結論
鶴見製作所は、排水・汚水用の水中ポンプで国内首位級に立つポンプ専業だ。鉱山の排水用では北米や中南米に強く、売上の約半分を海外であげる。筆者の結論は、事業は優れているが値段はやや割高、である。理由は二つ。利益の厚みを 10 年先まで割り引くと今の値段を下回ること、そして余った現金が株主に戻る保証が薄いことだ。
稼ぎの源は単純だ。大雨のたびに水を汲み出し、鉱山や工場で泥水をくみ上げるポンプが売れ、壊れれば交換部品が出る。日本(輸出を含む)が売上の約 6 割を占め、営業利益率は 19% 台と高い。北米は鉱山と鉄鋼向けで堅いが、利益率は 9% 台にとどまる。
弱点は海外で買った会社だ。イタリアの ZENIT は欧州の足場を広げたが、2026 年 3 月期に約 40 億円の減損を出し、純利益は前の期の 6 割にしぼんだ。会社は今期の営業利益を 107 億円から 73 億円へ減らすと見ている。
現金は厚い。自己資本比率は 7 割を超え、純現金は時価総額の 1 割強ある。ただ上位の株主には創業家関連とみられる法人が並び、物言う株主の提案も出た。余った現金を筆者は半分だけ価値に入れた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業はずっと持ちたい種類に入る。排水ポンプは目立たないが、止まれば困る道具だ。顧客は壊れた時に値切りにくく、交換部品が長く稼ぐ。大きな設備投資も要らない。
問題は経営者が株主のお金をどう使うかだ。利益のうち事業に再投資するのは一部で、残りは現金としてたまってきた。現金は帳簿の上では安全でも、使い道がなければ価値は額面に届かない。筆者は余った現金の半分だけを価値に入れた。
ZENIT のような海外の買収は、成功すれば成長の柱になるが、失敗すれば自己資本を削る。40 億円の減損は、買収額に見合う稼ぎを描けなかった証拠だ。
安全域はどうか。今の値段は、利益が戻る前提でほぼ妥当と見えるが、10 年先の稼ぎを資本コストで割ると 2 割弱届かない。割安と呼ぶには、ROE の改善と現金の還元が具体的に動く必要がある。ダルトンの提案は、その動きを促す力にはなる。
筆者は、事業を高く、資本配分を厳しく見る。
何で稼ぐ会社か
収益の柱は水中ポンプとその周辺機器だ。ビルや工場の排水槽、下水や雨水の排水、建設工事の水抜き、鉱山の坑内排水まで、水と泥をくみ上げる場面がすべて顧客になる。会社は種類が 1 万 7 千にのぼるとうたい、国内の水中ポンプでは首位だと自称している。
売上の約 6 割は日本セグメント(輸出を含む)で、官公庁の排水設備や災害時の復旧用が土台になる。2026 年 3 月期は日本が約 435 億円、北米が約 156 億円、アジアが約 81 億円、欧州が約 63 億円だった。北米は鉱山と鉄鋼の需要が支え、会社は北米・中南米・アフリカの鉱山向けで世界首位と説明している。ただし裏づけの数字は確かめられていない。
欧州はイタリアのポンプ会社 ZENIT を子会社にして伸びたが、2026 年 3 月期は営業赤字になった。アジアは利益率が 24% と高く、タイやインドネシアの設備需要が伸びている。新興国では南米のチリに現地法人を、タイに駐在員事務所を置き、真空ポンプなどへ広げる。
中期計画は「Transformation 2027」。京都工場に新棟を建て、災害復旧用ポンプの供給体制を厚くする。目標は 2030 年 3 月期に ROE 10% 以上、配当性向 30% 以上だ。ポンプは売って終わりでなく、壊れたら交換する消耗品の性格が強い。この点が景気の波を和らげる。
優良さと弱いところ
優良さの核は、故障が許されない現場に入り込んでいる点だ。排水が止まれば工場も鉱山も止まる。値段より信頼と納期が選ばれる理由になり、品ぞろえの幅と交換部品の供給がそのまま参入の壁になる。
過去 10 年の営業利益率は 11% 台から 15% へ上がった。値上げの定着と、北米やアジアの高採算品の増加が主な理由だ。自己資本比率は 74%、純現金は 166 億円で、借金の心配はまずない。
だが筆者が気にするのは資本の使い方だ。ROE の中央値は 10 年で 6.6%、直近は 5% と、資本コストの 7.8% に届かない。現金をため込み、増配や自社株買いは控えめだった。2026 年 5 月に最大 25 億円の自社株買いを決めたが、時価総額の 2% ほどにすぎない。
ZENIT の失敗も重い。買収した会社を稼げる形に仕上げる力に、まだ証拠が足りない。また上位株主に同じ住所の法人が 3 つ並ぶなど、オーナー色が濃い。少数株主の利益より経営の安定が優先されやすい構造である。
それでも事業の質は高い。ROE が低いのは事業が悪いからではなく、使い道のない現金が自己資本を膨らませているからだ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
水中ポンプの需要は三つの力で動く。排水の更新、災害対策、海外の資源・インフラ投資だ。日本は人口が減るが、老朽化した下水・排水設備の更新と、豪雨に備えた排水能力の増強が数量を下支えする。筆者は国内の数量を、10 年で横ばいに近いと見る。
海外は伸びる余地が大きい。北米は鉱山と鉄鋼が追い風で、アジアは工場の新設が続く。業種ノートは、この領域の世界市場が 10 年で年 3〜5% の安定成長だとする。
競合は国内で荏原製作所や酉島製作所など、海外ではスラリーポンプのウィアー、排水ポンプのザイレム、KSB、グルンドフォスなどだ。鉱山の泥水用ポンプは摩耗との戦いで、耐久性が値段を決める。水中ポンプは分解して直せる点が、鶴見の強みになる。
懸念は中国・韓国勢の低価格品だ。汎用の排水ポンプは価格競争に巻き込まれやすい。日本の公共投資が縮めば、国内の高い利益率も揺らぐ。10 年の構造的な負け筋は、この二つが同時に来ることだ。
もう一つの揺れは鉱山市況だ。銅・鉄鉱石の価格が崩れると、北米・中南米の設備投資が止まる。ただ交換部品が一定の底を作る。
資本政策と M&A
還元は連結配当性向 30% 程度を基本にする。2025 年 10 月に 1 株を 2 株に分割した。自社株買いは 2022 年・2024 年に続き、2026 年 5 月に最大 120 万株・25 億円を決めた。
余っている現金は多い。純現金は 166 億円と時価総額の 13% で、10 年前の 67 億円から積み上がった。還元性向は低く、現金は事業の外でたまってきた。
ダルトン系のファンドが 2024 年から主要株主で、2025 年末には資本コストを意識した経営や非公開化、スピンオフの検証を求める書簡を出した。2026 年 4 月には剰余金処分の株主提案をしたが、取締役会は反対した。会社は、水中ポンプは社会インフラであり、安定供給のための現預金が要ると説明した。
買収は ZENIT が目立つ。2026 年 3 月期に欧州で約 40 億円の減損が出た。大きな買収を重ねる会社ではないが、次に買う時は慎重に見たい。10 年以内に買収や非公開化が起きる確率は、kabufu の試算で 18% だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
国内の水中ポンプは首位級で、災害対策と下水・排水設備の更新という、景気に左右されにくい需要が太い。豪雨が増えるほど排水能力の増強が政策課題になり、京都工場の新棟もそこに備える。利益率はすでに 19% 台まで上がり、値上げが定着した。
海外は北米が鉱山と鉄鋼で安定し、アジアは利益率 24% と高い。南米のチリに拠点を置き、シェアの低い市場へこれから広げる。ZENIT の減損は買収の整理であって、欧州事業が赤字を脱すれば利益率は戻る。会社はすでに 2030 年に ROE 10% 以上と掲げた。
さらに現金が 166 億円ある。物言う株主が入り、自社株買いも決めた。余った現金が配当や買い入れに回れば、ROE は目標へ向かう。純利益は 10 年で 1.5 倍に育ち、今の値段には余裕があると見る。
国内の競合は荏原や酉島のような大手でも、水中ポンプの品ぞろえと交換部品の供給網で鶴見は互角以上に戦える。
慎重な見方
今の営業利益 107 億円は山に近い。会社自身が来期を 73 億円と、3 割減で見ている。国内の需要は人口減で伸びず、利益率 19% の維持には値上げが続く必要がある。中国や韓国の安い排水ポンプが入れば、一番の稼ぎ頭が削られる。
海外は買収で広げたが、欧州の ZENIT は約 40 億円の減損と赤字に終わった。北米も利益率は 9% 台で、国内の半分にとどまる。鉱山向けは銅や鉄鉱石の価格に左右され、設備投資が止まれば受注が一気に細る。
資本の使い方にも疑問が残る。純現金は 10 年で 2 倍半に増え、ROE は 5% 台に沈んだ。創業家関連とみられる法人が上位に並び、株主提案に取締役会は反対した。自社株買いは時価総額の 2% ほどで、余った現金が戻る約束にはならない。ROE が資本コストに届かない会社に、高い倍率は付けられない。
物言う株主の提案も、会社が退ければ株価の材料は短命に終わる。圧力で動く還元に頼るのは危うい。
どちらに重みを置いたか
事業の強さは強気の見方が正しい。国内首位の堀と、壊れたら替える需要は本物だ。一方、慎重な見方が突く資本の使い方と利益の山という点にも分がある。筆者は、中立を ROE 9% 台の普通の会社に置き、確率は中立に厚く、やや悲観を少し重くした。
結果は、確率の加重で今の値段を 2 割弱下回る。事業を悪く見たからではない。今の値段が、利益の戻りと現金の還元という、まだ起きていない二つを先に織り込んでいるからだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,518 円2,163 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 830 円397 億円)。 今の値に割り戻すと 2,950 円1,412 億円、今との差 +12.5%、 期待の年率 +7.4%(資本コスト 6.8%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 8,869 円4,245 億円 | 1,086 円520 億円 | +279.5% | +14.3% | 796 円381 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,817 円3,263 億円 | 961 円460 億円 | +196.5% | +11.5% | 1,711 円819 億円 |
| 中立 | 36% | 4,792 円2,294 億円 | 877 円420 億円 | +116.1% | +8.0% | 2,041 円977 億円 |
| やや悲観 | 23% | 2,070 円991 億円 | 689 円330 億円 | +5.2% | +0.5% | 635 円304 億円 |
| 悲観 | 11% | 981 円469 億円 | 522 円250 億円 | −42.7% | −5.4% | 165 円79 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,518 円2,163 億円 | 830 円397 億円 | +103.9% | +7.4% | 5,348 円2,560 億円 |
今の株価時価総額 2,623 円1,256 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 国内の首位を固め、海外の高採算が広がる 利益 214 億円 · PER 19.6 倍 · 株価時価総額 8,869 円4,245 億円
10 年後、国内の水中ポンプは更新と豪雨対策で堅調に推移し、シェアは 11% へ上がる。利益率は 20% を保つ。北米では鉱山の設備投資が続き、シェア 6.5% で利益率は 14% まで改善する。アジアは工場の新設が続き、南米のチリも立ち上がって、海外その他の売上は今の 3.5 倍になる。
欧州は ZENIT の立て直しが終わり、赤字を脱して利益が出る。物言う株主の圧力と自社株買いの積み増しで、還元は純利益の 45% 前後まで上がる。会社の目標を超える ROE が現実になる、いちばんよい 10 年だ。
- 日本(輸出を含む):数量 4,700(国内の排水・汚水・工事用ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 14.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 693 億円・営業利益 139 億円。今の値段で測った市場 4,700 億円 × シェア 11.0%、営業利益率 20.0%
- 北米:数量 4,600(北米の鉱山・鉄鋼・工事向けポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 8.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 401 億円・営業利益 56 億円。今の値段で測った市場 4,600 億円 × シェア 6.5%、営業利益率 14.0%
- アジア・欧州・その他:数量 13,500(アジア・欧州・中南米・アフリカの対象ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 4.3%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 579 億円・営業利益 87 億円。今の値段で測った市場 13,500 億円 × シェア 3.2%、営業利益率 15.0%
倍率:事業の純利益 212 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.9% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 19.57 倍、時価総額 4,245 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の首位、海外の高採算の拡大、ZENIT の再建、還元の増加が 10 年続いて重なる必要がある。実現すれば強いが、全部がそろう確度は高くない。
やや楽観 22% 災害・更新需要と北米・アジアの伸びが重なる 利益 173 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 6,817 円3,263 億円
国内はシェアを 10.7% まで上げ、利益率は 19% で保つ。災害対策の排水能力の増強と、老朽した下水・排水設備の更新が数量を下支えする。北米は市場が実質で 3 割伸び、アジアと中南米の拡大でその他の売上は 2 倍強になる。
ZENIT の損失は収束し、欧州の利益率は 1 割台に戻る。会社が掲げる 2030 年の ROE 10% を、少し遅れて上回る。還元は純利益の 4 割台で、自社株買いも続く。強気の見方がおおむね当たる筋書きである。国内の堀が崩れず、海外の失敗が一度で済み、現金が少しずつ戻る。そのうえで世界の鉱山と排水の需要が平均を少し上回って伸びる。
- 日本(輸出を含む):数量 4,575(国内の排水・汚水・工事用ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 14.3%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 656 億円・営業利益 125 億円。今の値段で測った市場 4,575 億円 × シェア 10.7%、営業利益率 19.0%
- 北米:数量 4,300(北米の鉱山・鉄鋼・工事向けポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 8.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 346 億円・営業利益 43 億円。今の値段で測った市場 4,300 億円 × シェア 6.0%、営業利益率 12.5%
- アジア・欧州・その他:数量 12,200(アジア・欧州・中南米・アフリカの対象ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 3.8%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 458 億円・営業利益 60 億円。今の値段で測った市場 12,200 億円 × シェア 2.8%、営業利益率 13.0%
倍率:事業の純利益 171 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 18.52 倍、時価総額 3,263 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:災害・更新需要と海外の伸びが業種ノートの中立〜楽観寄りに進む筋書き。会社の ROE 10% の目標に近く、強気の見方が一定の重みを持つので厚めに置いた。
中立 36% 国内は横ばいの数量を値上げで守り、海外が着実に伸びる 利益 132 億円 · PER 16.9 倍 · 株価時価総額 4,792 円2,294 億円
国内の数量は横ばいで、値上げと更新需要が売上を物価並みに伸ばす。シェアは 10.3%、利益率は 17.5% へ少し下がる。北米は鉱山の設備投資が続くが、利益率は 10% 台にとどまる。アジアと中南米は市場が 3 割強伸び、シェアも 2.4% へ上がる。
ZENIT は黒字化するが、買収の元は取れないままになる。営業利益率は 13% で、今の 13.9% より少し低い。還元は純利益の 45% 前後で、自社株買いは続く。余った現金は、残りが事業の外にたまり続ける。
売上は年 5% ほどで伸びるが、ROE は 9% 台にとどまる。普通に強いポンプ会社として評価される 10 年である。
- 日本(輸出を含む):数量 4,450(国内の排水・汚水・工事用ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 13.8%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 614 億円・営業利益 108 億円。今の値段で測った市場 4,450 億円 × シェア 10.3%、営業利益率 17.5%
- 北米:数量 4,000(北米の鉱山・鉄鋼・工事向けポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 7.4%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 295 億円・営業利益 31 億円。今の値段で測った市場 4,000 億円 × シェア 5.5%、営業利益率 10.5%
- アジア・欧州・その他:数量 11,000(アジア・欧州・中南米・アフリカの対象ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 3.2%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 354 億円・営業利益 35 億円。今の値段で測った市場 11,000 億円 × シェア 2.4%、営業利益率 10.0%
倍率:事業の純利益 130 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.2% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.0%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 16.91 倍、時価総額 2,294 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの中立(世界市場が年 3〜5% の安定成長)に沿い、国内は横ばい、海外は伸びる中心の筋書き。確率は最も厚く置いた。
やや悲観 23% 中国・韓国勢と鉱山市況で利益率が戻らない 利益 90 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 2,070 円991 億円
中国・韓国の低価格ポンプが、アジアと中南米の汎用品から入ってくる。国内も人口減と公共投資の抑制で、数量は 1 割弱減る。値上げが通りにくくなり、国内の利益率は 15.5% まで下がる。
北米では銅や鉄鉱石の価格が崩れて鉱山の設備投資が一服し、利益率は 8.5% へ落ちる。ZENIT の立て直しも長引く。それでも交換部品が底を作り、赤字にはならない。余った現金の一部は、不況の谷で食われる。
ROE は資本コストを下回る。無借金の安心はあるが、成長を物価に追いつかせるのがやっとの 10 年だ。国内首位の看板は残り、事業は存続するが、利益の伸びは売上の伸びに届かず、資本の効率は今よりさらに下がる。
- 日本(輸出を含む):数量 4,200(国内の排水・汚水・工事用ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 12.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 535 億円・営業利益 83 億円。今の値段で測った市場 4,200 億円 × シェア 9.8%、営業利益率 15.5%
- 北米:数量 3,600(北米の鉱山・鉄鋼・工事向けポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 6.5%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 234 億円・営業利益 20 億円。今の値段で測った市場 3,600 億円 × シェア 5.0%、営業利益率 8.5%
- アジア・欧州・その他:数量 9,500(アジア・欧州・中南米・アフリカの対象ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 2.7%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 259 億円・営業利益 18 億円。今の値段で測った市場 9,500 億円 × シェア 2.1%、営業利益率 7.0%
倍率:事業の ROE 6.6% が k 6.75% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値なので PER の上限は 1÷k = 12.9 倍。利益率が戻らず成長が物価に追いつかない筋書きで、稼ぐ力の上限に対し 8 割弱の 10.0 倍に置いた。余った現金は谷で 0.75 倍に減らした(90 億円)。
確率:鉱山市況の下落、ZENIT の長引く立て直し、低価格ポンプの流入が重なる想定。ROE が資本コストを下回り続けてきた実績があり、資本配分の不確かさをこの筋書きの確率を少し厚くして表した。
悲観 11% 国内の価格競争と欧州の失敗が重なり、普通のポンプ会社になる 利益 48 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 981 円469 億円
国内の公共投資は構造的に縮み、中国・韓国の低価格ポンプが排水の中価格帯まで入る。数量は 1 割強減り、値段も物価に追いつかない。国内の利益率は 12% まで落ちる。
北米は鉱山の不況で設備投資が止まり、利益率は 6% にまで下がる。ZENIT は追加の減損と撤退に終わり、アジアの高採算も競争で削られる。売上は 10 年たっても今の水準に届かない。
余った現金は不況と失敗した買収で目減りする。オーナー色の濃い経営で還元は細り、価値は稼ぐ力と手元の現金で支えられるだけになる。もう優良な会社とは呼べない。
- 日本(輸出を含む):数量 3,900(国内の排水・汚水・工事用ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 11.0%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 428 億円・営業利益 51 億円。今の値段で測った市場 3,900 億円 × シェア 9.0%、営業利益率 12.0%
- 北米:数量 3,000(北米の鉱山・鉄鋼・工事向けポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 5.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 154 億円・営業利益 9 億円。今の値段で測った市場 3,000 億円 × シェア 4.2%、営業利益率 6.0%
- アジア・欧州・その他:数量 8,000(アジア・欧州・中南米・アフリカの対象ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質))× 価格 2.1%(実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍))→ 売上 166 億円・営業利益 5 億円。今の値段で測った市場 8,000 億円 × シェア 1.7%、営業利益率 3.0%
倍率:事業の ROE 4.1% が k 6.75% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値なので PER の上限は 1÷k = 12.9 倍。構造的に負けた筋書きで、稼ぐ力に対し 7 割ほどの 9.0 倍。床は純現金 166 億円で、余った現金は 0.5 倍に減らした(60 億円)。
確率:国内の構造的な縮小と海外の失敗が同時に来る複合の筋書き。ZENIT の減損の前例があるため 1 割強を置いた。quality と同じ理由で上げ下げはしていない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
日本(輸出を含む)
排水・汚水用の水中ポンプ、建設工事の水抜き、官公庁の排水設備、災害復旧用ポンプと交換部品。
| 数量国内の排水・汚水・工事用ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,500 | 10.0% | 450 | 84 |
| 10 年後 中立 | 4,450 | 13.8% | 614 | 108 |
取り方:日本セグメントの売上 435 億円・利益 84 億円(the-shashi の開示整理)を、連結 772 億円に合うよう少し膨らませて 450 億円とした。国内の対象市場は荏原・酉島・新明和などの競合を並べて 4,500 億円前後と推定し、シェアは約 10%。数量は今の値段の市場規模(実質)、物価の分は価格に入れた。
北米
鉱山・鉄鋼・工事向けの水中ポンプとスラリー(泥水)用ポンプ、交換部品。
| 数量北米の鉱山・鉄鋼・工事向けポンプ市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,200 | 5.0% | 160 | 15 |
| 10 年後 中立 | 4,000 | 7.4% | 295 | 31 |
取り方:北米セグメントの売上 156 億円・利益 14.7 億円(利益率 9.4%)。ウィアー、ザイレム、KSB などと競う北米の対象市場を約 3,200 億円と推定し、シェアは約 5%。鉱山向けの世界首位という会社の説明は全体のシェアではなく、用途を絞った地位と受け止めた。
アジア・欧州・その他
アジア(タイ・インドネシア等)の設備用、欧州(ZENIT)、南米・アフリカ向けの水中ポンプと周辺機器。
| 数量アジア・欧州・中南米・アフリカの対象ポンプ市場(億円、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場に対する当社売上の比率(=シェア × 物価の倍率。10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 8,100 | 2.0% | 162 | 16 |
| 10 年後 中立 | 11,000 | 3.2% | 354 | 35 |
取り方:アジア 81 億円(利益率 24%)と欧州 63 億円(営業赤字 3 億円)の合計 144 億円に、その他地域を足して 162 億円。対象市場は 8,100 億円と推定し、シェアは約 2%。散らばった市場で、数量の伸びしろはシェアの低さから来る。
リスクと懸念
今期の減益と利益の山
会社は 2027 年 3 月期の営業利益を 107 億円から 73 億円へ、3 割減で見ている。理由はここで確かめられていない。利益率 14〜15% が一時の山なら、10 年の見通しは下へ動く。
欧州 ZENIT の立て直し
2026 年 3 月期に欧州で約 40 億円の減損が出て、セグメントも赤字になった。買収額に見合う稼ぎを描けなければ、追加の減損や撤退が続き、自己資本をさらに削る。
鉱山市況と北米の設備投資
北米・中南米・アフリカの鉱山向けは、銅や鉄鉱石の価格に連動して設備投資が増減する。北米の利益率は 9% 台と国内の半分で、不況の谷では赤字に近づくおそれがある。
低価格ポンプの流入
中国・韓国のメーカーが汎用の排水ポンプから入ってくれば、入札や価格競争の場で利益率が削られる。国内の利益率 19% は、値上げが通ることを前提にしている。
余った現金の戻り方
純現金は時価総額の 1 割強あるが、上位に本社と同じ住所の法人が並び、オーナー色が濃い。自社株買いは最大 25 億円と時価総額の 2% ほど。現金が戻らなければ ROE は資本コストに届かない。
物言う株主と非公開化
ダルトン系のファンドが 2024 年から主要株主で、剰余金処分の株主提案も出した。圧力で還元が増えれば価値は上がるが、対立が長引けば経営の足を引く。非公開化や買収の確率は 10 年で 18% と試算される。
国内の公共投資の縮小
国内は日本セグメントが利益の大半を稼ぐ。人口減と財政の制約で自治体の排水投資が細れば、数量と値上げの両方が効かなくなり、全社の利益が大きく崩れる。
今後の分かれ目
- 2027 年 3 月期の営業利益が会社予想の 73 億円を大きく上回ったら
- 利益の山ではなく、14〜15% が定着したと見て、中立の利益率を上げ、やや楽観の確率を厚くする。
- 欧州 ZENIT で追加の減損や撤退が出たら
- 資本配分の実行力への懸念が強まり、やや悲観の確率を上げる。黒字化が定着すれば楽観側に寄せる。
- 自社株買いや配当の水準が引き上げられ、純現金が減り始めたら
- 余った現金の戻り方を 0.5 から 1.0 に見直す。この筋書きでは今の値段との差が縮む。
- 銅・鉄鉱石の価格が崩れ、北米の鉱山向け受注が落ちたら
- 北米の利益率と数量を下げ、やや悲観〜悲観の確率を上げる。交換部品の売上が底になるかを見る。
- 中国・韓国メーカーが国内入札で受注を取り始めたら
- 国内のシェアと利益率の前提を下方修正し、悲観の確率を厚くする。
- 物言う株主の提案や非公開化の動きが具体化したら
- 買収や自社株買いで価値が顕在化する可能性が高まる。ただ提示の値段が本質価値を超えるかは別に確かめる。
見ておくもの
- 日本・北米・アジア・欧州の四半期ごとの売上と営業利益率
- ZENIT の損益と追加の減損の有無
- 自社株買いと配当性向、純現金の残高
- 鉱山向けの受注と銅・鉄鉱石の価格
- ダルトン系ファンドの保有比率と株主提案の動き
倍率と資本コストの決め方
日本・北米・その他の 3 地域を、対象市場(実質)× シェアと物価並みの価格で積み上げ、倍率は正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(k 6.75%、g 4%、RONIC は k を超える分の半分が残る値)で置いた。中立は上限の 8 割、楽観 9 割、やや楽観 8.5 割。やや悲観・悲観は ROE が k を下回るので稼ぐ力から置き、上限へ引き上げていない。今の株価や過去・同業の倍率には寄せていない。2027 年 3 月期の会社予想(営業利益 73 億円)は理由を確かめられていないので、10 年の起点として使わず、利益率は 13% に置いた。市場規模・シェアは競合を並べた推定で、開示はない。余った現金は 120 億円(純現金 166 億円から運転資金とリースの約束を引いた額)、戻り方は 0.5。10 年後の数字は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえ、新リース会計基準で BS の形が変わる点は価値に影響しない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.1→19.57 倍・やや楽観 PER 13.4→18.52 倍・中立 PER 12.9→16.91 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +0.25% = 7.75%。ZENIT の失敗や創業家の支配といった個別の懸念は k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.75% → 6.75%。