結論
パンチ工業は、プラスチックや金属を成形する金型に組み込む、小さな部品を作る会社だ。製品はエジェクタピン(成形品を押し出す棒)やパンチ・ダイ(金属を打ち抜く刃)で、売上は421億円。世界シェアは約6%で2位、中国では約10%で1位にあたる。
筆者の結論は「やや割高」だ。事業の質は悪くない。消耗品なので注文が繰り返し入り、財務も堅い。しかし、稼ぐ力は資本コストに届いていない。営業利益率は5%前後、ROEは4%台で、会社自身も2029年3月期の目標を8%にとどめている。
売上の59%は中国が占める。国内は3年連続で縮んでいる。成長を期待されるFA(工場の自動化)機器は、まだ売上の7%で、買収した会社ではのれんを減損した。
上振れは、ミスミとの提携で原価が下がり、特注品への特化が利益率を押し上げる時に来る。会社の計画では2029年3月期に営業利益34億円だが、前の中期計画の未達を考え、筆者は6割ほどしか織り込んでいない。下振れは、中国の自動車向けが崩れ、国内の縮小も止まらない時に来る。確率は慎重な側へ少し寄せた。FAと合わせて10年で売上を1.5倍にする長期ビジョンもあるが、それは評価の外に置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、まず問うのは、10年後もこの事業があるかだ。金型は製造業の根幹で、消耗品は必ず交換される。EVになっても、プラスチックと金属の成形は残る。事業は長く続く。
堀は、特注品にだけある。国内と中国で首位で、図面に合わせる加工力と納期が武器だ。しかし標準品は、ミスミと競合する。全体の利益率が5%前後にとどまるのは、堀が浅い分だ。株主のものになる利益は、営業利益の半分ほどだ。中国の税が重い。
経営者の資本配分は、課題が多い。ROEは5%前後で、10年間、資本コストに届かなかった。高成長を期待するFAは、のれんを減損した。評価できるのは、ROICとROEの目標を掲げ、DOEの下限を決め、配当性向を高めた点だ。
安全域は、財務の堅さにある。ただし、現金は海外の子会社に多く、運転資金が重い。分けて数える余った現金は、見当たらない。
結論は、事業は良いが、値段が追いついていないというより、価値が値段と釣り合っている。割安になるのは、特注品への特化で利益率が6%を超え、ROEが資本コストを上回る道筋が見えた時だ。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、金型を使うメーカーの「消耗」だ。自動車、電子部品、家電の工場では、プラスチック成形や金属プレスの金型が日々動く。金型自体は何年も使うが、その中で突いたり、打ち抜いたりする部品は摩耗し、代表的なパンチで30万回ほどが寿命になる。パンチ工業は、この交換部品を売る。
売上の約4割は標準品で、カタログに載せてネットで売る。約6割は特注品で、顧客の図面に合わせて0.01ミリ単位で削る。特注品は粗利が高い。標準品はネット注文が7割を超え、営業費用が軽い。営業利益率で見ると、両者に大きな差はない。
製品別では、プレス金型部品が半分強、プラスチック金型部品が3分の1、残りがFA部品だ。顧客は国内に約6千社、中国に約8千社ある。業種では自動車が42%、電子部品・半導体が17%、家電・精密機器が9%を占める。
製造は、自社工場で6割、約300社の協力工場で4割を作る。原価は、材料が1割、人件費が3割、外から買う製品が4割だ。鋼の値段より、人と外注の値段が利益を左右する。
FA機器は、金型部品に次ぐ柱にしたい事業だ。2022年にFA装置のASCeを5.5億円で買ったが、計画に届かず、2026年2月にのれん4.9億円を減損した。2025年12月には、実験室の自動化(ラボラトリーオートメーション)にも参入した。従業員は連結で3,480人、うち海外が2,804人を占める。生産の大半は、人の手と熟練に頼る。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、特注品にある。顧客の図面どおりに微細な加工をし、短い納期で届ける力は、熟練の技術者と2千台超の機械、300社の協力工場の組み合わせで成り立つ。特注品では、国内も中国も同社が首位とされ、大きな競合はいない。
一方で、標準品の堀は薄い。最大手のミスミ(世界シェア約10%超)が、同じ品物をカタログと速い納期で売る。標準品の品目の9割は、ミスミも扱う。2024年に提携を結んだのは、この競争を、協力に変える狙いがある。
収益性は低い。営業利益率は過去10年で2.4%〜7.7%、平均は5%台にとどまる。ミスミの金型部品事業は9%だ。ROEの中央値は5%で、資本コストを下回る。理由は、人件費の重い製造を、国内に676人、海外に2,804人抱えているからだ。
財務は堅い。自己資本比率は67%、純現金は34億円で、利払いの心配はない。ただし、運転資金は重い。売掛金が128億円、在庫が48億円ある。
弱点は二つある。ひとつは、国内の縮小と合理化の遅れだ。2023年の合理化で国内の人員を3割減らしたが、その効果は十分に出ていない。もうひとつは、FAの出遅れだ。筆者は、後者が、成長の看板と実力の隔たりとして最も気になる。会社は、売上の拡大よりも利益率の改善を優先すると述べている。方向としては正しい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
金型の世界市場は、約15兆円ある。2017年の11.9兆円から2026年の15.2兆円へ、名目で年3%ほど伸びた。金型部品に限ると、会社の推計で約6,000億円の市場だ。国内の金型の生産額は、2004年から2022年にかけて2割強〜3割ほど縮んだ。メーカーが海外へ出たためだ。
伸びているのは中国とアジアだ。中国は自動車の電動化と部品の内製化が進み、金型の需要がある。パンチ工業はこの波に乗り、2017年に47%だった中国の売上比率を59%に上げた。
競合の筆頭はミスミだ。標準品の品揃えと速さで勝る。ただし、特注品では競合していない。中国には現地の中小の金型部品メーカーが多く、価格競争が激しい。日本の同業は少なく、大手はほぼミスミと同社の2社だ。
需要は景気に敏感だ。2020年3月期は営業利益が67%減り、純損失になった。自動車と電子部品の生産が落ちると、金型の消耗も減る。その後の回復は、ほぼ売上と同じ速さで戻った。
値段は、原材料と人件費の上昇を受けて、標準品を2022年と2025年に10〜20%値上げした。競合も追随したため、通った。物価が年3%続く世界では、この値上げが続けられるかが、利益率を決める。
10年の標準像は、金型の消耗が実質で年0.5%ほど伸び、価格が物価並みに上がる形だ。FAは数量で伸びる。国内は縮み、中国とアジアが補う。ミスミとの協業が、標準品の物流費と価格競争を和らげるかが、もうひとつの分かれ目だ。
資本政策と M&A
株主還元の方針は、連結配当性向30%以上、かつ株主資本配当率(DOE)3%以上のどちらか高い方だ。2023年1月に決めた。2026年3月期の配当性向は63%と、利益の大半を配当に回した。自己資本比率が60%を超えれば、自社株買いも検討すると述べている。
2029年3月期までの中期計画では、営業のキャッシュ約72億円と借入約30億円を、設備45億円、M&A30億円、還元約17億円、BCP約10億円に使う。M&Aは枠が大きいが、これまでの実績はASCeののれん減損が目立つ。筆者は、買収の巧拙を、資本配分で最も警戒している。
ミスミとの資本業務提携は、2024年10月に決まった。ミスミが300万株(議決権の約11%)を引き受け、同社も同額のミスミ株を市場で買った。持ち合いの形だが、調達資金は特注品の設備投資に使う。物流は2025年10月に統合し、2029年3月期までに累計6〜8億円の利益を見込む。
筆頭株主は、創業者の森久保氏一族の資産管理会社で、約14%を持つ。ミスミが約11%、海外の金融機関が約9%と続く。買収防衛策がある。ミスミが買い増す可能性は残るが、同社は「対等なパートナー」と述べている。
減価償却は年7億円前後とみる(推定)。償却は取得時の値段のままで、物価では増えない。45億円の設備投資で新しい機械が入ると、新しい値段の償却が足される。投資が償却を上回る分は、現金が減る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
特注品に絞る戦略が、利益率を押し上げる。特注品の比率は、64%から68%へ上がる。粗利の高い特注品が増え、標準品はミスミとの物流統合とネット注文で、販売費が下がる。2029年3月期に営業利益34億円、利益率6.8%という計画は、実現できる。
ミスミとの提携は、始まったばかりだ。物流の統合は2025年10月に済み、トラックの荷待ち時間を月110時間減らした。次は、生産と調達の相互利用だ。累計6〜8億円という利益の目標は、保守的に見える。
FAは、人手不足を背景に長く伸びる。国内のロボット産業の製造分野は、2025年の1.6兆円から2035年に2.7兆円になる見通しだ。特注の治具や部品は、その入口だ。ラボラトリーオートメーションへの参入で、顧客の裾野が広がる。
資本政策も変わった。配当性向30%以上とDOE3%以上の下限を持ち、自己資本比率が60%を超えれば自社株買いも検討する。純現金は34億円あり、還元の余力がある。
足元の数字も上向いた。2027年3月期の営業利益は、期初の予想から上方修正され、24億円になる。国内売上は第1四半期に13%増え、工場の稼働が上がり、原価率が下がった。2022年3月期には営業利益率7.7%を出した実績がある。
慎重な見方
稼ぐ力は、まだ資本コストに届いていない。営業利益率は5%前後で、ROEは4%台だ。計画の目標も、ROE8%にとどまり、資本コスト並みだ。前の中期計画では、グループの生産拠点の統廃合が想定の効果を出せなかった。FAは日本で足踏みした。計画の達成力に疑問が残る。
売上の59%を中国が占める。米中の摩擦や不動産不況、自動車の価格競争が続けば、需要が崩れる。中国には現地の金型部品メーカーが多く、価格が下がりやすい。中国の利益は、配当で日本に戻す際に税がかかる。純利益が営業利益の半分にとどまる理由だ。
国内は縮み続けている。売上は2017年3月期の159億円から110億円に減った。2023年の合理化で人員を3割減らしても、利益は回復していない。
ミスミの存在も重い。標準品の9割はミスミも扱い、同じ価格帯で売る。提携は協力になるが、ミスミが標準品の主導権を握り続ける。同社の営業利益率が5%台で、ミスミが9%の理由は、構造的な差だ。
FAは、買収したASCeでのれんを全額近く減損した。成長の柱にするには、規模も技術も不足している。M&A枠の30億円が、同じ失敗を繰り返す恐れもある。
どちらに重みを置いたか
特注品の強みと、ミスミとの提携の効果は、強気の見方が正しい。しかし、利益率が計画どおり上がるかは、前の中期計画の未達が示す通り、慎重な見方の疑いが重い。そこで、会社計画の営業利益34億円の6割ほどを中立に織り込んだ。
確率は、楽観を6%、やや楽観を20%と薄く置き、中立を38%、やや悲観を24%、悲観を12%とした。計画の達成力への疑いと、中国頼みの構造を理由に、慎重な側へ少し寄せている。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 762 円210 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 277 円76 億円)。 今の値に割り戻すと 562 円155 億円、今との差 −2.2%、 期待の年率 +6.1%(資本コスト 7.5%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 6% | 1,621 円447 億円 | 435 円120 億円 | +257.6% | +13.6% | 123 円34 億円 |
| やや楽観 | 20% | 1,134 円313 億円 | 344 円95 億円 | +157.1% | +9.9% | 296 円82 億円 |
| 中立 | 38% | 884 円244 億円 | 290 円80 億円 | +104.3% | +7.4% | 446 円123 億円 |
| やや悲観 | 24% | 346 円96 億円 | 225 円62 億円 | −0.7% | −0.1% | 137 円38 億円 |
| 悲観 | 12% | 156 円43 億円 | 145 円40 億円 | −47.7% | −6.3% | 36 円10 億円 |
| 加重平均 | 100% | 762 円210 億円 | 277 円76 億円 | +80.6% | +6.1% | 1,039 円286 億円 |
今の株価時価総額 575 円159 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 6% 特注品への特化とミスミ提携が効き、FAが育つ 利益 29 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 1,621 円447 億円
会社の中期計画をほぼ超えて実現する筋書きだ。特注品への特化で粗利が上がり、ミスミとの物流・調達の統合で原価が下がる。金型部品の営業利益率は7%台に乗り、FAは売上が3.5倍の135億円、利益率9%に育つ。ラボラトリーオートメーションが当たり、顧客の裾野が広がる。中国の自動車向けは堅調で、国内も底を打つ。営業利益は56億円、純利益は29億円。配当性向は4割に上がり、自社株買いも加わって、10年の還元は120億円。ROEは10%近くまで上がり、資本コストを超える。2034年度に営業利益80億円という長期ビジョンには届かないが、道筋は見える。国内は特注品への特化で底を打ち、海外調達の比率も上がる。減価償却は年11億円前後に増える。
- プラスチック金型部品:数量 9.8(出荷する部品の数(百万個・年、推定))× 価格 22(100万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 213 億円・営業利益 15 億円。営業利益率7.0%
- プレス金型部品:数量 11.5(出荷する部品の数(百万個・年、推定))× 価格 34(100万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 391 億円・営業利益 29 億円。営業利益率7.5%
- FA機器・部品:数量 1.8(出荷する製品の数(百万個・年、推定))× 価格 78(100万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 136 億円・営業利益 12 億円。営業利益率9.0%
倍率:事業の純利益 29 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.31 倍、時価総額 447 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:特注品への特化、ミスミ提携、FA育成、中国の堅調が全部そろう必要がある。前の中期計画の未達を考えると、確度は低い。
やや楽観 20% 計画の大半を実現する 利益 23 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 1,134 円313 億円
VC28をおおむね達成し、その後も緩やかに利益率が上がる筋書きだ。金型部品の営業利益率は6%台に上がり、特注品比率の上昇とミスミとの協業が効く。FAは売上が2.6倍の98億円になり、利益率は7%に届く。国内の縮小は止まらないが、中国とアジアが補う。営業利益は44億円、純利益は23億円。還元はDOE3%の維持と自社株買いで、10年に95億円。ROEは8%近くまで上がり、資本コストにようやく並ぶ。減価償却は、新しい機械の分が加わって年10億円前後になる。会社の計画に沿った、堅実に成功する姿だ。国内の縮小が止まり、中国とアジアが売上を引っ張る。ただし、前の中期計画の未達があるため、利益率の改善は計画の下限にとどまる。
- プラスチック金型部品:数量 9.4(出荷する部品の数(百万個・年、推定))× 価格 22(100万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 202 億円・営業利益 13 億円。営業利益率6.3%
- プレス金型部品:数量 10.9(出荷する部品の数(百万個・年、推定))× 価格 34(100万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 368 億円・営業利益 24 億円。営業利益率6.6%
- FA機器・部品:数量 1.3(出荷する製品の数(百万個・年、推定))× 価格 76(100万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 98 億円・営業利益 7 億円。営業利益率7.0%
倍率:事業の純利益 23 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.8% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 7.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.6 倍。全体の PER 13.65 倍、時価総額 313 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:VC28の目標は達成を見込める範囲にあるが、前の計画の未達という実績がある。成功しても利益率は計画の下限にとどまりやすい。
中立 38% 利益率は少し改善し、物価並みに伸びる 利益 18 億円 · PER 13.3 倍 · 株価時価総額 884 円244 億円
中国とアジアが国内の縮小を補い、利益率が少しだけ上がる標準の筋書きだ。金型の消耗は、数量で年0.5%ほど伸び、価格は物価に沿って3割強上がる。プラスチックとプレスの金型部品は、利益率が5.6〜5.8%に改善する。ミスミとの協業は一定の効果を出すが、会社の計画ほどは出ない。FAは売上が2倍の74億円で、利益率は5%に届く。営業利益は35億円、純利益は18億円。還元はDOE3%で10年に80億円。ROEは6%台と、資本コストをわずかに下回る。減価償却は、新しい機械の分を含めて年9億円前後になる。2027年3月期の上方修正は、土台に織り込んでいない。FAは単価の高い装置が中心で、技術の進歩で値下がりしやすいため、価格は物価の6割ほど(1.2倍)にとどめた。
- プラスチック金型部品:数量 9.1(出荷する部品の数(百万個・年、推定))× 価格 21(100万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 195 億円・営業利益 11 億円。営業利益率5.6%
- プレス金型部品:数量 10.5(出荷する部品の数(百万個・年、推定))× 価格 34(100万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 352 億円・営業利益 20 億円。営業利益率5.8%
- FA機器・部品:数量 1.0(出荷する製品の数(百万個・年、推定))× 価格 74(100万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 74 億円・営業利益 4 億円。営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 7.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.3 倍。全体の PER 13.33 倍、時価総額 244 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:数量は消耗品なので堅く、価格は物価並みに通る。ただし利益率の改善は、会社の計画より控えめにみた。最も確度が高く、厚く置いた。
やや悲観 24% 中国が鈍り、利益率が上がらない 利益 11 億円 · PER 8.5 倍 · 株価時価総額 346 円96 億円
中国の景気の減速と価格競争で、数量が減る筋書きだ。国内は縮み続け、中国も自動車向けが鈍る。価格は物価に届かず、標準品の値上げが通りにくくなる。金型部品の営業利益率は4%台に低下する。FAは売上が1.4倍の49億円にとどまり、利益はほぼゼロ。M&Aもうまくいかず、のれんの減損が再び出る。営業利益は21億円、純利益は11億円で、今の水準の1.3倍ほど。還元は62億円。ROEは4%台にとどまる。優良な小さい会社という評価は残るが、成長の看板は外れる。FAの単価は技術の進歩で下がり、価格は物価に届かない。配当はDOE3%を保つのがやっとで、自己資本比率は70%に近づき、余った資本が積み上がる。
- プラスチック金型部品:数量 8.5(出荷する部品の数(百万個・年、推定))× 価格 20(100万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 174 億円・営業利益 8 億円。営業利益率4.3%
- プレス金型部品:数量 9.8(出荷する部品の数(百万個・年、推定))× 価格 32(100万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 314 億円・営業利益 14 億円。営業利益率4.4%
- FA機器・部品:数量 0.7(出荷する製品の数(百万個・年、推定))× 価格 69(100万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 49 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0.0%
倍率:事業のROEは4.2%で資本コスト7.5%を大きく下回る。PERの上限は1÷k=12.5倍だが、稼ぐ力が弱く、約68%の8.5倍に置いた。
確率:計画の達成力に疑問が残る。前の中期計画ではFAは日本で足踏みし、拠点の統廃合は効果が出なかった。中国頼みの構造もある。
悲観 12% 中国が崩れ、構造的に負ける 利益 4 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 156 円43 億円
中国の需要が崩れ、現地メーカーとの価格競争に負ける筋書きだ。数量が15%減り、価格も物価を下回る。中国の自動車向けが縮み、国内の縮小も続く。ミスミが標準品の主導権を握り、特注品の下請けに寄る。金型部品の営業利益率は2%まで下がる。FAは3%の赤字で、M&Aののれんも減損する。営業利益は7億円、純利益は4億円。配当はDOEの下限を割り込み、10年の還元は40億円。価値の中身は、純現金と売れる資産の税後に近い。それでも、売上は4百億円台を保ち、事業が消えるわけではない。FAの単価は技術の進歩と競争で上がらない。債権や在庫を圧縮しても、現金の戻りは海外の課税で目減りする。
- プラスチック金型部品:数量 7.4(出荷する部品の数(百万個・年、推定))× 価格 18(100万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 137 億円・営業利益 3 億円。営業利益率2.0%
- プレス金型部品:数量 8.5(出荷する部品の数(百万個・年、推定))× 価格 29(100万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 244 億円・営業利益 5 億円。営業利益率2.0%
- FA機器・部品:数量 0.5(出荷する製品の数(百万個・年、推定))× 価格 62(100万個あたり売上(億円・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率-3.0%
倍率:事業の稼ぐ力はROE1.5%と弱い。稼ぐ力(純利益4億円×6.5倍=約25億円)より、売れる資産の税後(下の内訳)のほうが大きいので、価値は資産の床に置いた。今の自己資本231億円に掛けるPBR0.19倍。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.186 倍・時価総額 43 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:中国の崩れ、価格競争、M&Aの失敗が重なる必要がある。確度は低いが、売上の6割が中国という構造から、無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
プラスチック金型部品
プラスチック成形の金型に組み込むエジェクタピン、スプルーブッシュなど。
| 数量出荷する部品の数(百万個・年、推定) | 価格100万個あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.8 | 16 | 140 | 8 |
| 10 年後 中立 | 9.1 | 21 | 195 | 11 |
取り方:売上421億円のうち、会社の説明でプラスチック金型部品は約3分の1。140億円と置き、1個あたり約1.6千円(標準品は数百〜数千円、特注品は数千〜数万円の範囲の中間)として年8.75百万個と推定した。開示は無く推定。数量は実質の個数で、物価は価格に入れる。営業利益は、金型部品の合計(中期計画の売上390億円)から配分した推定。
プレス金型部品
金属プレスの金型に組み込むパンチ、ダイ、ボタンダイ、ガイドピンなど。
| 数量出荷する部品の数(百万個・年、推定) | 価格100万個あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.0 | 25 | 250 | 14 |
| 10 年後 中立 | 10.5 | 34 | 352 | 20 |
取り方:金型部品の売上390億円(VC28の起点)からプラスチック分140億円を引いた250億円を、プレス金型部品とした。1個あたり約2.5千円として年10.0百万個と推定した。開示は無く推定。
FA機器・部品
自動化装置の部品、治具、FA装置(ASCeを含む)、ラボラトリーオートメーション。
| 数量出荷する製品の数(百万個・年、推定) | 価格100万個あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.5 | 62 | 31 | −1 |
| 10 年後 中立 | 1.0 | 74 | 74 | 4 |
取り方:VC28の起点で、FAの売上は31億円(全体の約7%)。装置や特注の治具を含み単価が高いため、1個あたり約6.2千円として年0.5百万個と推定した。営業利益はASCeの減損後の実力から、およそ1億円の赤字と推定。価格は、単価の高い装置が技術の進歩で値下がりしやすいため、物価の6割ほど(10年で1.2倍)にとどめて置く。開示は無く推定。
リスクと懸念
中国の需要と価格競争
売上の59%が中国で、自動車関連が中心だ。景気が減速したり、現地メーカーとの価格競争が激しくなったりすれば、数量と利益率が同時に落ちる。中国の利益を日本に戻す時には税もかかる。為替の動きも、円換算の売上を左右する。人民元が円に対して下がれば、同じ数量でも円の売上は減る。
国内の縮小
国内売上は2017年3月期の159億円から、2026年3月期の110億円へ、3年連続で縮んだ。製造拠点の海外移転と、物価高による消費の停滞が背景にある。2023年の合理化後も、営業体制の再構築が整っていない。国内の特注品は、会社が掲げる特化の成否が試される。
FAの出遅れとM&Aの失敗
FAは第2の柱と位置づけるが、売上は31億円で全体の7%にとどまる。買収したASCeでは、のれん4.9億円を減損した。VC28ではM&Aに30億円の枠を置くが、同じ失敗を繰り返せば、資本効率はさらに下がる。FAの利益は、まだ全体を支える大きさではない。
ミスミとの関係の変化
ミスミは約11%を持つ筆頭級の株主で、標準品では競合でもある。提携の効果は物流や調達の統合で出るが、ミスミが標準品の主導権を握り、同社が特注品の下請けに寄る可能性がある。買い増しや再編の余地も残る。ミスミが約11%を持つことは、他の買い手が出にくいという面もある。
人件費と外注費の上昇
原価の3割が人件費、4割が協力工場への外注費だ。物価と賃金が年3%上がる世界では、標準品の値上げが通り続ける保証はない。熟練技術者の確保にも時間がかかり、若手への技術の引き継ぎが遅れれば、特注品の品質が落ちる。
自動車の電動化と需要の変化
金型部品の売上の4割強は自動車向けだ。電動化で部品点数が減る分野の金型は需要が落ち、新しい部品の金型は増える。入れ替わりの速さによっては、特定の製品群で一時的に落ち込む。EVの普及が遅れれば逆に内燃機関の部品の金型が残るが、世界の自動車生産の総量が減れば、全体の需要が縮む。
今後の分かれ目
- 特注品比率が68%に近づき、営業利益率が6%を超えたら
- 特注品への特化が利益率に出ている。楽観・やや楽観の確率を上げ、中立の利益率も見直す。
- 2028年3月期の営業利益が、計画の30億円を下回ったら
- 前の中期計画と同じ未達のパターンだ。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- ミスミとの協業の利益が、累計6億円の目標を前倒しで超えたら
- 統合の効果が計画より早い。中立の線を上へ見直す。
- 中国の売上が前年を2期続けて下回ったら
- 中国頼みの構造が裏目に出ている。悲観側の確率を上げる。
- 自己資本比率が60%を超えて自社株買いが実施されたら
- 資本効率の改善が動き始めた。余り資産がなくても、還元の姿勢の変化として評価する。
- 新たなM&Aでのれんが10億円を超えたら
- 買収の巧拙が資本効率を左右する。のれんの減損が出れば、資本配分の評価を下げる。
見ておくもの
- 特注品比率と、金型部品・FA別の営業利益率
- ミスミとの協業による累計利益(6〜8億円の目標)
- 中国の売上と、自動車関連の受注の動き
- 国内売上の前年比と工場の稼働率
- M&A案件の有無と、のれんの減損
- 配当性向、DOE、自社株買いの実績
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業のROEと資本コスト7.5%の関係から式で出した。中立は事業のROEが6.4%でkを下回るため、PERの上限は1÷k=12.5倍。そこから、中国の税負担と運転資金の重さで2割弱引いた10.5倍に置いた。今の株価や過去のPER、同業の倍率は使っていない。会社の中期計画(2029年3月期に営業利益34億円)は、前の計画の未達を考えて6割ほどしか中立に織り込んでいない。2027年3月期の上方修正も土台に入れていない。純利益÷営業利益は過去の中央値0.47に近い0.5で置いた(中国の税と配当への課税)。減価償却は年7億円前後(推定)を取得時の値段で据え置き、物価では増やさず、設備投資45億円の新しい分だけを足す前提で利益率を置いた。10年後の数字は、リースを営業費用に入れた今と同じ形で置いた(新リース会計の影響は小さい)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→15.31 倍・やや楽観 PER 11.5→13.65 倍・中立 PER 10.5→13.33 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。