結論
加地テックは、空気・ガスを圧縮する機械を作る専業メーカーだ。燃料電池車向け水素ステーションの超高圧圧縮機で国内首位級にあり、石油化学プラントやCO2回収設備にも納める。大株主は三井E&Sで、議決権の51%を持つ親会社だ。
2026年3月期は売上78億円、営業利益9億円と、営業利益率は12%に達した。過去12年で最も高い。ただ、筆者はこの水準が長く続くとは見ていない。中立では10%まで戻ると置く。
水素ステーションの普及が遅れ、本体の伸びは期待しにくい。会社自身も新しい中期計画で、水素の本体売上の大きな伸びは見込まないと明言している。稼ぎの柱は保守・部品とCO2回収などの新分野に移りつつある。
時価総額は約84億円で、自己資本とほぼ同じだ。純現金は8億円と薄く、現金を積み上げても親会社の下では株主に戻りにくい。
筆者の結論は「割高」だ。製品は良いが、利益率の山と親会社の存在を考えると、今の値段は10年の稼ぎに比べて高い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、加地テックは「良い製品を持つが、株主に戻る額が小さい会社」だ。超高圧の圧縮機と保守は、10年後も必要とされる。だが、水素という成長の物語は遅れ、本体の数量は増えない。
オーナー利益は、純利益から設備の更新を引いた額に近い。設備は大きくなく、年3〜4億円の投資で回るため、利益の大半が現金で残る。問題は、その現金の行き先だ。親会社が過半を持つ限り、使い道は少数株主が決められない。
自己資本約85億円に対し、純利益は7億円。ROEは8%台で資本コストを少し上回るが、利益率が過去の山にある今は割り引いて見るべきだ。
安全域は、純現金と無借金に近い財務にある。ただ、時価総額が自己資本と同じ水準にある以上、筆者は、この値段で大きな上振れを買う必要はないと考える。
経営は無理をせず、借金も買収もない。この堅実さは評価できる。
何で稼ぐ会社か
事業は圧縮機の製造販売の1本で、報告セグメントも1つだ。製品は空気圧縮機、ガス圧縮機、水素ステーション用の空冷オイルレス圧縮機、PETボトル成形用の高圧圧縮機などだ。納入後の保守、部品交換、設置工事も手がける。
水素ステーション向けは、岩谷産業など供給会社が主な顧客になる。有価証券報告書では岩谷瓦斯が最大の顧客で、売上比率は前期の14%から当期は9%に下がった。水素ステーションの新設が進まないためだ。
一方、海外石油化学プラント向けは減少し、CO2回収設備向けの大口案件が増えた。従業員は205名と小さく、機械加工と組立、試験を自社で担う。
受注から納入まで1年前後かかる受注生産型で、四半期ごとの売上は大口の納期で振れる。2026年3月期の売上は前期比11%増の78億円で、営業利益は49%増の9億円だった。
新しい「2026中期経営計画」(2026〜2028年度)は、2028年度に売上78億円、営業利益11億円を掲げる。売上は横ばいで、利益率を上げる計画だ。
売上の構成は、本体の新造と、保守・部品・工事に分かれる。保守の比率が高まれば、景気の波が小さくなる。
優良さと弱いところ
強みは、水素のような超高圧領域で圧縮機を設計・製造できる技術と、納めた機械の保守を握る点にある。ステーション用は止まれば営業できないので、顧客は納入後も同じメーカーに部品と点検を頼む。このアフターサービスが景気で振れにくい稼ぎになる。
弱みも多い。水素は需要が政策に左右され、ステーションの新設は計画どおりに進んでいない。売上の大半が数件の大口案件で決まり、1件の遅れが年度の利益を動かす。規模が小さく、神戸製鋼所や海外大手との価格勝負では不利になる。
営業利益率は2016年以降の12年で2〜12%の幅で動いた。直近の12%は、原価の上昇を値上げで吸収し、保守の比率が上がった結果だ。ROEは過去10年の中央値が4.5%と、資本コストに届いていない。
財務は堅い。自己資本比率は69%で、利払いの92倍の営業利益がある。政策保有株はない。経営は安定しているが、親会社の三井E&Sが株式の過半を持つため、少数株主の意見は届きにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
圧縮機の需要は、石油化学・ガス・産業ガス・食品飲料容器・水素と、用途ごとに景気の山谷が違う。加地テックが強いのは、容器成形用の高圧空気と、水素ステーション、CO2回収の3分野だ。
水素ステーションは、燃料電池車の普及が想定より遅れ、新設が伸び悩んでいる。政府は水素社会の目標を掲げるが、乗用車の需要は弱く、商用車(トラック・バス)への期待に移った。ステーション向けの本体は、筆者は10年で数量が増えないと見る。
一方、CO2回収・貯留は政策の後押しがあり、大型の案件が出始めた。2025年3月期の受注はこの分野の大口で伸びた。海外の石油化学プラント向けは、中国の過剰設備と欧州の需要減で、足元は弱い。
競合は、神戸製鋼所、日立グループ、海外のBurckhardt Compression、Hydro-Pacなどの大手だ。大手は大型プラントを取り、加地テックは中小型と超高圧に絞る。人件費と部材の値上がりが続き、値上げを通せるかが利益の分かれ目になる。
圧縮機は止まれば顧客の設備が止まる心臓部で、納入後の保守が長く続く。新規の参入は技術と実績の壁が高い。
資本政策と M&A
還元は小さい。2026年3月期の配当総額は0.7億円で、純利益に対する比率は1割に満たない。新しい中期計画は、配当性向20%程度を目標にする。3年間の還元は4.1億円、営業キャッシュフロー27億円のうち事業投資に13億円、財務基盤の強化に9.9億円を回す計画だ。
親会社の三井E&Sが議決権の51%を持つ。親子上場なので、余った現金が株主に戻る力は弱いと筆者は見る。自社株買いの実績はなく、政策保有株もない。
大型の買収の歴史はなく、M&Aで価値を壊す心配は小さい。TOBの可能性は、親会社が非中核の子会社を整理する流れがあるため、10年以内なら無視できない。ただ、見込みを価値に足してはいない。
株主優待はない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
CO2回収と水素の二つの追い風が、10年かけて効いてくる。CO2回収設備は政策の後押しで大型案件が続き、水素もステーションから、工場・港湾・発電の供給網に広がる。国内首位級の技術は、その用途にそのまま使える。
保守の比率が上がり、営業利益率は中計どおり14%に近づく。納めた機械の部品交換が積み上がれば、景気が悪くても利益が崩れにくい。自己資本比率69%の無借金に近い財務は、不況でも余裕がある。
配当性向20%への引き上げで、還元も増える。親会社の三井E&Sが事業ポートフォリオを見直し、加地テックの買い取りや統合に動けば、少数株主にもプレミアムが付く。
従業員205名の小さな会社が、水素分野の専業として育てた技術は、大手が小口の案件を嫌う隙間で強い。
親会社が資本を整理する局面では、少数株主にも売却の機会が来るかもしれない。
小さな会社だからこそ、1件の大口が利益を大きく動かす。
水素の本体が伸びなくても、保守と部品の積み上がりが利益を支える。
慎重な見方
2026年3月期の営業利益率12%は、過去12年で最高だ。大口案件の納期が重なった結果で、続く保証はない。中計は売上78億円と横ばいを掲げており、会社自身が成長を見ていない。
水素ステーションは新設が止まり、最大顧客の売上比率も下がった。CO2回収は大口が1件で年度の数字を動かし、翌年は反動が出る。海外の石油化学向けは中国の過剰設備で弱い。
親会社が過半を持つので、余った現金は配当にも自社株買いにも回りにくい。ROEは長く4〜5%で、利益を積み上げても株主の取り分は増えなかった。10年の成長が物価並みなら、今の値段はそれを織り込んでいる。
大手の神戸製鋼所や海外勢が超高圧に本格参入すれば、価格で押される。
利益率の山から落ちれば、ROEは再び5%前後に戻る。そこで株主に戻る現金は少ない。
過去の山のたびに利益率は戻ってきた。今回も例外ではないと見る。
水素の普及遅れは、数年ではなく構造の問題かもしれない。
どちらに重みを置いたか
製品の強さは強気の見方が正しいが、需要の読みにくさと親会社の存在は慎重な見方が勝る。確率は中立を軸に、やや悲観をやや厚くした。
利益率の山の高さを割り引くので、中立は営業利益率10%に置いた。上振れの根拠はCO2回収の大口案件の続き方だが、実績が2年に満たないため、楽観の確率は小さくした。
つまり、製品の強さは認めつつ、10年の稼ぎに比べて値段は高いと見る。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,129 円118 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 968 円16 億円)。 今の値に割り戻すと 4,133 円68 億円、今との差 −19.4%、 期待の年率 +4.7%(資本コスト 7.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 13,721 円227 億円 | 1,330 円22 億円 | +193.4% | +11.4% | 1,204 円20 億円 |
| やや楽観 | 22% | 9,816 円162 億円 | 1,149 円19 億円 | +113.7% | +7.9% | 2,412 円40 億円 |
| 中立 | 40% | 7,535 円125 億円 | 1,028 円17 億円 | +66.9% | +5.3% | 3,425 円57 億円 |
| やや悲観 | 22% | 3,194 円53 億円 | 725 円12 億円 | −23.6% | −2.7% | 862 円14 億円 |
| 悲観 | 8% | 1,935 円32 億円 | 484 円8 億円 | −52.9% | −7.2% | 193 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,129 円118 億円 | 968 円16 億円 | +57.8% | +4.7% | 8,097 円134 億円 |
今の株価時価総額 5,130 円85 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 楽観:CO2回収と水素の供給網が育ち、利益率は14% 利益 14 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 13,721 円227 億円
CO2回収・貯留の設備が国内外で立ち上がり、圧縮機の需要が10年続く。水素もステーションから工場・港湾・発電に広がり、数量は実質で25%増える。
納めた機械の保守・部品が積み上がり、営業利益率は中計が掲げる14%に届く。値上げは物価並みに通る。
配当性向は20%を超え、還元も増える。自己資本は170億円台に積み上がる。
親会社が事業の見直しで株を動かし、少数株主にもプレミアムが付く可能性も、この筋書きの上振れ要因だ。
数量の伸びは、水素とCO2回収の二本柱が同時に立ち上がることが条件だ。1本だけでは足りない。
- 圧縮機事業(本体・部品・保守):数量 75.0(販売台数相当(台。売上÷平均単価の推定))× 価格 1.74(1台相当あたりの売上(億円、名目))→ 売上 131 億円・営業利益 18 億円。75台相当 × 1台1.74億円(物価1.34倍)、営業利益率14%
倍率:事業の純利益 14 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 14.99 倍、時価総額 214 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:CO2回収の大口が続き、水素も供給網に広がる筋書き。実績が2年に満たず1割に届かない。
やや楽観 22% やや楽観:保守が伸び、利益率は12%を保つ 利益 11 億円 · PER 13.6 倍 · 株価時価総額 9,816 円162 億円
CO2回収の案件が途切れず、水素も横ばいを保つ。数量は実質で1割増える。保守・部品の比率が上がり、営業利益率は直近の12%を保つ。
値上げは物価並みに通る。大口案件の波はあるが、年平均では中計の売上78億円を上回る。
配当は性向20%に近づく。自己資本は160億円ほどになる。
設備の更新は機械加工の機械が中心で、投資は年3〜4億円に収まる。
大口案件の波は年ごとに大きいが、10年の平均で見ればこの水準に落ち着くというのが筆者の見立てだ。
親会社の方針が変わらなければ、現金は内部に残る。
この筋書きは、直近の好調がそのまま続く形で、特別な追い風は置いていない。
- 圧縮機事業(本体・部品・保守):数量 66.0(販売台数相当(台。売上÷平均単価の推定))× 価格 1.74(1台相当あたりの売上(億円、名目))→ 売上 115 億円・営業利益 14 億円。66台相当 × 1台1.74億円、営業利益率12%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.62 倍、時価総額 147 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の12%を保ち、数量がCO2回収で少し増える筋書き。
中立 40% 中立:数量は横ばい、利益率は10%に戻る 利益 8 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 7,535 円125 億円
水素本体は横ばい、CO2回収は大口が出ては切れる波を繰り返し、数量は実質で今と同じ水準にとどまる。物価並みの値上げ(1.34倍)が通り、売上は10年で100億円台に乗る。
営業利益率は10%に戻る。今の12%は大口の納期が重なった山で、保守の比率が少し上がる分だけ、過去の平均より高い水準を保つ。
設備の更新は、取得時の値段のまま償却される既存の機械に加え、新しい機械が高い値段で入る。更新費は年3〜4億円から、物価で膨らむ。
配当は性向20%に近づけるが、多くは内部に残る。
大口の波は年によって大きいが、10年の平均で見れば数量は横ばいと筆者は置く。
- 圧縮機事業(本体・部品・保守):数量 60.0(販売台数相当(台。売上÷平均単価の推定))× 価格 1.74(1台相当あたりの売上(億円、名目))→ 売上 105 億円・営業利益 11 億円。60台相当 × 1台1.74億円、営業利益率10%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.5% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 109 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:需要の読みにくさを考え、利益率を山から落とした普通の筋書き。
やや悲観 22% やや悲観:水素・石化の投資が細り、利益率は6〜7% 利益 4 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 3,194 円53 億円
水素ステーションの新設が止まり、海外石化向けも中国の過剰設備で戻らない。CO2回収だけでは穴を埋められず、数量は実質で1割縮む。
値上げが部材高に追いつかず、価格は物価並みに届かない。営業利益率は6〜7%に下がる。
配当性向20%は守るが、利益が細るので額は減る。自己資本は120億円台にとどまる。
大口案件の波は年ごとに大きいが、10年の平均で見ればこの水準に落ち着くというのが筆者の見立てだ。
新製品の開発費も重く、利益の回復は遅れる。
この筋書きでは、親会社の下で配当の引き上げも限られ、現金は内部にたまる。
- 圧縮機事業(本体・部品・保守):数量 54.0(販売台数相当(台。売上÷平均単価の推定))× 価格 1.60(1台相当あたりの売上(億円、名目))→ 売上 86 億円・営業利益 6 億円。54台相当 × 1台1.60億円(値上げが物価に届かない)、営業利益率6.5%
倍率:ROE 約3.6%で k を大きく下回る。上限 1÷k=12.5 倍より低く、中立の10倍から下げて9倍に置いた。
確率:水素の停滞が続き、石化の投資も弱い筋書き。親会社の下で値付けも通りにくい。
悲観 8% 悲観:超高圧の需要が構造的に縮み、ほぼ収支均衡 利益 1 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,935 円32 億円
水素社会が遅れたまま政策が転換し、超高圧の需要が縮む。CO2回収の案件も海外大手に流れ、数量は実質で3分の2に減る。
固定費の重い国内工場の稼働率が下がり、営業利益率は1%に落ちる。減損が出て自己資本は減る。
配当は縮み、保守だけで細々と回る会社になる。価値は稼ぐ力でなく、純現金と工場・在庫の売却値に頼る。
大口案件の波は年ごとに大きいが、10年の平均で見ればこの水準に落ち着くというのが筆者の見立てだ。
人員の削減と工場の統合が避けられず、技能の継承も途切れる。
こうなれば会社は縮小均衡に入り、親会社の整理の対象にもなりうる。
- 圧縮機事業(本体・部品・保守):数量 40.0(販売台数相当(台。売上÷平均単価の推定))× 価格 1.40(1台相当あたりの売上(億円、名目))→ 売上 56 億円・営業利益 1 億円。40台相当 × 1台1.40億円、営業利益率1%
倍率:稼ぐ力がほぼ無いので、床は今の自己資本85億円に掛ける。工場・機械・在庫の売却価値を簿価の約4割として0.4倍。中立の PBR(約0.55倍)より低い。
確率:大手・海外勢に取られ、水素も立ち上がらない構造的な負け。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
圧縮機事業(本体・部品・保守)
空気・ガス・水素用の圧縮機の製造販売と、納入後の保守・部品・工事。報告セグメントは単一。
| 数量販売台数相当(台。売上÷平均単価の推定) | 価格1台相当あたりの売上(億円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 1.30 | 78 | 9 |
| 10 年後 中立 | 60.0 | 1.74 | 105 | 11 |
取り方:売上78.0億円を、1台相当1.3億円(水素ステーション用は1〜2億円台、容器成形用や保守は小口)の平均で割った推定で、60台相当と置いた。製品別の金額・台数は開示されていない。営業利益9.25億円は決算短信の値。
リスクと懸念
水素ステーションの新設停滞
燃料電池車の普及が遅れ、ステーションの新設が進まない。最大顧客の売上比率は14%から9%に下がった。本体の数量は増えにくい。
大口案件に左右される受注
受注生産で、CO2回収などの大口が数件で年度の売上を動かす。納期のずれや失注が重なると、利益が大きく振れる。
利益率の山からの戻り
営業利益率12%は過去12年の最高。部材高の転嫁や保守比率の上昇が続かなければ、2016年以降の平均である5〜7%台に戻りうる。
親会社の存在
三井E&Sが議決権の51%を持つ。余った現金の使い道、配当方針、株式の扱いは少数株主が決められない。
大手・海外勢との競争
神戸製鋼所や海外の圧縮機大手が超高圧に力を入れれば、価格で押される。規模の小さい会社は研究開発費の負担も重い。
人材確保
従業員は205名で、設計・組立・試験の熟練者が支える。採用難と賃上げが原価を押し上げる。
今後の分かれ目
- CO2回収設備向けの受注が複数年にわたり続いたら
- 数量は中立を上回る。やや楽観に確率を寄せる材料になる。
- 水素ステーションの新設が商用車向けで再び動き出したら
- 本体の数量が回復し、利益率の上振れ要因になる。
- 保守・部品の売上比率が3割を超えて開示されたら
- 利益の振れが小さくなり、k の寿命の項を下げる余地が出る。
- 三井E&Sが保有株の売却や統合を発表したら
- プレミアムが付く可能性がある。条件次第で価値は大きく動く。
- 営業利益率が8%を割る年が続いたら
- やや悲観の確率を上げる。山の利益率が一時的だった証拠になる。
見ておくもの
- 受注高と受注残(CO2回収・水素の内訳)
- 営業利益率(10%の維持)
- 保守・部品の売上比率
- 三井E&Sの保有方針
- 配当性向20%の達成
倍率と資本コストの決め方
倍率は ROE が k 7.5%を下回る筋書きが中心なので、上限 1÷k(12.5倍)の7〜9割に置いた。今の株価(PER 約11.6倍・PBR 約1.0倍)や同業の倍率は根拠にしていない。営業利益率は過去12年の山(12%)より下の10%を中立とした。新リース会計基準の影響は小さく、今の形で揃えた。純現金は8億円で時価総額の1割に届かず、余った現金としては分けていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.5→14.99 倍・やや楽観 PER 10.5→13.62 倍・中立 PER 10→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。