結論
宇野澤組鐵工所は、東京都大田区の玉川工場で真空ポンプと送風機を作る、創業100年を超える会社だ。ただ、利益の姿はポンプの会社ではない。営業利益5.6億円のうち4.8億円は、渋谷区に持つ賃貸ビルの家賃が生んでいる。ポンプなど製造の利益は1億円に届かない。
筆者の結論は、10年の稼ぐ力で測ると今の値段はやや高い、というものだ。ビルの時価は137億円と帳簿の10倍近くあり、税を引いても時価総額の2倍を超える。だが会社は創業家の資産管理会社が34%を握り、配当は利益の1割強しか出さない。ビルを売って株主に返す道は見えない。
家賃は安定しているが、物価ほどには上がりにくい。製造は値段の競争が厳しく、工場の建て替えに27億円を投じる計画もある。稼ぐ力は年5億円前後で、株主の取り分はその一部にとどまる。
資産の価値と、株主が受け取れる価値の間には大きな溝がある。その溝が埋まる兆しが出るまでは、帳簿の外の含み益を安全域とは呼べないと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い資産を持つが、株主のために使われない会社」だ。
渋谷のビルは本物の資産だ。税を引いても時価総額の2倍の価値があり、家賃は物価とともに上がる。オーナーとして持つなら、これほど安心な稼ぎはない。
だが、その稼ぎの行き先が問題だ。会社は家賃を製造の工場につぎ込み、配当は利益の1割強しか出さない。製造は値段を決める力が弱く、資本コストを上回って稼ぐ見込みは薄い。良い資産の稼ぎを、弱い事業に回し続けている形だ。
創業家が3分の1を握り、流通する株は4分の1しかない。少数株主は、ビルの価値が実現する時期も方法も決められない。資産の売却や会社の売却が起きれば一気に報われるが、それは賭けであって安全域ではない。筆者は、家賃と製造の稼ぐ力で測るのが筋だと見る。
逆に、承継の場面で資産の扱いが示されれば、評価は大きく変わりうる。
何で稼ぐ会社か
事業は2つある。2026年3月期の売上49億円のうち、製造が43億円、不動産が6億円だ。利益は逆で、製造が0.9億円、不動産が4.8億円になる。
製造の中心は真空ポンプと送風機だ。真空ポンプは石油化学・医薬品・食品・半導体の工場で、容器や配管の中の空気を抜く。送風機と圧縮機は、下水処理場や工場に大量の空気を送る。売上は真空ポンプが14億円、送風機と圧縮機が13億円で、部品と修理がそれぞれ9億円と6億円ある。
部品と修理は、納めた機械が動く限り続く仕事で、製造の中では利幅が厚い。一方で新しい機械は、国内外の競合の安い製品と値段で競う。主な材料の鋳物は、作る業者が減って値段が上がっている。2026年3月期は受注残が前年から7億円減り、製造の利益は2割減った。
不動産は渋谷区のオフィスビルの賃貸だ。土地は約2,500平方メートルで、東急不動産が主な借り手になっている。家賃は年6億円強で、建物の償却と管理の費用を引いても、売上の7割以上が利益に残る。
会社は玉川工場に新しい機械加工棟と組立棟を建て、大型の送風機と真空ポンプを増やす計画だ。投資は2028年までに27億円と、今の自己資本の7割に当たる。
優良さと弱いところ
事業の質は2つに分けて見る必要がある。
賃貸ビルは良い資産だ。渋谷という立地は、10年先も借り手が見つかる場所だ。大手の不動産会社がまとめて借りる形で、空室の心配も小さい。家賃は数年ごとの見直しで少しずつ上がり、古い建物の償却は増えないので、利益は物価とともに膨らみやすい。
製造は弱い。真空ポンプと送風機は、樫山工業や海外の大手など競合が多く、値段を決める力は乏しい。過去10年の製造の利益率は数%にとどまり、赤字の年もあった。会社自身が「製造事業の安定的な黒字化」を課題に掲げているのが、その証拠だ。
資本の使い方には疑問が残る。ビルの稼ぎを配当に回さず、工場の建て替えにつぎ込んでいる。製造が資本コストを上回って稼ぐ見込みは薄い。創業家の会長は80代半ばで、事業の承継の行方も見えない。資産の厚さに比べて、株主の取り分は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
真空ポンプの市場は、半導体・化学・医薬・食品の工場の設備投資で動く。世界ではアトラスコプコやエドワーズ、国内では樫山工業やアルバックなどの大手が強い。半導体向けのドライ真空ポンプは大手が押さえ、宇野澤は化学や食品の工場向けの汎用品と大型品が中心だ。
送風機と圧縮機は、下水処理場や工場の排水処理、製鉄・セメントの工場で使う。国内の下水道は老朽化した設備の更新期にあり、省エネの送風機への置き換えは10年続く需要だ。ここは宇野澤が伸ばしている分野でもある。
一方で、国内の工場の新設は少なく、新しい機械の量は大きくは伸びない。海外の安い製品も入ってくる。部品と修理の仕事は、納めた機械の台数が支えるので、急には減らない。
渋谷のオフィスの市場は、再開発で新しいビルが増え、古いビルの家賃は伸びにくい。それでも渋谷は人気の高い立地で、借り手がいなくなる心配は小さい。
筆者は、10年で製造の量はわずかに増え、値段は物価並みと見る。ビルの家賃は物価よりやや遅れて上がる。
真空ポンプでも、部品と修理の売上は景気の谷でも大きくは落ちない。納めた機械の台数が、会社の下支えになっている。
資本政策と M&A
還元は安定配当が基本で、2026年3月期の配当は総額0.55億円、純利益の1割強にとどまる。自社株買いはしていない。
筆頭株主は、創業家の資産管理会社であるウノザワコーポレーションで、議決権の34%を持つ。その株主は宇野澤奨学会と一般社団法人、会長個人で、会長は当社の代表取締役も務める。流通する株は全体の4分の1ほどで、2025年には流通株式の時価総額が基準に届かず、上場の維持が一時危ぶまれた。2026年3月末で基準に戻っている。
現金は借入とほぼ同じで、余った現金は小さい。工場の建て替えの27億円は、ビルの家賃と借入で賄うとみられる。ビルを売って株主に返す、あるいは会社ごと買われるといった動きが出れば価値は大きく変わるが、創業家の意向次第だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社は、渋谷のビルだけで時価総額の2倍の価値がある。時価137億円から税を引いても85億円が残り、時価総額49億円のほぼ倍だ。ポンプの事業と大田区の工場の土地は、ただでついてくる。
ビルの稼ぎは強い。家賃は数年ごとの見直しで上がり、古い建物の償却は増えない。物価が3%で続けば、家賃の利益は10年で3割以上増える。渋谷は東京でも人気の高い場所で、借り手が消える心配は小さい。
製造も変わり始めている。送風機と修理は伸びており、2028年に新しい工場ができれば大型の送風機を量産できる。下水処理場の更新は10年続く需要だ。
創業家の会長は80代半ばで、いずれ承継の時が来る。その時にビルを売るか、会社ごと売るかの判断が出る。資産の大きさを考えれば、どちらに転んでも少数株主に大きな上振れがある。下値も、ビルの価値が支える。
借金も重くない。現金は借入とほぼ同じで、家賃が利払いを何倍も上回る。悪い筋書きでも、ビルの値段が時価総額を支える。
慎重な見方
ビルの価値は、株主のものではない。創業家の資産管理会社が3分の1を握り、配当は利益の1割強しか出さない。ビルを売って返す計画もない。株主が受け取れるのは、少ない配当だけだ。
しかも会社は、ビルの稼ぎを製造の工場につぎ込んでいる。2028年までに27億円、自己資本の7割に当たる額だ。製造は値段を決める力が弱く、利益率は数%しかない。良い資産の稼ぎを、稼がない事業に変えている。
家賃も安泰ではない。渋谷では新しいビルが次々にでき、古いビルの家賃は伸びにくい。建物はいずれ建て替えが要り、建築費の上昇でその負担は重くなる。
承継の時に売られるという期待も、当てにならない。奨学会や社団法人が株主の資産管理会社は、売らずに持ち続ける形を選ぶことが多い。資産があることと、それが株主に届くことは別の話だ。
上場の維持も心配だ。流通する株は4分の1しかなく、2025年には基準を割って監理銘柄に指定された。株価が下がれば、同じことがまた起きる。
どちらに重みを置いたか
ビルの価値の大きさは、強気の言い分のとおりだ。だが、それを売るか返すかは創業家が決め、今は製造への投資に回っている。確率は中立を中心に置き、ビルの売却や会社の売却が起きる筋を強気の側に1割強だけ残した。配当の方針が変わるか、ビルの扱いが示されれば、見方を強気に寄せる。それまでは、資産の大きさを価値として数えない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 6,143 円68 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 627 円7 億円)。 今の値に割り戻すと 3,344 円37 億円、今との差 −24.6%、 期待の年率 +4.3%(資本コスト 7.8%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 9,508 円105 億円 | 905 円10 億円 | +134.8% | +8.9% | 1,250 円14 億円 |
| やや楽観 | 23% | 7,298 円81 億円 | 724 円8 億円 | +80.9% | +6.1% | 1,845 円20 億円 |
| 中立 | 37% | 6,193 円68 億円 | 634 円7 億円 | +53.9% | +4.4% | 2,526 円28 億円 |
| やや悲観 | 18% | 4,075 円45 億円 | 453 円5 億円 | +2.1% | +0.2% | 815 円9 億円 |
| 悲観 | 10% | 2,988 円33 億円 | 362 円4 億円 | −24.5% | −2.8% | 335 円4 億円 |
| 加重平均 | 100% | 6,143 円68 億円 | 627 円7 億円 | +52.7% | +4.3% | 6,771 円75 億円 |
今の株価時価総額 4,435 円49 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 12% 新工場で大型の送風機が伸び、家賃も物価以上に上がる 利益 8 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 9,508 円105 億円
下水処理場の設備の更新と省エネの需要で、大型の送風機の注文が増える。2028年に完成する新しい組立棟で量をこなせるようになり、製造の台数は2割増える。部品と修理も納めた台数とともに増え、製造の利益率は5%に上がる。
渋谷のビルは、周りの再開発で街の価値が上がり、家賃は10年で4割以上上がる。古い建物の償却は増えないので、利益は家賃の伸び以上に膨らむ。
営業利益は11億円、純利益は7.6億円になる。配当も少しずつ増え、ROEは資本コストを上回る。会社が買われる側に回る可能性も出てくるが、それは筋書きの外に置く。
資産の価値が稼ぎとして見えるようになり、少数株主もその一部を受け取れる。
- 製造事業(真空ポンプ・送風機・圧縮機・部品・修理):数量 2,600(製品の出荷台数(台、推定))× 価格 280(1台あたりの売上(万円、推定。部品と修理を含む))→ 売上 73 億円・営業利益 4 億円。大型の送風機が伸びる
- 不動産事業(渋谷の賃貸ビル):数量 15.0(賃貸の床面積(千平方メートル、推定))× 価格 0.62(1千平方メートルあたりの年間賃料(億円、推定))→ 売上 9 億円・営業利益 7 億円。家賃4割強上げ・償却は据え置き
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍。全体の PER 13.81 倍、時価総額 105 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:下水処理場の更新と大型の送風機の需要は実在し、新工場の計画もある。ビルの家賃の見直しも追い風だ。製造の利益率が過去にない水準へ上がる筋なので1割強とした。
やや楽観 23% 製造の採算が少し戻り、家賃は物価並みに近づく 利益 6 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 7,298 円81 億円
送風機と修理の仕事が伸び、真空ポンプの落ち込みを埋める。新しい機械加工棟で外注が減り、製造の利益率は3.5%に戻る。新工場の償却は増えるが、量の伸びで吸収できる。
ビルの家賃は数年ごとの見直しで物価に近いペースで上がり、10年で3割強上がる。管理の費用は物価並みに増えるが、建物の償却は据え置きだ。
営業利益は9億円近く、純利益は6億円台になる。配当は利益の1割台のままで、利益の多くは工場と現金にたまる。ROEは資本コストと同じくらいに落ち着く。資産の大きさに比べれば、株主の取り分はまだ小さい。
下水処理場の更新の仕事が、製造の量を下支えする。
- 製造事業(真空ポンプ・送風機・圧縮機・部品・修理):数量 2,450(製品の出荷台数(台、推定))× 価格 268(1台あたりの売上(万円、推定。部品と修理を含む))→ 売上 66 億円・営業利益 2 億円。送風機と修理が伸びる
- 不動産事業(渋谷の賃貸ビル):数量 15.0(賃貸の床面積(千平方メートル、推定))× 価格 0.57(1千平方メートルあたりの年間賃料(億円、推定))→ 売上 9 億円・営業利益 7 億円。家賃3割強上げ
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.7% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 81 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:送風機と修理は伸びており、新工場で納期が短くなれば利幅も戻る。家賃の見直しも続くので2割強。
中立 37% 家賃が支え、製造は低空飛行のまま 利益 5 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 6,193 円68 億円
筆者が最も起こりやすいと見るのは、今の形が続く姿だ。製造の台数は1割弱増えるが、競合の安値と鋳物の値上がりに押され、利益率は2.5%にとどまる。新工場の償却も重しになる。
ビルの家賃は物価よりやや遅れ、10年で2割5分上がる。建物の償却は増えないので、利益は6億円近くになる。
営業利益は7.5億円、純利益は5.3億円だ。配当は利益の1割台で、残りは工場と現金にたまる。自己資本は倍になり、ROEは7%弱に下がる。ビルの含み益は帳簿の外に眠ったままで、株主の手には届かない。会社は創業家の手で、静かに続いていく。
- 製造事業(真空ポンプ・送風機・圧縮機・部品・修理):数量 2,300(製品の出荷台数(台、推定))× 価格 268(1台あたりの売上(万円、推定。部品と修理を含む))→ 売上 62 億円・営業利益 2 億円。台数1割弱増・単価は物価並み
- 不動産事業(渋谷の賃貸ビル):数量 15.0(賃貸の床面積(千平方メートル、推定))× 価格 0.53(1千平方メートルあたりの年間賃料(億円、推定))→ 売上 8 億円・営業利益 6 億円。家賃2割5分上げ・償却は据え置き
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 7.75% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍。全体の PER 12.9 倍、時価総額 68 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去10年、製造の利益は数%で推移し、家賃が全社を支える形が続いてきた。その形が続く最も自然な姿として4割弱。
やや悲観 18% ビルの借り手が替わって家賃が下がり、製造は赤字に 利益 2 億円 · PBR 1.2 倍 · 株価時価総額 4,075 円45 億円
渋谷の再開発で新しいオフィスが次々にできる。東急不動産との契約の見直しで家賃は据え置かれ、空室の手当ての費用も増える。ビルの利益は4億円ほどに落ちる。
製造は、海外の安い真空ポンプに押され、新工場の償却と人件費の上昇が重なって赤字になる。会社はそれでも工場の投資を続ける。
純利益は2億円台に落ちる。価値は稼ぐ力では測れず、ビルと現金の売れる値で決まる。ただ創業家の会社は清算されず、ビルも売られない。少数株主に届くのは、その半分ほどとみる。
建物の大規模な修繕の時期も近づき、その費用が利益と現金をさらに削る。家賃の落ち込みは数年で戻らず、製造の赤字も続く。
- 製造事業(真空ポンプ・送風機・圧縮機・部品・修理):数量 1,900(製品の出荷台数(台、推定))× 価格 240(1台あたりの売上(万円、推定。部品と修理を含む))→ 売上 46 億円・営業利益 −1 億円。安値に押され赤字
- 不動産事業(渋谷の賃貸ビル):数量 15.0(賃貸の床面積(千平方メートル、推定))× 価格 0.42(1千平方メートルあたりの年間賃料(億円、推定))→ 売上 6 億円・営業利益 4 億円。家賃は据え置き・費用は増える
倍率:稼ぐ力は純利益÷k=約31億円。売れる資産の床(ビルの税後と純現金に戻り方0.5)の約45億円の方が大きく、今の自己資本38億円に1.18倍をかけた45億円とする。
確率:渋谷では新しいビルが増え、古いビルの家賃は押されやすい。製造の受注残も減っている。両方が重なる筋は2割近くありうる。
悲観 10% オフィスの不況と製造の赤字が重なる 利益 1 億円 · PBR 0.9 倍 · 株価時価総額 2,988 円33 億円
リーマン級の不況で企業がオフィスを減らし、渋谷でも空室が増える。家賃は今より15%下がり、ビルの値段も3割以上落ちる。
工場の設備投資は止まり、真空ポンプと送風機の注文は4割近く減る。新工場の償却と人件費は残り、製造は大きな赤字になる。
全社の営業利益は1億円ほどに落ちる。会社はビルの家賃で製造の赤字を埋め、配当も細る。ビルの値段が下がっても、売れる値は時価総額に近く残る。それでも清算されない会社の資産は、少数株主には半分ほどしか届かない。
不況が明けても、製造の受注が戻るには数年かかる。その間も、新しい工場の償却と借入の利払いは止まらない。
- 製造事業(真空ポンプ・送風機・圧縮機・部品・修理):数量 1,600(製品の出荷台数(台、推定))× 価格 220(1台あたりの売上(万円、推定。部品と修理を含む))→ 売上 35 億円・営業利益 −2 億円。注文が4割近く減る
- 不動産事業(渋谷の賃貸ビル):数量 15.0(賃貸の床面積(千平方メートル、推定))× 価格 0.36(1千平方メートルあたりの年間賃料(億円、推定))→ 売上 5 億円・営業利益 3 億円。家賃15%下げ
倍率:稼ぐ力はほぼ消える。売れる資産の床で測り、今の自己資本38億円に0.87倍をかけた33億円とする。
確率:リーマン級の不況ではオフィスの家賃と値段が大きく下がり、工場の設備投資も止まる。ビルが渋谷にあるので1割とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
製造事業(真空ポンプ・送風機・圧縮機・部品・修理)
化学・医薬・食品・半導体の工場や下水処理場向けの真空ポンプと送風機。部品と修理を含む。
| 数量製品の出荷台数(台、推定) | 価格1台あたりの売上(万円、推定。部品と修理を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,140 | 200 | 43 | 1 |
| 10 年後 中立 | 2,300 | 268 | 62 | 2 |
取り方:2026年3月期の製造の売上42.80億円・利益0.86億円(短信)。台数の開示はなく、部品と修理を含めた1台あたりの売上を200万円と置いて割り戻した推定。
不動産事業(渋谷の賃貸ビル)
渋谷区のオフィスビルの賃貸と駐車場。主な借り手は東急不動産。
| 数量賃貸の床面積(千平方メートル、推定) | 価格1千平方メートルあたりの年間賃料(億円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15.0 | 0.43 | 6 | 5 |
| 10 年後 中立 | 15.0 | 0.53 | 8 | 6 |
取り方:2026年3月期の不動産の売上6.38億円・利益4.75億円、償却約0.56億円(短信)。床面積は開示がなく、土地2,484平方メートルと容積率から1万5千平方メートルと置いた推定。
リスクと懸念
ビルの借り手と家賃
家賃は東急不動産がまとめて借りる形に支えられている。契約の見直しで家賃が下がる、あるいは借り手が替われば、全社の利益の8割を生む柱が揺らぐ。渋谷では新しいビルが増えており、古いビルの家賃は押されやすい。
ビルの老朽化と建て替え
建物の償却はほぼ終わっており、いずれ大規模な修繕か建て替えが要る。建築費は物価以上に上がっており、その間は家賃も止まる。資金は借入に頼ることになり、利払いが増える。
製造の値段の競争
真空ポンプと送風機は国内外の競合が多く、安い製品も入ってくる。主な材料の鋳物は作る業者が減り、値上がりと調達の不安が続く。製造の利益率は数%にとどまり、赤字に戻る恐れがある。
工場への大きな投資
2028年までに27億円を玉川工場の新しい建物に投じる。自己資本の7割に当たる額で、製造が資本コストを上回って稼げなければ、ビルの稼ぎを低い利回りの設備に変えるだけになる。
創業家の支配と承継
創業家の資産管理会社が34%を握り、会長は80代半ばだ。承継の形によって、ビルの扱いも還元の方針も大きく変わる。少数株主はその決定に関われない。
上場の維持
流通する株は4分の1ほどで、2025年には流通株式の時価総額が基準を下回り、一時は監理銘柄に指定された。株価が下がれば再び基準を割り、上場の維持が問題になりうる。
今後の分かれ目
- 配当性向を3割以上に上げるか自社株買いを始める
- ビルの稼ぎが株主に戻り始めた。戻り方と倍率を見直し、強気の側に確率を寄せる。
- ビルの売却・建て替え・共同での再開発を発表する
- 帳簿の外の価値が実現する道が開く。売却代金の使い道を見て、価値の床と還元の見込みを見直す。
- 製造の利益率が2年続けて4%を超える
- 新工場の効果が出た証拠。製造の利益率の中立を上げる。
- ビルの家賃が下がるか借り手が替わる
- 全社の利益の柱が揺らぐ。家賃の中立を下げ、慎重な側に確率を寄せる。
- 創業家の持ち分が動く
- 承継や売却の可能性を見る。会社が買われる筋が出れば、強気の確率を上げる。
見ておくもの
- 不動産の売上と東急不動産向けの比率
- 製造の受注残と利益率
- 玉川工場の投資の進み具合と借入
- 配当性向と自社株買い
- ウノザワコーポレーションの持ち分
倍率と資本コストの決め方
倍率は全社のROEと資本コスト7.75%から決めた。中立はROEが7%弱に下がるため上限1÷k=13.3倍の8.5割の11.3倍。今のPER・PBRは見ていない。ビルの含み益は家賃が利益に入っているので価値に足さず(二重を避けた)、悲観側の床だけに税後と戻り方0.5で入れた。家賃の利益は償却を据え置いて物価で膨らむ形で置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.1→13.81 倍・やや楽観 PER 12→12.9 倍・中立 PER 11.3→12.9 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。