結論
ワイエイシイホールディングスは、半導体装置、医療機器、環境・社会インフラ機器を手がける子会社の集まりだ。売上は約265億円で、半導体関連は4割にとどまる。筆者の結論は、会社が示す利益の回復を、今の値段はほぼ織り込んでいるというものだ。総合では割高(約−50%)になった。
今期の会社予想は、売上350億円、営業利益33億円。営業利益率は9.4%になる。過去12年の最高は2024年3月期の7.5%だ。中期経営計画は2度、下方修正されている。筆者は、この数字を中立の置き場にできないと見る。
財務は軽くない。借入は約236億円で、現預金を引いた純負債は104億円。自己資本の6割にあたる。利払いは金利の上昇で増える。
中立では、10年後の営業利益率を6.5%と置く。純利益は16億円、ROE(自己資本利益率)は7.7%で、資本コストの9.5%に届かない。事業は堅いが、株主に残る価値はその分小さい。
強みは、受注残が積み上がっていることだ。内示を含めると232億円で、前年比+15%。この受注が計画どおり利益に変われば、上振れの余地はある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、筆者が最初に見るのは「株主の手元に残る利益」だ。ワイエイシイは営業利益のうち、借金の利払いと税を引くと、残りは半分強になる。しかも自己資本は、毎年の利益で大きくは増えない。
堀は狭い。ニッチで長く付き合う顧客はいるが、値段を決める力があるとは言えない。10年先も、この事業が今より強いとは言い切れない。
資本の使い方には、評価できる点と心配な点がある。事業の整理や統合は進めている。だが、買収で何を得たかは、まだ数字で見えない。医療の新規事業は先行投資が続き、いつ稼ぐ側に回るかが読めない。
最後に安全域だ。今の時価総額は約204億円で、会社予想の純利益20億円の10倍ほど。その予想は、過去の最高を超える利益率を前提にしている。筆者は、その前提に安全域がないと見る。
逆に、この会社が利益率7%台を安定して出せれば、評価は変わる。その兆しは、受注残の消化にある。
何で稼ぐ会社か
子会社を3つの区分にまとめた複合グループだ。2026年3月期の売上は約265億円。
半導体・メカトロニクス関連が約104億円。半導体やディスプレイの製造装置と、搬送・真空・プラズマ関連の装置や部品を作る。6社を統合した事業で、AIやパワー半導体向けの量産新製品に力を入れる。かつて柱だった太陽電池やディスプレイ向けの装置は、投資が一巡して小さくなった。
医療・ヘルスケア関連が約55億円。人工透析装置が主力で、毛髪から体の状態を調べるSAMURAIと、血液の指標を調べるNeuroDetectを新しい事業として育てている。受注は前年比+37%と伸びたが、先行投資で利益は0.6億円にとどまる。
環境・社会インフラ関連が約106億円。制御通信機器、熱処理機、自動包装機などを作る4社に、2026年に加わった三和電気計器がある。景気に左右されにくい、手堅い事業だ。セグメント利益は7.2億円で、全体の稼ぎ頭になった。
本社費など、どの区分にも入らない費用が年に約9億円ある。セグメントの利益を足した22億円から、この分が引かれて、連結の営業利益は13億円になる。
優良さと弱いところ
筆者が見る堀は薄い。小さな会社が、それぞれのニッチで細く稼ぐ形だ。
各社は特定の顧客や用途に合わせた装置を作る。顧客との付き合いは長く、受注残も厚い。ただ、値段を自分で決められるほどの独占はない。粗利率は2026年3月期に下がった。
資本効率は低い。ROEの10年の中央値は5.8%で、資本コストを下回る年が多い。赤字の年は2020年3月期だった。
経営の強みは、事業の入れ替えが早いことだ。6社を1つの半導体事業に束ね、グループ各社の社長が営業本部長を兼ねる体制にした。不採算の整理も進める。一方で、中期経営計画は目標が2度下がり、立ち上げ中の新規事業は遅れている。
弱点は3つある。1つ目は借金の重さ。2つ目は半導体の投資の波。3つ目は医療の新規事業が、いつ利益に変わるか読めないことだ。
三和電気計器のような小さな買収は、安く買えた分が一度だけ利益に出る。だが、それは本業の稼ぐ力とは別の話だ。筆者は、買収の効果を判断するのは、買った会社が2年分の通期の利益を出してからでよいと考える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
事業が3つに分かれるので、業界も3つある。
半導体関連は、AIとパワー半導体の投資が追い風だ。世界の製造装置の市場は2026年に前年比+9%と見られる(SEMI)。ただ、当社が取り扱うのは、前工程の本体ではなく周辺の装置や部品だ。投資の波は同じように受けるが、AI向けの先端工程に直結する分は小さい。過去の半導体不況では、装置投資が4〜6割落ちた。ディスプレイ向けの投資は、さらに波が大きい。
医療は、透析患者数が高齢化で当面増える。透析装置の需要は安定するが、価格は診療報酬に縛られる。毛髪や血液の検査は新しい市場で、規模はまだ読めない。
環境・社会インフラは、電力・通信の制御機器、熱処理、包装といった景気に左右されにくい領域だ。人手不足による省力化の需要がある。脱炭素・脱プラスチックの装置も、新しい種になる。
3つの業界を平均すると、実質の成長は年2〜3%、物価を足して名目で年5%台が筆者の中立だ。
競争の形は、事業ごとに違う。半導体周辺は、国内外の装置・部品メーカーと顧客の案件ごとに競う。医療機器は、診療報酬と許認可の枠の中で、少数の機器メーカーが争う。環境・社会インフラは、顧客が電力会社や設備会社など特定の相手に偏り、長い付き合いで受注を守る。どこも市場の規模が小さいので、1社が大きなシェアを取っても、会社全体の規模は限られる。
資本政策と M&A
還元は配当が中心だ。方針は配当性向30%を目安にした安定配当で、2025年に累進配当を入れた。2026年3月期の配当性向は5割を超え、2027年3月期は約4割になる予想だ。
2025年11月には、10億円・140万株を上限にした自社株買いを決めた。期間は2026年5月末まで。実行済みの分は株数に入っている。
2026年には、三和電気計器と、その工場の資産管理会社を子会社にした。売上約16億円の老舗の計測器メーカーで、負ののれん、つまり安く買えた差額が利益に出た。中計は「戦略的M&Aの活用」を掲げるが、投資額や件数は示していない。
株主構成では、モモタケが13.7%を持つ筆頭株主だ。個人株主から増配の株主提案が出たが、会社は反対した。
借入は約236億円ある。借り換えのたびに金利が上がるので、自社株買いを増やす余裕は小さい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
強気の見方は、受注の勢いを根拠にする。受注高は2026年3月期に前年比+12%、内示を含めると+23%。受注残は内示込みで232億円と、売上の9割に迫る。今期の売上350億円は、この受注に支えられた数字だと言う。
半導体関連は、生成AIとパワー半導体向けの量産新製品が「元年」を迎える。6社を1つにして、営業と開発の重複を減らした。グループ各社の社長が営業本部長を兼ねる体制で、受注の取りこぼしも減る。
医療は、受注が+37%に伸びた。透析装置は高齢化で需要が堅く、毛髪検査と血液検査は立ち上がれば利益率が一気に上がる。環境・社会インフラは、すでにセグメント利益が+52%と伸びた。
三和電気計器のような買収を重ねれば、2030年に売上1,000億円という目標も視野に入る。同じ体制で収益力を高めれば、営業利益率が7%を超える年も十分ありうる。環境・社会インフラのような手堅い事業が土台にあるので、挑戦的な新規事業に資金を回せる、という主張だ。筆者から見ても、受注残の厚さは無視できない。
慎重な見方
慎重な見方は、まず実績を突く。中期経営計画の利益目標は2度下がった。2025年度の営業利益は50億円から20億円へ、2026年度は75億円から33億円へ。新しい数字も、過去の最高(営業利益率7.5%)より高い9.4%を置く。
利益の質も弱い。2026年3月期の純利益13億円は、負ののれんという一過性の益が支えた。営業利益は粗利率の低下で微減だった。
財務は軽くない。借入は約236億円、純負債は104億円で、自己資本の6割にあたる。借り換えで金利が上がれば、利益は削られる。ROEの10年の中央値は5.8%で、資本コストに届いていない。
医療の新規事業は、立ち上げが遅れ、利益は82%減った。半導体関連は4割を占め、顧客の設備投資が引けば、受注は急に細る。さらに、ディスプレイや太陽電池向けの装置は、投資の波に飲まれた過去がある。
筆者も、利益率の回復を数字で確かめるまでは、安全域は薄いと考える。
どちらに重みを置いたか
受注残の厚さは強気の見方に分がある。一方、計画の達成実績、借金の重さ、資本コストに届かないROEでは、慎重な見方が強い。
筆者は、中立を3割強で最も厚くし、やや悲観と悲観を合わせて41%まで増やした。中立の営業利益率は6.5%と、会社の目標よりかなり低い。確率で重ねた本質価値は、今の時価総額を半分ほど下回る。今の値段が正当化されるのは、楽観とやや楽観が続く時に近い。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 921 円162 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 388 円68 億円)。 今の値に割り戻すと 630 円111 億円、今との差 −43.0%、 期待の年率 +1.7%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,628 円462 億円 | 597 円105 億円 | +191.6% | +11.3% | 258 円45 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,522 円268 億円 | 483 円85 億円 | +81.3% | +6.1% | 361 円63 億円 |
| 中立 | 33% | 989 円174 億円 | 455 円80 億円 | +30.6% | +2.7% | 477 円84 億円 |
| やや悲観 | 25% | 320 円56 億円 | 341 円60 億円 | −40.3% | −5.0% | 165 円29 億円 |
| 悲観 | 16% | 192 円34 億円 | 114 円20 億円 | −72.3% | −12.1% | 49 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 921 円162 億円 | 388 円68 億円 | +18.4% | +1.7% | 1,310 円230 億円 |
今の株価時価総額 1,106 円195 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 中計どおりに量産新製品が立ち上がる 利益 38 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 2,628 円462 億円
会社の描いた絵がほぼ実現する10年だ。半導体・メカトロニクスは、生成AIやパワー半導体向けの量産新製品が当たり、実質の規模が8割増える。
医療は人工透析装置の拡販に加え、毛髪解析SAMURAIと血液マーカーNeuroDetectの検査が事業として立ち上がる。実質で2倍強になり、利益率も10%に届く。
環境・社会インフラは、脱炭素・脱プラスチック向けの装置が加わり、実質で3割増える。値上げも通り、価格は物価を少し上回る。
全体の営業利益率は9.7%と、過去12年の最高(7.5%)を上回る。それでも借金は着実に減り、配当は累進で増える。
- 半導体・メカトロニクス関連:数量 190(対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円))× 価格 1.40(値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34))→ 売上 266 億円・営業利益 40 億円。実質190億円の規模、営業利益率15.0%
- 医療・ヘルスケア関連:数量 120(対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円))× 価格 1.40(値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34))→ 売上 168 億円・営業利益 17 億円。実質120億円の規模、営業利益率10.0%
- 環境・社会インフラ関連(その他を含む):数量 140(対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円))× 価格 1.40(値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34))→ 売上 196 億円・営業利益 19 億円。実質140億円の規模、営業利益率9.5%
倍率:事業の純利益 38 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.9% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.16 倍、時価総額 462 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は2030年に売上1,000億円と掲げるが、計画は2度下方修正され、利益率9%台は過去12年の最高(7.5%)を超える。実現は少ないとみて1割未満にした。
やや楽観 18% 半導体と透析が育ち、利益率が7%台に乗る 利益 24 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,522 円268 億円
半導体の設備投資が途切れず、買収したグループ会社が力を出す10年だ。半導体・メカトロニクスは実質で5割強伸び、利益率は13.5%を保つ。
医療は透析装置が堅調で、検査サービスも遅れながら黒字に乗る。実質で6割伸び、利益率は7.5%になる。
環境・社会インフラは制御通信機器と熱処理機が安定し、実質で2割伸びる。
営業利益率は7.9%と過去の最高をわずかに超える。会社の目標には届かない。それでも、売上が名目で年6%ほど伸びる、堅実な成長といえる。
借金は減るが、還元は配当が中心で、自社株買いは小さい。M&Aは小粒のものを数件重ね、規模は少しずつ大きくなる。
- 半導体・メカトロニクス関連:数量 160(対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円))× 価格 1.37(値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34))→ 売上 219 億円・営業利益 30 億円。実質160億円の規模、営業利益率13.5%
- 医療・ヘルスケア関連:数量 90.0(対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円))× 価格 1.37(値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34))→ 売上 123 億円・営業利益 9 億円。実質90億円の規模、営業利益率7.5%
- 環境・社会インフラ関連(その他を含む):数量 125(対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円))× 価格 1.37(値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34))→ 売上 171 億円・営業利益 15 億円。実質125億円の規模、営業利益率8.5%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.8% が k 9.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.06 倍、時価総額 268 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残(内示込み232億円、前年比+15%)と医療の受注+37%は追い風。半導体の設備投資が数年続き、買収した会社の効果が出る形。計画の達成実績はないので2割弱に抑えた。
中立 33% 小さく堅く稼ぐ複合グループのまま10年が過ぎる 利益 16 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 989 円174 億円
小さく堅く稼ぐ10年だ。半導体・メカトロニクスは実質で3割伸び、利益率は12.5%。AIやパワー半導体の需要はあるが、顧客の投資の波で受注は振れる。
医療は実質で3割伸びる。透析装置が支え、検査サービスは時間をかけて黒字に近づくが、利益率は6%にとどまる。
環境・社会インフラは実質で6%増。制御通信機器や熱処理機、包装機は景気に左右されにくく、利益率は7.5%を守る。
全体の営業利益率は6.5%。会社の目標(9.4%)よりかなり低いが、過去の最高(7.5%)の内側に収まる。本社費は物価で増え、10年で1.34倍になる。
- 半導体・メカトロニクス関連:数量 135(対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円))× 価格 1.34(値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34))→ 売上 181 億円・営業利益 23 億円。実質135億円の規模、営業利益率12.5%
- 医療・ヘルスケア関連:数量 72.0(対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円))× 価格 1.34(値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34))→ 売上 97 億円・営業利益 6 億円。実質72億円の規模、営業利益率6.0%
- 環境・社会インフラ関連(その他を含む):数量 112(対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円))× 価格 1.34(値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34))→ 売上 150 億円・営業利益 11 億円。実質112億円の規模、営業利益率7.5%
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 174 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:売上はおおむね名目で年5%、利益率は過去の最高に届かない6%台。半導体の波と医療の立ち上げ遅れを織り込んだ、いちばん起こりやすい形。
やや悲観 25% 半導体が谷で細り、医療は赤字が残る 利益 8 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 320 円56 億円
半導体関連が谷に入り、そのまま低い水準が続く10年だ。顧客の設備投資が戻らず、半導体・メカトロニクスの実質規模はほぼ横ばいになる。利益率も10%台前半に下がる。
医療は、毛髪検査などの先行投資が実を結ばない。利益率は3%どまりで、全社の足を引っ張る。
環境・社会インフラは堅調だが、実質で微減する。値上げも物価に届かず、価格は10年で1.28倍にとどまる。
営業利益率は4.3%に下がる。利払いが重く、純利益は今の水準の半分以下になる。配当は累進を守るのがやっとだ。
自社株買いは止まり、借金の返済が優先される。それでも事業は続き、環境・社会インフラの安定した稼ぎが全体を支える。
- 半導体・メカトロニクス関連:数量 108(対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円))× 価格 1.28(値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34))→ 売上 138 億円・営業利益 15 億円。実質108億円の規模、営業利益率10.5%
- 医療・ヘルスケア関連:数量 55.0(対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円))× 価格 1.28(値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34))→ 売上 70 億円・営業利益 2 億円。実質55億円の規模、営業利益率3.0%
- 環境・社会インフラ関連(その他を含む):数量 98.0(対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円))× 価格 1.28(値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34))→ 売上 125 億円・営業利益 9 億円。実質98億円の規模、営業利益率7.0%
倍率:ROE 4.0%がk 9.25%以下で、ためた利益は額面を下回る価値なのでPERは1÷k=10.5倍まで。ROEがkを大きく下回り、構造的に細る筋書きなので低い倍率にした。上限の7.1割の7.5倍に置いた。
確率:半導体関連は4割を占め、投資の谷では受注が急に細る。医療は先行投資が続き、毛髪検査は立ち上げが遅れている。借金が重く、利払いが利益を削る。慎重な側が強いとみて厚めに置いた。
悲観 16% 半導体と医療が崩れ、借金だけが残る 利益 −3 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 192 円34 億円
半導体と医療が同時に崩れる10年だ。半導体関連は、顧客の投資が長く戻らず、海外の装置メーカーとの価格競争も続いて、実質規模が3割縮む。
医療は新規事業の失敗で、先行投資が回収できず、赤字が続く。減損も出る。
環境・社会インフラも需要が細り、価格を上げられない。
営業利益は赤字になり、借金の利払いだけが残る。自己資本は減損で痩せ、配当は減る。会社が事業を縮め、資産を切り売りして借金を返す形に近づく。
新規の買収はできなくなり、優秀な人材も流れる。残るのは、小さなニッチ事業と重い借入だ。株主に回る利益は、ほとんどなくなる。
- 半導体・メカトロニクス関連:数量 75.0(対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円))× 価格 1.15(値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34))→ 売上 86 億円・営業利益 5 億円。実質75億円の規模、営業利益率6.0%
- 医療・ヘルスケア関連:数量 38.0(対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円))× 価格 1.15(値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34))→ 売上 44 億円・営業利益 0 億円。実質38億円の規模、営業利益率0.0%
- 環境・社会インフラ関連(その他を含む):数量 88.0(対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円))× 価格 1.15(値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34))→ 売上 101 億円・営業利益 5 億円。実質88億円の規模、営業利益率4.5%
倍率:赤字で稼ぐ力がほぼ無いため、売れる資産の税後で測る。今の自己資本169億円に0.2倍を掛けた(約34億円)。現預金と売掛金を回収し、在庫と土地を値引きして売り、借入約236億円と買掛金を返すと残るのは数十億円という見立て。稼ぐ力と売れる資産の税後から置いた。
確率:顧客の設備投資が長く戻らず、医療の新規事業が失敗し、借り換えの金利が利益を削る複合の形。純負債が自己資本の6割あり、小さな会社ゆえ崩れ方が速いので、他社並みより少し厚い16%にした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
半導体・メカトロニクス関連
半導体・ディスプレイなどの製造装置、搬送・真空・プラズマ関連の装置と部品を手がける、6社を統合した事業。2026年3月期の売上は約104億円。
| 数量対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円) | 価格値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 104 | 1.00 | 104 | 14 |
| 10 年後 中立 | 135 | 1.34 | 181 | 23 |
取り方:開示は金額のみで台数は無い。国内外の半導体・ディスプレイ向けの装置や搬送・真空・プラズマ関連の周辺市場を数千億円規模と見て、当社のシェアを数%と推定し、実質の出荷規模104億円とした(今の値段で測る)。物価の分は価格の指数に入れ、数量には混ぜない。2026年3月期のセグメント利益は14.35億円。
医療・ヘルスケア関連
人工透析装置などの医療機器と、毛髪解析SAMURAIや血液マーカーNeuroDetectを使うヘルスケアサービス。2026年3月期の売上は約55億円で、利益は0.6億円。
| 数量対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円) | 価格値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 55.0 | 1.00 | 55 | 1 |
| 10 年後 中立 | 72.0 | 1.34 | 97 | 6 |
取り方:透析装置の国内市場と、検査・解析サービスの市場に当社のシェアを置いて推定した実質の規模55億円。受注は前年比+37%と伸びたが、毛髪検査の立ち上げ遅れと先行投資で利益は82%減の0.6億円。物価の分は価格の指数に入れた。
環境・社会インフラ関連(その他を含む)
制御通信機器、熱処理機、自動包装機などを作る子会社4社と、2026年に加わった三和電気計器を束ねた事業。2026年3月期の売上は約106億円(その他2億円を含む)。
| 数量対象市場(億円・実質)×当社シェアで推定した、当社の実質の出荷規模(億円) | 価格値段の指数(今=1.00、物価並みなら10年で1.34) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 106 | 1.00 | 106 | 7 |
| 10 年後 中立 | 112 | 1.34 | 150 | 11 |
取り方:制御通信機器・熱処理機・包装機・計測器の各ニッチ市場にシェアを置いて推定した実質の規模106億円。受注は+12%で、セグメント利益は52%増の7.2億円。三和電気計器(売上約16億円)は期の途中で加わったため、今の売上には一部しか入っていない。
リスクと懸念
利益目標が過去最高を超える
2027年3月期の会社予想は営業利益率9.4%。過去12年の最高は7.5%だ。中計は2025年と2026年に下方修正され、達成の実績がない。目標を中立に置くと、本質価値を過大に見る。
借金と金利
借入は約236億円、純負債は104億円。借り換えのたびに金利が上がり、10年で純利益が約3億円削られる。業績が落ちる年には、返済の余裕が小さくなる。
半導体投資の波
半導体・メカトロニクス関連は売上の4割。顧客の設備投資が4〜6割落ちた過去の谷では、小さな装置メーカーほど受注が急に細った。ディスプレイや太陽電池向けは、さらに波が大きい。
医療の新規事業が育たない
毛髪解析SAMURAIと血液マーカーNeuroDetectは立ち上げが遅れ、医療の利益は前期比82%減の0.6億円。先行投資が長引くと、減損や撤退のおそれがある。
利益の質
2026年3月期の純利益13億円は、三和電気計器の取得で出た負ののれん益が支えた。一過性を除くと、本来の稼ぎは8億円ほど。買収した会社が連結に入る初年度は、費用も重なる。
粗利率の低下
2026年3月期は粗利率の低下で、売上が34億円増えても営業利益は微減した。人件費と部材の値上がりを、値段に転嫁できなければ、売上が伸びても利益は増えない。
株主構成と提案
モモタケが13.7%を持つ筆頭株主で、個人株主からは増配の株主提案が出ている。会社は反対した。還元の方針をめぐる緊張は、今後の配当や自社株買いの動きにも影響しうる。
今後の分かれ目
- 受注残(内示込み232億円)が、売上に変わって営業利益率7%台が定着したら
- 中立の営業利益率(6.5%)が低すぎたことになる。やや楽観と楽観の確率を上げる。
- 次の中計で営業利益の目標を、過去の最高圏に置き直し、達成したら
- 計画の達成実績が付いたとみて、利益率の上限を引き上げる。
- 半導体の顧客が設備投資を大きく削り、受注が前年を割ったら
- やや悲観や悲観の筋書きに近づく。純負債の重さが効くので、財務への影響を先に確かめる。
- 医療のSAMURAIやNeuroDetectが黒字化の道筋を示したら
- 医療の利益率の前提(中立6%)を上げる。逆に減損が出たら、悲観の確率を上げる。
- 借入の返済が進んで純負債が自己資本の3割を下回ったら
- 借金の重さによる資本コストの上乗せ(+0.75%)を見直す余地が出る。
- 他社からの買収提案やTOBが出たら
- 事業の価値と提示額を比べる。10年以内のTOB確率は参考値で約2割。
見ておくもの
- 四半期ごとの受注高と受注残(内示込み)
- セグメント別の営業利益率(特に医療の黒字化)
- 純負債と借入の金利の動き
- 次の中計の利益目標と達成率
- 半導体関連の顧客の設備投資の計画
倍率と資本コストの決め方
3つの事業を、それぞれ実質の出荷規模(今の値段で測った億円)と価格の指数に分けて積んだ。価格は物価並みを基本に、悲観は競争で1.15倍までとした。本社費は物価で10年1.34倍に増やした。中立の営業利益率は6.5%で、過去12年の最高(7.5%)の内側。会社の目標(9.4%)は楽観にしか使っていない。純利益÷営業利益は過去の中央値0.62から、利払いの増加分だけ下げた。倍率はROEと資本コスト9.25%から式で出し、今の株価・同業のPERには寄せていない。数字は日本基準の今の形(家賃・リースは費用に入れた形)でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→12.16 倍・やや楽観 PER 9.8→11.06 倍・中立 PER 9.5→10.81 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +2.0% = 9.5%。個別のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.50% → 9.25%。