結論
マースグループホールディングスは、パチンコホールの店内設備で稼ぐ会社だ。玉やメダルを貸し出すカードのユニット、景品の管理、紙幣の搬送をひとまとめに売り、保守料でも稼ぐ。ほかに RFID や X 線検査の自動認識事業と、博多と御殿場のホテルを持つ。
筆者の結論は、事業は強いが客のホールが細り続けるので、現金を足して見ても本質価値は今の時価総額とほぼ同じ、というものだ。
2026 年 3 月期は新紙幣対応の特需が終わった。売上は 323 億円と 24% 減り、営業利益は 88 億円と 29% 減った。それでも営業利益率は 27% と高い。この利益率は更新需要の山の高さで、ならせば 2 割台半ばが妥当と筆者は見る。
この会社の肝は現金だ。時価総額 547 億円に対し、現金が 389 億円、投資有価証券が 208 億円ある。ただ、積み上がるばかりで株主に戻る額が読みにくい。戻り方を半分とみて 10 年後の価値を今に戻すと、今の値段をわずかに下回る。割安でも割高でもない。
分かれ目は 2 つ。ホールの減る速さと、現金が株主に戻る量だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い事業の割に値段が安い」のではなく、「事業と現金を分けて考えるべき会社」だ。
事業は、ホールの設備更新と保守で稼ぐ。切り替えの重さが堀になり、設備投資も軽いので、オーナーの手元に残る利益は多い。ただ客のホールが減る。10 年後に今の利益を保つのは難しく、稼ぐ力はならして 2 割台半ばの利益率とみる。
現金は別の問題だ。現金と有価証券で 600 億円近くあり、時価総額に匹敵する。割安に見える最大の理由はここだが、筆者は満額では数えない。長く積み上がり、10 年で純現金が 1.7 倍になったからだ。還元は改善したが、戻る量が増えるかは、これから確かめる段階にある。
安全域は、現金に厚く、事業に薄い。悲観の筋書きでも、現金の大半は残る。一方、楽観の筋書きでも今の値段の数倍にはならない。上値は限られ、下値は固い。買う側なら、現金の戻りが確かになってから動いても遅くない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心はアミューズメント関連事業で、2026 年 3 月期の売上の 7 割強、セグメント利益の 9 割を占める。顧客はパチンコ・パチスロのホールだ。玉やメダルを貸し出すプリペイドカードのユニット、景品の管理システム、紙幣の搬送システムを、店ごとにまとめて納める。スマートパチンコ・スマートスロットに対応したユニットは 2022 年 11 月に売り出した。AI でホールの経営を支える「マースユニコン」も、このセグメントの柱だ。
収入は 2 階建てになっている。1 階は機器の売り切りで、設備の入れ替えが重なる年に跳ねる。2 階は保守料やカードの利用に応じた情報管理料で、導入した店が減らない限り積み上がる。1 階の山が高すぎたのが、この 3 年の業績だ。売上は 2024 年 3 月期の 366 億円から翌期に 422 億円へ伸び、2026 年 3 月期に 323 億円へ戻った。
スマートソリューション関連事業は売上 60 億円、利益 7 億円。RFID やバーコード、リチウムイオン電池向けの X 線検査装置、クラウド型の健診システムなどを製造・物流・医療に売る。2024 年 7 月に独立したセグメントで、ホールの景気とは別の需要を取りにいく役だ。
ホテル・レストラン関連事業は売上 28 億円、利益は 1 億円に届かない。マースガーデンホテル博多、マースガーデンウッド御殿場、銀座の鉄板焼店などを運営する。訪日客の追い風で増収増益だが、全体の利益への寄与はまだ小さい。
優良さと弱いところ
堀は「切り替えの重さ」にある。ホールは原則 1 つの店で 1 社のカードシステムに統一するため、メーカーを変えるには店中の機器を入れ替える必要がある。マースは契約店舗のシェアで 2 割台半ば、業界 3 位。2022 年の契約店舗数では 1 位がゲームカードジョイコ、2 位がグローリー子会社のナスカで、ホールの管理コンピュータに強いダイコク電機が追う。順位は動きにくいが、上位との差も埋まらない。
弱い点は 2 つある。1 つ目は客の減少だ。マースの導入店舗は 2024 年 3 月期末の 1,445 店から 2025 年 9 月末の 1,393 店へ減った。2 つ目は値決めの弱さだ。ホールは大手に集まっており、機器の値段は買い手が決めやすい。営業利益率が 8% から 32% まで動いてきた事実が、この力関係を映している。
資本の効率も地味だ。自己資本比率が 91% と厚く、利益が出ても ROE は 7.7% にとどまる。過去 10 年の ROE の中央値は 5.3% だ。稼ぐ力は高いが、それを抱え込む会社で、株主から見た資本の使い方が評価の分かれ目になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
客であるホールは構造的に減っている。警察庁によると 2025 年末の店舗数は 6,464 店で、前年から 242 店減り、30 年連続の減少だった。ただ減っているのは小型店が中心で、大型店は増えた。1 店あたりの平均設置台数は初めて 500 台を超えている。
この集約は、機器の売り手には両面がある。店は減るが、残る店は大きく、更新の投資に耐えられる。2024 年 7 月の新紙幣は、その体力の差を見せた。対応の費用が重く、体力のない店が閉まる一因になったと報じられた。マースの 2024 年 3 月期から 2 年の好業績は、この更新の山と、スマート遊技機に合わせた入れ替えが重なったものだ。
特需が終わった後の需要は、設置されたユニットの寿命に沿った入れ替えと、店舗数の増減で決まる。スマート対応のユニットは 2022 年末から入っており、次の大きな入れ替えは 10 年先に近づく。ホール数がこの先 10 年で 2 割ほど減るのが筆者の中立の見方だ。
競合は同じホール向けに 4 社が並ぶ。値下げ競争より、ホール管理システムとの抱き合わせで取り合う形だ。
スマートソリューションの市場は日本自動認識システム協会の統計で 2025 年に 2,633 億円。伸びは年 1〜2% と穏やかで、マースのシェアは 2% ほどにとどまる。取りにいく先は電池検査や健診といった、市場が伸びる隙間だ。
資本政策と M&A
還元は手厚い方だ。配当は配当性向 30% を基準とする方針だが、実績は 4 割台と基準を上回る。2026 年 5 月には上限 42 億円・120 万株の自社株買いを決め、9 月に取得を終えた。
それでも現金は減らない。現金は 389 億円、投資有価証券は 208 億円あり、合わせて今の時価総額に迫る。純現金は 10 年前の 222 億円から積み上がってきた。
会社は中期経営計画を作らない。ガバナンス報告書は、主要な販売先の法規制の改正で環境が変わるので 1 年ごとの計画を基本とする、と説明する。M&A や業務提携は視野に入れるとされるが、大型の実績は確認できない。
株主には創業家関係者と自己株式が並ぶ安定した構造がある。上位にはイー・エムプランニング、信託口、光通信などが入る。大きく動くきっかけは外から来る、というのが筆者の見立てだ。
実行済みの自社株買い(約42億円)は、株数と自己資本の起点に反映し、10年の還元には入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
現金と有価証券が 600 億円近くあり、時価総額 547 億円を上回る。事業は無料でついてくる。しかも事業は堀を持つ。ホールは 1 店 1 社でカードシステムを統一するため、導入した店は離れにくく、保守料と情報管理料が毎年積み上がる。
客のホールは減っても、残るのは大型店だ。1 店あたりの設置台数は 500 台を超え、設備への投資額も 1 店ごとに膨らむ。スマート遊技機の入れ替えは続いており、ユニットの更新はまだ山の途中にある。会社の予想も、2027 年 3 月期の営業利益を 89 億円と、今期並みに見ている。
自動認識事業は、電池の X 線検査や健診の需要という別の足場を持つ。ここが育てば、ホールの景気に左右されない利益の柱になる。
還元も動いた。自社株買いを 2026 年に終え、配当性向も基準の 3 割を上回っている。PBR が 1 倍を割る状況は、東証の資本効率の要請の下で続かない。現金が戻り始めれば、1 株の価値は一気に上がる。
慎重な見方
客のホールが 30 年連続で減っている。マースの導入店舗も 2 年足らずで 1,445 店から 1,393 店へ減った。ここが細る限り、機器の売り上げは長い目で目減りする。
2024 年 3 月期から 2 年の好業績は、新紙幣という 1 度きりの更新が作った山だ。2026 年 3 月期に売上が 24% 減ったのが、その反動だった。営業利益率 27% は、普通の年の姿ではない。コロナ前の 2019 年 3 月期は 19% だった。
値決めの力も弱い。ホールは大手に集まり、機器を買う側の交渉力が増す。カードシステムは 4 社が争い、ダイコク電機のようにホール管理とのセット販売で食い込む相手もいる。
最後に、現金は戻らない。配当性向は基準を上回るが、純現金は 10 年で 1.7 倍に積み上がった。創業家関係者が株主の中核に残る限り、現金は会社に積まれたままで、割安に見えるのは見かけだ。自社株買いも、現金のごく一部にすぎない。
どちらに重みを置いたか
事業の持続力では慎重な見方が重い。ホールの減少は止まらず、高い利益率も更新の山のおかげだ。ただ現金の厚みは強気の見方を支える。戻り方を半分と置いたのは、10 年でためた実績と、安定株主の構造を見たからだ。結果、中立の 10 年後の価値は、今の時価総額とほぼ同じになった。確率は、中立を最も厚くし、やや悲観にやや寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,931 円858 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,853 円322 億円)。 今の値に割り戻すと 3,478 円605 億円、今との差 +11.5%、 期待の年率 +8.1%(資本コスト 8.3%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 9,680 円1,684 億円 | 2,748 円478 億円 | +298.3% | +14.8% | 994 円173 億円 |
| やや楽観 | 20% | 7,124 円1,239 億円 | 2,196 円382 億円 | +198.7% | +11.6% | 1,864 円324 億円 |
| 中立 | 32% | 5,396 円939 億円 | 1,776 円309 億円 | +129.9% | +8.7% | 2,295 円399 億円 |
| やや悲観 | 27% | 3,011 円524 億円 | 1,713 円298 億円 | +51.4% | +4.2% | 1,276 円222 億円 |
| 悲観 | 13% | 1,479 円257 億円 | 1,253 円218 億円 | −12.4% | −1.3% | 355 円62 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,931 円858 億円 | 1,853 円322 億円 | +117.4% | +8.1% | 6,784 円1,180 億円 |
今の株価時価総額 3,120 円543 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% ホールの減少が緩み、大型店の更新が厚く続く10年 利益 93 億円 · PER 14.8 倍 · 株価時価総額 9,680 円1,684 億円
ホールの退場は小型店で一巡し、減少は年 1% 台まで緩む。残る大型店は台数を増やし、ユニットや景品、紙幣搬送の入れ替えを高い頻度で続ける。マースは大手ホールの囲い込みで、導入店舗を 1,300 店ほど保つ。1 店あたりの売上は、キャッシュレス決済やスマホの貯玉再プレイといった付加価値で、物価を上回って伸びる。利益率は 3 割台に乗る。
自動認識事業では、電池の X 線検査と健診の需要が当たり、売上は 2 倍強になる。ホテルも訪日客で黒字が定着する。現金は配当と自社株買いで 6 割強が戻るが、利益が大きい分、積み上がる額も増える。条件がすべてそろう必要があり、起きる確率は低い。
- アミューズメント関連事業:数量 1,300(プリペイドカードシステムの実稼働店舗数(店))× 価格 2,400(1 店あたり売上(万円・名目。機器・保守・情報管理料の合計))→ 売上 312 億円・営業利益 103 億円。店舗 1300・1 店 2400 万円(今の 1.43 倍。特需の反動が物価の伸びを相殺)、利益率 33%
- スマートソリューション関連事業:数量 3,100(国内の自動認識機器の市場規模(億円・実質))× 価格 4.3%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア×物価の倍率)→ 売上 133 億円・営業利益 21 億円。市場 3100 億円・シェア 3.2%、利益率 16.0%
- ホテル・レストラン関連事業:数量 24.0(延べ利用者数(万人/年・推定。宿泊と飲食の合計))× 価格 20,300(客単価(円・名目))→ 売上 49 億円・営業利益 4 億円。利用者 24 万人・客単価 2.03 万円、利益率 8%
倍率:事業の純利益 84 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 16.2% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)463 億円。全体の PER 15.84 倍、時価総額 1,799 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 14.82 倍・時価総額 1,645 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:ホールの減少が緩み、更新が高い頻度で続き、検査・健診も当たる複合の上振れ。条件が重なるので、同じ領域の会社と同じ 8% にとどめた。
やや楽観 20% ホールの減少が穏やかで、更新需要が堅く続く10年 利益 70 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 7,124 円1,239 億円
ホールの減少は年 1.5% ほどで、導入店舗は 1,200 店ほどに減る。スマート対応の機器は入れ替えが長く続き、1 店あたりの売上は特需の後も今より 2 割ほど高く、物価並みに伸びる。保守料と情報管理料の積み上がりが、機器の山谷をならす。利益率は 3 割に近い水準を保つ。
自動認識事業は電池検査や健診の需要を拾って着実に売上を伸ばし、利益の柱の 1 つに育つ。ホテルは訪日客に支えられ、小さな黒字を続ける。現金は 6 割強が株主に戻り、会社は大型の買収に出ない。大きな上振れはないが、特需が終わっても利益が高く保たれる、堅い会社として評価される10年だ。ホールの減少が続く以上、成長の物語は描けないが、安定は保てる。
- アミューズメント関連事業:数量 1,200(プリペイドカードシステムの実稼働店舗数(店))× 価格 2,100(1 店あたり売上(万円・名目。機器・保守・情報管理料の合計))→ 売上 252 億円・営業利益 76 億円。店舗 1200・1 店 2100 万円(今の 1.25 倍。特需の反動が物価の伸びを相殺)、利益率 30%
- スマートソリューション関連事業:数量 2,950(国内の自動認識機器の市場規模(億円・実質))× 価格 3.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア×物価の倍率)→ 売上 111 億円・営業利益 16 億円。市場 2950 億円・シェア 2.8%、利益率 14.5%
- ホテル・レストラン関連事業:数量 22.0(延べ利用者数(万人/年・推定。宿泊と飲食の合計))× 価格 19,000(客単価(円・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 3 億円。利用者 22 万人・客単価 1.90 万円、利益率 6%
倍率:事業の純利益 62 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)448 億円。全体の PER 14.18 倍、時価総額 1,322 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 13.13 倍・時価総額 1,187 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:ホールの減少が穏やかで、ユニットの更新と保守料が堅い。会社の 2027 年 3 月期の予想が今期並みで、特需後も利益が高く保たれる兆しがあるため 20% を置いた。
中立 32% ホールが年 2.5% ずつ減り、更新が平時に戻る10年 利益 51 億円 · PER 12.1 倍 · 株価時価総額 5,396 円939 億円
ホールの減少は年 2〜3% で続き、導入店舗は 1,100 店ほどに減る。小型店の退場が先に進み、残る大型店はスマート対応の機器と保守に着実に投資する。1 店あたりの売上は、特需が抜けた後も今を 1 割弱上回る水準だ。名目で物価ほど伸びないのは、今が更新の山の高みにあるからだ。利益率は特需期の 36% から 26% に戻る。
自動認識事業は市場の穏やかな伸びと採用の広がりで売上が 5 割増の 90 億円になり、ホテルは小さな黒字を保つ。現金は配当と自社株買いで 6 割が戻り、残りが積み上がる。会社は大型の買収を避け、地味に堅い会社として10年を終える。
- アミューズメント関連事業:数量 1,100(プリペイドカードシステムの実稼働店舗数(店))× 価格 1,800(1 店あたり売上(万円・名目。機器・保守・情報管理料の合計))→ 売上 198 億円・営業利益 52 億円。店舗 1100・1 店 1800 万円(今の 1.07 倍。特需の反動が物価の伸びを相殺)、利益率 26%
- スマートソリューション関連事業:数量 2,800(国内の自動認識機器の市場規模(億円・実質))× 価格 3.2%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア×物価の倍率)→ 売上 90 億円・営業利益 12 億円。市場 2800 億円・シェア 2.4%、利益率 13.0%
- ホテル・レストラン関連事業:数量 21.0(延べ利用者数(万人/年・推定。宿泊と飲食の合計))× 価格 18,450(客単価(円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 2 億円。利用者 21 万人・客単価 1.84 万円、利益率 5%
倍率:事業の純利益 43 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)429 億円。全体の PER 12.14 倍、時価総額 951 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホールの減少は年 2〜3%(警察庁の店舗数)、更新は平時に戻る見立て。2 つの見方の落としどころで最も厚くした。保守料の積み上がりがある分、同じ領域の機械メーカーより中心を厚めの 32% に置いた。
やや悲観 27% ホールの減少が速まり、利益率が押される10年 利益 28 億円 · PER 9.9 倍 · 株価時価総額 3,011 円524 億円
ホールの減少が年 4% ほどに速まり、導入店舗は 950 店ほどまで減る。大手ホールは機器の値引きを求め、ダイコク電機やナスカとの抱き合わせ競争も強まる。1 店あたりの売上は名目で今を 5% ほど下回り、利益率は 2 割を割る。
自動認識事業はホールの穴を埋めきれず、売上は 70 億円台にとどまる。会社は穴埋めに小さな買収や新規事業へ現金を使い、一部は損失に終わる。配当は維持するが、自社株買いは細る。現金は積み上がらず、10年でわずかに減る。ホテルは訪日客の波に左右され、利益はほぼ出ない。ホールの不振が長引く中で、会社は株主還元を保つことを優先し、新しい柱を育てる余力は乏しい。
- アミューズメント関連事業:数量 950(プリペイドカードシステムの実稼働店舗数(店))× 価格 1,600(1 店あたり売上(万円・名目。機器・保守・情報管理料の合計))→ 売上 152 億円・営業利益 27 億円。店舗 950・1 店 1600 万円(今の 0.95 倍。特需の反動が物価の伸びを相殺)、利益率 18%
- スマートソリューション関連事業:数量 2,600(国内の自動認識機器の市場規模(億円・実質))× 価格 2.8%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア×物価の倍率)→ 売上 73 億円・営業利益 7 億円。市場 2600 億円・シェア 2.1%、利益率 10.0%
- ホテル・レストラン関連事業:数量 19.0(延べ利用者数(万人/年・推定。宿泊と飲食の合計))× 価格 16,500(客単価(円・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 0 億円。利用者 19 万人・客単価 1.65 万円、利益率 1%
倍率:ROE 4.6% が k 8.25% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値なので PER は 1÷k = 11.1 倍まで。ホールの縮小で稼ぐ力が細る筋書きなので、その 8 割の 9.9 倍に置いた。余った現金は戻り方 0.5 で別に足した。
確率:減少の加速と大手ホールの値引きで利益率が下がる、起きやすい悪い筋書き。値決めが弱く、買収の実績が乏しい分を考え、27% を置いた。
悲観 13% ホールが半分近くに減り、設備投資が止まる10年 利益 7 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,479 円257 億円
規制の強化と若年層の遊技離れでホールの減少が年 7% に速まり、導入店舗は 650 店ほどに半減する。残るホールも設備投資を最小限に絞り、機器の更新はほぼ止まる。大手ホールの値引き圧力で 1 店あたりの売上は今の 7 割台に落ち、利益率は 1 桁になる。
穴埋めに踏み出した自動認識やホテルの買収も不発で、250 億円ほどの損失を出す。自動認識事業は競争に負けて売上が 50 億円を割り、ホテルは赤字になる。配当は利益に合わせて削られるが、足りない分は現金や有価証券の売却でも賄う。現金の大半は残るが、会社は積み上げたまま動かない。悲観側の値付けは、保有する資産の床で見る。
- アミューズメント関連事業:数量 650(プリペイドカードシステムの実稼働店舗数(店))× 価格 1,250(1 店あたり売上(万円・名目。機器・保守・情報管理料の合計))→ 売上 81 億円・営業利益 7 億円。店舗 650・1 店 1250 万円(今の 0.74 倍。特需の反動が物価の伸びを相殺)、利益率 8%
- スマートソリューション関連事業:数量 2,300(国内の自動認識機器の市場規模(億円・実質))× 価格 2.0%(実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア×物価の倍率)→ 売上 46 億円・営業利益 1 億円。市場 2300 億円・シェア 1.5%、利益率 3.0%
- ホテル・レストラン関連事業:数量 16.0(延べ利用者数(万人/年・推定。宿泊と飲食の合計))× 価格 14,000(客単価(円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 −1 億円。利用者 16 万人・客単価 1.40 万円、利益率 -3%
倍率:ROE が k 8.25% を大きく下回り、稼ぐ力はほぼ消える。価値は事業の純利益でなく、手元に残る現金と有価証券の床で見る。投資の失敗後に残る余った現金 235 億円と事業の残りを合わせた床の資産を約 260 億円とみて、今の自己資本 857 億円の 0.30 倍に置いた。
確率:ホールが半分近くに減る構造的な負け。保守料の積み上がりで機器だけの会社ほど急には崩れないが、客が大手に集まり値決めが弱いため、13% を残した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
アミューズメント関連事業
パチンコ・パチスロのホールにプリペイドカードのユニット、景品管理、紙幣搬送の設備を納め、保守でも稼ぐ主力事業。
| 数量プリペイドカードシステムの実稼働店舗数(店) | 価格1 店あたり売上(万円・名目。機器・保守・情報管理料の合計) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,400 | 1,681 | 235 | 85 |
| 10 年後 中立 | 1,100 | 1,800 | 198 | 52 |
取り方:実稼働店舗数は会社の開示で 2024 年 3 月期末 1,445 店、2025 年 9 月末 1,393 店(シェア 23.6〜23.8%)。2026 年 3 月期は平均 1,400 店とみた。売上 235.4 億円(セグメント開示)を店舗数で割ると 1 店 1,681 万円。新紙幣特需が抜けた後でも、平時より高い水準にある。営業利益は開示のセグメント利益 84.9 億円。
スマートソリューション関連事業
RFID・バーコード、リチウムイオン電池向け X 線検査装置、クラウド型健診システムなどを製造・物流・医療に売る事業。
| 数量国内の自動認識機器の市場規模(億円・実質) | 価格実質の市場 1 億円あたりの売上(億円)=シェア×物価の倍率 | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,633 | 2.3% | 60 | 7 |
| 10 年後 中立 | 2,800 | 3.2% | 90 | 12 |
取り方:日本自動認識システム協会の 2025 年の国内出荷額 2,633 億円に対し、売上 60.2 億円からシェアを約 2.3% と逆算した。X 線検査など協会の統計に入らない分も含むので目安。営業利益は開示のセグメント利益 7.3 億円。
ホテル・レストラン関連事業
博多と御殿場のホテルと、銀座の鉄板焼店などを運営する。
| 数量延べ利用者数(万人/年・推定。宿泊と飲食の合計) | 価格客単価(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 13,770 | 28 | 1 |
| 10 年後 中立 | 21.0 | 18,450 | 39 | 2 |
取り方:利用者数は開示が見つからず推定。客単価を宿泊と飲食の合算で約 1.4 万円と置き、売上 27.5 億円から延べ約 20 万人とした。営業利益は開示のセグメント利益 0.9 億円。
リスクと懸念
ホールの減少が想定より速い
2025 年末のホールは 6,464 店で 30 年連続の減少。規制の強化や若年層の遊技離れが重なれば、減少は年 2〜3% から年 5% 以上に速まる。マースの導入店舗も減っており、機器の売上と保守料の双方が目減りする。
更新需要の山谷
2024 年 3 月期から 2 年の好業績は、新紙幣対応とスマート遊技機の入れ替えが重なった山だった。2026 年 3 月期に売上が 24% 減った通り、次の更新までの谷は深い。利益率も 8% から 32% まで振れる。
大手ホールの値引き圧力
ホールは大手に集まり、機器を買う側の交渉力が増している。4 社が並ぶカードシステムでは、ダイコク電機のようにホール管理とのセット販売で食い込む相手もおり、値決めの弱さが利益率の下げ要因になる。
現金の戻りが遅い
現金 389 億円と投資有価証券 208 億円は時価総額に迫る。配当性向は 4 割台だが、純現金は 10 年で増え続けた。創業家関係者が株主に並ぶ構造では、積んだ現金が動かない可能性がある。
穴埋めの投資の失敗
ホールの減少を補うため、自動認識やホテルで買収や新規事業に踏み出す可能性がある。会社は中期計画を作らず、大型買収の実績も確認できない。穴埋めの投資が裏目に出れば、現金の価値を削る。
規制の変更
遊技機の出玉規制や紙幣・決済の制度は、ホールの設備投資を一斉に動かす。新紙幣のように追い風になることもあるが、規制の方向は事業者が決められず、需要の予測が当たりにくい。
今後の分かれ目
- ホールの店舗数の減少が 2 年続けて年 2% を下回ったら
- 導入店舗の減少も鈍る。中立の店舗数 1,100 店を上方に直し、やや楽観の確率を上げる。
- マースの導入店舗が 1,300 店を割り込んだら
- 客の減少が会社の想定より速い。やや悲観に確率を寄せ、保守料の積み上がりの前提を見直す。
- 自社株買いや増配が、現金の 1 割を超える規模で毎年続いたら
- 現金の戻り方を 0.5 から 1.0 へ上げる。割安と判断する根拠が強まる。
- 自動認識事業の売上が 80 億円を超え、利益率も 1 割台半ばまで上がったら
- ホールに頼らない利益の柱が育った証拠。楽観側の確率を上げる。
- 大型の買収を発表したら
- 現金の価値を削る恐れが出る。戻り方を下げ、悲観側に確率を寄せる。
- 次の更新需要(決済・スマホ連携など)が業界で動き始めたら
- 1 店あたり売上の前提を上げる。ただし、特需の後の反動の深さも合わせて確かめる。
見ておくもの
- 警察庁のホール店舗数と 1 店あたりの設置台数(毎年)
- マースの実稼働店舗数とシェア(半期ごとの決算短信)
- アミューズメント関連事業の売上・利益と、更新需要の山谷
- 自動認識事業の売上と利益率
- 自社株買い・配当性向と、現金・投資有価証券の増減
倍率と資本コストの決め方
数量は実稼働店舗数、価格は 1 店あたり売上で置いた。どちらも会社の開示とシェアからの推定で、台数の開示はない。倍率は式から出し、今の株価・過去や同業の倍率には寄せていない。中立 PER は上限の 9 割、強気側 8.5 割、ROE が k 以下の筋書きは 1÷k の 8 割で置き、現金は戻り方 0.5 で別に足した。今の株価が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。中立の 1 店あたり売上が今の 1.07 倍にとどまるのは、今が更新の山の高みにあり、物価の伸びを特需の反動が打ち消すため。ホテルの賃借の規模は確認できていない。新リース会計基準(2028 年 3 月期から)で数字の形が変わるが、10 年後は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(R1〜R4)で倍率・時価総額を機械で置き直した(前後は notes/audit/fix_stage2_20261022.csv)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +1.5% = 9.0%。現金の戻りが遅いこと・安定株主の構造・ホールの大手集約は k に足さず、筋書きと確率、現金の戻り方で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.25%。