結論
ニッチツは、長崎県の松浦工場でばら積み船のハッチカバー(船倉のふた)や船体のブロックを作る会社だ。ほかに、半導体の封止材などに使う精製珪石粉(ハイシリカ)、東京のオフィスビルの賃貸、耐熱塗料も手がける。もとは秩父の鉱山の会社で、石灰石の採掘は2022年に終えた。
筆者の結論は、10年の稼ぐ力で測ると今の値段は高い、というものだ。帳簿の上では資産が厚い。純現金は約22億円、持ち合いの株は約37億円あり、合わせると時価総額を上回る。だが事業が稼ぐのは年に2億円ほどで、ROE(自己資本利益率)は1〜2%しかない。
会社はROE5%を2027年度の目標に掲げたが、今期の予想は1%だ。3年で30億円を超える設備投資をしたのに、利益率は上がっていない。
持ち合いの株は配当として利益に入っているが、売って株主に返す計画は数字で示されていない。資産の厚さが株主の手に届く道が見えない限り、帳簿の安さは安全域にならないと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ニッチツは「資産は厚いが、事業が資本に見合って稼がない会社」だ。
帳簿だけを見れば安い。時価総額は自己資本の4割で、純現金と持ち合いの株を足せば時価総額を上回る。だがオーナーとして問うべきは、その資産が株主の手に届くかだ。会社は清算されず、現金は設備に回り、持ち合いの株は取引先との関係で持たれている。少数株主がその価値を受け取る道は細い。
事業の側は、値段を決める力が弱い。造船所の言い値で鋼材を加工する仕事は、量があっても利幅が薄い。ハイシリカは良い製品だが、半導体の波に揺られる。
経営は変わり始めている。総還元性向40%や社外取締役の増員は正しい方向だ。それでも、ROE8%の目標は今の1%台から遠い。持ち合いの株を売り、その代金を自社株買いに回すと数字で約束した時に、初めて帳簿の安さが安全域に変わると筆者は見る。
下がった時の床が厚いことは認める。だから、資本の使い方が変わる兆しを見てから考えても遅くない会社だ。
何で稼ぐ会社か
事業は4つある。2026年3月期の売上94億円のうち、機械が65億円で7割を占める。資源(ハイシリカ)が19億円、素材が8億円、不動産が1億円台だ。
機械の中心は舶用機器だ。ばら積み船の船倉を閉じる大きな鋼製のふた、ハッチカバーを造船所に納め、船体のブロックも作る。全社の売上の3割近くが大島造船所向けで、1社への依存は大きい。ほかに製鉄所や水力発電所向けの機械、火力発電所の空気予熱器、プラントの据え付け工事も請け負う。
資源は、九州の江迎工場で珪石を細かく砕いて精製した粉を作る。半導体の封止材、液晶、特殊ガラス、光学の材料に使われる。値段の高い製品が増え、前期の赤字から黒字に戻った。ただ半導体の需要の回復は遅れている。
不動産は東京のオフィスビルの賃貸で、利益は小さいが安定している。素材は工場の設備向けの耐熱塗料と、高純度の天然ゴムの加工品を売る。
営業利益は4事業の合計で2億円ほどしかない。そこに持ち合いの株の配当が1億円前後加わり、休んだ鉱山の管理の費用が差し引かれて、純利益になる。
従業員の多くは松浦工場で働き、地元での採用に力を入れている。
優良さと弱いところ
事業の質は低い。最大の理由は、主力の機械で値段を決める力がないことだ。ハッチカバーや船体のブロックは、造船所が仕様と値段を決めて発注する。鋼材の値段や輸送費が上がっても、すぐには転嫁できない。2026年3月期は、自動加工ラインの立ち上げ費用と輸送費で機械の利益が半分になった。
顧客の集中も弱みだ。大島造船所が全社の売上の3割近くを占める。造船所の受注が細れば、ニッチツの仕事もそのまま減る。
資本効率は、帳簿の厚さに比べて極めて低い。自己資本は122億円あるが、そのうち現金と持ち合いの株が半分近くを占め、事業そのものに投じた資本も十分には稼いでいない。ROEは過去10年でほとんど3%を超えていない。
良い点もある。借金は少なく、赤字の年が続いても会社は揺るがない。ハイシリカは用途の幅が広く、半導体が戻れば利益の伸びしろがある。社外取締役を増やし、総還元性向40%の方針も出した。経営が資本の使い方に目を向け始めたことは評価できる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
ハッチカバーの需要は、ばら積み船の建造量で決まる。ばら積み船は鉄鉱石・石炭・穀物を運ぶ船で、世界の建造は中国と韓国が大半を握る。日本の造船所は世界のシェアを2割弱まで落としたが、今治造船や大島造船所はばら積み船に強い。
日本政府は造船を経済安全保障の柱とし、2035年に建造量を倍にする目標と大きな支援策を打ち出した。これが実現すれば、国内のハッチカバーの需要は増える。ただ、造船所が人手不足のまま建造を倍にできるかは疑わしい。海運の市況は振れが大きく、船の注文は数年おきに山と谷を繰り返す。
脱炭素の流れは、両方に働く。石炭を運ぶ船の需要は長い目で細るが、古い船を燃費の良い船に替える需要は続く。製鉄所や火力発電所向けの機械は、脱炭素で投資が細る側にある。
ハイシリカは半導体の封止材の原料で、需要はシリコンサイクル、つまり半導体の景気の波で大きく動く。AIのサーバー向けの半導体は伸びるが、封止材の原料の値段は世界の競争で決まる。
筆者は、10年でハッチカバーの量は横ばい、ハイシリカの量は2割近く増え、値段は物価並みと見る。
資本政策と M&A
還元の方針は、総還元性向40%を目安に、配当と自社株買いで株主に返すことだ。2024年11月に配当性向30%から切り替えた。過去3年の還元は配当が2億円、自社株買いが2億円で、合わせて4億円にとどまる。
同じ3年で、設備投資には32億円を使い、手元の現金を15億円取り崩した。松浦工場のクレーンと鋼材の自動加工ライン、江迎工場の新しい粉砕機などだ。投資が利益に結びつくかはまだ見えない。
持ち合いの株は上場分だけで15銘柄・36億円あり、めぶきフィナンシャルグループ、みずほ、センコーなどだ。毎年少しずつ売っているが、縮減の目標は示していない。親会社はなく、大株主は銀行と旭化成などだ。資産の厚さから、買収の対象として名前が挙がる余地はあるが、筆者はその確率を高くは見ない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ニッチツは、帳簿の上では明らかに安い。純現金22億円と持ち合いの株37億円を足すと、時価総額を2割も上回る。事業の価値は、ただで手に入る計算だ。オフィスビルの含み益も7億円近くある。
事業にも追い風がある。国は造船を経済安全保障の柱とし、建造量を倍にする目標を掲げた。大島造船所はばら積み船で国内有数の造船所で、その主要な取引先であることは強みになる。新しい自動加工ラインが軌道に乗れば、量が増えても人手は増やさずに済む。
ハイシリカは、AIの半導体の封止材の原料だ。値段の高い製品が増え、前期は赤字から黒字に戻った。半導体が戻れば、利益は数倍になりうる。
経営も変わった。総還元性向40%を打ち出し、社外取締役を4割を超えるまで増やした。東証の要請の中で、持ち合いの株を売って自社株買いに回すのは時間の問題だ。そうなれば、ROEは一気に上がる。
下値も堅い。借金はほとんどなく、赤字の年が続いても会社は揺るがない。悪い筋書きでも、資産の売れる値が時価総額の近くで支えになる。
慎重な見方
帳簿の安さは、株主の手に届かなければ意味がない。会社は3年で現金を15億円取り崩して設備に回し、株主に返したのは4億円だけだ。持ち合いの株も、縮減の目標は示されていない。銀行や取引先との関係を考えれば、大きく売るとは思えない。
事業は稼がない。ROEは過去10年でほとんど3%を超えず、中計の目標の5%も遠い。来期の予想は1%だ。新しいラインに投資した直後に、機械の利益は半分になった。
主力の機械は、造船所の言い値で鋼材を加工する仕事だ。全社の売上の3割近くを1つの造船所に頼り、値段を決める力はない。国の造船の倍増の目標も、造船所に人がいなければ絵に描いた餅だ。
ハイシリカは半導体の波に揺られ、中国の安い品とも競う。休んだ鉱山の管理の費用も長く残る。安く見えるのは帳簿の上だけで、稼ぐ力で測れば今の値段に安全域はない。
強気の筋書きは、経営が資本の使い方を大きく変えることを前提にしている。だが、この会社は長く現金を抱えたまま、低いROEに甘んじてきた。
どちらに重みを置いたか
資産の厚さについては強気の言い分に理がある。だが、それが株主に届く道は、持ち合いの株の売却と自社株買いを数字で約束するまで見えない。事業のROEが資本コストに遠く及ばない以上、確率は中立を中心に置き、大口の顧客への依存を見て慎重な側を強気と同じ厚さにした。資本の使い方が変われば、見方を強気に寄せる。資産を返す約束が出るまでは、帳簿の安さを価値として数えない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,143 円62 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 540 円11 億円)。 今の値に割り戻すと 1,823 円36 億円、今との差 −26.8%、 期待の年率 +4.0%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 5,340 円105 億円 | 916 円18 億円 | +151.2% | +9.7% | 626 円12 億円 |
| やや楽観 | 20% | 4,042 円79 億円 | 713 円14 億円 | +90.9% | +6.7% | 951 円19 億円 |
| 中立 | 40% | 3,176 円62 億円 | 560 円11 億円 | +50.1% | +4.1% | 1,495 円29 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,093 円41 億円 | 305 円6 億円 | −3.7% | −0.4% | 480 円9 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,120 円22 億円 | 204 円4 億円 | −46.8% | −6.1% | 132 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,143 円62 億円 | 540 円11 億円 | +47.9% | +4.0% | 3,683 円72 億円 |
今の株価時価総額 2,490 円49 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 国の造船の再生策が実り、ハイシリカも半導体で伸びる 利益 8 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 5,340 円105 億円
国の支援で国内の造船所が設備と人を増やし、ばら積み船の建造が3割増える。ニッチツは新しい自動加工ラインで鋼材の加工量を3割増やし、輸送費と立ち上げの費用もこなれて、機械の利益率は5%に上がる。
ハイシリカは、AIのサーバー向けの半導体の封止材で需要が戻り、販売量は4割増える。値段の高い製品の比率も上がり、利益率は9%になる。
営業利益は10億円に届き、純利益は7.7億円になる。会社は総還元性向40%を守り、持ち合いの株の一部も売る。それでもROEは5%台で、資本コストには届かない。資産の厚さが重しとして残る。
自社株買いが続けば、株主の取り分は今の形よりはっきり増える。経営が資本の使い方を変えたことが、この筋書きのいちばんの支えになる。
- 機械関連(舶用機器・産業機器・工事):数量 14.0(鋼材の加工量(千トン、推定))× 価格 80(1トンあたりの売上(万円、推定))→ 売上 113 億円・営業利益 6 億円。加工量3割増・単価は物価並み
- 資源関連(ハイシリカ):数量 14.0(販売量(千トン、推定))× 価格 27(1トンあたりの単価(万円、推定))→ 売上 38 億円・営業利益 3 億円。半導体向けが戻る
- 不動産関連:数量 4.9(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 3.91(1平方メートルあたりの年間賃料(万円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。賃料は物価並み・償却は据え置き
- 素材関連:数量 2.3(販売量(千トン、推定))× 価格 54(1トンあたりの単価(万円、推定))→ 売上 12 億円・営業利益 1 億円。少し伸びる
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.6% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 105 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:政府の造船の倍増目標と支援策は現実の動きで、大島造船所はばら積み船に強い。ただ人手不足で建造を大きく増やすのは難しく、ハイシリカの回復と重なる筋は1割とした。
やや楽観 20% 造船が堅調で、機械の採算が少し戻る 利益 6 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,042 円79 億円
国内の造船所の受注は堅調が続き、ハッチカバーと船体ブロックの加工量は1割強増える。自動加工ラインの立ち上げが済み、輸送費の上昇も値段に少しずつ乗せられる。機械の利益率は4%近くに戻る。
ハイシリカは半導体の回復で販売量が3割近く増え、利益率は7%台になる。不動産は賃料が物価並みに上がり、古いビルの償却は増えないので利益率が少し上がる。
営業利益は7億円台、純利益は5.7億円になる。総還元性向40%で配当と自社株買いを続け、ROEは4%前後まで上がる。中計の目標の5%には届かないが、方向は合っている。
大島造船所への依存は続くが、ほかの造船所からの受注も少しずつ増える。
- 機械関連(舶用機器・産業機器・工事):数量 12.0(鋼材の加工量(千トン、推定))× 価格 80(1トンあたりの売上(万円、推定))→ 売上 96 億円・営業利益 4 億円。加工量1割強増
- 資源関連(ハイシリカ):数量 12.5(販売量(千トン、推定))× 価格 27(1トンあたりの単価(万円、推定))→ 売上 34 億円・営業利益 3 億円。量が3割近く増
- 不動産関連:数量 4.9(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 3.91(1平方メートルあたりの年間賃料(万円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 1 億円。安定
- 素材関連:数量 2.1(販売量(千トン、推定))× 価格 54(1トンあたりの単価(万円、推定))→ 売上 11 億円・営業利益 1 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 79 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ハッチカバーの売上は伸びており、国内の造船所の受注残は数年分ある。自動加工ラインの効果が出る筋として2割。
中立 40% 量は横ばい、利益は物価で少し膨らむだけ 利益 4 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,176 円62 億円
筆者が最も起こりやすいと見るのは、今の形がそのまま続く姿だ。造船は山と谷を繰り返し、ハッチカバーの加工量は10年をならせば横ばいだ。値段は物価並みに上がるが、鋼材と人件費も同じだけ上がり、機械の利益率は3%弱にとどまる。
ハイシリカは半導体の伸びで量が2割近く増え、利益率は6%に戻る。不動産と素材は小さく安定している。
営業利益は5億円強になる。現金の利息と持ち合いの株の配当が加わり、純利益は4.3億円だ。総還元性向40%で返しても自己資本は140億円近くに膨らみ、ROEは3%前後にとどまる。資産の厚さは変わらず、株主の手には届かない。
- 機械関連(舶用機器・産業機器・工事):数量 10.8(鋼材の加工量(千トン、推定))× 価格 80(1トンあたりの売上(万円、推定))→ 売上 87 億円・営業利益 2 億円。量は横ばい・単価は物価並み
- 資源関連(ハイシリカ):数量 11.5(販売量(千トン、推定))× 価格 27(1トンあたりの単価(万円、推定))→ 売上 31 億円・営業利益 2 億円。量は2割近く増
- 不動産関連:数量 4.9(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 3.91(1平方メートルあたりの年間賃料(万円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。償却は据え置き
- 素材関連:数量 2.0(販売量(千トン、推定))× 価格 54(1トンあたりの単価(万円、推定))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。横ばい
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.3% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)11 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 62 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去10年のROEはほぼ3%以下で、中計の目標も未達が続く。今の形が続く最も自然な姿として4割。
やや悲観 20% 造船の谷と半導体の不振が重なる 利益 2 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 2,093 円41 億円
海運の市況が冷え、ばら積み船の新しい注文が細る。中国の造船所の安値に押され、国内の造船所も建造を減らす。ハッチカバーの加工量は2割落ち、値段も物価ほど上がらない。新しいラインの償却と人件費が残り、機械の利益はほぼ消える。
ハイシリカは半導体の在庫調整が長引き、量が伸びない。中国の安い珪石粉との競争で値段も弱い。
営業利益は2億円を切り、純利益は1.7億円にとどまる。総還元性向40%の還元も額は小さい。価値は稼ぐ力では測れず、現金と持ち合いの株の売れる値で決まる。会社は清算されないので、少数株主に戻るのは4分の3ほどとみる。
- 機械関連(舶用機器・産業機器・工事):数量 8.5(鋼材の加工量(千トン、推定))× 価格 72(1トンあたりの売上(万円、推定))→ 売上 61 億円・営業利益 1 億円。加工量2割減
- 資源関連(ハイシリカ):数量 9.0(販売量(千トン、推定))× 価格 24(1トンあたりの単価(万円、推定))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。半導体の不振
- 不動産関連:数量 4.9(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 3.70(1平方メートルあたりの年間賃料(万円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。安定
- 素材関連:数量 1.7(販売量(千トン、推定))× 価格 48(1トンあたりの単価(万円、推定))→ 売上 8 億円・営業利益 0 億円。縮む
倍率:ROEは約1.3%で稼ぐ力は純利益÷k+余った現金で約28億円。床の資産(純現金と持ち合い株の税後に戻り方0.75)の約36億円の方が大きく、今の自己資本122億円に0.295倍をかけた36億円とする。
確率:ばら積み船の注文は数年おきに大きく落ち、中国と韓国の安値の攻勢も続く。大島造船所への依存を考えると2割はありうる。
悲観 10% 大口の造船所を失い、機械が赤字に沈む 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 1,120 円22 億円
リーマン級の世界不況で海運が崩れ、ばら積み船の注文が止まる。大島造船所はハッチカバーの調達先を絞り、ニッチツの仕事は半分近くに減る。新しいラインと人の固定費が残り、機械は赤字になる。
ハイシリカも半導体の不況で量が落ちる。持ち合いの株は値下がりし、配当も減る。
全社の営業利益は赤字で、純利益はわずかに赤字だ。会社は現金を取り崩して雇用を守り、持ち合いの株も手放さない。資産は残るが、清算されない会社の現金の使い道は少数株主には決められない。株主に届くのは、その半分ほどとみる。
景気が戻っても、失った大口の仕事は簡単には戻らない。
- 機械関連(舶用機器・産業機器・工事):数量 6.0(鋼材の加工量(千トン、推定))× 価格 66(1トンあたりの売上(万円、推定))→ 売上 40 億円・営業利益 −2 億円。大口を失い赤字
- 資源関連(ハイシリカ):数量 7.5(販売量(千トン、推定))× 価格 22(1トンあたりの単価(万円、推定))→ 売上 17 億円・営業利益 0 億円。不況
- 不動産関連:数量 4.9(賃貸面積(千平方メートル、推定))× 価格 3.40(1平方メートルあたりの年間賃料(万円、推定))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。安定
- 素材関連:数量 1.5(販売量(千トン、推定))× 価格 44(1トンあたりの単価(万円、推定))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。とんとん
倍率:赤字で稼ぐ力はない。価値は床の資産で測り、今の自己資本122億円に0.18倍をかけた22億円とする。
確率:全社の売上の3割近くを1つの造船所に頼る形は、相手の方針が変われば一気に崩れる。リーマン級の海運の不況と重なる筋として1割。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
機械関連(舶用機器・産業機器・工事)
ハッチカバー・船体ブロック、製鉄・電力向けの機械、据え付け工事。
| 数量鋼材の加工量(千トン、推定) | 価格1トンあたりの売上(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10.8 | 60 | 65 | 1 |
| 10 年後 中立 | 10.8 | 80 | 87 | 2 |
取り方:2026年3月期の機械の売上64.92億円・営業利益1.08億円(決算説明資料)。加工量の開示はなく、鋼構造物の売上を1トン60万円前後と置いて割り戻した推定。
資源関連(ハイシリカ)
精製珪石粉。半導体封止材・液晶・特殊ガラス・光学の材料。
| 数量販売量(千トン、推定) | 価格1トンあたりの単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 9.8 | 20 | 20 | 1 |
| 10 年後 中立 | 11.5 | 27 | 31 | 2 |
取り方:2026年3月期の資源の売上19.48億円・営業利益0.51億円(決算説明資料)。販売量の開示はなく、精製珪石粉の単価を1トン20万円前後と置いた推定。
不動産関連
東京のオフィスビルの賃貸。
| 数量賃貸面積(千平方メートル、推定) | 価格1平方メートルあたりの年間賃料(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.9 | 2.92 | 1 | 0 |
| 10 年後 中立 | 4.9 | 3.91 | 2 | 0 |
取り方:2026年3月期の不動産の売上1.43億円・営業利益0.32億円(決算説明資料)。面積は開示がなく、都内の中規模ビルの賃料から割り戻した推定。
素材関連
耐熱塗料と高純度天然ゴム(ライナテックス)の加工品。
| 数量販売量(千トン、推定) | 価格1トンあたりの単価(万円、推定) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2.0 | 40 | 8 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2.0 | 54 | 11 | 0 |
取り方:2026年3月期の素材の売上7.97億円・営業利益0.28億円(決算説明資料)。販売量は開示がなく、1トン40万円前後と置いた推定。
リスクと懸念
大島造船所への依存
全社の売上の3割近くを大島造船所が占める。造船所が調達先を増やしたり、自社で加工を始めたりすれば、機械の仕事は大きく減る。値段の交渉でも、相手の言い分を受けるしかない立場にある。
造船と海運の循環
ばら積み船の注文は、鉄鉱石や石炭の荷動きと海運の市況で数年おきに山と谷を繰り返す。中国と韓国の造船所の安値の攻勢もあり、国内の建造が細れば加工量も落ちる。
半導体の波
ハイシリカは半導体の封止材の原料で、シリコンサイクルで需要が大きく振れる。在庫調整が長引けば、新しい粉砕機の償却だけが残り、利益は消える。
資産が株主に届かない
純現金と持ち合いの株を合わせると時価総額を上回るが、縮減の目標は示されていない。現金が設備に回り続ければ、資産の厚さは少数株主の価値にならない。
熟練工の引退と人手不足
大きな鋼材の加工と溶接は熟練の技能に頼る。定年で技能の継承が途切れれば、品質と生産量が落ちる。採用の費用と賃金の上昇も利益を削る。
休んだ鉱山の管理
秩父などの休廃止鉱山では、坑廃水の処理などの管理が長く続く。法令の改正や災害で、追加の工事の費用を負う恐れがある。
今後の分かれ目
- 持ち合いの株の縮減の目標と、売却代金の自社株買いを数字で示す
- 資産が株主に届く道が開く。戻り方を1.0に見直し、強気の側に確率を寄せる。
- 機械の利益率が2年続けて5%を超える
- 自動加工ラインの効果が出た証拠。機械の利益率の中立を上げる。
- 大島造船所向けの売上の比率が大きく下がる
- 顧客の分散が進んだのか、仕事を失ったのかを見分ける。後者なら悲観の確率を上げる。
- ハイシリカの売上が2年続けて2割以上伸びる
- 半導体向けの回復が本物。ハイシリカの量の中立を上げる。
- 国の造船の支援で国内の建造量がはっきり増える
- ハッチカバーの加工量の中立を引き上げる。
見ておくもの
- 機械の受注残と営業利益率
- 大島造船所向けの売上の比率
- ハイシリカの売上と利益率
- 持ち合いの株の売却額と自社株買い
- ROEと総還元性向
倍率と資本コストの決め方
倍率は事業のROEが資本コスト8%を大きく下回るため、式の上限1÷k=11.4倍を基準に、中立は7.5割の8.5倍とした。今のPER・PBR(0.4倍)は見ていない。持ち合いの株は配当が利益に入るので余った資産に足さず(二重を避けた)、悲観側の床だけに入れた。純現金のうち15億円を余った現金とし、戻り方0.75で足した。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.3→12.5 倍・やや楽観 PER 9.1→12.5 倍・中立 PER 8.5→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。