結論
北川鉄工所は、旋盤用のパワーチャック、建設用クレーンとコンクリートプラント、自動車や建機向けの鉄系鋳物を作る広島の会社だ。売上は584億円。時価総額は240億円で、純資産460億円を大きく下回る。
結論は、今の値段は純資産に比べ安く見えても、利益から測ると割高とみる。利益の中身が偏っているからだ。産業機械が営業利益28億円を稼ぐ一方、売上の4割を占める鋳物は6億円しか残さない。工作機器は2億円。全社費用を引いた連結の営業利益は27億円で、利益率は4.6%にとどまる。
過去12年の営業利益率は、高い年で9%台、低い年は0%台と大きく振れた。直近は3〜5%で、会社は2027年度に6.4%を目指す。メキシコの鋳物子会社が赤字を止め、インドのチャック工場と半導体関連が立ち上がれば、届く可能性はある。
筆者は10年後の中立で、営業利益率を5%台に置く。この会社の勝負は、鋳物の採算と、国内で首位のチャックを海外に広げられるかで決まる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、この会社は「資産に比べて安く、利益に比べて普通」の会社だ。
PBRは0.5倍。ただし純資産の質を見る必要がある。鋳物のメキシコ子会社には約80億円の設備があり、赤字が続けば価値を生まない。政策保有株は37億円の簿価があるが、配当収入は利益にすでに入っている。純資産の額面をそのまま価値とは言えない。
堀は、事業ごとに違う。チャックの6割と小中型クレーンの8割は、ニッチ首位の強さだ。顧客の工場の標準になり、保守で長く稼ぐ。一方、鋳物は独立系で、顧客の景気に左右される。会社の稼ぎは、堀の厚い二つの事業にほぼ頼っている。
資本の使い方は、堅実だ。借金は軽く、赤字のタイ工場を閉めた。ただし、メキシコの増強は赤字の中で進んだ。投資のリターンは、まだ証明されていない。
安全域は、利益ではなく資産側にある。借金が軽いので、鋳物が不調でも倒れにくい。筆者が見たいのは、メキシコの黒字化と、チャックのインドでの伸びだ。
何で稼ぐ会社か
売上584億円の内訳は、金属素形材(鋳物)が243億円、産業機械が220億円、工作機器(チャック)が99億円、半導体関連が18億円。連結従業員は約2,300人。
金属素形材は、エンジンやミッション周りの鉄系鋳物を作り、機械加工まで手がける。顧客は自動車部品が約6割、建機・農機が約4割。メキシコ子会社が売上の1割超を占める。タイの工場は閉鎖し、売却した。
産業機械は、小中型の建設用クレーンで国内の約8割、コンクリートプラントでも上位を持つ。高速道路の更新や風力向けの特殊クレーン、自走式の立体駐車場も扱う。メンテナンスの売上が安定した下支えになる。
工作機器は、旋盤用パワーチャックで国内シェア6割とされる。NC円テーブルやロボットハンドも作る。海外売上は約4割で、インドに新工場を建て、中国とEMS向けを伸ばす。
半導体関連は、2023年に買収した2社を合併した北川グレステックだ。半導体の研磨まわりの装置と受託加工を担う。小さいが、利益率は高い。
原料は鉄スクラップと銑鉄、エネルギーは電力で、値上がりは鋳物の採算を直撃する。本社は広島県府中市で、工場は国内、メキシコ、インドにある。
優良さと弱いところ
堀は事業ごとに濃淡がある。厚いのはチャックとクレーンで、薄いのは鋳物だ。
チャックは国内の6割を握り、旋盤メーカーの標準品として入り込んでいる。交換部品と保守で長く使われる。クレーンも、小中型で首位。納期とメンテナンスで客をつなぐ。どちらも市場は大きくないが、ニッチの首位として利益率は高い。
鋳物は独立系の素形材メーカーで、自動車と建機の景気に連動する。鉄の価格とエネルギー代を値上げで写す交渉は続くが、遅れる。メキシコ子会社は、受注が高くても人件費と材料費の上昇で赤字だ。2025年3月期の経常損失は8億円近い。
財務は軽い。純有利子負債は47億円で、自己資本の0.1倍。営業利益は支払利息の7倍以上ある。自己資本比率は54%。
大株主は信託銀行、従業員の持株会、地元の広島銀行。政策保有株は上場143銘柄で、簿価は37億円。経営は保守的で、買収を仕掛けられた形跡はない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は三つの異なる市場に分かれる。
自動車・建機向けの鋳物は、ハイブリッド車の販売増に支えられるが、電動化でエンジン周りの部品は長期に減る。筆者は、10年後の鋳物の数量を今の0.98倍とみる。建機と農機は、価格改定と海外の更新で支えられる。ただし中国の需要は弱い。
産業機械は、国内のインフラ更新が追い風だ。高速道路のリニューアル、風力発電の据え付け、老朽化したコンクリートプラントの更新が続く。人手不足で省人化の機械が選ばれ、数量は10年で横ばいから微増とみる。
工作機器は、工作機械の受注に連動する。国内は成熟していて伸びない。伸びしろは海外だ。インドでは製造業の投資が増え、会社はチャックのシェア40%を目指す。中国とEMS(電子機器の受託生産)向けも伸びている。ただし中国の現地メーカーとの価格競争は厳しい。
半導体関連は、AI向けの投資と国の支援で需要が伸びる。研磨装置の市場は2025年に約8,000億円と言われる。会社はその中の消耗品と受託加工で小さなシェアを積む。
物価は年3%で上がる。クレーンやチャックは値上げを通しやすいが、鋳物は鉄とエネルギーの上昇を写すのに時間がかかる。
資本政策と M&A
還元は、段階制の配当性向で決める。年間の最低額を保ち、純利益15億円超35億円以下は30%、35億円超50億円以下は35%、50億円超は40%を目安にする。自社株買いは基本的にしない。
投資は、成長に100億円、維持に70億円と、3年で170億円を計画する。2025年3月期の設備投資は42億円で、本社工場の加工棟を建てた。インドの新工場と、メキシコの増強が主な対象だ。研究開発は6億円。
借金は軽い。純有利子負債は47億円で、2026年3月期に純利益が31億円に伸びても、財務に余裕がある。金利が上がった影響は小さい。
M&Aは2023年の半導体関連2社の買収が最近の例で、小さな規模にとどまる。タイ工場の閉鎖は、採算の悪い拠点を切る実行力を示した。
政策保有株は上場143銘柄で簿価37億円。取引先持株会を通じた買い増しが中心で、縮減の方針は出ているが、売却は進んでいない。土地の賃借料は年3億円で、店舗や倉庫を借りて営む会社ではない。賃料の固定費は小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
利益率は戻る。会社は2027年度に営業利益43.5億円、利益率6.4%を掲げる。足元の2027年3月期は、第1四半期の営業利益が7.5億円で、前年同期より44%増えた。産業機械はすでに利益率12.8%に達し、メンテナンスが下支えする。
鋳物は底を打った。タイの赤字工場を閉め、メキシコは受注が高水準だ。人件費と材料費の上昇を価格改定で写せば、メキシコの赤字は止まる。鋳物の利益率が2.5%から5%に上がるだけで、営業利益は12億円増える。
工作機器の伸びしろは大きい。インド新工場が立ち上がり、チャックのシェア40%を目指す。目標は2027年度に売上120億円、営業利益15億円。今の営業利益2億円から大きく増える。半導体関連も年30%台で伸びる。
借金が軽く、時価総額は純資産の半分。営業利益率が7%台に戻れば、純利益は50億円を超え、PERは5倍台になる。株価の戻りは大きい。会社が借金を使わずに設備を増やせるのも、財務が軽いからだ。慎重な見方が心配する「鋳物の弱さ」は、すでに株価に織り込まれている面がある。
慎重な見方
過去の実績は、会社の計画を信用させない。営業利益率は、2019年3月期の9.0%から、2021年3月期の1.1%、2023年3月期の0.3%まで落ちた。直近の4.6%も、鋳物の特別な追い風によるところが大きい。2026年3月期の純利益31億円は、タイ工場の売却などの特別益を含み、本来の稼ぐ力ではない。
鋳物は構造的に厳しい。顧客は自動車と建機で、電動化で内燃機関の部品は減る。メキシコ子会社は経常赤字が8億円近く、設備の簿価は約80億円。回収できなければ、減損が出る。
チャックは国内で首位でも、国内市場そのものが縮小している。中国の現地メーカーが安い製品で攻め、インドの新工場は固定費を先に増やす。海外売上の比率を60%に上げる計画も、為替と競争に左右される。
全社費用は営業利益を10億円以上削る。セグメント利益の合計37億円に対し、連結は27億円。稼ぐ力は、見かけよりかなり小さい。会社の計画は何度も下がってきた実績があり、資産に比べて安く見えても、買う理由にならない。
どちらに重みを置いたか
強気の指摘のうち、産業機械の稼ぐ力とメンテナンスの安定性は事実で、重く見る。慎重な指摘の、鋳物の構造的な弱さと、全社費用による利益の目減りも事実だ。中立の営業利益率は、会社計画の6.4%より低い5%台に置いた。確率は、中立を最大にしつつ、やや悲観にも厚く26%を置いた。借金が軽く、悲観でも財務が崩れにくい点は、悲観の確率を10%にとどめた理由でもある。産業機械の安定が、慎重な見方の悲観を和らげる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,007 円284 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 923 円87 億円)。 今の値に割り戻すと 1,944 円184 億円、今との差 −20.2%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,641 円628 億円 | 2,009 円190 億円 | +255.1% | +13.5% | 692 円65 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,689 円443 億円 | 1,375 円130 億円 | +148.9% | +9.5% | 1,213 円115 億円 |
| 中立 | 36% | 3,345 円316 億円 | 899 円85 億円 | +74.2% | +5.7% | 1,528 円144 億円 |
| やや悲観 | 26% | 1,015 円96 億円 | 529 円50 億円 | −36.6% | −4.5% | 401 円38 億円 |
| 悲観 | 10% | 699 円66 億円 | 264 円25 億円 | −60.5% | −8.9% | 96 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,007 円284 億円 | 923 円87 億円 | +61.3% | +4.9% | 3,930 円372 億円 |
今の株価時価総額 2,436 円230 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 8% インドとメキシコが立ち上がり、利益率は8%近くへ 利益 53 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 6,641 円628 億円
メキシコの鋳物子会社が黒字化し、価格改定も通る。鋳物の営業利益率は5.5%まで上がる。産業機械は高速道路の更新と風力向けの特殊クレーンが伸び、利益率は13.5%を保つ。
工作機器は、インドの新工場が立ち上がり、チャックのシェア40%に近づく。台数は1.4倍に増え、利益率は12%に届く。半導体関連も年率で2割近く伸びる。
全社の営業利益は約80億円、利益率は8.5%。過去12年の最高(9.3%)に近づく。純利益は約53億円で、配当性向40%の段階に入る。借金は返し終わり、投資に回す余力も出る。半導体関連は装置の大型化で単価が上がり、鋳物の高付加価値品への転換も進む。会社は中計の目標を上回り、資本効率の高い会社として評価が変わる。
- 金属素形材(鋳物):数量 63.8(出荷量(千トン・推定))× 価格 5.60(1 千トンあたり売上(億円・名目、1kg あたり 0.4 千円相当))→ 売上 357 億円・営業利益 20 億円。数量 1.05 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 5.5%
- 産業機械:数量 605(年間の案件数(件・推定))× 価格 0.56(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 339 億円・営業利益 46 億円。数量 1.10 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 13.5%
- 工作機器(チャック):数量 154(出荷台数(千台・推定))× 価格 1.26(1 千台あたり売上(億円・名目、1台 9 万円相当))→ 売上 194 億円・営業利益 23 億円。数量 1.40 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 12.0%
- 半導体関連:数量 108(年間の案件数(件・推定))× 価格 0.42(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 45 億円・営業利益 5 億円。数量 1.80 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 12.0%
- その他:数量 50.0(年間の案件数(件・推定))× 価格 0.14(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。数量 1.20 倍・価格 1.40 倍・営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 53 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 628 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:メキシコの黒字化、インドの立ち上がり、半導体関連の成長がそろう必要がある。過去の高い年(9%台)に近づく筋書きなので、8%にとどめた。
やや楽観 20% 鋳物が黒字化し、計画の6%台に届く 利益 38 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 4,689 円443 億円
鋳物は黒字化に近づくが、自動車の電動化で伸びは限られる。鋳物の営業利益率は4.5%、産業機械は12.5%、工作機器は9%、半導体関連は10%。インドの工場は計画より遅れつつ稼働する。
中計の目標の営業利益率6.4%に近い水準まで戻る。メキシコは黒字化するが、人件費の上昇で利益は薄い。
営業利益は約59億円、利益率は6.9%。純利益は約38億円、ROEは6%台。配当は性向35%の段階に入り、株主への還元も増える。メキシコの黒字化と、インドの工場の立ち上がりが、利益率を押し上げる主因になる。半導体関連の成長も加わる。
- 金属素形材(鋳物):数量 60.8(出荷量(千トン・推定))× 価格 5.48(1 千トンあたり売上(億円・名目、1kg あたり 0.4 千円相当))→ 売上 333 億円・営業利益 15 億円。数量 1.00 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 4.5%
- 産業機械:数量 578(年間の案件数(件・推定))× 価格 0.55(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 317 億円・営業利益 40 億円。数量 1.05 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 12.5%
- 工作機器(チャック):数量 137(出荷台数(千台・推定))× 価格 1.23(1 千台あたり売上(億円・名目、1台 9 万円相当))→ 売上 169 億円・営業利益 15 億円。数量 1.25 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 9.0%
- 半導体関連:数量 84.0(年間の案件数(件・推定))× 価格 0.41(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 35 億円・営業利益 4 億円。数量 1.40 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 10.0%
- その他:数量 46.0(年間の案件数(件・推定))× 価格 0.14(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 1.10 倍・価格 1.37 倍・営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.1% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 443 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の目標(6.4%)に近い水準。産業機械の安定と鋳物の改善が確認できれば届く。20%を置いた。
中立 36% 鋳物は薄利のまま、機械とチャックで利益率は5%台 利益 27 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 3,345 円316 億円
鋳物の数量は電動化で10年に2%減り、価格は物価並みに上がる。鋳物の営業利益率は3.0%、産業機械は11.5%、工作機器は7.5%、半導体関連は9.0%。メキシコは黒字に戻るが、利益は小さい。
産業機械はインフラ更新で数量が横ばいを保つ。工作機器はインドと中国で数量が15%増える。ただし中国の価格競争で、利益率は計画の半分ほどにとどまる。
営業利益は約43億円、利益率は5.4%。純利益は約27億円。ROEは4%台で資本コストに届かない。会社は安定した事業を持ちながら、資本をうまく使えない状態が続く。
- 金属素形材(鋳物):数量 59.6(出荷量(千トン・推定))× 価格 5.36(1 千トンあたり売上(億円・名目、1kg あたり 0.4 千円相当))→ 売上 320 億円・営業利益 10 億円。数量 0.98 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 3.0%
- 産業機械:数量 550(年間の案件数(件・推定))× 価格 0.54(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 295 億円・営業利益 34 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 11.5%
- 工作機器(チャック):数量 126(出荷台数(千台・推定))× 価格 1.21(1 千台あたり売上(億円・名目、1台 9 万円相当))→ 売上 153 億円・営業利益 12 億円。数量 1.15 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 7.5%
- 半導体関連:数量 78.0(年間の案件数(件・推定))× 価格 0.40(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 3 億円。数量 1.30 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 9.0%
- その他:数量 42.0(年間の案件数(件・推定))× 価格 0.13(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。数量 1.00 倍・価格 1.34 倍・営業利益率 5.0%
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.4% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 316 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:利益率が計画の少し下に収まる筋書き。直近4年の3〜5%の上の端で、最大の36%を置いた。
やや悲観 26% 鋳物が足を引き、利益率は3%台にとどまる 利益 13 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,015 円96 億円
鋳物のメキシコの赤字が続き、減損も出る。鋳物の営業利益率は0.5%まで下がる。産業機械は11%を保つが、数量は5%減る。工作機器は国内の縮小と中国の競争で、利益率は4%。
半導体関連は期待ほど伸びない。インドの新工場は固定費が先に出て、利益を圧迫する。
営業利益は約23億円、利益率は3.2%と今の水準を下回る。純利益は約13億円。配当は最低額に近く、ROEは2%台にとどまる。純資産は積み上がるが、稼ぐ力は伸びない。産業機械の安定が全社を支える構図は変わらず、鋳物と工作機器の弱さを埋めるのが精いっぱいになる。会社は中計の目標を取り下げ、投資の抑制と拠点の整理を迫られる。
- 金属素形材(鋳物):数量 55.9(出荷量(千トン・推定))× 価格 5.20(1 千トンあたり売上(億円・名目、1kg あたり 0.4 千円相当))→ 売上 291 億円・営業利益 2 億円。数量 0.92 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 0.5%
- 産業機械:数量 522(年間の案件数(件・推定))× 価格 0.52(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 271 億円・営業利益 30 億円。数量 0.95 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 11.0%
- 工作機器(チャック):数量 110(出荷台数(千台・推定))× 価格 1.17(1 千台あたり売上(億円・名目、1台 9 万円相当))→ 売上 128 億円・営業利益 5 億円。数量 1.00 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 4.0%
- 半導体関連:数量 66.0(年間の案件数(件・推定))× 価格 0.39(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。数量 1.10 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 6.0%
- その他:数量 38.0(年間の案件数(件・推定))× 価格 0.13(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。数量 0.90 倍・価格 1.30 倍・営業利益率 0.0%
倍率:ROE 2.2%(事業の純利益÷自己資本)が k 8.50% 以下なので、伸びても価値は増えず(ためた利益は額面未満)、正当化 PER の上限は 1÷k=11.8 倍。鋳物の赤字が続き、堀の薄さが出た筋書きなので、上限の 6.4 割の 7.5 倍に置いた。
確率:鋳物の赤字が続く確率は高い。過去12年の半分は3%台以下だった。26%を置いた。
悲観 10% 電動化と中国の競争で、鋳物と工作機器が赤字に 利益 −2 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 699 円66 億円
電動化が予想より早く進み、内燃機関向け鋳物の需要が2割以上減る。メキシコは赤字が続き、設備を減損して撤退を迫られる。鋳物の営業利益率はマイナス2%に沈む。
工作機器は、中国の現地メーカーに価格で負け、国内の工作機械の需要も縮む。利益率は1%まで下がる。産業機械だけが、メンテナンスで利益を保つ。
営業利益はほぼゼロ。減損で純損失が出る年もある。政策保有株を売って資金を作り、配当は最低額に下げる。稼ぐ力が細り、株主の取り分は純資産の一部にとどまる。メキシコの撤退費用や、工場の統廃合に伴う一時費用も出る。ただし借金が軽いので、倒産の危機にはならない。
- 金属素形材(鋳物):数量 45.6(出荷量(千トン・推定))× 価格 4.80(1 千トンあたり売上(億円・名目、1kg あたり 0.4 千円相当))→ 売上 219 億円・営業利益 −4 億円。数量 0.75 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 -2.0%
- 産業機械:数量 484(年間の案件数(件・推定))× 価格 0.48(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 232 億円・営業利益 16 億円。数量 0.88 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 7.0%
- 工作機器(チャック):数量 93.2(出荷台数(千台・推定))× 価格 1.08(1 千台あたり売上(億円・名目、1台 9 万円相当))→ 売上 101 億円・営業利益 1 億円。数量 0.85 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 1.0%
- 半導体関連:数量 54.0(年間の案件数(件・推定))× 価格 0.36(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 0 億円。数量 0.90 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 0.0%
- その他:数量 34.0(年間の案件数(件・推定))× 価格 0.12(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。数量 0.80 倍・価格 1.20 倍・営業利益率 0.0%
倍率:営業利益がほぼ消え、事業の稼ぐ力から価値を測れない筋書き。メキシコの設備(簿価約80億円)は減損で削られ、自己資本は積み上がらない。減損と構造改革の費用で、自己資本は今より約85億円削られる。今の自己資本ではなく、10年後の削られた自己資本に0.15を掛けた。借金が軽く、売れる資産が残るので、完全には崩れない。
確率:電動化と中国の競争が重なる筋書き。借金が軽く、悪化の幅は限られるので10%を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
金属素形材(鋳物)
自動車・建機・農機向けの鉄系鋳物と機械加工。
| 数量出荷量(千トン・推定) | 価格1 千トンあたり売上(億円・名目、1kg あたり 0.4 千円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.8 | 4.00 | 243 | 6 |
| 10 年後 中立 | 59.6 | 5.36 | 320 | 10 |
取り方:鋳物の売上243億円を、機械加工まで含む鉄系鋳物の平均売価(1kg あたり約 0.4 千円と推定)で割り、約6万トン(60.8 千トン)とした。数量は実質、物価と鉄・エネルギーの転嫁は価格に入れた。セグメント利益は6.1億円(利益率2.5%)。
産業機械
建設用クレーン、コンクリートプラント、特殊クレーン、立体駐車場、メンテナンス。
| 数量年間の案件数(件・推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 550 | 0.40 | 220 | 28 |
| 10 年後 中立 | 550 | 0.54 | 295 | 34 |
取り方:産業機械の売上220億円を、1件あたり約0.4億円(本体、据え付け、メンテナンスの平均)と推定して割り、年約550件とした。件数は実質、物価と大型案件の混ざりは1件あたり売上に入れた。セグメント利益は28.1億円(利益率12.8%)。
工作機器(チャック)
旋盤用パワーチャック、NC円テーブル、ロボットハンド。
| 数量出荷台数(千台・推定) | 価格1 千台あたり売上(億円・名目、1台 9 万円相当) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 110 | 0.90 | 99 | 2 |
| 10 年後 中立 | 126 | 1.21 | 153 | 12 |
取り方:工作機器の売上99億円を、チャックなどの平均売価(1台約9万円と推定)で割り、年約11万台(109.7 千台)とした。数量は実質、物価は価格に入れた。セグメント利益は2.2億円(利益率2.2%)。
半導体関連
半導体の研磨まわりの装置、消耗品、受託加工(北川グレステック)。
| 数量年間の案件数(件・推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 0.30 | 18 | 1 |
| 10 年後 中立 | 78.0 | 0.40 | 31 | 3 |
取り方:半導体関連の売上18億円を、1件あたり約0.3億円(装置と消耗品と受託加工の平均)と推定して割り、年約60件とした。件数は実質、物価と装置の大型化は価格に入れた。セグメント利益は1.4億円(利益率7.8%)。
その他
特殊工作機械、環境機械(リサイクル)など。
| 数量年間の案件数(件・推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 42.0 | 0.10 | 4 | 0 |
| 10 年後 中立 | 42.0 | 0.13 | 6 | 0 |
取り方:その他の売上4億円を、1件あたり約0.1億円と推定して割り、年約40件とした。数量は実質、物価は価格に入れた。利益は損益ゼロ近辺とみて0とした。
リスクと懸念
メキシコ子会社の赤字
売上65億円に対して経常損失は8億円近い。設備簿価は約80億円で、赤字が続けば減損が出る。人件費と材料費の上昇を価格で写せるかが鍵になる。
電動化による鋳物の減少
鋳物の顧客は自動車が約6割。電動化でエンジンとミッション周りの部品は長期に減る。建機・農機への転換が間に合うかは不透明だ。
中計の未達
2027年度に営業利益43.5億円、利益率6.4%を掲げるが、過去に何度も計画を下げた。2027年3月期の予想は30億円で、中計より低い。
工作機械の景気と中国
チャックは工作機械の受注に連動する。中国の現地メーカーの安価な製品と、国内の需要の縮小が利益を削る。インド新工場の固定費も先に出る。
全社費用と利益の目減り
セグメント営業利益の合計37億円に対し、連結は27億円。全社費用が10億円を超える。物価で人件費が増えれば、さらに重くなる。
政策保有株の価格
上場143銘柄、簿価37億円を持つ。株価が下がれば純資産が減る。縮減の方針は出ているが、売却は進んでいない。
今後の分かれ目
- メキシコ子会社の営業損益が黒字に転じ、2期続いたら
- 鋳物の利益率を上方修正し、やや楽観以上の確率を上げる。
- 産業機械の営業利益率が12%を割り込んだら
- 稼ぎ頭の堀が崩れたと判断し、悲観側の確率を上げる。
- インド新工場が稼働し、工作機器の営業利益が10億円を超えたら
- 工作機器の利益率を上方修正する。中計の目標に近づいた合図になる。
- メキシコで減損が出たら
- 短期は純損失だが、将来の償却費が減る。内容を見て鋳物の利益率を判断する。
- 電動化で自動車向け鋳物の受注が2割以上減ったら
- 鋳物の数量の見通しを下げ、悲観の確率を上げる。
- 政策保有株の売却が進み、売却額が資本政策に使われたら
- 資本効率の改善として評価し、中立のROEを見直す。
見ておくもの
- 四半期ごとの鋳物・産業機械・工作機器の各セグメント利益
- メキシコ子会社の損益と、自動車・建機向けの受注
- インド新工場の稼働と、チャックの海外売上比率
- 工作機械の受注統計と、中国の競合の動き
- 配当性向の段階と、中計2027の進み
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。資本コストは基本7.5%に品質の合計+1.0%を足した8.5%。10年後の中立のROEは4%台でkを下回るため、PERの上限は1÷k(11.8倍)で、その約8割の9.5倍に置いた。今のPERや同業の倍率には寄せていない。営業利益率は、過去12年の山(9.3%)より低い5.4%で、計画(6.4%)も下回る。全社費用は10年で物価の1.34倍にした。利払いの変化は小さく、純利益÷営業利益は過去5期の中央値前後(0.62)に置いた。政策保有株の配当は利益に入っているので、価値を余り資産に足していない(二重を避けた)。売れる資産の税後は悲観の床だけで使った。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→11.76 倍・やや楽観 PER 9.8→11.76 倍・中立 PER 9.5→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。