結論
靜甲は、静岡市の複合企業だ。稼ぎの柱は食品や化粧品の工場で使う液体充填機(容器に液体を詰める機械)で、売上の半分以上はスバル、ボルボ、ポルシェ、BYDを売る自動車販売店が占める。筆者の結論は「今の値段はやや割高」。
2026年3月期は、売上449億円、営業利益18億円と過去最高だった。包装機械の産業機械事業が受注の波に乗り、利益の半分以上を稼ぐ。受注残は64億円と1年で4割近く増えた。
ただ、会社の予想では今期の営業利益は16億円に減る。車の販売店は利益率が1%台と薄く、売上の半分以上を占めるため、全体の利益率は4%にしかならない。包装機械が今の水準を10年保てるかも、自動車の販売量が人口とともに細る中で読み切れない。
財務は厚い。現金72億円に対して有利子負債は27億円。ただ配当性向は1割強で、鈴与ホールディングスが28%を持つ。貯まる現金は、株主に半分程度しか届かないと見て割り引いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、靜甲は「悪くない事業を持つが、利益が薄く、資本が戻らない会社」だ。
良い点は二つある。一つは、液体充填機という、顧客に定着する機械の事業を持つこと。受注残が64億円あり、数年先まで仕事が見える。もう一つは、現金72億円と堅い財務。倒産の心配は小さい。
悪い点は三つある。売上の半分以上が利益率1%台の自動車販売店で、全体の利益率を押し下げる。販売店は仕入先のメーカーに依存し、自動車の販売量は長期で細る。そして、貯まる現金が株主に戻りにくい。配当性向は1割強で、現金は積み上がる一方だ。
安全域は、現金と上場株、販売店の土地・建物にある。悲観の筋書きでも、これらの回収で今の時価総額の半分程度は残る。
筆者は、事業の質が中程度で、資本の使い方が弱い会社を、高い値段で持ちたいとは思わない。今の値段は10年の価値より少し高く、買うなら大きく割り引いた値段が必要だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は5つの事業だ。最大は車両関係で、売上の55%、約250億円。静岡スバル自動車(スバル)、静岡ブイオート(ボルボ)、PUREST(ポルシェ)、Cool the Earth(BYD)が新車と中古車、整備を手がける。利益は4億円と薄い。
利益の中心は産業機械事業で、売上95億円、利益15億円。主力は液体充填機で、日本ペイント、信越化学、ENEOS、花王、資生堂、武田薬品、味の素食品などが顧客だ。粘度の高い液体も詰められるのが強みで、販売は子会社の日本機械商事が担う。殺菌装置のエコノス・ジャパンと、FAのシステムを作る共和テックも含む。
電機機器事業は売上87億円。三菱電機のFA機器、空調・冷凍機器、太陽光発電機器を静岡県内で売り、設置工事まで行う。
冷間鍛造は売上16億円。自動車部品や電動工具の部品を金型で成形する。不動産賃貸は売上1億円ほどだが、利益は1.6億円と利益率が高い。
連結の従業員は892人、うち車両関係が377人、産業機械が300人。主要な拠点は静岡県に集まっている。売上は上半期より下半期に偏り、車両関係は3月の決算期に新車の登録が集中する。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、液体充填機にある。粘度の高い液体を正確に詰める技術と、顧客の工場に入り込んだ保守の仕事で、化学や食品の大手から繰り返し注文が入る。受注残が64億円と売上の7割近くあり、先の仕事は見えている。
ただし堀は事業の一部だ。車両関係は、メーカーの販売網の一員にすぎず、仕入先の方針で利益が決まる。電機機器も三菱電機の販売店という立場だ。販売網の再編や直販の拡大が進めば、立場は弱い。
利益率は低い。連結の営業利益率は2018年3月期の2.4%から、今期の4.0%へ上がったが、過去30年の最高とほぼ同じ水準で、これ以上は伸びにくい。自己資本利益率は過去10年の中央値で4%、今期は7%。
財務は堅い。自己資本比率は約59%、現金は有利子負債の2.7倍。ただし、貯まる資金を投資と配当に回す姿勢は弱い。
経営は着実だ。中期計画は2029年3月期に売上515億円、営業利益21億円。今期でその8割以上に届いた。筆者が気にするのは、貯まった資金をどう使うかだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
産業機械は、食品や化粧品、化学品の工場の設備投資に左右される。人手不足を背景にした省人化・自動化の需要が追い風で、同社の受注は前期比で3割増えた。ただ、設備投資は景気の波が大きく、受注の山のあとには谷が来る。
競合は、液体充填機の専業メーカーや、包装機械の大手。世界の液体充填機の市場は、調査会社の推計で2026年に約72億ドルと、年率で数%伸びる見通しだ。靜甲は国内の顧客に強く、海外の売上は小さい。
自動車販売店は、国内の新車の販売台数が人口とともに細る中で、整備と中古車、輸入車で稼ぐ形に変わりつつある。同社はポルシェのセンターを新設し、ポルシェとボルボとBYDの輸入車ブランドを広げている。電気自動車の直販が進めば、販売店の手数料は削られる恐れがある。
電機機器は、静岡県内の工場の更新、空調、太陽光の施工が中心。三菱電機の製品の値上げに左右される。
物価が10年で1.34倍になれば、機械の価格も売上も名目で増える。ただ販売店の利益は車の値段に比例して増えにくく、人件費の上昇が利益を削る。
資本政策と M&A
配当は年2回で、2026年3月期は総額1.7億円と純利益の1割強。中期計画の2029年3月期には増配を目指すが、水準は低いままだ。自社株買いの記載はない。
貯めた資金は設備に回る。今期の設備投資は25億円で、ポルシェセンターなどの店舗と社用車が中心。営業のキャッシュフローは28億円で、投資に近い額を使っている。
上場株式は14銘柄、21億円で、しずおかフィナンシャルグループ、いすゞ自動車、マキタなど。毎年、保有の合理性を点検しており、今期は3銘柄を2.5億円で売った。
筆頭株主ではないが、物流の鈴与ホールディングスが議決権の28%を持つ「その他の関係会社」。静岡の経営を支える安定株主で、経営への口出しは強くない。一方で、還元を迫る力も弱い。
経営は子会社を整理する動きも見せ、ビルメンテを吸収合併した。筆者は、資金の使い方にまだ改善の余地があると見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
靜甲の本質は、液体充填機という、顧客に定着する機械事業にある。化学や食品の大手が顧客で、受注残は前期比で4割近く増えた。人手不足で自動化の需要は10年続き、産業機械の営業利益率は15%を保つ。会社が出す今期の予想は保守的で、第1四半期の営業利益はすでに3割増えた。
ポルシェのセンター新設、ボルボ、BYDなど、輸入車ブランドの拡大は、国内の新車が細る中で、利益率の高い車種に絞る戦略だ。整備と中古車の収益も育つ。
財務は堅く、現金72億円に対して有利子負債27億円。配当は中期計画で増える方針で、現在より2割ほど高い水準を目指す。上場株の売却も進み、貯まる現金を株主に戻す姿勢が出てくる。時価総額は純資産の6割で、純現金を引けば事業の価値はさらに低い。
営業利益率が4.5%まで上がり、純利益が22億円に伸びれば、今の値段は大きく割安に見える。電機機器も、工場の更新や太陽光の設置で、静岡県内の需要をこつこつ積み上げている。財務が堅く、売上が急に崩れる心配は小さい。
慎重な見方
靜甲の利益は、薄いうえに波がある。売上の半分以上を占める自動車販売店は、利益率が1%台で、メーカーの方針次第だ。国内の新車は人口減少で細り、電気自動車の直販が進めば、販売店の手数料は削られる。
今期の産業機械の好調は、受注の山の可能性が高い。受注は前期比で3割増えたが、設備投資は景気に左右され、山のあとには谷が来る。会社が今期の営業利益を16億円に減ると見ていることがその印だ。
資本の使い方も弱い。配当性向は1割強、鈴与ホールディングスが28%を持つため、還元を迫る力は弱い。営業のキャッシュフローは28億円なのに、投資で21億円を使い、店舗の新設や社用車に消える。貯まった現金の価値は、帳簿どおりには評価できない。
自己資本利益率は、過去10年の中央値で4%。資本コストを下回る会社の倍率は、1÷k=12倍までだ。10年後に利益が伸びても、倍率が上がる余地は小さい。しかも投資組合では今期2.9億円の運用損が出ており、貯めた資金の運用も万全とは言えない。
どちらに重みを置いたか
筆者は、慎重な見方がやや強いと判断した。理由は、売上の半分以上を占める車両関係の利益率が低いこと、包装機械が山に近いこと、貯まる現金が株主に戻りにくいことだ。ただし液体充填機の定着した顧客と堅い財務が悲観を支えるため、やや悲観と悲観を合わせて35%にとどめた。会社の中期計画の延長を、やや楽観に入れた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,957 円191 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 336 円22 億円)。 今の値に割り戻すと 1,598 円103 億円、今との差 +3.7%、 期待の年率 +7.9%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 5,260 円340 億円 | 619 円40 億円 | +281.3% | +14.3% | 412 円27 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,284 円277 億円 | 465 円30 億円 | +207.9% | +11.9% | 950 円61 億円 |
| 中立 | 38% | 3,441 円222 億円 | 341 円22 億円 | +145.3% | +9.4% | 1,437 円93 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,418 円92 億円 | 232 円15 億円 | +7.0% | +0.7% | 413 円27 億円 |
| 悲観 | 10% | 697 円45 億円 | 124 円8 億円 | −46.8% | −6.1% | 82 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,957 円191 億円 | 336 円22 億円 | +113.6% | +7.9% | 3,293 円213 億円 |
今の株価時価総額 1,542 円100 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 包装機械の好調が続き、販売店も利益率を上げる 利益 23 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 5,260 円340 億円
産業機械は省人化の投資が10年続き、数量が今の1.3倍に増える。営業利益率は14%を保つ。車両関係は輸入車と整備の比率が上がり、数量は1.05倍、営業利益率は2.0%に上がる。電機機器は工場の更新と太陽光で1.2倍。
価格は物価並みの1.34倍が通る。本社費も1.34倍に増えるが、売上の伸びが吸収し、営業利益は30億円、営業利益率は4.5%になる。
配当性向は3割へ上がり、貯めた現金の一部が戻る。ただ筆者は、この変化を起こりやすい筋書きとは見ない。
液体充填機の顧客は広がり、海外への販売も少しずつ増える。ポルシェやBYDなど新しいブランドの店が軌道に乗り、整備と中古車の収益が育つ。
- 産業機械(包装機械):数量 130(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 1.28(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 166 億円・営業利益 23 億円。数量 1.30 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 14.0%
- 車両関係(自動車販売店):数量 105(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 3.34(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 351 億円・営業利益 7 億円。数量 1.05 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 2.0%
- 電機機器:数量 120(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 1.17(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 140 億円・営業利益 11 億円。数量 1.20 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 7.5%
- 冷間鍛造・不動産賃貸:数量 110(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 0.23(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 4 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 16.0%
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 13.3 倍、時価総額 310 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自動化需要で包装機械が伸び、輸入車の販売店も利益率を上げる筋書き。複数の条件が重なるため7%。
やや楽観 20% 包装機械は高水準を保ち、販売店は横ばい 利益 19 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,284 円277 億円
産業機械は数量が今の1.15倍、営業利益率は13.5%。車両関係は数量が横ばいで営業利益率は1.9%。電機機器は1.1倍。
営業利益は25億円、営業利益率は4.0%と今期並みを保つ。物価で本社費も増えるため、利益率の改善は包装機械の高い利益率に頼る。
電機機器は静岡県内の工場更新と太陽光の設置で伸びるが、三菱電機の製品の値上げ次第で利益率は動く。
配当性向は2割に上がるが、現金は積み上がる。
輸入車ブランドの店舗が軌道に乗り、整備と中古車の収益が育つが、国内の新車の減少を埋めるほどではない。包装機械は新しい顧客を取り込む。
- 産業機械(包装機械):数量 115(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 1.28(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 147 億円・営業利益 20 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 13.5%
- 車両関係(自動車販売店):数量 100(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 3.34(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 335 億円・営業利益 6 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 1.9%
- 電機機器:数量 110(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 1.17(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 128 億円・営業利益 9 億円。数量 1.10 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 7.2%
- 冷間鍛造・不動産賃貸:数量 100(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 0.23(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 4 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 16.0%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 242 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期の好調が部分的に続き、会社の中期計画(営業利益21億円)を上回る筋書き。受注残が64億円あるので20%。
中立 38% 包装機械は波をならし、販売店は細る 利益 14 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,441 円222 億円
産業機械は今期の山から波をならして数量1.0倍、営業利益率は13%に下がる。車両関係は国内の新車が細り、数量は0.95倍、営業利益率は1.8%。電機機器は1.0倍で7%。冷間鍛造と賃貸は0.9倍。価格は物価並みの1.34倍。
本社費は物価で1.34倍の14億円に増える。営業利益は19億円、営業利益率は3.3%と、今期の4.0%を下回る。純利益は14億円。
配当性向は1割台から2割弱へ緩やかに上がる。自己資本は10年で1.6倍の284億円に膨らみ、自己資本利益率は5%を割る。
鈴与ホールディングスの持株比率は変わらず、貯まる現金の使い方は今の延長にとどまる。中期計画の2029年3月期の目標(営業利益21億円)には届かない水準だ。
- 産業機械(包装機械):数量 100(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 1.28(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 128 億円・営業利益 17 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 13.0%
- 車両関係(自動車販売店):数量 95.0(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 3.34(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 318 億円・営業利益 6 億円。数量 0.95 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 1.8%
- 電機機器:数量 100(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 1.17(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 117 億円・営業利益 8 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 7.0%
- 冷間鍛造・不動産賃貸:数量 90.0(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 0.23(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 3 億円。数量 0.90 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 15.0%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)14 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 186 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:今期が山に近いことを織り込み、包装機械は波をならした水準、販売店は人口減で細る筋書き。いちばん起こりやすいので最大の38%。
やや悲観 25% 設備投資の谷と販売店の利益率低下 利益 6 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,418 円92 億円
産業機械は設備投資の谷で数量が0.8倍、営業利益率は10%に下がる。車両関係は電気自動車の直販が進み、数量0.85倍、営業利益率1.2%。電機機器は0.9倍で5.5%。価格は10年で1.30倍。
営業利益は7億円まで落ち、営業利益率は1%台。借入は少なく、赤字にはならない。冷間鍛造も自動車部品の減少で伸び悩む。
配当は性向1割台を保つが、金額は減る。貯まる現金はこの筋書きで4分の3に目減りする。
受注残は谷の年に薄くなり、先の見通しが立ちにくい。店舗の新設で使った資金の回収が遅れ、投資組合の運用損のような費用も響く。
- 産業機械(包装機械):数量 80.0(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 1.24(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 99 億円・営業利益 10 億円。数量 0.80 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 10.0%
- 車両関係(自動車販売店):数量 85.0(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 3.24(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 276 億円・営業利益 3 億円。数量 0.85 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 1.2%
- 電機機器:数量 90.0(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 1.13(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 102 億円・営業利益 6 億円。数量 0.90 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 5.5%
- 冷間鍛造・不動産賃貸:数量 80.0(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 0.22(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 2 億円。数量 0.80 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 12.0%
倍率:ROEは約2%でkを下回る。上限の1÷k=12.1倍に対し、8割強の10倍。事業の稼ぎが小さいので、貯まる現金の分が別に加わる。
確率:包装機械が受注の谷に入り、輸入車ブランドの販売手数料が下がる筋書き。今期の予想減益が示す動きなので25%。
悲観 10% 構造的に負け、販売店も包装機械も縮む 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 697 円45 億円
産業機械は数量0.55倍、営業利益率6%まで下がる。車両関係はメーカーが直販に移り、数量0.6倍、営業利益率0.5%。電機機器は0.7倍。価格は物価を移せず10年で1.20倍。
本社費を削っても営業利益は赤字になる。店舗の減損が出る。それでも借入は少なく、現金と上場株、店舗の土地・建物で株主の取り分を下支えする。冷間鍛造は自動車向けの減少が重なる。
会社は店舗の整理と包装機械への集中に動くが、株主に戻る額は少ない。
静岡県内に集中する拠点で、地震などの災害が重なれば、被害はさらに大きくなる。清算はされず、事業は小さくなって続く。
- 産業機械(包装機械):数量 55.0(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 1.14(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 63 億円・営業利益 4 億円。数量 0.55 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 6.0%
- 車両関係(自動車販売店):数量 60.0(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 3.00(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 180 億円・営業利益 1 億円。数量 0.60 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 0.5%
- 電機機器:数量 70.0(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 1.05(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 73 億円・営業利益 2 億円。数量 0.70 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 3.0%
- 冷間鍛造・不動産賃貸:数量 60.0(売上の実質指数(2026/03 期=100))× 価格 0.20(指数 1 点あたり売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。数量 0.60 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 8.0%
倍率:事業の稼ぎはほぼゼロで、売れる資産が値段を決める。今の自己資本174.5億円に0.26を掛けた。
確率:電気自動車の直販で販売店の手数料が崩れ、化学・食品の顧客が設備投資を止め、海外の機械メーカーが価格を崩す筋書き。10%。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
産業機械(包装機械)
液体充填機・キャッピング機などの包装機械、殺菌装置、FA システム。化学・食品・化粧品・医薬の大手が顧客。受注生産。
| 数量売上の実質指数(2026/03 期=100) | 価格指数 1 点あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.95 | 95 | 15 |
| 10 年後 中立 | 100 | 1.28 | 128 | 17 |
取り方:2026/03 期の産業機械セグメント売上 95.27 億円・利益 15.02 億円(売上 +27.3%)。受注 113.2 億円・受注残 64.3 億円。台数の開示が無く、売上からの推定(実質の指数 100)。
車両関係(自動車販売店)
スバル・ボルボ・ポルシェ・BYD の新車・中古車の販売と整備。静岡県内。
| 数量売上の実質指数(2026/03 期=100) | 価格指数 1 点あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 2.50 | 250 | 4 |
| 10 年後 中立 | 95.0 | 3.34 | 318 | 6 |
取り方:2026/03 期の車両関係セグメント売上 249.59 億円・利益 4.32 億円(売上 +9.5%・利益率 1.7%)。販売台数は開示が無く、売上からの推定。
電機機器
三菱電機の FA 機器、空調・冷凍機器、太陽光発電機器の販売と設置工事。静岡県内。
| 数量売上の実質指数(2026/03 期=100) | 価格指数 1 点あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.87 | 87 | 6 |
| 10 年後 中立 | 100 | 1.17 | 117 | 8 |
取り方:2026/03 期の電機機器セグメント売上 87.07 億円・利益 6.32 億円(売上 +7.5%)。推定。
冷間鍛造・不動産賃貸
自動車・電動工具の冷間鍛造部品の製造と、不動産・駐車場の賃貸。
| 数量売上の実質指数(2026/03 期=100) | 価格指数 1 点あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.17 | 17 | 3 |
| 10 年後 中立 | 90.0 | 0.23 | 21 | 3 |
取り方:冷間鍛造 15.57 億円(利益 1.32)と不動産賃貸 1.45 億円(利益 1.57)の合計 17.0 億円・利益 2.9 億円。推定。
リスクと懸念
自動車販売店の利益率
売上の半分以上を占める車両関係は、利益率が1%台と薄い。仕入先のメーカーの方針、電気自動車の直販、国内の新車販売の減少で、手数料が削られれば、全社の利益がすぐに減る。BYDやポルシェなど新しいブランドは、立ち上げの費用もかかる。
包装機械の受注の波
産業機械は受注生産で、顧客の設備投資の判断に左右される。受注残は64億円と高水準だが、山のあとには谷が来る。会社が今期の営業利益を16億円に減ると予想していることも、その印だ。
三菱電機など仕入先への依存
電機機器は三菱電機の製品、車両関係は各メーカーの車に依存する。代理店契約の見直しや、メーカーの直販拡大で、取り分が縮む恐れがある。有価証券報告書にも、特定メーカーへの仕入依存がリスクとして書かれている。
静岡県への集中と地震
主要な拠点は静岡県に集中する。大規模な地震や自然災害で、販売店と工場が同時に被害を受ければ、売上と資産の双方が傷む。南海トラフの想定地域でもある。
貯まる現金の使われ方
現金は72億円と厚く、配当性向は1割強。投資は店舗の建設や社用車に使われ、収益性が高いとは限らない。投資組合では今期2.9億円の運用損が出た。貯めた資産が帳簿どおりに株主へ届くとは限らない。
知的財産と製品の欠陥
包装機械の特許が侵害されるか、競争力が落ちれば、産業機械の高い利益率は保てない。製品の欠陥やリコールが起きれば、費用がかさむ。
原材料と人件費の上昇
冷間鍛造の金属材料、整備士や営業の人件費は物価とともに上がる。車両関係は価格転嫁が難しく、利益率が下がりやすい。
今後の分かれ目
- 産業機械の受注残が2期続けて減る
- 受注の山が終わったとみて、中立の産業機械の数量を下げる。
- 車両関係の営業利益率が2.5%を超える
- 輸入車ブランドの収益が育ったとみて、強気の筋書きの確率を上げる。
- 配当性向を3割以上に引き上げるか、自社株買いを発表する
- 貯まる現金の戻り方が1.0に近づき、価値が大きく上がる。
- メーカーが電気自動車の直販に切り替える
- 販売店の手数料が崩れ、悲観の確率を上げる。
- 鈴与ホールディングスが持株を売る、または買い増す
- 支配関係の変化で、還元と事業の方針が変わりうる。
- 投資組合の運用損が続く
- 資金の運用方針の甘さが問題となり、貯まる現金の評価を下げる。
見ておくもの
- 産業機械の受注高と受注残
- 車両関係の営業利益率
- 配当性向と自社株買い
- 中期計画(2029/03期)の進捗
- メーカーの直販・代理店契約
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。kは8%で、中立の事業のROEは貯まる現金で薄まって5%前後、PERの上限は1÷k=12.1倍で、その8割強の10倍に置いた。今の株価や同業のPERは使っていない。中立の営業利益率は3.3%で、過去の最高(4.2%)を下回る。本社費は物価で1.34倍にした。余った現金は、月商の0.7か月分の運転資金と有利子負債を除く19億円に分け、戻り方は0.5とした。持ち合い株は配当が純利益に入るので別に足していない。有利子負債にはリース債務が含まれ、新リース会計での形の変化は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→13.3 倍・やや楽観 PER 10.8→12.5 倍・中立 PER 10→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。