結論
三浦工業は、工場で使う小型のボイラ(蒸気をつくる機械)の国内首位だ。売るだけでなく、納めた後の保守で長く稼ぐ。結論を言えば、今の値段は本質価値の近くにあり、安全域は薄い。10年後の価値を割り引くと、差は数%にとどまる。
稼ぎの強さは、保守にある。ボイラは一度入ると同じ会社が点検と部品交換を続けるため、売上は景気で揺れにくい。純現金は約700億円あり、時価総額の2割に近い。ただし、この現金は10年かけて積み上がってきた。配当性向は30%目安で、使い道は慎重だ。筆者はここを割り引いて見ている。
不安は二つある。一つは2024年に買った米国のCleaver-Brooksだ。2026年3月期は予算に届かなかった。販売・サービス部門の人の安定、品質、関税が課題とされる。もう一つは蒸気の電化だ。ヒートポンプや電気式に置き換わる流れが強まれば、国内の新規が細る。
10年の中立は、国内が横ばい、米国が着実に伸びる形だ。営業利益は今の1.5倍に届く。それでも時価総額は、割り引くと今の値段とほぼ同じになる。大きく外れるのは、米国の立て直しが成功するか失敗するかの二つの場合だ。
バリュー投資の観点から
事業の本質を一言で言えば、「ボイラを売り、その後の保守で長く稼ぐ」事業だ。保守が稼ぎの中心にあり、新しい機械が売れなくなっても稼ぎが急には消えない。この構造は評価できる。
堀は、納めた機械の数と、それを支える保守の人員にある。数が多いほど、1台あたりの点検費用は下がる。ただ、この堀は、電化で蒸気ボイラの数そのものが減れば薄まる。筆者がいちばん気にしているのはここだ。
資本の使い方には、割り引く理由がある。純現金は約700億円と厚いが、積み上がるばかりで、使い道が示されていない。米国の買収は大きな賭けだった。結果は、初年度から予算割れだ。オーナーとして持ち続けたいかを問えば、事業は良いが、お金の扱いには注文が付く。
安全域の面では、今の値段は十分に低いとは言えない。時価総額の2割は現金だが、その半分しか株主に戻らないと見ると、事業の価値に対する割安感は小さい。中立の10年後の利益は今の1.5倍で、割り引くと今の値段と近い。値段に余裕がない分、米国の立て直しが失敗した場合の下落が痛い。
何で稼ぐ会社か
三浦工業の本業は、小型貫流ボイラだ。水を細い管に通して一気に蒸気にする方式で、立ち上がりが早く、場所を取らない。食品、化学、繊維、病院など、蒸気を使う工場や施設に広く入っている。
稼ぎ方は二段になっている。まず機器を売る。その後、点検・修理・部品交換を長く続ける「まるごとメンテナンスサービス」で稼ぐ。旧区分では、国内の機器販売の利益率は8.6%、国内メンテナンスは27.5%だった。本当に稼いでいるのは保守だ。
2026年3月期の売上は2,687億円、営業利益は309億円で、いずれも過去最高だ。地域別では、日本が過半を占め、米州が約3分の1、アジアその他が1割強になる。米州が大きいのは、2024年5月にCleaver-Brooksを買収したためだ。ドイツのCERTUSS(蒸気発生器)も傘下に持つ。
国内には、ボイラのほかに水処理機器(アクア)、舶用ボイラ、食品機械、滅菌器(メディカル)がある。舶用は中期計画で、2027年3月期の売上を23億円から160億円へ大きく伸ばす目標だ。この数字は強気で、筆者は達成を前提にしない。日本の売上のうち、ボイラが554億円、舶用が114億円、アクアが80億円(2026年3月期3Q累計)という構成だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、納めた機械の数と保守網にある。ボイラは数が多いほど点検に回る人員の効率が上がる。同じ会社に頼む方が顧客も楽だ。国内の小型貫流ボイラでは首位に立つ。この点で、堀は普通よりやや強い。ただ、機器の性能で他社を大きく引き離しているわけではない。利益率の高さは機器ではなく保守から来る。
財務は強い。自己資本比率は5割を超え、純現金は約700億円ある。過去10年、赤字の期はない。営業利益は支払利息の18倍あり、借金は問題にならない。配当は2022年3月期から2026年3月期まで増え続けた。
弱いところは二つある。第一に、米国事業だ。買収したCleaver-Brooksは、2026年3月期の売上534百万ドルに対し、営業利益63百万ドルと、予算を割り込んだ。会社は、販売・サービス部門の組織が不安定になったこと、品質の土台が弱いこと、関税の影響を挙げる。第二に、資本の使い方だ。純現金が積み上がるのに、2025年3月期の自社株買いはゼロだった。経営の資本配分は、買収には積極的で、株主への返し方は控えめだ。
舶用の拡大計画(売上を7倍にする目標)には、実行の難しさがある。この分野に十分な人員が確保できるかが鍵になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
蒸気を使う工場の数は、国内ではこれから増えない。人口が減り、製造業の海外移転が続くためだ。ボイラの国内数量は、10年で1割ほど減ると筆者は見る。ただ、既存の機械の更新と保守は残る。ここが三浦工業の安定した稼ぎを支える。
最大の変化は電化だ。脱炭素の流れで、ガスや重油で蒸気をつくる方式から、電気やヒートポンプへの置き換えが進む。蒸気ボイラの需要そのものを減らす力になる。一方で、三浦工業も電気式の製品を持つ。置き換えが起きても、顧客が同じ会社に頼む可能性は高い。電化は脅威であり、機会でもある。
米国は逆風と追い風が混在する。製造拠点の国内回帰と政府の補助金で、産業用ボイラの市場は広がっているとされる。一方、関税は部材のコストを押し上げる。Cleaver-Brooksの立て直しが進めば、市場拡大の恩恵を取れる。
アジアは、工場の新設が続くため、数量は実質で伸びる。ただ、中国・韓国の競合が価格で攻めるため、利益率は高くない。
水処理・ポンプ・バルブの同じ領域では、栗田工業やオルガノのように薬品の継続収入を持つ会社の方が堀は深い。三浦工業の強みは保守網の厚みだが、半導体向けのような高成長の需要は持たない。この領域の10年の中立は、年率3〜5%の安定成長だ。三浦工業は国内の数量が細る分、これを下回る。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。配当性向30%を目安に、2027年3月期も増配を予定する。自社株買いは、2023年3月期が41億円、2024年3月期が59億円、2025年3月期がゼロだった。
資本政策の枠組みは、自己資本比率50%を目安にした財務の規律のもとで、成長投資を最優先し、余ったお金を株主に回すというものだ。中期計画では、3年でEPSを33%以上伸ばす目標も掲げる。
M&Aは、2024年5月のCleaver-Brooksの買収が最大だ。以後の方針は示されていない。筆者は、すぐ次の大型買収に踏み切る可能性は低いと見る。米国の立て直しが先だからだ。
TOBや買収される側の可能性は、市場の推計では10年で2割に届かない。時価総額が3,500億円規模で、手を出すには大きすぎる。純現金が厚く、ボイラの国内首位という位置は魅力だが、筆者は確率を高く置かない。
純現金の扱いが、株主にとって最大の論点だ。10年で純現金は約240億円から約690億円へ積み上がった。使い道が示されないまま積み上がれば、価値は割り引かれる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内首位の保守網は、10年経っても崩れない。ボイラは一度入れると同じ会社が点検を続けるため、保守の売上は新規の景気で動かない。国内の新規が少し細っても、更新需要と保守の積み上がりで利益は伸びる。2026年3月期は売上も利益も過去最高で、2027年3月期の第1四半期も増収だった。
米国では、製造拠点の国内回帰と補助金が追い風になる。買収したCleaver-Brooksの課題は、販売・サービス部門の組織、品質、関税と、どれも手を打てる種類のものだ。会社は顧客密着型のサービスへの転換、品質確認の体制強化、製造の内製化と自動化に動いている。数年で利益率は国内に近づく。
さらに、純現金が約700億円ある。これは時価総額の2割に近い。配当性向を引き上げる、自社株買いを再開する、といった動きが出れば、株主への戻りは大きく変わる。電化の流れも、自社の電気式製品で取り込める。中期計画の目標(3年でEPS 33%増)が示すように、会社は成長に自信を持っている。事業の安定性と現金を考えれば、今の値段は割安の側にある。
慎重な見方
電化は、国内の主力事業を静かに削る。蒸気をつくる方式がガス・重油から電気やヒートポンプに移れば、ボイラの台数そのものが減る。保守の稼ぎは、台数が基礎だ。台数が減れば、保守の収入も細る。三浦工業の堀は、この変化に弱い。
米国の買収は、すでに予算を下回った。会社が挙げる課題は、組織の安定、品質、関税で、どれも一朝一夕には直らない。これらが数年続けば、買収額に見合う利益は出ない。大型買収の後の立て直しで、予定どおりに進んだ例は多くない。舶用の売上を7倍にする計画も、実行は難しい。
資本の面では、純現金が積み上がるのに、2025年3月期の自社株買いはゼロだった。配当性向は30%目安にとどまる。現金は、株主ではなく、次の買収の準備に回りかねない。そうなれば、現金は時価総額の2割分の価値を持たない。
今の値段は、この不安をほとんど織り込んでいない。成長が止まれば、倍率の縮みだけで値段は下がる。安全域は薄い。
どちらに重みを置いたか
事業の安定性と保守網の厚みでは、強気の見方に分がある。一方、米国事業の立て直しと蒸気の電化、現金の使い道については、慎重な見方の指摘が重い。国内の数量は細ると見るので、成長は米国とアジア頼みになる。
10年の中立は、営業利益が今の1.5倍になる形で、割り引くと今の値段とほぼ同じ価値になる。上振れは米国が立て直した場合、下振れは電化と米国の失敗が重なった場合だ。確率は中立を最も厚くし、やっと立て直し始めた米国の不確かさを考えて、慎重側をやや厚く置いた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,192 円7,167 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,153 円1,335 億円)。 今の値に割り戻すと 4,054 円4,692 億円、今との差 +33.5%、 期待の年率 +9.2%(資本コスト 6.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 10,680 円1.24 兆円 | 1,567 円1,814 億円 | +303.4% | +15.0% | 1,102 円1,276 億円 |
| やや楽観 | 21% | 8,791 円1.02 兆円 | 1,368 円1,584 億円 | +234.6% | +12.8% | 2,133 円2,469 億円 |
| 中立 | 38% | 6,946 円8,040 億円 | 1,176 円1,361 億円 | +167.5% | +10.3% | 3,086 円3,573 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,790 円3,229 億円 | 950 円1,100 億円 | +23.2% | +2.1% | 823 円952 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,310 円1,516 億円 | 689 円798 億円 | −34.1% | −4.1% | 200 円231 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,192 円7,167 億円 | 1,153 円1,335 億円 | +141.9% | +9.2% | 7,345 円8,502 億円 |
今の株価時価総額 3,036 円3,514 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 9% 国内の底堅さと米国の立て直し、アジアの拡大がそろう 利益 596 億円 · PER 20.0 倍 · 株価時価総額 10,680 円1.24 兆円
国内は保守契約が拡大し、新規の落ち込みを補って市場の16.8%まで取る。米国は買収した事業の品質問題が片づき、販売網が安定して更新需要を取り込む。アジアは東南アジアとインドでボイラの導入が進み、シェアが7.5%に届く。舶用と水処理も計画どおり育つ。利益率は国内17.5%、米国14.5%まで上がり、全社の営業利益は今の2倍を超える。配当と自社株買いを増やしても、純現金は厚いままで、財務の余裕が成長の足を引っ張らない10年になる。海外比率は半分近くまで上がり、為替を動かさない前提でも、米国の利益が全社の稼ぎの柱の一つになる。
- 日本(ボイラ・保守・アクア・舶用・食機):数量 8,910(国内の産業用蒸気・温水・水処理・保守の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 22.5%(市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍))→ 売上 2,006 億円・営業利益 351 億円。市場は今の値段で測った実質、価格=シェア×1.34(物価)
- 米州(Cleaver-Brooks 含む):数量 8,750(北米の産業用ボイラ・保守の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 21.4%(市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍))→ 売上 1,876 億円・営業利益 272 億円。市場は今の値段で測った実質、価格=シェア×1.34(物価)
- アジアその他:数量 9,610(アジア・欧州などの対象市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 10.1%(市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍))→ 売上 966 億円・営業利益 116 億円。市場は今の値段で測った実質、価格=シェア×1.34(物価)
倍率:事業の純利益 592 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.8% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)188 億円。全体の PER 19.95 倍、時価総額 12,008 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の保守網・米国の立て直し・アジア拡大の三つが10年にわたり同時に当たる必要があり、実現すれば強いが確度は高くない。
やや楽観 21% 米国は立て直し、アジアが育つ 利益 496 億円 · PER 19.4 倍 · 株価時価総額 8,791 円1.02 兆円
米国で製造業の国内回帰が続き、更新需要が数量を押し上げる。買収した事業の課題は数年で解消し、利益率は13.5%まで戻る。国内は保守のシェアが少し上がり、新規の減少を埋める。アジアは年率でほぼ3%台の実質成長を取り、シェアも伸びる。電化の流れには自社のヒートポンプや電気式の製品で対応し、国内首位の位置を保つ。還元は配当を中心に、機動的な自社株買いが加わる。海外の伸びが国内の細りを上回るため、全社の売上は今の1.5倍に届く。中期計画が掲げる舶用の拡大は、目標の半分ほどに届く。人員の確保に時間はかかるが、国内の造船所での採用が少しずつ広がる。食品機械と滅菌器は横ばいで、全体への効きは小さい。
- 日本(ボイラ・保守・アクア・舶用・食機):数量 8,820(国内の産業用蒸気・温水・水処理・保守の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 21.7%(市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍))→ 売上 1,915 億円・営業利益 316 億円。市場は今の値段で測った実質、価格=シェア×1.34(物価)
- 米州(Cleaver-Brooks 含む):数量 8,190(北米の産業用ボイラ・保守の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 20.1%(市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍))→ 売上 1,646 億円・営業利益 222 億円。市場は今の値段で測った実質、価格=シェア×1.34(物価)
- アジアその他:数量 8,804(アジア・欧州などの対象市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 9.3%(市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍))→ 売上 814 億円・営業利益 90 億円。市場は今の値段で測った実質、価格=シェア×1.34(物価)
倍率:事業の純利益 492 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.5% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.1%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)188 億円。全体の PER 19.4 倍、時価総額 9,742 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:米国の需要は製造業の国内回帰で追い風があり、立て直しの手応えが出る形。業種ノートの10年の上寄りに近い。
中立 38% 国内は横ばい、米国は着実、海外比率が上がる 利益 399 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 6,946 円8,040 億円
国内は人口減と工場の海外移転で数量がやや減るが、保守と更新の需要が支え、シェアは15.5%に少し上がる。米国は買収した事業の課題を時間をかけて解消し、市場の拡大に沿って成長する。アジアは実質で3割増、シェアはわずかに上がる。電化は一部の需要を奪うが、自社も電気式で対応する。利益率は国内15%、米国12%で、今より少し低い水準に落ち着く。全社の営業利益は今の1.5倍、年率で4%台の伸びとなる。配当性向は30%を中心に、純現金は積み上がり続ける。大きな成功も大きな失敗もない、地味で堅い10年だ。舶用は人員の確保に手間取り、目標の3割ほどで止まる。米国の事業も、品質と販売網の立て直しに時間をかけるため、利益率が国内に並ぶことはない。それでも大きく崩れはしない。
- 日本(ボイラ・保守・アクア・舶用・食機):数量 8,640(国内の産業用蒸気・温水・水処理・保守の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 20.8%(市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍))→ 売上 1,795 億円・営業利益 273 億円。市場は今の値段で測った実質、価格=シェア×1.34(物価)
- 米州(Cleaver-Brooks 含む):数量 7,700(北米の産業用ボイラ・保守の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 18.8%(市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍))→ 売上 1,445 億円・営業利益 178 億円。市場は今の値段で測った実質、価格=シェア×1.34(物価)
- アジアその他:数量 8,060(アジア・欧州などの対象市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 8.4%(市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍))→ 売上 680 億円・営業利益 68 億円。市場は今の値段で測った実質、価格=シェア×1.34(物価)
倍率:事業の純利益 396 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)188 億円。全体の PER 18.6 倍、時価総額 7,544 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの10年中立(年3〜5%の安定成長)に沿う中心の筋書き。国内の数量は人口減で細り、海外が補う。最も厚くした。
やや悲観 22% 電化の流れで国内の新規が細り、米国の統合が重い 利益 274 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 2,790 円3,229 億円
蒸気ボイラの新規が電気式・ヒートポンプに食われ、国内のシェアは14.7%に下がる。保守の収入は残るが、新規が減る分だけ利益率は13%に落ちる。米国では、販売・サービス部門の人の入れ替わりと品質の問題が長引き、市場が伸びない中で利益率は9.5%にとどまる。アジアは採算の低い商談が増える。大きな赤字には至らず、配当は維持される。ただ、成長の柱が見当たらないまま、ためたお金だけが増える10年になる。国内の保守収入が下支えとなるため、利益は落ちても赤字にはならない。舶用の拡大計画は途中で見直され、人員の確保も遅れる。純現金は積み上がるが、株主への戻りは変わらず、次の買収の機会も見つからない。会社は守りに入り、成長への投資は細る。
- 日本(ボイラ・保守・アクア・舶用・食機):数量 8,370(国内の産業用蒸気・温水・水処理・保守の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 19.7%(市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍))→ 売上 1,649 億円・営業利益 214 億円。市場は今の値段で測った実質、価格=シェア×1.34(物価)
- 米州(Cleaver-Brooks 含む):数量 7,000(北米の産業用ボイラ・保守の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 16.8%(市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍))→ 売上 1,173 億円・営業利益 111 億円。市場は今の値段で測った実質、価格=シェア×1.34(物価)
- アジアその他:数量 7,130(アジア・欧州などの対象市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.4%(市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍))→ 売上 526 億円・営業利益 42 億円。市場は今の値段で測った実質、価格=シェア×1.34(物価)
倍率:ROE 6.7% が k 6.75% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値なので PER は 1÷k = 13.8 倍まで。利益率が戻らない筋書きで、上限の7.0割の 9.7 倍に置いた。事業の純利益は稼ぐ力を上限とし、余った現金は別に足している。
確率:蒸気を電気やヒートポンプに置き換える動きと、米国事業の品質・人の不安定が長引く形。2026/03期にすでに米国事業が予算を割った点を重く見て、慎重側にやや厚く置いた。
悲観 10% 蒸気の電化と米国事業のつまずきが重なる 利益 149 億円 · PER 9.7 倍 · 株価時価総額 1,310 円1,516 億円
電化が想定より早く進み、国内の新規ボイラが大きく縮む。保守の顧客基盤は残るが、台数が減ればメンテナンスの収入も細る。国内の利益率は10%に落ちる。米国では買収した事業が統合に失敗し、品質問題と関税で採算が悪化して利益率は6%になる。追加の減損も出る。アジアでは中国・韓国の競合が価格で攻める。三浦工業は「国内首位の優良企業」から、成長しない機器メーカーに格下げされる。それでも無借金で、純現金は残る。純現金と保守の顧客基盤が残るため、会社が傾くことはない。舶用の拡大計画は撤回され、人員の整理も行われる。米国では、買収後の統合がうまくいかず、のれんの減損が出る。経営は資本を再配分する必要に迫られるが、方向が定まらない。
- 日本(ボイラ・保守・アクア・舶用・食機):数量 7,920(国内の産業用蒸気・温水・水処理・保守の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 17.4%(市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍))→ 売上 1,380 億円・営業利益 138 億円。市場は今の値段で測った実質、価格=シェア×1.34(物価)
- 米州(Cleaver-Brooks 含む):数量 6,300(北米の産業用ボイラ・保守の市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 13.4%(市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍))→ 売上 844 億円・営業利益 51 億円。市場は今の値段で測った実質、価格=シェア×1.34(物価)
- アジアその他:数量 6,200(アジア・欧州などの対象市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.0%(市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍))→ 売上 374 億円・営業利益 19 億円。市場は今の値段で測った実質、価格=シェア×1.34(物価)
倍率:ROE 4.1% が k 6.75% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値なので PER は 1÷k = 13.8 倍まで。利益率が戻らない筋書きで、上限の7.0割の 9.7 倍に置いた。事業の純利益は稼ぐ力を上限とし、余った現金は別に足している。
確率:電化で国内の主力が縮み、米国事業の統合も失敗する複合の筋書き。保守収入がある事業で、10年で優良さを失う確率はこの程度とみた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本(ボイラ・保守・アクア・舶用・食機)
国内の小型貫流ボイラの販売と、導入後の保守「まるごとメンテナンス」。水処理(アクア)、舶用、食品機械、滅菌器も含む。
| 数量国内の産業用蒸気・温水・水処理・保守の市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9,000 | 15.1% | 1,360 | 205 |
| 10 年後 中立 | 8,640 | 20.8% | 1,795 | 273 |
取り方:2026/03期3Q累計の日本 952億円(利益率15.8%)から通期を約1,360億円と推計。国内のボイラ・水処理・保守の市場を約9,000億円と置き、シェアは約15%(国内首位級だが市場全体は広く、小型貫流ボイラの首位と市場全体のシェアは別物)。市場規模は競合の売上合計からの推定で、開示ではない。
米州(Cleaver-Brooks 含む)
買収した米国のボイラ大手 Cleaver-Brooks と、ミウラの米国事業。産業用ボイラと保守。
| 数量北米の産業用ボイラ・保守の市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 7,000 | 13.6% | 955 | 105 |
| 10 年後 中立 | 7,700 | 18.8% | 1,445 | 178 |
取り方:3Q累計の米州 668億円(利益率11.7%)から通期を約955億円と推計。Cleaver-Brooks の2026/03期売上は534百万ドル。北米市場を約7,000億円と置き、シェアは約14%。市場規模は推定。
アジアその他
韓国・中国・東南アジア・欧州などのボイラ販売と保守。ドイツの CERTUSS(蒸気発生器)も含む。
| 数量アジア・欧州などの対象市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格市場に対する当社売上の比率(=シェア×物価の倍率。10年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6,200 | 6.0% | 372 | 36 |
| 10 年後 中立 | 8,060 | 8.4% | 680 | 68 |
取り方:3Q累計のアジアその他 260億円(利益率8.9%)から通期を約372億円と推計。対象市場を約6,200億円、シェア約6%と置いた。市場規模は推定。
リスクと懸念
米国事業の立て直しが進まない
2026年3月期のCleaver-Brooksは予算を下回った。会社は販売・サービス部門の組織の不安定、品質の土台、関税を課題に挙げる。立て直しが数年遅れれば、米州の利益率は11%台から上がらず、のれん減損が出る可能性もある。
蒸気の電化で国内の台数が減る
脱炭素の流れで、ガスや重油の蒸気ボイラが電気式やヒートポンプに置き換わる。台数が減ると、導入後の保守収入も細る。自社にも電気式の製品はあるが、置き換えの速さ次第で国内の稼ぎが崩れる。
純現金の使い道が不明
純現金は約700億円あり、10年で積み上がり続けた。2025年3月期の自社株買いはゼロだった。現金が株主に戻らず、次の買収に回れば、持っている価値が割り引かれる。
舶用の拡大計画が重い
中期計画は舶用の売上を23億円から160億円へ、人員を50名から200名へ増やす目標だ。短期で人を大幅に増やす計画は、品質の確保と採算の両面で実行が難しい。未達なら、計画全体への信頼にも響く。
関税と海外の競争
米国の関税は、部材のコストを押し上げ、利益率を削る。アジアでは中国・韓国の競合が価格で攻め、採算の高い商談が取りにくい。価格を転嫁できなければ、海外の利益率は上がらない。
国内の人口減と工場の海外移転
蒸気を使う工場は、国内では増えない。人口が減り、製造業が海外へ移れば、国内の新規の数量は細る。保守と更新で補うが、10年で1割ほどの数量減は避けにくい。
今後の分かれ目
- Cleaver-Brooksの営業利益が予算を超え、品質と人員の不安が解消されたら
- 米州の利益率が上がる筋書きに重みを移す。やや楽観・楽観の確率を上げてよい。
- 2027年3月期に追加の減損や大幅な予算割れが出たら
- 米国の統合失敗の筋書きに重みを移す。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 蒸気ボイラの電化が政策や補助金で急に進んだら
- 国内の数量と保守収入の下方修正が必要になる。悲観側の確率を上げる。
- 自社株買いの再開や配当性向の引き上げが示されたら
- 純現金が株主に戻る確度が上がる。余った現金の戻り方を上方に直してよい。
- 舶用の人員確保と受注が計画どおり進んだら
- 国内の成長余地が広がる。ただし規模が小さく、全社の利益への効きは限られる。
- 大型の買収が再び発表されたら
- 純現金の使い道が示された点は評価できるが、米国の立て直し前の買収は慎重に見る。
見ておくもの
- Cleaver-Brooksの売上・営業利益と予算の差
- 国内のボイラ台数と保守契約の伸び
- 電気式・ヒートポンプ製品の売上比率
- 自社株買いの再開と配当性向
- 舶用の受注と人員の増加
倍率と資本コストの決め方
市場規模×シェアに物価並みの価格を掛け、セグメントごとに積んだ。倍率は利益ベースの正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g)(k 6.75%、g 3.75%、堀は普通)で決め、中立は上限の 8 割、楽観 9 割、やや悲観・悲観は 7 割に置いた。今の PER や過去の倍率、同業の値は使っていない。余った現金は事業の PER に混ぜず、帳簿の半分を別に足した。新リース会計基準で営業利益や純負債の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れる形)でそろえた。最後に今の時価総額と比べた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.73→19.95 倍・やや楽観 PER 14.04→19.4 倍・中立 PER 13.79→18.6 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality −0.25% = 7.25%。米国事業の立て直しの実行は k に足さず、筋書きの確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.25% → 6.75%。