結論
エンシュウは浜松の機械の会社だ。売上 192 億円の 6 割強は、二輪車のエンジンや駆動の部品を削る受託加工が占める。残りがマシニングセンタなどの工作機械だ。顧客の 4 割強はヤマハ発動機で、同社は株の 1 割を持つ大株主でもある。
筆者の結論は「割高」だ。株価は帳簿の自己資本の 4 割にすぎないが、ROE(自己資本で稼ぐ力)は過去 10 年の中央値で 2.4% しかない。純負債は 64 億円と時価総額の 1.5 倍あり、利払いが営業利益の半分を食う。
部品加工はアジアの二輪車の伸びで細く稼ぎ続けるだろう。だが工作機械は中国と台湾の機械に押され、赤字と黒字を行き来する。確率で重みを付けた本質価値は、今の時価総額の半分に届かない。帳簿の安さは、稼ぐ力の弱さと借金の重さを映した値段だ。ヤマハとの取引が続く限り会社は残るが、株主が豊かになる道筋はまだ見えない。中計の目標に届いても、ROE は資本コストの半分にとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、エンシュウは持ち続けたい事業とは言いにくい。顧客の 4 割を一社に頼り、その顧客が値段を決める。工作機械は景気の波にさらされ、規模で勝る大手と海外の安い機械に挟まれている。
オーナーとして見ると、稼いだ利益の多くは機械の更新と借金の利払いに消える。営業利益が 4 億円の年に、利払いが 2 億円ある。金利が上がれば、株主に残る利益はさらに薄くなる。自己資本に対して 2% 台しか稼がない会社が利益をため込んでも、そのお金の値打ちは帳簿より小さい。
株価が帳簿の 4 割というのは安く見えるが、それは稼ぐ力と財務の弱さを映している。ヤマハとの関係は強みであると同時に、最大の弱みでもある。金利が上がる世界では、借金の多い小さな会社ほど株主の取り分が先に削られる。筆者は、この値段に安全域は無いと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は部品加工だ。ヤマハ発動機の二輪車のシリンダーやクランクケース、駆動の部品を、自社の工作機械で削って納める。売上は 124 億円で、営業利益 7.4 億円と全社の利益のほぼすべてを稼ぐ。タイ・インドネシア・ベトナム・インドに加工の拠点を持ち、ヤマハの現地の工場のすぐそばで部品を作る。
もう一つが工作機械で、売上は 68 億円だ。立形のマシニングセンタや、自動車の部品の工場向けの専用のラインを作り、保守も請け負う。2026/03 期は 4 億円の赤字で、前の期の 11 億円の赤字から縮めたが、黒字には戻っていない。ドイツの子会社は清算の手続き中だ。
二つの部門は互いに支え合う形をとる。工作機械を作る技術が部品の加工の精度を支え、加工の現場で得た知恵が機械の改良に返る。ただし、顧客の 4 割強がヤマハ発動機一社に集まり、同社が調達の方針を変えれば会社の形ごと揺らぐ。本社の土地の一部は賃貸に回し、年 0.7 億円の家賃を得ている。海外の売上は全体の 4 分の 1 で、残りは国内のヤマハと自動車の部品の工場に向く。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは薄い。部品の受託加工は、ヤマハ発動機との数十年の取引と、海外の工場のそばに拠点を持つ近さが強みだ。だが加工の技術そのものは、アジアの部品メーカーも追いつきつつある。
値段を決める力は顧客の側にある。加工の単価はヤマハとの交渉で決まり、毎年の値下げの要求を受ける。工作機械は日本・ドイツ・台湾・中国の機械がひしめく市場で、汎用機では価格の競争に巻き込まれる。過去 12 年の営業利益率は −3.2〜8.5% と振れが大きく、平均は 3% 前後だ。
財務は重い。有利子負債は 119 億円で、借入に財務制限条項が付く。純資産を一定以上に保ち、経常損益の 2 期連続の赤字を避けなければならない。経営は中計で「売上より利益額」へ舵を切ったが、まだ結果は出ていない。赤字のドイツの子会社を畳む決断は評価できる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
二輪車の市場はアジアで伸びている。インドと東南アジアでは、通勤の足としてのバイクの需要が人口と所得の伸びに沿って増える。ヤマハ発動機もこれらの国で増産を続け、エンシュウの海外の拠点に加工の注文を回す。
ただし、電動化の影が差し始めた。中国では電動の二輪車がすでに主流で、インドや東南アジアの都市でも補助金で広がり始めている。電動の二輪車にはエンジンもシリンダーも要らない。エンシュウが削る部品のかなりの部分は、10 年の間に需要が細る可能性がある。
工作機械は、業界の受注額が名目で年 3〜5% 伸びる見通しだ。物価の分を除いた実質の台数では、年 0〜2% の伸びにとどまる。追い風は AI のデータセンターと半導体の投資、人手不足による自動化の需要だ。向かい風は中国の工作機械の国産化で、中国と台湾の機械が汎用の市場を安値で奪う。エンシュウのような中堅は、専用機と保守のすき間で生きるしかない。大手の DMG 森精機やオークマとは、規模も販売網も比べものにならない。受注の波は大手より深く、谷では赤字に落ちやすい。
資本政策と M&A
還元は細い。配当の総額は年 0.6 億円にとどまり、配当利回りも低い。自社株買いはほとんどしていない。2025/03 期に 23 億円の赤字を出し、財務の立て直しが先に来る。
大株主は取引先持株会が 2 割、ヤマハ発動機が 1 割を持つ。ヤマハが株を持つのは取引を安定させるためで、買い取る気配は無い。だが顧客であり大株主でもあるヤマハが、いずれ加工の会社を手元に寄せる再編はありうる。
中計「Make a New Enshu」は FY2029 に売上 250 億円・営業利益率 4%・ROE 5% を掲げる。借金を返しながらこの目標に届けば、還元を厚くする余地も出てくる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
株価は帳簿の自己資本の 4 割にすぎない。工作機械の赤字はすでに 11 億円から 4 億円まで縮み、中計どおり 2% の黒字に戻れば全社の利益は倍になる。
部品加工は堅い。ヤマハ発動機とは数十年の取引があり、同社は株の 1 割を持つ大株主でもある。インドと東南アジアの二輪車の需要は人口と所得の伸びで増え続け、エンシュウはタイ・インドネシア・ベトナム・インドの拠点でその増産を受ける。部品加工の利益率は 6% あり、中計の目標の 170 億円に届けば営業利益は 10 億円を超える。
電動化の影響も過大に見られている。アジアの二輪車は価格の安さが命で、エンジンの車は 10 年後も多数派だ。工作機械の業界には AI と半導体の投資、人手不足の自動化という追い風が吹く。借金を返し終えれば利払いが減り、ROE は中計の 5% を超えて上がる。ヤマハが大株主として関係を深めれば、いずれ加工の会社を手元に寄せる再編の話が出てもおかしくない。その時、帳簿の 4 割という今の値段は安すぎたと分かる。
慎重な見方
ROE は 10 年の中央値で 2.4% と、資本コストの 4 分の 1 しかない。過去 12 年で赤字は 4 回あり、2025/03 期には 23 億円の赤字を出した。中計の目標はこれまでも達成されてこなかった。
顧客の 4 割強がヤマハ発動機一社だ。値段はヤマハが決め、毎年の値下げの要求を受ける。ヤマハが電動の二輪車に軸足を移すか、加工を現地の安いメーカーに切り替えれば、エンシュウの稼ぎの柱は一気に細る。株を 1 割持つことは、取引を守る約束ではない。
工作機械は中国と台湾の機械に汎用の市場を奪われている。規模で勝る大手と競う力も無い。有利子負債は 119 億円で、借入には財務制限条項が付く。借り換えの金利が上がれば、利払いが営業利益の半分を超える年も出る。帳簿の安さは、この危うさを映している。工作機械の赤字を止めても、部品加工の値下げが続けば利益は横ばいのままだ。10 年前と比べて売上は 3 割減っており、事業の土台そのものが縮んでいる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。部品加工の堅さは認めるが、単一の顧客と借金の重さが価値を大きく削る。工作機械の黒字の定着は 2019〜2020 年の 2 年しか例がない。確率は中立に厚く、悲観の側を楽観の側より重くした。強気の見方の通り中計に届いても、ROE は資本コストに届かない。再編の可能性は確率の中に含め、別には足していない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 760 円48 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 142 円9 億円)。 今の値に割り戻すと 397 円25 億円、今との差 −40.0%、 期待の年率 +3.1%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 1,902 円120 億円 | 286 円18 億円 | +230.4% | +12.7% | 153 円10 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,361 円86 億円 | 206 円13 億円 | +136.7% | +9.0% | 282 円18 億円 |
| 中立 | 40% | 865 円55 億円 | 159 円10 億円 | +54.6% | +4.4% | 409 円26 億円 |
| やや悲観 | 22% | 117 円7 億円 | 79 円5 億円 | −70.3% | −11.4% | 43 円3 億円 |
| 悲観 | 13% | 79 円5 億円 | 32 円2 億円 | −83.2% | −16.4% | 14 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 760 円48 億円 | 142 円9 億円 | +36.3% | +3.1% | 902 円57 億円 |
今の株価時価総額 662 円42 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 7% ヤマハの海外増産と工作機械の立て直しが重なる 利益 11 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 1,902 円120 億円
インドと東南アジアの二輪車の需要が伸び続け、ヤマハ発動機の現地の工場向けにエンジンと駆動の部品の加工が増える。エンシュウはタイ・インドネシア・ベトナム・インドの拠点で受け、部品加工の売上は 200 億円を超える。工作機械は汎用機の価格競争から手を引き、ヤマハや自動車の部品の工場向けの専用ラインに絞って黒字が定着する。営業利益は 20 億円に近づき、借金の返済も進む。それでも ROE は 7% 台で、資本コストには届かない。配当は増えるが、借金の返済が先に来るので還元の厚みは限られる。ヤマハとの関係が深まるほど、値段の交渉の力は顧客の側に残る。
- 部品加工:数量 15.5(加工部品の出荷数(百万個・年、推定))× 価格 1.34(1 個あたり加工の売上(千円・名目))→ 売上 208 億円・営業利益 13 億円。1,549 万個 × 1.34 千円、利益率 6.5%
- 工作機械:数量 300(販売台数(台・年、推定。保守は台数に比例))× 価格 0.38(1 台あたり売上(億円・名目、保守込み))→ 売上 113 億円・営業利益 6 億円。300 台 × 0.375 億円、利益率 5%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 120 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:部品加工が中計の 170 億円を超え、工作機械も黒字の定着まで進む筋書き。工作機械の黒字は 2019〜2020 年の山の 2 年しかなく、低く置いた。
やや楽観 18% 中計どおり部品加工が伸びる 利益 8 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 1,361 円86 億円
部品加工はヤマハ発動機の海外の二輪車の増産に沿って伸び、売上は 190 億円台に乗る。工作機械は台数を追わず、専用機と保守で小さく黒字を出す。全社の営業利益は 15 億円ほどになり、中計の目標を少し上回る。借り換えの金利は上がるが、借金を少しずつ返して利払いを抑える。配当は増えるが、財務の立て直しが優先で、還元の厚みは限られる。ROE は 5〜6% と中計の目標に届くが、資本コストの半分ほどだ。会社としては立ち直ったように見えても、株主が求める利回りにはまだ遠い。ヤマハ一社への依存も、10 年でほとんど薄まらない。
- 部品加工:数量 14.6(加工部品の出荷数(百万個・年、推定))× 価格 1.32(1 個あたり加工の売上(千円・名目))→ 売上 193 億円・営業利益 11 億円。1,462 万個 × 1.32 千円、利益率 5.8%
- 工作機械:数量 280(販売台数(台・年、推定。保守は台数に比例))× 価格 0.37(1 台あたり売上(億円・名目、保守込み))→ 売上 103 億円・営業利益 4 億円。280 台 × 0.367 億円、利益率 3.5%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 86 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中計の FY2029 目標(売上 250 億円・営業利益率 4%)に近い姿。部品加工の利益率 6% は 2026/03 期の実績で、届く範囲にある。
中立 40% ヤマハの下請けとして細く稼ぐ 利益 5 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 865 円55 億円
二輪車の需要はインドと東南アジアで伸びるが、ヤマハ発動機は部品の調達を現地のメーカーにも広げる。エンシュウの加工の数量は 1 割ほど伸びるにとどまり、値段は顧客の値下げの要求で物価をやや下回る。工作機械は中国と台湾の機械に押され、専用機と保守で 2% の利益率を守るのが精一杯だ。全社の営業利益は 11 億円ほどで、借り換えの金利がその 3 分の 1 を食う。会社は続くが、株主の取り分は細い。配当は今の水準を少し上回る程度で、借金の残高もゆっくりとしか減らない。市場がこの会社の評価を大きく変える材料は、10 年後も見当たらない。
- 部品加工:数量 13.6(加工部品の出荷数(百万個・年、推定))× 価格 1.30(1 個あたり加工の売上(千円・名目))→ 売上 177 億円・営業利益 9 億円。1,363 万個 × 1.30 千円(物価の 1.30 倍。値下げ要求)、利益率 5%
- 工作機械:数量 260(販売台数(台・年、推定。保守は台数に比例))× 価格 0.36(1 台あたり売上(億円・名目、保守込み))→ 売上 94 億円・営業利益 2 億円。260 台 × 0.362 億円(1.34 倍)、利益率 2%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.9% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 54 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:部品加工は海外の二輪車の伸びと国内の縮みが打ち消し合い、工作機械は小さな黒字にとどまる中心の筋書き。過去 10 年の利益率の中央値に近い。
やや悲観 22% 工作機械の赤字が続き、利益は利払いで消える 利益 1 億円 · PER 6.0 倍 · 株価時価総額 117 円7 億円
二輪車の電動化がアジアの都市で少しずつ進み、エンジンの部品の加工は伸びなくなる。ヤマハ発動機も一部の加工を自社の工場や現地の会社に移す。部品加工の利益率は 4% に下がり、工作機械は赤字を抜けられない。営業利益は 6 億円前後で、借り換えの金利が上がった利払いを引くと純利益はほとんど残らない。配当は細り、財務制限条項に気を配りながらの経営が続く。工作機械の部門を売るか縮める話も出るが、買い手は見つかりにくい。株主の取り分は、利益よりも資産の切り売りに左右される。中計の目標は二度目の見直しを迫られ、経営への信頼も細る。
- 部品加工:数量 11.8(加工部品の出荷数(百万個・年、推定))× 価格 1.25(1 個あたり加工の売上(千円・名目))→ 売上 147 億円・営業利益 6 億円。1,177 万個 × 1.25 千円、利益率 4%
- 工作機械:数量 220(販売台数(台・年、推定。保守は台数に比例))× 価格 0.35(1 台あたり売上(億円・名目、保守込み))→ 売上 77 億円・営業利益 −1 億円。220 台 × 0.35 億円、赤字
倍率:ROE 1% 前後で k を大きく下回る。価値は稼ぐ力(純利益÷k)までで、借金の重さを見て 1÷k の 6.3 割の 6.0 倍。純負債 64 億円が売れる資産を上回り、床は立たない。
確率:2021〜2024 年のように営業利益が数億円にとどまる年が続く筋書き。工作機械の赤字は過去 12 年で 3 回あり、重く置いた。
悲観 13% ヤマハ向けの受注を失い、財務が揺らぐ 利益 −6 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 79 円5 億円
ヤマハ発動機が電動の二輪車に軸足を移し、エンジンの部品の加工の発注を大きく減らす。部品加工の数量は 3 割落ち、値段も物価に追いつかない。工作機械は中国の機械に汎用の市場を奪われ、赤字が続く。営業損益は赤字に落ち、工場の減損で自己資本が 20 億円ほど削られる。財務制限条項に触れて借入の条件が厳しくなり、配当は止まる。銀行の支えで会社は続くが、少数株主の取り分はわずかになる。工場の土地や機械は売っても帳簿の値にならない。ヤマハが救いの手を出すとしても、それは少数株主に有利な条件にはならない。会社の名前は残っても、株の値打ちはほとんど消える。
- 部品加工:数量 10.4(加工部品の出荷数(百万個・年、推定))× 価格 1.20(1 個あたり加工の売上(千円・名目))→ 売上 125 億円・営業利益 1 億円。1,040 万個 × 1.20 千円(物価に追いつかない)、利益率 1%
- 工作機械:数量 180(販売台数(台・年、推定。保守は台数に比例))× 価格 0.33(1 台あたり売上(億円・名目、保守込み))→ 売上 59 億円・営業利益 −4 億円。180 台 × 0.33 億円、赤字
倍率:赤字なので PBR で今の自己資本 106 億円に掛ける。稼ぐ力はゼロで、純負債 64 億円が売れる資産を上回る。銀行の管理の下で続く会社の少数株主の取り分として 5 億円ほどに置いた。
確率:顧客の 4 割を占めるヤマハ発動機が加工を内製化・海外調達に切り替え、工作機械も縮む構造的な負けの筋書き。財務制限条項がある会社なので重く置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
部品加工
二輪車・四輪車のエンジン・駆動部品の受託加工。ヤマハ発動機向けが中心。
| 数量加工部品の出荷数(百万個・年、推定) | 価格1 個あたり加工の売上(千円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 12.4 | 1.00 | 124 | 7 |
| 10 年後 中立 | 13.6 | 1.30 | 177 | 9 |
取り方:出荷数の開示は無い。シリンダー・クランクケースなどの加工 1 個あたり平均 1 千円前後と見て、売上 123.9 億円から年約 1,240 万個と推定(推定)。数量は実質、物価は単価に入れる。
工作機械
立形マシニングセンタ、専用の加工ライン、保守サービス。
| 数量販売台数(台・年、推定。保守は台数に比例) | 価格1 台あたり売上(億円・名目、保守込み) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 250 | 0.27 | 68 | −4 |
| 10 年後 中立 | 260 | 0.36 | 94 | 2 |
取り方:台数の開示は無い。汎用機と専用ラインの混じった 1 台あたり 0.27 億円(保守込み)と見て、売上 67.6 億円から年約 250 台と推定(推定)。業種のノートの受注額 名目年 3〜5% は実質の台数で年 0〜2%。
リスクと懸念
ヤマハ発動機への依存
売上の 43.8% がヤマハ発動機向けだ。同社が加工を内製化するか、現地の安いメーカーに移せば、部品加工の数量が一気に落ちる。
二輪車の電動化
電動の二輪車にはシリンダーもクランクケースも要らない。インドや東南アジアの都市で電動化が速く進めば、エンジンの部品の加工は構造的に細る。
借金と財務制限条項
有利子負債は 119 億円で、シンジケートローンに純資産と経常損益の条件が付く。赤字が 2 期続けば条項に触れ、借入の条件が厳しくなる。
工作機械の価格競争
中国と台湾の工作機械は性能を上げ、汎用の市場を安値で奪っている。専用機に絞っても受注の波は大きく、赤字の年が続くおそれがある。
南海トラフ地震
生産の拠点が静岡県内に集まっている。大きな地震で工場が止まれば、加工の納入が途切れ、顧客を失う引き金にもなる。
今後の分かれ目
- 工作機械が 2 期続けて黒字になる
- 中計の 2% の利益率が見え、やや楽観の確率を上げる。
- ヤマハ発動機が電動二輪の比率の目標を大きく引き上げる
- エンジン部品の加工の数量の見通しを悲観の側へ寄せる。
- ヤマハ発動機が出資の比率を上げる、または買収の話が出る
- 再編の価値が見えれば、その条件で見直す。
- 経常損益が赤字に戻る
- 財務制限条項に近づき、悲観の確率を上げる。
- 有利子負債が 80 億円を下回る
- 利払いの重さが和らぎ、純利益の見通しを上げる。
見ておくもの
- ヤマハ発動機の二輪車の販売台数(インド・ASEAN)
- 工作機械部門の損益
- 有利子負債と財務制限条項の余裕
- 日本工作機械工業会の受注額
- 部品加工の海外拠点の売上
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価と PBR 0.4 倍を見ずに決めた。どの筋書きでも ROE は k 9.5% を下回るので、PER は 1÷k=9.5 倍を上限に、単一顧客と借金の重さで 6〜9 割に置いた。純負債 64 億円を足した EV÷営業利益は中立で 9 倍で、借金を入れても割高に置いていないことを確かめた。帳簿の安さを倍率に入れていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.6→10.53 倍・やや楽観 PER 8→10.53 倍・中立 PER 7.1→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 3.0%(上限)。赤字の期はあるが、直近は黒字に戻り存続に疑いは無いので上乗せは置かない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 10.50% → 9.75%。