結論
技研製作所は、地面に鋼矢板や杭を静かに押し込む「圧入機」の世界最大手だ。機械の販売・レンタルと、自社でやる圧入工事で稼ぐ。会社は圧入機の世界シェアを9割超と説明する。筆者の結論は、10年の中立では今の時価総額に届かない、つまり割高だ。シェアは高い。だが市場が小さく、稼ぎが細い。
強みは、振動や騒音を出せない現場で選ばれる専用機を、ほぼ一社で売っていることだ。災害復旧、都市の地下工事、堤防の補強が舞台になる。ただ、独占の割に資本の効率は高くない。ROEの過去10年の中央値は8%に届かず、2025年8月期は純利益が15億円まで落ちた。国内で工事費が高騰し、人手も足りず、施工会社の設備投資が冷えたためだ。2026年8月期は25億円まで戻したが、まだ回復の途中にある。
成長の鍵は海外だ。会社は子会社のある6か国の杭工事市場を約2兆円とみる。欧州とアジアは動き出した。一方、北米と豪州では市場づくりに失敗し、和解の特別損失も出した。中期計画は2023年と2025年に引き下げられている。筆者は、海外が10年で倍の規模に育つ筋書きを中立に置いても、利益は今の1.6倍ほどにしかならないと見る。
今の値段は、海外の成功をかなり先取りしている。海外が大きく育つ強気の筋書きでは、純利益が80億円を超えて今の時価総額を上回る。だがその確率は低い。
バリュー投資の観点から
まず、10年後もこの事業は残るか。残る。圧入は災害復旧や地下工事の近くで選ばれる方法で、需要がなくなる類いの事業ではない。問題は残るかどうかではなく、残った時にどれだけ稼ぐかだ。
オーナー利益、つまり株主が自由に使える利益を見ると、見かけの独占ほど厚くない。機械の営業利益率は2割台と高いが、全社では10%前後だ。研究開発と海外投資に毎年お金が出ていく。海外が育てば利益率は上がるが、育たなければ費用だけが残る。ここを見極めるのが難しく、予測のしやすい事業とは言いにくい。
資本の使い方は、還元に前向きだ。配当と自社株買いを増やし、現金を貯め込まない姿勢は評価できる。ただ、海外の市場づくりには何度かつまずいた。バリュー投資の観点では、海外へ使うお金が資本コスト以上の稼ぎを生んでいるかが最大の論点になる。
安全域の面では、純現金と堅い財務が下を支えるが、稼ぐ力が細いので床は高くない。筆者は、持ち続けたいと思える会社だが、払ってよい値段には限りがあると考える。海外が成功した時の姿に今の値段が近づくほど、安全域はなくなる。
何で稼ぐ会社か
収益は2本立てだ。1つは圧入機の販売・レンタル・部品などの建設機械事業で、売上176億円、営業利益39億円(2025年8月期)。もう1つは子会社の技研施工が自ら行う圧入工事事業で、売上87億円、営業利益11億円。利益の質が高いのは機械の側だ。
圧入とは、すでに地中に入れた杭を数本つかみ、その引き抜きに耐える力を支えにして、次の杭を油圧で押し込む工法だ。振動も騒音も出ない。1975年に同社が初めて世に出した。硬い地盤には、杭を回しながら削って押し込むジャイロプレス工法や、岩盤を砕くクラッシュパイラーなどを組み合わせる。1台の機械で鋼矢板も鋼管杭も施工できる組み合わせも用意している。
機械は売って終わりではない。使うほど減る消耗部品(リングビットなど)と、レンタル、修理が続けて入る。海外ではGTOSSという会員制度で、意欲のある施工会社と組む。一般のユーザーには出さない高度な工法を会員に提供し、会員が儲かれば機械とレンタルの需要が増えるという循環をねらう。
圧入工事事業は、新しい工法の実績をつくる役目も持つ。市場が広がった段階で、一般の施工会社に工法と機械を売る。ドイツではオペレーター付きのレンタルや、付帯工事を含む請負が伸びている。
顧客の中心は国内の施工会社で、海外の売上は全体の約2割だ。2026年8月期は売上284億円、営業利益31億円と回復した。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、方法そのものにある。圧入は、振動工法(バイブロハンマー)が使いにくい住宅地や、鉄道・道路・堤防の近くでの工事で選ばれる。会社によれば圧入機の世界シェアは9割を優に超える。50年の施工の実績と、日本製鉄と共同で開発してきた鋼矢板・鋼管杭の知見が、他社の参入を難しくしている。
だが筆者は、この堀の「厚さ」を割り引いて見る。理由は3つある。振動工法は、近くに家がなければ安く、代わりになる。市場自体が小さいので、シェアが9割でも利益の絶対額は伸びにくい。営業利益率は2019年8月期の21%から、2025年8月期の10%へ半分に落ちた。材料の値上がりと、海外投資で膨らんだ費用が重い。独占でも利益が自動で伸びる事業ではない。
経営の記録にも気になる点がある。2023年と2025年に中期計画の目標を引き下げた。北米・豪州の市場づくりは進まず、豪州の元子会社との和解で8億円の特別損失を出した。ROEは過去10年の中央値が8%に届かず、2025年8月期は4%を割った。会社自身が、株主資本コストの6〜10%を下回ると認めている。
財務は健全だ。純現金で、自己資本比率は84%ある。借金で無理をする会社ではない。弱いのは、守りではなく稼ぎの効率だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の需要は公共工事が柱だ。国土強靭化の実施中期計画が2030年まで続き、能登半島地震の本復旧では、港湾・漁港・道路でジャイロプレス工法の採用が急に増えた。首都高の更新・地下化でも採用が続く。災害が多く、工事の近くに住宅がある国なので、静かな工法の出番は構造的に多い。
逆風は、建設コストの高騰と、技能労働者の不足だ。工事量が減ると、施工会社は機械を買い控える。2025年8月期は国内の機械売上が約25%減った。一方、人手が足りない現場ほど、少人数で済む圧入機の価値は上がる。国内の数量は、台数でみれば今の谷から平常へ戻るが、それ以上は伸びにくい。人口が減るからだ。
海外が伸びしろだ。子会社のある6か国の杭工事市場は約2兆円で、日本の6倍以上とされる。ただ、圧入が使われる割合はまだ小さい。欧州では、オランダの治水事業「デルタプログラム」が2030年まで約10キロの堤防補強を続け、ドイツでは請負工事が順調だ。アジアでは、シンガポールの地下空間工事、インドの大手プレキャストメーカーとの連携、香港の補助金認定が追い風になる。北米は東海岸に営業所を開いたばかりで、関税の影響も受ける。
循環の位置は、国内が谷から戻る途中、海外が市場づくりの途中だ。圧入機で肩を並べる同型の競合は、会社の説明ではほとんどいない。本当の競争相手は、振動工法という別の方法である。
資本政策と M&A
還元は厚い。配当性向40%を目安に、純資産に対する配当の比率(DOE)3.5%を下限とする。2025年8月期の配当は総額で年14億円ほどで、2026年8月期も同じ水準の予定だ。2026年8月期の上期には、20億円の自社株買い(約111万株)を終えた。112万株の消却も決議している。
3年間の資金の使い道は、還元65億円以上、研究開発・設備75億円、海外の成長投資は上限30億円だ。純現金は約42億円で、時価総額の8%ほどにとどまる。事業に要らない余剰とまでは言えないので、別枠では扱わない。
大株主は北村興産で、持ち株比率は約22%(2026年2月)だ。2010年の適時開示では、創業家の北村家が持つ会社とされている。経営は安定するが、少数株主の声は通りにくい。非公開化などの材料は今のところ見えない。
M&Aは小さい。過去の失敗は、豪州の合弁相手J Steel Groupとの関係だ。2023年に合弁を解消し、2025年8月期に和解の費用8億円を出した。大型の買収で伸ばす会社ではなく、自前の工法の実績づくりで広げる会社だと筆者は見る。政策保有株の状況は確かめられていないので、評価に入れていない。
還元は方針(配当性向40%目安、DOE3.5%下限、3年で65億円以上)の範囲で、中立は純利益の合計の約85%。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
圧入は、まだ入口に立ったばかりの工法だ。世界の杭工事市場は約2兆円あるのに、圧入の使われる割合は小さい。会社のシェアが9割を超えるのは、その分だけ広げる余地を一社で握っているということだ。欧州ではGTOSS会員が1年で0社から6社に増え、オランダの堤防工事とドイツの請負が動いている。インドでは大手プレキャストメーカーと組み、20キロの土留め壁の案件を見込む。1件採用されれば、複数台の機械が売れる。
国内の需要は、谷を抜けつつある。2026年8月期の売上は前期の7.9%増、営業利益は19%増だ。国土強靭化は2030年まで続き、能登の本復旧と首都高の更新が採用を押し上げる。人手不足は、少人数で済む圧入機にとって追い風だ。新機種のSXシリーズは自動運転の機能を持ち、DXアプリは地盤データから施工条件を作る。使いやすさが上がるほど、振動工法からの乗り換えが進む。
利益率は戻る余地が大きい。2019年8月期には営業利益率が21%あった。海外が規模に乗れば、レンタルと消耗品で安定して稼げる。そうなれば、10年後の純利益は80億円を超え、ROEは13%台に乗る。今の費用は、市場づくりのための先行投資だ。
慎重な見方
独占の中身を疑うべきだ。シェアが9割でも、2019年に21%あった営業利益率は半分に落ち、ROEは4%を割った。独占が稼ぎにつながっていない。市場が小さいか、代わりの工法が価格を縛っているかのどちらかだ。振動工法は、近くに家がなければ安く済む。
海外は、何度も計画が崩れた。北米と豪州では市場ができず、豪州の元子会社との和解で8億円の損が出た。中期計画の2027年の目標は、売上360億円から300〜330億円へ、営業利益49億円から32億円へ引き下げられた。北米は営業所を開いたばかりで、関税が客の投資を鈍らせる。インドも価格を下げる圧力と、工法の認知の低さが課題だと会社自身が言う。
国内は、工事費の高騰と人手不足で機械の買い控えが起きている。国土強靭化は2030年で一区切りになる。人口が減れば、公共工事の量は戻らない。その時に、海外の費用だけが残る。2026年8月期の回復も、まだ谷からの戻りにすぎない。
自己資本は403億円ある。だが稼ぐ力がそれに見合わない。ためた利益は、額面より低い価値しかない。今の値段は、海外の成功を織り込みすぎている。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、海外の伸びしろと国内の回復という事実に根拠がある。だが慎重な見方の指摘も具体的だ。独占なのに利益率とROEが低いこと、海外の計画が繰り返し崩れたことは、数字で確かめられている。
筆者は、慎重な側の言い分がやや強いと見る。海外の成功は十分ありうるが、実現には何年もかかり、途中で費用がかさむ。確率は中立を最も厚くし、そこから慎重な側にやや寄せた。強気の側も残すが、最上位の筋書きの確率は低くとどめた。結果として、10年の価値は今の時価総額を大きく下回り、結論は割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/08 期)
確率で加重した株価時価総額 2,198 円558 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 805 円204 億円)。 今の値に割り戻すと 1,627 円413 億円、今との差 −20.7%、 期待の年率 +3.9%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,756 円1,460 億円 | 1,183 円300 億円 | +238.3% | +13.0% | 694 円176 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,114 円790 億円 | 986 円250 億円 | +99.9% | +7.2% | 820 円208 億円 |
| 中立 | 35% | 2,178 円552 億円 | 915 円232 億円 | +50.8% | +4.2% | 1,082 円275 億円 |
| やや悲観 | 23% | 704 円179 億円 | 591 円150 億円 | −36.9% | −4.5% | 298 円76 億円 |
| 悲観 | 12% | 631 円160 億円 | 276 円70 億円 | −55.8% | −7.8% | 109 円28 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,198 円558 億円 | 805 円204 億円 | +46.4% | +3.9% | 3,003 円762 億円 |
今の株価時価総額 2,051 円520 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 海外の市場づくりが実り、圧入が標準工法の一つになる 利益 83 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 5,756 円1,460 億円
海外の市場づくりが実る。オランダの堤防、ドイツの請負、インドの大型案件が続けて採用され、欧州とアジアの会員が増える。海外の圧入機は10年で4倍以上の台数に育つ。大型特殊機とジャイロパイラーの比率が上がり、1台あたりの単価も物価より上がる。国内も国土強靭化と人手不足を追い風に、台数が谷から大きく戻る。
利益率は2019年に近づく。レンタルと消耗品が積み上がり、機械の利益率は国内で3割近く、海外で2割台半ばに乗る。工事事業は開発型の案件が戻り、営業利益率は15%になる。全社の営業利益は110億円を超える。
圧入が、振動工法に並ぶ標準の工法の一つになる10年だ。会社は還元を増やし、ROEは13%台に乗る。
- 国内の圧入機(販売・レンタル・部品):数量 460(国内の圧入機の年間販売台数(台、推定。レンタルと部品・消耗品の売上を台数に割り戻した換算))× 価格 5,360(1 台あたりの売上(万円、レンタル・部品・消耗品を含む名目))→ 売上 247 億円・営業利益 69 億円。台数 460、営業利益率 28%
- 海外の圧入機(販売・レンタル・部品):数量 300(海外の圧入機の年間販売台数(台、推定。レンタルと部品・消耗品を台数に割り戻した換算))× 価格 9,239(1 台あたりの売上(万円、レンタル・部品・消耗品を含む名目))→ 売上 277 億円・営業利益 67 億円。台数 300、単価は大型機で物価の 1.45 倍、営業利益率 24%
- 圧入工事(技研施工):数量 290(年間の施工現場数(件、推定))× 価格 5,360(1 件あたりの売上(万円、名目))→ 売上 155 億円・営業利益 23 億円。施工 290 件、営業利益率 15%
倍率:事業の純利益 83 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍。全体の PER 17.59 倍、時価総額 1,460 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:海外の市場づくりが予定より早く実る必要があり、過去に北米・豪州・計画の引き下げで外している。起こりうるが、確率は低くとどめた。
やや楽観 20% 国内が戻り、海外は倍増して利益が戻る 利益 52 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 3,114 円790 億円
国内は平常に戻り、海外は2倍以上の規模になる。会員を通じた欧州とアジアの案件が積み上がり、インドでも複数台の販売が決まる。北米は小さいままだが、赤字は出さない。国内の台数は谷から2割ほど戻り、消耗品とレンタルの比率が上がる。
利益率は2019年ほどではないが、今よりはっきり高い。機械の利益率は国内26%、海外21%、工事は14%に戻る。費用の増加は売上の伸びが吸収する。
会社は配当と自社株買いの両方で還元を続ける。市場が小さい分、成長は一本調子ではないが、ROEは10%近くまで上がる10年だ。
- 国内の圧入機(販売・レンタル・部品):数量 410(国内の圧入機の年間販売台数(台、推定。レンタルと部品・消耗品の売上を台数に割り戻した換算))× 価格 5,360(1 台あたりの売上(万円、レンタル・部品・消耗品を含む名目))→ 売上 220 億円・営業利益 57 億円。台数 410、営業利益率 26%
- 海外の圧入機(販売・レンタル・部品):数量 190(海外の圧入機の年間販売台数(台、推定。レンタルと部品・消耗品を台数に割り戻した換算))× 価格 8,538(1 台あたりの売上(万円、レンタル・部品・消耗品を含む名目))→ 売上 162 億円・営業利益 34 億円。台数 190、営業利益率 21%
- 圧入工事(技研施工):数量 250(年間の施工現場数(件、推定))× 価格 5,360(1 件あたりの売上(万円、名目))→ 売上 134 億円・営業利益 19 億円。施工 250 件、営業利益率 14%
倍率:事業の純利益 52 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍。全体の PER 15.19 倍、時価総額 790 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内が戻り、海外が倍以上に育つ。欧州とアジアの動きは確かで、見通しの上位に近い。ただ利益率の戻りは確かめにくい。
中立 35% 国内は平常に戻り、海外は倍の規模になるが儲けは細い 利益 40 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 2,178 円552 億円
国内の台数は、今の谷から平常に戻る。国土強靭化が2030年に一区切りを迎え、その後は人口減で横ばいになる。海外は、欧州とアジアの市場づくりが進んで機械の台数が倍近くになるが、北米は小さいままだ。単価は物価並みに上がる。
利益率は、2019年の水準には戻らない。機械の利益率は国内25%、海外20%、工事13%で、本社費と研究費の重さは今のまま続く。全社の営業利益は今の2倍強になるが、売上も増えるので利益率は13%ほどにとどまる。
資本の効率は、資本コストとほぼ同じだ。還元は、配当性向と下限のDOEを守る水準で続く。優良だが、儲けは細い会社として年を重ねる10年である。
- 国内の圧入機(販売・レンタル・部品):数量 390(国内の圧入機の年間販売台数(台、推定。レンタルと部品・消耗品の売上を台数に割り戻した換算))× 価格 5,360(1 台あたりの売上(万円、レンタル・部品・消耗品を含む名目))→ 売上 209 億円・営業利益 52 億円。台数 390、営業利益率 25%
- 海外の圧入機(販売・レンタル・部品):数量 125(海外の圧入機の年間販売台数(台、推定。レンタルと部品・消耗品を台数に割り戻した換算))× 価格 8,538(1 台あたりの売上(万円、レンタル・部品・消耗品を含む名目))→ 売上 107 億円・営業利益 21 億円。台数 125、営業利益率 20%
- 圧入工事(技研施工):数量 230(年間の施工現場数(件、推定))× 価格 5,360(1 件あたりの売上(万円、名目))→ 売上 123 億円・営業利益 16 億円。施工 230 件、営業利益率 13%
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.81 倍、時価総額 552 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内は平常に戻り、海外は倍の規模、利益率は2019年に戻らない。事実に最も近い中心の筋書きで、いちばん厚く置いた。
やや悲観 23% 国内の工事量が細り、海外は伸び悩む 利益 21 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 704 円179 億円
国内の工事量が細る。国土強靭化が2030年で終わり、人手不足と建設費の高騰で施工会社の機械の買い替えが先延ばしされる。台数は今の谷のまま戻らない。海外は、北米の縮小と関税が響き、欧州とアジアの会員が増えても台数の伸びは緩い。
価格競争も強まる。振動工法との差が縮み、機械の利益率は国内22%、海外15%に下がる。工事は11%。材料と人件費の上昇を、値上げで取り返せない。
営業利益は今とほぼ同じ金額にとどまり、物価の分だけ実質では目減りする。ROEは4%台だ。会社は配当の下限を守るが、自社株買いは減る。国内の谷が長引き、海外が広がらない10年だ。
- 国内の圧入機(販売・レンタル・部品):数量 330(国内の圧入機の年間販売台数(台、推定。レンタルと部品・消耗品の売上を台数に割り戻した換算))× 価格 5,360(1 台あたりの売上(万円、レンタル・部品・消耗品を含む名目))→ 売上 177 億円・営業利益 39 億円。台数 330、営業利益率 22%
- 海外の圧入機(販売・レンタル・部品):数量 80.0(海外の圧入機の年間販売台数(台、推定。レンタルと部品・消耗品を台数に割り戻した換算))× 価格 8,538(1 台あたりの売上(万円、レンタル・部品・消耗品を含む名目))→ 売上 68 億円・営業利益 10 億円。台数 80、営業利益率 15%
- 圧入工事(技研施工):数量 190(年間の施工現場数(件、推定))× 価格 5,360(1 件あたりの売上(万円、名目))→ 売上 102 億円・営業利益 11 億円。施工 190 件、営業利益率 11%
倍率:ROE 4.3% が k 7.5% を下回り、ためた利益は額面より低い価値なので、PER は 1÷k = 12.5 倍よりずっと下になる。RONIC = 8.00% + 1/2 ×(4.3 − 8.00)= 6.2%、g 4.0% の式で 8.7 倍。稼ぐ力(純利益 ÷ k)から 8.5 倍に置いた。
確率:国内の工事量が細り、海外が伸び悩む。今の回復が一時的に終わるありうる形で、計画の引き下げが二度続いた実績から、厚めに置いた。
悲観 12% 海外から撤退し、国内も代替工法に押される 利益 5 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 631 円160 億円
海外が崩れる。会員制度の市場づくりがうまく回らず、北米・豪州に続いて欧州やアジアの拠点も整理する。圧入の優位が生きる案件が減り、ジャイロプレス工法の採用も伸びない。
国内では、人口減と公共工事の縮小で台数が谷から2割ほど減る。工事は物価ほど値上げできず、営業利益率は6%に下がる。機械の利益率も国内で15%まで落ち、海外は赤字を止めて撤退する。費用を絞っても、全社の営業利益は数億円にとどまる。
独占の看板だけが残り、稼ぐ力は失われる。事業用の資産は残るが、収益を生む力は低い。配当は谷の前の年の利益と手元資金で払い、足りない分は使っていない機械や土地建物など不要資産の売却も充てて、減配の幅を抑える。
- 国内の圧入機(販売・レンタル・部品):数量 250(国内の圧入機の年間販売台数(台、推定。レンタルと部品・消耗品の売上を台数に割り戻した換算))× 価格 5,360(1 台あたりの売上(万円、レンタル・部品・消耗品を含む名目))→ 売上 134 億円・営業利益 20 億円。台数 250、営業利益率 15%
- 海外の圧入機(販売・レンタル・部品):数量 45.0(海外の圧入機の年間販売台数(台、推定。レンタルと部品・消耗品を台数に割り戻した換算))× 価格 8,538(1 台あたりの売上(万円、レンタル・部品・消耗品を含む名目))→ 売上 38 億円・営業利益 0 億円。台数 45、営業利益率 0%
- 圧入工事(技研施工):数量 140(年間の施工現場数(件、推定))× 価格 4,800(1 件あたりの売上(万円、名目))→ 売上 67 億円・営業利益 4 億円。施工 140 件、値上げは物価の半分ほど、営業利益率 6%
倍率:構造的な負け。稼ぐ力はほぼ消えるので、純現金+売れる資産の税後を床にした。約 160 億円とみた。PBR はこの床を今の自己資本 403 億円で割った値。
確率:海外が崩れ、代わりの工法に国内も押される構造的な負け。9 割のシェアがあるため全面的な崩壊は考えにくく確率は低めだが、過去の海外の失敗から無視はできない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
国内の圧入機(販売・レンタル・部品)
国内の施工会社・ゼネコン向けに、圧入機(サイレントパイラー、ジャイロパイラーなど)を売り、貸し、部品と消耗品を供給する事業。
| 数量国内の圧入機の年間販売台数(台、推定。レンタルと部品・消耗品の売上を台数に割り戻した換算) | 価格1 台あたりの売上(万円、レンタル・部品・消耗品を含む名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 330 | 4,000 | 132 | 31 |
| 10 年後 中立 | 390 | 5,360 | 209 | 52 |
取り方:建設機械事業の売上 176.6 億円のうち海外 50 億円ほどを除いた約 132 億円を国内とみた。国内は 2025 年 8 月期に 24.6% 減っており、1 台あたり約 4,000 万円(部品・レンタル込み)なら約 330 台になる。今の台数は谷に近い。
海外の圧入機(販売・レンタル・部品)
欧州・アジア・北米の施工会社向けの圧入機の販売、レンタル、部品。大型特殊機とジャイロパイラーが中心。
| 数量海外の圧入機の年間販売台数(台、推定。レンタルと部品・消耗品を台数に割り戻した換算) | 価格1 台あたりの売上(万円、レンタル・部品・消耗品を含む名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 70.0 | 6,371 | 45 | 8 |
| 10 年後 中立 | 125 | 8,538 | 107 | 21 |
取り方:海外売上 50.1 億円のうち工事分を約 5.5 億円と推定し、残り 44.6 億円を海外の圧入機とした。大型特殊機の比率が高く 1 台あたり約 6,400 万円、約 70 台と置く。 数量は圧入機の販売台数(実物)。
圧入工事(技研施工)
子会社の技研施工が自ら行う圧入工事。開発段階の工法で実績をつくり、広がった段階で機械を売る入口の役目も持つ。
| 数量年間の施工現場数(件、推定) | 価格1 件あたりの売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/08 | 217 | 4,000 | 87 | 11 |
| 10 年後 中立 | 230 | 5,360 | 123 | 16 |
取り方:圧入工事事業の売上 86.8 億円を、1 件あたり約 4,000 万円(災害復旧・河川・道路・港湾の工事)で割り、約 217 件とした。営業利益 10.9 億円。
リスクと懸念
海外の市場づくりの失敗
北米と豪州では想定した市場が立ち上がらず、豪州の元子会社との和解で8億円の特別損失を出した。欧州とアジアで同じことが起きれば、費用だけが残る。海外の約半分はアジア向けで、地域の偏りもある。
国内の設備投資の冷え込み
建設コストの高騰と技能労働者の不足で、国内の機械売上は2025年8月期に約25%減った。国土強靭化が2030年で一区切りになれば、公共工事の量が戻らないおそれがある。機械の買い控えは一度始まると長引く。
振動工法という代わりの方法
近くに家がなければ振動工法は安く、圧入の優位が出ない現場が多い。騒音規制の運用や工事費の事情で、選ばれる条件が変わる。圧入の市場は、この代わりの工法との差で決まる。
計画の下方修正が続いている
中期計画は2023年と2025年に目標を引き下げた。2027年8月期の営業利益の目標は49億円から32億円以上になった。計画の精度に疑問が残り、次の数字が信頼されなければ経営への評価も下がる。
利益率の低下
営業利益率は2019年8月期の21%から2025年8月期の10%に下がった。材料と人件費の上昇、海外投資と研究開発の費用が重い。売上が伸びても、利益率が戻らなければ株主の取り分は増えない。
創業家の持ち株会社が大株主であること
創業家の北村家が持つ北村興産が約22%を握る。経営の安定には役立つが、少数株主の意見が通りにくい面や、資本政策の判断が創業家の事情に左右される面がある。
関税と海外の価格
米国の関税は、製品価格を上げて客の投資姿勢を弱めた。インドでは現地の価格を下げる圧力が強く、認知もまだ低い。機械の値段を物価並みに上げられない地域が増えれば、海外の利益率は上がりにくい。
今後の分かれ目
- 海外売上が中期計画どおり75億円を超え、会員の数が増え続けたら
- 強気の筋書きの確率を上げてよい。会員が機械を買い増すか、レンタルが積み上がるかを確かめる。
- インドの20キロ区間の大型案件が採用され、複数台の販売が決まったら
- アジアでの量産効果が見え始めたとみて、やや楽観の側に重みを移す。
- 国内の機械売上が2期続けて前年を下回ったら
- 国内の谷が長引くとみて、やや悲観の側に確率を移す。国土強靭化の予算の動きと合わせて見る。
- 海外の拠点の閉鎖や、新たな特別損失が出たら
- 海外の市場づくりの失敗が繰り返されたとみて、悲観の確率を上げる。
- 営業利益率が3期続けて13%を超えたら
- 費用の増加を売上が吸収し始めたとみて、中立の利益率の置き方を見直す。
- 北村興産が持ち株を動かしたり、非公開化の動きが出たりしたら
- 会社の価値より買収価格が基準になる。創業家の意向と価格を個別に確かめて、価値を見直す。
見ておくもの
- 海外売上(25/08 期 50 億円、26/08 期の実績と 27/08 期の見通し)と地域別の構成
- GTOSS 会員の数と、会員による機械の買い増し・レンタルの量
- 国内の機械の売上と、国土強靭化・首都高更新の発注
- 営業利益率の推移(機械・工事のセグメント別)
- 中期計画の最終年度(2027/08 期)の達成度と次の計画
倍率と資本コストの決め方
売上は台数と1台あたりの売上で積み上げ、今の株価は使っていない。倍率は利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)から出した(k 7.5%=基本7.5%+quality +0.5%、g 4%、強い堀ではないので資本コストを超える稼ぎは半分残る)。中立はROEが資本コストと同じなので上限は1÷kに近く、1÷k × ROE÷k × 0.9 の 11.3 倍に置いた。やや悲観は稼ぐ力、悲観は純現金と売れる資産の床で測っている。brief.pyは2025年8月期を現在としているので、26年8月期の実績(営業利益31億円など)は補強に使い、起点は2025年8月期のままとした。今の株価に寄せた所はない。結論が割高になったのは、中立の純利益が今のおよそ1.6倍にとどまるからである。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 12.5→17.59 倍・やや楽観 PER 11.6→15.19 倍・中立 PER 11.3→13.81 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +0.5% = 8.0%。海外の市場づくりの失敗や経営計画の下方修正は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。