結論
サンセイは、ビルの外壁を清掃するゴンドラと劇場の舞台装置を作り、下関で官公庁の船を修理する会社だ。売上は70億円、純利益は8億円と過去最高だった。
筆者の結論は、ほぼ適正だ。最高益の半分近くは、高額な船の修理が重なった一時的な山である。会社自身も今期は営業利益が半減すると見込む。ならした稼ぎは純利益4〜5億円で、そこに払う値段として今の水準に大きな割安は無い。
ゴンドラは保守とレンタルが積み上がる地味な商売で、超高層ビルが増えるほど需要が増える。船舶修理は海上保安庁などの定期検査で底堅いが、年ごとの山谷が大きい。
光通信が25%を持つ大株主で、配当性向28%以上を公約している。10年後の中立の時価総額は50億円前後とみる。高額な修理が毎年続くと信じるなら安く、反動を重く見るなら高い。その間の値段だ。
筆者がいちばん気にしているのは、技能を継ぐ人の確保だ。ゴンドラの据え付けも船の修理も熟練の手に頼り、人が集まらなければ受注を絞るしかない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、地味だが筋の良い事業を、ならした稼ぎで測るべき会社だ。
ビルのゴンドラは、据え付けた後も保守で稼ぎ続ける。船舶修理は官公庁の検査という決まった仕事がある。どちらも10年後も残る事業で、急に消える心配は小さい。
ただ、過去最高益をそのまま将来に延ばしてはいけない。高額な船の修理は年ごとに来たり来なかったりする。会社自身が今期の減益を予想していることが、それを物語る。
オーナー利益、つまり設備の維持に要る投資を引いた自由な現金は、下関の更新投資の期間は細る。それでも借金は少なく、配当の公約もある。
帳簿の土地は18億円あるが、本社と下関の工場の敷地で、事業を続ける限り現金にはならない。
筆者は、この会社に大きな安全域は見ない。払う値段は、ならした稼ぎに対しておおむね妥当だ。高額な修理が続くかどうかを数期見てから考えても遅くない。
何で稼ぐ会社か
サンセイは舞台装置の製造から始まり、ビルのゴンドラへ広げた。1992年に船舶修理を始め、今は2つのセグメントで稼ぐ。
ゴンドラ・舞台は売上の6割だ。ビルの屋上に据えて外壁や窓を清掃するワッシングゴンドラ、自動ゴンドラ、工事用の仮設ゴンドラのレンタル、劇場やホールの舞台装置を手がける。売り先は主にゼネコンで、据え付けた後の保守と修理も請け負う。2026年3月期は受注が好調で、売上43億円、セグメント利益7億円と前期の倍になった。
海洋関連は売上の4割だ。山口県下関市の工場で船を修理し、魚礁や浮体式の灯標も作る。主な顧客は海上保安庁などの官公庁の船で、定期検査と中間検査が仕事の柱である。子会社が修理中の船員の宿泊施設も営む。2026年3月期は高額な修理を複数こなし、売上28億円、利益7.5億円と大きく伸びた。
下関工場では7.6億円をかけて設備を更新している。2030年9月の完了を予定する。連結の従業員は228人の小さな会社だ。
ほかに産業機械の製造やビル管理を少し手がけるが、売上は1億円に満たない。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、2つの事業でそれぞれ細い。
ゴンドラは据え付けた後が商売だ。ビルの管理者は、法令で決まった点検と修理を、据え付けた会社に頼むことが多い。保守の売上は景気にあまり左右されず、積み上がる。競合は日本ビソーなど数社に限られ、価格で崩れにくい。
船舶修理は、官公庁の船を扱う実績と、下関の立地が強みだ。ただ仕事は入札と検査の周期で決まり、値決めの力は強くない。高額な修理が重なった年は利益が跳ねるが、翌年に続く保証は無い。
資本効率は普通だ。ROE、つまり自己資本に対する純利益の割合は、過去10年の中央値で8%と資本コスト並みだ。2026年3月期の14%は山である。自己資本比率は7割を超え、財務は堅い。技術者の高齢化が、会社自身の挙げる弱みだ。レンタル用のゴンドラ機材の老朽化も、更新の投資を求める。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ゴンドラの需要は、高いビルの数とその寿命で決まる。
首都圏では再開発で超高層ビルが増え続ける。外壁と窓の清掃は人手では難しく、ゴンドラは建物ごとに要る。新設は再開発の波に左右されるが、据え付けた台数が増えるほど保守と更新の需要は厚くなる。筆者は、ゴンドラの数量は10年で横ばいからやや増えるとみる。建設の人手不足と資材高で、工期が延びる動きは続く。
舞台装置は、劇場や公共ホールの改修が中心だ。自治体のホールは老朽化が進むが、予算の制約で改修は先送りされやすい。
船舶修理は、官公庁の船の数と検査の周期で決まる。海上保安庁は巡視船を増やす方針で、修理の仕事は底堅い。民間の船は造船所どうしの価格競争が厳しい。
両方の事業で、鋼材と人件費は物価とともに上がる。保守と官公庁の仕事は値上げを転嫁しやすく、価格はおおむね物価並みに上がるとみる。
競争の形も見ておく。ゴンドラは日本ビソーなど数社が分け合う寡占で、新規の参入は少ない。安全の認証と据え付けの実績が要るからだ。船舶修理は、全国の中小の造船所と官公庁の仕事を取り合う。下関という立地は、西日本の巡視船の拠点に近い利点がある。
もう1つの変化は、外壁の清掃や点検にドローンやロボットを使う動きだ。筆者は、10年でゴンドラを置き換えるほどにはならないとみるが、点検の一部は奪われうる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。平均で28%以上の配当性向を公約し、2026年3月期は最高益を受けて特別配当を上乗せし、配当を前期の倍にした。配当性向は30%である。今期は特別配当が無くなり、配当は半分に戻る見込みだ。自社株買いはしていない。
株主の25%を光通信が持ち、会社はその他の関係会社として開示している。光通信は配当を重んじる投資家で、配当方針が後退する心配は小さい。
大きな使い道は下関工場の更新だ。7.6億円を2030年までに投じる。借入はわずかで、純現金は5億円ほどある。買収の動きは無いが、光通信の持ち分が増えれば再編の可能性は残る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
最高益は偶然ではない。ゴンドラの受注は前期比で3割近く増え、首都圏の再開発は2030年代まで続く。超高層ビルが1棟建つたびに、何十年も続く保守の仕事が生まれる。
船舶修理も追い風だ。海上保安庁は巡視船を増やしており、検査と修理の仕事は増える。下関工場の設備を更新すれば、高額な修理を受ける力はさらに上がる。
財務は堅く、自己資本比率は7割を超える。光通信が大株主で、配当性向28%以上の公約は守られる。高額な修理が年に1〜2件でも続けば、営業利益は10億円近くを保てる。ならした純利益を7億円とみれば、今の時価総額は5倍に満たない。
土地も厚い。帳簿の土地だけで18億円あり、時価総額の半分を超える。
外壁の清掃は人手不足の時代ほど機械に頼る。ゴンドラは建物の寿命と同じだけ使われ、更新のたびに同じ会社に声がかかる。10年たてば、据え付けた台数の分だけ保守の売上は厚くなっている。景気に強い売上の割合が増えるほど、利益の山谷も小さくなる。
慎重な見方
最高益の半分は一時的な山だ。会社自身が今期の営業利益を半分の5.5億円と見込んでいる。海洋の利益率27%は、高額な修理が重なった年の数字で、毎年は続かない。
ゴンドラの新設はゼネコンの工期に左右される。建設の人手不足と資材高で工期は延び、受注額が原価を下回るおそれも会社は挙げている。実際、前期には工事損失引当金を2億円近く積んでいた。
舞台装置は自治体の予算次第だ。ホールの改修は先送りされやすい。
技術者の高齢化は小さな会社にとって重い。228人の会社で、ゴンドラの据え付けと船の修理の技能を継ぐ人を確保できなければ、受注を絞るしかない。
下関工場の更新に7.6億円を投じるが、それで仕事が増える保証は無い。全社費も物価とともに膨らむ。
外壁の点検や清掃にはドローンやロボットも入り始めた。過去10年のROEの中央値は8%で、資本コストに届いていない。最高益の1年で会社の実力を測るのは早い。山の年の利益に倍率を掛ければ、必ず高く払うことになる。
どちらに重みを置いたか
両方の言い分に理がある。ゴンドラの保守と官公庁の修理は底堅いが、最高益の半分は一時的だ。会社自身の今期の見通しが、慎重な見方を裏づける。
確率は中立を厚くし、楽観側をわずかに厚く置いた。保守の積み上がりと光通信の存在で、大きく崩れる筋書きは小さいとみた。高額な修理が2期続けば、見方を上に改める。工事の赤字が再び出れば、下に改める。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,085 円84 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 177 円14 億円)。 今の値に割り戻すと 663 円52 億円、今との差 +51.8%、 期待の年率 +11.2%(資本コスト 7.2%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,609 円203 億円 | 309 円24 億円 | +567.7% | +20.9% | 233 円18 億円 |
| やや楽観 | 22% | 1,784 円139 億円 | 239 円19 億円 | +363.0% | +16.6% | 445 円35 億円 |
| 中立 | 40% | 1,010 円79 億円 | 178 円14 億円 | +171.8% | +10.5% | 475 円37 億円 |
| やや悲観 | 20% | 355 円28 億円 | 116 円9 億円 | +7.8% | +0.8% | 94 円7 億円 |
| 悲観 | 10% | 89 円7 億円 | 51 円4 億円 | −67.8% | −10.7% | 14 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,085 円84 億円 | 177 円14 億円 | +188.8% | +11.2% | 1,262 円98 億円 |
今の株価時価総額 437 円34 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 8% 再開発と巡視船の増強で、最高益が定着する 利益 11 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 2,609 円203 億円
首都圏の再開発が2030年代も続き、超高層ビルのゴンドラの新設と保守が積み上がる。ゴンドラの数量は1.15倍、利益率は15%と2026年3月期の水準を保つ。
海上保安庁の巡視船の増強で、下関の修理は毎年高額な案件を抱える。更新した設備が大型の修理を可能にし、利益率は27%を保つ。
全社費は物価で5.2億円に増える。営業利益は16億円、純利益は11億円台になる。
配当性向3割で、10年の還元は24億円。自己資本は109億円に増え、ROEは10%を保つ。光通信が持ち分を増やし、還元をさらに求める展開も加わる。
- ゴンドラ・舞台(窓拭きゴンドラ・仮設レンタル・舞台装置):数量 330(納入・保守の案件(台相当))× 価格 2,080(1台相当あたりの売上(万円))→ 売上 69 億円・営業利益 10 億円。営業利益率 15.0%
- 海洋関連(官公庁船の修理・魚礁・灯標):数量 58.0(修理の隻数(隻))× 価格 7,000(1隻あたりの修理売上(万円))→ 売上 41 億円・営業利益 11 億円。営業利益率 27.0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.3 倍。全体の PER 17.28 倍、時価総額 195 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ゴンドラの受注増、高額な修理の継続、利益率の山の維持が揃う必要がある。過去最高の利益率を10年後も保つ筋書きで、1割未満とした。
やや楽観 22% 保守が積み上がり、修理も高めの水準が続く 利益 8 億円 · PER 16.0 倍 · 株価時価総額 1,784 円139 億円
ゴンドラは新設と保守の両方が伸び、数量は1.05倍になる。保守の値上げが通り、単価は1.37倍だ。利益率は13%と、過去の平均より高い水準を保つ。
下関の修理は高額な案件が2年に1度ほど入り、隻数は52隻前後で安定する。利益率は25%だ。
全社費は物価で5.3億円に膨らむ。営業利益は11.7億円、純利益は8.2億円になる。
配当性向3割で、10年の還元は19億円。自己資本は97億円になり、ROEは資本コストを少し上回る8.5%だ。技術者の採用が進み、受注を絞らずに済む。下関の新しい設備が大型の修理を受ける力を高め、海洋の稼ぎの山谷は今より小さくなる。
- ゴンドラ・舞台(窓拭きゴンドラ・仮設レンタル・舞台装置):数量 300(納入・保守の案件(台相当))× 価格 2,050(1台相当あたりの売上(万円))→ 売上 62 億円・営業利益 8 億円。営業利益率 13.0%
- 海洋関連(官公庁船の修理・魚礁・灯標):数量 52.0(修理の隻数(隻))× 価格 6,900(1隻あたりの修理売上(万円))→ 売上 36 億円・営業利益 9 億円。営業利益率 25.0%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.5%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.0 倍。全体の PER 15.96 倍、時価総額 131 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ゴンドラの受注は前期比3割近く増え、巡視船の増強も決まっている。最高益は無理でも、過去の平均を上回る稼ぎが続く筋は十分にある。
中立 40% 山はならされ、物価並みに伸びる 利益 5 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 1,010 円79 億円
ゴンドラの数量は、ならした今の水準から横ばいだ。新設は工期の遅れで伸びないが、保守が積み上がって支える。単価は物価並みの1.34倍、利益率は11%と過去の平均に近い。
下関の修理は高額な案件が毎年は来ず、隻数は45隻ほどに戻る。官公庁の検査は値上げが通り、単価は1.34倍だ。利益率は22%とする。
下関の新しい設備の償却は取得時の値段で年1億円ほど足され、古い設備の償却は物価で増えない。全社費は5.4億円に膨らむ。営業利益は7.2億円、純利益は5億円になる。
配当性向3割で、10年の還元は14億円。自己資本は86億円、ROEは6%弱だ。
- ゴンドラ・舞台(窓拭きゴンドラ・仮設レンタル・舞台装置):数量 270(納入・保守の案件(台相当))× 価格 2,010(1台相当あたりの売上(万円))→ 売上 54 億円・営業利益 6 億円。営業利益率 11.0%
- 海洋関連(官公庁船の修理・魚礁・灯標):数量 45.0(修理の隻数(隻))× 価格 6,700(1隻あたりの修理売上(万円))→ 売上 30 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 22.0%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.0% が k 7.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.79 倍、時価総額 69 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の今期の見通しどおり高額な修理の反動が出て、その後は保守と官公庁の検査の底堅さで名目の成長が続く。過去10年の稼ぎの水準に近い、もっとも自然な姿。
やや悲観 20% 工期の遅れと修理の減少で、稼ぎが細る 利益 1 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 355 円28 億円
ゼネコンの工期が延び、ゴンドラの新設は減る。数量は0.85倍、資材高を転嫁しきれず単価は1.23倍、利益率は7%に下がる。
下関の修理は民間の船の価格競争に巻き込まれ、官公庁の仕事も入札で取り合いになる。隻数は38隻、利益率は17%だ。
全社費5.4億円を引くと、営業利益は1.5億円、純利益は1億円になる。
配当性向の公約は守るが額は小さく、10年の還元は9億円。稼ぐ力で測る価値は13億円ほどだが、現金と土地の床の方が高い。自己資本は70億円を超えても、ROEは2%に届かない。厚い帳簿が、そのまま株主の価値にはならない筋書きだ。
- ゴンドラ・舞台(窓拭きゴンドラ・仮設レンタル・舞台装置):数量 230(納入・保守の案件(台相当))× 価格 1,850(1台相当あたりの売上(万円))→ 売上 43 億円・営業利益 3 億円。営業利益率 7.0%
- 海洋関連(官公庁船の修理・魚礁・灯標):数量 38.0(修理の隻数(隻))× 価格 6,000(1隻あたりの修理売上(万円))→ 売上 23 億円・営業利益 4 億円。営業利益率 17.0%
倍率:稼ぐ力(純利益1.05億円÷k)は約12.7億円。純現金・保険積立金・土地の税後に戻り方0.75を掛けた床(約15.8億円)の方が大きく、その額を今の自己資本53億円の約0.3倍で置いた。
確率:建設の人手不足と資材高は常態化し、会社自身も受注額が原価を下回るおそれを挙げる。前期には工事損失引当金を積んでいた。
悲観 10% 技能の継承に失敗し、赤字が続く 利益 −3 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 89 円7 億円
ゴンドラの据え付けと船の修理の技能を継ぐ人が集まらず、受注を絞る。ゴンドラの数量は0.7倍、利益はほぼ出ない。
下関の修理は入札で負け続け、隻数は30隻に減る。更新した設備の償却が重く、利益率は10%に落ちる。
全社費を賄えず、営業損失は3億円近い。配当は止まり、10年の還元は4億円にとどまる。純現金は赤字で消える。
残るのは下関工場と本社の土地だ。売るかどうかは経営が決め、少数株主が手にできるのはその一部にとどまる。ゴンドラの保守と官公庁の検査だけが細く続き、会社は小さく生き残る。光通信が持ち分を売り、株価の支えも失われる。
- ゴンドラ・舞台(窓拭きゴンドラ・仮設レンタル・舞台装置):数量 190(納入・保守の案件(台相当))× 価格 1,700(1台相当あたりの売上(万円))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 2.0%
- 海洋関連(官公庁船の修理・魚礁・灯標):数量 30.0(修理の隻数(隻))× 価格 5,500(1隻あたりの修理売上(万円))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 10.0%
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。土地の税後と保険積立金から借入を引き、戻り方0.5を掛けた床(約7億円)で、今の自己資本の0.13倍に置いた。
確率:技術者の高齢化、ゼネコンの工事の赤字、修理の受注減が重なる構造的な負け。保守と官公庁の検査が下支えするので1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ゴンドラ・舞台(窓拭きゴンドラ・仮設レンタル・舞台装置)
ビルの外壁と窓を清掃するゴンドラ、工事用の仮設ゴンドラのレンタル、劇場・ホールの舞台装置。据え付け後の保守と修理。
| 数量納入・保守の案件(台相当) | 価格1台相当あたりの売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 286 | 1,500 | 43 | 7 |
| 10 年後 中立 | 270 | 2,010 | 54 | 6 |
取り方:2026年3月期のゴンドラ・舞台の売上42.86億円・セグメント利益7.02億円(短信)。台数の開示は無く、新設・保守・レンタルを1台相当1,500万円に均して約286台と推定。
海洋関連(官公庁船の修理・魚礁・灯標)
下関工場での船舶修理(海上保安庁など官公庁の船の定期・中間検査)、魚礁・浮体式灯標の製作、修理中の船員の宿泊施設。
| 数量修理の隻数(隻) | 価格1隻あたりの修理売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 55.0 | 5,000 | 28 | 8 |
| 10 年後 中立 | 45.0 | 6,700 | 30 | 7 |
取り方:2026年3月期の海洋関連の売上27.51億円・セグメント利益7.54億円(短信)。隻数の開示は無く、1隻あたり5,000万円として約55隻と推定。高額案件が重なった年で、前期は売上17.41億円だった。
リスクと懸念
高額な修理の反動
2026年3月期の海洋関連の伸びは、高額な修理が複数重なった結果だ。会社は今期の営業利益を半分と見込む。山の利益を毎年のものと見ると、価値を見誤る。
ゼネコンの工事の採算
ゴンドラの新設はゼネコンの工期と予算に左右される。資材高と人手不足で、受注額が原価を下回るおそれがある。前期には工事損失引当金を2億円近く積んだ。
技術者の高齢化
ゴンドラの据え付けと船の修理は熟練の技能に頼る。228人の会社で継ぐ人を確保できなければ、受注を絞るしかない。
官公庁の予算と入札
下関の修理の柱は海上保安庁などの船だ。予算や入札の条件が変われば、仕事の量と採算はすぐに動く。
大株主の動き
光通信が議決権の25%を持つ。持ち分を増やせば経営や還元への影響が強まり、売れば株価の需給が崩れる。
今後の分かれ目
- 海洋関連の利益が2期続けて7億円を超えたら
- 高額な修理が定着したとみて、やや楽観の確率を厚くする。
- ゴンドラ・舞台の受注高が50億円を超えて続いたら
- ゴンドラの数量を上げる。
- 工事損失引当金を再び大きく積んだら
- やや悲観の確率を厚くする。
- 光通信が持ち分を3分の1超に増やしたら
- 還元の強化や再編の可能性を織り込む。
- 自社株買いを始めたら
- 余った現金の戻り方を1.0に上げる。
見ておくもの
- ゴンドラ・舞台の受注高
- 海洋関連のセグメント利益
- 工事損失引当金
- 下関工場の更新投資の進み
- 光通信の持株比率
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、ゴンドラの案件数と単価、修理の隻数と単価、全社費から10年後の利益を積んだ。2026年3月期の最高益は高額な修理の山とみて、中立はならした水準から伸ばした。中立のROEは資本コストを下回るため、PERは1÷k(約12.1倍)の8割。楽観側はROEがkを超え、正当化PERの約85%。悲観側は稼ぐ力と、現金・土地に戻り方を掛けた床で置いた。今のPERや過去のPBRには寄せていない。リースは小さく、新リース会計基準の影響は軽い。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.4→17.28 倍・やや楽観 PER 10.4→15.96 倍・中立 PER 9.7→13.79 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。