結論
横田製作所は広島の業務用ポンプ・バルブの専業メーカーだ。売上は23億円、従業員は80人しかいない。筆者の結論は「割安寄り」で、一番の理由は、手元の純現金と債券が時価総額の6割を占め、事業そのものはごく安い値段でしか評価されていないことにある。
稼ぎ頭は自吸渦巻ポンプだ。空気や泥が混じった水でも、呼び水なしで吸い上げられる。気水分離の特許を持ち、発電所や製鉄所、化学工場の排水・冷却水の現場で使われる。自社で溶かす特殊ステンレスの鋳鋼で、腐食と摩耗に強いポンプも作る。営業利益率は2割と、ポンプ業界では高い。
弱みもはっきりしている。規模が小さく、取引先の工場の設備投資に受注が左右される。2026年3月期は受注が減り、受注残はポンプで3割強落ちた。現金は配当で一部が戻るだけで、10年で7億円から18億円へ積み上がった。筆頭株主は創業家系の一般社団法人で、少数株主が現金の使い道を動かせる形ではない。
それでも10年の中立で見ると、物価並みの値上げと部品・保守の積み上げで利益は1.3倍強になる。現金を半分しか数えなくても、本質価値は今の値段を上回ると筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、これは「小さいが良い事業が、大きな現金の上に座っている」会社だ。事業は狭い用途で客に頼られ、2割近い利益率を保ってきた。設備にお金がかからず、稼いだ利益のほとんどが現金で残る。
問題は、その現金が株主のものとして働いていないことだ。利益の3分の2を残しても、事業はそれを使い道として必要としない。ROEが10%前後なのは、事業が弱いからでなく、預金が分母を膨らませているからだ。オーナーとして持つなら、この現金は「いつか戻るかもしれない預け金」と割り引いて見るしかない。
それでも払う値段には安全域がある。現金を半分しか数えず、事業を物価並みの成長に置いても、本質価値は今の値段を上回る。悲観の筋書きで事業が細っても、残る現金が下値を支える。予測しやすい事業かと問われれば、規模が小さく受注の波があるので確信度は中程度だ。
何で稼ぐ会社か
事業は「ポンプ及びバルブの製造販売」の1つだけだ。2026年3月期の売上23億円のうち、ポンプが5割、バルブが2割弱、部品・保守が3割強を占める。
看板の自吸渦巻ポンプは、ポンプ自身が空気を抜いて水を吸い上げる。普通の渦巻ポンプは、空気をかむと止まる。同社の製品は気体と水を分ける仕組みに特許があり、泥水や泡の多い液でも運転を続けられる。工場の排水槽や地下の釜場のように、ポンプより低い所から汚れた水を吸う現場で重宝される。
もう1つの柱は耐食・耐摩耗のポンプだ。1973年から自社で特殊ステンレス合金の鋳鋼を作り、海水やスラリー、薬液を流す片吸込渦巻ポンプに使う。脱泡・脱気装置、水撃を起こさない逆止弁、自動制御弁も持つ。いずれも大量生産の汎用品ではなく、現場ごとに材質や仕様を合わせる受注生産だ。
客は発電所、製鉄・非鉄、半導体・電子、食品、化学、薬品の工場、灌漑や上下水道の官公需と幅広い。ポンプを納めたあとは、羽根車や軸封などの交換部品と定期点検が続く。部品・保守は利益率が高く、景気の谷でも急には減らない。納期は年度末の3月に集中し、本社工場1つで作っている。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、狭い用途で「これでないと困る」と言われる製品を持っていることだ。空気をかむ汚れた水を確実に吸うポンプは、止まれば工場の排水があふれる。客は値段より止まらないことを買う。営業利益率が13〜20%の間で一度も崩れていないのは、その証拠だと筆者は見る。
部品・保守が売上の3割を占めるのも強い。一度納めたポンプは20年以上動き、その間の部品は同社からしか買いにくい。据え付けた台数が積み上がるほど、この収入は厚くなる。
ただし堀、つまり他社がまねできない強みは狭く浅い。ポンプの大手は荏原製作所、鶴見製作所、酉島製作所などで、自吸ポンプでもテラルや川本製作所が競う。同社の優位は特定の用途と材質に限られ、大手が本気で入れば値段で押される。従業員80人、工場1つという規模は、技術の継承と災害に弱い。
資本の使い方は保守的すぎる。借金はなく自己資本比率は85%だが、ROEは10%前後にとどまる。利益の6割強を内部に残し、その多くが預金のまま眠っている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ポンプ・バルブの市場は、新しく工場を建てる投資と、今ある設備の更新の2つで動く。国内の産業用ポンプは成熟した市場で、量は大きく伸びない。物価が上がる分だけ、金額が名目で年3〜5%増えるのが中立の見通しだ。
追い風は3つある。1つ目は設備の老朽化だ。高度成長期から1990年代に入れた工場や発電所のポンプが更新の時期を迎えている。2つ目は半導体工場の新設で、熊本や広島の工場は大量の水を使い、排水と薬液のポンプが要る。3つ目は人手不足で、止まらず手間のかからないポンプへの買い替えが進む。
逆風は国内の工場の数そのものが減ることだ。製鉄の高炉は統廃合が続き、石炭火力も減っていく。同社の得意先である重厚長大の現場は、10年で見れば縮む側にある。官公需の上下水道も、自治体の財政で更新が先送りされやすい。
競争の形は二層になっている。汎用のポンプは荏原製作所や鶴見製作所が量と販売網で押さえ、値段は市場で決まる。特殊な用途では、少数の専業が技術と実績で棲み分ける。横田製作所はこの後者に属し、価格競争には巻き込まれにくい。そのかわり、市場が小さく伸びも限られる。
海外は小さく、受注の内訳に海外企業の名が出る程度だ。為替や海外の景気より、国内の素材・電力・化学の設備投資の波が業績を決める。2026年3月期は受注が2%減り、受注残が16%減った。目先の1〜2年は売上が横ばいからやや弱いと見ておくのが無難だ。
資本政策と M&A
資本政策は「安定配当」と「内部留保」の2つしか言っていない。2026年3月期の配当性向は33%で、2027年3月期の予想は37%だ。自社株買いの方針はない。
その結果、現金が積み上がった。純現金は10年で7億円から18億円へ増え、2026年3月期には債券などの投資有価証券2.5億円も買った。合わせて20億円は時価総額の6割にあたる。設備投資は年0.6億円ほどの更新だけで、買収の話もない。
筆頭株主は議決権の33%を持つ一般社団法人ヨコタで、役員3人が兼ねる。創業家の影響が強く、物言う株主が入りにくい形だ。時価総額30億円台では大手の買収の的にもなりにくい。一方で、親会社のない独立した会社なので、この現金が親に吸い上げられる心配もない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社の事業は、見た目以上に強い。空気混じりの汚れた水を吸い続けるポンプは、代わりを探すと手間と危険が大きい。客は値段より実績を見るので、物価が上がれば値上げは通る。2024年3月期から営業利益率が18〜20%へ上がったのは、値上げが通り始めた証拠だ。
更新の需要も厚い。1980〜90年代に入れた工場や発電所のポンプが寿命を迎えている。半導体工場の新設では、大量の排水と薬液を扱う耐食ポンプが要る。脱泡・脱気装置は食品や化学の新しい用途に広がる余地がある。
部品・保守は据え付けた台数に比例して積み上がる。売上の3割を占め、利益率は製品より高い。10年で据え付けが増えれば、景気の谷でも利益は崩れにくい。
現金も見逃せない。純現金と債券で20億円は時価総額の6割だ。金利が2%になれば預金だけで年0.4億円の利息を生む。いつか増配や自社株買いに回れば、それだけで株主の取り分は大きく増える。借金がないので、景気の谷で無理な資金繰りに追われる心配もない。小さな会社にとって、この厚い財務は技術者を雇い続ける余裕にもなる。
慎重な見方
規模が小さすぎる。従業員80人、工場1つでは、技術者が数人辞めるだけで設計や鋳造の力が落ちる。2026年3月期は受注が減り、ポンプの受注残は3割強落ちた。好調だった2年の利益率を、そのまま将来に延ばすのは危うい。
得意先の業界は縮んでいる。高炉の統廃合、石炭火力の削減、国内の化学工場の再編で、同社が強い重厚長大の現場は10年で減る。荏原製作所や鶴見製作所のような大手は販売網と価格で押してくる。特殊な用途の市場は小さく、そこで勝っても伸びは限られる。
現金は戻ってこない。10年で純現金は7億円から18億円に増えたが、配当性向は3割台のままで自社株買いもない。筆頭株主の一般社団法人が議決権の3分の1を握り、方針が変わる兆しは見えない。少数株主にとって、この現金は帳簿の上の数字に近い。
そのうえ株は売買が細く、時価総額30億円台では大きな買い手も入りにくい。割安が埋まるきっかけがない。値段が安いまま10年が過ぎれば、株主が手にするのは細い配当だけになる。安い株が安いまま終わる典型の形を、この会社は備えている。
どちらに重みを置いたか
事業の質は強気の見方に分がある。利益率が13%を割った年がなく、部品・保守が下支えする。一方、現金が戻らないという慎重な見方も正しい。そこで現金は半分だけ数え、確率は中立を厚くして、やや楽観とやや悲観をほぼ同じ重さにした。それでも価値は今の値段を上回る。決め手は事業の安定と現金の厚さで、どちらか一方だけでは割安とまでは言えない。配当方針が変われば評価は一段上がる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 5,400 円100 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 735 円14 億円)。 今の値に割り戻すと 3,269 円61 億円、今との差 +85.6%、 期待の年率 +13.3%(資本コスト 7.0%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 7,798 円145 億円 | 884 円16 億円 | +392.7% | +17.3% | 1,042 円19 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,828 円127 億円 | 814 円15 億円 | +333.7% | +15.8% | 1,681 円31 億円 |
| 中立 | 38% | 5,924 円110 億円 | 749 円14 億円 | +278.7% | +14.2% | 2,536 円47 億円 |
| やや悲観 | 18% | 3,420 円63 億円 | 620 円12 億円 | +129.3% | +8.7% | 727 円13 億円 |
| 悲観 | 10% | 954 円18 億円 | 539 円10 億円 | −15.3% | −1.6% | 149 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,400 円100 億円 | 735 円14 億円 | +248.2% | +13.3% | 6,135 円114 億円 |
今の株価時価総額 1,762 円33 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 値上げと更新需要で利益率が山の水準に定着 利益 6 億円 · PER 21.5 倍 · 株価時価総額 7,798 円145 億円
老朽化した工場と発電所のポンプ更新が10年を通じて続く。半導体工場の排水・薬液や、食品・化学の脱泡・脱気という新しい用途が育ち、出荷台数は15%増える。特殊材質と自吸の技術は値上げを通す力になり、単価は物価をやや上回る。
据え付けた台数が増えた分、部品・保守も厚くなる。営業利益率は2割を保ち、2025〜26年の山の水準が普通になる。現金は配当で一部が戻るだけだが、預金の利息が利益を下支えする。大手との競争は特殊用途には及ばず、会社は小さいまま高い利益率を守る。純利益は今の1.8倍になり、配当も同じ割合で増える。
- ポンプ・バルブ製品:数量 1,150(出荷台数(台・年。推定))× 価格 217(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 25 億円・営業利益 5 億円。1,150台×217万、利益率18.5%
- 部品・保守:数量 23.0(稼働中の据付台数(千台。推定))× 価格 53(据付1台あたり年間の部品・保守売上(万円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 4 億円。2.3万台×53万、利益率30.5%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 21.1% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 14.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 21.45 倍、時価総額 135 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:特殊用途の値上げが物価を上回って通り、半導体・食品の新用途で台数も伸びる筋書き。小型株で新用途の実績がまだ薄いので12%。
やや楽観 22% 更新需要で緩やかに伸びる 利益 5 億円 · PER 21.1 倍 · 株価時価総額 6,828 円127 億円
国内の工場は数こそ減るが、残る工場はポンプを止めないための更新を続ける。同社の出荷台数は7%増え、単価は物価をわずかに上回る。部品・保守は据え付けの増加とともに伸びる。
営業利益率は2割弱を保ち、2024年以降の値上げが定着する。配当性向は3割台のままで、現金は積み上がる。大きな買収や工場の新設はなく、会社は今の形で静かに稼ぎ続ける。少数株主にとっては、事業の伸びより現金の行方のほうが気になる10年になる。純利益は今の1.5倍ほどになり、利益率の高い部品・保守の比率が少しずつ上がっていく。景気の谷でも利益は崩れにくくなる。
- ポンプ・バルブ製品:数量 1,070(出荷台数(台・年。推定))× 価格 212(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 23 億円・営業利益 4 億円。1,070台×212万、利益率17.5%
- 部品・保守:数量 21.5(稼働中の据付台数(千台。推定))× 価格 52(据付1台あたり年間の部品・保守売上(万円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 3 億円。2.15万台×52万、利益率29.5%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 19.9% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 21.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 21.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 21.14 倍、時価総額 117 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げが物価並みに通り、更新需要で台数が少し増える筋書き。過去10年の売上の伸び(年4%弱)に近いので中立に次ぐ重さ。
中立 38% 台数は横ばい、物価並みの値上げで稼ぐ 利益 5 億円 · PER 20.7 倍 · 株価時価総額 5,924 円110 億円
国内の工場の数は少しずつ減るが、更新の需要と半導体工場の新設がそれを埋め、出荷台数は今とほぼ同じになる。値段は物価並みに上がり、人件費や鋼材の上昇を価格に乗せる力は保たれる。
部品・保守は据え付けがわずかに増える分だけ伸びる。営業利益率は2割前後で、2025〜26年の山からは少し下がる。純利益は10年で1.3倍強になる。
配当性向は3割台のままで、自社株買いはしない。現金は増え続け、一部は預金の利息として利益に入る。筆頭株主の一般社団法人の方針は変わらず、会社は広島で小さく堅く稼ぐ。大きな成長はないが、崩れもしない10年だ。
- ポンプ・バルブ製品:数量 1,000(出荷台数(台・年。推定))× 価格 208(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 3 億円。1,000台×208万(物価1.34倍)、利益率16%
- 部品・保守:数量 20.5(稼働中の据付台数(千台。推定))× 価格 51(据付1台あたり年間の部品・保守売上(万円・名目))→ 売上 10 億円・営業利益 3 億円。2.05万台×51万、利益率28.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.4% が k 7.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 12.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.5% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.7 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 20.71 倍、時価総額 101 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の成熟した設備投資に沿って台数は横ばい、価格は物価並みという業種ノートの中立どおりの筋書き。最も起こりやすいので38%。
やや悲観 18% 得意先の縮小で台数が細る 利益 3 億円 · PER 15.5 倍 · 株価時価総額 3,420 円63 億円
製鉄の高炉の統廃合と石炭火力の削減が進み、同社が強い重厚長大の現場で更新の需要が減る。半導体の新設は数年で一巡し、出荷台数は15%減る。大手が特殊用途に手を広げ、値上げは物価に届かない。
営業利益率は製品で1割強に下がる。部品・保守は据え付けが減る分だけ細るが、利益率はまだ2割台を保つ。純利益は今と同じくらいにとどまり、物価を引けば実質で縮む。
配当は維持され、現金は少しずつ積もる。事業の稼ぎが資本コストに届かなくなり、ためた利益は帳簿の額より安く評価される。現金の4分の1は、新製品の失敗や工場の維持に消える。株主の手元に残るのは、細い配当と帳簿の現金だけだ。
- ポンプ・バルブ製品:数量 850(出荷台数(台・年。推定))× 価格 198(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 17 億円・営業利益 2 億円。850台×198万、利益率12%
- 部品・保守:数量 19.0(稼働中の据付台数(千台。推定))× 価格 49(据付1台あたり年間の部品・保守売上(万円・名目))→ 売上 9 億円・営業利益 2 億円。1.9万台×49万、利益率26%
倍率:事業のROE 7.4%がk 7%を下回るのでPERは1÷k(12.5倍)まで。得意先の縮小で利益が実質で減る筋書きなので中立より低い15.53倍。余った現金は今の額の0.75倍を戻り方0.5で足す。
確率:高炉の統廃合・石炭火力の削減・化学の再編で重厚長大の得意先が減る筋書き。業界の流れとして十分ありうるのでやや楽観に近い重さ。
悲観 10% 技術の継承に失敗し、特殊用途でも負ける 利益 2 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 954 円18 億円
熟練の設計者と鋳造の職人が相次いで退職し、特殊材質と自吸ポンプの改良が止まる。荏原製作所や海外勢が同じ用途に安い製品を出し、出荷台数は3分の2に減る。値上げはほとんど通らず、製品の利益率は6%まで落ちる。
部品・保守は据え付けが減るにつれて細り、利益率も2割に下がる。純利益は今の半分ほどになる。配当は維持のために利益の4割を払い、現金の一部は工場の維持と赤字の新製品に消える。
事業はなお黒字だが、資本コストの半分しか稼がない。現金は残るものの、少数株主に戻る見込みは薄く、半分しか数えられない。それでも純現金があるので、会社が傾く筋書きではない。
- ポンプ・バルブ製品:数量 650(出荷台数(台・年。推定))× 価格 186(1台あたり売上(万円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。650台×186万、利益率6%
- 部品・保守:数量 16.0(稼働中の据付台数(千台。推定))× 価格 47(据付1台あたり年間の部品・保守売上(万円・名目))→ 売上 8 億円・営業利益 2 億円。1.6万台×47万、利益率20%
倍率:事業のROE 3.9%がk 7%を大きく下回る構造的な負けの筋書き。稼ぐ力(事業の純利益÷k)より低い8倍に、今の額の0.5倍の余った現金を戻り方0.5で足す。
確率:小さな会社が技術者の退職と大手の攻勢で特殊用途の地位を失う筋書き。部品・保守が残るので確率は1割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ポンプ・バルブ製品
自吸渦巻ポンプ・耐食耐摩耗の片吸込渦巻ポンプ・脱泡脱気装置・斜流ポンプと、逆止弁・自動制御弁。受注生産。
| 数量出荷台数(台・年。推定) | 価格1台あたり売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 155 | 16 | 2 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 208 | 21 | 3 |
取り方:台数は開示が無いので推定。ポンプ11.69億とバルブ3.81億の合計15.5億を、業務用の中小型ポンプ・弁の平均単価を約155万とみて年1,000台と置いた。利益は全社の営業利益4.70億を、製品16%・部品保守30%前後と推定して分けた。
部品・保守
納めたポンプ・弁の交換部品(羽根車・軸封・ケーシング)と定期点検・修理。
| 数量稼働中の据付台数(千台。推定) | 価格据付1台あたり年間の部品・保守売上(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 20.0 | 38 | 8 | 2 |
| 10 年後 中立 | 20.5 | 51 | 10 | 3 |
取り方:部品・サービス売上7.58億。年1,000台の出荷が20年ほど動くとみて、稼働中の据付を約2万台と推定し、1台あたり年約38万とした。利益率は製品より高い約30%と推定。
リスクと懸念
技術と人の継承
従業員80人の会社で、特殊材質の鋳鋼と自吸ポンプの設計は少数の技術者に頼る。熟練者の退職が続けば、強みの源が細る。平均年齢42.5歳と若返りは進んでいるが、継承の成否は外から見えにくい。
得意先の業界の縮小
製鉄の高炉の統廃合、石炭火力の削減、化学工場の再編が進めば、同社が強い重厚長大の現場で更新の需要が減る。新しい用途で埋められるかが10年の分かれ目になる。
受注の波と受注残の減少
2026年3月期は受注が2%減り、ポンプの受注残は35%減った。工場の設備投資が一服すれば、売上は1〜2年遅れて落ちる。規模が小さいので1件の大口の有無でも数字が動く。
現金が株主に戻らない
純現金と債券は20億円で時価総額の6割あるが、配当性向は3割台で自社株買いはない。筆頭株主の一般社団法人が議決権の3分の1を握り、方針が変わらなければ現金は帳簿に眠り続ける。
1工場への集中と災害
生産は広島市の本社工場1か所に集まる。地震・水害・火災で止まれば、年度末に集中する納期を守れない。会社はBCPを作っているが、代わりの工場はない。
大手の攻勢と値上げの限界
荏原製作所・鶴見製作所などの大手が特殊用途に安い標準品を出せば、同社の値上げは物価に届かなくなる。2024年以降の利益率の上昇がどこまで続くかは、まだ2年分の実績しかない。
今後の分かれ目
- 配当性向を5割以上に上げるか、自社株買いを始める
- 眠っていた現金が株主に戻り始める。現金の戻り方を半分でなく満額に近く見てよくなり、本質価値は大きく上がる。
- 受注残が2年続けて減る
- 2025〜26年の利益率は山だった可能性が高い。中立の利益率を下げ、やや悲観の重さを増やす。
- 半導体工場や食品向けの脱泡・脱気装置で大口の受注が続く
- 新しいニッチが育っている証拠になる。台数が伸びる筋書きの確率を上げる。
- 熟練技術者の大量退職や品質事故が明らかになる
- 強みの源が細る兆し。悲観の重さを上げる。
- 大手や同業から買収・資本提携の提案が出る
- 現金と技術がまとめて評価される。一般社団法人が応じれば、少数株主にも現金の価値が届く。
見ておくもの
- 受注高と受注残(特にポンプ)の推移
- 営業利益率が18%を保てるか
- 配当性向と自己株買いの方針の変化
- 部品・サービス売上の伸び
- 一般社団法人ヨコタの持株比率
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROE(余った現金を除く)とk 7%、g 4%から正当化PERを出し、中立・楽観は上限の9割前後に置いた。今の株価・過去のPBR・同業の倍率は使っていない。余った現金15億は戻り方0.5で半分だけ足した。結果が割安側に出たのは現金の厚さと利益率の安定から来ており、今の値段に寄せた跡はない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.37→21.45 倍・やや楽観 PER 12.91→21.14 倍・中立 PER 12.67→20.71 倍・やや悲観 PER 10.5→15.53 倍)。
資本コスト 7.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本7.5%+quality 0.5%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.00%。