結論
大豊工業はトヨタ系の自動車部品会社だ。エンジンの回転軸を支えるすべり軸受で世界シェア約 2 割を持つ。ほかにバルブ機構部品、アルミダイカスト、ガスケット、生産設備を手がける。
筆者の結論は「やや割高」だ。最大の理由は、売上 1,200 億円に対して利益が薄すぎることにある。直近の営業利益率は 2% 台で、過去 12 年の最高でも 6% 台だ。10 年後の中立の ROE は 4% 台にとどまり、資本コストの 9% に届かない。
会社は 2027 年に営業利益 50 億円を掲げ、改善策を 1 つずつ金額で示している。筆者はその多くを実現すると見る。ただ、前の計画 VISION2025 は未達だった。電動化部品は先行投資が先で、ダイカストでは 92 億円の減損を出したばかりだ。
株価が純資産の半分ほどに見えても、割安とは言えない。資本コストを稼げない会社の純資産は、帳簿の額面では評価できないからだ。確率で重みをつけた本質価値は、今の時価総額を 3 割近く下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で最初に見るのは、事業が 10 年後も続くか、そして株主に残る利益がいくらかだ。当社の軸受は 10 年後も存在するが、成長はしない。減価償却は年 70 億円ほどで、設備投資は会社計画で年 50 億円程度に抑える。このため現金は残りやすいが、それは設備が古くなることの裏返しでもある。
堀が狭く、値決め力が弱い事業では、市場の予想より安くても買う理由にならない。必要なのは、普通の年の利益に対して十分な安全域があることだ。当社の場合、普通の年とは営業利益 40 億円台、純利益 35 億円ほどの水準だろう。今の時価総額はこの水準の約 9 倍で、一見安い。
しかし 10 年先の利益が名目でほとんど増えないなら、資本コスト 9% には足りない。経営陣の資本配分は評価が割れる。ダイカストへの大型投資は失敗に近く、92 億円の減損を出した。一方で、構造改革の項目を金額で出し、政策保有株を売り、DOE を引き上げる方向は正しい。
筆者は、会社の改善を半分は信じる。信じた分だけでは、今の値段に十分な安全域はないと見る。
何で稼ぐ会社か
売上の約 4 割は軸受だ。自動車のエンジン用すべり軸受(メタル)が中心で、エアコン用コンプレッサー向けも増えている。ブシュ(筒状の軸受)や補修用部品もここに入る。
残りの柱は 3 つある。VVT(バルブの開閉時期を変える装置)やバキュームポンプなどのシステム製品が 2 割弱。日本ガスケットが担うエンジン用のシール部品が 15%。アルミダイカストが 1 割強だ。ダイカストはハイブリッド車や電気自動車の部品が伸びている。
別枠で、大豊精機などが自動車工場向けの生産設備と金型を作る。売上は 130 億円ほどで、電池の搬送設備へ軸足を移している。
顧客はトヨタグループが中心で、筆頭株主のトヨタ自動車が 3 割強を持つ。工場は日本のほか北米、欧州、中国、インドネシア、韓国にある。
稼ぎ方は単純で、車が 1 台できるたびに部品代が入る。売上は世界の車の生産台数と、1 台あたりの部品の搭載額で決まる。2026 年 3 月期の営業利益は 26 億円で、売上の 2% だった。
研究開発は材料、表面処理、異種金属の接合、鍛造、ダイカストの技術を軸に進める。この組み合わせが、軸受以外の電動化部品へ広げるときの土台になる。
優良さと弱いところ
技術の核は、摩擦と摩耗を扱うトライボロジーだ。素材の配合、樹脂コーティング、精密な加工を組み合わせ、エンジンの心臓部が焼き付かないようにする。完成車メーカーは軸受を一度採用すると簡単に替えない。この関係の長さは強みだ。
ただ、堀(他社がまねできない強み)は広くない。軸受は完成車メーカーに値段を決められる部品で、毎年の原価低減要請が続く。世界首位の大同メタル工業は自動車エンジン用で約 4 割のシェアを持ち、当社の約 2 割の倍の規模だ。
経営の弱点は資本の使い方にある。2019 年から 2024 年にかけてダイカストへ大きく投資したが、売上と生産技術が追いつかず、利益が出ない状態が続いた。ブシュは投資を絞った結果、人手頼みの生産でロスが増えた。会社自身が「稼ぐ力が低調」と認めている。
救いは財務と株主だ。自己資本比率は 55% あり、トヨタという大株主が事業を支える。利益率が 6% を超えた年は過去 12 年に一度もない。堀の弱い会社として見るのが妥当だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
エンジン軸受の世界市場は 1,900 億円ほどと推定する。大同メタル工業の自動車用エンジン軸受売上(721 億円、2025 年 3 月期)を、同社の推定シェア 38% で割った。市場は小さく、首位が約 4 割、当社が約 2 割を握る寡占だ。欧州のミバやマーレなども競合にいる。
問題は電動化だ。電気自動車にはエンジンがなく、主軸受も要らない。ただし会社の見立てでは、ハイブリッド車とプラグインハイブリッド車を含めたエンジン搭載車は、2030 年に向けて小幅にしか減らない。世界の生産が 9,500 万台から 1 億 300 万台へ増えるなか、搭載車は約 74% を保つ。
筆者はこの見立てを少し甘いと見る。中国では電気自動車が急速に市場を取り、日本車の中国生産が細っているからだ。10 年先は、エンジン車が今より 7% ほど減る程度を中立とする。
もう一つの変化は、軸受以外の部品の置き換えだ。電気自動車では冷却器、電池部品、バスバー(電気の通り道になる金属板)、大型のダイカスト部品が増える。当社は豊田市に実証ラインを置き、2026 年から 2027 年の量産を目指す。ここが取れるかが、10 年後の姿を決める。
大同メタルが船舶や発電機などの産業向けへ軸足を移すのは、主力のエンジン用に先がないと見ているからだ。
資本政策と M&A
還元の方針は、2027 年 3 月期までが配当性向 3 割程度と純資産配当率(DOE)1.0〜1.5%、その後は 2030 年にかけて DOE 1.5〜3.0% だ。足りない分は機動的な自社株買いで補う。利益が出ない年も配当を続ける姿勢は、株主には心強い。
資産の圧縮にも動いている。2026 年 2 月、保有する豊田自動織機の 8 万 1,500 株をすべて TOB に応募し、16.6 億円の売却益を得た。会社は政策保有株をさらに 10 億円ほど減らす計画だ。在庫も同程度減らし、総資産の 5% を圧縮する。
借金は 1 年内に返す分が 154 億円あり、借り換えの時期が近い。純有利子負債は 52 億円で、利払いは営業利益の 16 倍で払える。大きな問題ではないが、金利は上がる。
M&A は買う側としては小さく、再編の話題は親のトヨタ側から来ると筆者は見る。トヨタグループは豊田自動織機の非公開化に続き、系列の整理を進めている。当社が統合の対象になる可能性は、確率の中に少し入れた。
10 年の還元は、中立で純利益の合計の約 4 割強、185 億円とした。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
電動化への切り替えが想定より遅く、ハイブリッド車が主役の時代が長く続く。ハイブリッド車はエンジンが小さく、なおかつ頻繁に止まり、再始動するため、すべり軸受への負荷は逆に大きくなる。当社は軸受の技術で、そうした厳しい使い方に合う品種を持つ。エンジン搭載車の生産は 2030 年まで横ばいから微増という会社の見立てが、そのまま続く。
ダイカストは、減損で重荷だった償却が軽くなる。ハイブリッド車の変速機まわり、冷却部品、電池ケースなど電動化対応品の売上は拡大しており、会社の 2030 年計画は新事業で売上 250 億円を描く。パワー半導体の冷却器と電極端子は、車載モジュールとして顧客と共同開発に入った。
構造改革は積み上げ式で、1 件ごとに金額と責任の所在がある。生産ラインの稼働率向上で年 2 億円、DX で年 4 億円、事業再編で年 2 億円といった具合で、実行は読みやすい。2027 年の営業利益 50 億円は、保守的な目標だ。
トヨタが大株主なので、倒産の心配も、不意の重い増資もない。株価の低さは、利益率が戻れば解消に向かう。
慎重な見方
エンジン軸受は、数量が減り、値段も下げられる事業だ。トヨタの電動化比率が想定より早く上がれば、搭載車の生産は 10 年で 2 割以上減る。ハイブリッド車の台数が増えても、1 台あたりの部品点数は電気自動車へ向かうほど減る。大同メタルが産業用へ逃げているのは、主力の自動車用に先が短いと見ているからだ。
当社には逃げ先がまだない。電動化部品は実証の段階で、売上は 2030 年の目標の 250 億円に遠い。ダイカストは受注の減少で 92 億円の減損を出した。その前の年も減損を出しており、投資が回収できないことが 2 年連続で続いた。VISION2025 の目標は営業利益率 6% だったが、実績は 0.5% で、計画を信じる根拠は薄い。
会社は 2027 年に営業利益 50 億円を目指すが、内訳の 34 億円は収益改善の積み上げで、売上の 3% 分に相当する。原材料高と賃上げが続く中で達成できた前例はない。
株価が純資産を大きく下回るのには理由がある。ROE が資本コストを下回る会社の純資産は、帳簿通りの価値がない。利益率の低さとトヨタへの依存を考えれば、今の値段はすでに会社の改善をかなり織り込んでいる。
どちらに重みを置いたか
改善策の具体性は強気の見方が優勢だが、「稼ぐ力が資本コストに届かない」という指摘は動かせない。中立の筋書きでも ROE は 4% 台で、資本コストの 9% を下回る。したがって純資産の厚さは評価の支えにならず、10 年後の価値は今の時価総額の 7 割強にとどまった。確率は中立を最大としつつ、電動化の逆風が構造的である点を重く見て、慎重な側にやや寄せた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,309 円372 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 567 円161 億円)。 今の値に割り戻すと 922 円262 億円、今との差 −18.7%、 期待の年率 +5.2%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,329 円662 億円 | 985 円280 億円 | +192.2% | +11.3% | 232 円66 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,934 円550 億円 | 791 円225 億円 | +140.3% | +9.2% | 491 円139 億円 |
| 中立 | 37% | 1,571 円447 億円 | 651 円185 億円 | +95.9% | +7.0% | 822 円234 億円 |
| やや悲観 | 25% | 630 円179 億円 | 387 円110 億円 | −10.4% | −1.1% | 254 円72 億円 |
| 悲観 | 13% | 457 円130 億円 | 141 円40 億円 | −47.3% | −6.2% | 78 円22 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,309 円372 億円 | 567 円161 億円 | +65.4% | +5.2% | 1,876 円533 億円 |
今の株価時価総額 1,134 円322 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 電動化部品が育ち、収益体質が定着 利益 60 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,329 円662 億円
世界のエンジン搭載車は 10 年でほとんど減らず、ハイブリッド車が主役の時代が続く。当社は軸受のシェア 2 割を守り、トヨタ向けの値上げ転嫁もほぼ物価並みに通る。
ダイカストは電動化対応品が軌道に乗り、電池ケース、冷却器、電極端子が量産に入る。減損で軽くなった償却と合わさり、事業の赤字が止まる。会社が掲げた新事業の売上 250 億円を、2036 年には超える。
営業利益率は 6.0% に届く。過去 12 年の最高である 6.2% に近い水準で、2030 年の会社目標とも重なる。株主還元は配当の引き上げと自社株買いが続く。トヨタ系の他の部品会社との協業も効く。
- 軸受(ブシュ・組付等を含む):数量 13.6(世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社軸受の採用率(台数相当))× 価格 4,921(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 671 億円・営業利益 44 億円。軸受:数量 0.96 倍 × 価格 1.34 倍、営業利益率 6.6%
- システム製品:数量 7.1(世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社採用率(台数相当))× 価格 4,201(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 298 億円・営業利益 17 億円。システム製品:数量 1.00 倍 × 価格 1.34 倍、営業利益率 5.6%
- ダイカスト製品:数量 3.9(電動化対応のダイカスト部品が載る車の台数相当(百万台))× 価格 7,935(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 310 億円・営業利益 19 億円。ダイカスト:数量 1.70 倍 × 価格 1.34 倍、営業利益率 6.2%
- ガスケット製品:数量 5.8(世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社採用率(台数相当))× 価格 4,029(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 235 億円・営業利益 13 億円。ガスケット:数量 0.97 倍 × 価格 1.34 倍、営業利益率 5.6%
- 自動車製造用設備ほか:数量 110(設備・金型の受注件数(件・年、推定))× 価格 1.78(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 196 億円・営業利益 10 億円。設備:数量 1.10 倍 × 価格 1.34 倍、営業利益率 5.3%
倍率:事業の純利益 60 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 662 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電動化が遅く、新事業が計画通り育ち、構造改革も満額に近く進む。3 つがそろう必要があり、前計画の未達を考えれば 1 割に満たない。
やや楽観 18% 計画に近い改善が進む 利益 50 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,934 円550 億円
世界のエンジン搭載車は 7% ほど減るが、ハイブリッド車の増加が穴を埋める。軸受は電動化部品のぶん数量の落ち込みが小さい。ダイカストは売上が 1.5 倍になり、採算も 5% 近くまで戻る。
構造改革は計画の 8 割ほどが進み、営業利益率は 5.4% まで上がる。値決めは物価の伸びを少し下回るが、生産性の向上でほぼ補う。
新事業は売上 150 億円規模にとどまり、会社の 2030 年計画には届かない。それでも、利益の質が改善して、配当は DOE 3% に近づく。大同メタルとの差は縮まらないが、海外の補修用部品とコンプレッサー向け軸受が安定した収益を支える。トヨタ以外の顧客も徐々に増える。
- 軸受(ブシュ・組付等を含む):数量 13.2(世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社軸受の採用率(台数相当))× 価格 4,811(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 636 億円・営業利益 38 億円。軸受:数量 0.93 倍 × 価格 1.31 倍、営業利益率 6.0%
- システム製品:数量 6.8(世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社採用率(台数相当))× 価格 4,076(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 278 億円・営業利益 15 億円。システム製品:数量 0.96 倍 × 価格 1.30 倍、営業利益率 5.2%
- ダイカスト製品:数量 3.5(電動化対応のダイカスト部品が載る車の台数相当(百万台))× 価格 7,817(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 270 億円・営業利益 13 億円。ダイカスト:数量 1.50 倍 × 価格 1.32 倍、営業利益率 4.8%
- ガスケット製品:数量 5.6(世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社採用率(台数相当))× 価格 3,909(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 221 億円・営業利益 12 億円。ガスケット:数量 0.94 倍 × 価格 1.30 倍、営業利益率 5.2%
- 自動車製造用設備ほか:数量 105(設備・金型の受注件数(件・年、推定))× 価格 1.78(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 187 億円・営業利益 9 億円。設備:数量 1.05 倍 × 価格 1.34 倍、営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 50 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.8% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 550 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:構造改革が計画の大半で進み、ハイブリッド車が中心の時代が続く筋書き。会社計画に近いが、前計画の未達があるため中立より低く置く。
中立 37% エンジン車はゆっくり減り、利益は小幅に戻る 利益 40 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,571 円447 億円
世界のエンジン搭載車は 10 年で 7% ほど減る。当社の軸受のシェアも 19% 台へわずかに下がる。コンプレッサー向けは残り、補修用部品は海外で堅調なため、軸受の数量は 1 割減にとどまる。
価格は物価の伸びを少し下回る。毎年の原価低減要請があるためで、10 年で 1.28 倍に置いた。ダイカストは電動化対応品で数量が 1.35 倍になるが、利益率は 3% 台で低い。
営業利益率は 4.7% で、会社の 2027 年目標 4.3% と 2030 年目標 6% の間に収まる。ROE は 4% 台に戻るが、資本コストには届かない。減損後の身軽な体質で赤字は出ないものの、成長の物語もない 10 年になる。
- 軸受(ブシュ・組付等を含む):数量 12.8(世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社軸受の採用率(台数相当))× 価格 4,701(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 601 億円・営業利益 33 億円。軸受:数量 0.90 倍 × 価格 1.28 倍、営業利益率 5.5%
- システム製品:数量 6.5(世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社採用率(台数相当))× 価格 3,950(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 258 億円・営業利益 12 億円。システム製品:数量 0.92 倍 × 価格 1.26 倍、営業利益率 4.5%
- ダイカスト製品:数量 3.1(電動化対応のダイカスト部品が載る車の台数相当(百万台))× 価格 7,698(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 239 億円・営業利益 8 億円。ダイカスト:数量 1.35 倍 × 価格 1.30 倍、営業利益率 3.5%
- ガスケット製品:数量 5.4(世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社採用率(台数相当))× 価格 3,788(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 205 億円・営業利益 9 億円。ガスケット:数量 0.90 倍 × 価格 1.26 倍、営業利益率 4.5%
- 自動車製造用設備ほか:数量 100(設備・金型の受注件数(件・年、推定))× 価格 1.78(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 178 億円・営業利益 8 億円。設備:数量 1.00 倍 × 価格 1.34 倍、営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 447 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:エンジン搭載車の小幅な減少と、改善の一部実現を組み合わせた中心の筋書き。最も起こりやすい。
やや悲観 25% 電動化と値下げ要請で数量と利益率が細る 利益 17 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 630 円179 億円
電動化が計画より早く進み、エンジン搭載車の生産は 10 年で 2 割ほど減る。中国の部品メーカーも低価格の軸受で食い込み、当社のシェアは 18% 台まで下がる。
値下げ要請は厳しく、価格は 10 年で 1.2 倍台にとどまる。原材料と賃金の上昇を吸収しきれず、営業利益率は 2.5% に沈む。ダイカストは数量が増えても採算が出ない。
構造改革は一部しか実現しない。ただし事業は黒字を保ち、配当は当面維持する。トヨタの支えがあるので存続の心配はなく、利益の水準は今と同じ程度の低さで、10 年が過ぎる。
- 軸受(ブシュ・組付等を含む):数量 11.1(世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社軸受の採用率(台数相当))× 価格 4,480(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 496 億円・営業利益 15 億円。軸受:数量 0.78 倍 × 価格 1.22 倍、営業利益率 3.0%
- システム製品:数量 5.3(世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社採用率(台数相当))× 価格 3,762(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 200 億円・営業利益 5 億円。システム製品:数量 0.75 倍 × 価格 1.20 倍、営業利益率 2.5%
- ダイカスト製品:数量 2.5(電動化対応のダイカスト部品が載る車の台数相当(百万台))× 価格 7,402(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 187 億円・営業利益 2 億円。ダイカスト:数量 1.10 倍 × 価格 1.25 倍、営業利益率 1.0%
- ガスケット製品:数量 4.7(世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社採用率(台数相当))× 価格 3,608(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 169 億円・営業利益 5 億円。ガスケット:数量 0.78 倍 × 価格 1.20 倍、営業利益率 3.0%
- 自動車製造用設備ほか:数量 85.0(設備・金型の受注件数(件・年、推定))× 価格 1.73(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 147 億円・営業利益 4 億円。設備:数量 0.85 倍 × 価格 1.30 倍、営業利益率 3.0%
倍率:ROE 2.2% は k 9.0% を大きく下回る。構造的に負けた事業なので、上限 1÷k=11.1 倍の 7.2 割の 8.0 倍に置いた。PBR は 0.18 倍と低いが、簿価の大半は使えば減る設備で、売れる資産の税後(土地と有価証券で約 160 億円)に近い水準に収まる。
確率:電動化の加速と原価低減要請で利益率が低いまま続く。ダイカストの減損や直近の赤字の連続から、強気側よりも重く見る。
悲観 13% 構造的に負け、事業が痩せる 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 457 円130 億円
電動化とトヨタの調達見直しで、エンジン関連部品は数量が半分近くに減る。軸受のシェアは中国勢の台頭と大同メタルの攻勢で 15% を割り、価格も 1 割しか上がらない。
ダイカストは電動化対応品が思うように採用されず、再び大きな減損を出す。新事業は育たない。固定費の重さで営業利益はほぼゼロとなり、赤字の年も出る。
資産の売却と生産拠点の統合で事業を縮める。土地と有価証券を売れば、一定の価値は残る。しかし稼ぐ力はなく、株主には資産の切り売りが中心の 10 年になる。トヨタが引き取りに動く可能性は残るが、買い取りの価格は純資産の割引で決まり、株主への見返りは小さい。
- 軸受(ブシュ・組付等を含む):数量 7.8(世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社軸受の採用率(台数相当))× 価格 4,040(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 316 億円・営業利益 2 億円。軸受:数量 0.55 倍 × 価格 1.10 倍、営業利益率 0.5%
- システム製品:数量 3.6(世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社採用率(台数相当))× 価格 3,292(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 117 億円・営業利益 −1 億円。システム製品:数量 0.50 倍 × 価格 1.05 倍、営業利益率 -1.0%
- ダイカスト製品:数量 1.8(電動化対応のダイカスト部品が載る車の台数相当(百万台))× 価格 6,514(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 120 億円・営業利益 −2 億円。ダイカスト:数量 0.80 倍 × 価格 1.10 倍、営業利益率 -2.0%
- ガスケット製品:数量 3.3(世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社採用率(台数相当))× 価格 3,247(1 台あたり売上(円・名目))→ 売上 107 億円・営業利益 1 億円。ガスケット:数量 0.55 倍 × 価格 1.08 倍、営業利益率 1.0%
- 自動車製造用設備ほか:数量 70.0(設備・金型の受注件数(件・年、推定))× 価格 1.73(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 121 億円・営業利益 2 億円。設備:数量 0.70 倍 × 価格 1.30 倍、営業利益率 1.5%
倍率:事業は稼ぐ力がほぼゼロで、純利益 ÷ k でみた価値は 0 に近い。床は稼ぐ力ではなく売れる資産で測る。今の自己資本 636.6 億円に PBR 0.204 を掛け、売れる資産の税後と純有利子負債の差である 130 億円に合わせた。帳簿の自己資本は床に使っていない。
確率:電動化が急に進み、新事業も育たない複合の筋書き。ダイカストで 2 年連続の減損が出ており、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
軸受(ブシュ・組付等を含む)
エンジン用すべり軸受(メタル)が中心。エアコン用コンプレッサー向けの軸受、ブシュ、補修用部品も含む。
| 数量世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社軸受の採用率(台数相当) | 価格1 台あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 14.2 | 3,673 | 522 | 17 |
| 10 年後 中立 | 12.8 | 4,701 | 601 | 33 |
取り方:世界のエンジン搭載車(ICE・HEV・PHEV)の生産を約 71 百万台とし、当社のエンジン用軸受の市場シェア(会社説明で約 20%)を掛けて台数相当 14.2 百万台とした。売上 521.5 億円(軸受 474.1 億円+ブシュ・組付等 47.4 億円)を割ると 1 台あたり約 0.37 万円。営業利益 17 億円は自動車部品の 21.1 億円(開示)を製品別に配った推定。
システム製品
可変バルブタイミング(VVT)部品やバキュームポンプなど、エンジン周りの機能部品。
| 数量世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社採用率(台数相当) | 価格1 台あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7.1 | 3,135 | 223 | 5 |
| 10 年後 中立 | 6.5 | 3,950 | 258 | 12 |
取り方:エンジン搭載車 71 百万台に採用率約 10% を掛けて 7.1 百万台相当。売上 222.6 億円(バキュームポンプ中心に増収)を割ると 1 台あたり約 0.31 万円。営業利益 5 億円は製品別の推定。
ダイカスト製品
アルミのダイカスト部品。ハイブリッド車・電気自動車向けの電動化対応品が伸びている。
| 数量電動化対応のダイカスト部品が載る車の台数相当(百万台) | 価格1 台あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.3 | 5,922 | 136 | −9 |
| 10 年後 中立 | 3.1 | 7,698 | 239 | 8 |
取り方:世界のハイブリッド車・電気自動車の生産(推定で約 25 百万台)に当社の採用率約 9% を掛け、台数相当 2.3 百万台とした。売上 136.2 億円を割ると 1 台あたり約 0.59 万円。先行投資の償却が重く赤字とみて営業利益 -9 億円(推定)。92 億円の減損で償却は軽くなる。
ガスケット製品
日本ガスケットが担う、エンジンやトランスミッションのシール部品。
| 数量世界のエンジン搭載車の生産(百万台)× 当社採用率(台数相当) | 価格1 台あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.0 | 3,007 | 180 | 8 |
| 10 年後 中立 | 5.4 | 3,788 | 205 | 9 |
取り方:エンジン搭載車 71 百万台に採用率約 8.5% を掛けて 6.0 百万台相当。売上 180.4 億円(日本・北米の生産増で増収)を割ると 1 台あたり約 0.30 万円。営業利益 8 億円は製品別の推定。
自動車製造用設備ほか
大豊精機などが手がける、電池搬送・鍛造搬送の設備と金型。小売等のその他を含む。
| 数量設備・金型の受注件数(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 1.33 | 133 | 5 |
| 10 年後 中立 | 100 | 1.78 | 178 | 8 |
取り方:自動車製造用設備関連の売上 131.5 億円とその他 1.6 億円を、年約 100 件の案件に割った推定(1 件 1.33 億円)。営業利益 5.0 億円は開示(設備セグメント)。
リスクと懸念
電動化の速度
電気自動車はエンジンも軸受も要らない。トヨタの電動化比率が想定より早く上がれば、搭載車の生産が減り、軸受・システム・ガスケットの数量が一度に落ちる。売上の大半がエンジン関連で、逃げ道はまだ小さい。
新事業が事業にならない
電池部品、パワー半導体の冷却器、電極端子などは実証の段階だ。2030 年に新事業で売上 250 億円という計画に対し、数字の裏づけはまだ少ない。ダイカストの EV 関連受注減で 92 億円の減損を出した経緯がある。
トヨタへの依存と原価低減要請
取引先がトヨタグループに集中し、値決めの力は弱い。毎年の原価低減要請が続くなか、原材料や人件費の上昇を転嫁しきれない年が出る。大株主は事業を守るが、利益の取り分まで保証はしない。
計画の未達
前計画の VISION2025 は売上・利益率ともに未達で、営業利益率は目標 6% に対し 0.5% だった。今回の計画も、34 億円の収益改善の積み上げが前提だ。実行が遅れれば営業利益は 30 億円台にとどまる。
借り換えと金利
1 年内に返済する借入が 154 億円ある。借り換えの金利は 3.5% 前後になる。利益が薄い会社では利払いの増加が効く。現金は 233 億円あり、返済そのものは問題ない。
世界の自動車市場の失速
中国では電気自動車の価格競争が激しく、日本車の中国生産が縮んでいる。北米では関税の影響も続く。世界の生産が 1 億台を割る年が来れば、固定費の重さで営業利益はすぐ薄くなる。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期に営業利益 45 億円以上で着地し、2028 年 3 月期も 50 億円が見えてくる
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。計画の実行力が確認できたことになる。
- コンプレッサー向け軸受が電気自動車のエアコンでも使われ、売上が落ちない
- 軸受の数量の見通しを引き上げる。電動化でも残る需要の証拠になる。
- 電動化対応のダイカスト、パワー半導体の冷却器で量産受注が複数決まる
- 新事業が事業になる確度が上がる。やや楽観の確率を引き上げる。
- 再び大きな減損や、営業利益の下方修正が出る
- やや悲観・悲観の確率を引き上げる。経営の投資判断への疑いが強まる。
- トヨタが当社を含む系列部品会社の再編を進める
- TOB の可能性が出るが、買収価格は純資産の割引で決まる公算が大きい。利益率が改善する前の再編は、株主に有利とは限らない。
- エンジン搭載車の世界生産が 2030 年に向けて 1 割以上減る
- 数量の見通しをやや悲観の水準へ下げる。大同メタルの産業用への移行が早かった理由がはっきりする。
見ておくもの
- トヨタと主要完成車の電動化比率と、エンジン搭載車の世界生産
- 営業利益率の推移(2027 年 3 月期予想 3.8%、会社の 2027 年目標は 4.3%)
- ダイカスト・電池部品・冷却器の量産受注と減価償却の水準
- 借り換えの金利と純有利子負債、政策保有株の売却の進み具合
倍率と資本コストの決め方
倍率は、式から置いた。ROE が資本コスト(k=9.0%)に届かないので、上限は 1÷k=11.1 倍。利益の質が並なので、中立はその 8.3 割の 9.2 倍に置いた。今の株価や過去の PER・PBR は見ていない。数量と価格は、搭載車の生産と 1 台あたり売上から別に積んだ。電動化の見立ては会社説明の数字を使い、筆者の見方で一部を下げた。悲観の床は、土地・有価証券・運転資本の回収額から出した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.11 倍・やや楽観 PER 9.6→11.11 倍・中立 PER 9.2→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。