結論
荏原実業は、荏原製作所のポンプやブロワ、水処理機器を官公庁と民間の工場に売り、設備工事までまとめて請け負う会社だ。売上の約 5 割強は上下水道や廃棄物処理の設備を組み上げるエンジニアリング事業で、利益の約 6 割もここが稼ぐ。残りは代理店としての商品販売と、自社の環境機器の製造である。
筆者の結論は、事業は堅実だが今の値段は高い、というものだ。2025 年 12 月期は営業利益率が 14.8% と過去最高になった。官公庁の大型案件が重なった結果で、これが続くとは考えにくい。利益が平均に戻るだけで、10 年先の価値は今の値段を 4 分の 1 ほど下回る。
良い点は財務の厚さだ。現金は借金を大きく上回り、純現金は時価総額の 2 割を占める。配当性向の目安も 40% に引き上げた。アクティビストが株を買い増していることも、還元を後押しする。余った現金が株主に戻るかどうかが、この株の評価を分ける。
弱い点は二つある。一つは売上の約 7 割を占める官公庁の予算への依存だ。もう一つは、仕入れの大半を荏原製作所に頼る構造である。代理店契約が変われば、事業の前提そのものが動く。この二つを織り込むと、堅実さに見合う倍率はそれほど高くならない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で見ると、この会社の稼ぐ力は「仕組み」より「関係」に支えられている。荏原製作所の代理店という立場と、官公庁との長い取引だ。どちらも今は強いが、相手が契約や発注の仕方を変えれば崩れる。自分で守れない堀は、10 年先まで当てにしにくい。
オーナー利益の面では、資産が軽い点を評価できる。工場を持たないので、利益の大半を株主に戻せる。実際、必要な設備投資は小さい。問題は、その利益を戻さずに現金でためてきた点だ。ためた現金は帳簿上の価値はあっても、市場では額面どおりに評価されにくい。
安全域の面では、財務は強いが、値段にその分の余裕はない。今の値段は、記録的な利益がそのまま続くことを前提にしているように見える。筆者は、利益が平均に近づく筋書きを中心に置き、現金と有価証券は半分だけ価値として足した。その結果、今の値段は 10 年先の価値を大きく先取りしていると見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ方は三つの事業に分かれる。エンジニアリング事業は、上下水道や廃棄物処理の施設に入るポンプ、水処理機器、プラント設備を設計・施工する。売上は約 225 億円、営業利益は 43 億円で、全体の利益の約 6 割を生む。官公庁の案件が中心で、大型案件の時期によって年ごとの振れが大きい。
商社事業は、荏原製作所のポンプ、圧縮機、送風機などを工場やビルに売る。売上は約 113 億円、利益は 19 億円。荏原グループからの仕入れが商品仕入高の 67% を占める。メーカー事業は、自社ブランドの環境機器を作って売る。売上は約 75 億円、利益は 12 億円。ただし自社工場は持たず、製造は外部に委託している。
売上の構成はエンジニアリングが 5 割強、商社が約 3 割、メーカーが約 2 割。利益ではエンジニアリングが約 6 割、商社が 2 割台を占める。売上は 2014 年の約 300 億円から 2025 年の 412 億円へ、営業利益は 12 億円から 61 億円へ伸びた。従業員は単体で 458 人と少数精鋭で、固定費が軽い。
顧客の約 7 割は官公庁である。下水処理場の機械設備更新や、ごみ処理施設、浄水場の更新が主な仕事だ。民間向けは、工場の排水処理やボイラ周りの機器が中心になる。中期経営計画「EJ2027」は 2027 年 12 月期に売上 450 億円、営業利益 55 億円、ROE15% 以上を掲げる。足元の実績はすでに営業利益の目標を超えている。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、荏原製作所の製品を官公庁に納める実績と、設計から施工までを一括で担える体制にある。官公庁の更新工事は、実績のある会社に繰り返し発注される。身軽な組織で、投下資本に比べた利益が大きい。過去 10 年の ROE は中央値で 13% 台、直近は 15% 台である。
弱みは、堀と呼べるほど強い障壁が見当たらないことだ。自社の工場がなく、製品の中身は荏原製作所とその関係会社に依存する。仕入れの大半が荏原グループで、代理店契約が延長されない場合や取引が縮小した場合の影響は、有価証券報告書でも自ら明記している。荏原グループ側が直販を増やせば、取り分は減る。
官公庁への依存も無視できない。受注の 67% が官公庁で、公共投資が絞られれば直撃を受ける。前の中計 EJ2024 は営業利益の目標に届かず、高効率の水処理システムの開発が遅れたことも課題に挙げた。技術で稼ぐ会社というより、取引関係と実行力で稼ぐ会社である。
財務は強い。自己資本比率は 57.7%、現金は約 145 億円で、借金は小さい。過去 20 年に赤字の期が 3 回あるが、今の財務なら耐えられる。経営は、利益を出す一方で、現金をためる傾向もある。資本の使い方には改善の余地がある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
主な市場は国内の水とエネルギーの設備で、需要を決めるのは公共投資と民間の設備更新だ。下水道や浄水場の設備は、高度成長期に造られたものが寿命を迎えている。更新の需要そのものは確実にある。ただ、人口が減る中で自治体の財政は厳しく、投資を絞る動きも強まる。
官公庁の発注では、複数の自治体を束ねる広域化と、民間に運営を任せる官民連携が進む。国が後押しする水道・下水道の官民連携(ウォーターPPP)では、発注が大型化し、規模の大きい会社に有利になる。荏原実業は荏原グループの製品力を背に受注を取ってきたが、大型案件では水処理の大手や、荏原グループ自身と競う場面が増えるだろう。
業種全体の見通しでは、水処理・ポンプ・バルブの領域は、数量が年 3〜5% 前後で安定して伸び、価格は物価並みに上がるとみる。ただ荏原実業の主戦場は国内の官公庁なので、人口減で数量はほぼ横ばいとみるのが妥当だ。国内の機械設備市場を約 1.2 兆円、小型の水処理・環境機器を約 3,000 億円、ポンプなどの流通を約 8,000 億円と推定し、その中での取り分を考えた。
競合は、栗田工業やオルガノのような水処理の専業、月島ホールディングスのような官公庁向けプラント会社、そして荏原グループ自身である。民間向けには、ポンプ・ボイラの商社や代理店が多数ある。価格は入札で決まり、値決め力は強くない。
資本政策と M&A
還元は拡大の途上にある。配当性向の目安は従来の 35% から、2026 年 12 月期以降は 40% に引き上げた。2025 年 12 月期の配当総額は約 14 億円で、創業 80 周年の記念配当を含む。自社株買いも機動的に行うとしており、2026 年 7 月時点で自己株は約 215 万株に積み上がっている。
現金は 10 年で大きく積み上がった。純現金は 2014 年の約 12 億円から 2025 年の約 130 億円へ増えた。純利益の 3 割台しか戻さなければ、現金はたまる一方になる。大株主には、アクティビストのファンドが 7% 超で名を連ねる(2026 年 6 月の大量保有報告)。還元の拡大や資本の使い方を求める圧力は強まるはずだ。
政策保有株は、荏原製作所の株が約 40 億円、ほかに 2 銘柄で約 2 億円。ほかに純投資の株が 4 銘柄で約 40 億円ある。当期は 1 銘柄を全部、1 銘柄を一部売った。縮減の方針は掲げているが、荏原製作所の株は取引関係の維持を理由に持ち続けている。
M&A は、中計で「新領域の探索」を掲げる。大型の買収の実績は乏しく、自社工場を持たない身軽さを生かした小さな買収にとどまりそうだ。一方、荏原グループに近い立場や現金の厚さ、株主の圧力を考えると、買われる側になる可能性もある。kabufu の推計では、10 年以内の TOB・買収の確率は約 19% である。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
荏原実業は、荏原グループという強いブランドを背負い、官公庁の更新需要という確実な市場を持つ。下水道・浄水場・ごみ処理施設の老朽化は避けられず、更新工事は今後 10 年、安定した仕事を生む。官民連携が進めば、実績と提案力のある会社に発注が集まり、小さな会社より有利になる。
事業の身軽さも見逃せない。従業員は単体で 458 人、自社工場は持たず、投下資本が小さい。だから利益率が上がると ROE は一気に 15% を超える。2025 年 12 月期の営業利益率は 14.8%、会社予想でも 2026 年、2027 年とも 14% 台を見込む。中計の 2030 年の売上 600 億円・営業利益 80 億円も、荏原グループの海外展開や民間の工場需要を取り込めば届く。
財務は盤石で、純現金は時価総額の 2 割を占める。配当性向を 40% に引き上げ、アクティビストが入ったことで、現金は株主に戻る可能性が高い。還元が進めば株価は利益以上に評価される。これらを合わせれば、今の値段は割安とまでは言えなくても、10 年で十分な収益を期待できる水準にある。
慎重な見方
2025 年 12 月期の利益は、官公庁の大型案件が重なった一過性の高さだ。エンジニアリング事業の利益は 1 年で 77% 増えたが、その前の年は 13% 程度の利益率だった。会社の計画も、2027 年 12 月期の営業利益を 55 億円と置いており、実績はすでにそれを超えている。平均に戻る力が働くのが普通だ。
事業の土台にも弱みがある。商品仕入れの 67% が荏原グループで、代理店契約が延長されない場合の影響を会社自身が明記している。荏原グループが直販を強めれば、代理店の取り分は削られる。自社工場がなく、技術で差をつけにくい点も、入札で価格を競う世界では不利になる。
官公庁依存は 7 割近い。人口が減る中で、自治体は広域化と大型化へ発注を変えており、中堅の会社には厳しい。前の中計は未達だった。現金は厚いが、これまで利益の 3 割台しか戻さず、ためてきた。株主還元の拡大は期待できるが、買収に使って価値を壊す可能性もある。10 年後の利益は、今より低いとみるのが自然だ。
どちらに重みを置いたか
事業の堅実さと財務の厚さは、強気の見方が正しい。ただ、記録的な利益率が平均に戻る点と、代理店契約・官公庁という二つの依存は、慎重な見方のほうが重い。中立の筋書きでは、営業利益率が 11.8% に落ち着く。この場合、10 年後の時価総額は今の約 1.2 倍にとどまる。
確率は、中立に最も重みを置き、やや悲観を楽観側より厚くした。荏原グループとの関係が変わる悪い筋書きは、悲観に 12% 置いた。結果は今の値段を 4 分の 1 ほど下回る、やや割高だ。現金の戻り方が株価にどこまで効くかは、まだ読み切れない。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,764 円892 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,052 円249 億円)。 今の値に割り戻すと 2,459 円583 億円、今との差 −0.8%、 期待の年率 +6.9%(資本コスト 8.0%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,789 円1,610 億円 | 1,426 円338 億円 | +231.5% | +12.7% | 657 円156 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,457 円1,294 億円 | 1,240 円294 億円 | +170.3% | +10.5% | 1,339 円318 億円 |
| 中立 | 35% | 4,719 円1,119 億円 | 1,139 円270 億円 | +136.4% | +9.0% | 2,050 円486 億円 |
| やや悲観 | 25% | 1,624 円385 億円 | 924 円219 億円 | +2.8% | +0.3% | 637 円151 億円 |
| 悲観 | 12% | 596 円141 億円 | 502 円119 億円 | −55.7% | −7.8% | 132 円31 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,764 円892 億円 | 1,052 円249 億円 | +94.3% | +6.9% | 4,815 円1,142 億円 |
今の株価時価総額 2,478 円588 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 官民連携の波に乗り、荏原グループの海外と民間の需要も取り込む 利益 79 億円 · PER 18.4 倍 · 株価時価総額 6,789 円1,610 億円
国の後押しで官民連携が広がり、荏原実業は大型の更新案件をいくつも取る。エンジニアリング事業は市場の約 2.2% を握り、利益率は 17% を保つ。荏原グループの海外事業や民間工場向けの需要も取り込み、商社事業は市場の 1.55% まで伸びる。メーカー事業は新製品が当たり、シェア 3% に達する。
売上は 740 億円規模に育ち、中計が掲げる 2030 年の 600 億円を早い時期に超える。営業利益率は 14% 前後で、記録的な高さが定着する。現金は着実に株主へ戻り、配当と自社株買いを合わせて 330 億円を超える。これ以上ない形だが、官公庁の予算も荏原グループとの関係も、うまく行き続けることが前提だ。
- エンジニアリング事業:数量 14,400(国内の上下水道・廃棄物処理などの機械設備市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 425 億円・営業利益 72 億円。市場 1.44 兆円 × シェア 2.2%、利益率 17%
- メーカー事業:数量 3,600(国内の小型の水処理・排水処理・環境機器の市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 4.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 145 億円・営業利益 25 億円。市場 3,600 億円 × シェア 3.0%、利益率 17%
- 商社事業:数量 8,400(国内のポンプ・圧縮機・送風機などの流通市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 175 億円・営業利益 28 億円。市場 8,400 億円 × シェア 1.55%、利益率 16%
倍率:事業の純利益 78 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 15.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)95 億円。全体の PER 18.37 倍、時価総額 1,522 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:官民連携の拡大、荏原グループ製品の海外・民間での伸び、現金の還元がすべてそろう必要があり、起こりにくい。会社の長期ビジョンを上回る水準なので 8% にとどめた。
やや楽観 20% 更新需要を着実に取り、利益率が高めのまま続く 利益 63 億円 · PER 17.9 倍 · 株価時価総額 5,457 円1,294 億円
下水道や浄水場の更新工事を安定して取り、エンジニアリング事業の利益率は 16% を保つ。メーカー事業は自社の環境機器が地道に伸び、シェアが 2.8% に上がる。商社事業は荏原グループの製品販売が民間で伸び、1.5% のシェアを維持する。
売上は約 650 億円、営業利益は 83 億円で、会社の 2030 年の目標に近い道を歩く。営業利益率は 12〜13% で、足元の記録的な高さから少し落ち着く程度にとどまる。配当性向は 40% を超え、自社株買いも入る。ROE は 12% 台と、過去の中央値の少し下になる。
- エンジニアリング事業:数量 13,200(国内の上下水道・廃棄物処理などの機械設備市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 363 億円・営業利益 58 億円。市場 1.32 兆円 × シェア 2.05%、利益率 16%
- メーカー事業:数量 3,300(国内の小型の水処理・排水処理・環境機器の市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 3.8%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 124 億円・営業利益 20 億円。市場 3,300 億円 × シェア 2.8%、利益率 16%
- 商社事業:数量 8,050(国内のポンプ・圧縮機・送風機などの流通市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 162 億円・営業利益 25 億円。市場 8,050 億円 × シェア 1.5%、利益率 15.5%
倍率:事業の純利益 62 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 20.1% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)95 億円。全体の PER 17.89 倍、時価総額 1,198 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の 2030 年の目標(売上 600 億円・営業利益 80 億円)に近い道を歩み、利益率が 13% 近くを保つ筋書き。実績が目標を上回っているので、一定の確率を置いた。
中立 35% 利益率は平均に戻り、堅実に伸びる普通の優良会社 利益 54 億円 · PER 17.5 倍 · 株価時価総額 4,719 円1,119 億円
更新需要はあるが、人口減と財政の制約で数量はほとんど増えない。エンジニアリング事業は市場の約 2% を取り、利益率は 15% に落ち着く。2025 年の 19% は、大型案件が重なった特別な年だったとみる。メーカー事業と商社事業も、利益率は 15% ほどで落ち着く。
売上は約 590 億円、営業利益は 70 億円。営業利益率は 11.8% と、過去の平均よりは高いが、記録的な水準には戻らない。現金は配当性向 40% 超の還元でゆっくり減り、純利益の 5 割強が株主に戻る。荏原グループとの取引は続き、普通に強い優良会社として評価される 10 年になる。
- エンジニアリング事業:数量 12,600(国内の上下水道・廃棄物処理などの機械設備市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.6%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 329 億円・営業利益 49 億円。市場 1.26 兆円 × シェア 1.95%、利益率 15%
- メーカー事業:数量 3,150(国内の小型の水処理・排水処理・環境機器の市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 3.5%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 110 億円・営業利益 17 億円。市場 3,150 億円 × シェア 2.6%、利益率 15%
- 商社事業:数量 7,900(国内のポンプ・圧縮機・送風機などの流通市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 1.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 154 億円・営業利益 23 億円。市場 7,900 億円 × シェア 1.45%、利益率 15%
倍率:事業の純利益 53 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)95 億円。全体の PER 17.53 倍、時価総額 1,018 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの国内中心の中立(数量はほぼ横ばい、価格は物価並み)に沿い、利益率は記録的な高さから平均へ戻る。最も重みを置いた。
やや悲観 25% 官公庁の発注が大型化し、シェアと利益率がじわり下がる 利益 29 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,624 円385 億円
官公庁の発注が広域化・大型化し、実績のある大手が有利になる。エンジニアリング事業のシェアは 1.7% に下がり、利益率も 11〜12% に落ちる。荏原グループの環境プラント子会社との競合も増え、価格競争が続く。メーカー事業は新製品が当たらず、シェアが 2.2% にとどまる。
商社事業は、荏原グループの直販が増えて取り分が削られ、シェアが 1.25% に下がる。売上は約 470 億円、営業利益は 37 億円で、営業利益率は 8% 弱になる。現金は買収や運転資金で減り、手元の余裕は今の 4 分の 3 ほどになる。ROE は資本コストを下回る。
- エンジニアリング事業:数量 11,700(国内の上下水道・廃棄物処理などの機械設備市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.3%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 267 億円・営業利益 31 億円。市場 1.17 兆円 × シェア 1.7%、利益率 11.5%
- メーカー事業:数量 2,900(国内の小型の水処理・排水処理・環境機器の市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 86 億円・営業利益 10 億円。市場 2,900 億円 × シェア 2.2%、利益率 12%
- 商社事業:数量 7,300(国内のポンプ・圧縮機・送風機などの流通市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 1.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 122 億円・営業利益 14 億円。市場 7,300 億円 × シェア 1.25%、利益率 11%
倍率:ROE 6.8% が k 8% を下回り、ためた利益は額面より低い価値なので PER は 1÷k(12.1 倍)が上限。発注の大型化でシェアを失い稼ぎの質が落ちるので、上限の 7 割の 8.5 倍に置いた。
確率:官公庁の発注の大型化・広域化で中堅が不利になる筋書き。人口減と財政の制約は確実に進むので、楽観側より厚い 25% を置いた。
悲観 12% 荏原グループの販売網の見直しと官公庁の縮小が重なる 利益 9 億円 · PER 11.3 倍 · 株価時価総額 596 円141 億円
荏原製作所が国内の販売網の見直しを進め、直販を拡大するか、代理店契約の条件を大きく変える。商社事業の取り分は大きく減り、シェアは 0.85% まで下がる。官公庁向けの工事でも荏原グループ自身と競う形になり、エンジニアリング事業の利益率は 7% 台に落ちる。
自社工場を持たないため、代わりの仕入れ先を探してもすぐには利益が戻らない。売上は約 340 億円まで縮み、営業利益はほぼ 10 億円を切る。還元は純利益の半分ほどに落ち、現金は事業の立て直しや買収の失敗で減って、今の半分ほどになる。それでも手元の現金と株式は残るので、会社の価値がゼロになるわけではない。
- エンジニアリング事業:数量 10,800(国内の上下水道・廃棄物処理などの機械設備市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 1.9%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 203 億円・営業利益 15 億円。市場 1.08 兆円 × シェア 1.4%、利益率 7.5%
- メーカー事業:数量 2,700(国内の小型の水処理・排水処理・環境機器の市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 2.3%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 62 億円・営業利益 5 億円。市場 2,700 億円 × シェア 1.7%、利益率 8%
- 商社事業:数量 6,600(国内のポンプ・圧縮機・送風機などの流通市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア)× 価格 1.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 75 億円・営業利益 4 億円。市場 6,600 億円 × シェア 0.85%、利益率 5%
倍率:ROE 2.1% が k 8% を下回り PER は 1÷k(12.1 倍)が上限。稼ぐ力は小さいが、利益の大半は現金と保有株の利息・配当で、事業の稼ぎでない。純利益が小さいので上限の 9 割の 11.26 倍を置いても価値は小さい。余った現金は半分に減る前提。
確率:荏原製作所が直販を強める、あるいは代理店契約が見直される筋書き。一度起きると回復しにくいが、契約は長く続いてきたので 12% にとどめた。代理店依存は寿命の目安に入れてあり、k と二重には動かしていない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エンジニアリング事業
上下水道・浄水場・廃棄物処理などの施設に入るポンプ・水処理機器・プラント設備の設計と施工。官公庁向けが中心で、大型案件の時期で年ごとの振れが大きい。
| 数量国内の上下水道・廃棄物処理などの機械設備市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 12,000 | 1.9% | 225 | 43 |
| 10 年後 中立 | 12,600 | 2.6% | 329 | 49 |
取り方:2025 年 12 月期のエンジニアリング事業の売上 224.5 億円・利益 43.3 億円(有価証券報告書)。市場は国内の上下水道・浄水・廃棄物処理の機械設備更新などを約 1.2 兆円と推定し、シェアは約 1.87%(筆者の推定。官公庁の発注統計は公開されておらず幅がある)。数量は実質、物価の分は価格(シェア × 物価の倍率)に入れた。
メーカー事業
自社ブランドの環境関連機器(水処理装置・排水処理・ボイラ周りなど)の開発と販売。製造は外部に委託している。
| 数量国内の小型の水処理・排水処理・環境機器の市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3,000 | 2.5% | 75 | 13 |
| 10 年後 中立 | 3,150 | 3.5% | 110 | 17 |
取り方:メーカー事業の売上 75.1 億円・利益 12.5 億円(有価証券報告書)。市場は小型の水処理・排水処理・環境機器を約 3,000 億円と推定し、シェアは 2.5%。数量は実質、物価の分は価格に入れた。
商社事業
荏原製作所とその関係会社のポンプ・圧縮機・送風機などを、工場・ビル・官公庁に売る代理店・商社の事業。
| 数量国内のポンプ・圧縮機・送風機などの流通市場(億円、今の値段で測った実質)× シェア | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 8,000 | 1.4% | 113 | 19 |
| 10 年後 中立 | 7,900 | 1.9% | 154 | 23 |
取り方:商社事業の売上 112.5 億円・利益 18.8 億円(有価証券報告書)。市場は国内のポンプ・圧縮機・送風機などの流通を約 8,000 億円と推定し、シェアは約 1.4%(推定)。数量は実質、物価の分は価格に入れた。
リスクと懸念
荏原グループとの代理店契約
商品仕入れの 67%、製品・工事原価の 19% が荏原グループからで、代理店契約が延長されない場合や取引が縮小した場合の影響を会社自身が有価証券報告書に明記している。荏原グループが直販を強めれば、代理店の取り分は減る。最も大きな構造リスクだ。
官公庁予算への依存
受注の 67%・販売の 66% が官公庁で、公共投資の抑制や自治体財政の悪化の影響を直接受ける。人口が減る中で、更新工事の先送りや発注の広域化・大型化が進めば、中堅の取り分は小さくなる。
記録的な利益の反動
2025 年 12 月期は営業利益率が 14.8% と過去最高で、エンジニアリング事業の利益が 1 年で 77% 増えた。大型案件の時期が重なった面が強く、翌年以降に平均へ戻る可能性が高い。会社予想も 2026 年は小幅な増益にとどまる。
工事の採算悪化
設計から施工まで請け負うため、資材や人件費の上昇、工期の遅れによる工事損失が出うる。官公庁の案件は入札で価格を競い、あとから値上げを転嫁しにくい。有価証券報告書も工事損失を事業リスクに挙げる。
余った現金の使い方
純現金は約 130 億円、保有株も合わせて約 80 億円ある。株主に戻されず、実績に乏しい買収に使われるなら価値は目減りする。逆に、アクティビストの働きかけで還元が進めば上振れの材料になる。
自社工場を持たない弱さ
製造を外部に委託しており、委託先の確保や品質、原材料の調達に依存する。品質問題が起きれば、官公庁との信頼を損ないかねない。技術で他社と差をつけにくく、前の中計では高効率の水処理システムの開発が遅れた。
今後の分かれ目
- 荏原製作所が国内の販売網を見直し、代理店契約の条件が変わったら
- 商社事業とエンジニアリング事業の両方に響くので、悲観・やや悲観の確率を上げる。条件が改善・延長されれば、中立側に戻す。
- 官公庁の大型案件が続き、2026〜2027 年 12 月期も営業利益率 14% 台を保ったら
- 記録的な利益率が構造的なものだった可能性が高まる。やや楽観の確率を上げ、中立の利益率も少し引き上げる。
- 配当性向の引き上げに加え、純現金を使った大型の自社株買いが出たら
- 余った現金の戻り方を 1.0 に近づけてよい。価値は現金の半分から全額へ近づく。
- アクティビストが株主提案や取締役の選任を求めてきたら
- 還元と資本効率の改善が早まる一方、経営の混乱も起こりうる。買収・TOB の確率も上がる。
- 大型の買収を発表し、現金の大半を使うことになったら
- 価値を壊す買収の確率を悲観側に加える。ためてきた現金の価値を下げて見直す。
- ウォーターPPP などの官民連携で大型の運営案件を取れたら
- ストック型の収益が育つので、やや楽観に重みを移す。逆に大手に取られ続けるなら、やや悲観に寄せる。
見ておくもの
- エンジニアリング事業の受注残と営業利益率(四半期ごと)
- 荏原グループからの仕入比率と代理店契約に関する開示
- 配当性向・自社株買いの実施額と純現金の推移
- アクティビスト(大量保有報告)の持株比率と株主提案
- 官公庁の上下水道・廃棄物処理の更新予算と官民連携の案件
倍率と資本コストの決め方
3 事業の市場規模(実質)× シェアと物価並みの価格で売上を積み、利益率は事業の構造から置いた。倍率は利益ベースの正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)(k 8% = 基本 7.5% + quality 0.75%、g 4%、残る割合 1/2)の上限の 9 割(楽観〜中立)、やや悲観は 7 割。ROE が k を上回る筋書きの PER は 1÷k を下回らせない決まりにより、中立は上限の 9 割になった。今の PER・PBR や過去の倍率には寄せていない。余った現金 95 億円は戻り方 0.5 で足した。2025 年 12 月期は大型案件で利益が高く、今の ROE 15.7% を中立に置かず平均へ戻した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.63→18.37 倍・やや楽観 PER 12.86→17.89 倍・中立 PER 12.29→17.53 倍・悲観 PER 10.91→11.26 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +0.75% = 8.25%。荏原製作所との代理店契約や官公庁依存は寿命と値決め力の目安に入れ、確率では二重に動かさない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 8.00%。