結論
高松機械工業は、石川県白山市で小型の CNC 旋盤を作る工作機械の会社だ。自動車部品の量産ラインに並ぶ、自動で部品を削る機械が主力である。筆者の結論は「やや割高」だ。受注は底を打ったが、稼ぐ力は 2010 年代の半分にも戻っておらず、厚い自己資本に見合う利益の道筋がまだ見えないからだ。
2026 年 3 月期まで 3 期続けて最終赤字だった。国内の中小の部品メーカーが設備投資を控え、中国や台湾の安い旋盤との競争も強まった。会社は 2028 年 3 月期に売上 180 億円、営業利益率 5% 以上を目指すが、その水準でも自己資本利益率は 4% 台にとどまる。
救いは財務の堅さだ。自己資本比率は 8 割近く、純現金が 22 億円ある。配当は利益に関係なく年 1 億円強を払う方針で、赤字の年でも株主への還元は続く。10 年の中立では、売上が 170〜200 億円に戻り、営業利益率は 5〜6% と見る。それでも資本コストには届かない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、わかりやすいが景気に振られすぎる事業だ。工作機械は 10 年後も必要とされるが、作り手が多く、値段で比べられ、顧客の投資の波で売上が大きく揺れる。こういう事業で安全域を取るには、谷の時に払う値段がよほど安くなければならない。
オーナーの目で見ると、自己資本 163 億円は厚いが、そのほとんどが工場と在庫と売掛金で、稼ぐ力は年数億円しかない。良い年でも自己資本利益率は 10% 前後で、悪い年は赤字になる。ならせば資本コストを下回る。
経営は堅実で、借金をせず、赤字でも配当を続ける。それは株主への誠実さだが、資本を減らして効率を上げる動きではない。筆者は、受注の回復は素直に評価するが、今の値段に十分な安全域があるとは見ない。
買うなら、受注の谷が深く、値段が純現金と売れる資産に近づいた時だ。そこまで下がれば、回復の分がそのまま安全域になる。
何で稼ぐ会社か
事業の柱は工作機械で、売上 127 億円のうち 112 億円を占める。主力は小型の CNC 旋盤、つまりコンピューターの指示で金属の丸い部品を削る機械だ。自動車のエンジンや変速機、足回りの部品を量産する工場で、ロボットや搬送装置と組み合わせた自動ラインとして納めることが多い。顧客は自動車関連が半分以上を占める。
販売はディーラーを通す。山下機械とユアサ商事(2026 年 4 月から YUASA)の 2 社で売上の 2 割強になる。海外売上の比率は 3 割強で、アジア向けが伸び、北米と欧州は減った。中国の杭州には持分法の合弁会社がある。
二つ目の事業は IT 関連の製造装置で、売上 13 億円、利益 0.8 億円。電子部品の製造ラインの装置を作る。三つ目は自動車部品の加工で、売上 2 億円に満たない小さな事業だ。2026 年 3 月期の受注は前期より 1 割強増え、受注残も 15% 増えた。売上が受注に追いつけば、赤字からは抜け出せる見込みだ。
売上が受注を後追いするので、受注の動きが半年から 1 年先の業績を示す。
優良さと弱いところ
堀は浅い。小型の CNC 旋盤は、ツガミ、オークマ、DMG 森精機のような大手から台湾・中国のメーカーまで、作り手が多い。高松機械は自動車部品の量産ラインに合わせた専用の仕様と、ロボットを組み込んだ自動化で差をつけてきたが、値段で比べられる場面は多い。
強みは、顧客の工場に合わせて機械とラインを設計する力だ。部品メーカーは一度ラインを組むと、同じ機械を追加で買う傾向がある。しかし自動車の電動化でエンジン回りの部品が減れば、その積み重ねも細る。
資本の効率は低い。過去 10 年の自己資本利益率の中央値は 3.9% で、2019 年 3 月期の 11.8% が最高だ。直近は 3 期続けてマイナスだった。売上原価率は 74% と高く、売上が 150 億円を下回ると利益が出にくい。筆者は、量が戻らなければ利益が戻らない固定費の重さを、この会社のいちばんの弱さと見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
工作機械は受注の山と谷が深い。業種のノートの見方どおり、10 年の中立では業界の受注額は名目で年 3〜5% 伸びる。物価の分を除けば、台数は年 0〜2% の伸びだ。今の山は AI 関連の半導体と電子部品の投資が引っ張っており、自動車と中国向けは弱い。高松機械はその弱い側に軸足がある。
自動車の電動化は逆風だ。エンジンや変速機の部品は減り、それを削る旋盤の需要も細る。一方でモーターの軸や電池の部品、足回りの部品は残り、加工の難しい材料も増える。会社が自動化の提案に力を入れるのは、人手の足りない部品メーカーにとって、無人で回るラインの価値が上がるからだ。
競争では中国と台湾のメーカーの存在が大きい。汎用の小型旋盤は価格で比べられ、日本の中小の部品メーカーも安い機械を選ぶようになった。中国の自給率の上昇は外需の伸びを抑える。為替は 150 円で固定して見るが、円高の局面では輸出の値段の競争力が落ちる。地元の石川県では 2024 年の能登半島地震の影響もあった。
工場の更新の投資は、物価と建築費の上昇で膨らむ。
資本政策と M&A
還元は配当で、1 株あたりの配当に下限を設け(総額で年 1 億円強)、配当性向は 4 割程度を目安にする。赤字の年も配当を続け、総額は年 1 億円強だ。自社株買いの実績は乏しい。
財務は厚い。自己資本は 163 億円、純現金は 22 億円で、借金にはほとんど頼らない。この厚さが 3 期の赤字を耐えさせたが、同時に資本の効率を下げている。
会社は議決権 20% 以上の買付けへの対応を定めており、外からの買収には身構えている。大手の工作機械メーカーやディーラーとの再編の可能性はあるが、自動車向けの小型旋盤という事業の性格から、買い手が高い値段を払う理由は限られる。
純現金の使い道として、自動化の技術の取り込みや海外の販売網の強化はありうるが、具体的な計画は示されていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注はもう底を打った。2026 年 3 月期の受注は 1 割強増え、受注残も 15% 増えた。売上が受注に追いつけば、来期から黒字に戻る。会社の計画どおり 2028 年 3 月期に売上 180 億円、営業利益率 5% なら、営業利益は 9 億円になる。2019 年 3 月期には売上 226 億円で営業利益率 10% を出した実績もある。
人手不足は追い風だ。部品メーカーは人を雇えず、ロボットと組み合わせた無人のラインを求めている。高松機械はこの自動化の提案を得意とする。電動化でも、モーターの軸や足回りの部品の加工は残る。
財務は鉄壁で、自己資本比率は 8 割近い。悪い年でも配当を払い続けられる。2026 年 4 月に営業と生産の本部を作り直し、意思決定も速くなった。景気の谷で値段が下がっている今は、回復を待てる資本の厚さが効く。
純現金も 22 億円あり、自動化の技術を持つ会社の取り込みにも使える。
慎重な見方
計画が実現しても稼ぎは薄い。営業利益率 5% で自己資本利益率は 4% 台、資本コストの半分にも届かない。2019 年 3 月期の好調は自動車と中国の投資の山で、今の環境では戻りにくい。
競争は厳しくなる。中国と台湾の小型旋盤は性能が上がり、値段は大幅に安い。日本の中小の部品メーカーも安い機械を選び始めた。高松機械の売上は 10 年で年 4% ずつ縮んできた。
自動車の電動化も重い。顧客の半分以上が自動車関連で、エンジンと変速機の部品を削る旋盤の需要は細る。2 社のディーラーで売上の 2 割強を占め、売り方の工夫の余地も限られる。売上原価率 74% の重い固定費のもとで、売上が 150 億円を割れば利益は消える。3 期の赤字は一時の不運ではなく、構造の変化の表れだ。
赤字の年も配当の下限を払えば、その分だけ現金は細る。財務の厚さも、無限に続く盾ではない。受注の回復も業界の山に乗った面が大きい。
どちらに重みを置いたか
受注の回復は事実で、黒字に戻る道筋は見える。ただ回復しても資本コストに届かないという指摘は、過去 10 年の実績が裏付ける。確率は中立を厚くし、悲観の深さは赤字が続いた 3 期と 2010 年 3 月期の谷を踏まえて置いた。やや悲観を楽観側とほぼ同じ厚さにした。計画の数字は中立の筋に織り込み、それを超える回復は楽観の側にだけ置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 833 円90 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 136 円15 億円)。 今の値に割り戻すと 449 円49 億円、今との差 −21.0%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 8.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,782 円193 億円 | 272 円29 億円 | +261.0% | +13.7% | 205 円22 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,243 円134 億円 | 178 円19 億円 | +149.6% | +9.6% | 284 円31 億円 |
| 中立 | 36% | 907 円98 億円 | 118 円13 億円 | +80.2% | +6.1% | 369 円40 億円 |
| やや悲観 | 22% | 239 円26 億円 | 100 円11 億円 | −40.5% | −5.1% | 74 円8 億円 |
| 悲観 | 12% | 226 円24 億円 | 74 円8 億円 | −47.3% | −6.2% | 36 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 833 円90 億円 | 136 円15 億円 | +70.3% | +5.5% | 969 円105 億円 |
今の株価時価総額 569 円62 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 自動化の波で2019年並みの稼ぎに戻る 利益 16 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,782 円193 億円
部品メーカーの人手不足が深まり、ロボットと組み合わせた無人のラインの注文が増える。電動車のモーターの軸や足回りの部品の加工でも採用が進み、出荷台数は 10 年で 45% 増える。アジア向けが伸び、北米も戻る。
値段は物価並みに上がり、自動化の付帯で 1 台あたりの売上も膨らむ。工場の稼働が上がって固定費が薄まり、営業利益率は 9% と 2019 年 3 月期に近い水準に戻る。
IT 関連の装置も電子部品の投資で伸びる。純利益は 13 億円前後になり、自己資本利益率は 6% 台に上がる。それでも資本コストには届かない。配当は性向 4 割で増える。
- 工作機械(CNC旋盤):数量 1,305(CNC旋盤の出荷台数(台・推定、保守の売上は台数に付随))× 価格 0.17(1台あたりの売上(億円、保守・部品を含む))→ 売上 218 億円・営業利益 20 億円。数量1.45倍・価格1.34倍
- IT関連製造装置:数量 160(出荷量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.18(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 3 億円。数量1.60倍・価格1.34倍
- 自動車部品加工:数量 100(加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.02(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量1.00倍・価格1.34倍
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 193 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手不足による自動ライン需要とアジアの伸びで、2019年3月期の利益率近くに戻る筋。過去に実績はあるが、当時は自動車と中国の山だったので低めに置く。
やや楽観 20% 計画を達成し、利益率7%を保つ 利益 11 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 1,243 円134 億円
受注の回復が続き、出荷台数は 10 年で 3 割増える。会社の中期計画の売上 180 億円を通過点に、2030 年代に 200 億円近くまで伸びる。営業と生産の本部を作り直した効果で、原価率も下がる。
値段は物価にやや届かない程度に上がり、営業利益率は 7% と計画を上回る。IT 関連の装置も新しい顧客を取り、利益に上乗せする。
純利益は 10 億円弱になり、配当は性向 4 割で増える。純現金は積み上がるが、大きな使い道はない。自己資本利益率は 5% 前後だ。
自動化の提案が受注の柱になり、ディーラーへの依存も少し下がる。
- 工作機械(CNC旋盤):数量 1,170(CNC旋盤の出荷台数(台・推定、保守の売上は台数に付随))× 価格 0.16(1台あたりの売上(億円、保守・部品を含む))→ 売上 192 億円・営業利益 13 億円。数量1.30倍・価格1.32倍
- IT関連製造装置:数量 140(出荷量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.18(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 2 億円。数量1.40倍・価格1.32倍
- 自動車部品加工:数量 100(加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.02(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量1.00倍・価格1.32倍
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 134 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画(売上180億円・営業利益率5%以上)を少し上回る水準で定着する筋。受注が1割強増え、受注残も積み上がった実績から、中立に次いで置く。
中立 36% 計画並みに戻るが、資本コストには届かない 利益 8 億円 · PER 11.4 倍 · 株価時価総額 907 円98 億円
工作機械の受注は業界とともに戻るが、自動車向けの電動化と中国・台湾の安い旋盤に押され、出荷台数は 10 年で 2 割増にとどまる。今が谷の底に近いので、増える分の多くは回復だ。
値段は物価にやや届かず、自動化の提案で何とか単価を保つ。営業利益率は 5.5% と、会社の計画の水準に落ち着く。物価で人件費と部材が上がる中、古い工場の償却は取得した時の値段のまま残るので、会計の利益は見かけ上ふくらむ。
純利益は 8 億円前後、自己資本利益率は 4% 台だ。配当は性向 4 割で続く。
純現金は配当と設備の更新に回り、大きな買収や自社株買いはない。
- 工作機械(CNC旋盤):数量 1,080(CNC旋盤の出荷台数(台・推定、保守の売上は台数に付随))× 価格 0.16(1台あたりの売上(億円、保守・部品を含む))→ 売上 175 億円・営業利益 10 億円。数量1.20倍・価格1.30倍
- IT関連製造装置:数量 120(出荷量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.17(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。数量1.20倍・価格1.30倍
- 自動車部品加工:数量 100(加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.02(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量1.00倍・価格1.30倍
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 8.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)8 億円。全体の PER 11.43 倍、時価総額 98 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種のノートの受注額の伸び(名目年3〜5%)に、電動化の逆風と中国・台湾との競争を差し引いた筋。計画の利益率5%前後に戻るとみて最も厚く置く。
やや悲観 22% 回復が鈍く、利益は薄いまま 利益 3 億円 · PER 7.0 倍 · 株価時価総額 239 円26 億円
電動化で自動車部品の旋盤の需要が細り、台湾・中国の旋盤が国内の中小の部品メーカーにも入り込む。出荷台数は今と同じ水準にとどまる。
値段は物価の 9 割ほどしか上がらず、売上は 140 億円台。原価率の高さが続き、営業利益率は 2.5% と薄い。
純利益は 2〜3 億円で、配当は下限の年 1 億円強を払い続ける。その分だけ現金は細る。自己資本利益率は 1〜2% で、資本は稼がないまま眠る。
赤字と黒字を行き来する年が続き、計画の数字は見直される。工場の稼働を保つため、値段を下げて量を取りに行く場面も増える。
- 工作機械(CNC旋盤):数量 900(CNC旋盤の出荷台数(台・推定、保守の売上は台数に付随))× 価格 0.16(1台あたりの売上(億円、保守・部品を含む))→ 売上 140 億円・営業利益 4 億円。数量1.00倍・価格1.25倍
- IT関連製造装置:数量 100(出荷量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.17(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。数量1.00倍・価格1.25倍
- 自動車部品加工:数量 90.0(加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.02(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量0.90倍・価格1.25倍
倍率:ROE 1.9%。稼ぐ力(純利益÷k≒32億円)で測り、利益がさらに縮む恐れと配当の下限で現金が細ることを見て1÷kの65%の7倍。余った現金は0.75倍の7.5億円、戻り方0.75で足した。今の自己資本に対するPBRは0.16倍と低いが、純現金22億円×戻り方0.75(約16.5億円)は上回る。自己資本の多くは稼がない工場と在庫のため。
確率:受注の回復が一時で終わり、売上が今の水準近くにとどまる筋。過去10年で売上が年4%ずつ縮んだ実績から、楽観側とほぼ同じ厚さを置く。
悲観 12% 汎用機の価格競争に負け、赤字が定着 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 226 円24 億円
中国と台湾のメーカーが自動ラインまで含めて安く提案し、国内の部品メーカーの注文も奪われる。電動化でエンジン回りの部品の加工が減り、出荷台数は 10 年で 2 割減る。
値段は物価に追いつかず、工場の稼働は落ちる。営業損失が年 3 億円ほど続き、人の整理と工場の縮小に追い込まれる。
配当は下限を守れず、細く払うだけになる。財務の厚さで存続はするが、少数株主に残るのは現金と売れる資産の一部だけだ。
買い手も、赤字の旋盤メーカーには高い値段をつけない。再編の相手を探しても条件は厳しい。
純現金は数年の赤字と配当で減っていく。
- 工作機械(CNC旋盤):数量 720(CNC旋盤の出荷台数(台・推定、保守の売上は台数に付随))× 価格 0.15(1台あたりの売上(億円、保守・部品を含む))→ 売上 108 億円・営業利益 −3 億円。数量0.80倍・価格1.20倍
- IT関連製造装置:数量 80.0(出荷量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.16(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 13 億円・営業利益 −1 億円。数量0.80倍・価格1.20倍
- 自動車部品加工:数量 80.0(加工量の指数(2026/03期=100、推定))× 価格 0.02(指数1あたりの売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。数量0.80倍・価格1.20倍
倍率:赤字なのでPBR。今の自己資本163億円に0.15倍を掛けた。床は純現金22億円×戻り方0.75と、杭州の合弁の持分など売れる資産の一部(floor_assets_oku)。帳簿の自己資本は床にしない。
確率:中国・台湾の旋盤に量産ラインでも置き換えられ、自動車向けが大きく減る構造的な負け筋。3期続いた赤字と2010年3月期の谷を見て、1割強を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
工作機械(CNC旋盤)
小型CNC旋盤と、ロボットを組み込んだ自動ラインの製造・販売・保守。
| 数量CNC旋盤の出荷台数(台・推定、保守の売上は台数に付随) | 価格1台あたりの売上(億円、保守・部品を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 900 | 0.12 | 112 | −2 |
| 10 年後 中立 | 1,080 | 0.16 | 175 | 10 |
取り方:台数の開示がないため、工作機械の売上112.15億円を、小型CNC旋盤と自動化の付帯を含む1台あたり約1,250万円(推定)で割り、年約900台とした。
IT関連製造装置
電子部品の製造ラインで使う装置。
| 数量出荷量の指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.13 | 13 | 1 |
| 10 年後 中立 | 120 | 0.17 | 21 | 1 |
取り方:売上13.38億円を100とした出荷量の指数(推定)。台数の開示がないため。
自動車部品加工
自動車部品の受託加工。
| 数量加工量の指数(2026/03期=100、推定) | 価格指数1あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.02 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 100 | 0.02 | 2 | 0 |
取り方:売上1.68億円を100とした加工量の指数(推定)。
リスクと懸念
設備投資の波
工作機械は顧客の投資の判断で受注が大きく振れる。2010年3月期は営業利益率−39%、直近も3期赤字。国内の中小の部品メーカーが投資を控えると、売上がすぐに落ちる。
自動車の電動化
顧客の半分以上が自動車関連で、エンジンや変速機の部品を削る旋盤が主力。電気自動車では部品の数が減り、旋盤の需要も細る。
中国・台湾との価格競争
小型CNC旋盤は作り手が多く、中国・台湾のメーカーの性能向上と安値が、国内外のシェアを削る。自給率の上昇で中国向けも伸びにくい。
ディーラーへの依存
山下機械とYUASAの2社で売上の2割強。代金の回収や、ディーラーが競合の機械を勧めることが受注に響く。
固定費の重さ
売上原価率は74%と高く、売上が150億円を下回ると利益が出にくい。物価と賃金の上昇で固定費はさらに膨らむ。
今後の分かれ目
- 2年続けて営業利益率5%を超える
- 計画どおりの回復で、中立からやや楽観の筋に寄る。
- 自動ライン(ロボット連携)の受注比率が上がる
- 1台あたりの売上と利益率が上がり、価格競争から一歩抜け出せる。
- 受注が再び減り、4期目の赤字になる
- やや悲観の筋に寄り、配当の下限も重くなる。
- 自社株買いで資本を減らす
- 利益が同じでも自己資本利益率が上がり、余った現金の戻り方も高く見られる。
- 大手の工作機械メーカーやディーラーと提携・再編する
- 販売網と調達で規模の不利が和らぐ。条件しだいで資産の価値が表に出る。
見ておくもの
- 工作機械の受注高と受注残
- 連結の営業利益率
- 外需(アジア・北米)の売上
- 日本工作機械工業会の受注総額
- 配当と自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
数量はCNC旋盤の出荷台数(売上と1台あたりの推定から約900台)に業界の受注額の伸び(名目年3〜5%、物価を除いて台数年0〜2%)と電動化の逆風を当てた。ROEは全筋書きで資本コスト8.75%を下回るので、PERは1÷kを上限に割り引き、赤字の悲観は今の自己資本×PBR(純現金と売れる資産の床)で置いた。PBR 0.4倍弱という今の値付けや過去の倍率は使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.43 倍・やや楽観 PER 9→11.43 倍・中立 PER 8→11.43 倍)。
資本コスト 8.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にquality+1.75%で9.25%。3期赤字だが財務は厚く存続に疑いはないので、事業が傾いた会社の上乗せはしない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.75%。