結論
北川精機は、広島県府中市の産業機械メーカーで、銅張積層板(CCL)と多層プリント基板を成形するプレス装置が主力だ。売上は 66 億円と小さい。最近の AI サーバー向けの基板投資で、2026 年 6 月期の受注は前期の 2.2 倍の 131 億円に跳ねた。筆者の結論は、大きく割高である。
事業は魅力的だ。受注残は 108 億円、売上の 1.6 倍あり、2027 年 6 月期は売上 100 億円、営業利益 12 億円を会社が見込む。営業利益率は 14% と過去最高。純現金も 27 億円ある。
ただし、この会社の歴史は循環の連続だ。2012 年 6 月期に営業利益率は -27%、2016 年 6 月期にも赤字に落ちた。2022 年 6 月期に台湾・中国向けで受注が急増したときも、翌年からは売上が戻った。
10 年の平均で稼ぐ力を測ると、売上は 100 億円強、純利益は 9 億円前後。資本コストが高い装置メーカーでは、これは今の時価総額の 4 割にも届かない。株価は、AI の山が続くことを前提にしている。
バリュー投資の観点から
事業は、装置メーカーとして分かりやすい。基板は電子機器のあらゆるところに使われ、これを作る装置は 10 年後も必要だ。しかし、需要は 2〜3 年で山と谷を作り、利益は予測しにくい。バリュー投資の観点では、この循環の山で買うことがいちばん危うい。
オーナー利益は、受注生産の装置メーカーなので再投資が軽く、純利益がほぼ手元に残る。ただし、純利益の 8 億円は過去最高の水準で、山の利益だ。10 年の平均は 9 億円前後と見ており、現在の PER 27 倍近い値段を正当化するには、山が続く必要がある。
経営は、現金を積み上げつつ配当性向 25% の方針を保ち、堅実である。ROE の目標(12% 以上)を掲げるのは良いが、受注の山で達成しても意味は薄い。
安全域は、今の値段にほとんど無い。受注残 108 億円は確実な売上の裏づけだが、10 年の価値は別だ。筆者は、需要の高水準が続くかを見極められるまで、確信度を下げる。
何で稼ぐ会社か
主力は、銅張積層板と多層プリント基板の成形に使う熱プレス装置だ。積層板や基板は、銅箔と樹脂を何層も重ねて加熱・加圧して作る。そこで使うプレスと、材料を運ぶ搬送機械を、受注生産で作る。売上の大半はこの産業機械事業で、2026 年 6 月期は 65 億円、営業利益は 9.5 億円だった。
製品別の内訳は開示されていない。有報の説明から、基板関連のプレスが 8 割前後を占めると推定する。ほかに、新素材(FRP など)のプレス、FA・無人搬送機械、油圧機器(子会社のホクセイ工業、売上 1 億円)がある。ソーラーパネルのラミネータは 2012 年に撤退した。
顧客は海外の銅張積層板メーカーが中心で、ELITE MATERIAL(台湾系、マレーシアのペナン工場)、MGC ELECTROTECHNO(三菱ガス化学系、タイ)などが売上の 1 割を超える大口。地域別の売上は開示されていないが、中国向けは子会社の北川精机貿易(上海)が担当する。
生産は府中市の本社工場が中心で、部品加工は外注に頼ってきた。長崎県雲仙市に部品加工の拠点を建設し、2028 年 6 月期中の本格稼働を目指す。連結従業員は 161 名と小さい。
優良さと弱いところ
堀は「普通」と見る。北川精機は、基板材料の成形プレスで長年の実績があり、材料メーカーとの共同開発で装置を作り込む。受注生産のため設計力と納入実績が信頼につながり、顧客が新しい装置を選ぶ際に有利になる。ただし開示される競合はなく、価格競争が激しいことと、中国の安価な競合製品が増えていることがリスクとして書かれている。
収益は大きく振れる。営業利益率は 2012 年 6 月期に -27.3%、2016 年 6 月期に 1.5%、2019 年 6 月期に 10.7%、2026 年 6 月期に 14.4%(過去最高)と上下した。受注が数年ごとに跳ね、そのあと戻る。
資本効率は最近改善した。過去 10 年の ROE の中央値は 16.9%だが、自己資本が小さい時期の数字で、2026 年 6 月期は 11.9%。
財務は堅い。自己資本比率は 59%、純現金は 27 億円。ただし純現金には、契約負債(前受金)8.7 億円が含まれる。大株主は取引先持株会(9.5%)、社長の内田雅敏氏(7.9%)、海外のファンド LIM OPPORTUNISTIC FUND 3(7.2%)などで、特定の親会社はいない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
プリント基板の需要は、スマートフォン、自動車、通信基地局、そして AI サーバーの 4 本柱で動く。このうち最近の主役は AI で、GPU や高速通信の基板は層数が多く、材料にも低損失の高性能品が使われる。銅張積層板の増産や、多層基板の高多層化に必要なプレスが増え、北川精機の受注が倍増した。
一方で、プレス装置の業界は循環が激しい。2022 年 6 月期は台湾・中国向けの大型投資で受注が急増したが、翌年以降は一巡して売上は戻った。中計の資料にも「プレス装置の東南アジアシフト」が課題として挙がる。基板産業は中国から東南アジアへ生産を移しており、納入先も増える一方、現地の競合も育つ。
競合は、国内では名機製作所など(一般に知られる国内の積層プレスの大手。北川精機の開示には名称なし)と、中国・台湾の安価な新興メーカーだ。価格競争で、受注が取れても利益率が下がる。
反対に、後ろ盾になる流れもある。AI サーバーは基板の層数を増やし続け、材料メーカーは新しい熱プレスの設備を増やす。FA の無人化需要も、搬送機械を後押しする。ただ、基板関連の設備投資は、材料メーカーの採算と半導体の投資サイクルに連動し、数年ごとに山と谷を描く点は変わらない。
資本政策と M&A
還元の方針は配当性向 25% 以上で、2026 年 6 月期の期末配当は 187 百万円(配当総額)、2027 年 6 月期は増配の見込み。自社株買いは「必要に応じて機動的に」とされるが、実績の記載はない。政策保有株は原則持たない方針だが、取引先持株会を通じた取得は続けている。上場 18 銘柄で簿価は 9 億円ほど、最大はイビデン。
設備投資は小さく、2026 年 6 月期は 1.5 億円。長崎県雲仙市の新拠点は投資額が未定だが、数億円規模と見る。現金は営業 CF で増え、仕掛品と前渡金(受注に伴う運転資金)も膨らんでいる。
M&A の実績はほとんどない。ソーラー事業から撤退した以外、大きな買収・売却は無い。10 年以内の TOB の確率は 18% と見積もられる。
株主優待は開示にない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
AI サーバー向けの基板は、層数が増え、材料も高性能になる。1 枚の基板を作る熱プレスの回数と時間が増え、装置の需要は構造的に伸びる。北川精機は ELITE MATERIAL や三菱ガス化学系の大手に納入し、すでに受注は前期の 2.2 倍の 131 億円、受注残は 108 億円と売上の 1.6 倍ある。
会社の計画は 2027 年 6 月期の売上 100 億円で、2030 年の中計目標を前倒しで達成する。営業利益率は 14% と過去最高で、受注損失引当金の減少という質の良くない部分があっても、価格転嫁が進んでいる証拠だ。
財務は軽く、純現金は 27 億円、自己資本比率は 59%。配当性向 25% の方針は、増益にあわせて配当を増やす。長崎の新拠点で生産能力のボトルネックが解け、受注を売上に変えられる。2022 年の山と違い、今回は AI という長期のテーマが背景にある。
さらに、時価総額は小さく、材料メーカーや海外の装置大手が買いに来る可能性がある。10 年以内の TOB の確率は 18% とされる。
慎重な見方
この会社は、山と谷の繰り返しで生きてきた。営業利益率は 2012 年 6 月期に -27%、2016 年 6 月期に赤字を出した。2022 年 6 月期に台湾・中国向けで受注が急増したあとも、売上は 65 億円から 59 億円へ戻った。今回の受注の 2.2 倍は、AI という新しい話があっても、同じ形に見える。
受注残の 108 億円は 1〜2 年で売上になる。10 年後には残らない。業界は「東南アジアシフト」で競争相手が増え、リスクの欄に書かれているとおり、中国の安価な競合製品が価格を下げる。
営業利益率 14.4% は為替差益と受注損失引当金の減少に助けられた過去最高の値で、続かない。
何より、値段が事業の価値を超えている。時価総額は純利益の 27 倍、PBR は 3.5 倍。10 年の平均で 9 億円の純利益に 10 倍をかけても 90 億円。純現金を足しても今の時価総額の半分にとどまる。決算後に株価が急落したのは、山の利益の見合いを市場が測り始めた兆しだ。
どちらに重みを置いたか
受注残という確かな足元の裏づけは、両方の見方が一致する。争点は、それが 10 年の平均の稼ぐ力に何倍の値をつけるかだ。受注が山で終わった前例(2022 年 6 月期)と、赤字に落ちた歴史(2012 年、2016 年)から、慎重な見方を強く取った。確率は中立に 32%、やや悲観に 24% を置いた。楽観は AI 投資が 10 年続く場合に限り 10%、悲観は赤字に戻る場合で 12%。計算の結果は大きな割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/06 期)
確率で加重した株価時価総額 1,394 円114 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 498 円41 億円)。 今の値に割り戻すと 985 円80 億円、今との差 −63.5%、 期待の年率 −3.5%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,085 円252 億円 | 857 円70 億円 | +46.1% | +3.9% | 394 円32 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,030 円166 億円 | 673 円55 億円 | +0.2% | +0.0% | 595 円49 億円 |
| 中立 | 32% | 1,439 円118 億円 | 551 円45 億円 | −26.3% | −3.0% | 637 円52 億円 |
| やや悲観 | 24% | 590 円48 億円 | 306 円25 億円 | −66.8% | −10.4% | 215 円18 億円 |
| 悲観 | 12% | 309 円25 億円 | 122 円10 億円 | −84.0% | −16.8% | 52 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,394 円114 億円 | 498 円41 億円 | −29.9% | −3.5% | 1,892 円155 億円 |
今の株価時価総額 2,699 円220 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% AI 向けの基板投資が10年続き、高多層化で装置が大型化する 利益 16 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 3,085 円252 億円
AI データセンター向けの基板は層数が増え、材料も高性能になる。銅張積層板と多層基板の成形に使うプレスは、台数が増えるだけでなく 1 台あたりが大型化し、単価も上がる。市場は今の 1.8 倍に育ち、北川精機は台湾・タイ・マレーシアなどの材料メーカーとの関係を生かして 8% のシェアを守る。
生産面では、長崎県雲仙市の部品加工拠点が 2028 年 6 月期に稼働し、外注頼みの生産能力のボトルネックが解ける。営業利益率は 15% に届き、中計「KITAGAWA 2030」の目標(15% 以上)を達成する。売上は 148 億円、営業利益は 21 億円規模になる。
FA・搬送機械も、無人化の需要で 2 割伸びる。株主還元は、配当性向 25% の方針を引き上げ、10 年で 70 億円を戻す。それでも ROE は 14% 前後で、資本コストを上回る。
- 基板・銅張積層板用プレス装置:数量 1,170(世界の CCL・多層基板成形用プレス装置の市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定))× 価格 10.7%(北川精機のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.08 × 1.0))→ 売上 125 億円・営業利益 19 億円。営業利益率15.0%
- FA・搬送機械・新素材プレス・油圧機器:数量 1,688(対象市場(億円、実質、推定))× 価格 1.3%(北川精機のシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.01 × 1.0))→ 売上 23 億円・営業利益 2 億円。営業利益率10.0%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍。全体の PER 15.95 倍、時価総額 252 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI サーバー向けの基板投資が長く続き、北川精機が海外の大手材料メーカーで受注を取り続ける必要がある。過去の山は 2〜3 年で終わっており、10 年続く確率は低い。それでも一度は 2022 年 6 月期の山を超えた会社なので、1 割は置く。
やや楽観 22% AI 投資の恩恵が薄れず、2030 年の目標を達成する 利益 12 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 2,030 円166 億円
AI 関連の設備投資が一服しても、基板の高多層化は止まらず、市場は今の 1.55 倍の水準で定着する。北川精機は 7.5% のシェアを守り、売上は 120 億円ほどに届く。
営業利益率は 13.5%、2026 年 6 月期の 14.4%(過去最高)をやや下回る。受注損失引当金の減少のような一時的な利益が減るためだ。FA・搬送機械は 9% の利益率を保つ。
還元は 10 年で 55 億円。配当性向は 25% の方針を超え、4 割に近づく。ROE は 10% 台で資本コストと並ぶ。
この筋書きの前提は、長崎の部品加工拠点が予定どおり 2028 年 6 月期に稼働し、材料メーカーの設備投資が 2030 年まで切れ目なく続くことだ。受注損失引当金の戻りのような一時的な利益は減るので、純利益は 11 億円台にとどまる。それでも 2022 年 6 月期の山(売上 65 億円)の 2 倍に近い水準で、会社が掲げる ROE 12% 以上の目標にあと一歩まで迫る。
- 基板・銅張積層板用プレス装置:数量 1,008(世界の CCL・多層基板成形用プレス装置の市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定))× 価格 10.1%(北川精機のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.08 × 1.0))→ 売上 101 億円・営業利益 14 億円。営業利益率13.5%
- FA・搬送機械・新素材プレス・油圧機器:数量 1,548(対象市場(億円、実質、推定))× 価格 1.3%(北川精機のシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.01 × 1.0))→ 売上 21 億円・営業利益 2 億円。営業利益率9.0%
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍。全体の PER 14.42 倍、時価総額 166 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の受注残 108 億円は売上の 1.6 倍あり、2027 年 6 月期と 2028 年 6 月期は計画どおり進む可能性が高い。その後も需要の高水準が続く筋書きで、中立の次に現実味がある。
中立 32% 山は越え、基板需要の高止まりで売上は100億円台を保つ 利益 9 億円 · PER 13.1 倍 · 株価時価総額 1,439 円118 億円
基板関連の設備投資は、AI の追い風で高い水準が続くが、年によって大きく揺れる。10 年の平均で見ると、実質の市場は今の 1.4 倍にとどまる。中国など新興メーカーの追い上げで、北川精機のシェアは 8% から 7% へ下がる。物価並みの値上げは通る。
売上は 108 億円、会社の 2027 年 6 月期の計画(100 億円)と並ぶ水準で、その後は物価の分だけ伸びる。営業利益率は 11.6% で、2026 年 6 月期の 14.4% には届かない。山の水準は続かないと見る。
還元は配当性向 4〜5 割で 10 年 45 億円。現金は増えるが、長崎の新工場など設備投資もあり、ROE は 8% 台と資本コストを下回る。
- 基板・銅張積層板用プレス装置:数量 910(世界の CCL・多層基板成形用プレス装置の市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定))× 価格 9.6%(北川精機のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.08 × 1.0))→ 売上 88 億円・営業利益 11 億円。営業利益率12.5%
- FA・搬送機械・新素材プレス・油圧機器:数量 1,477(対象市場(億円、実質、推定))× 価格 1.3%(北川精機のシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.01 × 1.0))→ 売上 20 億円・営業利益 2 億円。営業利益率8.0%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.1 倍。全体の PER 13.05 倍、時価総額 118 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の受注残が支える 2027 年 6 月期と 2028 年 6 月期は好調でも、10 年先を見れば AI 投資の山は必ず一服する。2022 年 6 月期に受注が急増したあと、売上が 65 億円から 59 億円へ戻った前例もある。中立に最も厚く置いた。
やや悲観 24% AI 投資が一服し、価格競争で利益率が1桁に落ちる 利益 4 億円 · PER 8.6 倍 · 株価時価総額 590 円48 億円
AI 関連の設備投資が一服し、市場は今の水準にとどまる。台湾・中国の材料メーカーが中国製の安価なプレスに切り替え、北川精機のシェアは 6.5% に下がる。値上げも物価に届かず、売上は 69 億円と今とほぼ同じ名目額になる。
営業利益率は 8% 台、2016 年 6 月期のような赤字ではないが、2024 年 6 月期の 13.7% から大きく下がる。工場の稼働率が落ち、固定費の重さが出る。
還元は 10 年で 25 億円。ROE は 4% 台に落ちる。
経営は長崎の新拠点で内製化を進めたばかりで、稼働率が上がらず、減価償却と人件費が重くなる。受注残を消化した後は新規の大型案件が減り、納期の短い小口案件の競争になる。現金は残るが、純利益は 4 億円前後にとどまり、時価総額はその稼ぎで決まる。
- 基板・銅張積層板用プレス装置:数量 650(世界の CCL・多層基板成形用プレス装置の市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定))× 価格 8.1%(北川精機のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.08 × 1.0))→ 売上 53 億円・営業利益 5 億円。営業利益率9.0%
- FA・搬送機械・新素材プレス・油圧機器:数量 1,337(対象市場(億円、実質、推定))× 価格 1.3%(北川精機のシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.01 × 1.0))→ 売上 17 億円・営業利益 1 億円。営業利益率6.0%
倍率:ROE 4.1% は k 以下で、PER の上限は 10.8 倍。約 8 割(8.6 倍)に置いた。
確率:装置業界は循環が激しく、中国の安価なメーカーも育っている。今の受注残を消化した後、受注が元に戻る筋書きは自然で、中立の次に厚く置いた。
悲観 12% 受注が崩れ、2012年や2016年のような赤字に戻る 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 309 円25 億円
AI 関連の設備投資が剥落し、市場は今の 65% に縮む。台湾・中国・東南アジアの材料メーカーは中国製の安いプレスを買い、北川精機の受注は最近の 3 分の 1 に落ちる。シェアは 5% に下がり、売上は 37 億円まで減る。営業損益は赤字になる。
仕掛品の評価損と受注損失引当金で、自己資本は流れより 25 億円以上減る。
配当は無配に近づき、還元は 10 年で 10 億円。株主資本は 63 億円に戻る。現金はあるが、単価が崩れた装置の在庫を抱えた会社として評価される。
構造的な負けの中身は 3 つある。ひとつは AI 向けの基板投資が一巡し、材料メーカーが新しい設備を買わなくなること。ふたつめは、中国製の安いプレスが標準になり、価格を決める力を失うこと。みっつめは、小さな会社が人材と設計のデジタル化で遅れ、受注生産の採算を保てなくなることだ。
- 基板・銅張積層板用プレス装置:数量 423(世界の CCL・多層基板成形用プレス装置の市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定))× 価格 5.8%(北川精機のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.08 × 1.0))→ 売上 24 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率-3.0%
- FA・搬送機械・新素材プレス・油圧機器:数量 1,126(対象市場(億円、実質、推定))× 価格 1.2%(北川精機のシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.01 × 1.0))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。営業利益率2.0%
倍率:営業損益は赤字で稼ぐ力は小さい。仕掛品の評価損・受注損失引当金で自己資本が今の 63 億円に戻る前提で、PBR 0.40 倍を今の自己資本に掛けた(純現金を含む)。
確率:北川精機は 2012 年 6 月期に営業利益率 -27%、2016 年 6 月期にも赤字を出した。AI 投資の反動と中国メーカーの低価格攻勢が重なれば、同じ形になりうる。1 割強を置く。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
基板・銅張積層板用プレス装置
銅張積層板(CCL)と多層プリント基板を成形する熱プレス装置。AI サーバー向けで受注が急増。
| 数量世界の CCL・多層基板成形用プレス装置の市場(億円、2026 年の値段で測った実質、推定) | 価格北川精機のシェア × 物価の指数(2026 年 = シェア 0.08 × 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 650 | 8.0% | 52 | 8 |
| 10 年後 中立 | 910 | 9.6% | 88 | 11 |
取り方:産業機械事業の売上 65.05 億円のうち、基板・CCL 用プレスを 8 割の 52.0 億円と推定(製品別は開示なし)。実質の市場 650 億円(推定。AI 関連投資で膨らんだ年の水準)× シェア 8% と物価の指数に分けた。営業利益はセグメント利益 9.47 億円のうち 8.2 億円と推定。数量(実質の市場)は AI 投資と高多層化で中立 10 年 1.4 倍(循環の山を均した値)、シェアは中国など新興メーカーの追い上げで 8% から 7.2% へ。価格は物価並み 1.34 倍。市場の大きさ:国内の名機製作所、中国・台湾の新興メーカーが競合(名称は開示なし)。
FA・搬送機械・新素材プレス・油圧機器
FA・無人搬送機械、新素材(FRP など)のプレス、油圧機器(ホクセイ工業)。
| 数量対象市場(億円、実質、推定) | 価格北川精機のシェア × 物価の指数(2026 年 = 0.01 × 1.0) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/06 | 1,407 | 1.0% | 14 | 1 |
| 10 年後 中立 | 1,477 | 1.3% | 20 | 2 |
取り方:産業機械事業の残り 13.05 億円と、その他(油圧機器)1.02 億円を合わせた 14.07 億円。市場 1,407 億円(推定)× シェア 1% に分けた。営業利益は産業機械の 1.27 億円とその他 0.06 億円の合計。数量は無人化需要で中立 10 年 1.05 倍、価格は物価並み。
リスクと懸念
AI 向け設備投資の反動
受注が前期の 2.2 倍に跳ねた背景は海外メーカーの AI 関連投資。2022 年 6 月期の山のあとで売上が戻った前例があり、投資が一服すれば受注は急減する。
中国の安価な競合
リスク欄に書かれているとおり、中国の安価なプレス装置が増えている。材料メーカーが中国製に切り替えれば、シェアと利益率の両方が下がる。
主要顧客への集中
ELITE MATERIAL 1 社で売上の 11%、前期は 2 社で 25%。1 社の投資計画の見直しで、売上が大きく動く。
生産能力と外注依存
部品加工を外注に頼っており、長崎の新拠点が 2028 年 6 月期に動くまで、受注を売上に変える速度に限りがある。立ち上げが遅れると、納期と採算を落とす。
受注生産の製造物責任と採算
個別の受注生産のため、仕様の変更や不具合は損失になる。受注損失引当金が前期に減ったことが利益を押し上げており、逆回転すれば利益を削る。
為替
海外売上が大半で、2026 年 6 月期は為替差益が利益を支えた。ドル円は 150 円で固定した世界でも、現地通貨の動きは受注に響く。
小さな会社の経営基盤
連結従業員は 161 名。技術者の確保や、設計・製造のデジタル化の遅れが生産性の天井になる。
今後の分かれ目
- 2027 年 6 月期の受注高が売上高を大きく下回り、受注残が減り始めたら
- 山は過ぎたと見て、中立から悲観寄りの筋書きに重みを移す。
- 長崎の部品加工拠点が 2028 年 6 月期に予定どおり稼働したら
- 生産能力の制約が解け、中立の営業利益率の前提が上がりうる。
- 新たに大口の顧客(台湾・タイ・マレーシアの材料メーカー)から複数年の受注を得たら
- AI 関連の需要の持続性が確かになり、楽観寄りの筋書きに重みを移す。
- 中国メーカーの安価なプレスが主要顧客に採用されたら
- シェアと値上げの前提を下げ、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 純現金を使った自社株買いや増配を発表したら
- ROE が上がり、倍率の上限に近づく。還元の前提を見直す。
- 材料メーカーや海外の装置大手から TOB の提案が出たら
- 買い手の価格は事業の稼ぐ力以上には付きにくい。ただし山の利益を元にした提示になりうるので、冷静に比べる。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高と受注残(売上との比)
- 営業利益率と受注損失引当金の増減
- 主要顧客(ELITE MATERIAL・MGC 系)の設備投資計画
- 長崎拠点の稼働時期と投資額
- 配当性向と自社株買いの実施
倍率と資本コストの決め方
基板用プレスと FA・搬送等の 2 つを、市場規模(実質、推定)× シェアと物価の指数で積み上げ、価格は物価並みの 1.34 倍とした。数量は AI 関連の山を均した 1.4 倍。営業利益率は中立で 11.6%(会社の 2027 年 6 月期計画 12%、過去 12 年の最高 14.4% より下)。ROE は 8% 台で k 以下なので PER の上限は 1÷k=10.8 倍で、その 9 割を置いた。今の株価や PER 27 倍から倍率を置いていない。純現金 27 億円は契約負債(前受金)8.7 億円と運転資金、長崎の設備投資を考えて分けない。受注生産で新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.2→15.95 倍・やや楽観 PER 10.3→14.42 倍・中立 PER 9.7→13.05 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.75%。事業が傾いているわけではなく、純現金で財務は固く、上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 8.00%。