結論
だいわ(2026 年 7 月に大和冷機工業から改称)は、飲食店や小売店に業務用冷蔵庫・ショーケース・製氷機を売り、売ったあとの点検・修理まで受け持つ会社だ。約 200 か所の営業所と、約 1,500 人の技術を持つ営業職が武器である。
筆者の結論は「やや割安」。事業の稼ぎはほどほどに堅い。ただ決め手は事業ではなく現金だ。売上の 1 年半分にあたる現金と預金を抱え、その大半は株主に戻らない前提で見ても、今の時価総額を上回る価値が残る。
現金が厚いのは、保守を前払いで受け取る契約が 174 億円あるからだ。この分は将来の保守で使う約束なので、株主のものとは数えない。そこで事業に要らない余りを約 450 億円とみた。
成長は物価と保守の積み上げが頼りになる。国内の冷蔵庫の台数は 20 年ほど横ばいで、店の数は人口とともに減る。2028 年度に営業利益 95 億円という会社計画は重い。2026 年の中間決算は営業利益が 6% 減っている。
中立の 10 年後は営業利益が 100 億円強で、計画の水準を物価並みに伸ばした場合より 1 割ほど低い。それでも保守の厚みと現金があるため、確率を重ねた価値は今の時価総額を 1 割強上回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は二つに分けて見るのがよい。一つは「客の店に張りついた保守つきの冷蔵設備屋」という事業で、もう一つは「事業の何倍もある現金」である。
事業は、売上に対して設備投資が小さく、前払いの保守契約で運転資金が逆に回るため、資本をほとんど食わずに稼ぐ。現金を除いた事業の自己資本利益率は、筆者の試算で 17% 前後ある。10 年後も店の厨房に冷蔵庫は要り、壊れれば誰かが直しに来る。事業が消える心配は小さい。ただ台数が増えず、成長は物価と保守の積み上げだけで、オーナーが手にする利益の伸びは年 3% 台にとどまる。
問題は資本の配分だ。稼いだお金の多くを 11 年かけて寝かせ、ROE は 7% 台にとどまった。最近は配当を厚くし、自社株も買い始めたので、方向は正しい。それでも創業家が 4 割を持つ構造では、還元がどこまで続くかを保証できない。そこで現金の価値は帳簿の半分にとどめた。
買収の腕前は未知数だ。これまでの買収は小さく、価値を壊した形跡はない。一方で中計は 70 億円以上の成長投資と借入の活用に触れており、大きな買収で現金を溶かす筋書きは、悲観に織り込んだ。
安全域は、現金が支える。事業が悲観の筋書きまで傷んでも、半分の現金と黒字の事業が残るため、10 年後の価値が今の時価総額を大きく割る筋書きは少ない。逆に、事業が計画どおりに伸びる筋書きの上振れは限られる。筆者はこの非対称を評価するが、事業そのものはオーナーとして持ち続けたいと思うほど強くはないとみている。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は三つある。自社で作る製品が売上の 56%、他社から仕入れて売る機器と店舗の設備工事が 24%、点検・修理が 20% だ。製品の中心は厨房用の縦型冷凍冷蔵庫で、店舗用の縦型ショーケース、横型冷蔵庫、製氷機が続く。製品の数は約 1,300 にのぼり、客の厨房に合わせた特注にも応じる。
客は個人経営の飲食店、酒販店、和洋菓子店、食料品店が中心だ。この層には直販の営業が当たり、売上は 390 億円ほどになる。厨房の設計会社、外食チェーン、物流会社、医薬系の企業には法人営業が当たり、79 億円ほどだ。
会社の言う利益の源泉は「セールスエンジニア」である。営業職が設置の手配から点検・修理まで一人で受け持つ。冷凍機械責任者という国家資格の保有者も多く、24 時間 365 日の受付体制を持つ。他社の機器でも保守を引き受けるので、一度つながった客はなかなか離れない。
保守は前払いの契約が多く、帳簿には契約負債として 174 億円が載る。売上の 20% にすぎないが、利益率は 3 割前後と筆者は推定しており、利益の 4 割近くを稼ぐとみられる。工場は大分・福岡・埼玉の 3 か所で、研究開発費は年 3 億円ほどと小さい。
2026 年 6 月には電解機能水の装置を作る三浦電子(売上 2 億円台)を買い、全株を取得した。自社製品に使う装置を長く供給してきた取引先を、内に取り込む小さな買収である。同年 7 月には、冷機だけでなく調理機器など熱を扱う商材も売っていることから、社名をひらがなの「だいわ」に改めた。
優良さと弱いところ
この会社の堀は、製品の性能よりも「客の店に張りついた保守網」にある。全国 200 か所の営業所に技術を持つ営業職がいて、他社の機器でも直す。店主にとって冷蔵庫の故障は営業停止に直結するので、近くにすぐ来てくれる業者を替える理由は乏しい。この仕組みは真似に時間とお金がかかる。
堀は広くない。国内の首位はホシザキで、製氷機や冷蔵庫の棚はそちらが厚い。ショーケースはフクシマガリレイが強い。だいわは「全部そこそこ強い 3 番手」であり、会社自身も 2026 年 4 月の値上げ後に「競争環境の激化」が続くと書いている。値決めの力は限られる。
利益率は 2023 年の 17.7% から 2025 年は 15.9% へ下がった。営業職が約 1,500 人いる体制は固定費が重く、人手不足による賃上げが直撃する。筆者はここを、この会社でいちばん読みにくい点とみている。
資本の効率は低い。自己資本利益率(ROE)は 7% 台で、現金を除いた事業だけで見れば高い。つまり事業が悪いのではなく、稼いだお金を寝かせてきた結果である。2026 年に初めて中期経営計画と統合報告書を出し、ROE 8% 以上と配当性向 45% 以上を掲げたのは、そこを自覚した動きと読める。
経営は創業家が握る。社長と副社長は創業者と同じ尾﨑姓で、創業家と関係するとみられる法人と個人の持ち株を足すと 4 割台になる。社外取締役は 5 人いて形は整っているが、現金の使い方を株主の目線で動かす力は、これから試される。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の業務用冷蔵庫は、台数が増えない市場だ。日本冷凍空調工業会の統計では、2025 年度の国内出荷は約 22 万台で、ピークだった 1996 年度の約 30 万台より 3 割近く少なく、2007 年度の約 21 万台とほぼ同じ水準にある。20 年近く横ばいということだ。厨房機器の市場全体は 7,000 億円規模で、会社の社長も「人口減少による店舗の減少で、大幅な拡大は見込めない」と述べている。
それでも需要がなくなるわけではない。外食はインバウンドと客単価の上昇で売上が戻り、人手不足を補う省人化の機器や、衛生管理(HACCP)に対応した設備への入れ替えが進む。冷媒の規制で、自然冷媒を使う機種への更新も続く。冷蔵庫は 10〜15 年で入れ替わるので、更新が台数の土台になる。
競争は手ごわい。ホシザキは製氷機の国内シェアが約 6 割、冷蔵庫が約 5 割と自社で開示しており、米国と欧州にも広げている。フクシマガリレイはショーケースで国内首位を自任する。パナソニック産機やフジマックも同じ棚に並ぶ。フジマックは売上が 470 億円台とだいわに近いが、営業利益率は 6% ほどで、価格競争の厳しさを映す。
この中でだいわが他社と違うのは、保守の厚みと、直販の営業が売上の大半を握る点だ。大手チェーン向けの標準仕様では買い手の力が強いが、個人経営の店は営業の距離で選ぶ。ただし個人店ほど廃業が多く、客の数は減る。
筆者は、国内の台数は 10 年で 1 割の増減に収まるとみる。価格は物価並みに上がり、保守の対象機器が積み上がって、売上は名目で年 3% 台の伸びになる。海外は会社が販路づくりを掲げているが、今は売上にほとんど出ておらず、先行するホシザキと正面から戦う力は見えない。
資本政策と M&A
資本政策がこの会社の評価の分かれ目になる。2026 年 6 月末の現金・預金・有価証券・長期預金は合わせて約 690 億円で、借金はない。保守の前受けにあたる契約負債 176 億円を差し引くと約 510 億円、さらに運転資金などの備えを引くと余りは約 450 億円になる。時価総額の 5 割を超える額だ。
会社は 2026 年 2 月の中期経営計画で、2026 年から 3 年間に営業キャッシュフロー約 200 億円を見込み、設備と研究に約 55 億円、海外や買収に 70 億円以上、株主還元に約 75 億円を使うとした。配当は性向 45% 以上を目標とする。
実際の還元は計画より手厚い。2026 年は創立記念の特別配当を含めて年間の配当が約 32 億円になり、性向は 6 割に近い。2022 年には 18 億円超、2026 年にも 4 億円の自社株を買った。ただ純現金は 11 年で 340 億円から 590 億円へ積み上がり、還元が稼ぎに追いつかなかった年が長い。
買収は小さい。2026 年に買った三浦電子は売上が 2 億円台で、規模を変える話ではない。中計は「有利子負債の活用も検討」とまで書いており、借金ゼロの会社がお金を借りて買う可能性を残している。
株主は創業家と関係するとみられる法人・個人で 4 割台を占める。外資系の運用会社やファンドの大量保有報告も複数ある。会社が買収されるより、創業家が現金を温存したまま緩やかに還元を増やす道が、いちばんありそうだ。そこで現金の戻り方は半分に見ている。
点検済み(費用点検):純利益÷営業利益 0.78 が過去 5 期の中央値 0.67 より高いのは、余った現金 450 億円→665 億円に短期金利 2% の受取利息が乗るため(営業利益 104 億円に対し約 10 億円)。金利の上げ方は決まりどおり。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
保守の積み上げが利益を押し上げる。売って終わりの機器と違い、点検・修理は一度結んだ契約が続き、前受けの契約負債は 174 億円まで育った。対象機器が増えるほど利益率の高い売上が膨らむ。他社製品も直せる強みで、競合の客まで取り込める。
需要の風も悪くない。外食はインバウンドと客単価の上昇で戻り、人手不足で省人化の機器、衛生管理に合う設備、自然冷媒の機種への入れ替えが続く。2026 年 4 月の値上げは、原材料や物流費の上昇を転嫁できる力を示した。物価 3% の世界では、価格が毎年上がることが利益を支える。
会社は 2028 年度に営業利益 95 億円、利益率 17.5% を掲げた。2023 年に 17.7% を出した実績があり、届かない数字ではない。三浦電子のような補完の買収を重ね、調理機器など熱の商材が厚みを増せば、売上 1,000 億円の長期像が射程に入る。
最大の上振れは現金だ。690 億円の金融資産のうち 450 億円は事業に要らない。創業家と外資系運用会社が並ぶ株主構成で、資本効率の圧力は強まる。配当性向 45% 以上の方針はすでに 6 割近くまで上がり、自社株買いも再開した。ROE 8% の目標を本気で追えば、現金は 10 年でほぼ全額が株主に戻りうる。
慎重な見方
国内の冷蔵庫は台数が増えない。20 年近く横ばいで、店の数は人口とともに減る。社長自身が「大幅な拡大は見込めない」と認めている。成長を価格に頼れば、競合との差は縮み、値上げが通りにくくなる。会社も 2026 年 4 月の値上げ後に「競争環境の激化」が続くと書いた。
足元の利益は落ちている。営業利益は 2023 年の 81 億円から 2025 年は 75 億円へ減り、2025 年の経常利益も会社予想の 81 億円に届かず 74 億円だった。2026 年は通期で 12% の増益を見込むが、中間は 6% の減益だ。通期予想を満たすには下期に前年の 3 割増の営業利益が要り、達成は重い。
固定費の重さが怖い。約 1,500 人の営業職と 200 か所の営業所は、賃金が毎年上がる中で、売上が落ちても減らせない。ホシザキ、フクシマガリレイ、パナソニック産機が値下げで攻めれば、利益率は 2 桁を割る。
現金は戻ってこない。創業家が 4 割を握り、純現金は 11 年で 340 億円から 590 億円へ積み上がった。ROE は 7% 台で資本コストに届かない。中計は 70 億円以上の成長投資と借入の活用に触れており、売上 1,000 億円を追う大型買収で現金を溶かす恐れもある。買収の実績は小さく、見極める材料が少ない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方は、保守と現金という具体的な土台がある。慎重な見方は、国内の台数と利益率の弱さという、数字で見える足元の事実がある。どちらも一方的には勝てない。
利益の面では慎重な見方が強い。台数の前提を横ばいに置き、会社計画を物価並みに伸ばした水準より 1 割低い営業利益を中立とした。確率は中立を 38% と最も厚くし、やや悲観を 22% と、やや楽観の 24% よりわずかに下に寄せた。
現金の面では、強気の見方の「全額が戻る」は取らず、戻り方を半分とした。それでも事業の稼ぎと半分の現金で、中立の 10 年後の時価総額は今の約 1.8 倍になる。悲観は構造的な負けを 8% とし、買収の失敗や賃金の重さで営業利益が半分に落ちる筋書きにした。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,753 円1,843 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 768 円377 億円)。 今の値に割り戻すと 2,560 円1,257 億円、今との差 +55.6%、 期待の年率 +10.6%(資本コスト 6.5%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,026 円2,468 億円 | 902 円443 億円 | +260.4% | +13.7% | 474 円233 億円 |
| やや楽観 | 24% | 4,665 円2,291 億円 | 843 円414 億円 | +234.8% | +12.8% | 1,322 円649 億円 |
| 中立 | 38% | 4,323 円2,123 億円 | 774 円380 億円 | +209.8% | +12.0% | 1,937 円951 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,276 円1,118 億円 | 702 円345 億円 | +81.1% | +6.1% | 655 円322 億円 |
| 悲観 | 8% | 1,099 円540 億円 | 558 円274 億円 | +0.7% | +0.1% | 133 円65 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,753 円1,843 億円 | 768 円377 億円 | +174.8% | +10.6% | 4,521 円2,220 億円 |
今の株価時価総額 1,645 円808 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.5% を下回るほど割高。
楽観 8% 計画どおりの利益率と、現金が株主へ戻る 利益 101 億円 · PER 22.1 倍 · 株価時価総額 5,026 円2,468 億円
2028 年度に営業利益 95 億円という中期計画が達成され、その後も伸びる。外食の回復と省人化の設備更新で、国内の台数は 1 割以上増える。物流や医薬の新しい客も開拓し、値上げは物価並みに通る。
点検・修理は他社製品の取り込みで対象機器が 25% 増え、売上の伸びを引っ張る。小粒の買収を数件重ね、調理機器など熱の商材が厚みを増す。買収先の利益率も 10% を超える。
2035 年 12 月期の営業利益は 135 億円、利益率は 18% に届く。余った現金は買収の資金にも回りつつ、10 年で 440 億円ほどが配当と自社株買いで株主に戻る。売上は 740 億円ほどに育ち、会社が長期像に掲げる 1,000 億円へ近づく。創業家と外部の株主の利害がそろい、現金の使い道が改まる点が、この筋書きの前提になる。
- 自社製品(冷蔵庫・ショーケース・製氷機):数量 6.7(国内出荷の台数(万台・推定))× 価格 61(1 台あたりの納入額(万円・名目。特注と各機種の混ざった平均の推定))→ 売上 410 億円・営業利益 64 億円。台数 15% 増、値上げ 1.36 倍、利益率 15.5%
- 他社仕入の機器・店舗設備工事:数量 4.2(納入件数(万件・推定))× 価格 41(1 件あたりの納入額(万円・名目))→ 売上 172 億円・営業利益 20 億円。件数 12% 増、利益率 11.5%
- 点検・修理(保守):数量 75.0(保守の対象機器(万台・推定))× 価格 2.15(1 台あたりの年間の保守売上(万円・名目))→ 売上 161 億円・営業利益 52 億円。対象機器 25% 増、利益率 32%
倍率:事業の純利益 93 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.8% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)418 億円。全体の PER 22.05 倍、時価総額 2,468 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社計画を 10 年続けて上回り、現金の還元も進む筋書きは、過去に営業利益率 17.7% を出した実績はあるが台数が増えない市場なので 8% にとどめた。
やや楽観 24% 計画が 2 年遅れで届き、還元も厚くなる 利益 91 億円 · PER 22.3 倍 · 株価時価総額 4,665 円2,291 億円
計画の達成が 2 年ほど遅れるが、方向は計画どおりに進む。国内の台数は 1 割弱増え、保守の対象機器は 17% 増える。値上げは物価並みで、利益率は 17% まで戻る。
営業利益は 2035 年 12 月期に 120 億円ほどになる。配当性向は 5〜6 割を保ち、自社株買いも続く。買収は三浦電子のような小粒を 2〜3 件で、利益への寄与は小さいが損も出さない。
現金は半分ほどが事業と買収に回り、残りは緩やかに積み上がる。2026 年に初めて中期計画と統合報告書を出し、ROE 8% 以上を掲げた会社が、その約束を守って動くことが、この筋書きの根拠になる。創業家の持ち株が多い会社でも、外部の目が入れば還元は徐々に進む。
- 自社製品(冷蔵庫・ショーケース・製氷機):数量 6.3(国内出荷の台数(万台・推定))× 価格 61(1 台あたりの納入額(万円・名目。特注と各機種の混ざった平均の推定))→ 売上 382 億円・営業利益 55 億円。台数 8% 増、値上げ 1.35 倍、利益率 14.5%
- 他社仕入の機器・店舗設備工事:数量 3.9(納入件数(万件・推定))× 価格 41(1 件あたりの納入額(万円・名目))→ 売上 160 億円・営業利益 17 億円。件数 5% 増、利益率 10.5%
- 点検・修理(保守):数量 70.2(保守の対象機器(万台・推定))× 価格 2.13(1 台あたりの年間の保守売上(万円・名目))→ 売上 150 億円・営業利益 46 億円。対象機器 17% 増、利益率 31%
倍率:事業の純利益 82 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.0% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)462 億円。全体の PER 22.34 倍、時価総額 2,291 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:計画が 2 年ほど遅れて届く筋書き。保守の積み上げと値上げは実績があり、配当性向も上がっているので、やや楽観に 24% を置いた。
中立 38% 台数は横ばい、保守と価格で伸び、現金は半分だけ戻る 利益 81 億円 · PER 22.7 倍 · 株価時価総額 4,323 円2,123 億円
国内の台数は 10 年で 2% ほどの増加にとどまる。店舗の減少を、省人化と衛生対応の更新が打ち消す。価格は物価並みに上がり、保守の対象は 1 割増える。
営業利益率は 2025 年の 15.9% とほぼ同じ 16% を保つ。賃上げの負担を値上げと保守の増加で吸収する。営業利益は 2035 年 12 月期に 104 億円。2028 年度に 95 億円という会社計画より、7 年ほど遅れて 100 億円台に乗る歩みである。
配当は性向 6 割ほどで続き、10 年で 380 億円が戻る。それでも稼ぎのほうが多く、余った現金は 450 億円から 665 億円へ積み上がる。創業家が持ち株を温存する以上、現金の戻りは今より急には速まらない。小さな買収はあるが、会社の形は変わらない。
- 自社製品(冷蔵庫・ショーケース・製氷機):数量 5.9(国内出荷の台数(万台・推定))× 価格 60(1 台あたりの納入額(万円・名目。特注と各機種の混ざった平均の推定))→ 売上 358 億円・営業利益 47 億円。台数 2% 増、値上げ 1.34 倍、利益率 13.2%
- 他社仕入の機器・店舗設備工事:数量 3.8(納入件数(万件・推定))× 価格 40(1 件あたりの納入額(万円・名目))→ 売上 152 億円・営業利益 15 億円。件数 1% 増、利益率 9.5%
- 点検・修理(保守):数量 66.0(保守の対象機器(万台・推定))× 価格 2.12(1 台あたりの年間の保守売上(万円・名目))→ 売上 140 億円・営業利益 42 億円。対象機器 10% 増、利益率 30%
倍率:事業の純利益 72 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 22.7% が k 6.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 22.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 22.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)499 億円。全体の PER 22.69 倍、時価総額 2,123 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:台数横ばい、価格は物価並み、保守が伸びて利益率 16% を保つ筋書き。両方の言い分の落としどころで、確率は最も厚い 38% とした。
やや悲観 22% 競争で値上げが届かず、小さな買収も外れる 利益 62 億円 · PER 12.8 倍 · 株価時価総額 2,276 円1,118 億円
競争が激しくなり、値上げが物価に届かない。国内の台数は 5% 減り、価格は 10 年で 1.28 倍にとどまる。賃上げの負担が重く、営業利益率は 13% まで下がる。
営業利益は 2035 年 12 月期に 77 億円で、2025 年とほぼ同じだ。名目で横ばいなので、実質では 3 割近く縮む。保守の対象は微増にとどまり、保守の積み上げだけで全体を支える形になる。
小さな買収が外れ、40 億円の減損が出る。配当は守られ、10 年で 345 億円が戻るが、買収の失敗と台数の減少で成長の見通しは暗い。現金は積み上がるが、使い道を見つけられない。保守だけが利益を支え、利益の中身は保守に偏っていく。
- 自社製品(冷蔵庫・ショーケース・製氷機):数量 5.5(国内出荷の台数(万台・推定))× 価格 58(1 台あたりの納入額(万円・名目。特注と各機種の混ざった平均の推定))→ 売上 319 億円・営業利益 33 億円。台数 5% 減、値上げ 1.28 倍、利益率 10.5%
- 他社仕入の機器・店舗設備工事:数量 3.6(納入件数(万件・推定))× 価格 38(1 件あたりの納入額(万円・名目))→ 売上 137 億円・営業利益 10 億円。件数 5% 減、利益率 7%
- 点検・修理(保守):数量 62.4(保守の対象機器(万台・推定))× 価格 2.02(1 台あたりの年間の保守売上(万円・名目))→ 売上 126 億円・営業利益 34 億円。対象機器 4% 増、利益率 27%
倍率:事業の ROE 17.8%(余った現金を除く)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 6.5% + 残る割合 1/2 ×(17.8 − 7.5)= 12.7%、g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 19.6 倍。値上げが届かず利益が名目で横ばいになる筋書き。成長が細り利益の質も落ちるので、式の上限の 6.5 割にとどめた。余った現金 577 億円は戻り方 0.5 で足した。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 12.8 倍・時価総額 1,118 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:足元で営業利益が下がり、会社自身が競争激化を認めている。値上げが物価に届かない筋書きは十分ありうるので、やや楽観よりわずかに低い 22% とした。
悲観 8% 営業網の固定費が重く、買収も失敗する 利益 32 億円 · PER 8.3 倍 · 株価時価総額 1,099 円540 億円
競合の攻勢と大手チェーンの値引き要求で、値上げが通らず、国内の台数は 2 割減る。価格は 10 年で 1.18 倍にとどまり、物価に大きく遅れる。賃上げは続き、営業利益率は 8% まで落ちる。
保守でも競合に客を奪われ、対象機器が 8% 減る。売上は 460 億円とほぼ横ばいで、営業利益は 36 億円と今の半分になる。中計が掲げた成長投資で大型の買収を行い、100 億円の減損を出す。
配当は守ろうとして、純利益に対する性向が 7 割に上がり、10 年で 270 億円を戻す。それでも現金は事業の失敗と買収で目減りする。構造的に稼げなくなった会社として、現金の価値も下がる。営業所と人員の整理が遅れ、固定費が利益を食い続ける。
- 自社製品(冷蔵庫・ショーケース・製氷機):数量 4.7(国内出荷の台数(万台・推定))× 価格 53(1 台あたりの納入額(万円・名目。特注と各機種の混ざった平均の推定))→ 売上 247 億円・営業利益 12 億円。台数 2 割減、値上げ 1.18 倍、利益率 5%
- 他社仕入の機器・店舗設備工事:数量 3.1(納入件数(万件・推定))× 価格 35(1 件あたりの納入額(万円・名目))→ 売上 109 億円・営業利益 3 億円。件数 18% 減、利益率 2.5%
- 点検・修理(保守):数量 55.2(保守の対象機器(万台・推定))× 価格 1.86(1 台あたりの年間の保守売上(万円・名目))→ 売上 103 億円・営業利益 21 億円。対象機器 8% 減、利益率 20%
倍率:事業の ROE 8.9%(余った現金を除く)。今の利益はそのまま残り、先で薄れるのは新しく投じるお金の稼ぎだけとみて、RONIC = k 6.5% + 残る割合 1/2 ×(8.9 − 7.5)= 8.2%、g 4.0% から正当化 PER = (1 − g÷RONIC)÷(k − g) = 14.6 倍。構造的な負けで利益が半分になり、成長も見込めない筋書き。稼ぐ力に見合う 10 倍ほどにとどめた(式の上限は 14.6 倍)。余った現金 438 億円は戻り方 0.5 で足した。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 8.32 倍・時価総額 540 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:営業網の固定費・値下げ・買収の失敗が重なる構造的な負けは起きにくいが、保守まで崩れると深いので 8% に置いた。現金が支える分、床は高い。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自社製品(冷蔵庫・ショーケース・製氷機)
厨房用の縦型・横型の冷凍冷蔵庫、店舗用ショーケース、製氷機を工場 3 か所で作り、直販で売る事業。
| 数量国内出荷の台数(万台・推定) | 価格1 台あたりの納入額(万円・名目。特注と各機種の混ざった平均の推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 5.8 | 45 | 262 | 35 |
| 10 年後 中立 | 5.9 | 60 | 358 | 47 |
取り方:2025/12 の製品販売は売上の 55.8%=261.9 億円。国内の業務用冷蔵庫の出荷は工業会統計で約 22 万台(6 社集計)。製氷機・ショーケース・特注を含む平均の納入額を 45 万円と推定し、5.82 万台と置いた。営業利益率 13.5% は、全社 15.9% に合うよう保守を 3 割、仕入れ販売を 1 割と推定した残り。
他社仕入の機器・店舗設備工事
他社製の調理機器・店舗の設備を仕入れて売り、設置工事まで請け負う事業。品ぞろえと客の囲い込みの役割。
| 数量納入件数(万件・推定) | 価格1 件あたりの納入額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 3.8 | 30 | 113 | 11 |
| 10 年後 中立 | 3.8 | 40 | 152 | 15 |
取り方:2025/12 の商品販売(厨房設備機器 48.6 億円・店舗設備機器 59.6 億円)と工事を合わせ、売上の残り 112.6 億円。1 件 30 万円と推定して 3.75 万件と置いた。営業利益率 10% は仕入れ販売の薄い利幅の推定。
点検・修理(保守)
売った機器と他社の機器の定期点検・修理を、営業所の技術職が受ける事業。前払いの契約が多く、契約負債として 174 億円が載る。
| 数量保守の対象機器(万台・推定) | 価格1 台あたりの年間の保守売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 60.0 | 1.58 | 95 | 28 |
| 10 年後 中立 | 66.0 | 2.12 | 140 | 42 |
取り方:2025/12 の点検・修理は 94.8 億円(売上の 20.2%)。自社製品の毎年の出荷が約 6 万台で、10 年ほど使われるため、他社製品を含む保守対象を約 60 万台と推定し、1 台 1.58 万円と置いた。営業利益率 30% は新品の販売より高い推定で、全社の利益に合わせた。
リスクと懸念
国内の台数が細る
業務用冷蔵庫の国内出荷は 20 年近く横ばいで、人口と飲食店の数が減れば台数は下がる。個人経営の店は廃業も多い。会社は海外と新分野で補う計画だが、海外の売上はまだ小さい。台数の減少を価格と保守で埋め続けられるか、そこが 10 年を通じた最大の問いである。
人件費と営業網の固定費
約 1,500 人の営業職と約 200 か所の営業所は、保守を支える強みであると同時に、重い固定費でもある。賃上げが物価を上回り、値上げが通らなければ、利益率は 2023 年の 17.7% から下がり続ける。2026 年の中間決算も営業利益は 6% 減った。
競合の値引きと大手の買い手の力
ホシザキは製氷機と冷蔵庫の国内首位で、フクシマガリレイ、パナソニック産機、フジマックも同じ棚を争う。会社自身が値上げ後も競争の激化が続くと書く。大手チェーンは複数社を競わせるため、標準品の利益率は上がりにくい。個人店向けの直販が守りだが、そこでも見積もりの比べ合いは増えている。
現金が戻らない・使い方を誤る
創業家と関係する持ち株が 4 割台を占め、現金は長年積み上がってきた。還元が止まれば現金の価値は帳簿の半分以下に落ちる。中計は 70 億円以上の成長投資と、借入の活用の検討にまで触れている。大型の買収で現金を溶かす恐れがある。
計画の達成力
2025 年の経常利益は会社予想の 81 億円に届かず、2026 年も通期で営業利益 12% 増を見込みながら中間は 6% 減った。下期に前年の 3 割増が要る。初めての中計の 2028 年度目標の営業利益 95 億円も、達成の信頼性は検証されていない。
保守の契約が崩れる
契約負債 174 億円は、前払いで受けた保守の約束だ。品質の事故や、競合の遠隔監視つき保守に客を奪われれば、前受けの積み上がりが止まり、利益の 4 割近くを稼ぐ事業の土台が揺らぐ。他社製品の保守の取り込みが進まない点も弱みになる。
冷媒の規制と原材料
自然冷媒への切り替えは、機種の更新需要を生む一方、開発費と部品の調達で原価を押し上げる。鋼材や物流費の上昇を値上げで転嫁しきれない期が続けば、製品の利益率が下がる。研究開発費が年 3 億円ほどと小さい点も、技術の遅れにつながりうる。
今後の分かれ目
- 2026 年の下期に営業利益が 45 億円を超え、通期予想の 84 億円に近づく
- 価格転嫁と保守の積み上げが効いている。やや楽観・楽観の確率を上げ、慎重な見方の足元の弱さを割り引く。
- 配当を性向 6 割前後で維持し、自社株買いが年 20 億円規模へ増える
- 現金の戻り方を 0.5 から 1.0 に近づけてよい。余った現金 450 億円が帳簿の価値で評価され、本質価値は 15〜20% ほど上がる。
- 100 億円規模の買収が出て、買収先の営業利益率が 10% に届かない
- 資本配分を疑い、やや悲観・悲観の確率を上げる。現金が価値を生まずに溶ける筋書きの比重を高める。
- 営業利益率が 14% を割り込み、翌年も戻らない
- 値上げが通らない構造的な負けの入り口とみて、悲観の確率を引き上げる。保守の利益率の低下も確かめる。
- 契約負債が売上の伸びより速く増え、他社製品の保守の取り込みが開示で確認できる
- 保守の積み上げが順調。保守の対象機器の伸びを 1 割から 2 割に引き上げ、楽観寄りに寄せてよい。
- 国内の業務用冷蔵庫の出荷が 20 万台を割り込む
- 台数の前提を引き下げ、中立の数量を 1 割減に置き直す。保守の積み上げでも埋められるかを再点検する。
見ておくもの
- 営業利益率(2025 年は 15.9%、中計は 2028 年度に 17.5%)と、通期予想の達成度
- 契約負債の残高(2025 年末 174 億円)と、保守の売上の伸び
- 配当性向・自社株買い・現金の水準(中計の株主還元 3 年で約 75 億円を超えるか)
- 日本冷凍空調工業会の業務用冷蔵庫の出荷台数(2025 年度は約 22 万台)
- 買収の規模と買収先の利益率、有利子負債を使うかどうか
- ホシザキ・フクシマガリレイの国内の値付けと、営業職の賃上げ率
倍率と資本コストの決め方
倍率は、現金を除いた事業の ROE と資本コスト 6.5%、長期の成長率 4% から正当化 PER を出し、その 7〜9 割に置いた(上振れほど高く、下振れほど低く)。余った現金は戻り方 0.5 で足した。今の値段が倍でも半分でも、この数字は動かない。事業の自己資本が小さく ROE が高く出るのは、保守の前受け金が運転資金を賄うためで、数字の見かけではなく仕組みの結果だと確かめた。新リース会計基準は 12 月決算なら 2028 年 12 月期から営業所の賃借が貸借対照表に載り形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 17.5→22.05 倍・やや楽観 PER 16.6→22.34 倍・中立 PER 16→22.69 倍・悲観 PER 10.2→8.32 倍)。
資本コスト 6.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0.0% = 7.5%。創業家支配や買収の失敗、現金が戻らないことは k に足さず、筋書きと確率、現金の戻り方 0.5 で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 6.50%。