結論
トーヨーカネツは、物流センターと空港の搬送設備を作り、石油タンクを建てて点検する機械メーカーだ。2026年3月期の売上は596億円、営業利益は36億円だった。
筆者の結論は、やや割安、というものだ。確率で重みを付けた10年先の価値は、今の時価総額334億円を15%ほど上回る。ただし悲観側では今の値段を割り込み、安全域は厚くない。
強みは、売った設備に保守が付いてくることだ。物流の保守売上は130億円を超え、新しく完成するセンターの保守は全件を受注している。タンクの開放点検は法律で5年ごとに義務づけられ、仕事が途切れにくい。
弱みは、利益率の薄さと案件の波だ。営業利益率は6%前後にとどまり、大型案件が1件こけると年の利益が飛ぶ。ダイフクのような大手との価格競争もある。
会社は2030年度に売上900億円を掲げるが、買収込みの数字だ。筆者は買収を数えず、自力で2036年に同じ規模へ届くと見る。堀は普通で、利益の伸びの多くは物価の分だ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社の評価は「買い増したい事業ではないが、払う値段次第では持てる事業」にとどまる。保守と法定点検という繰り返しの収益があり、10年後も事業が残る点は評価できる。
一方で、オーナー利益の質は高くない。営業利益率は6%前後で、利益の多くは大型案件の工事を終えて初めて確定する。稼いだ利益の一部は運転資金と施工体制に取られ、ROEは資本コストに届かない。堀は、顧客との付き合いの深さに限られる。
資本の使い方は、改善の途上にある。DOE4%の配当、自社株買い、政策保有株の売却は正しい方向だ。ただし買収で売上900億円を目指す方針には、価格の規律が見えない。のれんを積み上げて資本効率を落とす道筋が、いちばんの懸念になる。
安全域は厚くない。中立の価値は今の時価総額を上回るが、悲観側では今の値段を割り込む。払う値段に十分な余裕があるとは言えない。筆者は、買収の実績と大型案件の採算が1年ずつ積み上がるのを見てから、見方を改める。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は物流ソリューションで、売上の約6割を占める。生協のピッキング設備では7割超、国内空港の手荷物搬送では約85%のシェアを持つ。設計から施工、稼働後の保守までを自社で受け持つ。
二つ目はプラントで、売上の約2割だ。原油・LNG・LPGなどの貯蔵タンクを世界で5,700基以上納めてきた。国家備蓄向けの実績もある。いまの収益の中心は、法定の開放点検と補修だ。10,000kL以上のタンクは5年を超えない周期で点検が要る。新しい分野として、岩谷産業と液化水素の大型タンクを共同開発している。
三つ目はみらい創生で、売上の約2割だ。防災・インフラ向けの傾斜計を作る坂田電機を2025年4月に子会社にした。環境計測、アスベスト検査、産業機械もここに入る。会社は買収でこの領域を広げる方針だ。
顧客は生協、空港、ネット通販、石油元売りなどだ。製造業の物流センターへの進出も進めている。2027年4月には持株会社体制へ移り、事業会社ごとの意思決定を速める。2026年3月期の営業利益は、物流が34億円、プラントが10億円、みらい創生が5億円で、本社費など約13億円を引いて全社36億円になる。
優良さと弱いところ
堀の中身は、稼働後の付き合いの深さだ。物流設備は納めて終わりではなく、保守・部品・改修が続く。新しいセンターの保守は全件を受注しており、保守売上は2023年の約80億円から130億円超へ増えた。売り切りの機械メーカーより、収益が積み上がる形に近づいている。
ただし堀は普通とみる。生協と空港のシェアは高いが、市場そのものが小さい。ダイフクや村田機械、海外のデマティックなどが相手になる大型案件では、資本力と海外の拠点で見劣りする。標準化された設備では価格を自分で決められない。
資本効率は物足りない。ROEは2026年3月期で6.3%、過去10年の中央値は6.4%で、資本コストに届いていない。営業利益率は3%台から7%台の間を行き来し、10年で見て伸びていない。
財務は堅い。自己資本比率は58%、営業利益は支払利息の20倍ある。ただし純有利子負債が60億円あり、現金が余る会社ではない。投資有価証券は約77億円で、自己資本の2割近くを占める。経営は中計でROE8%とDOE4%を掲げ、政策保有株の売却を資本効率の改善に使う方針だ。筆者は、小さな会社が大型案件の赤字に耐えられるかを、いちばん気にしている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
物流自動化は構造的な追い風の中にある。国土交通省は、対策をとらなければ2030年度に輸送能力が約34%不足すると試算している。ネット通販の拡大と人手不足で、倉庫やセンターの自動化は続く。世界のマテハン(物流機器)市場は年6〜7%の伸びとの推計がある。
ただし追い風は参加者全員に吹く。ダイフクは世界首位級で、空港向けの搬送機器でも強い。村田機械、豊田自動織機傘下のバンデランデ、KION傘下のデマティックなども並ぶ。トーヨーカネツは生協と国内空港という得意先で堅実に稼ぐ会社で、大型の新規開拓では大手に分がある。受注は半導体向けで波の大きいダイフクほど振れないが、年ごとの揺れはある。
石油タンクは逆風と下支えが同居する。脱炭素で石油の消費は減り、製油所の統合も進む。一方で、法定の開放点検は5年ごとに必ず来る。液化水素、アンモニア、LNGなど新しい貯蔵の需要が、新設の穴を埋める余地がある。
環境・防災の計測は、老朽インフラの点検と防災投資の拡大が追い風だ。市場は細かく分かれ、会社はそこへ買収で入る。現在の位置は、物流の投資が堅調で、タンクは横ばい、新領域は仕込み中という局面だ。
資本政策と M&A
還元は厚くなった。配当は2026年3月期から3年間、自己資本に対して4%を下限とするDOE方針をとる。2026年3月期の総還元性向は6割を超えた。中計の3年間で50億円以上を還元し、直近では20億円規模の自社株買いを実施した。
買収は小粒から始まった。2023年にスクラムソフトウェア、2025年に坂田電機を取得した。2030年度の売上900億円は、物流で自力450億円を600億円に積む買収を含む。買収が大型化すると、のれんの減損と統合の失敗が資本効率を落とす。
親会社も支配株主もいない。大株主は信託銀行(約12.6%と6.3%)、日本生命(約2.6%)などだ。時価総額が334億円と小さく、事業の中身も買い手にとって分かりやすい。試算でも10年以内に買収される確率は2割ほどある。TOBが来れば、筆者はそれを上振れの要因として扱う。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
物流の自動化は10年続く需要だ。人手不足は構造的で、国土交通省は2030年度に輸送能力が約34%不足すると試算している。トーヨーカネツは生協のピッキングで7割超、国内空港の手荷物搬送で約85%のシェアを握る。ここで磨いた設計力を、食品・日用品の大手や製造業の物流センターに広げられる。物流の受注残は344億円あり、2026年3月期の受注高は前期より増えた。
収益の質も変わりつつある。保守売上は2023年の約80億円から130億円超へ伸び、新しく完成するセンターの保守は全件を受注している。納めた設備が増えるほど保守が積み上がるので、利益率は新設より保守の高い構造へ移る。会社は今期の保守を150億円と見込む。
新しい芽もある。液化水素の5万kL級タンクは、岩谷産業とNEDOの助成を受けて開発が進む。実用化すれば、法定点検に頼る今のタンク事業とは別の成長が生まれる。坂田電機の買収で、防災・インフラ計測の入口も得た。中計は営業利益43億円とROE8%を掲げ、DOE4%の還元も約束している。持株会社化で資本配分が速くなれば、買収を含めて会社が掲げる2030年度の売上900億円に近づける。
慎重な見方
利益率の薄さが全てだ。営業利益率は6%前後で、2019年3月期には3.1%まで落ちた。物流の新設は大型案件の工事費が膨らめば、1件で年の利益が飛ぶ。時価総額334億円の会社に、その損失を吸収する体力は大きくない。
競争の相手は大きい。ダイフクは世界首位級で、空港向けの搬送機器でも強く、米国に新工場を作って生産を集約している。バンデランデやデマティックなど海外の大手も並ぶ。トーヨーカネツの高いシェアは、生協と国内空港という狭い市場のものだ。市場が小さいため、シェアが高くても成長にはつながりにくい。
タンクは石油の縮小が長く効く。脱炭素と製油所の統合で、開放点検も新設も細る。水素への期待は大きいが、実用化は先で、採算もわからない。みらい創生は2026年3月期に売上が17.6%増えたのに、利益は46.6%減った。買収で売上を積んでも、利益が付いてこない前例が出た。
ROEは6%台で資本コストに届かない。そのうえで2030年度の売上900億円を買収で積むなら、のれんの減損リスクが高まる。中計の営業利益率は6.3%にとどまり、会社の自己評価も高くない。
どちらに重みを置いたか
強気の見方の中心は、物流自動化の需要と保守の積み上がりだ。これは確かな追い風で、中立の筋書きにも織り込んだ。慎重な見方の中心は、利益率の薄さと、大手との競争、買収の規律のなさだ。こちらにも説得力がある。
資本コストは7.75%と、同じ領域のダイフクや守屋輸送機より少し高く置いた。ROEが資本コストと同水準にとどまるため、10年先の倍率は12倍前後に落ち着く。確率の重みを付けた価値は、今の時価総額を15%上回る。
確率は、中立を34%と最も厚くした。慎重側の言い分である採算の振れは、小さな受注型メーカーでは普通に起こるので、やや悲観と悲観に合わせて3割台半ばを置いた。楽観は1割にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,992 円596 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,437 円215 億円)。 今の値に割り戻すと 2,882 円431 億円、今との差 +32.1%、 期待の年率 +9.5%(資本コスト 7.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,130 円1,215 億円 | 2,055 円307 億円 | +366.8% | +16.7% | 1,019 円152 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,896 円881 億円 | 1,787 円267 億円 | +252.1% | +13.4% | 1,690 円253 億円 |
| 中立 | 34% | 4,054 円606 億円 | 1,493 円223 億円 | +154.2% | +9.8% | 1,886 円282 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,553 円232 億円 | 1,138 円170 億円 | +23.3% | +2.1% | 592 円88 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,349 円202 億円 | 669 円100 億円 | −7.5% | −0.8% | 242 円36 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,992 円596 億円 | 1,437 円215 億円 | +148.8% | +9.5% | 5,429 円811 億円 |
今の株価時価総額 2,182 円326 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 物流自動化の追い風が長く続き、保守で稼ぐ会社に変わる 利益 76 億円 · PER 16.1 倍 · 株価時価総額 8,130 円1,215 億円
人手不足と物流の 2024 年問題が追い風になり、製造業と小売の自動化投資が 10 年続く。生協と空港で磨いた設計力が、食品・日用品の大手の物流センターにも広がる。新設の件数は今の 1.3 倍、保守を受け持つ設備は 1.7 倍に増え、物流の売上は今の 2 倍に達する。保守の比率が上がるので、物流の利益率は 11% 台まで改善する。液化水素の大型タンクは岩谷産業との共同開発が実を結び、本格受注に変わる。計測・防災の新事業も買収が当たり、利益率は 7.5% まで上がる。全社の売上は 1,200 億円、営業利益は 105 億円、利益率は 8.7% になる。2014 年 3 月期の 9.0% に迫る水準だが、保守という積み上がる収益の裏づけがある。持株会社の下で資本を回し、増配と買収を両立させる。
- 物流 設備の新設(自動倉庫・ピッキング・空港手荷物):数量 56.0(年に完成する設備案件の数(件、推定))× 価格 6.99(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 391 億円・営業利益 32 億円。営業利益率 8.2%
- 物流 保守・改修:数量 760(保守を受け持つ稼働設備の数(件、推定))× 価格 0.42(1 件あたりの年間保守売上(億円))→ 売上 319 億円・営業利益 53 億円。営業利益率 16.5%
- プラント(タンク):数量 98.0(年に施工するタンク工事の数(件、新設と点検、推定))× 価格 2.24(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 220 億円・営業利益 19 億円。営業利益率 8.8%
- みらい創生(環境・防災・計測ほか):数量 1,950(年に手がける計測・検査・機器の案件数(件、推定))× 価格 0.14(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 273 億円・営業利益 21 億円。営業利益率 7.5%
倍率:事業の純利益 76 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.1 倍。全体の PER 16.09 倍、時価総額 1,215 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:物流の自動化投資が 10 年続き、保守の厚みも増し、水素タンクと買収も当たる複数の好条件が重なる必要がある。小さな会社で案件の波も大きいため、1 割にとどめた。
やや楽観 22% 物流の保守が積み上がり、利益率が緩やかに上がる 利益 59 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 5,896 円881 億円
物流の投資は堅調に伸び、新設の件数は今の 1.2 倍弱、保守を受け持つ設備は 1.5 倍になる。納めた設備が増えるほど保守が積み上がり、物流全体の利益率は 10% を少し超える。プラントは国内の点検と LNG・水素向けの新設で件数が 1 割増える。みらい創生は買収した子会社の伸びで、利益率が 6.5% まで戻る。全社の売上は 1,040 億円、営業利益は 82 億円、利益率は 7.8% になる。中計の 2027 年度の目標(営業利益率 6.3%)を着実に超えていく姿だ。ROE は 10% 台に乗り、DOE 4% の配当に自社株買いを足す還元が続く。優良さは保たれるが、堀が普通である以上、利益率がこれ以上に高まる理由は見当たらない。
- 物流 設備の新設(自動倉庫・ピッキング・空港手荷物):数量 50.0(年に完成する設備案件の数(件、推定))× 価格 6.84(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 342 億円・営業利益 26 億円。営業利益率 7.5%
- 物流 保守・改修:数量 680(保守を受け持つ稼働設備の数(件、推定))× 価格 0.41(1 件あたりの年間保守売上(億円))→ 売上 280 億円・営業利益 44 億円。営業利益率 15.8%
- プラント(タンク):数量 88.0(年に施工するタンク工事の数(件、新設と点検、推定))× 価格 2.19(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 193 億円・営業利益 15 億円。営業利益率 8.0%
- みらい創生(環境・防災・計測ほか):数量 1,650(年に手がける計測・検査・機器の案件数(件、推定))× 価格 0.14(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 226 億円・営業利益 15 億円。営業利益率 6.5%
倍率:事業の純利益 59 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.93 倍、時価総額 881 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:人手不足と EC で物流の投資は堅調、保守が積み上がって利益率が改善する筋書き。会社の中計(営業利益率 6.3%)より一段高く、実績の裏づけがあるため 2 割強を置いた。
中立 34% 自力で物価並みに伸び、利益率は 7% 近くで落ち着く 利益 45 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 4,054 円606 億円
物流は人手不足を背景に新設が今の 1.07 倍、保守を受け持つ設備が 1.3 倍に増える。価格は物価並みに上がる。プラントは国内の更新と法定点検で件数が横ばい、みらい創生は買収した事業の伸びで 1.2 倍に増える。全社の売上は 910 億円、営業利益は 62 億円、利益率は 6.8% になる。会社が 2030 年度に掲げる売上 900 億円は買収込みの数字だが、筆者は買収を数えず、自力で 2036 年に同じ規模に届くと見る。本社費も物価で増えるので、利益率の改善は保守の比率が上がる分に限られる。大型案件の失敗は 1 件ほど出る。ROE は 8% 台で資本コストと同じ水準になり、特別な評価を受ける会社にはならない。DOE 4% の配当と自社株買いで、利益の 6 割強を株主に返す。
- 物流 設備の新設(自動倉庫・ピッキング・空港手荷物):数量 46.0(年に完成する設備案件の数(件、推定))× 価格 6.69(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 308 億円・営業利益 21 億円。営業利益率 6.8%
- 物流 保守・改修:数量 600(保守を受け持つ稼働設備の数(件、推定))× 価格 0.40(1 件あたりの年間保守売上(億円))→ 売上 241 億円・営業利益 36 億円。営業利益率 15.0%
- プラント(タンク):数量 80.0(年に施工するタンク工事の数(件、新設と点検、推定))× 価格 2.14(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 172 億円・営業利益 12 億円。営業利益率 7.0%
- みらい創生(環境・防災・計測ほか):数量 1,400(年に手がける計測・検査・機器の案件数(件、推定))× 価格 0.13(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 188 億円・営業利益 10 億円。営業利益率 5.5%
倍率:ROE 8.4%。RONIC=k 7.75%+残る割合 1/2×(8.4−8.25)=8.30%、g 4.0% から正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)=13.43 倍、下限の 1÷k は 12.1 倍で、上限は 13.43 倍。ROE が k とほぼ同じなので、倍率は下限の 1÷k と式の上限がほぼ重なる。受注型で案件の波はあるが、下限を割り込ませない決まりのため、上限の 10 割の 13.43 倍に置いた。
確率:自力の伸びは物価並みに数量が少し乗る程度、利益率は過去の山(2017 年 3 月期の 7.3%)以下の 6.8% で落ち着く。過去 10 年の営業利益率は 3〜7% の範囲で、最も起こりやすい。
やや悲観 22% 大型案件の採算が崩れ、利益率が 5% を割り込む 利益 27 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 1,553 円232 億円
物流の大型案件で想定外の工事費が出たり、顧客が投資を延ばしたりして、新設の件数が今の 9 割台に落ちる。価格は物価に追いつかず、10 年で 1.3 倍にとどまる。保守を受け持つ設備は増えるが、競合が保守の値下げを仕掛け、利益率が下がる。タンクは製油所の統合で点検の件数が減り、水素も事業化が遅れる。みらい創生は買収した会社の採算が伸びず、利益率は 3.5% に低迷する。全社の売上は 770 億円、営業利益は 37 億円、利益率は 4.8% になる。ROE は 5% 台で資本コストに届かず、稼いだ利益を溜めても価値は増えない。配当は DOE 4% を守るため、利益の 7 割近くを払って自己資本の伸びが鈍る。
- 物流 設備の新設(自動倉庫・ピッキング・空港手荷物):数量 40.0(年に完成する設備案件の数(件、推定))× 価格 6.49(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 260 億円・営業利益 13 億円。営業利益率 5.0%
- 物流 保守・改修:数量 540(保守を受け持つ稼働設備の数(件、推定))× 価格 0.39(1 件あたりの年間保守売上(億円))→ 売上 211 億円・営業利益 28 億円。営業利益率 13.5%
- プラント(タンク):数量 72.0(年に施工するタンク工事の数(件、新設と点検、推定))× 価格 2.08(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 150 億円・営業利益 8 億円。営業利益率 5.0%
- みらい創生(環境・防災・計測ほか):数量 1,150(年に手がける計測・検査・機器の案件数(件、推定))× 価格 0.13(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 150 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 3.5%
倍率:事業の ROE 5.7% は k 7.75% 以下なので、PER の上限は 1÷k の 12.1 倍。稼いだ利益を溜めても価値は増えない前提で、成長の上乗せは付けない。中立(ROE が k をわずかに超える水準)より低くなければつじつまが合わない。構造的に利益率が落ちた形で、上限の 7.0 割の 8.5 倍に置いた。
確率:営業利益率は過去 10 年に 3% 台まで落ちた年があり、大型案件の採算や顧客の投資延期は珍しくない。小さな受注型メーカーで起こりやすい形として 2 割強を置いた。
悲観 12% 大手に案件を奪われ、タンクも細って構造的に負ける 利益 −2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,349 円202 億円
ダイフクなど大手が空港と生協向けの案件で攻勢をかけ、新設の件数は今の 7 割に減る。価格は 10 年で 1.2 倍までしか上がらない。保守も、設備の撤去と競合への切り替えで受け持ち設備が縮む。石油タンクは脱炭素と製油所の統合で点検の件数が 3 割減り、新設は途絶える。みらい創生は買収した会社ののれんを減損し、赤字が続く。全社の売上は 540 億円、営業利益は小幅の赤字になる。大型案件の赤字を埋める余力が乏しく、配当も 10 年の合計で 100 億円まで減らす。ROE は 1% を割る。価値は稼ぐ力ではなく、売れる資産の水準で測る。投資有価証券を売り、事業用資産は簿価の 45% で売れると見る。
- 物流 設備の新設(自動倉庫・ピッキング・空港手荷物):数量 30.0(年に完成する設備案件の数(件、推定))× 価格 5.99(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 180 億円・営業利益 3 億円。営業利益率 1.5%
- 物流 保守・改修:数量 430(保守を受け持つ稼働設備の数(件、推定))× 価格 0.36(1 件あたりの年間保守売上(億円))→ 売上 155 億円・営業利益 14 億円。営業利益率 9.0%
- プラント(タンク):数量 55.0(年に施工するタンク工事の数(件、新設と点検、推定))× 価格 1.92(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 106 億円・営業利益 0 億円。営業利益率 0.0%
- みらい創生(環境・防災・計測ほか):数量 800(年に手がける計測・検査・機器の案件数(件、推定))× 価格 0.12(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 96 億円・営業利益 −2 億円。営業利益率 -2.0%
倍率:営業利益が赤字に近く、稼ぐ力では測れない。売れる資産の床で置く。投資有価証券 77 億円の税引き後(約 7 割)は約 54 億円、事業用資産(今の自己資本 403 億円から投資有価証券を引いた約 326 億円)は簿価の 45% で売れると見て約 147 億円、合計約 201 億円。今の自己資本 403 億円のちょうど半分にあたる。市場の値付けは根拠にしていない。
確率:ダイフクなど大手との価格競争、石油タンク需要の構造的な縮小、大型案件の赤字が重なる形。2002 年 3 月期のような赤字の前例があり、無視できないが、保守とタンクの法定点検が下支えするので 1 割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
物流 設備の新設(自動倉庫・ピッキング・空港手荷物)
物流センター・空港向けに設計から施工まで請け負う新設の搬送・保管設備。生協向けピッキングと国内空港の手荷物搬送が柱。
| 数量年に完成する設備案件の数(件、推定) | 価格1 件あたりの平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 43.0 | 4.99 | 215 | 14 |
| 10 年後 中立 | 46.0 | 6.69 | 308 | 21 |
取り方:物流ソリューション売上 349.6 億円のうち、保守を除く新設を約 215 億円と置いた(保守は 130 億円超と会社が説明)。年 43 件ほどの完成案件で割り、1 件あたり約 5 億円。営業利益は物流全体 34.3 億円(9.8%)を、保守の利益率を高く、新設を低く分けて新設 14.0 億円(約 6.5%)と置いた。
物流 保守・改修
納めた物流設備の定期保守・部品交換・改修。新しく完成したセンターの保守は全件を受注している。
| 数量保守を受け持つ稼働設備の数(件、推定) | 価格1 件あたりの年間保守売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 450 | 0.30 | 135 | 20 |
| 10 年後 中立 | 600 | 0.40 | 241 | 36 |
取り方:物流の保守売上は会社説明で 130 億円超、今期目標 150 億円。これを約 135 億円と置き、稼働設備 450 件ほどで割って 1 件約 0.3 億円。営業利益は新設より高い 15% 前後(約 20 億円)と推定した。分け方は推定で、物流全体の合計 34.3 億円には合わせてある。
プラント(タンク)
石油・LNG・LPG・水素などの貯蔵タンクの新設と、法定の開放点検・補修。国家備蓄向けの実績がある。
| 数量年に施工するタンク工事の数(件、新設と点検、推定) | 価格1 件あたりの平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 80.0 | 1.60 | 128 | 10 |
| 10 年後 中立 | 80.0 | 2.14 | 172 | 12 |
取り方:プラント売上 128.0 億円(営業利益 10.0 億円、7.8%)を、年 80 件ほどの新設・開放点検の工事で割り、1 件約 1.6 億円と置いた。10,000kL 以上のタンクは 5 年周期の法定点検があり、件数は国内の製油所・備蓄基地の数に沿う。価格は鋼材と人件費の上昇を契約に織り込み物価並み。
みらい創生(環境・防災・計測ほか)
傾斜計などの防災・インフラ計測、環境計測、アスベスト検査、産業機械。買収で広げている新領域。その他事業を含む。
| 数量年に手がける計測・検査・機器の案件数(件、推定) | 価格1 件あたりの平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,186 | 0.10 | 119 | 5 |
| 10 年後 中立 | 1,400 | 0.13 | 188 | 10 |
取り方:みらい創生売上 116.2 億円とその他 2.4 億円の計 118.6 億円(営業利益 4.7 億円、前期は 8.7 億円)を、計測・検査・機器の年約 1,200 件で割り、1 件約 0.1 億円と置いた。件数は買収した子会社(坂田電機など)の分を含む推定。
リスクと懸念
大型案件の採算が崩れるリスク
物流の新設や空港の搬送設備は、1 件の規模が大きく工期も長い。工事費が見積もりを超えれば、1 件で年の利益が大きく削られる。営業利益率が 6% 前後と薄いため、赤字案件の影響を吸収する余裕が小さい。時価総額 334 億円の小さな会社には、この形の損失が重い。
石油タンク需要の構造的な縮小
プラント事業の中核は石油の貯蔵タンクと、その法定の開放点検だ。脱炭素で石油の消費が減り、製油所の統合も進めば、点検の件数も新設も細る。液化水素やアンモニア向けの新タンクで穴を埋められるかは、実用化の時期と採算にかかる。
大手との価格競争
物流自動化にはダイフク、村田機械、海外のデマティックやバンデランデなどの大手がいる。資本力と海外の拠点で劣るため、大型で標準化された案件では価格で押される。国内の空港や生協で高いシェアを持つが、市場そのものが小さく、他へ広げる力が試される。
顧客の集中と更新サイクル
生協と国内空港は、シェアが高い一方で顧客数が限られる。更新の時期が重なったり、後ろへずれたりすると、受注が年ごとに大きく揺れる。保守は安定した収益だが、新設の波が荒いことには変わりない。
人手不足と施工体制
搬送設備やタンクの施工は、現場の技能者と協力会社に頼る。人手不足と人件費の上昇で工期が延びれば、利益を圧迫する。価格に転嫁できる範囲は、契約と競争環境で決まる。
買収の実行リスクと持株会社化
会社は 2030 年度の売上 900 億円に向けて買収を重ねる方針だ。買収額が大きくなると、のれんの減損や統合の失敗が資本効率を落とす。2027 年 4 月の持株会社への移行で、管理の費用が増える点も見ておく。
今後の分かれ目
- 物流の受注残が 400 億円を超えて積み上がったら
- 新設の件数の前提が上方にずれる。やや楽観・楽観の確率を上げてよい。受注残は四半期の説明資料で確認する。
- 物流の大型案件で追加の工事費による赤字が出たら
- 利益率の前提が崩れる。やや悲観・悲観に重みを移し、案件ごとの採算の開示が増えるかを確かめる。
- 液化水素の大型タンクの本格受注が決まったら
- プラントの長期の成長前提を引き上げる。受注の規模と採算(営業利益率)を個別に見る。
- 会社が 100 億円規模の買収を発表したら
- 買収の価格と、買った事業の利益率が自社の水準を上回るかが分かれ目になる。上回れば楽観寄り、上回らなければ悲観寄りに動く。
- 政策保有株の売却が進み、自社株買いが増えたら
- 自己資本の薄まりと ROE の改善が進む。ROE が資本コストを安定して超えるなら、倍率の前提を引き上げる。
- TOB(公開買い付け)の話が出たら
- 親会社も支配株主もおらず、時価総額が小さいので、買収はありうる。提示価格が本質価値を上回るかを、筋書きの加重平均と比べて判断する。
見ておくもの
- 物流ソリューションの受注高・受注残(四半期の決算説明資料)
- 物流の保守売上の伸び(会社は今期 150 億円を目標)
- プラントの受注高とタンクの開放点検の件数
- 営業利益率(中計の最終年度 2028 年 3 月期に 6.3% が目標)
- 持株会社への移行(2027 年 4 月)後の本社費と資本配分の方針
倍率と資本コストの決め方
物流を新設と保守に分け、件数×1件あたりの金額で10年を積んだ。物価は価格に入れ、数量は実質で置いた。利益率は過去12年の山(7.3%)以下の6.8%に収めた。倍率は式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g))の上限の7〜10割で置いた。ROEが資本コストと同水準の中立は、下限の1÷kに重なるので上限の10割とした。悲観は赤字に近く、売れる資産の床で置いた。今の株価(時価総額334億円)や過去のPER・PBRは根拠にしていない。10年中立のROEは8.4%で、過去中央値6.4%に2ポイントを足した水準を超えない。純利益÷営業利益は0.73で、過去10年の中央値0.86より低い。特別利益の売却益が過去の比を押し上げていたためで、今後は期待しない。利払いの変化(10年で約−2億円)と受取配当は、営業外の+3.5億円に織り込んだ。新リース会計基準の適用で営業利益と負債の形が変わるが、10年後も今と同じ形(賃料を費用に入れた形)で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.7→16.09 倍・やや楽観 PER 12.8→14.93 倍・中立 PER 12.2→13.43 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality 0.75%=8.25%。内訳と理由は quality_why。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.25% → 7.75%。