結論
宮入バルブ製作所は、LPガスのボンベに付ける弁を山梨の甲府工場で作る老舗だ。筆者の結論ははっきり割高である。自己資本は約40億円あるのに、純利益は年1億円に届かない。その事業に、帳簿を上回る値段が付いている。
弁の市場は国内5社でほぼ全部を分け合う。数字だけ見れば寡占だが、旨味は乏しい。2024年に公正取引委員会が5社の値上げ合意をカルテルと認定し、同社も処分を受けた。値決めの力は、これからむしろ弱まる。
しかも需要は細る。家庭のLPガスは人口減とオール電化で減り、ボンベの弁の交換も減る。同社は工場の建て替えを3〜5年で進める計画で、借金と償却が利益をさらに削る。
明るい材料は、LNGや水素向けの低温弁だ。取引先の昌栄機工と合弁会社を作った。ただ、10年で全社を変えるほどの規模になるとは筆者は見ていない。
安全域も見当たらない。純現金はなく、事業がつまずいた時に下値を支える資産は上場株の数億円ほどだ。10年の中立で、筆者は純利益を年1億円弱と見る。その稼ぎに見合う値段は、今の時価総額の数分の1にとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、宮入バルブ製作所は持ち続けたい事業ではない。
事業は消えない。ボンベがある限り弁は要り、5社の寡占も続く。ただ、稼ぐ力が資本に見合わない。自己資本40億円に対し、オーナー利益、つまり設備の更新を引いて自由に使える利益は、ほとんど残らない。工場の建て替えが始まれば、数年はむしろ現金が出ていく。
価格を決める力も弱い。利益が上がったのは値上げの合意があった時だけで、合意が消えると元に戻った。経営が10年で利益率を6%へ上げる道筋も、まだ見えない。
安全域も薄い。今の時価総額は自己資本を上回る。純現金はなく、借金がある。事業がつまずいた時に下値を支える資産は、上場株3億円ほどしかない。
筆者は、10年の中立で純利益が1億円弱にとどまると見る。その利益に見合う値段は、今の時価総額の数分の1だ。
何で稼ぐ会社か
宮入バルブ製作所は1949年に東京・大森で創業した。今の本社は東京・中央区、製造は山梨県南アルプス市の甲府工場に集める。従業員は150人ほどの小さな会社だ。
売上は2026年3月期で70億円。単一の事業だが、中身は3つに分かれる。黄銅弁が43億円、鉄鋼弁が15億円、加工で出る真ちゅうの削りくずの売却が12億円だ。
黄銅弁の中心は、家庭や店で使うLPガスのボンベに付ける弁である。ボンベは法律で定期的に検査され、そのたびに弁の点検や交換が出る。新しいボンベが増えなくても、毎年一定の需要が生まれる仕組みだ。
鉄鋼弁は、工場向けの大型容器やタンク、LNGなど低い温度のガスに使う弁が中心となる。2025年9月には取引先の昌栄機工と合弁会社を作り、LNG・水素・窒素向けの低温弁を第2の柱に育てるとした。
売り先は偏っている。サンエツ金属、矢崎エナジーシステム、昌栄機工の3社で売上の3割近い。サンエツ金属は真ちゅう材の取引先でもある。
売上の16%を占める削りくずの売却は、加工の副産物を売る取引で、ほとんど儲けを生まない。実質の稼ぎ手は弁の2つだけである。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。LPガス容器用の弁は2022年で約74億円の市場で、5社が分け合う。認可と実績が要るので新顔は来ないが、既存の5社どうしの争いは避けられない。
その争いを避けていたのが値上げの合意だった。公取委は2021年と2022年の合意をカルテルと認定した。同社の営業利益率は2023年3月期に4%台へ上がったが、今は1%台に戻っている。合意の効き目が消えると利益も消える。この事実が、値決めの力の正体を物語る。
資本効率は低い。ROE(自己資本に対する純利益の割合)は過去10年の中央値で1.3%だ。会社が2014年に掲げた営業利益率6〜8%の目標には、一度も届いていない。
財務も強くない。純負債は約20億円で、営業利益は支払利息の3倍に満たない。金利が上がれば、薄い利益がさらに削られる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
LPガスは長い下り坂にある。家庭・業務用の需要は2006年度の山から約2割減り、人口減とオール電化、都市ガスへの切り替えで今後も細る。使う世帯は地方の高齢化した地域に偏る。
ボンベの数が減れば、検査ごとの弁の交換も減る。ボンベの大型化や、大きなタンクで供給するバルクへの移行も、弁の個数を減らす方向に働く。
競争の形も変わった。公取委の命令で、5社は価格を話し合えなくなった。市場が74億円と小さく、値下げで需要が増えるわけでもない。それでも、受注を取り合えば単価は物価ほど上がらない。最大手のハマイが6割前後を握るとみられ、規模で劣る同社は価格を追う側に回りやすい。
原料の黄銅は相場で動く。2021〜22年の高騰が値上げ合意の引き金になった。削りくずの売上も相場につれて上下するが、利益はほとんど生まない。
伸びる芽は低温弁だ。LNG燃料の船や水素の設備が増えれば需要は出る。ただ大手のバルブメーカーも狙う分野で、同社の規模で大きく取れるかは見えない。
筆者は、10年で弁の個数が15%ほど減ると見る。値段が物価に届かなければ、利益はさらに薄くなる。
資本政策と M&A
資本政策は、細い利益の中から配当を出し続ける形だ。2026年3月期の配当の総額は約1億円。純利益0.6億円を上回り、配当性向は100%を超える。自社株買いは目立たない。
中期経営計画は作っていない。これから3〜5年で工場の建屋と設備を抜本的に入れ替えると有報に書いた。投資は借入で賄うことになり、純負債は増えやすい。
株主は分散している。昌栄機工が5%弱、取引先持株会が3%強で、親会社はいない。取引先との持ち合いの色が濃く、敵対的な買収は起きにくい。
上場株を3.7億円ほど持つが、配当は利益に入っているので別には数えない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
寡占は崩れていない。LPガス容器用の弁は5社でほぼ全部を占め、ボンベの検査のたびに交換需要が出る。新しく参入する会社はいない。人口が減っても、地方のLPガスは簡単には消えない。
値上げは一度通った。カルテルの認定で話し合いは禁じられたが、黄銅と人件費が上がる中で、各社とも赤字で売る理由はない。会社の計画でも、営業利益率は2028年3月期に2.7%まで戻る。
第2の柱が見えてきた。昌栄機工との合弁で、LNG・水素・窒素向けの低温弁に入る。LNG燃料の船や水素の設備は、10年で数倍になりうる。鉄鋼弁が倍になれば、全社の利益は大きく変わる。
工場の建て替えも前向きに見られる。古い設備を入れ替えれば、生産性が上がり原価が下がる。2014年に掲げた営業利益率6〜8%の目標に、10年かけて近づく道はある。時価総額48億円は、その可能性に付いた値段だ。
株主に親会社はおらず、取引先が少しずつ持つ。業界の再編が起きれば、受け皿として名前が挙がる可能性もある。
慎重な見方
この会社は資本を食う。自己資本40億円で純利益は年1億円に満たず、ROEは過去10年の中央値で1.3%だ。資本コストの7分の1にも届かない。
利益が出たのは値上げの合意があった時だけだ。2023年3月期の営業利益率4%台は、カルテルと認定された時期と重なる。合意が消え、今は1%台に戻った。これからは5社が価格を話し合えず、規模で劣る同社は受注のために値を削る側に回る。
需要も減る。家庭のLPガスは2006年度から約2割減り、ボンベの大型化とバルクへの移行で弁の個数はさらに減る。
工場の建て替えは負担だ。投資は借入で賄われ、純負債20億円はさらに増える。金利は上がり、償却も増える。営業利益は支払利息の3倍に満たず、余裕はない。
低温弁は大手のバルブメーカーも狙う分野だ。社員150人の会社が、そこで大きく勝つ根拠は乏しい。帳簿を上回る値段を正当化する材料はない。
再編に期待する声もあるが、買い手にとって魅力は小さい。工場は古く、利益は薄い。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。寡占と検査の需要は本物だが、それが利益にならないことを過去10年の数字が示している。値上げの合意が消えた後の利益率、工場の建て替えによる借金と償却の増加は、どちらも具体的な重しだ。
確率は中立を中心に、悲観側を楽観側より厚くした。低温弁が育つ楽観も残すが、それでも利益は資本コストに届かない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 22 円10 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 14 円7 億円)。 今の値に割り戻すと 18 円9 億円、今との差 −82.5%、 期待の年率 −9.9%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 74 円36 億円 | 21 円10 億円 | −5.8% | −0.6% | 7 円3 億円 |
| やや楽観 | 18% | 38 円18 億円 | 21 円10 億円 | −41.6% | −5.2% | 11 円5 億円 |
| 中立 | 38% | 17 円8 億円 | 17 円8 億円 | −66.9% | −10.5% | 13 円6 億円 |
| やや悲観 | 25% | 10 円5 億円 | 8 円4 億円 | −81.9% | −15.7% | 5 円2 億円 |
| 悲観 | 12% | 6 円3 億円 | 4 円2 億円 | −90.1% | −20.7% | 1 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 22 円10 億円 | 14 円7 億円 | −64.6% | −9.9% | 36 円17 億円 |
今の株価時価総額 101 円49 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 7% 低温弁が育ち、新工場で利益率6%に届く 利益 3 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 74 円36 億円
昌栄機工との合弁が、LNG燃料の船や水素の設備向けに低温弁を売り込む。鉄鋼弁の個数は10年で8割増える。
新しい工場が動き、原価が下がる。LPガスの弁は個数が1割減るが、各社が赤字で売らず、単価は物価並みに上がる。
全社の営業利益率は5%台に乗る。2014年に掲げた目標の下限に近づく姿だ。借金は増えるが、利益で利払いを十分に賄える。
それでもROEは7%に届かず、資本コストを下回る。配当は利益に合わせて増え、10年で10億円になる。
新しい工場は自動化を進め、少ない人手で回る。人件費が物価で上がっても、利益率は保たれる。取引先との合弁が、販路の面でも効いてくる。
- 黄銅弁(LPガス容器用など):数量 369(出荷個数(万個))× 価格 1,411(1個あたりの平均納入価格(円))→ 売上 52 億円・営業利益 3 億円。営業利益率 6.0%
- 鉄鋼弁・低温弁ほか:数量 94.5(出荷個数(万個))× 価格 4,020(1個あたりの平均納入価格(円))→ 売上 38 億円・営業利益 3 億円。営業利益率 8.0%
- 真ちゅう削りくずの売却:数量 1,485(売却量(トン))× 価格 938(1トンあたりの売却価格(千円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.5%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 36 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:低温弁の合弁が軌道に乗り、新工場の効率化と値上げの定着が重なる必要がある。2014年からの目標に一度も届いていないので確度は低い。
やや楽観 18% 値上げが一部残り、低温弁が少しずつ伸びる 利益 2 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 38 円18 億円
LPガスの弁は個数が1割減るが、単価は物価に近い1.32倍まで上がる。黄銅と人件費の上昇を、5社とも価格に転嫁し続ける。
低温弁は合弁を通じて伸び、鉄鋼弁の個数は4割増える。新工場で原価が下がり、全社の営業利益率は4%弱に上がる。
工場の建て替えは借入で賄い、償却と利払いが増える。それでも純利益は年2億円近くに増える。配当は今の水準を保ち、10年で10億円を払う。
ROEは4%台で、資本コストにはまだ遠い。
筆者が見る楽観寄りの姿でも、資本の効率は低いままだ。それでも今より利益は倍近くになり、配当を無理なく払える体質に戻る。
- 黄銅弁(LPガス容器用など):数量 369(出荷個数(万個))× 価格 1,390(1個あたりの平均納入価格(円))→ 売上 51 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 4.0%
- 鉄鋼弁・低温弁ほか:数量 73.5(出荷個数(万個))× 価格 4,020(1個あたりの平均納入価格(円))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 6.0%
- 真ちゅう削りくずの売却:数量 1,485(売却量(トン))× 価格 938(1トンあたりの売却価格(千円))→ 売上 14 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.5%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.1% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 18 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の計画は2028年3月期に営業利益率2.7%で、そこから低温弁の上乗せがある姿。寡占の中で値上げが一部残る根拠はある。
中立 38% 寡占は残るが、利益は資本に見合わないまま 利益 1 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 17 円8 億円
LPガスの弁は、ボンベの数が減って個数が15%減る。単価は物価に届かず1.30倍にとどまる。5社が価格を話し合えず、規模で劣る同社は値を追う側に回る。
低温弁は合弁で少しずつ伸び、鉄鋼弁の個数は15%増える。
工場の建て替えで原価は少し下がるが、新しい設備の償却が年0.7億円ほど増える。今ある設備の償却は取得時の値段のままなので、増えるのは更新の分だけだ。投資は借入で賄い、利払いも増える。
純利益は年0.8億円ほど。配当は利益に合わせて細り、10年で8億円となる。
寡占は残り、事業は10年後も続く。ただ、資本に見合う利益は出ず、帳簿の価値は利益で裏づけられない。工場が新しくなっても、縮む需要の中で稼ぐ力は大きく変わらない。
- 黄銅弁(LPガス容器用など):数量 349(出荷個数(万個))× 価格 1,365(1個あたりの平均納入価格(円))→ 売上 48 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 3.0%
- 鉄鋼弁・低温弁ほか:数量 60.4(出荷個数(万個))× 価格 4,020(1個あたりの平均納入価格(円))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 4.0%
- 真ちゅう削りくずの売却:数量 1,400(売却量(トン))× 価格 938(1トンあたりの売却価格(千円))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.5%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 1.9% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 8 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要の縮小と値決めの弱さ、工場更新の負担が重なり、利益率は過去の中央値を少し上回る程度にとどまる。最も自然な落としどころ。
やや悲観 25% 価格競争で弁の利益がほぼ消える 利益 0 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 10 円5 億円
5社が受注を取り合い、LPガスの弁の単価は1.22倍にとどまる。物価に届かない分だけ利益が削られ、個数も25%減る。
低温弁は大手に押され、鉄鋼弁は横ばいにとどまる。工場の建て替えの償却と利払いが重なり、全社はほぼ利益が出ない。
赤字の年も出るが、取引先との関係が厚く、事業はすぐには止まらない。配当は減らし、10年で4億円にとどまる。
純負債は増え、自己資本は少しずつ減る。
低温弁で巻き返そうにも、新工場の投資で手元の余裕は乏しい。取引先との関係で受注は残るが、値段の主導権は買い手に移る。
寡占は形の上では残るが、5社が同じ縮む市場で消耗する。どこかが撤退するまで、値段は戻らない。
- 黄銅弁(LPガス容器用など):数量 308(出荷個数(万個))× 価格 1,281(1個あたりの平均納入価格(円))→ 売上 39 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 1.0%
- 鉄鋼弁・低温弁ほか:数量 52.5(出荷個数(万個))× 価格 3,900(1個あたりの平均納入価格(円))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 2.5%
- 真ちゅう削りくずの売却:数量 1,240(売却量(トン))× 価格 900(1トンあたりの売却価格(千円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
倍率:赤字で稼ぐ力は無く、PBRで置く。今の自己資本39.8億円に0.12を掛けた。純現金は無く、売れる資産は上場株と甲府の工場くらいで、中立のPBR(約0.17)より低くした。EVで見ても、純負債20億円を足した値は営業利益0.2億円の100倍を超え、借金が価値の大半を食う。
確率:カルテル認定で価格の話し合いが禁じられ、規模で劣る同社が値を削る筋は現実的。合意前の利益率が1%前後だった実績もある。
悲観 12% 弁の需要減と借金で、工場の更新が重荷になる 利益 −2 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 6 円3 億円
LPガスの家庭需要が想定より速く縮み、弁の個数は4割減る。単価は物価に届かず、黄銅の値上がりも転嫁できない。
新しい工場は需要に対して大きすぎ、償却と利払いが利益を食う。赤字が続き、建物や設備の減損で自己資本は30億円まで減る。
低温弁は立ち上がらず、取引先への依存が強まる。最後は同業や取引先への事業の譲渡が現実味を帯びるが、値段は資産の一部にとどまる。配当は10年で2億円しか出ない。
利払いを賄うために、配当を止める年も出る。借入の条件は厳しくなり、金利の上乗せも大きくなる。株主に残るのは、借金を返した後のわずかな資産だけだ。
- 黄銅弁(LPガス容器用など):数量 246(出荷個数(万個))× 価格 1,180(1個あたりの平均納入価格(円))→ 売上 29 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率 -2.0%
- 鉄鋼弁・低温弁ほか:数量 47.3(出荷個数(万個))× 価格 3,600(1個あたりの平均納入価格(円))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
- 真ちゅう削りくずの売却:数量 990(売却量(トン))× 価格 850(1トンあたりの売却価格(千円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
倍率:赤字で稼ぐ力は無い。床は売れる資産で、今の自己資本39.8億円に0.07を掛けた約2.8億円。上場株の税後と工場用地の一部にあたる。
確率:LPガスの需要が速く縮み、価格競争と金利上昇が重なる構造的な負け。事業は残るので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
黄銅弁(LPガス容器用など)
家庭・業務用のLPガスボンベに付ける真ちゅうの弁。国内5社の寡占で、ボンベの検査のたびに交換需要が出る。
| 数量出荷個数(万個) | 価格1個あたりの平均納入価格(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 410 | 1,053 | 43 | 1 |
| 10 年後 中立 | 349 | 1,365 | 48 | 1 |
取り方:有報の製品別売上(黄銅弁43.2億円)を、同業ハマイの容器弁の単価水準(千円前後)から1個あたり千円強として個数に直した推定。営業利益は単一セグメントのため、全社1.1億円を売上の比で配分した推定。
鉄鋼弁・低温弁ほか
工場向けの大型容器・タンク、LNGなど低温ガス向けの鉄鋼の弁。昌栄機工との合弁で低温弁を育てる。
| 数量出荷個数(万個) | 価格1個あたりの平均納入価格(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 52.5 | 3,000 | 16 | 0 |
| 10 年後 中立 | 60.4 | 4,020 | 24 | 1 |
取り方:有報の鉄鋼弁14.7億円とその他1.1億円を合わせ、1個あたり3千円前後として個数に直した推定。営業利益は配分した推定。
真ちゅう削りくずの売却
弁の加工で出る黄銅の削りくずを売る取引。相場で売上が動き、利益はほぼ出ない。
| 数量売却量(トン) | 価格1トンあたりの売却価格(千円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,650 | 700 | 12 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,400 | 938 | 13 | 0 |
取り方:有報の屑売上高11.5億円を、黄銅くずの相場1トン約70万円で量に直した推定。利益は加工の副産物の売却で実質ゼロと置いた。
リスクと懸念
価格競争の始まり
公取委の命令で、5社は価格を話し合えなくなった。規模で劣る同社は受注を守るため値を削る側に回りやすい。営業利益率は合意前の1%前後に戻りうる。AIエージェントによる代替は関係しない。
LPガス需要の縮小
家庭用のLPガスは2006年度から約2割減った。人口減、オール電化、ボンベの大型化とバルクへの移行で、弁の交換需要は細る。中立で10年に15%減ると置いた。
工場の建て替えと借金
3〜5年で工場の建屋と設備を抜本的に入れ替える。借入で賄えば純負債は20億円から増え、金利の上昇と新しい償却が利益を削る。営業利益は支払利息の3倍に満たない。
取引先への依存
サンエツ金属、矢崎エナジーシステム、昌栄機工の3社で売上の3割近い。1社でも取引を減らせば影響は大きい。昌栄機工は大株主で合弁の相手でもあり、関係は深い。
黄銅の相場
原料の真ちゅうは相場で動く。値上がりを価格に移せない局面では、薄い利益がすぐ消える。削りくずの売上も相場につれて上下する。
低温弁の立ち上がりの遅れ
LNG・水素向けの低温弁は大手のバルブメーカーも狙う。合弁が受注を取れなければ、第2の柱は育たず、LPガスの縮小を補えない。
今後の分かれ目
- 低温弁の合弁が大口の受注を開示し、鉄鋼弁の売上が2割以上伸びたら
- 鉄鋼弁の個数を引き上げ、やや楽観・楽観の確率を厚くする。
- 黄銅弁の値上げが通り、営業利益率が2期続けて4%を超えたら
- 合意なしでも値決めが効くとみて、中立の利益率を上げる。
- 工場の更新投資の額が開示され、借入で賄う額が20億円を超えたら
- 利払いと償却の増加を大きく見て、やや悲観の確率を上げる。
- 同業との統合や、取引先による買収の話が出たら
- 事業の再編で利益率が上がる道が開く。買収の値段次第で楽観の筋を見直す。
- 営業利益率が1%を割り、赤字の期が続いたら
- 価格競争が始まったとみて、悲観の確率を厚くする。
見ておくもの
- 黄銅弁の売上と全社の営業利益率
- 工場の更新投資の額と借入の増減
- 低温弁の合弁の受注
- LPガス容器の出荷・検査の数
- 黄銅の相場と値上げの転嫁
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、製品ごとの個数×単価で10年後の利益を積んだ。個数は中立でLPガスの弁を0.85倍、単価は物価の1.34倍より低い1.30倍に置いた。倍率はROEが資本コストを大きく下回るため、1÷k(約10.8倍)の約83%に置いた。純現金は無く、余った現金は足していない。今の時価総額と比べたのは最後で、市場は帳簿を上回る値段を付けているが、それに寄せていない。リースの影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→10.53 倍・やや楽観 PER 9.5→10.53 倍・中立 PER 9→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。