結論
三菱化工機は、水素・ガス・水処理のプラントと、船舶用油清浄機などの機械を作る会社だ。2026 年 3 月期は売上 842 億円、営業利益 92 億円で、どちらも過去最高だった。筆者の結論は、事業の稼ぐ力は本物だが、今の利益率は歴史的な高さで、10 年先まで保つと見るには根拠が足りない、というものだ。
稼ぎの源は 3 つある。船舶用油清浄機は世界トップクラスで、売った後の保守が利益を支える。水素製造装置は小型の分野で実績が厚い。受注残は売上の約 1 年分あり、数年は見通しが立つ。
弱さも見える。主力のエンジニアリングは入札の仕事で、値段を自分で決められない。過去 10 年の営業利益率は 3〜6% で、赤字の年もあった。今の 11% 近い水準は、大型案件の山が重なった結果とも読める。水素も、国の補助金が切れた後の姿はまだ見えない。
10 年の中立で、利益率は 9〜10% に平らになるとみた。それでも今の高い ROE が効き、価値は今の時価総額を上回る。確率で重ねた答えは、割安の側に出た。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点で、この会社の優良さは「小さな会社の、長く続く保守収益」にある。船舶用油清浄機の保守が稼ぎの土台で、この部分は 10 年先も残る。
だが、会社全体はそこまで強くない。主力のエンジニアリングは入札の事業で、値段を自分で決められない。小さな会社が大型の案件を受ければ、1 件の失敗が数年分の利益を消す。経営は、これまで赤字の案件を出した経験を踏まえ、案件を選ぶようになった。この点は評価する。
資本の使い方は堅実だ。借金はなく、配当性向を 40% へ上げ、自社の成長投資は小さく抑える。大型の買収で価値を壊す心配は小さい。
安全域を考える。事業の稼ぐ力を平らにならして測っても、今の値段にはある程度の余裕がある。ただ利益率が歴史的な高さにあるので、その余裕は見かけほど厚くない。筆者は、10 年の価値が今を上回ると見る一方で、確信は中程度にとどめる。
何で稼ぐ会社か
三菱化工機は、会社の区分で見ると 3 つの事業で成り立っている。
エンジニアリングは売上の約半分を占める主力だ。都市ガス・石油・化学のプラント、下水や産業排水の処理設備、消化ガスから燃料を取り出す設備を、設計から据付まで請け負う。顧客は電力・ガス会社、自治体、化学メーカーだ。案件ごとの入札や契約で値段が決まり、利益率は 7% 前後と薄い。
単体機械は売上の 4 分の 1 ほどで、利益の半分以上を稼ぐ。船舶用油清浄機は燃料油の汚れを取る機械で、累計 12 万台を出荷し、国内外でトップシェアを持つ。船が使われる限り部品と整備が要るので、売った後の収益が長く続く。遠心分離機などもこの区分に入る。
GX は 2025 年度に独立した新しい区分で、売上の約 4 分の 1 だ。水素製造装置「HyGeia」(ハイジェイア)と、バイオガスの利用、循環型の設備を扱う。日本製鉄の水素還元製鉄の実証設備や、液化水素の供給網の実証にも納めている。利益率はまだ 6% 前後と低い。
国内の売上が約 85%、海外が約 15% だ。
優良さと弱いところ
優良さは、船舶用油清浄機に集中している。売り切りでなく保守と部品で稼ぐので、利益率は 25% 前後と高い。水素製造装置も、小型の分野で約 100 基の納入実績があり、実績を示す力がある。
ただし、会社全体で見れば普通の堀にとどまる。主力のエンジニアリングは入札で値段が決まり、競争相手は水処理の月島ホールディングスやメタウォーター、荏原など大手が並ぶ。会社が小さく、1 件の失敗で業績が大きく振れる。2012 年 3 月期から 3 期続いた赤字が、その前例だ。
資本効率は今は高い。ROE は 16.8%、自己資本比率は 57.5%、純現金が少しある。借金の心配はない。中計は ROE 12% 以上、営業利益率 9% 以上を掲げ、配当性向を 40% へ上げる。株主を向いた姿勢だ。
筆者がいちばん気にしているのは、利益の質である。過去 10 年の ROE の中央値は 10% だった。今の 16.8% は、案件の山に乗った結果の面が強い。山が過ぎた後に、10% より上を保てるかが分かれ目だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社は、機械の中でも「重工業・環境プラント」の領域に入る。数量は案件の件数と処理能力、価格は案件ごとの契約額で見る。需要は 3 つの流れに支えられる。
1 つ目は、下水・産業排水・ごみ処理の更新だ。日本のインフラは古くなり、更新は国と自治体の予算で毎年続く。ただ人口は減るので、件数は横ばいが基本だ。
2 つ目は、船の需要だ。世界の新造船は数年の高い水準にあり、既存船の整備も増えている。ただ新造船の需要は中国が中心で、山と谷の波は大きい。
3 つ目は、水素と脱炭素だ。製鉄の水素還元、液化水素の供給網、工場の熱源の水素化が国の支援で動き出した。ただ水素は価格が高く、補助金が切れた後にどこまで残るかは分からない。GX の国内市場は、案件の規模から年に数百億円と置く。同社のシェアは 2〜3 割と見積もる。
同じ領域の三菱重工業・IHI・カナデビア・タクマが大型の案件を受けるのに対し、この会社は中型の案件に集中する。小さいぶん身軽だが、大型の入札には出られない。
筆者は、この領域の中でも利益の波が大きい側にこの会社を置く。大型の案件が少ないぶん、1 件ごとの重みが大きいからだ。
資本政策と M&A
還元は手厚くなる方向だ。中計は配当性向を 40% へ引き上げ、DOE(自己資本に対する配当の割合)の下限を 3.5% に置く。3 年で約 60 億円を株主へ戻す計画で、投資単位を下げるための株式分割も行った。
成長投資には 3 年で約 30 億円を回す。GX の生産能力と研究に充てる。大型の買収は計画に見当たらず、自前の投資が中心だ。
株主はおもに信託銀行と生命保険会社で、特定の親会社はいない。かつて三菱化学が筆頭株主だった時期はあるが、今は違う。政策保有株の内訳は開示から確認できず、含み益は数えていない。
会社の規模が小さく、時価総額は 635 億円。事業が評価されれば、同業や取引先が買う動きも否定できない。参考の推計で、10 年以内に買収される確率は 2 割ほどある。ただ、これは価値の根拠にしない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
今の利益は一過性ではない。受注残は約 850 億円と売上の約 1 年分あり、2027 年 3 月期の計画でも営業利益は 88 億円と高い水準を保つ。単体機械の船舶用油清浄機は国内外でトップシェアで、累計 12 万台の保守需要が毎年の利益を生む。この部分だけで利益の半分以上を稼ぐ。
水素は国の政策に乗った本物の市場だ。日本製鉄の水素還元製鉄の実証設備、2028 年納入の中型水素製造装置、液化水素の供給網の実証と、大きな案件が続く。小型の分野で約 100 基の実績があり、同業が追いつくには時間がかかる。会社は 2035 年度に GX だけで 500〜600 億円を目指す。
財務は堅く、自己資本比率は 57.5% で純現金がある。配当性向を 40% へ上げる方針で、中計の ROE 12% 以上は今の水準より低い目標だから、達成の余地は大きい。時価総額に対して利益が大きく、この会社の価値は市場に見落とされている。
慎重な見方
今の利益率は歴史的な高さだ。営業利益率は過去 10 年で 3〜6% が普通で、2012 年 3 月期からは 3 期連続の赤字だった。今の 11% 近い水準は、大型案件の山が重なった結果とも読める。2027 年 3 月期の計画は、すでに減益になっている。
主力のエンジニアリングは、入札で値段が決まる。顧客の投資判断が遅れると受注が減り、会社の説明でも、受注は計画を下回っている。水処理の大手が並ぶ市場で、小さな会社が値段を保ち続けるのは難しい。
水素は国の補助金で動く市場だ。補助金が切れた後に、製鉄や液化水素の需要が残るかは分からない。GX は売上の約 4 分の 1 まで育ったが、利益率は 6% 前後にすぎず、まだ稼ぐ事業になっていない。
船舶用油清浄機も、新造船は中国向けが中心で、山と谷がある。小さな会社なので、1 件の大型案件の失敗が数年分の利益を消す。過去の最高益のあとには、必ず谷が来た。
どちらに重みを置いたか
事業の稼ぐ力に説得力があるのは強気の見方だ。保守収益の厚さと財務の堅さは本物で、中立でも ROE は 10% 台を保つ。一方、利益率が歴史的な高さにあるという慎重な見方の指摘も強い。確率は中立を軸に、悲観側を少し厚くした。やや悲観と悲観を合わせて 37%、やや楽観と楽観を合わせて 30% に置く。それでも、確率で重ねた 10 年の価値は今の時価総額を上回った。今の値段が、事業の稼ぐ力に比べて低いためだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,584 円1,728 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,549 円353 億円)。 今の値に割り戻すと 4,567 円1,040 億円、今との差 +66.9%、 期待の年率 +12.8%(資本コスト 8.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 16,244 円3,701 億円 | 2,603 円593 億円 | +588.9% | +21.3% | 1,696 円386 億円 |
| やや楽観 | 21% | 11,720 円2,670 億円 | 2,098 円478 億円 | +405.1% | +17.6% | 2,902 円661 億円 |
| 中立 | 33% | 7,997 円1,822 億円 | 1,637 円373 億円 | +252.1% | +13.4% | 3,179 円724 億円 |
| やや悲観 | 23% | 3,795 円864 億円 | 1,291 円294 億円 | +85.9% | +6.4% | 1,170 円266 億円 |
| 悲観 | 14% | 1,064 円243 億円 | 263 円60 億円 | −51.5% | −7.0% | 186 円42 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,584 円1,728 億円 | 1,549 円353 億円 | +233.8% | +12.8% | 9,133 円2,081 億円 |
今の株価時価総額 2,736 円623 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 水素が事業になり、GX が柱に育つ 利益 207 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 16,244 円3,701 億円
水素が国の支援で現実の市場になる。製鉄の水素還元、液化水素の供給網、工場の熱源の水素化が続き、同社の水素製造装置と消化ガスの設備が標準品として採られていく。GX の売上は 10 年後に 760 億円ほどになり、利益率も 13% まで上がる。装置を売った後の保守と部品が積み上がり、売り切りの案件より利益が安定するからだ。
単体機械の船舶用油清浄機は、世界の新造船と既存船の更新に支えられ、台数は 25% 増える。エンジニアリングも、下水と産業排水の更新が続いて堅調だ。全社の営業利益は 230 億円台、利益率は 13% に迫る。
会社が掲げる 2035 年度の GX 売上 500〜600 億円を上回る、最も理想に近い 10 年だ。
- エンジニアリング:数量 120(年に引き渡す案件の件数(件、推定))× 価格 5.76(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 691 億円・営業利益 55 億円。営業利益率 8%
- 単体機械:数量 10.0(年間出荷台数(千台、推定))× 価格 369(1 台あたりの平均売上(万円、保守・部品を含む))→ 売上 369 億円・営業利益 92 億円。営業利益率 25%
- GX(水素・バイオガス・循環):数量 120(年に引き渡す GX 案件の件数(件、推定))× 価格 6.37(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 764 億円・営業利益 99 億円。営業利益率 13%
倍率:事業の純利益 207 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍。全体の PER 17.35 倍、時価総額 3,592 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:水素が国の支援で事業になる筋書きは、案件の積み上がりが 10 年続く必要がある。会社の目標に近づく道筋は見えるが、上振れが重なる必要があり、確率は低めの 9% に置いた。
やや楽観 21% GX は会社の目標に近づく 利益 155 億円 · PER 16.6 倍 · 株価時価総額 11,720 円2,670 億円
GX が会社の計画の線に乗る。水素と消化ガス、循環型の設備の受注が年々積み上がり、GX の売上は 10 年後に 640 億円ほどまで伸びる。利益率は 10% で、今の 6% から上がるが、新しい分野なので量産の効果が出るまで時間がかかる。
単体機械は油清浄機の保守と更新で台数が 2 割近く増える。エンジニアリングは国内の更新需要に支えられ、台数は 1 割増にとどまる。全社の営業利益は 180 億円弱、利益率は 11% 台になる。
中計の 900 億円と利益率 9% 以上を超えた水準が、10 年かけて定着していく形だ。経営が堅実に案件を選び、赤字案件を出さなければ、この筋書きは十分に届く。
- エンジニアリング:数量 110(年に引き渡す案件の件数(件、推定))× 価格 5.76(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 634 億円・営業利益 44 億円。営業利益率 7%
- 単体機械:数量 9.4(年間出荷台数(千台、推定))× 価格 369(1 台あたりの平均売上(万円、保守・部品を含む))→ 売上 348 億円・営業利益 80 億円。営業利益率 23%
- GX(水素・バイオガス・循環):数量 100(年に引き渡す GX 案件の件数(件、推定))× 価格 6.37(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 637 億円・営業利益 64 億円。営業利益率 10%
倍率:事業の純利益 155 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.6 倍。全体の PER 16.57 倍、時価総額 2,568 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:GX が計画の線に乗り、基盤事業も堅調な筋書き。受注残は売上の約 1 年分と厚く、HyGeia の実績もあるので、現実味は十分にある。
中立 33% 稼ぐ力は保つが、利益率は平らになる 利益 107 億円 · PER 15.8 倍 · 株価時価総額 7,997 円1,822 億円
稼ぐ力は保つが、今の高い利益率は平らになる。GX の売上は 10 年後に 400 億円ほど、利益率は 8% で、会社の目標の下限を少し下回る。水素の需要は伸びるが、補助金頼みの案件が多く、量産の効果も遅れる。
単体機械は油清浄機の保守が下支えになり、台数は 1 割増、利益率は 21% を保つ。ただし今の 25% からは下がる。エンジニアリングは国内の更新が続くものの、競争入札で値段を決められず、利益率は 6% にとどまる。
全社の売上は 1,300 億円ほど、営業利益は 130 億円弱になる。利益率は 10% を切り、今の最高水準から平らになる。会社の利益率は過去 10 年の中央値の約 5% をまだ上回るが、そこへ戻る力と、今の改善が続く力が拮抗する。
- エンジニアリング:数量 100(年に引き渡す案件の件数(件、推定))× 価格 5.76(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 576 億円・営業利益 35 億円。営業利益率 6%
- 単体機械:数量 8.8(年間出荷台数(千台、推定))× 価格 369(1 台あたりの平均売上(万円、保守・部品を含む))→ 売上 324 億円・営業利益 68 億円。営業利益率 21%
- GX(水素・バイオガス・循環):数量 64.0(年に引き渡す GX 案件の件数(件、推定))× 価格 6.37(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 407 億円・営業利益 33 億円。営業利益率 8%
倍率:事業の純利益 107 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.7% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.8 倍。全体の PER 15.78 倍、時価総額 1,688 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:GX は伸びるが量産の効果は遅れ、利益率は今の最高水準から平らになる筋書き。過去 10 年の利益率の中央値と今の水準の間に落ち着くとみる、いちばん起こりやすい形。
やや悲観 23% 案件の採算が崩れ、GX が足を引っ張る 利益 56 億円 · PER 13.5 倍 · 株価時価総額 3,795 円864 億円
今の好調は、一度きりの大型案件の山だったと分かる。エンジニアリングは顧客の投資判断の遅れと入札の値引きで、台数は 1 割減り、利益率は 4% まで下がる。GX は水素の需要が補助金頼みで立ち上がらず、売上は 240 億円にとどまり、利益率も 4% の薄さのままだ。
単体機械は新造船の山が過ぎ、中国の造船所向けが細り、台数が 5% 減る。ただし既存船の保守は残るので、利益率は 18% を保つ。
全社の営業利益は 70 億円ほど、純利益は 56 億円で、今の 4 分の 3 に届かない。それでも赤字には落ちず、配当は維持される。ROE は資本コストを割る 7% 台まで下がり、稼ぐ力を超える値段はつかなくなる。
- エンジニアリング:数量 90.0(年に引き渡す案件の件数(件、推定))× 価格 5.59(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 503 億円・営業利益 20 億円。営業利益率 4%
- 単体機械:数量 7.6(年間出荷台数(千台、推定))× 価格 358(1 台あたりの平均売上(万円、保守・部品を含む))→ 売上 272 億円・営業利益 49 億円。営業利益率 18%
- GX(水素・バイオガス・循環):数量 40.0(年に引き渡す GX 案件の件数(件、推定))× 価格 5.94(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 238 億円・営業利益 10 億円。営業利益率 4%
倍率:事業の ROE 7.0% は k 8.0% 以下なので、PER の上限は 1÷k の 13.54 倍。成長の上乗せは付けず、稼ぐ力(純利益÷k)そのもので測り、上限の 10 割の 13.54 倍に置いた。
確率:今の利益率が最高水準で、過去 10 年は 3〜6% の薄さだった。案件の波と入札の値引きで、今の好調が山だったと分かる可能性は、慎重な見方のほうが強いとみて厚めに 23% に置いた。
悲観 14% 水素の需要が立ち上がらず、案件も赤字に沈む 利益 1 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,064 円243 億円
水素の需要が立ち上がらず、GX への投資が回収できない。製鉄や液化水素の実証は事業にならず、補助金が切れると受注が止まる。GX の売上は 10 年後に 130 億円ほどで、赤字が続く。
エンジニアリングは、官公庁の入札で値引き競争が続き、大型案件で工事の追加費用が出る。2012 年 3 月期から 3 期続いた赤字の再来だ。台数は 3 割減り、利益率はマイナスになる。単体機械は新造船の落ち込みで台数が 2 割減り、利益率は 10% まで落ちる。
全社の営業利益はほぼゼロになる。配当は削られ、GX の設備と開発費の一部を減損する。自己資本は残るが、稼ぐ力が小さいので、価値は売れる資産の床で決まる。赤字の年の配当は手元資金で払い、遊休の土地や政策保有株の売却も充てる。
- エンジニアリング:数量 70.0(年に引き渡す案件の件数(件、推定))× 価格 5.16(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 361 億円・営業利益 −7 億円。営業利益率 -2%
- 単体機械:数量 6.4(年間出荷台数(千台、推定))× 価格 330(1 台あたりの平均売上(万円、保守・部品を含む))→ 売上 211 億円・営業利益 21 億円。営業利益率 10%
- GX(水素・バイオガス・循環):数量 24.0(年に引き渡す GX 案件の件数(件、推定))× 価格 5.23(1 件あたりの平均売上(億円))→ 売上 125 億円・営業利益 −6 億円。営業利益率 -5%
倍率:赤字に近く、稼ぐ力では測れないので、売れる資産の床で置く。純現金 35 億円は全額、事業用資産(今の自己資本 449 億円から純現金を引いた 414 億円)は簿価の 50% で売れると仮定すると 35+207=242 億円で、今の自己資本の 0.54 倍にあたる。市場の値付けは根拠にしていない。
確率:小さな会社で、水素という政策頼みの新事業に成長を預けている。2012〜2014 年の 3 期連続の赤字の前例があり、10 年に一度は大型案件で崩れる可能性がある。14% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
エンジニアリング
ガス・石油・化学のプラント、下水・産業排水の処理設備、消化ガス設備の設計・据付。
| 数量年に引き渡す案件の件数(件、推定) | 価格1 件あたりの平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 4.30 | 430 | 30 |
| 10 年後 中立 | 100 | 5.76 | 576 | 35 |
取り方:エンジニアリングの売上(通期は開示の区分から推定、約 430 億円)を、年約 100 件の引き渡しで割り、1 件約 4.3 億円と置いた。件数は国内の更新需要に沿って横ばい、価格は契約に物価を織り込み物価並み。利益は上期 9 億円・通期予想 27 億円から約 30 億円(率 7%)と推定。
単体機械
船舶用油清浄機、遠心分離機などの機械の販売と、保守・部品。
| 数量年間出荷台数(千台、推定) | 価格1 台あたりの平均売上(万円、保守・部品を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8.0 | 275 | 220 | 56 |
| 10 年後 中立 | 8.8 | 369 | 324 | 68 |
取り方:単体機械の売上(通期予想 205 億円、実績は約 220 億円と推定)を、油清浄機・遠心分離機などの年約 8 千台で割り、保守・部品込みで 1 台約 275 万円と置いた。累計 12 万台の出荷から年 5 千台前後が新造船向け、残りは更新と部品。利益は上期 28 億円から約 56 億円(率 25%)。千台×万円は 0.1 億円なので rev_factor は 0.1。
GX(水素・バイオガス・循環)
水素製造装置 HyGeia、消化ガス・バイオガスの利用設備、循環型の設備。2025 年度に独立した区分。
| 数量年に引き渡す GX 案件の件数(件、推定) | 価格1 件あたりの平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 4.75 | 190 | 12 |
| 10 年後 中立 | 64.0 | 6.37 | 407 | 33 |
取り方:GX の売上(通期予想 215 億円、9 カ月累計 122 億円から推定して約 190 億円)を、水素製造装置・バイオガス設備などの年約 40 件で割り、1 件約 4.75 億円と置いた。市場は国内で年数百億円、同社のシェアは 2〜3 割と見積もる(推定)。利益は上期 0.2 億円・通期予想 6.5 億円から約 12 億円(率 6%)と推定。 数量は件数(実物)で、名目の市場の伸びから置いたものではない。中立は会社が開示する 2036 年 3 月期の GX・統合後の売上目標に対し約 8 割の水準。
リスクと懸念
今の利益率が山である恐れ
営業利益率は 10.9% と過去最高で、過去 10 年は 3〜6% が普通だった。2027 年 3 月期の計画はすでに減益だ。大型案件の山が過ぎると、利益は大きく戻りうる。この会社の価値は、この利益率が平らになるかどうかで大きく変わる。
水素が補助金頼みである
水素の需要は、国の支援で動き出した市場だ。製鉄の水素還元や液化水素の供給網は、補助金が切れた後に採算が合うかがまだ見えない。GX の利益率は今 6% 前後で、売上の約 4 分の 1 を占める事業が稼ぐ事業になるかは分からない。
大型案件の失敗が小さな会社に響く
会社の規模は売上 842 億円で、大手の 10 分の 1 以下だ。1 件の大型案件で工事の追加費用が出れば、数年分の利益が消える。2012 年 3 月期から 3 期続いた赤字がその前例で、同じことが起きる可能性は残る。
エンジニアリングの入札と受注の遅れ
主力のエンジニアリングは入札で値段が決まり、顧客の投資判断の遅れで受注が計画を下回っている。水処理の大手が並ぶ市場で、利益率を保ち続けるのは難しい。受注残は約 1 年分あるが、補充が細れば数年後に響く。
新造船需要の山と谷
船舶用油清浄機の新造船向けは、中国の造船所が中心で、船の発注の波に連れて大きく振れる。保守と部品は残るが、新造船が止まれば台数は落ち、単体機械の高い利益率が下がる。
買収と株主の動き
時価総額が小さく、キャピタル・リサーチなど海外の長期投資家の保有が増えている。買収されれば価値が評価される一方、経営の方針が変わる恐れもある。10 年以内の買収の確率は参考の推計で 2 割ほどだが、価値の根拠には数えない。
今後の分かれ目
- エンジニアリングの受注が 2 期続けて売上を下回ったら
- 受注残が薄くなり、数年後の利益が落ちる。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- GX の営業利益率が 10% を超えて定着したら
- 水素が稼ぐ事業になった証拠で、やや楽観・楽観の確率を上げる。
- 日本製鉄に続く水素の大型受注が、補助金に頼らず出たら
- 水素の需要が自立した兆しなので、GX の数量の見通しを上方に直す。
- 大型案件で工事の追加費用が出て、特別損失を計上したら
- 小さな会社の案件リスクが現れた形で、悲観側の確率を上げる。
- 新造船の発注が減り、油清浄機の台数が落ちたら
- 単体機械の利益率が下がるので、全社の利益率の見通しを下に直す。
- 買収の提案や大株主の増加が報じられたら
- 価値の根拠には数えず、経営の方針の変化を確かめる。
見ておくもの
- エンジニアリング・GX の受注高と受注残(四半期)
- GX の営業利益率
- 単体機械の台数と利益率(新造船向けと保守の割合)
- 配当性向 40% の維持と、株主還元の追加
- 特別損失の有無(大型案件の追加費用)
倍率と資本コストの決め方
先にセグメントごとの数量(件数・台数)と価格(物価並みに 1.34 倍)で 10 年の売上を積み、営業利益率を過去 10 年の中央値と今の最高水準の間に置いた。倍率は利益ベースの正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(k 8.0%、g 4.0%、RONIC は k を超える分の半分が残る値)の上限の 9 割台に置き、下限 12.5 倍を守った。やや悲観は ROE が k 以下なので稼ぐ力(純利益÷k)、悲観は売れる資産の床で置いた。今の株価や過去の PER・PBR は倍率の根拠に使っていない。リースは小さく、2028/03 期から新リース会計で BS の形が変わるが、10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15→17.35 倍・やや楽観 PER 14→16.57 倍・中立 PER 13→15.78 倍・やや悲観 PER 12.5→13.54 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本 7.5%+quality 0.5%=8.0%。内訳と理由は quality_why。