結論
石井表記は、プリント基板の洗浄や塗布の装置と、自動車や産業機械向けの電子部品を作る広島県福山市の会社だ。筆者の結論は「やや割高」。装置の利益率は高いが、売上の3分の2を占める部品が薄利で、全体の稼ぎは資本コストに届かない。
利益の大部分を稼ぐのは装置で、売上は48億円、営業利益は8億円だ。部品は売上108億円に対して利益が3億円しかない。
財務は健全だ。自己資本比率は67%、実質は無借金で、純現金は19億円ある。ただ装置の受注は、基板の投資が止まるたびに数年で上下する。直近の上方修正も、山に近い利益と見るのが安全だ。配当は増える見込みだが、増え方は穏やかだ。
時価総額は116億円で、事業の稼ぎに対して高くも安くもない。中立の10年でも、ROEは7%前後にとどまる。
筆者は、堀の強い会社ではないと見る。今の値段には安全域が足りない。装置の受注が次の谷に入れば、利益は1年で3割動く。山の利益に高い倍率を付けると、価値を高く見すぎる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、見るべきは「利益が毎年積み上がるか」と「資本をうまく使うか」だ。石井表記は、実質無借金で財務は堅い。ただ事業の稼ぎは、自己資本106億円に対して9億円で、資本コストを下回る。
装置は、基板の投資が止まれば受注が落ちる商売で、予測が難しい。オーナーとして長く持ちたい会社の条件は、利益が毎年読めることだ。この会社は山谷が大きく、1つの製品の成否に利益が左右される。
安全域も薄い。時価総額は純利益の13倍ほどで、山をならした利益で見ればさらに高い。純現金19億円は時価総額の1割台で、価格を支える床にはならない。
資本の使い方は、新工場への投資と配当に向いている。投資の稼ぎが資本コストを超えるかどうかが、これからの価値を決める。
筆者は、この会社に今の値段で十分な安全域を見いだせない。
何で稼ぐ会社か
石井表記は、電子部品の装置と部品の2本で稼ぐ会社だ。
1つは電子機器部品製造装置で、売上の約3割にあたる。プリント基板の表面を磨く研磨機、細かな粒子で洗うジェットスクラブ機、超音波洗浄機などを作る。近年はインクジェットで機能性の材料を塗る装置が加わった。客は日本、中国、米国の基板メーカーで、設備投資が決まれば台数がまとまって出る。2026年1月期の営業利益は8億円で、営業利益率は16%ある。
もう1つがディスプレイ及び電子部品で、売上の約7割を占める。産業機械の操作パネルであるメンブレンスイッチと、自動車の内装の加飾部品を作る。フィリピンと中国に子会社の工場を持つ。営業利益率は3%と低い。
受注は、装置が42億円で前期の97%、部品が108億円で110%だった。装置の受注残は25億円で、前期より2割減った。
2026年1月期の売上は156億円、営業利益は11億円、純利益は9億円だった。直近は上方修正が出て、2027年1月期の経常利益は15億円になると会社は見る。
設備投資は4億円強で、大半がフィリピンの新しい工場の分だ。
優良さと弱いところ
石井表記は、「装置は小さな専業で強い、部品は薄利で弱い」会社だ。
装置は、基板の洗浄と塗布という狭い分野で、顧客の工程に合わせた作り込みをしてきた。営業利益率は16%と高い。ただ市場そのものが小さく、中国の装置メーカーが安い装置で追い上げている。堀は強くない。
部品は、利益が薄い。自動車の内装は完成車メーカーが値段を決め、産業機械の操作パネルは競合が多い。フィリピンの新工場の償却が当面の重荷になる。
営業利益率は過去に3〜12%の幅を動いた。直近は7%台で、山の12%には届かない。ROEは過去10年の中央値で21%と高いが、これは自己資本が小さかった時期の数字だ。自己資本が106億円まで厚くなった今は8%台に下がった。
財務は堅い。営業利益は支払利息の19倍あり、潰れる心配は小さい。創業家と従業員持株会で持株の約15%を占め、経営は安定している。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
プリント基板の装置は、電子機器の投資と一緒に動く。スマートフォンやサーバーの需要が高まれば、基板メーカーが設備を増やし、洗浄や研磨の装置が売れる。逆に投資が止まると、真っ先に受注が落ちる。2013年、2017年、2020年、2025年と、谷は繰り返してきた。
AIサーバーの普及で、高い密度の基板と先端パッケージの需要は長期で伸びる。石井表記のインクジェット塗布装置は、この流れに乗れる製品だ。ただ顧客が大手の基板メーカーに集中し、装置の仕様は顧客が決める。
競合は、日系の中堅装置メーカーと、台湾・中国の装置メーカーだ。中国勢は安い装置で台数を増やしている。
自動車の内装部品は、世界の自動車生産に連動する。電動化で内装の加飾は増えるが、完成車メーカーの値下げ要請は強い。
筆者は、装置の台数は山谷をならして10年で5%増、部品は横ばいと置いた。値段は物価並みに上がるが、部品は物価よりやや低くなる。基板の高密度化は長い追い風だが、小さな会社が顧客の仕様の変化に付いていけるかは、確かめられていない。
資本政策と M&A
資本政策は穏やかだ。配当は安定して続ける方針で、2026年1月期は性向25%ほどだった。次期は増配の予定で、性向は3割を超える。自社株買いは大きくない。
親会社はなく、創業家の持株は約8%、従業員持株会が約7%だ。かつて大株主だった投資会社は、今の株主表には出てこない。
TOBや買収については、外部の推計で10年以内に2割ほどとされる。ただ、今回の調べで公開買付けや非公開化の発表は確かめられなかった。持ち合い株や賃貸不動産の大きな保有は確認できない。
設備投資は、フィリピンの工場に集中している。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
石井表記は、基板の装置という狭い分野で確かな実績を持つ。営業利益率16%の装置は、AIサーバー向けの高密度基板に乗れる製品だ。インクジェット塗布装置は、先端パッケージの量産に入れば台数が大きく伸びる。直近の上方修正は、その勢いの表れである。
部品も、フィリピンの新工場が稼働すれば規模が出て、利益率が3%から5%に上がる。自動車の内装は、電動化で加飾部品が増える。
財務は無借金に近く、純現金19億円に自己資本比率67%。配当は次期に増える予定で、さらに増える余地がある。時価総額は116億円と小さく、実績を積めば再評価される。装置のインクジェット技術は、特許と顧客との共同開発に支えられ、簡単には模倣されない。10年で装置の利益が倍になれば、全体の営業利益は20億円を超える。装置の高い利益率と、部品の規模の効果が重なれば、ROEは10%を超え、資本コストを上回る。受注残の減少は、顧客の発注の時期のずれにすぎない。
慎重な見方
装置の売上は、基板の投資が止まるたびに落ちてきた。受注残は前期より2割減り、先行きの勢いは弱い。中国の装置メーカーが安い装置で追い上げ、値上げは通りにくい。
部品は売上の3分の2を占めるのに、利益率は3%しかない。自動車の内装は完成車メーカーが値段を決め、フィリピンの新工場の償却と人件費の上昇で利益はむしろ削られる。
ROEは過去10年の中央値が21%でも、自己資本が厚くなった今は8%台で、資本コストに届かない。純現金は時価総額の16%で、安全域というには小さい。創業家と従業員持株会の持株が厚く、株主への還元が加速する圧力も弱い。営業利益は、2013年の谷では赤字にもなった。小さな会社が谷を耐えるには、現金が要る。その現金も新工場の投資で減っていく。装置の顧客は大手に集中し、1社の投資の中止が受注を大きく動かす。
上方修正も、1期の受注の山にすぎない可能性がある。山の利益に高い倍率を付けるのは危うい。新工場の償却が先に出れば、部品の利益率は今より下がる。配当の増額も、1期の好業績に合わせた一時の動きかもしれない。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方がやや強い。装置の高い利益率と無借金の財務は事実だが、全体の稼ぎは資本コストを下回り、受注は山谷が大きい。中立の倍率は式の上限(約10倍)を下回る9倍に置いた。確率は、山をならした姿に4割弱、悪い側に3割を置いた。強気側に寄せる材料は、インクジェット塗布装置の量産採用が確認されたときだ。逆に、装置の受注が2期続けて落ちれば、悪い側に確率を寄せる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/01 期)
確率で加重した株価時価総額 1,951 円156 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 520 円42 億円)。 今の値に割り戻すと 1,208 円97 億円、今との差 −10.6%、 期待の年率 +6.2%(資本コスト 8.5%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 4,044 円323 億円 | 751 円60 億円 | +255.0% | +13.5% | 480 円38 億円 |
| やや楽観 | 22% | 2,556 円204 億円 | 651 円52 億円 | +137.4% | +9.0% | 706 円56 億円 |
| 中立 | 38% | 2,040 円163 億円 | 576 円46 億円 | +93.6% | +6.8% | 994 円79 億円 |
| やや悲観 | 20% | 764 円61 億円 | 376 円30 億円 | −15.6% | −1.7% | 228 円18 億円 |
| 悲観 | 10% | 557 円45 億円 | 75 円6 億円 | −53.2% | −7.3% | 63 円5 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,951 円156 億円 | 520 円42 億円 | +82.9% | +6.2% | 2,471 円197 億円 |
今の株価時価総額 1,351 円108 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.5% を下回るほど割高。
楽観 10% 先端基板向けの塗布装置が当たり、装置の利益率が2割に乗る 利益 22 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 4,044 円323 億円
AI向けサーバーの基板と先端パッケージの投資が長く続き、機能性材料を塗るインクジェット装置が量産ラインに入る。装置の台数は3割増え、値段も物価以上に上がる。受注の山は高く、利益率は2割に乗る。ただし、装置は受注が数年で上下する商売で、この水準が10年続くとは見ない。部品のほうは、フィリピンの新工場が稼働し、自動車の内装向けで規模が出る。利益率は6%まで上がるが、10%には届かない。配当は性向を上げ、10年で60億円ほどを返す。純現金は積み上がり、時価総額の評価にも加わる。それでも自己資本が厚くなるぶんROEは9%台にとどまり、資本コストを大きく超えることはない。
- 電子機器部品製造装置(基板の研磨・洗浄・インクジェット塗布):数量 219(出荷台数相当(台。推定))× 価格 0.42(1台あたり売上(億円。名目))→ 売上 92 億円・営業利益 18 億円。台数1.35倍・単価1.40倍
- ディスプレイ及び電子部品(操作パネル・自動車内装部品):数量 2,153(出荷セット相当(万セット。推定))× 価格 0.07(1セットあたり売上(万円。名目))→ 売上 144 億円・営業利益 9 億円。台数1.00倍・単価1.34倍
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.3% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.66 倍、時価総額 300 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:AI向け基板の投資が続き、塗布装置が当たる筋書きは、足元の上方修正の勢いにも合う。ただ装置は受注の山谷が大きく、小さな会社の1つの製品の成否に左右される。1割にとどめた。
やや楽観 22% 装置が堅調に伸び、フィリピンの工場が利益に貢献する 利益 16 億円 · PER 12.2 倍 · 株価時価総額 2,556 円204 億円
装置は、プリント基板の高密度化に支えられて堅調に伸びる。台数は2割弱増え、値段は物価並みに上がる。山と谷はあるが、10年の平均では利益率が17%台に収まる。部品は、台数は横ばいで、フィリピンと中国の工場への投資が利益に出る。営業利益率は5%に上がる。配当は性向を引き上げ、10年で50億円ほどを返す。借入は小さく、利払いは負担にならない。ただ装置の受注は途中で必ず谷を通り、利益が一直線に伸びるわけではない。山と谷を均すと、営業利益は今の1.5倍ほどに収まる。フィリピンの工場は軌道に乗り、部品の利益率が少しずつ上がる。物価の分の値上げは、装置では通りやすいが、部品では半分ほどにとどまる。
- 電子機器部品製造装置(基板の研磨・洗浄・インクジェット塗布):数量 192(出荷台数相当(台。推定))× 価格 0.41(1台あたり売上(億円。名目))→ 売上 79 億円・営業利益 14 億円。台数1.18倍・単価1.37倍
- ディスプレイ及び電子部品(操作パネル・自動車内装部品):数量 2,153(出荷セット相当(万セット。推定))× 価格 0.07(1セットあたり売上(万円。名目))→ 売上 142 億円・営業利益 7 億円。台数1.00倍・単価1.32倍
倍率:事業の純利益 16 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 8.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.2 倍。全体の PER 12.2 倍、時価総額 189 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:足元の受注は部品が堅調で、装置の受注は前年を下回る。装置が10年で伸びる余地はあるが、山谷をならした伸びと見て、2割強を置いた。
中立 38% 装置は山谷をならして小幅に伸び、部品は薄利のまま 利益 13 億円 · PER 11.8 倍 · 株価時価総額 2,040 円163 億円
装置は、受注の山谷をならして台数が5%ほど増える。基板の高密度化は追い風だが、中国の装置メーカーとの価格競争が値上げを抑える。利益率は過去の山より低い15%で置く。部品は、自動車の内装向けが横ばいで、値段は完成車メーカーに押されて物価よりやや低く上がる。工場の減価償却は取得時の値段のままだが、新工場の分が足される。更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、現金の増え方は利益より遅くなる。配当は性向30〜40%を保ち、10年で46億円ほどを返す。部品の利益率が3%台から動かないかぎり、全体の稼ぎは自己資本の7%前後にとどまる。
- 電子機器部品製造装置(基板の研磨・洗浄・インクジェット塗布):数量 171(出荷台数相当(台。推定))× 価格 0.40(1台あたり売上(億円。名目))→ 売上 69 億円・営業利益 10 億円。台数1.05倍・単価1.34倍
- ディスプレイ及び電子部品(操作パネル・自動車内装部品):数量 2,110(出荷セット相当(万セット。推定))× 価格 0.07(1セットあたり売上(万円。名目))→ 売上 137 億円・営業利益 6 億円。台数0.98倍・単価1.30倍
倍率:事業の純利益 12 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 8.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.8 倍。全体の PER 11.76 倍、時価総額 147 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去の営業利益率は3〜12%で、直近は7%台。堀の強い会社ではないので、山をならした姿を最も重く見て4割弱にした。
やや悲観 20% 基板投資の谷が長引き、部品も値下げを迫られる 利益 7 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 764 円61 億円
基板への投資の谷が長引く。装置の受注は、顧客の設備投資が止まると真っ先に落ちる。台数は15%減り、値上げも通りにくくなる。部品のほうは、自動車の減産と完成車メーカーの値下げ要請で台数が減り、利益率は2%に沈む。純利益は6億円台まで落ちる。配当は性向を守るが、利益が小さいので額は減る。10年で30億円ほどにとどまる。純現金は守られるが、新工場の投資が重荷になり、使える現金は細る。営業利益は8億円前後と、今より少ない。顧客の設備投資が戻るまでは、受注残も積み上がらない。物価で人件費が上がる分、利益率は圧迫される。
- 電子機器部品製造装置(基板の研磨・洗浄・インクジェット塗布):数量 138(出荷台数相当(台。推定))× 価格 0.39(1台あたり売上(億円。名目))→ 売上 54 億円・営業利益 6 億円。台数0.85倍・単価1.30倍
- ディスプレイ及び電子部品(操作パネル・自動車内装部品):数量 1,981(出荷セット相当(万セット。推定))× 価格 0.06(1セットあたり売上(万円。名目))→ 売上 124 億円・営業利益 3 億円。台数0.92倍・単価1.25倍
倍率:k は8.5%。利益が小さく、受注が谷にある。PERの上限(1÷k=11倍)の7割台として8倍。
確率:基板投資の谷は2013年、2017年、2020年、2025年と繰り返してきた。谷が長引き部品も押される筋書きは、2割は十分にある。
悲観 10% 装置が中国勢に置き換わり、自動車向け部品も失う 利益 −2 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 557 円45 億円
構造的に負ける。基板の生産が中国と台湾に寄り、日本の装置は価格で置き換えられる。インクジェット装置は、大手の装置メーカーに同じ機能を内製される。部品のほうは、自動車の内装部品の発注が主要メーカーに集約され、台数が4分の3に減る。フィリピンの新工場は稼働が上がらず、減損が出る。赤字が続き、配当は大きく減らす。株主の取り分は、現金と売れる資産が中心になる。装置の売上は半分近くに縮み、営業利益はほぼゼロに沈む。工場と設備は、事業が縮めば簿価では売れない。10年先の会社は、小さな装置メーカーとしてかろうじて残る姿だ。
- 電子機器部品製造装置(基板の研磨・洗浄・インクジェット塗布):数量 89.4(出荷台数相当(台。推定))× 価格 0.36(1台あたり売上(億円。名目))→ 売上 32 億円・営業利益 1 億円。台数0.55倍・単価1.20倍
- ディスプレイ及び電子部品(操作パネル・自動車内装部品):数量 1,615(出荷セット相当(万セット。推定))× 価格 0.06(1セットあたり売上(万円。名目))→ 売上 90 億円・営業利益 −2 億円。台数0.75倍・単価1.12倍
倍率:構造的に負けた事業は稼ぐ力が赤字で、床は現金と売れる資産に頼る。今の自己資本106億円に0.42を掛ける(ためた利益には掛けない)。
確率:装置の構造的な置き換えと、主要顧客の集約が重なる筋書きだ。無借金に近く、純現金があるので、1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
電子機器部品製造装置(基板の研磨・洗浄・インクジェット塗布)
プリント基板の研磨機、ジェットスクラブ機、超音波洗浄機と、機能性材料を塗るインクジェットのコーターなど。国内と中国、米国に納める。
| 数量出荷台数相当(台。推定) | 価格1台あたり売上(億円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 163 | 0.30 | 49 | 8 |
| 10 年後 中立 | 171 | 0.40 | 69 | 10 |
取り方:売上は2026/01期の電子機器部品製造装置48.76億円、営業利益8.06億円。台数は開示がないので、平均3,000万円の装置が約160台売れた計算で推定した。受注は42億円、受注残は25.6億円で前期比2割減。
ディスプレイ及び電子部品(操作パネル・自動車内装部品)
産業機械の操作パネル(メンブレンスイッチ)と、自動車の内装の加飾部品。フィリピンと中国の子会社で作る。
| 数量出荷セット相当(万セット。推定) | 価格1セットあたり売上(万円。名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/01 | 2,153 | 0.05 | 108 | 3 |
| 10 年後 中立 | 2,110 | 0.07 | 137 | 6 |
取り方:売上は2026/01期のディスプレイ及び電子部品107.64億円、営業利益3.34億円。セット数は開示がないので、1セット平均0.05万円と置いて売上から推定した。受注は108億円で前期比1割増。
リスクと懸念
基板投資の谷で受注が落ちる
装置の受注は、基板メーカーの設備投資に左右される。2013年、2017年、2020年、2025年に谷があった。受注残は前期より2割減っており、谷に入ると売上と利益が1年で3割動く。
中国の装置メーカーの追い上げ
中国の装置メーカーが、安い値段で台数を増やしている。研磨や洗浄は差別化が難しく、値下げ圧力が強い。インクジェット塗布装置が代わりの柱になるかが課題だ。
部品の利益が出ない
売上の3分の2を占める部品は、営業利益率が3%しかない。自動車の内装は完成車メーカーが値段を決め、原材料の値上がりの転嫁が遅れる。利益が出ないと、全体の稼ぎが伸びない。
フィリピンの新工場
設備投資の大半がフィリピンの工場に向かっている。稼働が遅れたり、顧客の発注が想定を下回ったりすると、償却が先に出て利益を削る。為替の影響も受けやすい。
小さな会社の人材と技術
従業員数が少なく、装置の設計は特定の技術者に頼る部分が大きい。人が抜けると製品の更新が遅れる。株の流動性も低い。
自動車の減産
自動車の内装部品は、世界の自動車生産に連動する。完成車メーカーが減産に動くと、部品の売上が落ちる。顧客が集約されれば、発注を失うリスクもある。
今後の分かれ目
- インクジェット塗布装置が先端パッケージの量産ラインに採用された場合
- 装置の台数と利益率が上がり、強気の筋書きに近づく。ただし採用の発表は小さな会社の業績を大きく動かす。
- 装置の受注が2期続けて前年を下回った場合
- 基板の投資が谷に入ったと見て、慎重な筋書きに寄る。受注残の減少が目安になる。
- フィリピン工場の稼働率が上がり、部品の利益率が5%を超えた場合
- 全体の稼ぎが資本コストに近づき、中立の倍率を上限に近づけて見られる。
- 自動車の完成車メーカーが部品の発注を集約した場合
- 部品の台数が減り、悲観の筋書きが現実味を帯びる。
- 配当性向を引き上げ、自社株買いを始めた場合
- 純現金が株主に戻る道筋が見え、現金の評価が上がる。
見ておくもの
- 装置の受注高と受注残(四半期)
- インクジェット塗布装置の量産採用の発表
- 部品の営業利益率
- フィリピン工場の稼働状況と償却
- 配当性向と自社株買いの有無
倍率と資本コストの決め方
倍率は式(正当化PER)から置いた。事業のROEが7%前後で資本コスト8.5%を下回り、上限は1÷k。今の株価や、足元の上方修正の勢いに寄せていない。山をならした利益を基準に、受注の山の利益を倍率で高く見ない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.5→13.66 倍・やや楽観 PER 9.5→12.2 倍・中立 PER 9→11.76 倍)。
資本コスト 8.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%に quality +1.25% を足した8.75%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.50%。