結論
中日本鋳工は、愛知県の鋳物工場で油圧部品や自動車部品の鋳物を作る会社だ。売上の 4 割強を KYB 1 社に頼る。筆者の結論は割高である。今の時価総額は純資産の 3 分の 1 ほどだが、鋳物の利益は薄く、10 年先も資本コストを大きく下回る稼ぎにとどまると見る。
鋳物は日本のものづくりの土台だが、作り手の多くは値段を顧客に決められる。この会社も同じだ。鉄スクラップや電気代が上がっても、値上げを通せる顧客は 3 分の 2 にとどまる。過去 12 年で営業利益率が 5% を超えた年はない。
救いは、工場の土地の一部を貸す賃料と、太陽光の売電が年 1 億円ほどの利益を生むことだ。ただ、借金は約 29 億円あり、金利が上がれば利息がこの利益を食う。純資産は帳簿の上では厚いが、稼ぐ力から見ると、その多くは株主に戻らない資本である。筆者がいちばん気にしているのは、売上の柱が 1 社に寄っていることだ。KYB の調達の方針が変われば、工場の稼働は一気に落ちる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、中日本鋳工は「帳簿は厚いが、稼ぐ力の薄い工場」だ。純資産は 28 億円あり、時価総額はその 3 分の 1 にすぎない。数字だけを見れば安く見える。しかし、帳簿の資本が年 1〜3% しか稼がないなら、その資本の値打ちは帳簿よりずっと低い。
オーナー利益、つまり設備の更新に要るお金を引いた後に株主が自由に使える現金で見ると、この 10 年はほぼゼロだった。減価償却の 3 億円は、古い設備を物価の上がった値段で置き換えれば足りなくなる。利益が出た年も、その多くは工場に戻っていく。
顧客の 4 割が 1 社という形も、オーナーとしては気がかりだ。KYB の調達の方針ひとつで、売上の柱が揺らぐ。賃貸と売電の利益は安定しているが、借金の利息がそれを食う。
安全域があるとすれば、土地と設備を売った時の値打ちだが、借金が先に返される。少数株主が清算を決めることもできない。筆者はこの値段でも、払う値段に見合う安全域は無いと見る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は鋳物の部品だ。溶かした鉄を砂の型に流し込み、油圧ショベルの油圧部品や自動車の部品の素材を作る。売上 47 億円のうち、油圧部品が 27 億円、自動車部品が 15 億円、ポンプ部品が 4 億円である。
最大の顧客は KYB で、売上の 43% を占める。KYB は油圧の機器で小型の建設機械に強く、その部品の鋳物を中日本鋳工が納める。売上の 95% は自動車と小型建機の業界向けで、両業界の生産の波がそのまま受注に響く。
2018 年には近くの共栄鋳造所から鋳物の事業を引き継ぎ、碧南工場として動かしている。タイの子会社は 2026 年 2 月に解散を決め、海外からは手を引いた。今の 3 か年計画は、鋳物を作るだけでなく削って仕上げるところまで一貫して請け負う姿を目指す。
鋳物のほかに、土地を貸す不動産賃貸と、太陽光の売電がある。売上は合わせて 2 億円ほどだが、利益は 1 億円を超え、鋳物の赤字を埋める役を果たしている。社員は 136 人で、そのうち 117 人が鋳物の現場にいる。小さな工場が、大口の顧客の注文を丁寧にこなして生きる会社だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは小さい。鋳物は技術のいる仕事だが、同じ部品を作れる鋳物工場は国内にも海外にもある。顧客の KYB は値段の交渉で強い立場にあり、原料高を値上げで取り戻すのに時間がかかる。
資本効率は低い。過去 10 年の ROE の中央値は 1.6% で、赤字の年が 4 回ある。2024 年 3 月期に営業利益率 3.4% まで戻したが、翌期は KYB の減産で再び赤字になった。売上が 1 割落ちると利益が消える、固定費の重い工場の典型だ。
財務も強くない。自己資本比率は 3 割強あるが、純負債は約 29 億円で純資産とほぼ同じだ。工場の設備は古くなり、更新には毎年お金がいる。減価償却は年 3 億円で、物価で上がった新しい設備の値段で更新すれば、現金はもっと出ていく。
経営は受注価格の適正化を最優先に掲げ、課題を正しく見ている。ただ、値決め力の弱さは経営の努力だけでは変えにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の銑鉄鋳物の生産は、長い目で見て縮んでいる。自動車のエンジン部品は、電気自動車が増えるほど要らなくなる。工場は人手不足と電気代の高さに悩み、後継ぎのいない中小の鋳物工場は毎年減っている。
一方で、油圧の部品は残る。小型の油圧ショベルは世界の都市の工事で使われ、日本の建機メーカーはこの分野で強い。KYB の油圧機器もその一部で、需要は景気の波を受けながらも 10 年で大きくは減らないと見る。建機の電動化が進んでも、油圧の仕組みはしばらく使われる。
値段の面では、鉄スクラップと電気代の上昇を、製品の値段にどこまで写せるかが勝負になる。同業が減るほど、残った工場の交渉力は少しずつ強まる。顧客にとって、近くで品質の安定した鋳物を作れる工場は貴重になる。ただ、大口の顧客は海外の鋳物工場からも調達でき、値上げには限りがある。
10 年の中立では、この会社の鋳物の量は自動車部品の縮小で 1 割ほど減り、値段は物価並みに上がると見る。利益率は過去の平均を少し上回る程度にとどまる。賃貸と売電の利益は景気に左右されず、会社の底を支え続ける。
資本政策と M&A
還元は細い。配当は総額で年 0.1 億円ほどだ。会社は安定配当と財務の強化の両立を掲げるが、赤字の年が続いたため、配当は 2024 年 3 月期の 3 分の 1 に下がった。自社株買いの実績は小さい。
資本の使い方には疑問が残る。2018 年に共栄鋳造所の事業を引き継ぎ、タイに子会社を作ったが、タイは 2026 年に解散を決めた。海外の挑戦は損を出して終わった形だ。2021 年以降は土地の賃貸と太陽光に手を広げ、これは安定した利益を生んでいる。
買収の話は出ていない。時価総額 10 億円ほどの小さな会社で、取引先の KYB や同業の鋳物会社が設備と人を目当てに買う可能性はある。後継ぎのいない鋳物工場の再編は業界の流れでもある。筆者はこの上振れを筋書きに入れていない。株主優待は無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
最悪の時期は過ぎた。2025 年 3 月期の大きな赤字は KYB の減産と海外子会社の不振が重なった結果で、タイの子会社は解散を決めて手を引いた。2026 年 3 月期の鋳物の赤字は前期の 3 分の 1 に縮み、会社は 2027 年 3 月期に黒字に戻ると見込む。
業界の再編は追い風になる。後継ぎのいない鋳物工場は毎年廃業し、残った工場に仕事が集まる。KYB にとっても、近くで安定して鋳物を作れる工場は欠かせない。受注価格の適正化が進めば、2024 年 3 月期の利益率 3.4% は再び届く。削って仕上げる工程まで一貫して請け負えば、1 個あたりの売上も上がる。
資産も厚い。純資産は 28 億円あり、時価総額はその 3 分の 1 だ。賃貸と売電は毎年 1 億円を超える利益を生み、景気にほとんど左右されない。利益が少し戻るだけで、今の値段は割安に見える。KYB や同業による買収の可能性もある。
慎重な見方
利益が戻る保証は無い。過去 12 年で営業利益率が 5% を超えた年は無く、黒字の年もすぐ赤字に戻った。KYB は値段の交渉で強く、原料高の転嫁は取引先の 3 分の 2 にしか効かない。物価 3% の世界で電気代と人件費は毎年上がり、値上げが追いつかない年が出る。
自動車部品は先細る。電気自動車が増えれば、エンジンまわりの鋳物は要らなくなる。売上の 3 割を占める自動車部品が縮めば、工場の固定費が重くなる。建機も、中国の建機メーカーの台頭で日本の建機の量が伸びる保証は無い。
借金も重い。純負債は約 29 億円で、純資産とほぼ同じだ。金利が 3.5% に上がれば利息は年 1 億円に増え、賃貸と売電の利益をほぼ食う。設備の更新には物価の上がった値段がかかる。純資産が厚く見えても、稼がない資本は株主にとって帳簿ほどの値打ちが無い。タイの失敗は、資本の使い方の下手さも示した。人手の面でも、熱く重い鋳物の現場に若い人を集めるのは年々難しくなる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。黒字に戻る見込みは本物だが、戻っても利益率は 2〜3% で、資本コストに届かない。値決め力の弱さと KYB への依存、自動車部品の縮小、借金の利息の上昇という構造は変わらない。確率は中立を中心に、やや楽観にも相応の重みを残したが、悲観側の深さを重く見た。純資産の厚さは安心の材料だが、稼がない資本は株主の値打ちにならない、という点で慎重な見方に分がある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 464 円10 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 59 円1 億円)。 今の値に割り戻すと 215 円5 億円、今との差 −49.4%、 期待の年率 +2.1%(資本コスト 10.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 1,183 円26 億円 | 157 円4 億円 | +214.6% | +12.1% | 107 円2 億円 |
| やや楽観 | 20% | 791 円18 億円 | 99 円2 億円 | +109.0% | +7.7% | 178 円4 億円 |
| 中立 | 40% | 486 円11 億円 | 54 円1 億円 | +26.7% | +2.4% | 216 円5 億円 |
| やや悲観 | 20% | 60 円1 億円 | 22 円1 億円 | −80.7% | −15.2% | 16 円0 億円 |
| 悲観 | 12% | 38 円1 億円 | 4 円0 億円 | −90.0% | −20.5% | 5 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 464 円10 億円 | 59 円1 億円 | +22.7% | +2.1% | 523 円12 億円 |
今の株価時価総額 426 円9 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 10.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 一貫受注で単価が上がり、KYB の量も戻る 利益 3 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 1,183 円26 億円
小型の油圧ショベルの世界の需要が伸び、KYB の油圧機器の量が増える。同業の廃業で仕事が集まり、鋳物の量は 1 割強増える。
削って仕上げる工程まで一貫して請け負う形が定着し、1 トンあたりの売上は物価を上回って上がる。原料高を値上げで写す仕組みも全ての顧客に広がる。鋳物の利益率は 4.5% に届き、賃貸と売電の利益も加わって、会社の営業利益は 4 億円を超える。
借金は利益で少しずつ返し、利息の増加はおさえられる。配当も増える。それでも ROE は 7% ほどで、資本コストには届かない。工場の資本の重さは変わらないからだ。
- 鋳物(油圧・自動車・ポンプの部品):数量 10,500(鋳物の販売量(トン、推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 72 億円・営業利益 3 億円。10,500 トン × 1 トン 69 万円(今の 1.38 倍)、利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.2% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 26 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注価格の適正化と加工までの一貫受注がそろい、過去の山を超える利益率に届く筋書き。過去 12 年で 5% を超えた年が無いので低く置いた。
やや楽観 20% 受注価格が改善し、黒字が定着する 利益 2 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 791 円18 億円
受注価格の適正化が進み、原料高の転嫁が多くの顧客に広がる。鋳物の量は今とほぼ同じで、自動車部品の縮小を油圧部品が埋める。
1 トンあたりの売上は物価を少し上回って上がり、鋳物の利益率は 3% 台に乗る。賃貸と売電の利益が上乗せされ、会社の営業利益は 3 億円ほどになる。
利息は金利の上昇で年 1 億円近くに増えるが、黒字は続く。配当は少しずつ増える。ただし ROE は 5% ほどで、資本コストの半分にとどまる。帳簿の資本の多くは、株主に戻らないまま工場に残る。タイから手を引いた後は国内の工場に集中し、無理な拡大はしない。
- 鋳物(油圧・自動車・ポンプの部品):数量 9,500(鋳物の販売量(トン、推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 65 億円・営業利益 2 億円。9,500 トン × 1 トン 68 万円、利益率 3.2%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.3% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 18 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の 2027〜2028 年 3 月期の黒字の見込みが定着し、少しずつ利益率が上がる筋書き。最悪期を抜けた手応えはあり、相応の確率を置いた。
中立 40% 細い黒字で資本を回す 利益 1 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 486 円11 億円
電気自動車の広がりで自動車部品の鋳物は細り、鋳物の量は 1 割ほど減る。油圧部品は KYB の生産の波に揺られながらも量を保つ。
値段は物価並みに上がるが、電気代と人件費の上昇がそれを食い、鋳物の利益率は 2% 前後にとどまる。賃貸と売電の利益が会社の黒字を支える形が続く。
金利の上昇で利息は年 1 億円に増える。純利益は 1 億円ほどで、配当は細く続く。設備の更新には物価の上がった値段がかかり、減価償却を上回る現金が出ていく年もある。工場は動き続けるが、株主の取り分は大きく育たない。買収の話も出ず、小さな鋳物工場として淡々と続く 10 年だ。
- 鋳物(油圧・自動車・ポンプの部品):数量 8,500(鋳物の販売量(トン、推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 57 億円・営業利益 1 億円。8,500 トン × 1 トン 67 万円、利益率 2%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.5% が k 10.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.0 倍。全体の PER 10 倍、時価総額 11 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:自動車部品が細り、油圧部品が支える形で、利益率は過去の平均を少し上回る程度にとどまる筋書き。過去の実績に近く、いちばん起こりやすいと見た。
やや悲観 20% 値上げが追いつかず、赤字すれすれ 利益 0 億円 · PER 6.7 倍 · 株価時価総額 60 円1 億円
鉄スクラップと電気代が上がり続け、値上げを通せない顧客の分だけ利益が削られる。自動車部品の縮小は中立より速く、鋳物の量は 2 割減る。
鋳物の利益は黒字と赤字の境目を行き来し、会社の利益は賃貸と売電だけになる。金利の上昇で利息が増え、純利益はほとんど残らない。配当は細る。
純資産は帳簿の上では保たれるが、稼ぐ力はほぼ無い。土地と設備は借金の担保として銀行の側にあり、少数株主に戻る道は見えにくい。人手不足で現場の人も減り、工場の一部を止める判断も迫られる。設備の更新も先送りになり、品質の面で顧客の評価が落ちる心配も出る。
- 鋳物(油圧・自動車・ポンプの部品):数量 7,500(鋳物の販売量(トン、推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 0 億円。7,500 トン × 1 トン 67 万円、利益率 0%
倍率:事業の ROE 0.7% が k 10% 以下なので、ためた利益は額面未満で PER の上限は 1÷k=9.5 倍。EV(時価総額+純負債 約 29 億円)÷営業利益は 30 倍ほどだが、利益が細すぎて意味を持たない。稼ぐ力がほぼ無く、ROE が k を大きく下回るので、PBR は 0.05 倍まで下がる。土地と設備は純負債 29 億円の担保で売れる資産の床にならないと見て、稼ぐ力(純利益÷k)の手前の上限の 7 割の 6.7 倍に置いた。
確率:原料高と電気代の上昇を値上げで写しきれず、鋳物が赤字すれすれで続く筋書き。2019〜2023 年に赤字が続いた実績から、楽観側と同じ重みを置いた。
悲観 12% KYB の調達先の見直しで柱を失う 利益 −2 億円 · PBR 0.0 倍 · 株価時価総額 38 円1 億円
KYB が油圧部品の鋳物の調達を海外の工場や大手の鋳物会社に集め、中日本鋳工の受注は大きく減る。自動車部品の縮小も重なり、鋳物の量は 4 割減る。
工場の固定費が残り、鋳物は大きな赤字になる。賃貸と売電の利益では埋めきれない。設備の減損と工場の縮小で純資産は減り、配当は止まる。借金の返済のために土地を売るが、急いで売るほど安くなる。
最後は同業への事業の譲渡か、工場の閉鎖になる。少数株主には、借金を返した後のわずかな資産しか残らない。鋳物の需要はあっても、それを作るのがこの会社である必要は無い、という負け方だ。
- 鋳物(油圧・自動車・ポンプの部品):数量 5,600(鋳物の販売量(トン、推定))× 価格 0.01(1 トンあたりの売上(億円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 −2 億円。5,600 トン × 1 トン 65 万円、利益率 −6%
倍率:赤字なので PBR で、今の自己資本 28.4 億円に掛けた。売れる資産は土地と賃貸・売電の設備だが、純負債 29 億円が先に返され、減損と閉鎖の費用も出るので、普通株に残るのはわずかと見て 0.03 倍に置いた。
確率:KYB が調達先を海外や他の工場に移し、売上の柱を失う筋書き。売上の 4 割強が 1 社という形の弱さから、無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
鋳物(油圧・自動車・ポンプの部品)
銑鉄鋳物の部品。油圧部品が 6 割弱、自動車部品が 3 割、ポンプ部品が 1 割弱。
| 数量鋳物の販売量(トン、推定) | 価格1 トンあたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9,300 | 0.01 | 47 | −2 |
| 10 年後 中立 | 8,500 | 0.01 | 57 | 1 |
取り方:販売量は開示されていない。鋳鉄の部品(加工前の素材が中心)の平均を 1 トン 50 万円前後と見て、売上 46.58 億円から約 9,300 トンと推定した。物価と加工までの一貫受注による単価の上昇は 1 トンあたりの売上に入れる。
リスクと懸念
KYB 1 社への依存
売上の 4 割強が KYB 向けで、その生産の波と調達の方針がそのまま受注に響く。KYB が調達先を海外や大手に集めれば、売上の柱を一度に失う。
原料と電気代の転嫁
鉄スクラップと電気代は鋳物の原価の大きな部分を占める。値上げで写せるのは取引先の 3 分の 2 にとどまり、物価 3% の世界では転嫁の遅れが毎年の利益を削る。
自動車部品の先細り
売上の 3 割を占める自動車部品は、電気自動車が増えるほど要らなくなるエンジンまわりが中心だ。量が減れば工場の固定費が重くなる。
借金と金利
純負債は約 29 億円で純資産とほぼ同じ。金利が 3.5% へ上がれば利息は年 1 億円に増え、賃貸と売電の利益をほぼ食う。設備の更新でも借金が増えやすい。
設備の老朽化と人手
鋳物工場は熱く重い仕事で、人手の確保が年々難しい。古い設備を物価の上がった値段で更新するお金と、人件費の上昇の両方が利益を圧迫する。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期に会社の見込みどおり営業黒字に戻ったら
- やや楽観の確率を少し上げる。鋳物の部門単体で黒字かを確かめる。
- 鋳物の利益率が 2 期続けて 3% を超えたら
- 受注価格の適正化が定着したと見て、中立の利益率を上げる。
- KYB 向けの売上の比率が大きく下がったら
- 調達先の見直しが始まったと見て、悲観に重みを移す。
- 借入金が増え、利息が年 1 億円を超えたら
- 中立の純利益を下げ、やや悲観に寄せる。
- 同業や KYB による買収の話が出たら
- 買収の値段と純資産・土地の値打ちを比べて見直す。筋書きに入れていない上振れである。
見ておくもの
- 鋳物のセグメントの利益率
- KYB 向けの売上の比率
- 鉄スクラップと電気代の価格と転嫁の進み具合
- 純有利子負債と利息
- 加工までの一貫受注の売上
倍率と資本コストの決め方
k は 10%(基本 7.5%+quality 3.0%)。各筋書きの ROE は 1〜7% で k を下回るので、PER の上限は 1÷k の 9.5 倍で、中立はその 8.5 割に置いた。今の PBR 0.3 倍台は根拠にしていない。帳簿の資本が k を大きく下回る稼ぎしか生まないので、価値は純資産の 3 割を切る。悲観は赤字なので今の自己資本に PBR を掛け、純負債が先に返る形を入れた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.57→10 倍・やや楽観 PER 8.1→10 倍・中立 PER 8.1→10 倍)。
資本コスト 10.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。