結論
守谷輸送機工業は、倉庫や工場で荷物を運ぶ大型エレベーターの専業メーカーだ。作って売るだけでなく、据付後の保守と修理で稼ぐ。2026 年 3 月期の売上は 236 億円、営業利益は 61 億円。保守・修理だけで初めて 100 億円を超えた。
筆者は、今の値段を割高と見る。理由は利益率だ。営業利益率は 5 年前の 12% から 26% へ倍になった。建設の人手が足りず、供給が絞られて値上げが通った面が大きい。会社自身も今期は 25% への低下を見込む。中立ではこれが 22% 台まで戻る。
事業そのものは悪くない。大型の荷物用では国内首位級で、保守の契約は 7,700 台を超え、解約は年 1.4% にとどまる。半導体工場やデータセンター向けの高仕様案件も増えた。自己資本比率は 71% と堅い。
ただし、顧客の 8 割は物流施設で、荷物用の市場自体が小さい。利益が 10 年で 1.5 倍になっても、現金は 300 億円近く積み上がる。支配株主の会社で、これが株主に戻る保証は半分ほどだ。ここが価値を分ける。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「小さくても首位を持つ、保守で稼ぐ地味な機械メーカー」として、好ましい面が多い。納めた設備が毎月の保守になり、解約はほとんどない。ROE は高く、借金もない。
ただし、10 年先の確かさを問われると、答えは分かれる。保守は確かだが、製造・販売は物流施設の建設に連れて波がある。今の営業利益率 26% は、建設の供給が絞られた時期の山で、平均ではない。
オーナー利益は、利益から設備投資を引いた額で、この会社は設備が軽いため、利益のほぼすべてが株主のものになる。ここがいい。一方で、積み上がった現金を株主に戻す姿勢はまだ弱い。支配株主がいて、外部の圧力が利きにくい。
安全域は薄い。中立の筋書きで 10 年後の価値は、今の時価総額を下回る。堀は認める。だが払う値段が、山の利益率を前提にしている点が、評価を下げる。
何で稼ぐ会社か
守谷輸送機工業の主力は、積載が 2 トンを超える荷物用エレベーターだ。フォークリフトが乗り込み、冷凍倉庫の零下でも動く。受注ごとに仕様が違うオーダーメイドだが、図面と部品の標準化で採算を保つ。同社は垂直自動搬送機のマックリフター、船舶用エレベーター、防爆型や電波暗室の扉も手がける。
稼ぎは 2 つある。1 つ目は製造・販売で、売上の 57% にあたる約 135 億円(船舶用を含む)。2026 年 3 月期の着工は過去最高の 460 台、平均単価は 2,300 万円台まで上がった。受注残は 183 億円で、年商の 8 割にあたる。
2 つ目は保守・修理で、約 100 億円。納めたエレベーターを毎月点検し、故障には 24 時間 365 日で対応する。保守台数は 7,727 台。修理の売上が、定期保守を初めて上回った。予防保全の提案が受注につながっている。
顧客の約 8 割は物流施設と倉庫だ。ほかに半導体工場、データセンター、冷凍冷蔵倉庫、造船所がある。船舶用は売上の 1 割弱。国内に宇都宮と本社の工場、2026 年 3 月に芳賀の塗装工場が加わり、600 台の生産体制になった。従業員は約 430 人と小さい。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、小さな市場の首位を保守で固めていることだ。大型の荷物用では国内首位級で、大手の乗用エレベーター各社は荷物用に力を入れていない。据付後の保守は納めた会社が受注しやすく、解約率は 1.4% しかない。売上の 4 割強が、景気に左右されにくい保守・修理だ。
財務も堅い。自己資本比率は 71%、純現金で、ROE は 28% に達している。ただし ROE の高さは、設備投資の軽い組立型の事業と、価格転嫁が通った今の好況の結果だ。10 年の利益率の中央値は 10% 台前半だった。
弱い点は 3 つある。1 つは市場が年 1,300 台ほどと小さいこと。2 つ目は顧客の 8 割が物流施設で、その建設は 1〜2 年の供給調整に入る可能性があること。3 つ目は人手だ。据付の技能者が足りず、受注があっても着工が遅れる。
経営の面では、株式の 3 割超を持つ M2W と社長個人が、事実上の支配株主だ。経営は堅実だが、資本の使い方には外から圧力がかかりにくい。株主から還元不足を指摘されても、CFO は「財務規律を意識して」と答えるにとどまった。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
荷物用エレベーターの市場は、国内で年 1,300 台ほどの新設と、約 4 万 8 千台の保守対象でできている。エレベーター全体の 6% 弱にすぎない。乗用の大手(三菱電機・日立・東芝・オーチス・フジテック)は、荷物用に力を入れていない。専業で首位級の守谷輸送機が、この市場でいちばん大きい。ただ、市場の規模は個人の推計で、公的な統計は確認できていない。
需要の出どころは 3 つ。1 つ目は物流施設の新設と、古いエレベーターの入れ替え。2 つ目は半導体工場、データセンター、冷凍冷蔵倉庫といった高仕様の案件。3 つ目は船舶用で、国内の造船の立て直しが追い風になる。
物流施設は今、供給が過剰気味で、経営陣自身が 1〜2 年は調整が続くと言う。建設費の上昇と人手不足で、着工が遅れる案件も出た。今期の着工は 405 台と、前期の 460 台から減る見通しだ。
価格の面では、2024 年からの資材高と人件費の上昇を、販売価格に転嫁できた。平均単価は 7% 上がっている。ただし荷物用が小さい市場なので、大手が価格で攻めれば崩れやすい。保守は納入済みの台数が土台になるため、比べて安定している。
資本政策と M&A
株主還元は配当が中心で、配当性向の目安を 25% から 30% に引き上げた。中計 MRP2 の 3 年で営業キャッシュフロー 150 億円のうち、100 億円を投資に、50 億円を還元に回す計画だ。投資の内訳は設備 30 億円、研究開発 30 億円、人的資本 20 億円、新市場の開拓 20 億円。
自社株買いは、2024 年 11 月に市場外の立会外取引で行った実績がある。ただ、そのあとは見当たらない。純現金は 43 億円に抑えているが、利益が自己資本に積み上がる速度のほうが速い。
株主は偏っている。M2W が 31%、社長の守谷貞夫氏が 9% を持つ(2026 年 3 月末)。上場時は上位 10 人で 99.7% だった。流通株が少なく、外部からの買収提案が動きにくい構造だ。M&A は、これまで大きな買収をした記録がない。
2026 年 3 月に栃木の芳賀工場を稼働させ、製品開発拠点の用地も取得した。資本は事業の拡張に使い、他社の買収には向かっていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
荷物用エレベーターで国内首位級、大型では 6 割を持つとされる。大手が手を引いたニッチを、冷凍倉庫や半導体工場、データセンターなどの高仕様で押さえた。受注残は 183 億円と年商の 8 割あり、売上が来期以降も見える。保守の台数は毎年 280〜390 台増え、解約率は 1.4% しかない。保守・修理の売上は 100 億円を超え、今期も 17% 増える見通しだ。
営業利益率は 26% まで上がったが、価格転嫁は資材高と人件費を織り込んだもので、一過性ではない。船舶用も造船業の立て直しで伸びる。中計 MRP2 は 3 年後に売上 300 億円、営業利益 75 億円を掲げ、前の中計は目標を大きく上回って達成した。
自己資本比率は 71% と厚く、配当性向を 30% に上げた。還元不足への不満が出ており、さらに自社株買いに動く余地が大きい。市場が小さいぶん競合も少なく、首位を保つ確度は高い。冷凍倉庫や防爆といった過酷な環境向けは、実績のない会社が入りにくい。
慎重な見方
営業利益率 26% は、5 年前の 12% の倍で、過去のどの年より高い。建設の人手が足りず、供給が絞られたことで価格転嫁が通った面が大きい。着工は来期 55 台減る見通しで、受注高も前期から減った。物流施設の供給調整が 1〜2 年で終わる保証はない。
荷物用の市場は年 1,300 台ほどの小さな世界だ。大手が標準機を持ち込めば、価格は崩れやすい。顧客の 8 割が物流施設という偏りもある。従業員は 430 人しかおらず、据付の人手が増えない限り、受注があっても売上にならない。
ROE の 28% は、現金が積み上がるほど下がる。会社は利益の 3 割しか配当に回さず、自己資本比率は 71% まで上がった。支配株主がいるため、外部が還元を迫る力は弱い。保守が稼ぎの柱でも、保守の利益率は開示されておらず、利益の中身が確かめられない。
中計 MRP2 の目標は、売上の伸びが前の中計より低い。会社自身が成長の鈍化を認めているのに、今の値段は高い伸びが続く前提に近い。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は事業の質で勝ち、慎重な見方は利益率の山と資本の使い方で勝った。保守という堅い土台は認めるが、今の利益率は半分戻ると見る。確率は中立を軸に、利益率が戻るやや悲観を、楽観側のやや楽観と同じ厚さに置いた。10 年後の価値は、積み上がる現金のうち戻る保証が半分ほどとみて半分だけ数え、今の時価総額に届かないとみる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,217 円1,135 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 577 円204 億円)。 今の値に割り戻すと 1,883 円664 億円、今との差 −18.0%、 期待の年率 +5.1%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,752 円2,030 億円 | 759 円268 億円 | +183.5% | +11.0% | 651 円230 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,559 円1,609 億円 | 663 円234 億円 | +127.4% | +8.6% | 1,149 円405 億円 |
| 中立 | 33% | 3,694 円1,304 億円 | 589 円208 億円 | +86.5% | +6.4% | 1,413 円499 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,561 円551 億円 | 504 円178 億円 | −10.1% | −1.1% | 454 円160 億円 |
| 悲観 | 13% | 587 円207 億円 | 383 円135 億円 | −57.8% | −8.3% | 126 円44 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,217 円1,135 億円 | 577 円204 億円 | +65.2% | +5.1% | 3,794 円1,339 億円 |
今の株価時価総額 2,297 円811 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 半導体・データセンターと船舶に広がり、保守も厚くなる 利益 95 億円 · PER 20.7 倍 · 株価時価総額 5,752 円2,030 億円
半導体工場とデータセンター、冷凍冷蔵倉庫で高仕様の荷物用エレベーターの引き合いが続き、宇都宮と芳賀の増強も生きる。販売は年 560 台、船舶用も次世代船で伸びる。保守は 1 万 3 千台近くまで積み上がり、売上の半分を占める。
保守は予防保全の提案が定着し、修理の単価も上がる。製造・販売は価格を決める力が保たれ、利益率は 16% に乗る。稼ぎの柱はあくまで保守で、大きな投資は不要なため、利益の多くを株主に戻す余地が生まれる。
それでも自己資本は 3 倍超になり、現金は 300 億円を超えて積み上がる。中計の 30% 目安より厚く戻す前提だが、支配株主の会社で、これが株主に届くかが筆者のいちばん気にする点だ。
- 製造・販売(新設・入替・船舶用ほか):数量 560(年間の販売台数(台))× 価格 0.47(1 台あたり売上(億円、船舶用ほかを含む平均))→ 売上 262 億円・営業利益 42 億円。販売 560 台・利益率 16%
- 保守・修理:数量 12,800(保守契約台数(期末・台))× 価格 0.02(1 台あたり年間売上(億円))→ 売上 266 億円・営業利益 96 億円。保守 12800 台・利益率 36%
倍率:事業の純利益 91 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 38.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 23.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)157 億円。全体の PER 20.67 倍、時価総額 2,030 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体・データセンター・船舶が同時に伸び、生産能力の増強も計画どおり進む必要がある。顧客の 8 割が物流施設という偏りがあるので、確率は低めに置いた。
やや楽観 22% 物流の更新需要と高仕様案件で、台数も単価も伸びる 利益 76 億円 · PER 20.3 倍 · 株価時価総額 4,559 円1,609 億円
物流施設の建設は一服しても、1990 年代以降に入った荷物用エレベーターの入れ替えが進む。販売は年 500 台、価格は物価並みに高仕様の比率の上昇が少し乗る。船舶用と半導体向けが売上を上積みする。
保守は毎年 300 台前後増えて 1 万 2 千台に迫る。解約率は 1% 台と低く、据付後の部品と修理は他社に出にくい。製造・販売の利益率は 14% に下がるが、保守が全体を支え、営業利益は 112 億円に伸びる。
中計 MRP2 の 3 年後(売上 300 億円)を無理なく通過し、その先も物価に少し上乗せする程度で伸びる。会社の優良さは保たれる。全社の ROE は 15% 台、余った現金は 290 億円ほどになる。
- 製造・販売(新設・入替・船舶用ほか):数量 500(年間の販売台数(台))× 価格 0.45(1 台あたり売上(億円、船舶用ほかを含む平均))→ 売上 226 億円・営業利益 32 億円。販売 500 台・利益率 14%
- 保守・修理:数量 11,900(保守契約台数(期末・台))× 価格 0.02(1 台あたり年間売上(億円))→ 売上 232 億円・営業利益 80 億円。保守 11900 台・利益率 34.5%
倍率:事業の純利益 72 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 34.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 21.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)147 億円。全体の PER 20.34 倍、時価総額 1,609 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:倉庫の老朽更新と冷凍冷蔵・高仕様案件の積み上がりが続く筋書き。保守台数が毎年 300 台以上増える実績に近く、会社の中計の延長線上にある。
中立 33% 台数は緩やかに増え、保守が稼ぎの半分を超える 利益 62 億円 · PER 20.0 倍 · 株価時価総額 3,694 円1,304 億円
台数は緩やかに増えて販売は年 450 台、保守は 1 万 1 千台に積み上がる。価格は物価並みで、保守の修理比率の上昇が少し効く。売上は 400 億円、営業利益は 92 億円と、今の約 1.5 倍になる。
利益率は今の 25.7% から 22% 台に戻る。製造・販売は競争と人件費で 12% に下がり、保守は 33% を保つ。保守が稼ぎの 7 割を占める構造に移る。
今の好調は、建設の供給が絞られたことで価格転嫁が通った面がある。中立ではこれが半分戻る。利益が自己資本に積み上がり、全社の ROE は 13% 台に下がるが、事業の力が失われるわけではない。余った現金は 280 億円ほどになる。
- 製造・販売(新設・入替・船舶用ほか):数量 450(年間の販売台数(台))× 価格 0.43(1 台あたり売上(億円、船舶用ほかを含む平均))→ 売上 195 億円・営業利益 23 億円。販売 450 台・利益率 12%
- 保守・修理:数量 11,000(保守契約台数(期末・台))× 価格 0.02(1 台あたり年間売上(億円))→ 売上 207 億円・営業利益 69 億円。保守 11000 台・利益率 33%
倍率:事業の純利益 58 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 32.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 20.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)140 億円。全体の PER 20.03 倍、時価総額 1,304 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計 MRP2 は 3 年後の売上 300 億円と営業利益 75 億円を掲げる。その先は建設の人手不足と物流施設の供給調整で伸びが鈍る。台数は緩やかに増え、保守がけん引するとみた。
やや悲観 22% 物流施設の投資が細り、競争で利益率が戻る 利益 38 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 1,561 円551 億円
物流施設の建設は過剰供給の調整に入り、1〜2 年の回復という会社の見方より長引く。販売は年 380 台に落ち、競争で価格は物価に追いつかない。製造・販売の利益率は 7% に戻る。
保守は据付済みの台数が土台になり、1 万台近くまで増えるが、独立系の保守業者との価格競争で単価が伸びにくい。営業利益は 57 億円、今の 9 割弱の水準にとどまる。
この間も会社は還元を厚くして自己資本の膨らみを抑える。全社の ROE は 10% 台に落ち、資本コストに近づく。大きな赤字は出ない。ただ、成長企業としての評価は消える。
- 製造・販売(新設・入替・船舶用ほか):数量 380(年間の販売台数(台))× 価格 0.40(1 台あたり売上(億円、船舶用ほかを含む平均))→ 売上 154 億円・営業利益 11 億円。販売 380 台・利益率 7%
- 保守・修理:数量 9,800(保守契約台数(期末・台))× 価格 0.02(1 台あたり年間売上(億円))→ 売上 166 億円・営業利益 46 億円。保守 9800 台・利益率 28%
倍率:価格競争で新設の利益率が戻り(または崩れ)、新しい投資で k を超える稼ぎは消えるとみて、価値は稼ぐ力そのもの(事業の純利益÷k=1÷k の 12.5 倍)で測る。成長の上乗せは付けず、12.5 倍に置いた。余った現金 223 億円は戻り方 0.5 で別に足す。
確率:営業利益率 25% は過去の 11〜15% の倍にあたり、価格転嫁と人手不足による絞られた供給が生んだ山の面がある。利益率が戻る可能性は高く、厚めに置いた。
悲観 13% 大手や新規参入に標準機で攻められ、新設が痩せる 利益 15 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 587 円207 億円
荷物用のエレベーターは国内で年約 1,300 台しか動かない小さな市場だ。大手が標準機を持ち込み、中国メーカーも価格を下げて入ってくる。販売は年 280 台、価格は物価に届かず、製造・販売はほぼ利益が出ない。
保守は据付台数がある限り続くが、独立系や大手が部品と保守を取りに来て、単価と台数が伸びない。営業利益は 23 億円、今の 4 割弱に落ちる。
支配株主が資本政策に動かず、自己資本が積み上がるのに還元が遅れると、全社の ROE は 6% まで下がる。稼ぐ力は資本コストに届かず、価値は利益を資本コストで割った額にとどまる。
- 製造・販売(新設・入替・船舶用ほか):数量 280(年間の販売台数(台))× 価格 0.34(1 台あたり売上(億円、船舶用ほかを含む平均))→ 売上 95 億円・営業利益 1 億円。販売 280 台・利益率 1%
- 保守・修理:数量 8,600(保守契約台数(期末・台))× 価格 0.01(1 台あたり年間売上(億円))→ 売上 129 億円・営業利益 22 億円。保守 8600 台・利益率 17%
倍率:価格競争で新設の利益率が崩れ、新しい投資の稼ぎは消えるとみる。ROE は k 以下で PER の上限は 1÷k の 12.5 倍だが、構造的に負ける筋書きなのでやや悲観(12.5 倍)より低く、上限の 8.0 割の 10.0 倍に置いた。成長の上乗せは付けない。余った現金 159 億円は戻り方 0.5 で別に足す。
確率:荷物用の市場は約 1,300 台と小さく、大手が本気で標準機を投入すれば価格が崩れる。単一事業・支配株主・小規模という弱さもあり、悲観を 1 割超に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
製造・販売(新設・入替・船舶用ほか)
荷物用エレベーターの新設・入れ替えと、船舶用エレベーター、垂直搬送機マックリフターなどの製造・据付。
| 数量年間の販売台数(台) | 価格1 台あたり売上(億円、船舶用ほかを含む平均) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 419 | 0.32 | 135 | 25 |
| 10 年後 中立 | 450 | 0.43 | 195 | 23 |
取り方:売上 236 億円から保守・修理の約 100.5 億円を引いた約 135 億円を、販売台数 419 台(今期見通しの 393 台が前期比 26 台減という開示から逆算)で割った平均。会社開示の平均単価は 2,318 万円で、船舶用などが平均を押し上げる。全社の営業利益 60.7 億円のうち保守を 36 億円と仮置きし、残りの 24.7 億円(利益率約 18%)を割り当てた。開示はなく、推定。市場の目安は国内の新設約 1,300 台で、同社の台数は約 3 割に当たる。
保守・修理
納めたエレベーターの定期点検・部品交換・修理・改修。24 時間 365 日の故障対応を含む。
| 数量保守契約台数(期末・台) | 価格1 台あたり年間売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7,727 | 0.01 | 101 | 36 |
| 10 年後 中立 | 11,000 | 0.02 | 207 | 69 |
取り方:保守契約 7,727 台(期末、前期比 282 台増)で、保守・修理の売上約 100.5 億円を割った 1 台あたり約 130 万円。修理が定期保守を上回り始め、単価は上がる方向。利益率 36% は、全社の営業利益から製造・販売の利益率 18% を引いた推定で、開示はない。
リスクと懸念
物流施設の建設が細る
顧客の約 8 割は物流施設・倉庫だ。大型物流施設の供給は調整に入り、今期の着工は 405 台と 55 台減る見通し。経営陣は 1〜2 年での回復を見込むが、供給の過剰が長引けば、新設の台数と価格の両方が落ちる。
利益率が山から戻る
営業利益率は 5 年で 12% から 26% へ倍になった。建設の人手不足で供給が絞られ、価格転嫁が通った面が大きい。会社は今期を 25% と見込むが、人件費や外注費が上がれば、新設の利益率は想定より早く薄れる。
据付の人手が足りない
従業員は約 430 人で、据付を担う技能者の確保が難しい。受注は積み上がっても、着工が遅れれば売上の計上が先に延びる。人件費の上昇は、保守にも波及する。
大手や新規参入の攻め
荷物用は年 1,300 台ほどの小さな市場だ。大手の乗用メーカーが標準機を持ち込み、中国勢が価格を下げて入れば、守谷輸送機の価格を決める力は弱まる。独立系の保守業者も、部品や点検の単価を削る。
支配株主と資本の使い方
M2W と社長の持分は 4 割に近く、上場時は上位 10 人で 99.7% を占めた。外部から還元を迫る力が弱く、現金が積み上がるほど ROE が下がる。M&A の実績もなく、資本の使い道が見えにくい。
単一事業・為替・調達費
荷物用エレベーターという単一事業で、景気の影響が全体に及ぶ。塗料やシンナーなど中東情勢の調達費も上がる。為替は円高が進めば、営業利益が 1 ドル 1 円あたり約 900 万円減る。
今後の分かれ目
- 物流施設の供給調整が 1〜2 年で終わり、着工が 450 台以上に戻ったら
- 中立から楽観の側に確率を寄せる。受注高と受注残で確かめる。
- 半導体工場とデータセンター向けの高仕様案件が、新規受注の半分を超えたら
- 単価と利益率の水準が切り上がっているとみて、やや楽観に寄せる。2,500 万円以上の案件の比率を見る。
- 着工台数が 2 期続けて減り、受注残が年商の 6 割を割ったら
- 利益率の山が過ぎたとして、やや悲観に確率を移す。
- 大手の乗用メーカーが荷物用の標準機を投入したら
- 価格が崩れる筋書きとして悲観の確率を上げる。新設の単価の推移で確認する。
- 配当性向を 30% からさらに引き上げ、自社株買いを行ったら
- 資本の厚みが解消に向かうとして、ROE の下がり方を小さく見る。
- M2W が持ち株を売り出す、または TOB が出たら
- 流通株が増えて資本政策が変わる可能性を見直す。買収の場合は価格が価値の上限になる。
見ておくもの
- 四半期の受注高・受注残・着工台数
- 平均販売単価(2,500 万円以上の案件の比率)
- 保守契約台数と解約率、保守・修理の売上の伸び
- 配当性向(目安 30%)と自社株買いの動き
- 芳賀工場と宇都宮工場の稼働と据付人員の増加
倍率と資本コストの決め方
製造・販売は販売台数 × 平均売上、保守は契約台数 × 1 台あたり売上で、10 年の数量と価格を先に積み上げた。倍率は利益ベースの正当化 PER(RONIC は k を超える分の半分が残る値、k 8.0%、g は 4.0%)を、積み上がる余った現金を除いた事業の ROE で引き、上限の 8〜9 割に楽観〜中立を置いた。やや悲観・悲観は新しい投資の超過利益が消えるとみて 1÷k の 12.5 倍とし、余った現金は戻り方 0.5 で別に足した。今の株価や過去の PER・PBR は倍率の根拠にしていない。保守と製造・販売の利益の内訳は開示がなく、18% と 36% は推定なので、保守が重いほど価値は上がる。工場や拠点は自社保有が中心で、新リース会計基準の影響は小さいとみた。数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 18.6→20.67 倍・やや楽観 PER 17.3→20.34 倍・中立 PER 16→20.03 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality 0.5%=8.0%。内訳と理由は quality_why。