結論
小田原エンジニアリングは、モーターのコイルを巻く機械と全自動ラインを作る神奈川県の会社だ。世界の巻線機で2位とされ、電動車の駆動モーター向けに強い。筆者の結論は「ほぼ適正」。事業の価値は高いが、今の値段はそれをほぼ織り込んでいる。
2025年12月期は、売上182億円、営業利益30億円と過去最高だった。ただ、前の年からずれ込んだ大型案件の計上と、利益率の高い追加治具の好調が重なった一度きりの山だ。受注残は前の年より34%減り、会社自身の2026年の予想は営業利益12億円と減益になっている。
現金は82億円あり、時価総額の7割にあたる。ただ受注生産の前受金が混ざり、すべてが余った現金ではない。
主要顧客のAstemoが売上の半分を占める点も重い。山をならした利益で見れば、今の値段に安全域はない。
10年の中立でも、筆者は営業利益を17億円ほどと置く。2025年の山の半分強だ。電動車の世界生産は伸びるが、会社の受注は主要顧客の投資が動く時にしか出ない。現金を除いた事業の稼ぎに、今の値段はほぼ見合っている。現金の半分が株主に戻る道筋も、まだ見えない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべきは「利益がどこまで読めるか」と「現金をどう使うか」だ。小田原エンジニアリングは、技術は一流だが、受注生産で利益の波が大きく、主要顧客が売上の半分を占める。オーナーとして長く持ちたい会社の条件である、利益の読みやすさが欠ける。
2025年の営業利益30億円は、山と見るのが安全だ。ずれ込んだ案件の計上と、追加治具の利益が重なった。2026年の会社予想は12億円だが、中間期にすでに15億円を稼いでいる。実際は予想より高くなる。山をならした営業利益は15〜20億円と見る。
現金は82億円あり、時価総額の7割を占める。借金がなく、自己資本比率は75%と堅い。ただし受注の前受金が含まれ、株主に戻す方針も示されない。純利益の2割弱しか配当に回らない。
安全域は、事業の価値の小ささが決める。時価総額から現金を引くと、34億円で事業を買える計算に見える。しかし、現金の半分は前受金などで、事業に必要だ。
筆者は、この会社に今の値段で十分な安全域を見いだせない。
長く持つ株主の目で見れば、この会社の弱点は資本の使い方の見えにくさだ。現金82億円の使い道が語られず、利益のほとんどが積み上がっていく。技術への投資は十分だが、株主に戻す意思は弱い。
何で稼ぐ会社か
小田原エンジニアリングは、モーター用の巻線機と、巻線から組み立て・検査までをつなぐ全自動ラインを作る会社だ。事業は2つに分かれる。
1つは巻線機事業で、売上の75%を占める。電動車の駆動モーター、家電、事務機、医療機器などのモーターやコイルに、銅線を巻く設備を作る。近年は電動車の駆動モーターのヘアピン型コイルの成形と溶接の設備に力を入れる。注文に合わせて作る完全受注生産で、1本の案件が数億円から10億円を超える。2025年12月期は売上136億円、営業利益33億円で、利益率は24.5%だった。
もう1つが送風機・住設関連事業で、売上は47億円。工作機械や産業用ロボット向けの軸流ファンなどを、子会社のローヤル電機などで作る。利益率は3%と低い。
顧客の偏りは大きい。米国のAstemo Americasだけで売上の49.9%を占める。前の年は中国の南京の日立Astemo向けが27%だった。つまり、日立Astemoの電動車向けの設備投資が、会社の売上を左右する。
受注は、巻線機が75億円で前の年より5%増、受注残は94億円で39%減だった。受注残が減ったため、2026年は売上が下がる見込みだ。
生産は、神奈川の本社工場と、長岡、深谷、米国のオハイオ州に拠点がある。2025年の設備投資は17億円で、長岡の新社屋が中心だった。
2026年は会社の予想が営業利益12億円と減益だが、中間期の実績はすでに15億円で、予想は保守的に見える。山と谷の波が大きい会社であることに変わりはない。
優良さと弱いところ
小田原エンジニアリングは、「技術は世界で通用するが、顧客が偏り、波が大きい」会社だ。
巻線機は日本の2社が世界の過半を握るとされ、小田原エンジニアリングはその一角にいる。ヘアピン型コイルの成形から溶接までの全工程を自動化できる。電動車の駆動モーターの生産ラインに入れる数少ない会社だ。顧客の工程に合わせて作り込むので、一度採用されると改造や追加治具、消耗品で長く稼ぐ。2025年の高い利益率は、この追加分の利益率が高いことも一因だ。
弱みは波の大きさと偏りだ。営業利益率は過去に3%から17%の幅で動いた。2025年の16.7%は過去最高にあたり、これを平常の水準と見るのは危うい。売上の半分を1社が占めるので、その顧客の投資の延期が直撃する。2025年の決算説明も、新型車の開発の遅れや見直しで設備投資が一部で落ち込んだと認めている。
中国の巻線機メーカーが低い値段で追い上げる点も、値決めの力を弱める。
経営は慎重で、財務は堅い。借金はなく、自己資本比率は75%だ。政策保有株は3銘柄で3億円と小さい。
筆者がいちばん気にしているのは、利益の「読みやすさ」だ。世界で通用する技術があっても、売上の半分を1社が占め、受注が年によって半分にも倍にもなる会社は、10年先の利益を言い切れない。技術の確かさは堀の一部だが、顧客の偏りがそれを削っている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
電動車の駆動モーターは、ステーターに平角の銅線を差し込んで溶接するヘアピン方式が主流になりつつある。巻線機の需要は、電動車の世界生産と、自動車メーカーの新型車の開発の投資計画に連動する。国際エネルギー機関は、電動車の世界販売が2030年に3,000万台を超えると見通す。
ただ足元は、電動車の需要の鈍化で、自動車メーカーが新型車の開発を延期している。会社も、設備投資が一部で落ち込んだと述べている。
競合は、日本のNITTOKU、ドイツのAumannやGehring、イタリアのTecnomatic(スウェーデンのAtlas Copco傘下)、中国の巻線機メーカーだ。NITTOKUは同じ領域で、米国の防犯向けの特需で利益が山にあり、本業の稼ぎは小さい。中国勢は価格で攻める。
電動車以外では、産業用ロボットやデータセンターの冷却ファン、家電のモーターなどにも巻線機の需要がある。
筆者は、巻線機の台数は山をならして、2025年の8割に落ち着くと置いた。電動車の世界生産は伸びるが、会社の受注に結びつくのは主要顧客の投資が動く時だけだ。値段は物価並みに上がる。
電動車以外の用途の広がりは、10年を考える鍵になる。人型ロボットの関節モーター、データセンターの冷却ファン、産業用ロボットのモーターなどは、巻線機の新しい需要だ。ただ、まだ売上に育っておらず、台数を置くには根拠が足りない。中立では織り込まず、楽観だけに入れた。
資本政策と M&A
資本政策は慎重で、還元は小さい。配当は期末の年1回で、2025年12月期の配当総額は4億円だった。純利益の17%にとどまる。方針は、内部留保を充実させながら、安定的に配当を続けることだ。自社株買いの記載は見当たらない。
現金は82億円で、借金はない。受注生産の前受金が含まれ、2025年は契約負債が59億円減った。実際に余った現金は、運転資金と前受金を引いて40億円ほどと見る。
筆頭株主は公益財団法人の津川モーター研究財団で、持株比率は17%だ。個人株主が多い。
2013年にローヤル電機を公開買付けで子会社化し、2016年に完全子会社にした。2024年には多賀製作所を吸収合併した。外部の推計では、10年以内にTOBや買収が起きる確率は31%と高い。ただ、今回の調べでは、公開買付けや非公開化の発表は確認できなかった。
現金の使い道は、これからの価値を決める最大の要素だ。長岡の新社屋のような設備投資は小さく、買収も当面は見えない。配当の増額や自社株買いが示されれば、評価は大きく変わる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
小田原エンジニアリングは、世界2位の巻線機メーカーだ。電動車の駆動モーターに必要なヘアピン型コイルの成形から溶接までの全工程を、自社で作れる。2025年に営業利益30億円を稼ぎ、前の中期計画の目標(営業利益18億円)を1年前倒しで達成した。実力は本物である。
2026年の会社予想の営業利益12億円は保守的だ。中間期にすでに15億円を稼いだ。通期でも20億円を超える見込みで、山をならした水準は従来の2倍近い。
現金は82億円で時価総額の7割を占め、事業を買うのに必要な額は34億円にすぎない。電動車の世界生産は2030年に3,000万台を超える。自動車メーカーの投資が戻れば、受注は再び伸びる。人型ロボットやデータセンターの冷却用モーターなど、新しい用途もある。配当は2025年に総額4億円で、さらに増える余地がある。
中立の倍率が低すぎるという見方もできる。台数を2025年の8割と置いたが、受注残が減ったのは大型案件を前倒しで計上した反動で、実需は落ちていない。2025年の受注は前年比5%増で、実力はむしろ上向いている。
慎重な見方
2025年の営業利益30億円は、一度きりの山だ。ずれ込んだ大型案件が計上され、利益率の高い追加治具が好調だった。受注残は94億円と前の年から39%減り、2026年は減益になる。
売上の半分を米国のAstemo Americasが占める。自動車メーカーの新型車の開発の延期は続き、この1社の投資の動きが会社の売上を左右する。内製化や中国の巻線機メーカーの価格攻勢で、顧客を失う危険もある。
現金82億円は、受注生産の前受金を含み、すべてが余った現金ではない。しかも、純利益の2割弱しか配当に回さず、自社株買いも見当たらない。現金は積み上がるだけで、株主に戻る保証がない。
営業利益率は過去に3〜17%の幅で動いた。山の利益に高い倍率を付けるのは危うい。山をならせば、営業利益は15億円前後に落ちる。
人型ロボットやデータセンターは、まだ売上に育っていない。電動車の需要の鈍化で自動車メーカーは新型車を絞り、駆動モーターの生産ラインの新設は後ろに倒れている。世界2位という位置も、売上の半分を1社が占める事実の裏返しにすぎない。技術があっても、顧客が減らせば台数は戻らない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。強気の言い分である技術の確かさと、山の下の底の高さ(会社の予想は保守的)は事実だが、2025年の利益は山で、顧客は偏り、現金の戻りは弱い。余った現金への戻り方は0.5とした。中立の倍率は式の上限(約11倍)を下回る8.9倍に置いた。確率は、山をならした姿に3割台半ば、悪い側に3割強を置いた。強気側に寄せる材料は、主要顧客以外からの大型受注と、現金の使い道を示す還元方針だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 4,413 円253 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 900 円52 億円)。 今の値に割り戻すと 2,657 円152 億円、今との差 +31.0%、 期待の年率 +10.1%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 9,976 円572 億円 | 1,744 円100 億円 | +477.6% | +19.2% | 1,172 円67 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,502 円373 億円 | 1,221 円70 億円 | +280.6% | +14.3% | 1,699 円97 億円 |
| 中立 | 36% | 4,217 円242 億円 | 872 円50 億円 | +150.8% | +9.6% | 1,832 円105 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,682 円96 億円 | 558 円32 億円 | +10.4% | +1.0% | 493 円28 億円 |
| 悲観 | 10% | 968 円56 億円 | 209 円12 億円 | −42.0% | −5.3% | 118 円7 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,413 円253 億円 | 900 円52 億円 | +161.9% | +10.1% | 5,314 円305 億円 |
今の株価時価総額 2,029 円116 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 電動車の駆動モーター向けが戻り、新しい用途も加わって、受注が高い水準で続く 利益 33 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 9,976 円572 億円
電動車の駆動モーターは世界で増え続け、自動車メーカーの新型車の開発も再開する。主要顧客のAstemoは北米と中国で投資を続け、巻線設備の発注が高い水準で続く。人型ロボットやデータセンターの冷却用モーターなど、新しい用途の巻線機も売上に育つ。巻線機の台数は2025年の山より15%多く、値段は物価以上に上がる。営業利益率は16.7%の過去最高に届かないが、14%まで上がる。受注は山と谷を繰り返すが、10年の平均では高い。配当は性向を引き上げ、10年で100億円ほどを返す。現金は大きく積み上がり、時価総額への評価にも加わる。
- 巻線機事業(モーター用巻線設備・巻線ライン):数量 104(ライン換算の出荷数(本。推定))× 価格 2.10(1ラインあたり売上(億円。名目))→ 売上 219 億円・営業利益 44 億円。台数1.15倍・単価1.40倍
- 送風機・住設関連事業:数量 178(出荷数(万台。推定))× 価格 0.40(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 72 億円・営業利益 4 億円。台数1.15倍・単価1.34倍
倍率:事業の純利益 32 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 15.76 倍、時価総額 541 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:電動車の需要は長期で伸び、会社は世界2位の技術を持つ。ただし受注生産の設備は山谷が大きく、主要顧客が半分を占める。山の水準が10年続く筋書きは、1割にとどめた。
やや楽観 22% 受注は山をならして高めに保たれ、利益率も平均を上回る 利益 22 億円 · PER 14.3 倍 · 株価時価総額 6,502 円373 億円
受注は山をならして、2025年の水準に近い。台数は5%減にとどまり、値段は物価並みに上がる。巻線機の営業利益率は17%で、直近の山(24%)には届かず、過去の平均を上回る。送風機は工作機械と産業用ロボット向けの需要が戻り、小さく伸びる。主要顧客への依存は徐々に下がるが、半分近くを握る状況は変わらない。配当は性向を引き上げ、10年で70億円ほどを返す。それでも現金は積み上がり、使い道が決まらない。電動車の駆動モーター向けの投資は、2026年から緩やかに戻る。主要顧客以外の自動車メーカーや、電動車以外の用途からも受注が出て、売上の偏りは少し下がる。受注は山と谷を繰り返すが、10年の平均では堅調に保たれる。
- 巻線機事業(モーター用巻線設備・巻線ライン):数量 86.0(ライン換算の出荷数(本。推定))× 価格 2.06(1ラインあたり売上(億円。名目))→ 売上 177 億円・営業利益 30 億円。台数0.95倍・単価1.37倍
- 送風機・住設関連事業:数量 163(出荷数(万台。推定))× 価格 0.40(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 65 億円・営業利益 3 億円。台数1.05倍・単価1.34倍
倍率:事業の純利益 21 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 14.27 倍、時価総額 336 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残は減ったが、2025年の巻線機の受注は前年比5%増で、山の下には平均より高い底がある。山をならして高めに保たれる筋書きとして、2割強を置いた。
中立 36% 2025年の山は一度きりで、受注は山をならした量に落ち着く 利益 14 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,217 円242 億円
2025年の過去最高の利益は、前の年からずれ込んだ大型案件の売上計上と、追加治具や改造案件の好調が重なった一度きりの山だった。受注残は前の年より34%減り、会社自身の2026年の予想も減益だ。山をならすと、巻線機の台数は2025年の8割になる。値段は物価並みに上がり、営業利益率は14%に落ち着く。送風機と住宅設備は小さな黒字を保つ。設備の償却は取得時の値段のままだが、長岡の新社屋の分が足される。配当は性向35%を保ち、10年で50億円ほどを返す。現金は積み上がる。電動車向けの案件は、自動車メーカーの新型車の開発計画に左右されるため、年ごとの上下が大きい。10年の平均では、2025年の山を再現することはなく、山をならした水準に落ち着く。
- 巻線機事業(モーター用巻線設備・巻線ライン):数量 72.4(ライン換算の出荷数(本。推定))× 価格 2.01(1ラインあたり売上(億円。名目))→ 売上 146 億円・営業利益 20 億円。台数0.80倍・単価1.34倍
- 送風機・住設関連事業:数量 155(出荷数(万台。推定))× 価格 0.40(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 62 億円・営業利益 2 億円。台数1.00倍・単価1.34倍
倍率:事業の純利益 13 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.5% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)30 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 198 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2025年は一度きりの山で、2026年の予想は大幅減益。ただし中間期は予想を6割上回り、会社の予想は保守的に見える。山をならした姿を最も重く見て、3割台半ばにした。
やや悲観 22% 電動車の投資が先送りされ、主要顧客の発注が細る 利益 4 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,682 円96 億円
電動車への投資が先送りされ、自動車メーカーの新型車の開発の遅れが長引く。主要顧客のAstemoは北米の発注を絞り、巻線機の台数は2025年の6割まで落ちる。受注生産なので、台数が減ると固定費の負担が重くなり、営業利益率は8%に落ちる。中国の巻線機メーカーが安い値段で攻勢をかけ、値上げも通りにくい。送風機は横ばいで、小さな黒字にとどまる。純利益は3億円台になる。配当は性向を守っても額が減り、10年で32億円ほどにとどまる。現金は残るが、使い道がない。追加治具や改造案件の利益も、主要顧客の投資が止まれば出てこない。新社屋の償却が先に出て、利益を圧迫する。
- 巻線機事業(モーター用巻線設備・巻線ライン):数量 54.3(ライン換算の出荷数(本。推定))× 価格 1.92(1ラインあたり売上(億円。名目))→ 売上 104 億円・営業利益 8 億円。台数0.60倍・単価1.28倍
- 送風機・住設関連事業:数量 143(出荷数(万台。推定))× 価格 0.38(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 55 億円・営業利益 1 億円。台数0.92倍・単価1.28倍
倍率:稼ぐ力は小さく、床は現金と売れる資産に頼る。構造的な負けではないので、悲観の床(0.30倍)より厚く、中立のPBRを下回る0.34倍を、今の自己資本185億円に掛けた。
確率:主要顧客の依存が5割を占め、自動車メーカーの新型車の見直しが続く。先送りの長期化は、現実に起きている。2割強を置いた。
悲観 10% 主要顧客を失い、中国勢と内製化で装置が置き換わる 利益 −5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 968 円56 億円
構造的に負ける。主要顧客が巻線設備の内製化に動き、また中国の巻線機メーカーが電動車の駆動モーター向けの設備を安く供給する。小田原エンジニアリングは受注の半分以上を失い、台数は2025年の4割まで落ちる。受注生産の固定費が重荷になり、赤字が続く。長岡の新社屋は稼働が上がらず、減損が出る。会社は配当を大きく減らし、現金を守る。10年の還元は12億円ほどにとどまる。株主の取り分は、現金と売れる資産が中心になる。電動車以外の用途も、売上に育つ前に中国勢に取られる。10年の営業利益は赤字で推移し、受注生産の固定費が重くのしかかる。
- 巻線機事業(モーター用巻線設備・巻線ライン):数量 36.2(ライン換算の出荷数(本。推定))× 価格 1.73(1ラインあたり売上(億円。名目))→ 売上 62 億円・営業利益 −1 億円。台数0.40倍・単価1.15倍
- 送風機・住設関連事業:数量 124(出荷数(万台。推定))× 価格 0.35(1台あたり売上(万円。名目))→ 売上 43 億円・営業利益 0 億円。台数0.80倍・単価1.15倍
倍率:構造的に負けた事業は稼ぐ力が赤字で、床は現金と売れる資産に頼る。今の自己資本185億円に0.30を掛ける(ためた利益には掛けない)。
確率:主要顧客の内製化と中国勢の追い上げが重なる筋書きだ。世界2位の技術と純現金があるため、1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
巻線機事業(モーター用巻線設備・巻線ライン)
モーターやコイルに銅線を巻く機械と、その前後の組み立て・検査をつなぐ全自動ライン。電動車の駆動モーター向けが中心。完全受注生産。
| 数量ライン換算の出荷数(本。推定) | 価格1ラインあたり売上(億円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 90.6 | 1.50 | 136 | 33 |
| 10 年後 中立 | 72.4 | 2.01 | 146 | 20 |
取り方:売上は2025/12期の巻線機事業135.83億円、セグメント利益33.31億円(利益率24.5%)。ラインの本数は開示がないので、1ラインあたり平均1.5億円(小型の機械から10億円超の大型ラインまでの平均)と置いて売上から推定した。前期からずれ込んだ案件の計上で、山の期にあたる。受注は75.3億円、受注残は94.0億円で前期比39%減。
送風機・住設関連事業
工作機械や産業用ロボット向けの軸流ファン、クロスフローファンなどの小型送風機と、住宅設備の部品。子会社のローヤル電機などで作る。
| 数量出荷数(万台。推定) | 価格1台あたり売上(万円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 155 | 0.30 | 47 | 1 |
| 10 年後 中立 | 155 | 0.40 | 62 | 2 |
取り方:売上は2025/12期の送風機・住設関連事業46.55億円、セグメント利益1.36億円。台数は開示がないので、1台あたり平均0.3万円と置いて売上から推定した。受注は50.1億円、受注残は15.2億円で前期比30%増。
リスクと懸念
主要顧客への偏り
米国のAstemo Americasだけで売上の49.9%を占める。前の年は中国の日立Astemoが27%だった。この顧客グループの電動車の投資が止まれば、売上は半分に近い規模で落ちる。自動車メーカー側の事情で、発注の時期は読みにくい。
受注の山谷
巻線機は完全受注生産で、案件ごとに数億円から10億円を超える。受注残は94億円と前の年から39%減り、2026年は減益の見込みだ。営業利益率は過去に3〜17%の幅で動いており、山の利益に高い倍率を付けるのは危うい。
電動車の投資の延期
電動車の需要の鈍化で、自動車メーカーが新型車の開発を延期している。会社も、設備投資が一部で落ち込んだと認める。延期が長引けば、巻線機の受注は細り、固定費の負担が重くなる。
中国勢と内製化
中国の巻線機メーカーが安い値段で電動車向けの設備を供給している。主要顧客が自社で巻線設備を内製化する可能性もある。値上げが通らず、利益率が下がる。
現金の使い道
現金82億円は時価総額の7割だが、前受金を含む。配当は純利益の17%にとどまり、自社株買いも見当たらない。現金が積み上がるだけで株主に戻らなければ、その価値は割り引かれる。
長岡の新社屋と減価償却
長岡の新社屋の建設に17億円を投じた。稼働が上がらなければ償却が先に出て、利益を圧迫する。建築費の上昇で、今後の更新の投資も膨らむ。
今後の分かれ目
- 主要顧客以外から大型の受注が決まった場合
- 依存が下がり、受注の山谷が小さくなる。強気の筋書きに近づく。
- 受注残が前の年を下回り続けた場合
- 2025年の山が一度きりだったと確定し、慎重な筋書きに寄る。
- 増配や自社株買いなど、還元方針が示された場合
- 余った現金への戻り方を0.75に近づけて見られる。評価は上がる。
- 電動車の新型車の開発が再開された場合
- 巻線機の受注が戻り、強気の筋書きに近づく。
- 主要顧客が巻線設備の内製化を表明した場合
- 売上の半分を失う恐れがあり、悲観の筋書きが現実味を帯びる。
見ておくもの
- 巻線機の受注高と受注残(四半期)
- 主要顧客(Astemo)向けの売上比率
- 配当性向と自社株買いの有無
- 営業利益率の水準(山の16.7%との比較)
- 現金預金と契約負債の推移
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(正当化PER)から置いた。事業のROEが資本コスト8%を下回り、上限は1÷k。今の株価や、現金が時価総額の7割あるという水準を根拠にしていない。2025年の山の利益を基準にせず、受注の山をならした量で置いた。同じ領域のNITTOKUとkと質の付け方を揃えた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→15.76 倍・やや楽観 PER 9.5→14.27 倍・中立 PER 8.9→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1.5% を足した9.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.00%。