた。
機能商品
水処理薬品、標準型の機器、食品向けの機能性素材、分離精製の製品。景気に左右されにくい土台。
| 数量国内外の水処理薬品・標準機器・食品素材などの市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。3 年 1.09・10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,140 | 5.0% | 257 | 33 |
| 10 年後 中立 | 5,300 | 6.7% | 355 | 44 |
取り方:2026 年 3 月期の売上約 257 億円、利益率 12.9%(開示)から営業利益を約 33 億円とした。市場は分散していて開示が無く、シェアを約 5% と置いて 5,140 億円と推定した。数量は実質の市場、物価の分は価格に入れた。
リスクと懸念
受注の山のあとの谷
2027 年 3 月期の受注 2,300 億円は史上最大の見込み。半導体メーカーが投資を止めれば、プラント案件は最初に落ちる。大型案件は工期が長く、受注が減ってから売上が減るまでの時間差もあり、見通しが急に変わりやすい。 受注が減り始めてから売上に響くまでに時間差があり、気づいたときには遅い。
利益率が史上最高から戻る
営業利益率は 10 年前の 3〜5% から 21% まで上がった。大型案件の入札では栗田工業などと競り、値を下げれば利益率はすぐ動く。1 四半期でも減益が出ており、頂上付近にいる可能性は低くない。 利益率が 4 ポイント戻るだけで営業利益は 2 割近く減る。
米国など新しい市場の大型案件
米国への本格進出は成長の柱だが、現地の費用や契約の見直しで、損失が出やすい。1 件の大型案件の採算悪化が、1 年の利益を大きく削ることはありうる。 米国は人件費・資材・工期の管理が日本と違い、現地の費用が膨らむ余地もある。
海外勢の台頭
超純水は今のところ日本勢の技術が強いが、中国・韓国の水処理企業や欧米の大手が、中位の性能帯から侵食する余地がある。国内顧客の海外移転で、国内の優位が薄れる面もある。 国内では優位でも、海外の入札では価格だけで決まる案件もあり、利益率に響く。
東ソーの存在
東ソーが議決権の約 44% を持つ。少数株主から見ると、資本の配分(自社株買い・配当の水準)は親会社の意向に左右される。一方で、TOB で完全子会社化される可能性もゼロではない。 親会社の事情が、少数株主の取り分に影響する構造だ。
倍率の縮み
今の PER 20 倍、PBR 4 倍は、利益率 21% の継続を前提にした値段だ。利益率が戻るだけで利益が減り、倍率の縮みも重なれば、業績が崩れる前に株価が大きく下がる場面がありうる。 反対に、利益が増えても倍率が下がれば、株価は上がらない。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の受注が 2,300 億円を超え、売上が 2,000 億円を超えて利益率が 20% を保ったら
- やや楽観・楽観の確率を上げてよい。ただし倍率が高い分、価値の伸び以上に株価が先行していないかは別に確かめる。
- 第 2 四半期以降も売上が増えて営業利益が減る状況が続いたら
- 大型案件の採算悪化が構造的とみて、やや悲観の確率を上げる。
- 台湾・米国の半導体メーカーが先端工場の投資計画を大きく見直したら
- やや悲観・悲観の側へ重みを移す。プラント案件の受注高を毎期確認する。
- 米国の大型案件で追加費用や損失が出たら
- 新市場の採算管理への疑いを強め、10 年の悲観の確率を上げる。
- 東ソーが保有比率を引き上げる、または TOB を発表したら
- 少数株主への価格が評価の基準になる。株価は本質価値より上がる可能性があり、別に確認する。
- 配当性向が 40% を超え、自社株買いが始まったら
- 資本の使い方が改善するとみて、ROE を高く保つ筋書きの確率をやや上げる。
見ておくもの
- 受注高と受注残(電子産業の大型案件の件数と採算)
- 水処理エンジニアリングの営業利益率の四半期ごとの推移
- 台湾・米国の半導体メーカーの設備投資計画
- 東ソーの保有比率の変化と、自社株買いの有無
- 栗田工業・野村マイクロ・サイエンスの電子産業向けの受注動向
倍率と資本コストの決め方
水処理エンジニアリングと機能商品を、実質の市場規模×シェアと物価並みの価格で積み、利益ベースの正当化 PER = (1 − g ÷ RONIC) ÷ (k − g)(k 7.75%=基本 7.5% に quality +1.0%、g 4%、超過の利益は半分残る)を引いた。中立は上限の 8 割(理由は、収益の大半が入札の大型プラントで、利益率が史上最高から戻る途中だから)。楽観は 9 割、やや楽観は 8.5 割。やや悲観は上限の 7 割、悲観の PER は ROE÷k に比例して目減りさせた値(上限 × ROE÷k × 0.9。自己資本の 0.2 倍相当を下限)で、6.4 倍(やや悲観の 9.3 倍より低い)。最後に今の時価総額と比べた。今の PER 20 倍は参考にしていない。会社計画(2027 年 3 月期 利益 300 億円、2028 年 3 月期の売上 2,400 億円)は中立の初めの数年に入れ、その後の利益率は戻るとみた。リースは主に事務所や拠点で、金額は大きくない。新リース会計の変更で営業利益が少し増え、純有利子負債が増える形になるが、数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。自己資本は 2026 年 3 月期から純利益の合計を足し、還元の合計を引いて流した。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +1.0% = 8.5%。大型案件の採算や米国展開の実行リスクは k に足さず、悲観側の確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 7.75%。