結論
タカトリは、パワー半導体の SiC ウエハを切るワイヤソーと、半導体・ディスプレイの貼付装置を作る奈良の装置メーカーだ。従業員は 200 人ほど。2025 年 9 月期の売上は 73 億円と、前の期の半分以下に落ちた。
筆者の結論は「割高」だ。受注の山と谷をならした 10 年の平均で見ると、確率をかけた本質価値は今の時価総額のほぼ半分にとどまる。2023 年と 2024 年は営業利益が 25 億円を超えたが、それは例外の山で、平均には使えない。
この会社の価値は、SiC の大口径化に乗れるかにかかる。世界で最初に 8 インチをワイヤソーで切った実績は強みだ。しかし需要は中国の増産で一気にしぼんだ。
いちばん気にしているのは、利益の振れ幅の大きさだ。過去 12 年に営業赤字の期が 5 回ある。山の利益を平均だと思うと、値段の高さを見誤る。財務は強く、自己資本比率は 65% で純現金もあるので、倒産の心配は小さい。割高と見る理由は、財務ではなく、稼ぐ力の平均が今の値段に届かないことにある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「10 年後もこの事業は存在し、今より強いか」と問う。SiC のワイヤソーは今の勝ち組でも、用途が偏り、中国勢の追い上げに弱い。堀は技術の蓄積で、規模や規制ではない。
株主のものになる利益は、設備投資が小さいので純利益に近い。ただし、受注が山と谷で動くため、10 年の平均の利益は、2024 年の 19 億円ではなく、5〜8 億円程度と見る。
経営は堅実で、自己資本比率 65% と財務に余裕がある。一方で、資本の使い方は配当が中心で、成長への再投資は小さい。
安全域は、今の値段にない。時価総額 88 億円は、中立の 10 年の利益の 10 倍をやや超える。値段が高いのは、山の利益をまだ平均だと見る人が多いからだと筆者は見る。財務の強さは悲観の床を支えるが、中立の価値を上げる材料にはならない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ口は主に 2 つある。1 つ目は SiC などの新素材を切るワイヤソー。細いワイヤを何百本も張り、硬い結晶を薄いウエハに切り出す。パワー半導体の需要が伸びた時期には、海外企業から 13 億円や 26 億円の大口受注が相次いだ。2 つ目は、半導体の後工程やディスプレイで使う貼付装置など。シートやフィルムをウエハに貼る。この 2 つを合わせた電子機器事業が、2025 年 9 月期の売上の 95% 近い 69 億円を占める。
残りは、繊維向けの自動裁断機と、胸腹水の濾過濃縮装置「M-CART」の医療機器。医療機器は売上が 2.7 億円に増えたが、1.3 億円の赤字を出している。
客先は海外のメーカーが中心で、東南アジアの商社経由が売上の 16%。前の期は中国の商社が売上の 49% を占めていた。この偏りが、受注の落ち込みを大きくした。
中国の連結子会社は 2025 年 7 月に解散を決め、清算中だ。受注残は 38 億円で、前の期より 13% 減った。2025 年 9 月期の下方修正は、EV 市場の鈍化で SiC 切断装置の受注と販売が低調だったことと、子会社の解散に伴う特別損失が主因だ。売上が半分以下に落ちても黒字を保ったのは、固定費が軽い小さな会社だからだ。
優良さと弱いところ
強みは、SiC のワイヤソーで世界首位級という技術の蓄積だ。8 インチウエハをマルチワイヤソーで切る加工を世界で最初に成功させた。装置の細かな加工ノウハウは、後発が短期でまねしにくい。
弱みは 3 つある。第 1 に利益の振れ幅の大きさ。営業利益率は 2023 年に 15%、2024 年に 17% まで上がり、2025 年に 11% と落ちた。2019 年から 2020 年は赤字だった。第 2 に主力用途の偏り。SiC は EV の鈍化で受注が落ちた。第 3 に規模の小ささ。従業員 200 人では、大手のディスコやアドバンテストのような研究開発費を持てない。
資本効率は、過去 10 年の ROE の中央値が 6.6% で k を下回る。2023〜2024 年の 20% 前後は山の数字だった。
経営は、ROE 10% 以上を目標に掲げ、配当を出し続けている点が評価できる。ただし 2025 年 9 月期の ROE は 5.8% で未達だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
半導体製造装置の市場は、AI 向けの先端ロジックとメモリの投資で 2026 年に 9% 伸びる見込みで、後工程と先端パッケージは、それを上回る伸びが期待される。ただし、タカトリが強いのは SiC などパワー半導体向けの切断で、この領域の景気は別だ。EV の鈍化と、中国での SiC の大増産で、装置が余った。
SiC ウエハの 8 インチ化は進むが、切断の装置は更新まで間が空く。10 年の見通しでは、EV と再生可能エネルギーの需要が戻る一方、中国の装置メーカーが追い上げ、価格が物価に届かない。
貼付装置は、半導体後工程の先端パッケージが追い風になる。ただし競合は国内外に多く、価格を自分で決められる状況ではない。
受注の山と谷は、この業界の宿命だ。2008 年の世界金融危機、2019 年、2023 年の半導体不況のたびに装置投資は 4〜6 割減った。10 年の平均の利益は、山の利益でも谷の利益でもなく、その間の平均で測る必要がある。中国の装置国産化と米国の輸出管理が重なれば、日本の中堅装置メーカーの海外向け販売は先行きが読めなくなる。
資本政策と M&A
還元は安定配当が中心で、年 1 回の期末配当。2025 年 9 月期は性向が 4 割弱で、総額は 2.2 億円。自己株式の取得は開示がない。
現金は 51 億円あるが、短期借入が 41 億円あり、純現金は 10 億円。受注残 38 億円に対する前受金や、運転資金の借入が含まれている可能性が高く、余った現金とは見ていない。
中国子会社の解散による特別損失は小さい。M&A の実績は目立たず、今後も大きな買収をする体力はない。買収される可能性は 10 年で 2 割ほどと推計される。TOB の上乗せは本質価値に含めていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
SiC の 8 インチ化は、まだ始まったばかりだ。世界で最初にマルチワイヤソーで 8 インチを切った会社は、更新需要が戻る局面で最初に呼ばれる。2023〜2024 年に営業利益が 25〜28 億円に達したことが、その実力を示している。
半導体の後工程は、AI 向けの先端パッケージで投資が伸びる。貼付装置の数量は 10 年で 5 割増える余地がある。会社の予想も、2027 年 9 月期の営業利益 8.5 億円と、2026 年 9 月期の 4.3 億円から倍に戻す。受注残は 38 億円あり、短期の売上を支える。
自己資本比率は 65% で、純現金があり、財務は強い。配当も続けている。小さな会社なので、数量が戻れば利益率は大きく動く。山の半分でも、今の値段の割には利益は大きい。装置は一台ごとの単価が大きく、受注が動けば売上は短期で戻る。2022 年 9 月期の売上は 102 億円、2023 年 9 月期は 164 億円と、2 年で 6 割増えた前例がある。
慎重な見方
2023〜2024 年の利益は、SiC 投資の特異な山で、再現性がない。2025 年 9 月期の売上は 54% 減り、営業利益は 71% 減った。前の期に売上の 49% を占めた中国の商社向けは 6% に落ちた。客先の偏りが、需要の山を作り、谷を深くした。
中国のメーカーは SiC の装置も量産に入っている。8 インチの切断も同様に追い上げる。価格が物価に届かず、シェアを失えば、利益は赤字に戻る。過去 12 年に営業赤字が 5 回あり、赤字の期でも自己資本は小さくなる。
会社は 2026 年 9 月期も、営業利益 4.3 億円と予想する。売上は 70 億円で、時価総額 88 億円は、その営業利益の 20 倍にあたる。山の利益を前提にした値段になっている。客先の偏りも深刻で、1 社の設備投資の都合で受注が消える。小さな会社が研究開発費で大手に勝つのは難しく、中国勢の追い上げで価格競争が強まれば、技術の優位は続かない。
どちらに重みを置いたか
山の利益を平均とみる見方は、10 年の平均には使えない。慎重な見方のほうが 10 年の中立に近く、確率も中立に 3 割、やや悲観と悲観に 4 割を置いた。楽観は 9% にとどめた。財務の強さが悲観を下支えするが、事業の稼ぐ力が今の時価総額を支えるには足りない。この判断は、受注の山と谷をならした 10 年の平均に基づく。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 1,619 円86 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 459 円24 億円)。 今の値に割り戻すと 982 円52 億円、今との差 −34.4%、 期待の年率 +3.3%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 9% | 3,924 円209 億円 | 1,031 円55 億円 | +230.8% | +12.7% | 446 円24 億円 |
| やや楽観 | 21% | 2,291 円122 億円 | 619 円33 億円 | +94.3% | +6.9% | 611 円33 億円 |
| 中立 | 30% | 1,667 円89 億円 | 525 円28 億円 | +46.3% | +3.9% | 658 円35 億円 |
| やや悲観 | 25% | 752 円40 億円 | 281 円15 億円 | −31.0% | −3.6% | 258 円14 億円 |
| 悲観 | 15% | 641 円34 億円 | 56 円3 億円 | −53.4% | −7.4% | 105 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,619 円86 億円 | 459 円24 億円 | +38.7% | +3.3% | 2,078 円111 億円 |
今の株価時価総額 1,498 円80 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 9% SiC の 8 インチ化と先端パッケージの投資が重なり、ワイヤソーも貼付装置も伸びる 利益 18 億円 · PER 11.6 倍 · 株価時価総額 3,924 円209 億円
パワー半導体の SiC が EV と再生可能エネルギーで再び伸び、8 インチのウエハを切る大口径のワイヤソーが各社の更新投資の中心になる。タカトリは世界で最初にマルチワイヤソーで 8 インチをスライスした実績を持ち、受注を取り戻す。半導体の後工程向けの貼付装置は、先端パッケージの増産で台数が 5 割伸びる。営業利益は 22 億円と、2024 年 9 月期の 28 億円の 8 割に戻る。受注の山は一時的で、10 年の終わりの年の数字として置いた。配当は 4 割弱の性向を保ち、現金は積み上がる。ただし 10 年の終わりに山が来る確率は低く、この筋書きは 1 割に届かない。ワイヤソーで取った大口受注が貼付装置の客先開拓にもつながり、売上は 2 倍近い規模に戻る。
- 新素材加工機(ワイヤソー):数量 36.0(出荷台数(推定))× 価格 1.68(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 60 億円・営業利益 10 億円。ワイヤソー 36 台(推定)× 価格 1.34 倍、利益率 17%
- 半導体・ディスプレイ製造機器:数量 90.0(出荷台数(推定))× 価格 0.99(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 89 億円・営業利益 12 億円。半導体・ディスプレイ製造機器 90 台(推定)× 1.34 倍、利益率 13%
- 繊維機器・医療機器:数量 80.0(出荷台数(推定))× 価格 0.13(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。医療機器・自動裁断機 80 台 × 1.34 倍、利益率 3%
倍率:事業の純利益 18 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.1% が k 9.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 11.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.6 倍。全体の PER 11.63 倍、時価総額 209 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2023 年 9 月期と 2024 年 9 月期は営業利益率が 15〜17% に達した。この山が再び来る確率は、中国勢の増産で SiC が余った直近の事実を見ると 1 割に届かない。
やや楽観 21% SiC は戻るが中国勢に値を下げられ、貼付装置が伸びて補う 利益 11 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,291 円122 億円
8 インチ SiC の更新需要が戻り、ワイヤソーの数量は 4 割増える。ただし、中国のメーカーが安価な装置で追い上げ、価格は物価の 1.34 倍に届かず 1.25 倍にとどまる。貼付装置は先端パッケージで 25% 増え、価格は物価並みに上がる。営業利益は 13 億円、営業利益率は 10% 台前半。配当は性向 4 割を保つ。売上は 100 億円台前半まで戻るが、2023 年 9 月期の 164 億円には届かない。貼付装置の客先が先端パッケージ向けに広がる点が、ワイヤソーの価格下落を補う中心になる。会社が掲げる ROE 10% には届かない。
- 新素材加工機(ワイヤソー):数量 28.0(出荷台数(推定))× 価格 1.56(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 44 億円・営業利益 5 億円。ワイヤソー 28 台 × 1.25 倍(中国勢の安値で物価に届かない)、利益率 12%
- 半導体・ディスプレイ製造機器:数量 75.0(出荷台数(推定))× 価格 0.99(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 74 億円・営業利益 8 億円。半導体・ディスプレイ製造機器 75 台 × 1.34 倍、利益率 10.5%
- 繊維機器・医療機器:数量 64.0(出荷台数(推定))× 価格 0.13(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 9 億円・営業利益 0 億円。医療機器・自動裁断機 64 台 × 1.34 倍、利益率 0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.1% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 122 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2023〜2024 年に営業利益 25〜28 億円を出した実績があり、需要が戻れば 13 億円までは届く。ただし値下がりと中国勢の追い上げで、前の山の半分にとどまる前提で 5 分の 1 に置いた。
中立 30% 受注の山と谷をならした 10 年の平均。営業利益率は 9% 前後 利益 8 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,667 円89 億円
受注は山と谷を繰り返す。10 年を通した平均では、ワイヤソーの数量が 1 割増え、貼付装置も 1 割増える。ワイヤソーは中国勢との競争で価格が物価の 1.34 倍に届かず 1.20 倍。営業利益は平均で 9 億円、営業利益率は 9% 弱。山の年は 25 億円、谷の年は赤字になる前提の平均で、減価償却は小さく設備投資も少ない。営業利益率は過去 12 年の平均に近い。ワイヤソーが 4 割、貼付装置が 6 割の稼ぎ頭になる構成で、医療機器は黒字化せずに小さな赤字が残る。物価で増える本社費と人件費は、価格の上昇で吸収する。
- 新素材加工機(ワイヤソー):数量 22.0(出荷台数(推定))× 価格 1.50(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 33 億円・営業利益 3 億円。ワイヤソー 22 台 × 1.20 倍(中国勢との競争で物価に届かない)、利益率 10%
- 半導体・ディスプレイ製造機器:数量 66.0(出荷台数(推定))× 価格 0.99(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 65 億円・営業利益 6 億円。半導体・ディスプレイ製造機器 66 台 × 1.34 倍、利益率 9.5%
- 繊維機器・医療機器:数量 56.0(出荷台数(推定))× 価格 0.13(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。医療機器・自動裁断機 56 台 × 1.34 倍、利益率 −2%
倍率:事業の純利益 8 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.5% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 89 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:2014 年 9 月期から 2025 年 9 月期の 12 年の営業利益率の単純な平均は 8% 前後。山の 3 期(2023〜2025 年 9 月期の前半)を含めても、ならせば 8〜9% に収まる。山にも谷にも置かない水準を中立とした。
やや悲観 25% SiC は戻らず、貼付装置が横ばい。営業利益率は 4% 台 利益 4 億円 · PER 10.0 倍 · 株価時価総額 752 円40 億円
中国での SiC の増産で装置が余り、ワイヤソーの数量が 15% 減る。価格も物価に届かず 1.15 倍。貼付装置は横ばいで、営業利益率は 6%。営業利益は 4.5 億円、純利益は 4 億円。配当は性向を保てず、半分に減る。売上は 85 億円前後と、足元の 73 億円から小さく戻るだけだ。2019 年 9 月期から 2021 年 9 月期の営業利益率は、赤字と 1 桁台前半の間にあった。需要が戻らず、客先が投資を先送りすれば、同じ水準が数年続く。医療機器の赤字が利益をさらに削り、研究開発費も絞らざるをえない。
- 新素材加工機(ワイヤソー):数量 17.0(出荷台数(推定))× 価格 1.44(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。ワイヤソー 17 台 × 1.15 倍、利益率 5%
- 半導体・ディスプレイ製造機器:数量 60.0(出荷台数(推定))× 価格 0.99(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 59 億円・営業利益 4 億円。半導体・ディスプレイ製造機器 60 台 × 1.34 倍、利益率 6%
- 繊維機器・医療機器:数量 48.0(出荷台数(推定))× 価格 0.13(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。医療機器・自動裁断機 48 台 × 1.34 倍、利益率 −5%
倍率:ROE 3.5% で稼ぎは k に届かない。PER は 1÷k の 10.5 倍が上限で、谷の年の利益を平均の水準で見るため上限の 9 割の 10.03 倍に置いた。下の床(売れる資産の税後 34 億円)を下回らない。
確率:2019 年 9 月期から 2020 年 9 月期は営業赤字で、2021 年 9 月期も営業利益率 6% にとどまった。山のあとの谷が数年続く前例があり、確率を 4 分の 1 に置いた。
悲観 15% SiC の大口径化に乗れず、ワイヤソーのシェアを中国勢に奪われる 利益 −4 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 641 円34 億円
中国のメーカーが 8 インチの安価なワイヤソーを量産し、主要な客先の更新はそちらに移る。ワイヤソーの数量は 6 割減り、価格も下がる。貼付装置も顧客の絞り込みで数量が減る。営業損失は 3 億円。減損も出て自己資本は 90 億円まで減るが、無借金に近い財務で破綻には至らない。配当は赤字の年だけ減る。受注の見通しが立たない年は、売上が 50 億円を割る。2009 年 9 月期の営業利益率 −14% の前例どおり、固定費の重さが赤字を深くする。純現金と小さな借入のおかげで継続はできるが、価値は事業でなく資産に近づく。
- 新素材加工機(ワイヤソー):数量 8.0(出荷台数(推定))× 価格 1.19(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 10 億円・営業利益 −1 億円。ワイヤソー 8 台 × 0.95 倍、利益率 −15%
- 半導体・ディスプレイ製造機器:数量 42.0(出荷台数(推定))× 価格 0.89(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 37 億円・営業利益 −1 億円。半導体・ディスプレイ製造機器 42 台 × 1.20 倍、利益率 −3%
- 繊維機器・医療機器:数量 40.0(出荷台数(推定))× 価格 0.12(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 −1 億円。医療機器・自動裁断機 40 台 × 1.20 倍、利益率 −10%
倍率:赤字で稼ぐ力では測れない。売れる資産の税後 34 億円(下の内訳)に近く、減損後の自己資本 90 億円に 0.38 倍を掛けた。今の自己資本 103 億円に対しては 0.33 倍。事業の経済性から置いた値で、市場の値付けには依らない。
確率:2009 年 9 月期は営業利益率 −14% まで落ちた。単一の用途に偏る装置メーカーが、技術の置き換えとシェアの喪失で赤字が続く確率を 15% に置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
新素材加工機(ワイヤソー)
SiC など硬い結晶を薄く切るマルチワイヤソー。8 インチの大口径に対応。
| 数量出荷台数(推定) | 価格1 台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 20.0 | 1.25 | 25 | 3 |
| 10 年後 中立 | 22.0 | 1.50 | 33 | 3 |
取り方:電子機器事業 69.3 億円の内訳は開示がない。新素材加工機が 3 分の 1 強と推定し、1 台あたり約 1.25 億円(大口受注の 13.7 億円は 10 台超と読める)として 20 台相当とした。営業利益は電子機器全体の利益 9.6 億円を割った推定。10 年後の価格が物価の 1.34 倍に届かないのは、中国勢の追い上げで値下げ圧力がかかるため。
半導体・ディスプレイ製造機器
後工程のシート貼付装置などの半導体・ディスプレイ向け製造機器。
| 数量出荷台数(推定) | 価格1 台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 60.0 | 0.74 | 44 | 6 |
| 10 年後 中立 | 66.0 | 0.99 | 65 | 6 |
取り方:電子機器事業 69.3 億円から新素材加工機を引いた残りの 44.3 億円を、1 台 7,400 万円と推定して 60 台相当とした。数量は売上からの推定。
繊維機器・医療機器
自動裁断機と、胸腹水の濾過濃縮装置「M-CART」。
| 数量出荷台数(推定) | 価格1 台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 40.0 | 0.10 | 4 | −1 |
| 10 年後 中立 | 56.0 | 0.13 | 8 | 0 |
取り方:繊維機器 1.3 億円と医療機器 2.7 億円の合計 4.0 億円。営業損失は 1.35 億円(繊維 0.07 億円、医療 1.28 億円)。台数は推定。
リスクと懸念
受注の山と谷
装置投資は景気に左右され、営業利益率は −14% から 17% の間で動いた。過去 12 年に営業赤字が 5 回ある。
SiC への用途の偏りと中国勢の追い上げ
SiC の切断装置は EV の鈍化と中国の増産で受注が落ちた。中国のメーカーが 8 インチの安価な装置を出せば、シェアと価格を失う。
客先の偏り
前の期は中国の商社が売上の 49% を占め、今は東南アジアの商社が 16%。1 社の動きで売上が大きく動く。
規模の小ささ
従業員 200 人では研究開発費に限りがあり、大手装置メーカーの技術開発に置いていかれる危険がある。
医療機器の赤字
医療機器は売上 2.7 億円に対し損失 1.3 億円。黒字化に時間がかかれば本業の利益を削る。
今後の分かれ目
- 8 インチ SiC の更新投資で大口受注が再び出る
- 楽観・やや楽観の確率を上げ、中立のワイヤソーの数量を見直す。
- 受注高が 2 期続けて 100 億円を超える
- 山が再び来たかを確かめ、10 年の平均の置き方を上に直す。
- 中国メーカーが 8 インチ SiC の安価な切断装置を量産する
- ワイヤソーの価格とシェアを下に直し、悲観の確率を上げる。
- 医療機器が黒字化する
- 全社の利益率を 1 ポイント上げる。
- 自己株式の取得や増配が出る
- 還元の積み上がりを見直す。
見ておくもの
- 受注高と受注残(38 億円)
- 主要客先の分散(1 社の比率)
- 営業利益率(9% 前後を保てるか)
- 中国の SiC 切断装置メーカーの動き
- 配当性向と ROE 10% の目標の進み具合
倍率と資本コストの決め方
数量 × 価格をセグメントごとに積み、k 9% と ROE から倍率を決めた。ROE が k 以下で PER は 1÷k の 10.5 倍が上限。中立は上限の 8 割の 8.5 倍に置いた。今の時価総額 88 億円は考慮していない。2023〜2024 年の山は 10 年の平均に使わず、12 年の営業利益率の平均 8% 前後に近い 9% 弱で置いた。受注の山谷をならした平均を中立としている。新リース会計基準の影響は小さい見込み。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 9.5→11.63 倍・やや楽観 PER 9→11.11 倍・中立 PER 8.5→11.11 倍・やや悲観 PER 9.5→10.03 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。