結論
ニチダイは京都の冷間鍛造金型の専業から出発し、ターボチャージャー部品と焼結金網フィルタを加えた部品会社だ。筆者の結論は「割高」だ。PBRは0.3倍と帳簿より大幅に安いが、この6年、資本コストどころか利益そのものをほとんど出していない。帳簿の資産が稼がない以上、安さは割安の証拠にならない。
売上の7割は自動車向けだ。金型はエンジンや変速機の歯車・軸を冷間で鍛える道具で、精密部品は三菱重工グループ向けのターボ部品が柱になる。どちらも内燃機関の部品が多く、電気自動車が広がるほど数量の土台が細る。
2026年3月期は営業赤字4億円、減損などで純損失7.5億円を出した。会社は2027年3月期も最終赤字を見込む。中期計画の営業利益率10%は、最後に届いたのが30年近く前だ。
筆者は、構造改革で利益率が3〜5%に戻る筋書きを中立と見る。それでも資本コスト9%強には届かず、10年後の価値を今に割り戻すと今の値段を下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「安いが良くない会社」だ。帳簿の自己資本は時価総額の3倍以上ある。しかし資産の価値は、それが生む利益で決まる。6年続けてほとんど稼がない資産を帳簿の額で数えるのは、バリュー投資ではなく清算の発想だ。少数株主には清算を決める力がない。
事業の行方も読みにくい。エンジン部品の数量がどの速さで減るか、電動コンプレッサーの部品がそれを埋められるか、筆者には確信がない。わからない事業には安全域を厚く取るしかない。
変わる可能性はある。タイの集約で固定費が下がり、値上げが通れば、利益率は2010年代後半の5〜8%に戻りうる。そうなれば今の値段は安い。ただ、それは確率で重みを付けた筋書きの一部であり、払う値段の根拠にはならない。筆者が見たいのは、構造改革の後に営業利益率が2年続けて4%を超える姿だ。それまでは、帳簿の厚さは安全域ではなく、使われていない資本と見る。
何で稼ぐ会社か
事業は金型、精密部品、フィルタの3つだ。2026年3月期の売上110億円のうち、金型が45億円、精密部品が42億円、フィルタが23億円だった。
金型は、金属を常温のまま押し固めて歯車やボルト、軸を作る冷間鍛造の型だ。削るより材料の無駄が少なく強度も出るので、自動車のエンジン・変速機・足回りの部品で広く使われる。ニチダイはこの分野の国内の老舗で、型が摩耗するたびに交換の注文が入る。タイにも工場を持つ。
精密部品の柱はターボチャージャー部品だ。排気の力で空気を押し込む装置の、可変ノズルなどの部品を京田辺工場で組み立てる。三菱重工グループ向けが全社売上の27%を占める。エアコンや車載の電動コンプレッサーのスクロール部品も作り、こちらは電動化で伸びる側にある。
フィルタは細い金属線の網を焼き固めた焼結金網フィルタで、樹脂・化学・半導体の製造工程でろ過に使う。3事業の中で唯一黒字を保っている。
3つに共通するのは、客の工場の中で消耗し、交換される品だという点だ。金型は摩耗し、フィルタは目詰まりする。新車の数より、客の工場がどれだけ動くかで注文が決まる。その分、景気の波は受注にそのまま出る。
優良さと弱いところ
この会社の優良さは、技術の評判に比べて利益が薄いことに尽きる。冷間鍛造の金型は職人の技と設計の蓄積がものを言い、ニチダイの名は業界で通る。それでも営業利益率は2021年以降、最高でも2%に届いていない。
値決めの力が弱いのが根本の原因だ。客は自動車部品の大手と三菱重工で、買う側の力が強い。原材料や電気代が上がっても、値上げは遅れてしか通らない。ターボ部品は1社への依存が大きく、量も値段も客の計画しだいになる。
堀、つまり他社がまねできない強みは、金型の摩耗に伴う交換需要とフィルタの専門性くらいだ。どちらも市場は小さい。資本効率はROEが過去10年の中央値で0.5%と、株主の資本をほとんど増やしていない。自己資本比率は76%と厚く、潰れる心配は小さいが、それは強さでなく、稼がない資産が積まれているだけだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ニチダイの数量は、世界の自動車生産、とくにエンジン車とハイブリッド車の台数で決まる。10年の流れは、内燃機関の部品が減り、電動化の部品が増える方向だ。
冷間鍛造の部品は、変速機の歯車やエンジンの軸、ボルトに多い。電気自動車は変速機の段数が少なく、エンジンもない。鍛造部品の点数は1台あたりで大きく減る。ただしハイブリッド車は日本とアジアで長く残り、モーターの軸や減速機の歯車にも鍛造は使われる。数量は急には消えず、10年でゆっくり細るのが中立の見方だ。
ターボチャージャーは、排気量を小さくして燃費を稼ぐエンジンに欠かせない。欧州と中国で電気自動車が増えれば数量は減るが、ハイブリッド車や商用車、建機では残る。三菱重工はターボ事業の採算改善を進めており、部品の値段への圧力は続く。
伸びる側は車載の電動コンプレッサーだ。電気自動車は暖房にもヒートポンプを使い、スクロール部品の数量が増える。フィルタは半導体・化学の設備投資に連動する。
競争相手は、金型では国内外の中小の金型メーカーと、客の内製だ。ターボ部品では海外の部品会社が値段で迫る。どの分野でも、値段を決めるのは客の側にある。
資本政策と M&A
資本政策は「安定配当」が基本だが、赤字で配当は年0.4〜0.5億円まで細った。自社株買いは目立ったものがない。
大きな動きはタイの再編だ。2024年に合弁のタイ子会社を完全子会社にし、2025年には焼結金網の子会社をそこへ合併した。生産の集約で固定費を下げる狙いだが、2026年3月期は再編の費用と減損が先に出た。
取引先の共和工業所や京都フィナンシャルグループの株を持つ。純現金は約8億円あるが、赤字の穴埋めと設備の更新を考えると、余っているとは言いにくい。時価総額30億円、PBR0.3倍で、同業や客による買収・再編の的になる可能性はある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
帳簿の資産は大きく、改善の余地も大きい。2015〜2020年は営業利益率5〜9%を出していた会社だ。売上は当時より3割少ないが、固定費を絞れば利益は戻る。タイ子会社の統合で工場の重複がなくなり、減損で償却の負担も軽くなった。
電動化はすべてが逆風ではない。車載の電動コンプレッサーのスクロールは電気自動車で数量が増える。モーターの軸や減速機の歯車も鍛造で作る。冷間鍛造は材料の無駄が少なく、二酸化炭素を減らしたい自動車会社にとって削り出しより魅力がある。
フィルタは半導体と化学の工場で使われ、利益率が高い。ここが伸びれば全社の質が変わる。
そして値段が安い。PBR0.3倍は、利益がわずかに戻るだけで大きく見直される水準だ。時価総額30億円なら、客や同業、ファンドが買収に動いてもおかしくない。純現金と持ち合い株だけで時価総額の4割近くあり、下値は限られる。経営が資本の使い方を変えれば、株主の取り分は一気に増える。
慎重な見方
6年もほとんど稼いでいない会社に、回復を前提にした値段を付けるのは早い。中期計画の営業利益率10%は、目標として掲げられてきただけで、一度も近づいていない。2027年3月期の会社予想ですら最終赤字だ。
数量の土台が崩れていく。売上の7割が自動車で、その多くがエンジンと変速機の部品だ。電気自動車では冷間鍛造の部品点数が減り、ターボチャージャーは要らない。ハイブリッド車が残っても、10年で数量が細る向きは変わらない。
値決めの力もない。三菱重工グループ向けが売上の27%を占め、ターボ部品の値段は客が決める。原材料と電気代と人件費が上がる中で、値上げは遅れて一部しか通らない。
帳簿の自己資本は、稼がなければ床にならない。工場と設備は他に使い道がなく、清算でもされない限り少数株主の手には戻らない。値段が安いのは、市場がこの会社の資本の使い方を信じていないからだ。その評価を覆す材料は、まだ数字に出ていない。安いまま10年が過ぎる筋書きは十分にありうる。
どちらに重みを置いたか
回復の余地を言う側の話には根拠があるが、6年の実績が反対の向きを示している。数量の先細りと値決めの弱さは構造の問題で、構造改革だけでは解けない。確率は中立とやや悲観を厚くし、楽観は1割にとどめた。帳簿の安さは価値に数えていない。ただし買収や資本政策の変化という上振れの道は残るので、悲観も1割強にとどめた。構造改革の成果が2年続けて数字に出れば、この判断は見直す。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 500 円45 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 59 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 250 円23 億円、今との差 −28.9%、 期待の年率 +4.8%(資本コスト 9.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 1,050 円95 億円 | 161 円15 億円 | +245.1% | +13.2% | 121 円11 億円 |
| やや楽観 | 20% | 745 円67 億円 | 93 円8 億円 | +138.7% | +9.1% | 168 円15 億円 |
| 中立 | 35% | 532 円48 億円 | 51 円5 億円 | +66.0% | +5.2% | 204 円18 億円 |
| やや悲観 | 22% | 190 円17 億円 | 23 円2 億円 | −39.2% | −4.9% | 47 円4 億円 |
| 悲観 | 13% | 140 円13 億円 | 11 円1 億円 | −56.9% | −8.1% | 20 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 500 円45 億円 | 59 円5 億円 | +59.3% | +4.8% | 559 円51 億円 |
今の株価時価総額 351 円32 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 集約が効き、利益率が2010年代後半に戻る 利益 9 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,050 円95 億円
タイの工場の集約で固定費が下がり、原材料と電気代の上昇分を値上げで取り戻せるようになる。金型は電動車の減速機やモーター軸の鍛造で新しい型の注文を取り、数量はほぼ保つ。
精密部品は、ターボの数量が細る分を車載の電動コンプレッサーのスクロールが埋める。フィルタは半導体工場の投資を追い風に3割伸びる。
全社の営業利益率は7%台に戻り、2015〜2020年の水準に並ぶ。それでもROEは資本コストに届かず、厚い自己資本が足を引っ張る。配当は増え、自社株買いも始まる。中期計画の10%には届かないが、技術の評判に見合う利益がようやく出る。買収の提案が来ても、経営は自力の回復を選ぶ。
- 金型:数量 30,000(金型の出荷個数(個・年。推定))× 価格 20(1個あたり売上(万円・名目))→ 売上 60 億円・営業利益 4 億円。3万個×20万、利益率7%
- 精密部品:数量 660(部品の出荷個数(万個・年。推定))× 価格 919(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 61 億円・営業利益 4 億円。660万個×919、利益率6.5%
- フィルタ:数量 65.0(フィルタの出荷個数(万個・年。推定))× 価格 6,202(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 40 億円・営業利益 4 億円。65万個×6,200、利益率11%
倍率:事業の純利益 9 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 95 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:タイの集約と値上げで利益率が2015〜2020年の水準に戻る筋書き。6年近い低収益の実績から1割にとどめた。
やや楽観 20% 利益率が5%前後に戻る 利益 6 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 745 円67 億円
タイの再編が一巡し、減損で償却の負担が軽くなる。値上げは物価にやや遅れながらも通る。金型の数量は1割弱減るが、電動車の部品向けの型が一部を補う。
精密部品はターボが減り、スクロールが増えて数量はほぼ横ばいになる。フィルタは2割伸びる。全社の営業利益率は5%前後で、2016〜2018年に近い。
ROEは4〜5%で、資本コストの半分にとどまる。配当は利益の3分の1ほどで、自己資本はゆっくり積もる。会社は小さく堅い部品会社として残るが、帳簿の資産に見合う稼ぎにはまだ遠い。市場が評価を改めるには、数年の安定した黒字が要る。
- 金型:数量 28,000(金型の出荷個数(個・年。推定))× 価格 20(1個あたり売上(万円・名目))→ 売上 55 億円・営業利益 3 億円。2.8万個×19.7万、利益率5%
- 精密部品:数量 620(部品の出荷個数(万個・年。推定))× 価格 898(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 56 億円・営業利益 3 億円。620万個×898、利益率4.5%
- フィルタ:数量 60.0(フィルタの出荷個数(万個・年。推定))× 価格 6,110(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 4 億円。60万個×6,110、利益率10%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.0% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 67 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:構造改革の効果が半分ほど出て、2016〜2018年並みの利益率に戻る筋書き。中立に次ぐ重さ。
中立 35% 赤字は止まるが、稼ぐ力は細いまま 利益 4 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 532 円48 億円
タイの集約と減損で固定費は軽くなり、赤字は2〜3年で止まる。ただ、エンジン車の部品の数量は10年で1割ほど減る。金型の値上げは物価に少し遅れ、ターボ部品は客の値下げ要求で物価に届かない。
精密部品は、ターボの減少をスクロールが埋めて数量は横ばいになる。フィルタは1割伸び、利益の柱として残る。
全社の営業利益率は4%台で、2010年代後半の下の方に戻るにとどまる。ROEは4%弱で資本コストに遠く、帳簿の自己資本は稼がない資産として残る。配当は利益の3割ほどに戻る。会社が潰れることはないが、株主の資本はほとんど増えない10年になる。
- 金型:数量 27,000(金型の出荷個数(個・年。推定))× 価格 19(1個あたり売上(万円・名目))→ 売上 52 億円・営業利益 2 億円。2.7万個×19.4万(物価にやや遅れ)、利益率4%
- 精密部品:数量 600(部品の出荷個数(万個・年。推定))× 価格 884(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 53 億円・営業利益 2 億円。600万個×884(客の値下げ圧力)、利益率3%
- フィルタ:数量 55.0(フィルタの出荷個数(万個・年。推定))× 価格 6,110(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 3 億円。55万個×6,110、利益率8%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.7% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 48 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:構造改革で赤字は止まるが、エンジン部品の先細りと値決めの弱さで利益率は3〜4%台にとどまる筋書き。最も起こりやすい。
やや悲観 22% エンジン部品が早く細り、利益はわずか 利益 2 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 190 円17 億円
電気自動車の広がりが速く、ターボと変速機の鍛造部品の数量が2割減る。スクロール部品は伸びるが、ターボの減少を埋めきれない。値上げは物価の半分ほどしか通らない。
全社の営業利益率は2%前後で、2021年以降の水準から抜け出せない。フィルタだけが黒字の柱として残る。
配当は細く、自己資本は横ばいに近い。工場の一部を閉じる追加の減損が出る。従業員の削減も進むが、値下げ圧力が削った分を食い、利益は戻らない。帳簿の自己資本の大半は、稼がない工場と設備のまま残る。少数株主に戻るのは細い配当だけだ。株価は純現金と持ち合い株の価値の近くまで沈む。
- 金型:数量 24,000(金型の出荷個数(個・年。推定))× 価格 18(1個あたり売上(万円・名目))→ 売上 44 億円・営業利益 1 億円。2.4万個×18.2万、利益率2%
- 精密部品:数量 500(部品の出荷個数(万個・年。推定))× 価格 834(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 42 億円・営業利益 0 億円。500万個×834、利益率1%
- フィルタ:数量 50.0(フィルタの出荷個数(万個・年。推定))× 価格 5,928(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 2 億円。50万個×5,930、利益率7%
倍率:事業のROE 2.2%がk 9%を大きく下回り、利益が実質で縮む筋書き。稼ぐ力(純利益÷k)より低い7.5倍。
確率:欧州・中国の電動化が速く、ターボと鍛造部品の数量が2割減る筋書き。過去6年の実績に近いので中立に次ぐ重さ。
悲観 13% ターボの主要客を失い、赤字が続く 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 140 円13 億円
三菱重工グループがターボ部品を内製や海外の部品会社に切り替え、売上の4分の1が細る。電気自動車で鍛造の部品点数も減り、金型の数量は3割落ちる。
固定費を削りきれず、営業損益は赤字が続く。工場を閉じる減損と人員削減の費用が重なり、自己資本は2割減る。配当はほぼ止まる。
残るのはフィルタと、純現金と持ち合い株だ。清算されない限り、少数株主はこの資産を受け取れない。経営は事業の縮小を続けながら上場を保ち、現金は赤字の穴埋めに少しずつ消えていく。買収の提案があっても、値段は帳簿を大きく下回る。それでも会社が潰れる筋書きではない。
- 金型:数量 21,000(金型の出荷個数(個・年。推定))× 価格 17(1個あたり売上(万円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 −1 億円。2.1万個×17.1万、赤字
- 精密部品:数量 380(部品の出荷個数(万個・年。推定))× 価格 778(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 −1 億円。380万個×778、赤字
- フィルタ:数量 45.0(フィルタの出荷個数(万個・年。推定))× 価格 5,700(1個あたり売上(円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 1 億円。45万個×5,700、利益率5%
倍率:赤字なので今の自己資本に掛けるPBR。床は純現金と持ち合い株・土地の一部の税後で12.5億ほど、清算されないので今の自己資本の0.12倍。
確率:三菱重工グループのターボ部品を内製化や他社に奪われ、赤字が続く筋書き。1社依存が大きいので1割強。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
金型
冷間鍛造金型・線引用異形ダイス・自動車用鍛造部品。摩耗による交換需要が中心。
| 数量金型の出荷個数(個・年。推定) | 価格1個あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30,000 | 15 | 45 | −3 |
| 10 年後 中立 | 27,000 | 19 | 52 | 2 |
取り方:個数は開示が無いので推定。金型セグメントの売上44.7億を、冷間鍛造の金型・ダイスの平均単価を約15万とみて年3万個と置いた。利益はセグメントの経常損益−2.92億。
精密部品
ターボチャージャー部品(三菱重工グループ向け中心)と、エアコン・車載電動コンプレッサーのスクロール部品。
| 数量部品の出荷個数(万個・年。推定) | 価格1個あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 707 | 42 | −2 |
| 10 年後 中立 | 600 | 884 | 53 | 2 |
取り方:個数は推定。精密部品の売上42.4億を、ターボの可変ノズル部品とスクロールの平均単価を約700とみて年600万個と置いた。利益はセグメントの経常損益−2.20億(減損の前)。
フィルタ
焼結金網フィルタ。樹脂・化学・半導体の製造工程のろ過に使う。
| 数量フィルタの出荷個数(万個・年。推定) | 価格1個あたり売上(円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 50.0 | 4,560 | 23 | 1 |
| 10 年後 中立 | 55.0 | 6,110 | 34 | 3 |
取り方:個数は推定。フィルタの売上22.8億を、焼結金網の平均単価を約4,600とみて年50万個と置いた。利益はセグメントの経常利益0.66億。
リスクと懸念
電動化によるエンジン部品の減少
売上の7割が自動車で、冷間鍛造の部品とターボはエンジン車に多い。電気自動車が欧州・中国で速く広がれば、10年で数量が2〜3割減りうる。スクロール部品がどこまで埋めるかが分かれ目だ。
三菱重工グループへの依存
三菱重工グループ向けが売上の27%を占める。ターボ部品の内製化や調達先の変更があれば、精密部品の土台が崩れる。値段も客が決める立場にある。
構造改革が利益に結びつかない
タイ子会社の統合と減損は2026年3月期に費用として先に出た。会社予想では2027年3月期も最終赤字で、固定費の削減が値下げ圧力に食われれば利益は戻らない。
中期計画と実績の開き
営業利益率10%の目標に対し、2021年以降の実績は最高でも2%に届かない。目標の達成時期や中身が示されないまま続けば、経営の資本配分への信頼は細る。
原材料と電気代の上昇
金型は工具鋼や超硬合金、フィルタはステンレス線を使う。原材料と電気代が上がっても値上げは遅れてしか通らず、利益率を削る。2026年3月期の赤字の一因でもある。
為替の評価損
タイ子会社への外貨建ての債権に評価損が出やすい。2026年3月期にも出た。事業の実力とは別に、純利益が振れる。
今後の分かれ目
- 2027年3月期に営業利益が会社予想を超えて黒字に戻る
- タイの集約の効果が出始めた証拠になる。やや楽観の重さを上げる。
- 三菱重工グループがターボ部品の調達先を変える
- 精密部品の数量が大きく減る。悲観の重さを上げる。
- 車載電動コンプレッサーのスクロールで大口の採用が決まる
- 電動化の逆風を埋める道が見える。中立の精密部品の数量を上げる。
- 自社株買いや持ち合い株の売却、配当方針の見直しが出る
- 稼がない資産が株主に戻り始める。価値は上がる。
- 同業や客、ファンドから買収の提案が出る
- 帳簿の資産がまとめて評価される可能性がある。
見ておくもの
- 四半期の営業損益とセグメント別の損益
- 三菱重工グループ向け売上の比率
- スクロール部品の受注
- タイ子会社の稼働と固定費
- 配当と自社株買いの方針
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEがkを大きく下回るので1÷kを上限に、中立はその9割に置いた。悲観は赤字なので今の自己資本に掛けるPBRで、純現金と持ち合い株の税後を床にした。PBR0.3倍という今の値付けは使っていない。帳簿の安さを価値に足していないので、結果が割高側に出たのは利益の薄さから来ている。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.27→11.11 倍・やや楽観 PER 9.95→11.11 倍・中立 PER 9.73→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%+quality 1.75%。赤字は続くが財務の存続に疑いはないので上乗せなし。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.25% → 9.00%。