結論
ユニバーサルエンターテインメントは、パチスロ・パチンコの新台を作る遊技機事業と、マニラの統合型リゾート「オカダ・マニラ」を運営するIR事業の二本柱の会社だ。筆者の結論は割高である。本業の遊技機は強いが、カジノと借金の重さが、株主に残る利益をほとんど削ってしまう。
遊技機はいま追い風の中にある。スマスロの普及で新台がよく売れ、2026年12月期の上半期だけで遊技機の営業利益は140億円を超えた。ミリオンゴッドと沖ドキのような看板機種を持つことが、この会社の最大の財産だ。
一方のマニラは、中国人客とVIPの縮小、競合との顧客の奪い合いで2025年に売上が2割減り、2,291億円の減損を出した。現金は出ていかないが、投じた資金が戻らなかったという事実は動かない。借金は9.875%のドル建てノート(2029年償還)など約1,300億円が残り、利払いは年に100億円ほどかかる。
営業利益が160億円の計画でも、純利益は20億円しか残らない。これが「稼いでも株主に届かない」構図である。ここに、非上場の親会社が議決権の約7割を握る構造が重なる。
10年の見方は、遊技機が縮む市場で今の稼ぎをおおむね守り、マニラが最悪期を抜けて緩く戻る、というところが中心だ。この場合でも、借金の返済に利益の大半が回り、株主のものになる価値は今の時価総額に届かない。強気の筋書きが完全に当たれば大きく報われるが、その確率は低い。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「優れた事業と重い荷物が同居する会社」だ。
遊技機は、設備投資が軽く、当たれば利益率が3割に届く。持ち続けたいと思える事業ではある。ただしヒットは水物で、規制の一撃で利益が半分になることもある。
問題はもう一つの柱だ。マニラの施設は何千億円もの資金を食い、資本コストに見合う利益をまだ稼げていない。減損は帳簿の整理にすぎず、投じたお金が戻らなかったという事実は変わらない。さらに借金は高い金利で、2029年に大きな借り換えが待つ。
オーナー利益、つまり株主が自由にできる利益で見ると、営業利益160億円の計画でも、利払いと税を引くと20億円しか残らない。10年後の見通しも、中心の筋書きで純利益は70億円台にとどまる。
安全域は薄い。景気や規制がうまく運ばなければ、借金が株主の取り分を食い尽くす。わかりにくい事業が二つ重なる会社は、確信度を下げて見るのが筋だ。強気の筋書きが当たれば大きく報われるが、払う値段に見合う割合ではない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は二つあり、性格がまるで違う。
遊技機事業は、パチスロとパチンコの新台をホールに売る商売だ。2025年は約11.5万台を売り、売上は567億円、営業利益は107億円だった。ホールは新台を入れ替えて客を呼ぶので、ヒット機種が出た年は台数も単価も跳ねる。看板は「沖ドキ」「ミリオンゴッド」「ハナビ」などで、2026年はスロットだけで約10.8万台の計画だ。2026年からは他社製品の販売も始める。
IR事業は、マニラのエンターテインメントシティにある「オカダ・マニラ」の運営だ。カジノ、ホテル、飲食、娯楽施設を一体で運営する。2025年の売上は654億円で、遊技機とほぼ同じ規模だ。ただしカジノの総収益は前年比20%減り、営業損益は71億円の赤字だった。VIP客を連れてくる仲介業者の取扱高が半分以下になり、中国人観光客の減少とPOGO(オンラインカジノ業者)の禁止も響いた。
客が一般のマスマーケット中心へ移るなかで、ロイヤルティプログラムや国内向けオンラインゲーム「OKADA PLAY」を立ち上げ、立て直しを図っている。2026年中に第3の柱となる新事業の立ち上げも予告している。
二本柱の利益の出方は逆だ。遊技機は台数と単価で稼ぐ軽い事業、IRは巨額の設備を抱えて固定費が重い事業である。景気や規制の波が両方に来る点も、この会社を見るうえで押さえておきたい。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、遊技機にだけある。
遊技機では、スロットの看板機種に熱心なファンが付いている。ミリオンゴッドは長く続くシリーズで、沖ドキも根強い。遊技機は型式試験を通った機種しか売れない世界で、開発力と許認可への対応力が参入の壁になる。ただし新台のヒットは水物で、次も当たる保証はない。同業の三共・平和・セガサミーとは、台数のシェアが年ごとに入れ替わる。堀は強いとまでは言えない。
IRの堀は弱い。マニラにはソレア、シティ・オブ・ドリームズ、ニューポートなど競合が並び、顧客を取り合うコストが上がっている。立地と施設の新しさは売りだが、VIPが縮んだ今は、手厚い景品や送客手数料で客を買う側に回っている。
資本の使い方には疑問が残る。マニラの開発に巨額を投じたが、資本コストを稼げず、2025年に大きな減損を出した。ここ数年は赤字の年が多く、10年間の自己資本利益率の中央値はマイナスだ。
ガバナンスも読み切れない。非上場の親会社が議決権の約7割を持ち、創業者の岡田和生氏は2017年に取締役を退いた。会社は開示によれば同氏への損害賠償訴訟で勝ち、2021年に確定している。少数株主から見れば、経営判断が支配株主の意向に左右される余地があることは見ておきたい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
遊技機の市場は、いまスマスロの追い風を受けているが、長い目では縮む。
パチンコ・パチスロの市場は2024年に約16兆円と持ち直し、遊技人口も増えた。スマスロはメダルを触らず、出玉がデータで管理されるため、若い客と復帰客を呼んだ。新台の入れ替え需要は活発で、ユニバーサルは上半期だけで約8.8万台を売った。ただ、ホールの数は減り続け、遊技人口は長期では高齢化で細る。筆者は、10年の遊技機市場は年2〜4%ずつ縮むと見る。出玉規制や型式試験の動きが、利益を一気に振らすことも忘れてはならない。
マニラのカジノ市場は、調整の最中にある。POGO禁止と中国客の減少で伸びが止まり、オカダ・マニラの総収益は2025年に前年比20%減った。2026年は上半期も前年割れが続き、第3四半期の速報でようやく小幅のプラス(0.9%)に転じた。回復の確証はまだない。
競争は二つの面で厳しい。VIPは東南アジアの他国の施設と奪い合いになり、マス客はマニラ湾岸の競合と顧客獲得コストの勝負になる。国内向けオンラインゲームや、中国人客へのビザなし滞在(2026年1月から14日間)は追い風だが、中東情勢による燃料高や物価の高さが客足を重くしている。
二つの市場を合わせると、遊技機は縮み、マニラはどこで底を打つかがすべて、という形だ。マニラが戻らない限り、会社全体の価値は遊技機のブームの高さでは決まらない。
資本政策と M&A
資本政策のいちばんの問題は、借金の重さと、少数株主の取り分の薄さだ。
2024年に、満期を迎えた約7.6億ドルのノートを、親会社の4億ドルの新ノート(金利9.875%・2029年8月償還、格付けはB−)と、マニラ側の銀行借入4億ドル(金利6.75%・7年)で置き換えた。純有利子負債は2025年末で約970億円ある。利払いは年に約100億円で、営業利益160億円の計画でも、経常利益は22億円しか残らない。2029年の借り換えが、この会社の次の山場になる。
株主還元は今ほとんどなく、2025年12月期は配当も出していない。利益は借金の返済と投資に回る。上場子会社の立場で、非上場の親会社が議決権の約70%を握る点も、少数株主にとっては評価を下げる要因だ。親会社が少数株主を締め出す形の再編は、可能性としてあり得る。
2026年は他社製品の販売開始と、第3の柱となる新事業の立ち上げを予告している。M&Aは資金が乏しい今、大きなものは考えにくい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
遊技機はまだ上り坂にある。上半期の営業利益は通期計画を超え、第3四半期以降にも新機種が控える。スマスロは若い客を呼び、ホールの入れ替え需要は当面続く。ミリオンゴッドのような看板シリーズを持つことは大きい。他社製品の販売を始めれば、台数の上積みも見込める。
マニラは最悪期を抜けた可能性がある。第3四半期の総ゲーミング収益は前年を上回り、減損で減価償却費は半分になった。2026年のIRの営業利益は89億円の計画で、黒字化が見えている。中国人客のビザなし滞在、国内向けオンラインゲーム、第3の柱と、手札は増えている。
借金の重さは、うまく回れば株主に強く効く。営業利益が350億円に届けば、利払い100億円を引いても利益は大きく残る。時価総額は500億円台ではなく、2,000億円台も見えてくる。親会社が少数株主を買い取る再編も、割安なうちは起こり得る。さらに、2026年に予告した第3の柱の新事業が当たれば、遊技機とIRに続く第三の稼ぎが加わり、借金の返済が早まって利払いが減り、利益の質も上がる。
慎重な見方
遊技機の好調は一過性だ。スマスロの入れ替え需要が一巡すれば、ホールの数が減る中で台数は戻らない。2025年の営業利益率は2割弱で、上半期の3割は特需の水準にすぎない。型式試験や出玉規制の変更で、利益が一気に崩れる前例もある。
マニラは構造的に弱い。VIPは半分以下に縮み、競合との顧客獲得の勝負でコストが上がっている。第3四半期の0.9%増は、前年の落ち込みの反動にすぎない。巨額の設備を抱えた固定費の重い事業で、資本コストを稼いだ年は一度もない。減損しても毎年かかる維持費は残る。
借金が重い。純有利子負債は約970億円、利払いは年100億円ほどで、営業利益160億円でも純利益は20億円しか残らない。9.875%の2029年のノートは借り換えの山場で、条件が悪ければ株主の取り分は消える。親会社が議決権の7割を握るため、増資や安い値段での締め出しも起こり得る。今の時価総額は、強気の筋書きを先取りしすぎている。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方のほうが強い。遊技機の強さは本物だが、10年のうちに市場の波が必ず来る。マニラの回復には根拠が乏しく、借金は逃げ場がない。中心は、遊技機が縮む市場で今の稼ぎを守り、マニラが緩やかに戻る筋書きとして、その前後に確率を置いた。
悲観側(やや悲観と悲観)には4割弱を置いた。遊技機の波とマニラの不振が重なる年に、利払いが利益を上回るからだ。借金の重さそのものは資本コストに入れてあり、確率では重ねていない。楽観側は強いが、遊技機とマニラの両方がうまくいく必要があり、3割に絞った。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 1,132 円878 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 154 円119 億円)。 今の値に割り戻すと 566 円439 億円、今との差 −14.9%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 9.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,453 円2,676 億円 | 516 円400 億円 | +496.9% | +19.6% | 318 円246 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,953 円1,513 億円 | 323 円250 億円 | +242.2% | +13.1% | 501 円388 億円 |
| 中立 | 32% | 1,018 円789 億円 | 129 円100 億円 | +72.5% | +5.6% | 367 円285 億円 |
| やや悲観 | 26% | 317 円246 億円 | 0 円0 億円 | −52.3% | −7.1% | 83 円64 億円 |
| 悲観 | 12% | 151 円117 億円 | 0 円0 億円 | −77.3% | −13.8% | 18 円14 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,132 円878 億円 | 154 円119 億円 | +93.4% | +6.8% | 1,286 円997 億円 |
今の株価時価総額 665 円515 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 遊技機の好調が続き、マニラも戻る 利益 240 億円 · PER 11.2 倍 · 株価時価総額 3,453 円2,676 億円
スマスロの普及でホールの入れ替えが続き、ユニバーサルは看板機種のシリーズで台数シェアを伸ばす。他社製品の販売も上積みになり、年13万台台半ばで売上は1,000億円近くに届く。ホール数は減っても、1台あたりの単価は物価以上に上がる。
マニラは中国人客のビザなし滞在とマス客の取り込みが効き、総収益は2025年の約1.2倍に戻る。非ゲーミングと国内向けオンラインゲームが厚みを足し、営業利益率は2割に届く。第3の柱の新事業も立ち上がる。
利益で借金を返し、2029年の借り換えも低い金利で済む。利払いは30億円台に下がり、純利益は240億円に届く。配当も出るようになり、再び『稼ぐ会社』と見られる。ただし、この姿は遊技機の特需とマニラの回復が両方そろう場合に限る。
- 遊技機事業:数量 135(自社の新台販売台数(千台/年、実質))× 価格 71(1台あたり売上(万円、名目))→ 売上 964 億円・営業利益 251 億円。台数135千台・単価71.4万円、営業利益率26%
- IR事業(オカダ・マニラ):数量 340(オカダ・マニラの総ゲーミング収益(億ペソ、実質))× 価格 3.29(総収益1単位あたりのIR売上(億円÷億ペソ、名目))→ 売上 1,119 億円・営業利益 224 億円。総収益340億ペソ・価格3.29(今の1.4倍)、営業利益率20%
倍率:事業の純利益 240 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.15 倍、時価総額 2,676 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:遊技機の特需が10年近く続き、かつマニラも安定して戻る二つの成功が重なる必要がある。実現すれば報われるが、連続成功の確度は低い。
やや楽観 22% 遊技機は堅調、マニラは緩やかに戻る 利益 140 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 1,953 円1,513 億円
遊技機の市場は縮むが、ユニバーサルは看板シリーズと他社製品の販売で台数を年12万台台に保つ。単価は物価並みに上がり、営業利益率は2割台半ばに乗る。
マニラは総収益が2025年より1割ほど戻り、マス客中心の収益構造に落ち着く。営業利益率は1割台半ばで、減価償却費が減ったぶん黒字が定着する。
借金は少しずつ減り、2029年の借り換えは今より少し有利な条件で済む。利払いは45億円ほどに下がり、純利益は140億円に届く。配当は小さく再開する。株主に残る利益は増えるが、借金の返済が優先で、還元は控えめにとどまる。
- 遊技機事業:数量 122(自社の新台販売台数(千台/年、実質))× 価格 66(1台あたり売上(万円、名目))→ 売上 806 億円・営業利益 194 億円。台数122千台・単価66.1万円、営業利益率24%
- IR事業(オカダ・マニラ):数量 310(オカダ・マニラの総ゲーミング収益(億ペソ、実質))× 価格 3.15(総収益1単位あたりのIR売上(億円÷億ペソ、名目))→ 売上 977 億円・営業利益 147 億円。総収益310億ペソ・価格3.152(今の1.34倍)、営業利益率15%
倍率:事業の純利益 140 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 1,513 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:遊技機の看板機種が当たりを続ける一方、マニラは競争が厳しく、戻りは緩やか。業種ノートの楽観寄りの筋書き。
中立 32% 中立:遊技機は縮む市場で稼ぎを守り、マニラは小さく戻る 利益 73 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 1,018 円789 億円
遊技機は、ホールの数と遊技人口の減少で市場が縮むなか、台数は年11万台前後に落ち着く。2026年の特需の水準は続かず、営業利益率は2割にとどまる。単価は物価並みに上がる。
マニラは総収益が横ばい〜小幅な回復にとどまり、営業利益率は1割強で止まる。競合との顧客の奪い合いで、VIPが戻らないことも織り込んだ。
借金は返済で少し減るが、2029年の借り換えは高い金利のままで、利払いは50〜60億円残る。純利益は70億円台で、自己資本は今よりやや増えるが、資本コストには届かない。株主への還元は小さい。会社は存続し、黒字を続けるが、株主の取り分はなかなか増えない。
- 遊技機事業:数量 110(自社の新台販売台数(千台/年、実質))× 価格 66(1台あたり売上(万円、名目))→ 売上 727 億円・営業利益 145 億円。台数110千台・単価66.1万円、営業利益率20%
- IR事業(オカダ・マニラ):数量 280(オカダ・マニラの総ゲーミング収益(億ペソ、実質))× 価格 3.15(総収益1単位あたりのIR売上(億円÷億ペソ、名目))→ 売上 883 億円・営業利益 106 億円。総収益280億ペソ・価格3.152(今の1.34倍)、営業利益率12%
倍率:事業の純利益 73 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 789 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:遊技機は市場が年2〜4%縮むなか、看板機種でシェアを守る。マニラは底を打つが、過去の水準には戻らない。借金の重さは資本コストと利息に入れたので、確率は標準の置き方で、中立を最も厚くして 32%。
やや悲観 26% 遊技機が縮み、マニラは戻らず、借金が重しになる 利益 −55 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 317 円246 億円
スマスロの入れ替えが一巡したあと、ホールの数が想定より速く減り、台数は年9.5万台に落ちる。ホールの値引き圧力で単価は物価に追いつかず、営業利益率は1割強になる。
マニラは顧客獲得の競争に押されて総収益が2025年より1割落ち、営業利益率は数%にとどまる。VIPは戻らず、国内の景気減速も響く。
営業利益は20億円足らずで、利払いには届かず、赤字になる。2029年の借り換えは高い金利で、利払いは80億円台に上がる。還元はなく、資産を売って借金を減らす動きが出る。会社は存続するが、株主に残る価値は帳簿の自己資本を大きく下回る。
- 遊技機事業:数量 95.0(自社の新台販売台数(千台/年、実質))× 価格 60(1台あたり売上(万円、名目))→ 売上 570 億円・営業利益 74 億円。台数95千台・単価60.0万円、営業利益率13%
- IR事業(オカダ・マニラ):数量 250(オカダ・マニラの総ゲーミング収益(億ペソ、実質))× 価格 2.90(総収益1単位あたりのIR売上(億円÷億ペソ、名目))→ 売上 725 億円・営業利益 29 億円。総収益250億ペソ・価格2.9(今の1.23倍)、営業利益率4%
倍率:事業の稼ぐ力はほぼゼロで、純利益は赤字。PBR は今の自己資本 1,297 億円に掛け、売れる資産から借金を引いた残りの額(約 250 億円)に合わせた。営業利益が小さく EV ÷ 営業利益は意味をなさないので、利益の倍率では見ない。
確率:遊技機の特需が早く終わり、マニラも競争で戻らない。両方が弱いと、利払いが営業利益に迫る。会社の置かれた状況から標準よりやや厚い 26%。借金そのものの重さは資本コストに入れてあり、ここでは重ねない。
悲観 12% マニラが崩れ、借り換えに行き詰まる 利益 −110 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 151 円117 億円
遊技機は規制の変更とホールの減少で台数が年7万台に落ち、単価は値引きで物価についていけない。営業利益率は数%に下がり、利益の柱の座を失う。
マニラは競合との争いに敗れて総収益が2025年の3割減になり、固定費の重さから営業赤字が深まる。ここで施設を減損し、自己資本が減る。
2029年の借り換えは条件が悪く、増資や資産売却で乗り切るしかない。親会社が安い値段で少数株主を締め出す動きも出る。株主に残る価値は、売れる資産から借金を引いた残りの小さな額まで下がる。遊技機の看板機種も世代交代に失敗し、ホールからの信頼を落として、10年後にはもう優良な会社とは言えなくなっている。
- 遊技機事業:数量 70.0(自社の新台販売台数(千台/年、実質))× 価格 50(1台あたり売上(万円、名目))→ 売上 350 億円・営業利益 14 億円。台数70千台・単価50.0万円、営業利益率4%
- IR事業(オカダ・マニラ):数量 190(オカダ・マニラの総ゲーミング収益(億ペソ、実質))× 価格 2.50(総収益1単位あたりのIR売上(億円÷億ペソ、名目))→ 売上 475 億円・営業利益 −24 億円。総収益190億ペソ・価格2.5(今の1.06倍)、営業利益率-5%
倍率:遊技機とマニラが崩れ、純利益は大きな赤字。PBR は今の自己資本に掛け、売れる資産から借金を引いた残りの額(約 120 億円)に合わせた。
確率:2029年の借り換えが条件を満たせず、遊技機の規制変更とマニラの客離れが重なる構造的な負け筋。財務に余裕のない会社として、標準的な上限に近い 12% を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
遊技機事業
パチスロ・パチンコの新台をホールに販売する事業。スマスロの看板機種を持つ。
| 数量自社の新台販売台数(千台/年、実質) | 価格1台あたり売上(万円、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 115 | 49 | 567 | 107 |
| 10 年後 中立 | 110 | 66 | 727 | 145 |
取り方:2025年の販売台数は約11.5万台(パチスロ8機種・パチンコ8機種)。売上567億円から1台あたり49.3万円を逆算した。営業利益は開示の107億円。市場に占めるシェアは推定で、台数の開示を使った。
IR事業(オカダ・マニラ)
マニラのエンターテインメントシティでカジノ・ホテル・飲食を運営する。
| 数量オカダ・マニラの総ゲーミング収益(億ペソ、実質) | 価格総収益1単位あたりのIR売上(億円÷億ペソ、名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 278 | 2.35 | 654 | −71 |
| 10 年後 中立 | 280 | 3.15 | 883 | 106 |
取り方:2025年の総ゲーミング収益は約278億ペソ(前年比 -20%)。IR事業の売上654億円(非ゲーミング収入を含む)を総収益278億ペソで割り、価格を2.352(億円÷億ペソ)とした。営業損益は開示の -71億円。
リスクと懸念
マニラの回復が来ない
総収益は2025年に前年比20%減り、2026年も上半期は前年割れだった。VIPの縮小は構造的で、競合との顧客獲得コストも上がっている。回復が遅れるほど、巨額の設備の固定費が利益を食い続ける。
2029年の借り換え
9.875%・4億ドルのノートが2029年8月に償還期限を迎える。マニラ側の銀行借入も担保付きだ。遊技機の好調が続いていれば乗り切れるが、条件が悪ければ増資や資産売却に追い込まれる。
遊技機の規制と特需の終わり
スマスロの入れ替え需要が一巡すれば、ホールの数が減る市場で台数は戻らない。出玉規制や型式試験の変更で、新機種そのものが減ることもある。上半期の営業利益率3割は、平常の水準ではない。
ヒット依存
ミリオンゴッドや沖ドキのような看板機種のシリーズが続く保証はない。開発に投資してから当たり外れが分かる業態で、1機種の不発が四半期の利益を大きく動かす。
支配株主と少数株主
非上場の親会社が議決権の約7割を持つ。経営判断が支配株主の意向に左右される余地があり、親会社が安い値段で少数株主を締め出す再編も、可能性としてはあり得る。
フィリピンの規制と政情
フィリピンのカジノは政府の規制機関の許可の下で営業する。POGO禁止のように、政策の転換が突然収益を変える。悪天候や政情不安、中東情勢による燃料高も客足に響く。
今後の分かれ目
- マニラの総収益が2四半期以上続けて前年を上回り、営業黒字が定着したら
- やや楽観・楽観の確率を上げてよい。IRが黒字を保てるなら、借金の返済余力が大きく変わる。
- 2029年のノートを低い金利で借り換え、または前倒しで返済したら
- 悲観側の確率を下げ、利払いの前提を引き下げてよい。
- 遊技機の営業利益率が来期以降も3割近くを保ち、台数が13万台を超えたら
- 遊技機の10年の利益率の前提を上方修正してよい。ただし特需か、構造的な強さかを分けて見る。
- 出玉規制・型式試験の厳格化で新機種の発売が減ったら
- 遊技機の利益を大きく下方修正し、やや悲観に確率を寄せる。
- 親会社による株式公開買付けや少数株主の締め出しが発表されたら
- 買付けの価格が本質価値を上回るかを確かめる。借金の重さを考えると、割安な値段で買い取られる可能性もある。
- 第3の柱の新事業が収益に貢献し始めたら
- その規模と資本の使い方を確認する。新たな投資が借金を増やすなら、評価は下げる。
見ておくもの
- オカダ・マニラの四半期ごとの総ゲーミング収益(VIP・マス・スロット別)
- 遊技機の四半期の販売台数と営業利益率
- 純有利子負債と利払い、2029年のノートの借り換え
- 出玉規制・型式試験の動向
- 親会社の持株比率と再編の動き
倍率と資本コストの決め方
今の株価や市場の PER・PBR から倍率を置いていない。倍率は利益ベースの正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g)(k 9.25%、g 4%、堀は弱いので残る割合 1/3)の上限に対し、中立は約 8.5 割、やや楽観 8.5 割、楽観 9.7 割。ROE が k 以下の筋書きは上限を 1÷k とした。やや悲観・悲観は稼ぐ力がほぼ無いので売れる資産から借金を引いた残りで置いた。brief の利払いの変化の推定(10 年で −24 億円)は、実際の利払いが高金利ノート(9.875%・6.75%)で年約 100 億円と大きいことから使わず、各筋書きで借金の減り方と借り換えの金利を別に置いた。数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえ、新リース会計基準で形が変わる点は考慮していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.15 倍・やや楽観 PER 8.3→10.81 倍・中立 PER 8.3→10.81 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +2.75% = 10.25%。借金は quality の debt に入れ、傾いた会社の上乗せ(distress)は付けない。遊技機は営業黒字で、存続に疑いはない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 10.25% → 9.50%。