結論
油研工業は、油圧ポンプ、油圧バルブ、油圧ユニットを作る専業メーカーである。東証スタンダードに上場する唯一の油圧機器の専業とされる。売上は329億円で、6割が海外。インドとアジアの子会社が稼ぎを支える。
筆者の結論は、値段は資産に比べて安いが、稼ぐ力に対してはやや高い、というものだ。営業利益は17億円、ROEは4.5%で資本コストに届かない。時価総額106億円に対し、純資産は235億円ある。
中計Step2は2028年3月期に営業利益30億円を掲げるが、2027年3月期の会社予想は17.5億円で、距離がある。中国の価格競争が重い。
10年後の中立は、営業利益24億円、純利益15億円ほど。数量は横ばいで、物価の分だけ売上が増える。ROEは5%前後で、倍率は式の上限の7割に置いた。
持ち合い株は上場株で73億円ほどと厚いが、配当が利益に入っているので、価値には足さない。見るべきは、インドの伸びと中国の価格、借金の返済だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、油研工業は安全域は資産にあるが、稼ぎの質が低い会社だ。
純資産は時価総額の2倍強ある。持ち合い株が73億円ほどあり、これだけで時価総額の7割近い。ただし、その配当は利益に入っており、売却して初めて価値になる。
稼ぎの面では、ROEが4〜5%と資本コストを下回り続けている。海外大手と中国勢に挟まれ、価格を自分で決められない。ためた利益は、額面を下回る価値しか持たない。
オーナーが持ち続けたい会社かと問われれば、営業利益率が目標の水準に近づく証拠を見たい。中計は営業利益30億円を掲げるが、足元の予想は17.5億円で、道は遠い。
値段は、資産の面では安く、稼ぎの面ではやや高い。この二つを合わせて、筆者は、やや割高と見る。持ち合い株を何に使うか、会社の考えが示されるかどうかが、評価を変える一番の材料になる。
何で稼ぐ会社か
油研工業は油圧機器のメーカーである。油圧は、油の圧力で大きな力を出す仕組みで、工作機械、建設機械、産業機械に組み込まれる。
2026年3月期の売上329億円は、油圧製品(ポンプ・モータ・弁)が209億円、システム製品(油圧ユニット・シリンダ)が77億円、環境機械他(切屑圧縮機、PETボトル減容機、鋳物)が43億円。
地域別では、アジアが174億円で最大、日本が149億円、欧州が6億円。営業利益はアジアが11億円、日本が5億円。海外比率は61%で、インドの子会社ユケン・インディアは売上68億円を上げる。
10%を超える顧客はなく、販売先は分散している。従業員は連結1,401人で、アジアに924人を置く。
2025年10月に、大田区のJPN株式会社を100%子会社にした。システム製品を作る会社で、既存の販売網と製品群を補い合う狙いだ。みなし取得日が期末なので、売上への寄与は2027年3月期から出る。
製品は大きく三つで、ポンプとモータで油に圧力を与え、弁で流れを制御し、シリンダで力に変える。部品を単体で売るだけでなく、ユニットに組み上げて納める点が、専業としての強みである。研究開発費は年4.6億円で、全額を日本で使う。
優良さと弱いところ
優良さは、海外の生産体制と財務の底堅さにある。ただし、稼ぎの水準は低い。
強みは三つある。第一に、インドとアジアに自前の工場と販売網を持ち、売上の6割を海外で上げている。第二に、油圧ポンプからユニットまでを一貫して手がけ、国内の専業として顧客に提案できる。第三に、自己資本比率48%で、持ち合いの上場株を73億円ほど持つ。
弱みも三つある。第一に、海外大手と中国の新興メーカーに挟まれ、価格の決定力が弱い。第二に、営業利益率が2.7%から7.4%の範囲で、直近は5%台と薄い。第三に、有利子負債が108億円と現預金79億円より大きく、利払いが重い。
資本効率は低い。過去10年のROEの中央値は4.9%。中計は2028年3月期にROE8%以上を掲げるが、2027年3月期の予想は4%台にとどまる。
筆者は、技術と海外の拠点は本物だが、稼ぐ力が資本コストを下回り続けていると見る。堀は普通と置いた。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
業界は、油圧機器の需要が、工作機械、建設機械、産業機械、射出成形機の設備投資に連動する。
足元の特徴は二つある。中国では現地メーカーが急速に力をつけ、価格で攻めてくる。会社も、中国の競争激化が減収の要因と説明している。一方、インドは設備投資が堅調で、会社の成長の柱になっている。
構造の変化は、油圧から電動への置き換えである。小さな力の用途では電動アクチュエータが増えるが、大きな力が要る用途では油圧が残る。省エネの油圧システムは、電動の弱点を補う方向に進んでいる。
競合は、ドイツのボッシュ・レックスロス、米国のパーカー・ハネフィンなど世界大手と、国内の不二越やKYBなど。価格の決定力は弱く、顧客ごとの仕様と納期で勝負する。
10年では、国内の数量は横ばい、インドで増え、中国で減る、と筆者は置く。価格は物価並みに上がるが、鋼材と人件費の上昇も同じ速さで効く。
設備投資の循環では、2026年は国内が底堅く、インドが強く、中国が弱い。次の山を決めるのは、工作機械と建設機械の受注、そしてインドの製造業の投資の持続性である。
資本政策と M&A
資本の使い方は、還元に積極的で、借金に頼る。配当性向は50%程度を基準とし、2026年3月期は年間で総額約5億円、中間配当も始めた。同期には自社株買いを6.8億円実施した。
持ち合い株は厚い。上場株が約73億円、非上場株が約6億円で、三菱UFJ、牧野フライス、三井住友FG、新東工業などを持つ。その配当は利益に入っているので、価値には足さない。売却の方針と実績が開示されれば、評価を見直す。
設備投資は2026年3月期に25億円(アジアが16億円)。M&Aは、2025年10月のJPNが最近の例である。
有利子負債は108億円、現預金は79.5億円で、純有利子負債は30億円。財務制限条項(純資産と経常損益の維持)がある。10年以内の買収の確率は3割弱という統計もあるが、筋書きには入れていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
時価総額106億円に対し、純資産は235億円、持ち合いの上場株だけで73億円ある。純有利子負債30億円を差し引いても、資産で値段をほぼ説明できる。
インドの子会社は売上68億円で、設備投資の波に乗って伸びる。アジアは営業利益の7割を稼ぎ、海外の工場は増設が続く。
中計は、グローバルサプライチェーンで製造の移管と開発の分業を進め、リニアサーボ弁など付加価値の高い製品を育てるとする。2028年3月期に営業利益30億円を達成できれば、純利益は20億円を超え、ROEは8%に近づく。
JPNの買収で、システム製品の営業が広がる。自社株買いと中間配当を始めた姿勢は、資本政策が株主の方を向いている証拠だ。持ち合い株の売却が進めば、時価総額との差が株主に戻る。
油圧は、大きな力が要る場面で電動に代わりにくい。工作機械や建設機械の更新が続く限り、買い替えの需要は消えない。中国で鍛えた低コストの調達と、インドの拠点を組み合わせれば、価格競争にも耐えられる。
慎重な見方
営業利益率は、過去12年のうち一度も8%を超えていない。ROEの中央値は4.9%で、資本コストの6割に満たない。海外大手と中国勢の間で、価格を決められない構造は変わらない。
中国の競争激化は、一時的な逆風ではない。現地の新興メーカーは技術を上げており、アジアの売上が減少に転じている。2026年3月期のアジアは売上が7.8%、営業利益が14.8%減った。
有利子負債は現預金より29億円多く、金利が上がれば利払いが重くなる。財務制限条項もある。
持ち合い株は売らなければ価値にならない。会社は縮減の数値目標を開示しておらず、売却益を株主に戻す約束も無い。中計の営業利益30億円は、予想の17.5億円から7割増の水準で、達成の根拠が乏しい。
油圧は電動への置き換えが進む分野でもある。中国で現地メーカーが標準を握れば、日本の専業は高価格帯に押し込まれる。持ち合い株を持つことで経営は安定するが、資本効率を高める緊張感は生まれにくい。
どちらに重みを置いたか
資産の厚さは強気の言い分が強い。ただし、利益率の低さと中国の価格競争は、弱気の言い分が重い。確率は、中立を4割弱に置き、やや悲観を3割近くに寄せた。悲観は、油圧から電動への置き換えと中国勢で構造的に負ける姿を1割とし、床を持ち合い株の売却と資産の売却で置いた。最後は、数量が横ばいで利益率が過去の中間に落ち着く姿を、いちばん確からしいと見た。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,622 円164 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,586 円56 億円)。 今の値に割り戻すと 3,283 円117 億円、今との差 +11.7%、 期待の年率 +7.8%(資本コスト 7.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 10,651 円379 億円 | 2,671 円95 億円 | +353.4% | +16.3% | 933 円33 億円 |
| やや楽観 | 17% | 6,745 円240 億円 | 2,193 円78 億円 | +204.2% | +11.8% | 1,520 円54 億円 |
| 中立 | 38% | 5,404 円192 億円 | 1,828 円65 億円 | +146.1% | +9.4% | 2,748 円98 億円 |
| やや悲観 | 28% | 1,861 円66 億円 | 984 円35 億円 | −3.1% | −0.3% | 797 円28 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,546 円55 億円 | 562 円20 億円 | −28.2% | −3.3% | 211 円8 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,622 円164 億円 | 1,586 円56 億円 | +111.3% | +7.8% | 6,208 円221 億円 |
今の株価時価総額 2,938 円104 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 7% インドと東南アジアで油圧が伸び、システム製品が育って利益率が8%台に乗る 利益 28 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 10,651 円379 億円
インドの子会社が伸び続け、東南アジアの工場にも需要が広がる。グローバルサプライチェーン(GSC)構想で、製造の移管と開発の分業が進み、原価が下がる。リニアサーボ弁など付加価値の高い製品が売上の1割に育つ。
国内でも省エネの油圧システムが買い替えを呼び、システム製品は台数が4割増える。JPNの買収が、システム製品の営業を広げる。
営業利益は約43億円、純利益は約28億円。自己資本が330億円まで積み上がり、ROEは9%近くに達する。ただし、この姿が10年続くかは、中国勢の動きしだいである。
持ち合い株の売却と自社株買いが進めば、株主への還元も厚くなる。この筋書きは、中国の価格競争が収まり、電動化も緩やかな場合にだけ成り立つ。
- 油圧製品(ポンプ・モータ・制御弁):数量 43.5(出荷台数(万台、推定))× 価格 80,400(1台あたりの売上(円、名目))→ 売上 350 億円・営業利益 30 億円。インド・東南アジアで数量増、付加価値製品
- システム製品(油圧ユニット・シリンダ):数量 7,840(出荷台数(台、推定))× 価格 184(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 144 億円・営業利益 10 億円。省エネ更新とJPNの営業
- 環境機械他(切屑圧縮機・減容機・鋳物):数量 690(出荷台数(台、推定))× 価格 961(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 66 億円・営業利益 3 億円。回復
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.5% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.5 倍。全体の PER 13.53 倍、時価総額 379 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計Step2の営業利益30億円(2028年3月期)を超えて、10年で40億円台に乗る筋書き。過去の最高の利益率は10.7%(2008年3月期)だが、直近10年の最高は7.4%なので、1割を切る確率にした。
やや楽観 17% 海外が国内の縮小を補い、利益率は中計に近づく 利益 19 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 6,745 円240 億円
インドが伸び、中国の落ち込みは下げ止まる。日本は設備の自動化で底堅く、システム製品は台数が2割以上増える。
価格は物価並みに上がり、原材料と人件費の上昇も転嫁できる。営業利益率は6%台で、営業利益は30億円ほど。
純利益は19億円。配当性向は5割を保ち、還元は10年で78億円。自己資本は290億円まで増える。ROEは6〜7%と、資本コストには届かない。
中国は価格競争が続くものの、日本で培った品質で上位の用途を守る。インドの子会社は売上が1.5倍に伸び、連結の稼ぎの柱になる。為替が今の水準で止まるので、海外の利益が円で目減りすることもない。
- 油圧製品(ポンプ・モータ・制御弁):数量 39.0(出荷台数(万台、推定))× 価格 80,400(1台あたりの売上(円、名目))→ 売上 313 億円・営業利益 23 億円。海外が伸び国内は横ばい
- システム製品(油圧ユニット・シリンダ):数量 7,000(出荷台数(台、推定))× 価格 184(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 129 億円・営業利益 8 億円。システム製品が伸びる
- 環境機械他(切屑圧縮機・減容機・鋳物):数量 630(出荷台数(台、推定))× 価格 961(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 61 億円・営業利益 2 億円。小幅に回復
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 240 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計は2028年3月期に営業利益30億円を狙うが、2027年3月期の会社予想は17.5億円で、道のりは遠い。それでも、海外の拡大が数量を押し上げて2割前後の増益を保つ筋書きを2割弱に置いた。
中立 38% 数量は横ばい、物価分だけ売上が増える。利益率は過去の中間で落ち着く 利益 15 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 5,404 円192 億円
国内の油圧は工作機械、建設機械、産業機械の更新で横ばい。インドが伸び、中国は価格競争で減る。全体の台数は実質でほぼ横ばいから1割増。
価格は物価並みに上がるが、鋼材や人件費も同じ速さで上がり、利益率は物価で勝手に下がらない。営業利益率は5.4%、営業利益は24億円。
純利益は15億円。配当性向5割を守り、還元は10年で65億円。ROEは5%前後と資本コストに届かない。借金は利払いが増え、純利益を押し下げる。
持ち合い株の配当は利益に残り、売却は進まない。この筋書きでは、過去10年の姿が、物価の分だけ大きくなって続く。
- 油圧製品(ポンプ・モータ・制御弁):数量 34.8(出荷台数(万台、推定))× 価格 80,400(1台あたりの売上(円、名目))→ 売上 280 億円・営業利益 17 億円。数量は横ばい、物価分だけ上がる
- システム製品(油圧ユニット・シリンダ):数量 6,160(出荷台数(台、推定))× 価格 184(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 113 億円・営業利益 6 億円。JPNの取り込みで小幅に増える
- 環境機械他(切屑圧縮機・減容機・鋳物):数量 540(出荷台数(台、推定))× 価格 961(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 52 億円・営業利益 2 億円。減容機は縮む
倍率:事業の純利益 15 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 192 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12年の営業利益率は2.7〜7.4%、中央値は5.7%。10年後の中立は5.4%と、この中央値のすぐ下に置いた。中計の営業利益30億円は達成できないとみる。
やや悲観 28% 中国の低価格品にシェアを奪われ、油圧の数量と利益率が下がる 利益 8 億円 · PER 8.6 倍 · 株価時価総額 1,861 円66 億円
中国の新興メーカーが、油圧ポンプとバルブで価格を崩す。アジアの売上が減り、国内も価格競争に巻き込まれる。油圧製品の台数は1割減り、営業利益率は4%に落ちる。
システム製品も受注が細り、環境機械は赤字になる。営業利益は12億円、純利益は8億円。
配当は利益に合わせて減るが、借金の利払いは減らない。純有利子負債が増え、財務に余裕がなくなる。
会社は持ち合い株の一部を売って借金を返すが、売却益は事業の穴埋めに回り、株主への還元は細る。インドは堅調でも、中国の落ち込みを埋められない。中計の目標は大きく届かず、会社は計画を見直す。ROEは3%前後に沈み、資本コストとの差が開く。
- 油圧製品(ポンプ・モータ・制御弁):数量 31.3(出荷台数(万台、推定))× 価格 80,400(1台あたりの売上(円、名目))→ 売上 252 億円・営業利益 10 億円。価格崩れと数量減
- システム製品(油圧ユニット・シリンダ):数量 5,040(出荷台数(台、推定))× 価格 184(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 93 億円・営業利益 3 億円。受注が細る
- 環境機械他(切屑圧縮機・減容機・鋳物):数量 450(出荷台数(台、推定))× 価格 961(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 43 億円・営業利益 0 億円。赤字
倍率:事業の稼ぎ率は資本コスト7.75%を大きく下回り、PERの上限は1÷k=11.4倍。その約75%(8.6倍)に置いた。
確率:2025年から中国の競争激化で減収減益が続いており、2021年3月期には営業利益率が2.7%まで落ちた。同じ形がもう一度起きる筋書きを3割弱に置いた。
悲観 10% 構造的に負け、油圧の需要が半分近くに縮んで赤字が続く 利益 −4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,546 円55 億円
油圧から電動アクチュエータへの置き換えが進み、中国の工場では現地の低価格品が標準になる。台数は3割以上減り、価格も物価に届かない。固定費が重く、赤字が続く。
会社は工場を整理し、持ち合い株を売って借金を返す。純有利子負債が増える中で、配当は大きく減る。
稼ぐ力が消えるので、価値は売れる資産の税後から借金を引いた額で測る。
持ち合い株の売却益は借金の返済に使われ、少数株主には届きにくい。土地や建物の売却は、工場の閉鎖とあわせて数年かかる。インドの子会社は残るが、親会社の赤字を支えるには小さく、連結の損益は改善しない。
- 油圧製品(ポンプ・モータ・制御弁):数量 22.6(出荷台数(万台、推定))× 価格 72,000(1台あたりの売上(円、名目))→ 売上 163 億円・営業利益 0 億円。電動化と中国勢で縮む
- システム製品(油圧ユニット・シリンダ):数量 3,920(出荷台数(台、推定))× 価格 165(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 65 億円・営業利益 0 億円。採算割れ
- 環境機械他(切屑圧縮機・減容機・鋳物):数量 300(出荷台数(台、推定))× 価格 860(1台あたりの売上(万円、名目))→ 売上 26 億円・営業利益 −1 億円。赤字
倍率:稼ぐ力は消え、売れる資産の税後から借金を引いた額が床になる。今の自己資本235億円に0.23倍を掛けた約55億円。内訳は床の資産の欄に書いた。
確率:中国勢の低価格化と、油圧から電動への置き換えが同時に起こる構造的な負けの筋書き。会社は借入が多く、持ち合い株という売れる資産を持つので、倒れる前に整理できる余地はあるが、少数株主には厳しい。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
油圧製品(ポンプ・モータ・制御弁)
油圧ポンプ、油圧モータ、圧力や流量を制御する弁。工作機械や産業機械に組み込まれる主力製品。
| 数量出荷台数(万台、推定) | 価格1台あたりの売上(円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 34.8 | 60,000 | 209 | 13 |
| 10 年後 中立 | 34.8 | 80,400 | 280 | 17 |
取り方:開示は売上208.8億円(前期比-1.3%)。台数は開示がなく、1台6万円前後・年35万台と推定した。営業利益は製品別の開示がなく、地域別(日本4.6億円・アジア10.6億円)と製品の性格から配分した推定(利益率6.2%)。価格は物価並みに上がる。
システム製品(油圧ユニット・シリンダ)
油圧ポンプとタンクを組み合わせた油圧ユニット、油圧シリンダ。2025年10月に子会社化したJPNもここに入る。
| 数量出荷台数(台、推定) | 価格1台あたりの売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 5,600 | 137 | 77 | 4 |
| 10 年後 中立 | 6,160 | 184 | 113 | 6 |
取り方:開示は売上76.9億円(前期比+1.6%)。台数は開示がなく、1台約137万円・年5,600台と推定。営業利益は推定配分(利益率4.5%)。JPNは期末に取り込んだだけで、売上への寄与は2027年3月期から出る。
環境機械他(切屑圧縮機・減容機・鋳物)
自動切屑圧縮機、PETボトル減容機、鋳物。機械加工の現場や廃棄物処理向け。
| 数量出荷台数(台、推定) | 価格1台あたりの売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 717 | 43 | 1 |
| 10 年後 中立 | 540 | 961 | 52 | 2 |
取り方:開示は売上43.0億円(前期比-9.9%)。台数は開示がなく、1台約700万円・年600台と推定。営業利益は推定配分(利益率2.1%)。
リスクと懸念
中国の低価格競争
中国の新興メーカーが油圧ポンプとバルブの価格を崩す。2026年3月期のアジアは売上が7.8%、営業利益が14.8%減り、中国の競争激化は減収の要因と会社も説明する。
油圧から電動への置き換え
小さな力の用途では電動アクチュエータが油圧を置き換える。大きな力が要る用途は残るが、台数の長期の伸びを削る。
中計の未達
中計Step2は2028年3月期に営業利益30億円・ROE8%以上を掲げる。2027年3月期の会社予想は営業利益17.5億円で、未達の可能性が高い。
借金と財務制限条項
有利子負債は108億円で、現預金79.5億円を上回る。純資産や経常損益の維持を求める条項があり、赤字が続けば借り換えに響く。
持ち合い株の価値
上場株は約73億円と時価総額の7割近い。市場が下がれば自己資本も減る。売却の方針が示されないと、価値は株主に届かない。
為替と海外
海外比率は61%で、インドの子会社の売上は68億円。筋書きでは為替を固定するが、足元の収益には為替が効いている。
今後の分かれ目
- 営業利益率が2期続けて6.5%を超えたら
- 海外の拡大とGSC構想が利益に結びついているとして、やや楽観の確率を厚くする。
- 持ち合い株の縮減の数値目標と売却益の還元が開示されたら
- 余った資産として評価を見直し、中立の値を上げる。
- 中国のアジア売上が2期続けて1割以上減ったら
- 構造的な負けとして、悲観の確率を上げる。
- 2028年3月期に営業利益が25億円を超えたら
- 中計の達成に近づいたとして、楽観側の確率を厚くする。
- 純有利子負債が50億円を超えたら
- 財務に余裕がなくなるため、やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 地域別(日本・アジア・欧州)の売上と営業利益
- インドの子会社の売上
- 営業利益率と中計の目標(営業利益30億円)
- 持ち合い株の縮減と売却益の使い道
- 純有利子負債と財務制限条項
- 油圧と電動の置き換えの速度
倍率と資本コストの決め方
倍率は、10年後のROEと資本コスト7.75%から、利益ベースで置いた。事業のROEは中立で5%と資本コストを大きく下回るため、PERの上限は1÷k=11.4倍で、その約7割(8.0倍)にした。今の株価や自己資本に対する倍率には寄せていない。営業利益率は過去12年の中央値(5.7%)のすぐ下の5.4%。減価償却は今の設備の取得原価のままで、更新の投資は建築費・機械の値上がりで膨らむので、会計の利益ほど現金は残らない。借金は借り換えで金利が3.5%になり、純利益を押し下げる(純利益÷営業利益は0.62)。持ち合い株の配当は利益に入っているので、価値には足していない。リースは小さい。純現金は無く、余った現金は立てない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.6→13.53 倍・やや楽観 PER 9.3→12.9 倍・中立 PER 8→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%にqualityを足して決めた。事業が傾いているわけではないので上乗せ(extra)は置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 7.75%。