結論
三精テクノロジーズは、ジェットコースターを作る会社だ。売上の6割近くを遊戯機械が占め、舞台機構と昇降機が残りを支える。2026年3月期は売上730億円、営業利益66億円で、受注は過去最高を更新した。
筆者の結論は、いまの値段はおおむね妥当、というものだ。確率で重みを付けた価値は今の時価総額を数%上回る程度で、安全域は厚くない。決め手は遊戯機械の黒字が10年続くかどうかだ。
稼ぎの質は事業でまるで違う。舞台設備は営業利益率が2割を超え、昇降機も2割台後半に乗る。一方、売上の大半を占める遊戯機械の利益率は5%にとどまる。この事業は2018年に買ったベコマと2012年に買ったS&Sを抱え、利益率は2025年3月期まで1%台にとどまっていた。
いまの好業績は、その遊戯機械が黒字に戻った結果だ。受注残は889億円と売上の1.2年分あり、2028年3月期の中期計画(売上750億円、純利益50億円)は前倒しで届きそうだ。ただ、この回復が10年続くかは別の話だ。案件ごとの入札と為替、海外の競合が利益を削る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社の利益は2つに分けて見る必要がある。
舞台設備と昇降機は、売上の3割強で営業利益の大半を稼ぐ。納めた機器の改修と保守が続く、手堅い事業だ。10年後も同じ場所に立っている公算が大きい。これを持ち続けたい事業と呼べる。
遊戯機械は別だ。売上の6割強を占めるのに、利益は5%。受注工事は完工まで原価が確定せず、1件の見込み違いで年度の利益が消える。利益の質は低い。ここに大型のM&Aで広げた事業を抱えていて、資本の使い方は、いまのところ成果が出始めたかどうかの段階にある。
財務は堅い。純現金126億円は安全域になる。ただ、受注工事の前受金や運転資金を多く含むとみて、余った現金とは扱わなかった。
結局、見ているのは「遊戯機械の黒字が定着するか」の一点になる。定着すれば今の値段は安く、元の低採算に戻れば今の値段は妥当か、やや高い。この会社の値段は、そこへの賭け方で決まる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎは3つの事業でできている。
遊戯機械は売上の6割強を占める。ジェットコースターなどの大型の乗り物を設計・製造し、遊園地やテーマパークに納める。顧客は日本、米国、中東、アジアのパーク運営会社で、1件ごとに数十億円の工事になる。2012年に米国のS&S、2018年にオランダのベコマを買い、3社で世界の販売網を持つ。ただ原価の管理が難しく、2026年3月期のセグメント利益は23億円、利益率は5%だ。
舞台設備は売上の25%、営業利益の半分近くを稼ぐ。劇場、ホール、アリーナの舞台を動かす機構と、照明・音響の設備を手がけ、国内最大手とされる。新設より、古いホールの改修と、コンサート向けの仮設舞台が伸びている。2026年3月期の利益は39億円と、利益率は21%に達した。
昇降機はエレベーターとエスカレーターで、官公庁や病院などの公共向けに強い。売上は79億円と小さいが、保守契約が積み上がり、利益率は27%と高い。
三精のほかに、カナダのテーマパーク設計会社FORRECの7割を2023年に取得している。設計から納入まで一括で請ける力をつけるのが狙いだ。
優良さと弱いところ
堀の強さは事業ごとに分けて見る必要がある。
舞台設備は、国内の劇場に納めた機構を改修・保守できるのは納入した会社だけ、という強さがある。営業利益率が2割を超えるのは、この囲い込みの結果だ。昇降機も、公共施設に納めた機器の保守が続く。
遊戯機械は違う。海外にはIntamin、Mack Rides、Zamperla、B&Mといった同業がひしめく。ここでは入札で価格が決まり、納期の遅れや原価の超過がそのまま損失になる。実際、2025年3月期の遊戯機械の利益率は1%台だった。筆者は、遊戯機械の黒字が本物かどうかが、この会社の質を決めると見ている。
資本効率は高くない。自己資本比率は5割強で純現金は126億円と財務は堅いが、過去10年のROEの中央値は5%だった。2026年3月期は10%に届いたが、一過性の戻りを含む。経営陣は2028年3月期にROE10%以上を掲げており、目標を自覚していること自体は評価できる。ただ、大型案件が1つ赤字になるだけで利益が崩れる体質は、まだ消えていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
三精は3つの市場に立つ。
遊戯機械の世界市場は、各国のテーマパーク投資が景気の波に乗って動く。中東とアジアの新設計画が多く、米国は既存パークの更新が中心だ。市場の大きさは公的な統計が取れず、主要メーカーの規模と中国勢を合わせて年40億ドル前後と推定した。実質では年1〜2%の拡大とみる。競合はIntamin、Mack Rides、Zamperla、B&M、そして三精傘下のベコマだ。中国メーカーも低価格で勢力を広げている。
舞台設備は国内の劇場・ホール・アリーナが相手で、人口が減る分だけ新設は伸びない。ただ、1980〜90年代に造られた公共ホールの改修期に入り、民間のコンサート会場や仮設舞台の需要も増えている。実質でほぼ横ばいから微増と置いた。
昇降機は、国内の新築が横ばいで、既設の改修と保守が伸びる。世界の大手であるOtis、Schindler、Kone、国内の三菱電機や日立が価格を決める市場で、三精は公共向けのすき間で戦う。
この3つをまとめると、成長を決めるのは遊戯機械の海外の受注と原価管理で、国内の舞台と昇降機は安定した土台にあたる。
資本政策と M&A
還元は配当を軸に、少しずつ増やす方針だ。配当は「長期かつ安定的な還元、当期の利益水準、手持ちの受注工事の残高」を総合して決めると会社は述べている。2026年3月期の配当性向は3割強で、自社株買いも8億円行った。
政策保有株は上場株式が85億円ある。当期は2銘柄を売り、28億円を得ており、減らす流れにある。売却益は利益に入っている。
買収は積極的だ。2012年のS&S、2018年のベコマ、2023年のFORRECと、遊戯機械の海外展開を軸に広げてきた。中期計画にもM&Aを含む新たな柱の創出を明記しており、今後も案件は出る。同時に、のれんの減損は10億円出ている。買う側の規律が、利益に直結する。
時価総額が465億円と小さく、純現金は時価総額の4分の1ある。TOBの的になる可能性は10年で2割台と推定される。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
遊戯機械は、買収した事業がようやく実を結ぶ段階にある。2026年3月期のセグメント利益は前の年の4倍に増え、受注は5百億円を超えて過去最高、受注残は690億円と売上の1.5年分だ。世界の遊戯機械は中東とアジアの新設が続き、米国の既存パークも更新期に入る。三精は米国のS&S、欧州のベコマ、日本の本体と3つの拠点を持ち、顧客に合わせて拠点を使い分けられる。
舞台設備と昇降機は、安定した土台だ。舞台は国内最大手とされ、老朽化したホールの改修とコンサート会場の仮設舞台で受注が増えている。受注残は前年比4割増だ。昇降機は保守契約が積み上がる。この2つだけで営業利益の大半を稼ぎ、利益率は2割を超える。
財務は純現金126億円、自己資本比率5割強。上場株式も85億円あり、売却して還元に回せる。中期計画はROE10%以上を掲げ、会社自身が資本効率を重く見ている。遊戯機械の利益率が8%に乗れば、全社の営業利益は10年で2倍近くになり、今の値段は大きく割安になる。
慎重な見方
遊戯機械の黒字は、まだ1期にすぎない。2025年3月期の利益率は1%台だった。大型の受注工事は原価の超過と納期の遅れが起こりうる事業で、受注が過去最高でも、完工までは利益が確定しない。受注残の688億円は、うち何割が採算の薄い案件かがわからない。
海外の競合は手強い。Intamin、Mack Rides、B&Mは自国の大型パークとの結びつきが強く、中国メーカーは低価格で新興国に入る。入札で勝つには値引きが要る。
舞台設備の利益率21%は、改修需要が一巡すれば崩れる。ホールの新設は人口減で細り、公共の予算も限られる。昇降機は規模が小さく、大手の価格攻勢を受ける。
純現金が厚く見えるのも、受注工事の前受金が多いためだ。工事が進めば現金は工事費で消える。M&Aに使えば、過去のように減損が出る。ROEは過去10年の中央値で5%。2026年のROE10%は、事業が谷から戻った形で、10年続く保証はない。
どちらに重みを置いたか
舞台と昇降機の堅さは強気の見方に説得力がある。だが、遊戯機械の黒字が定着したと言い切るには、実績が1期しかない。入札で価格が決まる事業で、利益率が5%から8%に上がる根拠は弱い。
確率は中立に最大の重みを置き、やや悲観にも2割強を残した。楽観は、遊戯機械が9%近くの利益率に達する筋書きで、1割弱とした。悲観は、海外勢に奪われて稼ぐ力が資産以下になる姿で、これも1割弱だ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,551 円808 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,537 円273 億円)。 今の値に割り戻すと 3,154 円560 億円、今との差 +22.9%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 9,164 円1,628 億円 | 2,246 円399 億円 | +344.7% | +16.1% | 1,027 円182 億円 |
| やや楽観 | 24% | 6,524 円1,159 億円 | 1,897 円337 億円 | +228.2% | +12.6% | 2,021 円359 億円 |
| 中立 | 38% | 4,720 円838 億円 | 1,554 円276 億円 | +144.5% | +9.4% | 2,384 円423 億円 |
| やや悲観 | 21% | 1,508 円268 億円 | 1,120 円199 億円 | +2.4% | +0.2% | 552 円98 億円 |
| 悲観 | 8% | 631 円112 億円 | 670 円119 億円 | −49.3% | −6.6% | 104 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,551 円808 億円 | 1,537 円273 億円 | +137.3% | +9.0% | 6,088 円1,081 億円 |
今の株価時価総額 2,566 円456 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 9% 中東・アジアの新設ラッシュで遊戯機械が稼ぎ頭に戻る 利益 109 億円 · PER 15.0 倍 · 株価時価総額 9,164 円1,628 億円
遊戯機械の市場は中東とアジアの大型テーマパークの建設ラッシュに乗り、実質で今の1.4倍に広がる。三精・S&S・ベコマの3社連合は受注の窓口を一本化して案件を取り込み、世界シェアは9%に届く。ベコマの納期と原価の管理が定着し、遊戯機械の営業利益率は9.5%まで戻る。舞台設備はアリーナとコンサート会場の新設に改修が重なり、国内の取り分を3割強に保つ。昇降機は公共施設の改修が増え、保守の積み上げで利益率が上がる。中期計画のROE10%以上を余裕をもって超え、PBR1倍を安定して超える10年になる。本社費は物価で増えるが、売上の伸びに吸収される。純現金は工事の前受金を含むため、還元は利益の半分にとどめる。三精の買収が成功と呼ばれ、資本の使い方への信頼も高まる。
- 遊戯機械事業:数量 56.0(世界の遊戯機械新設市場(億ドル、推定、今の値段で測った実質))× 価格 18(実質の市場1ドルあたりの当社売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 1,013 億円・営業利益 96 億円。世界の遊戯機械新設市場56億ドル(実質)×シェア9.0%、営業利益率9.5%
- 舞台設備事業:数量 700(国内の舞台設備(新設・改修・仮設)の市場(億円、推定、実質))× 価格 41.5%(実質の市場1億円あたりの当社売上(億円)=シェア×物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 291 億円・営業利益 58 億円。国内の舞台設備市場700億円(実質)×シェア31.0%、営業利益率20.0%
- 昇降機事業:数量 0.2(取扱い台数に換算した年間の量(万台、推定。新設・改修工事と保守契約を1台あたりの年間売上に換算))× 価格 584(1台あたりの年間売上(万円))→ 売上 123 億円・営業利益 32 億円。取扱い2100台(換算)、営業利益率26%
倍率:事業の純利益 109 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.0 倍。全体の PER 14.96 倍、時価総額 1,628 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ベコマと米国での再建が実を結ぶ一方、中東の大型案件は確度にばらつきがあり、実現する確率は1割弱とみた。
やや楽観 24% 遊戯機械の利益が安定して中期計画を超える 利益 84 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 6,524 円1,159 億円
遊戯機械の市場は実質で今の1.3倍に育ち、三精グループは米国と中東で大型の受注を重ねてシェアを8.4%まで引き上げる。ベコマの再建は終わり、営業利益率は8%に乗る。舞台設備は改修需要の波が続き、コンサート向けの仮設舞台も増える。昇降機は新設が横ばいでも、改修と保守が伸びて安定した収益源になる。2028年3月期の中期計画の目標(売上750億円、純利益50億円)は達成し、その先も緩やかに伸びる。ただし遊戯機械は案件ごとの波が残り、利益率は舞台設備ほど高くならない。M&Aは小粒な買い足しにとどまり、減損は出ない。還元は利益の半分で、財務の安全域は保たれる。10年後の姿は、いまの好調が一段階だけ上に進んだ形だ。
- 遊戯機械事業:数量 51.0(世界の遊戯機械新設市場(億ドル、推定、今の値段で測った実質))× 価格 17(実質の市場1ドルあたりの当社売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 861 億円・営業利益 69 億円。世界の遊戯機械新設市場51億ドル(実質)×シェア8.4%、営業利益率8.0%
- 舞台設備事業:数量 670(国内の舞台設備(新設・改修・仮設)の市場(億円、推定、実質))× 価格 40.9%(実質の市場1億円あたりの当社売上(億円)=シェア×物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 274 億円・営業利益 52 億円。国内の舞台設備市場670億円(実質)×シェア30.5%、営業利益率19.0%
- 昇降機事業:数量 0.2(取扱い台数に換算した年間の量(万台、推定。新設・改修工事と保守契約を1台あたりの年間売上に換算))× 価格 584(1台あたりの年間売上(万円))→ 売上 116 億円・営業利益 28 億円。取扱い1980台(換算)、営業利益率24%
倍率:事業の純利益 84 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.81 倍、時価総額 1,159 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残が厚く、中期計画の目標が直近の実績からそう遠くない。これが実現する確率はやや高めに置いた。
中立 38% 遊戯機械は黒字を保つが、案件の波と競争で利益率は伸びない 利益 64 億円 · PER 12.6 倍 · 株価時価総額 4,720 円838 億円
遊戯機械の市場は実質で年1.4%ほど伸び、シェアは8.0%でほぼ横ばいとなる。受注残は厚いが、中東と米国の大型案件は競合との入札になり、値引きで利益率は6.5%にとどまる。舞台設備は国内の改修需要が支え、営業利益率は18%に落ち着く。昇降機は公共向けの新設・改修が堅調で、利益率は22%を保つ。本社費は物価で増え、全社の営業利益率は8.6%前後になる。今の9.0%からほとんど動かず、売上は物価と数量で名目1.5倍に増える。ROEは8%弱に着地し、資本コストをわずかに下回るかほぼ並ぶ10年になる。受注残は厚いが、入札で値を下げて取る案件も混ざり、完工のたびに原価の見直しで利益が上下する。M&Aは大型を避けて小さく動く。還元は利益の5割弱で、財務は変わらず堅い。派手さはないが、会社が壊れる筋書きでもない。
- 遊戯機械事業:数量 46.0(世界の遊戯機械新設市場(億ドル、推定、今の値段で測った実質))× 価格 16(実質の市場1ドルあたりの当社売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 740 億円・営業利益 48 億円。世界の遊戯機械新設市場46億ドル(実質)×シェア8.0%、営業利益率6.5%
- 舞台設備事業:数量 640(国内の舞台設備(新設・改修・仮設)の市場(億円、推定、実質))× 価格 40.2%(実質の市場1億円あたりの当社売上(億円)=シェア×物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 257 億円・営業利益 46 億円。国内の舞台設備市場640億円(実質)×シェア30.0%、営業利益率18.0%
- 昇降機事業:数量 0.2(取扱い台数に換算した年間の量(万台、推定。新設・改修工事と保守契約を1台あたりの年間売上に換算))× 価格 584(1台あたりの年間売上(万円))→ 売上 110 億円・営業利益 24 億円。取扱い1890台(換算)、営業利益率22%
倍率:事業の純利益 64 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.2% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.6 倍。全体の PER 12.64 倍、時価総額 810 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残は高水準だが、遊戯機械の利益は案件の波と競争で上下する。最も起きやすい姿として最大の確率を置いた。
やや悲観 21% 遊戯機械が再び低採算に戻り、舞台の利益率も縮む 利益 37 億円 · PER 5.4 倍 · 株価時価総額 1,508 円268 億円
遊戯機械の市場は伸び悩み、中国勢と欧州勢の低価格に押されてシェアは7.4%に下がる。ベコマは大型案件で原価が膨らみ、営業利益率は4%に戻る。舞台設備は公共ホールの改修予算が絞られ、民間の仮設需要も一巡して、利益率は15%まで下がる。昇降機は大手との入札競争が激しく、利益率が19%に縮む。全社の営業利益率は5%台に落ちる。2025年3月期以前の姿に近く、ROEは4%台となる。堀はあるが、稼ぐ力が資本コストに届かない10年になる。海外のM&Aで買った事業の減損が出て、還元も絞られる。本社費は物価で増え続け、利益を圧迫する。純現金は工事の運転資金に回り、見かけほど余らない。
- 遊戯機械事業:数量 41.0(世界の遊戯機械新設市場(億ドル、推定、今の値段で測った実質))× 価格 15(実質の市場1ドルあたりの当社売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 610 億円・営業利益 24 億円。世界の遊戯機械新設市場41億ドル(実質)×シェア7.4%、営業利益率4.0%
- 舞台設備事業:数量 590(国内の舞台設備(新設・改修・仮設)の市場(億円、推定、実質))× 価格 38.9%(実質の市場1億円あたりの当社売上(億円)=シェア×物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 229 億円・営業利益 34 億円。国内の舞台設備市場590億円(実質)×シェア29.0%、営業利益率15.0%
- 昇降機事業:数量 0.2(取扱い台数に換算した年間の量(万台、推定。新設・改修工事と保守契約を1台あたりの年間売上に換算))× 価格 584(1台あたりの年間売上(万円))→ 売上 102 億円・営業利益 19 億円。取扱い1750台(換算)、営業利益率19%
倍率:ROE 4.9%がk 8.0%を下回り、ためた利益は額面未満の価値。PERは1÷k=12.5倍が上限で、ROE÷k=0.62に比例して目減りし、上限の7.0割の5.4倍に置いた。
確率:遊戯機械は2025年3月期まで利益率が1%台と低採算だった。同じ構図が戻る可能性は2割強あるとみた。
悲観 8% 遊戯機械の構造的な負けで、優良な事業が舞台・昇降機だけになる 利益 9 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 631 円112 億円
中国メーカーの低価格攻勢と欧米の大手の囲い込みで、遊戯機械の新設市場は実質で今の9割に縮み、三精グループのシェアは6.2%まで落ちる。値引き受注が続き、営業利益率は1%にとどまる。ベコマかS&Sの減損と事業縮小が重なり、のれんの償却と再建費用が重くのしかかる。舞台設備は市場の縮小と入札の激化で利益率が10%に下がり、昇降機も13%に下がる。全社の営業利益はほぼ消え、ROEは1%台となる。残るのは舞台・昇降機の安定収益と、上場株式・手元の現金だけで、価値は稼ぐ力ではなく資産で測る10年になる。本社費は減らせず、固定費として重くのしかかる。のれんの減損で自己資本も一部削られる。還元は利益の4割を保つ前提だが、実額は小さい。会社が存続できなくなる姿ではなく、優良さを失った姿だ。
- 遊戯機械事業:数量 35.0(世界の遊戯機械新設市場(億ドル、推定、今の値段で測った実質))× 価格 12(実質の市場1ドルあたりの当社売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 417 億円・営業利益 4 億円。世界の遊戯機械新設市場35億ドル(実質)×シェア6.2%、営業利益率1.0%
- 舞台設備事業:数量 520(国内の舞台設備(新設・改修・仮設)の市場(億円、推定、実質))× 価格 36.2%(実質の市場1億円あたりの当社売上(億円)=シェア×物価の倍率(10年1.34倍))→ 売上 188 億円・営業利益 19 億円。国内の舞台設備市場520億円(実質)×シェア27.0%、営業利益率10.0%
- 昇降機事業:数量 0.2(取扱い台数に換算した年間の量(万台、推定。新設・改修工事と保守契約を1台あたりの年間売上に換算))× 価格 584(1台あたりの年間売上(万円))→ 売上 88 億円・営業利益 11 億円。取扱い1500台(換算)、営業利益率13%
倍率:悲観は稼ぐ力が資本コストに届かず、価値は売れる資産で測る。今の自己資本513億円に対し、床の資産112億円を掛けた値で、やや悲観より低い。
確率:海外勢の低価格攻勢が構造的に続く筋書きで、優良さを失う負け方。確率は低いが、起きれば大きいので1割弱に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
遊戯機械事業
ジェットコースターなど遊戯機械の設計・製造・施工。S&S(米)とベコマ(蘭)を含む。
| 数量世界の遊戯機械新設市場(億ドル、推定、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場1ドルあたりの当社売上(円)=シェア×150円×物価の倍率(10年1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 12 | 466 | 23 |
| 10 年後 中立 | 46.0 | 16 | 740 | 48 |
取り方:三精・S&S・ベコマの連結売上465.7億円(約3.1億ドル)。市場は開示がなく、Intamin・Mack Rides・Zamperla・B&M・ベコマなど主要メーカーの規模と中国勢を合わせ、年約40億ドル(実質)と推定し、シェア約7.8%と置いた。数量は市場、物価の分は価格に入れた。
舞台設備事業
劇場・ホール・アリーナの舞台機構、照明・音響の設備と改修、仮設舞台。国内最大手とされる。
| 数量国内の舞台設備(新設・改修・仮設)の市場(億円、推定、実質) | 価格実質の市場1億円あたりの当社売上(億円)=シェア×物価の倍率(10年1.34倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 620 | 30.0% | 186 | 40 |
| 10 年後 中立 | 640 | 40.2% | 257 | 46 |
取り方:舞台設備の売上185.8億円を、国内の新設・改修・仮設の市場を年約620億円(推定)、シェア約30%と置いて割った。公式の市場統計は無く、国内最大手との記述と受注残の厚さから置いた推定。
昇降機事業
エレベーター・エスカレーターの新設・改修・保守。官公庁・病院など公共向けが多い。
| 数量取扱い台数に換算した年間の量(万台、推定。新設・改修工事と保守契約を1台あたりの年間売上に換算) | 価格1台あたりの年間売上(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.2 | 436 | 79 | 21 |
| 10 年後 中立 | 0.2 | 584 | 110 | 24 |
取り方:昇降機の売上78.5億円を、換算台数1,800台(推定)で割り1台あたり約436万円と置いた。新設の単価は高く、保守は低いため混ざった平均。
リスクと懸念
遊戯機械の原価超過
受注工事は完工まで原価が確定しない。1件の見込み違いで、年度の営業利益が消える。遊戯機械は、2025年3月期まで利益率が1%台と低かった。受注残の厚さは安心材料だが、採算の薄い案件が混ざる可能性がある。
海外競合と中国勢の低価格
Intamin、Mack Rides、B&Mなどの大手に加え、中国メーカーが新興国の入札に入っている。値引き受注が増えれば、遊戯機械の利益率は戻らない。
M&Aの失敗と減損
中期計画はM&Aを含む新たな柱の創出を掲げる。2026年3月期にも子会社の計画未達で10億円の減損を計上した。FORRECなど買収後の統合が遅れれば、のれんが重荷になる。
舞台設備の改修需要の一巡
営業利益の半分近くを稼ぐ舞台設備は、国内の公共ホール改修に支えられている。改修の波が過ぎ、新設が人口減で細れば、利益率21%の維持は難しくなる。
受注の波と為替
遊戯機械は海外比率が高く、売上は大型案件の完工時期で大きく振れる。ドル建て案件の為替差損益も出るが、この分析では為替を動かさない。
純現金の見かけの厚さ
純現金126億円は時価総額の4分の1だが、受注工事の前受金や運転資金を多く含むとみる。工事が進めば取り崩され、還元に回せる分は見かけより小さい。
今後の分かれ目
- 遊戯機械の営業利益率が2年続けて7%を超えたら
- 黒字の定着とみて、楽観とやや楽観の確率を上げる。
- ベコマかS&Sで大型の減損や納期遅れが出たら
- やや悲観側に重みを移す。買収の見立てを見直す。
- 舞台設備の受注残が減り始めたら
- 改修需要の一巡とみて、舞台の利益率の前提を下げる。
- 中東や米国で数百億円規模の大型パークの受注が決まったら
- 遊戯機械の数量の前提を上げる。ただし原価管理を見るまで確率は動かさない。
- 上場株式を大きく売却して還元に回す発表が出たら
- 資本効率の改善として評価する。
見ておくもの
- 遊戯機械のセグメント利益率と、受注残の採算
- ベコマ・S&Sの減損と納期遅れの有無
- 舞台設備の受注残と改修案件の動き
- 中期計画(2028年3月期)の達成状況
倍率と資本コストの決め方
各事業を数量×価格で10年に積み、利益率は構造から置いた。倍率は式(正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)、k 8.0%、g 4%)の上限の7〜9割で、遊戯機械の利益の質が低いので中立は8割とした。ROEがkを下回る筋書きは1÷kに比例して目減りさせた。悲観は稼ぐ力が資産以下になるので、資産で測った。今の株価・PER・PBRや過去のPBRの底には寄せていない。リースは主要な事業ではなく扱わない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.46→14.96 倍・やや楽観 PER 11.74→13.81 倍・中立 PER 9.87→12.64 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k=基本7.5%+quality 0.5%=8.0%。遊戯機械の原価の読み違いやM&Aの実行は、k に足さず、やや悲観・悲観の筋書きと確率で表す。