結論
YUSHINは、プラスチック製品を射出成形機から取り出すロボットの世界首位級の会社だ。自動車部品、電子部品、医療用品の工場で使われ、設置したあとの部品と保守で稼ぎ続ける。
筆者の結論は、事業の質は高いが、利益の戻り方が見えにくく、今の値段はほぼ適正、というものだ。確率で重みを付けた10年後の価値は、今の時価総額を1割弱下回る程度にとどまる。
2026年3月期は営業利益が8億円と、前の期の26億円から7割減った。売上も1割減った。理由は、医療関連の特注機が大きく減ったことだ。アジアの取出ロボットとパレタイジングロボットは伸びており、会社は2027年3月期の営業利益を13億円に戻すと見る。
ただし、会社が掲げた「売上300億円、営業利益率15%」の目標は届かない。10年の利益率は、過去の12〜14%ではなく、10%前後に落ち着くと筆者は見る。
財務は極めて堅い。自己資本比率は86%、純現金は時価総額の3割強ある。ただ筆頭株主が36.7%を持ち、配当は純利益の4割台と限られるため、現金が少数株主に戻る保証は薄い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い事業を持つ堅い会社が、いまは谷にいる」姿に見える。取出ロボットの世界首位級で、部品・保守の収入が土台にあり、借金はなく、赤字の期もない。
問題は、谷の深さと戻りの速さである。2026年3月期の営業利益は前の期の3分の1に落ちた。会社の予想は2027年3月期に13億円まで戻るが、過去の利益率(12〜14%)にはまだ遠い。筆者は、10年の中立で利益率を10%台に置いた。
資本の使い方にも注文がある。純現金が時価総額の3割強あるのに、配当は純利益の4割台、自社株買いはない。ROEは直近で0.8%、10年の中央値でも5.8%と資本コストに届かない。経営が現金を使いこなせていない。
安全域は、堅い財務にある。ただ、筆頭株主が3分の1以上を持つため、少数株主に現金が戻る保証は薄い。
筆者は、事業としては安心して持てるが、買う値段としては適正圏にとどまる、と考える。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、射出成形機から製品を取り出す直交型ロボットである。軸が直線に動く構造で、省スペースで速く正確に動く。売上は3つに分かれ、2026年3月期はロボットが149億円、特注機が32億円、部品・保守サービスが50億円だった。
ロボットは、自動車部品や電子部品、医療用品、容器の工場に納める。吸着時の空気の消費を最大78%減らす独自の仕組みなど、省エネの技術が特徴だ。新しい柱として、食品や物流向けに、箱を積み上げるパレタイジングロボット(PAシリーズ)を広げている。
特注機は、顧客ごとの専用の自動化装置である。医療関連の需要が急に減り、2026年3月期の落ち込みの主因になった。部品・保守サービスは、設置したロボットの消耗品と点検で、利益率が高く景気に左右されにくい。
生産は日本と中国の広州が中心で、販売・保守の拠点は韓国、台湾、東南アジア、インド、欧州、米国に広がる。欧州ではスウェーデンのWEMO社を傘下に入れた。会社の形態は「ファブライト」、つまり自社で作る工程を絞り、外部の力を使う方式だ。連結の従業員は803人、米国子会社の売上は41億円ある。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねしにくい強みは、世界に広げた販売・保守の網と、設置したロボットから出る部品・保守の収入にある。取出ロボットは、顧客の成形機に合わせた設定が必要で、一度入れると同じ会社の保守に頼りやすい。会社は世界首位級と自称する。
ただし、堀はそこまで深くない。世界の取出ロボットには、欧州のWittmann、Sepro、日本のスター精機などの競合がいる。有価証券報告書も「競合の値下げ攻勢」を主なリスクに挙げる。中国の安価なロボットが広がれば、標準品の価格は下がる。
収益性は、2015年から2025年まで営業利益率が10〜15%で、赤字の期はなかった。10年のROEの中央値は5.8%と、純現金が厚いために低めだ。2026年3月期は3.6%まで落ちた。
弱みは、受注の振れと、研究開発費の重さである。研究開発費は9億円と売上の4%近くを占め、売上が落ちる局面では利益を圧迫した。米国子会社は赤字で、買収に伴う顧客関連資産の減損のリスクもある。
経営は慎重で、自己資本比率86%の財務を保つ。ただ中期経営計画の目標は届かず、実行の力はこれから試される。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
取出ロボットの需要は、射出成形品を作る産業の設備投資で決まる。主な顧客は、自動車部品、電子部品・通信機器、医療用品、日用品・容器である。世界の市場規模は調査会社によって6億ドルから22億ドルまでぶれ、取り出しに限れば10億円単位の小さな市場だ。
追い風は人手不足と人件費の上昇である。工場の自動化は世界の流れで、成形品の取り出しは真っ先にロボット化される工程の1つだ。省エネと脱炭素の要請も、空気消費の少ないロボットに有利に働く。
逆風は、自動車の電動化と、中国勢の追い上げである。電動化で内燃機関の部品の成形が減れば、自動車向けの需要が細る。中国では地元メーカーが低価格のロボットを出し、アジアでの価格競争が強まっている。
足元は、医療関連の特注機が急に落ち込んだが、会社は2027年3月期に戻ると見る。AI関連の電子部品や医療の自動化投資は、今後も増えるとみられる。パレタイジングは取出ロボットより市場が大きく、FANUCや安川電機などの大手と競う新しい戦場である。食品や物流の現場は人手不足が深刻で、積み付けの自動化の需要は、射出成形よりも裾野が広い。
資本政策と M&A
還元は、配当が中心である。配当性向30%以上を目標とし、2026年3月期の配当性向は44.7%だった。利益が落ちる中でも配当を保ち、総額は約6.7億円と、純利益のおよそ2倍を払った。自社株買いは確認できない。
手元は厚い。純現金は69億円で、自己資本比率は86%である。借金はほとんどなく、投資は研究開発と販売網の拡充に向く。政策保有株は3銘柄で3億円弱と小さい。
筆頭株主はユーシンインダストリーで、36.7%を持つ。日本マスタートラスト信託銀行が6.5%で続く。支配株主がいるため、少数株主に現金を戻す圧力は弱く、余った現金は帳簿の半分で数えた。
M&Aは、欧州のWEMO社の取り込みが近い実績である。2023年10月には東証プライムからスタンダードに移った。支配株主が大きい会社で、非公開化の提案も選択肢になりうる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
2026年3月期の落ち込みは一時的だ、と強気の見方は考える。医療関連の特注機が谷に入ったためで、アジアの取出ロボットとパレタイジングは伸びており、会社は2027年3月期に営業利益を13億円に戻す。部品・保守は景気に左右されにくく、設置台数が増えるほど積み上がる。
人手不足と人件費の上昇は、工場の自動化を10年かけて後押しする。取出ロボットで世界首位級の地位を持つ会社が、パレタイジングという大きな市場に広げれば、売上の成長余地は大きい。AI関連の電子部品や医療の投資も追い風になる。
財務は極めて堅い。純現金は69億円で、自己資本比率は86%。東証の資本効率改善の要請や、スタンダード市場への移行を考えれば、還元の引き上げや非公開化の動きも期待できる。欧州のWEMO社を通じたシェア拡大も、売上の伸びと利益率の改善の両方に効く。
強気の見立てでは、10年後の売上は550億円、営業利益は73億円に達し、時価総額は690億円ほどになる。
慎重な見方
利益率の高かった時代は戻らない、と慎重な見方は考える。2026年3月期の営業利益は7割減り、会社の2027年3月期の予想も13億円にとどまる。中期経営計画の目標(売上300億円、営業利益率15%以上)は届かない。研究開発費や人件費は物価で上がり、値下げ競争で価格は上がりにくい。
中国の安価なロボットが標準品の価格を押し下げ、日本勢のシェアを奪う。自動車の電動化で、内燃機関の部品の成形が減れば、自動車向けの需要も細る。パレタイジングは大手のFANUCや安川電機が強く、後発の同社が取れるシェアは限られる。
資本効率も問題だ。ROEは直近で0.8%、10年の中央値でも5.8%と、資本コストに遠く及ばない。筆頭株主が36.7%を持ち、現金は少数株主に戻らない。米国子会社は赤字で、買収した資産の減損のリスクも残る。
慎重な見立てでは、売上は物価の分しか増えず、利益率は6%に落ち、時価総額は120億円ほどになる。
どちらに重みを置いたか
事業の質と財務の堅さは、強気の見方が正しい。一方で、利益の戻りの遅さ、中国との競争、資本効率の低さは、慎重な見方が正しい。筆者は、利益率を10%台に置いた中立を最も厚い確率とし、やや悲観に24%、悲観に11%を置いた。強気側は合わせて3割弱とした。現金が厚い分、悲観でも崩れ方は浅い。谷から戻るかどうかは、2027年3月期の営業利益が13億円に届くかで最初に見分けがつく。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,306 円409 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 286 円89 億円)。 今の値に割り戻すと 868 円272 億円、今との差 +30.3%、 期待の年率 +9.1%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,015 円944 億円 | 485 円152 億円 | +425.6% | +18.0% | 280 円88 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,109 円660 億円 | 383 円120 億円 | +274.2% | +14.1% | 498 円156 億円 |
| 中立 | 37% | 1,389 円435 億円 | 297 円93 億円 | +153.2% | +9.7% | 624 円195 億円 |
| やや悲観 | 24% | 420 円131 億円 | 201 円63 億円 | −6.8% | −0.7% | 149 円47 億円 |
| 悲観 | 11% | 257 円81 億円 | 109 円34 億円 | −45.1% | −5.8% | 40 円13 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,306 円409 億円 | 286 円89 億円 | +139.0% | +9.1% | 1,592 円498 億円 |
今の株価時価総額 666 円209 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 8% パレタイジングと電子・医療の自動化が重なり、利益率が13%台に戻る 利益 52 億円 · PER 17.7 倍 · 株価時価総額 3,015 円944 億円
人手不足による工場の自動化が10年続き、取出ロボットとパレタイジングの市場は今の1.7倍に広がる。当社のシェアも16%へ上がり、ロボットの売上は357億円になる。医療や電子の特注機は1.5倍に戻り、利益率は8%に乗る。
部品・保守は設置台数の増加で1.6倍に伸び、売上は116億円、利益率は22%を保つ。全体の営業利益率は13.3%で、過去の最高(14.6%)に近づく。
配当と自社株買いが利益の半分に引き上がる。10年後の自己資本は500億円ほどになる。
研究開発費は売上の3%台に抑えられ、規模の利益が出る。
- ロボット(取出ロボット・パレタイジングロボット):数量 1,666(世界の射出成形機用取出ロボット市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア)× 価格 21.4%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 357 億円・営業利益 43 億円。取出ロボット市場1666億円(実質)× シェア16.0%、営業利益率12.0%
- 特注機:数量 1,800(医療・電子向けの専用自動化装置で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 4.0%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 72 億円・営業利益 6 億円。特注機の狙える市場1800億円(実質)× シェア3.0%、営業利益率8.0%
- 部品・保守サービス:数量 960(取出ロボットの世界の部品・保守の市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 12.1%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 116 億円・営業利益 26 億円。部品・保守市場960億円(実質)× シェア9.0%、営業利益率22.0%
倍率:事業の純利益 51 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.5% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 17.74 倍、時価総額 944 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:取出ロボットの首位を保ちつつ、パレタイジングが大きく育ち、医療・電子の特注機も戻る必要がある。中国勢の値下げに耐える前提で、条件が多いので1割に満たない確率にした。
やや楽観 20% 谷から戻り、利益率は12%まで回復する 利益 39 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 2,109 円660 億円
医療や電子の投資が戻り、取出ロボットとパレタイジングの市場は今の1.45倍に増える。当社のシェアは15.5%を保ち、ロボットの売上は295億円になる。特注機は1.3倍、利益率は6.5%に戻る。
部品・保守は1.45倍で、売上は103億円、利益率は21%。全体の営業利益率は12.1%になり、過去の水準(12〜14%)の下限に戻る。
配当は利益の半分で、10年後の自己資本は460億円ほどになる。部品・保守の安定が下支えし、回復の確度は高い。
欧州のWEMO社の取り込みが進み、現地の販売網の厚みが利益に出てくる。
- ロボット(取出ロボット・パレタイジングロボット):数量 1,421(世界の射出成形機用取出ロボット市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア)× 価格 20.8%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 295 億円・営業利益 31 億円。取出ロボット市場1421億円(実質)× シェア15.5%、営業利益率10.5%
- 特注機:数量 1,560(医療・電子向けの専用自動化装置で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 3.8%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 59 億円・営業利益 4 億円。特注機の狙える市場1560億円(実質)× シェア2.8%、営業利益率6.5%
- 部品・保守サービス:数量 870(取出ロボットの世界の部品・保守の市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 11.8%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 103 億円・営業利益 22 億円。部品・保守市場870億円(実質)× シェア8.8%、営業利益率21.0%
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 16.26 倍、時価総額 660 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の2027年3月期の予想(営業利益13億円)が実現し、その後も設備投資が戻る形。過去に10〜15%の利益率が続いた実績はあるが、競争が強まっているので、中立を超える確率にはしない。
中立 37% 谷から戻るが、利益率は10%台前半にとどまる 利益 28 億円 · PER 14.4 倍 · 株価時価総額 1,389 円435 億円
取出ロボットとパレタイジングの市場は今の1.3倍に増え、当社のシェアは14.5%と少し下がる。ロボットの売上は10年で約1.65倍の248億円になる。特注機は1.2倍、部品・保守は1.3倍に増える。
営業利益率は10.4%で、過去12年の最高(14.6%)を大きく下回る。研究開発費や人件費が物価の分だけ増え、中国勢との価格競争で値上げが通りにくい。
配当は利益の半分に保たれる。10年後の自己資本は440億円ほどで、事業のROEは7%前後にとどまる。
余った現金のうち50億円は、帳簿の半分を価値に数えた。
- ロボット(取出ロボット・パレタイジングロボット):数量 1,274(世界の射出成形機用取出ロボット市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア)× 価格 19.4%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 248 億円・営業利益 21 億円。取出ロボット市場1274億円(実質)× シェア14.5%、営業利益率8.5%
- 特注機:数量 1,440(医療・電子向けの専用自動化装置で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 3.5%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 50 億円・営業利益 3 億円。特注機の狙える市場1440億円(実質)× シェア2.6%、営業利益率5.0%
- 部品・保守サービス:数量 780(取出ロボットの世界の部品・保守の市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 11.4%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 89 億円・営業利益 18 億円。部品・保守市場780億円(実質)× シェア8.5%、営業利益率20.0%
倍率:事業の純利益 28 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)38 億円。全体の PER 14.4 倍、時価総額 435 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:部品・保守の収入と首位級の地位は続くが、中国との競争と物価の上昇で利益率は戻りきらない。過去の12〜14%を下回る10%台前半に置き、確率を最も厚くした。
やや悲観 24% 中国勢の値下げと電動化で、利益率は6%にとどまる 利益 12 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 420 円131 億円
中国の安価なロボットが標準品の価格を押し下げ、当社のシェアは13%に下がる。市場は今の1.05倍にとどまり、ロボットの売上は179億円。特注機は医療の戻りが鈍く、赤字が続く。
部品・保守は設置台数の増加で1.1倍、売上は71億円、利益率は17%を保つ。全体の営業利益率は6.2%で、2026年3月期の3.6%よりは戻るが、過去の水準には遠い。
配当は性向を保てず、利益の6割近くが配当に回る。10年後の自己資本は390億円ほどにとどまる。
物価で人件費や研究開発費が上がる中、値上げが通らず、利益率の戻りは限られる。パレタイジングは大手との競争で、利益の柱には育たない。
- ロボット(取出ロボット・パレタイジングロボット):数量 1,029(世界の射出成形機用取出ロボット市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア)× 価格 17.4%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 179 億円・営業利益 7 億円。取出ロボット市場1029億円(実質)× シェア13.0%、営業利益率4.0%
- 特注機:数量 1,080(医療・電子向けの専用自動化装置で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 2.9%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 32 億円・営業利益 −1 億円。特注機の狙える市場1080億円(実質)× シェア2.2%、営業利益率-2.0%
- 部品・保守サービス:数量 660(取出ロボットの世界の部品・保守の市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 10.7%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 71 億円・営業利益 12 億円。部品・保守市場660億円(実質)× シェア8.0%、営業利益率17.0%
倍率:事業の ROE は 4% 前後で k の 8.25% を大きく下回る。構造的に負けた会社として、PER の上限(1÷k = 12.1 倍)の約75%の 9 倍とした。
確率:自動車の電動化と中国勢の追い上げで、2026年3月期の谷から戻りきらない形。会社の中期目標が届かない現状と整合する。
悲観 11% 取出ロボットが値崩れし、買収した資産も減損する 利益 2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 257 円81 億円
中国勢のシェアが急に伸び、取出ロボットの価格が下がる。当社のシェアは11%まで落ち、市場は今の0.9倍に縮む。ロボットの利益率はゼロに近くなる。
特注機は赤字が続き、部品・保守も古い機種の更新が止まって1割落ちる。米国とWEMO社を含む海外子会社で、顧客関連資産の減損が出る。
営業利益率は1.7%に落ちる。配当は半分に減らされ、10年後の自己資本は減損で350億円ほどまで減る。物価で人件費や研究開発費が上がる中、固定費が重く利益を圧迫する。
それでも部品・保守は残り、純現金も厚いため、会社が続くことは揺るがない。株主にとっては、長く配当の少ない会社になる。
- ロボット(取出ロボット・パレタイジングロボット):数量 882(世界の射出成形機用取出ロボット市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア)× 価格 14.7%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 130 億円・営業利益 0 億円。取出ロボット市場882億円(実質)× シェア11.0%、営業利益率0.0%
- 特注機:数量 840(医療・電子向けの専用自動化装置で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 2.4%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 20 億円・営業利益 −2 億円。特注機の狙える市場840億円(実質)× シェア1.8%、営業利益率-10.0%
- 部品・保守サービス:数量 570(取出ロボットの世界の部品・保守の市場(億円、実質)× 当社シェア)× 価格 9.4%(当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍))→ 売上 54 億円・営業利益 6 億円。部品・保守市場570億円(実質)× シェア7.0%、営業利益率12.0%
倍率:事業の利益が薄く、稼ぐ力では測れない。売れる資産の税後を床とし、清算されない限り少数株主は現金の使い道を決められないため、さらに割り引いた80億円とした。減損後の自己資本350億円に対するPBRは0.23倍。
確率:中国勢の攻勢で標準品が値崩れし、自動車・電子の投資も細る場合。赤字の期がなかった実績から頻度は低いが、起きれば深い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ロボット(取出ロボット・パレタイジングロボット)
射出成形品の取出ロボットと、食品・物流向けのパレタイジングロボット。
| 数量世界の射出成形機用取出ロボット市場(億円、今の値段で測った実質)× 当社シェア | 価格当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 980 | 15.3% | 150 | 4 |
| 10 年後 中立 | 1,274 | 19.4% | 248 | 21 |
取り方:ロボットの売上149.5億円は開示。世界の射出成形機用ロボットの市場を、調査会社LPIの2025年6.5億ドル(約980億円)とし、シェアは約15%。この市場の推計は6.5億ドルから22億ドルまでぶれるため、シェアは取出ロボットの首位級という会社の説明と矛盾しない範囲で置いた。営業利益は区分別非開示で、2026年3月期の落ち込みを踏まえ、利益率2.5%と推定した。
特注機
顧客ごとの専用自動化装置。医療関連の需要が大きい。
| 数量医療・電子向けの専用自動化装置で当社が狙える市場(億円、実質)× 当社シェア | 価格当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,200 | 2.6% | 32 | −2 |
| 10 年後 中立 | 1,440 | 3.5% | 50 | 3 |
取り方:特注機の売上31.6億円は開示(医療関連の大幅減で前期から急減)。狙える市場を約1,200億円と筆者が推定し、シェア2.6%を逆算した。2026年3月期は受注減で赤字と推定し、利益率−7%とした。
部品・保守サービス
設置したロボットの消耗部品、点検、改造。
| 数量取出ロボットの世界の部品・保守の市場(億円、実質)× 当社シェア | 価格当社のシェア × 物価の倍率(今は1、10年で1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 8.3% | 50 | 8 |
| 10 年後 中立 | 780 | 11.4% | 89 | 18 |
取り方:部品・保守サービスの売上49.9億円は開示。市場を約600億円と推定し、シェア8.3%を逆算した。設置後の継続収入で利益率は高く、15%と推定した。
リスクと懸念
利益の戻りが遅い
2026年3月期の営業利益は前の期から7割減の8億円。会社は2027年3月期に13億円へ戻すと見るが、中期目標の営業利益率15%には遠い。研究開発費や人件費が物価で増えるため、売上が戻っても利益は戻りにくい。
中国勢の値下げ攻勢
有価証券報告書も競合の値下げ攻勢を主なリスクに挙げる。中国の安価なロボットがアジアで広がれば、標準品の価格とシェアの両方が下がる。
顧客の設備投資の振れ
自動車、電子、医療、日用品の工場の設備投資で受注が大きく動く。2026年3月期は医療関連の特注機が急減し、全社の利益を直撃した。
自動車の電動化
内燃機関の部品の成形が減れば、自動車向けの取出ロボットの需要が細る。電動化は10年のスパンで需要の構成を変える。
海外子会社の赤字と減損
米国子会社は赤字で、欧州のWEMO社など買収に伴う顧客関連資産が貸借対照表に載る。業績が悪化すれば減損で自己資本が減る。
支配株主と現金の戻り方
筆頭株主が36.7%を持ち、純現金は69億円と厚いが、配当は純利益の4割台、自社株買いはない。現金が少数株主に戻る保証は薄い。
今後の分かれ目
- 2027年3月期の営業利益が13億円を超えて着地し、受注が増えたら
- 谷から戻る筋書きが確かになり、中立より上に確率を移してよい。特注機の受注が戻るかを確認する。
- パレタイジングロボットの売上が2桁増を続け、利益率が出たら
- 新規事業が柱になる兆しで、楽観の確率を上げる。大手との競合状況に注意する。
- アジアで中国製ロボットの価格が下がり、シェアを失う兆しが出たら
- やや悲観〜悲観に重みを移す。部品・保守の売上が落ちるかが分かれ目だ。
- 配当性向を引き上げる、または自社株買いを始めたら
- 現金の戻り方が確かになり、余った現金の評価を引き上げる材料になる。
- ユーシンインダストリーが非公開化を提案したら
- TOBの確率を上げる。提案価格が10年の稼ぐ力と純現金に見合うかを別に確かめる。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高と営業利益率
- 部品・保守サービスの売上の伸び
- パレタイジングロボットの売上と利益
- 中国勢のアジアでの価格とシェア
- 配当性向と自社株買い、支配株主の動き
倍率と資本コストの決め方
ロボット・特注機・部品保守の3つに、市場×シェアを置いて10年後の利益と倍率を式から決めた。今の株価は見ていない。2026年3月期の営業利益率3.6%は谷だが、過去12年の10〜15%には戻らない前提で、中立は10.4%に置いた。強気の13.3%は過去の最高(14.6%)を超えない。倍率は、事業のROEがkをやや下回る前提で、1÷k(12.1倍)の約87%に置いた。余った現金は50億円のみを数え、戻り方0.5を掛けた。今の時価総額(213億円)を基準にした調整はしていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→17.74 倍・やや楽観 PER 12→16.26 倍・中立 PER 10.5→14.4 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 0.75% = 8.25%。米国子会社の赤字や支配株主の存在は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.00%。