結論
旭精機工業は、愛知県尾張旭市の金属加工と機械の会社だ。売上134億円の3分の1を、防衛省に納める小口径の銃弾が占める。残りは自動車部品などの精密プレス加工品と、プレス機械・ばね機械である。
筆者の結論は割高だ。銃弾は堅い商売だが、会社全体の利益は小さい。自己資本141億円に対し、ならした純利益は数億円にとどまる。
銃弾は防衛費の拡大で4年で5割伸びた。国が買い手で、値段は原価に利益を乗せて決まる。ここには確かな安定がある。
一方、プレス機械は受注の山谷が大きく、電池缶向けの大型機が一巡すると売上が落ちる。自動車部品は34億円を借りて次世代車の部品ラインを立ち上げたばかりで、償却が先に重くのしかかる。会社は中期経営計画を取り下げた。
10年後、銃弾と新ラインが順調でも、全社のROEは3%前後とみる。全社費の重さが、事業部の稼ぎを薄めてしまうからだ。資本コストに届かない会社の値段は、帳簿の厚さでは支えられない。銃弾の安定に払える値段と、会社全体に払える値段は別物だと筆者は考える。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、銃弾という良い商売を、平凡な会社が包んでいる形だ。
銃弾の事業は、10年後も残る。国が買い、売り手は少なく、値段は物価とともに上がる。この部分だけなら、長く持ちたい事業だ。
しかし株主が買うのは会社全体だ。プレス機械は数年おきに赤字になり、自動車部品は借金で大きな賭けに出たばかりだ。全社費は事業部の利益の大半を食う。オーナー利益、つまり設備の維持に要る投資を引いて自由に使える現金は、新ラインの償却が始まった今、ほとんど残らない。
経営の資本の使い方には、良い面もある。持ち合い株を売り、その資金で自社株を買った。ただ、34億円の新ラインが資本コストを超える稼ぎを生むかは、まだ誰にもわからない。
安全域は、帳簿の141億円ではなく、稼ぐ力で測るべきだ。筆者の見立てでは、その稼ぐ力は今の値段を支えるには足りない。銃弾の部分だけを切り出せるなら話は違うが、少数株主にはそれを選ぶ手立てがない。
何で稼ぐ会社か
創業は1953年。金属の板を何度も押し伸ばして筒や容器の形にする「深絞り」の技術が出発点だ。この技術が、銃弾の薬きょうと、自動車の部品と、それを作るプレス機械の3つにつながっている。
事業は精密加工と機械の2つの事業部に分かれる。精密加工の売上は88億円で、うち47億円が小口径銃弾、41億円が精密金属加工品だ。銃弾の納入先はほぼすべて防衛省で、防衛省だけで売上の34%を占める。加工品は自動車の部品が23億円と最も多く、エアバッグなどの安全部品、水晶振動子のケースが続く。
機械の売上は46億円だ。中心はプレス機械で、電気自動車の電池缶を作る大型機が伸びた。韓国の電池缶メーカーのSangsinは、前の期に売上の15%を占める大口だった。ばね機械と、自動車向けの自動機も作る。
2026年2月には、34億円を投じた次世代車の部品ラインが本社工場で動き出した。資金は銀行からの借入だ。従業員は456人で、子会社は連結していない。大株主には古河電気工業、岡谷鋼機、旭化成、オークマが並び、取引先との結びつきが強い会社でもある。
優良さと弱いところ
強みは深絞りの技術と、防衛という特殊な顧客だ。
銃弾は誰でも作れる品ではない。火薬を詰める薬きょうの精度、国の品質検査、保安の体制が要る。国内の作り手は限られ、防衛省は国内の生産基盤を守る方針を強めている。買い手は1つだが、売り手も少ない。値段は原価に一定の利益を乗せて決まり、物価が上がれば値段も上がる。
ただ、堀、つまり他社がまねできない強みは銃弾の部分に限られる。自動車部品は完成車メーカーと部品大手の値下げ要求を受ける。プレス機械はアイダエンジニアリングやコマツ産機などの大手と競い、受注は景気と顧客の投資で大きく振れる。
数字は正直だ。営業利益率は過去12年の最高でも6.6%、ここ5年は1%前後だ。ROEの過去10年の中央値は2.9%しかない。全社費が7億円あり、事業部の利益の大半を食っている。
経営は中期経営計画を取り下げた。新しい計画はまだ無い。何を伸ばし、何を畳むのかが見えない点は、資本を預ける側には不安材料だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
3つの事業は、それぞれ違う波に乗っている。
銃弾は国の予算で決まる。日本は2023年度からの5年間で防衛費を43兆円に増やし、弾薬の備蓄を厚くしている。同社の銃弾の売上も4年で5割伸びた。2028年度以降も、防衛費を国内総生産の2%前後に保つ流れは続くとみる。ただ、弾薬の備蓄が一巡すれば、買う量は落ち着く。輸入品への切り替えや、予算の振り向け先の変化も起こりうる。
自動車部品は電動化の真ん中にいる。電気自動車やハイブリッド車の部品は、深絞りの技術が生きる品が多い。一方で、電気自動車の普及は計画より遅れ、完成車メーカーの値下げ要求は強い。
プレス機械は受注の山谷が大きい。電池缶向けの大型機は、電気自動車の電池工場の投資に左右される。中国の機械メーカーが価格で迫り、日本の中堅は技術の要る機種に絞られつつある。
筆者は、銃弾が数量で1割強伸び、加工品が新ラインで4割伸び、機械は横ばいと見る。
値段の面では、3つの事業で差が出る。銃弾は原価に連動して物価並みに上がる。部品は顧客の値下げ要求で物価をやや下回る。機械は鋼材と人件費の上昇を転嫁できるかが、受注の取り合いの強さで決まる。
資本政策と M&A
還元は配当と自社株買いの両方だ。配当は2027年3月期も前期と同額を予定する。2025年8月と12月には、合わせて4億円強の自社株を買った。発行済株式の8%に近い規模だ。
資金の出どころは、政策保有株の売却だ。2025年に4銘柄を売り、9億円の売却益を出した。それでも投資有価証券は24億円残る。主な株主は古河電気工業が18.5%、岡谷鋼機が7.2%で、取引先どうしの持ち合いの色が濃い。
一方で、次世代車の部品ラインに34億円を借りた。純現金は10億円まで減った。今期も7億円の設備投資を予定している。
時価総額は自己資本の3分の1だ。筆頭株主の古河電工が動けば再編もありうるが、具体的な話は出ていない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社の値打ちは、防衛と電動化という2つの長い追い風にある。
銃弾の売上は2022年3月期の30億円から47億円に伸びた。防衛費の拡大は始まったばかりで、国は国内の生産基盤を守るため、契約の利益率を引き上げている。物価が上がれば、値段も原価に連動して上がる。景気に左右されない利益の柱だ。
次世代車の部品ラインは2026年2月に動き出した。精密加工の第1四半期の売上は前年の1.5倍になった。立ち上げの償却は一時的で、稼働が上がれば利益に変わる。深絞りの技術は電動車の部品に向く。
プレス機械の受注も戻り始めた。2026年3月期の機械の受注高は前年の1.6倍だ。
資本の使い方も変わった。持ち合い株を売り、自社株を8%近く買った。投資有価証券はまだ24億円あり、売れば還元の原資になる。借入で建てた新ラインも、裏を返せば手元の現金を減らさずに成長の種をまいたということだ。時価総額は自己資本の3分の1で、利益が戻れば見直しの余地は大きい。筆頭株主の古河電工をはじめ、取引先の大株主が多いことも、再編の時には追い風になる。
慎重な見方
銃弾が良くても、会社全体の稼ぎが弱すぎる。営業利益率は過去12年の最高でも6.6%で、ここ5年は1%前後だ。ROEの中央値は2.9%にとどまる。
今期の会社の予想は、営業利益5千万円だ。売上は145億円に増えるのに、利益はほぼ消える。新ラインの償却と立ち上げの費用が重く、第1四半期は営業赤字になった。34億円の借入の利息も、金利の上昇で増えていく。
電気自動車の普及は計画より遅れている。部品の量が見込みに届かなければ、償却だけが残る。プレス機械は大口の電池缶メーカー向けが一巡し、売上が落ちた。受注残は前年の8割に減った。
銃弾も永遠ではない。弾薬の備蓄が一巡すれば数量は落ち着き、国が輸入品を選ぶこともある。買い手が1つしかない事業は、その1つの方針で全てが決まる。値段が原価に連動するということは、大きくもうけることもできないということだ。
会社は中期経営計画を取り下げた。目標を失った経営に、資本を預ける理由は乏しい。全社費7億円という重さも、規模の小さな会社には変えにくい構造だ。
どちらに重みを置いたか
強いのは慎重な見方だ。銃弾の安定は本物で、楽観の材料にもなる。だが会社全体のROEは長く3%前後で、新ラインの償却が当面の利益を消す。
確率は中立を厚くし、悲観側をやや厚めに置いた。銃弾が床を支えるので、悲観の確率は1割強にとどめた。新ラインが2期続けて黒字を出せば、見方を楽観側に動かす。逆に防衛省の弾薬の予算が細れば、悲観側に寄せる。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,292 円53 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 881 円20 億円)。 今の値に割り戻すと 1,661 円38 億円、今との差 −16.7%、 期待の年率 +4.7%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 6,037 円138 億円 | 1,745 円40 億円 | +290.1% | +14.6% | 545 円12 億円 |
| やや楽観 | 18% | 4,074 円93 億円 | 1,309 円30 億円 | +169.8% | +10.4% | 969 円22 億円 |
| 中立 | 42% | 2,290 円53 億円 | 960 円22 億円 | +62.9% | +5.0% | 1,365 円31 億円 |
| やや悲観 | 22% | 615 円14 億円 | 436 円10 億円 | −47.3% | −6.2% | 231 円5 億円 |
| 悲観 | 11% | 349 円8 億円 | 218 円5 億円 | −71.6% | −11.8% | 62 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,292 円53 億円 | 881 円20 億円 | +59.0% | +4.7% | 3,172 円73 億円 |
今の株価時価総額 1,995 円46 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 防衛と電動化の両方が伸びる 利益 11 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 6,037 円138 億円
防衛費は国内総生産の2%を超えて定着し、弾薬の備蓄と訓練の量が増える。銃弾の数量は1.35倍、契約の利益率の引き上げで利益率は14%に上がる。
次世代車の部品ラインは2年で埋まり、2本目も動く。加工品の数量は1.7倍、利益率は8%だ。プレス機械は電池工場の投資と北米の需要で台数が2割増える。
全社の営業利益は15億円を超え、過去の最高を大きく上回る。純利益は11億円だ。
還元は配当の増額と自社株買いで10年40億円。それでもROEは7%弱で、資本コストに届かない。銃弾と部品の両輪が回っても、全社費の重さと厚い自己資本がROEを抑える。持ち合い株を売った資金を自社株買いに回し続けることが、この筋書きの前提になる。
- 小口径銃弾:数量 52.5(納入発数(百万発))× 価格 168(1発あたりの平均単価(円))→ 売上 88 億円・営業利益 12 億円。営業利益率 14.0%
- 精密金属加工品:数量 233(出荷個数(百万個))× 価格 39(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 91 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 8.0%
- プレス・ばね機械、自動機:数量 110(出荷台数(台))× 価格 0.69(1台あたりの平均単価(億円))→ 売上 77 億円・営業利益 5 億円。営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.8% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 138 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:銃弾の数量が防衛費の拡大で大きく伸び、次世代車の部品ラインが計画を超えて埋まり、プレス機械も電池工場の投資で好調、という3つが揃う必要がある。過去の最高の利益率を大きく超える姿で、確度は低い。
やや楽観 18% 銃弾が伸び、新ラインが黒字に乗る 利益 7 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 4,074 円93 億円
銃弾の数量は1.25倍に増え、値段は物価をやや上回る。利益率は13%だ。
次世代車の部品ラインは3年目から黒字に乗る。加工品の数量は1.55倍、利益率は7%に戻る。償却は取得時の値段のままで、物価で増えない。プレス機械は受注の波を均して台数1.1倍、利益率5.5%だ。
全社費は物価で9.8億円に膨らむが、営業利益は10億円になる。純利益は7.5億円だ。
還元は10年30億円。自己資本は155億円、ROEは5%弱にとどまる。
銃弾の安定が利益の土台になり、部品が新しい稼ぎ頭に育つ。それでも資本に見合う稼ぎにはまだ遠い。
- 小口径銃弾:数量 48.6(納入発数(百万発))× 価格 164(1発あたりの平均単価(円))→ 売上 80 億円・営業利益 10 億円。営業利益率 13.0%
- 精密金属加工品:数量 212(出荷個数(百万個))× 価格 38(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 82 億円・営業利益 6 億円。営業利益率 7.0%
- プレス・ばね機械、自動機:数量 101(出荷台数(台))× 価格 0.68(1台あたりの平均単価(億円))→ 売上 69 億円・営業利益 4 億円。営業利益率 5.5%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.8% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 93 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:銃弾の売上は4年で5割伸びた実績があり、新ラインは2026年2月に動き出した。機械の受注高も前年の1.6倍に戻った。どれも開示で確かめられる。
中立 42% 銃弾が支え、部品と機械は物価並み 利益 4 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,290 円53 億円
銃弾の数量は備蓄の積み増しで1.15倍になり、その後は落ち着く。値段は原価連動で物価並みに上がる。利益率は12%だ。
次世代車の部品ラインは稼働に時間がかかり、加工品の数量は1.4倍、単価は値下げ要求で1.25倍にとどまる。新ラインの償却は年3億円ほどで物価では増えないが、更新の投資は建築費の上昇で膨らむ。利益率は6%だ。
プレス機械は山と谷を均して台数横ばい、利益率4%。全社費は9.9億円に膨らむ。
営業利益は5.5億円、純利益は4.2億円。借入の利息が増え、純利益の伸びを抑える。還元は配当の据え置きと時折の自社株買いで10年22億円。ROEは3%弱だ。
- 小口径銃弾:数量 44.7(納入発数(百万発))× 価格 161(1発あたりの平均単価(円))→ 売上 72 億円・営業利益 9 億円。営業利益率 12.0%
- 精密金属加工品:数量 192(出荷個数(百万個))× 価格 38(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 72 億円・営業利益 4 億円。営業利益率 6.0%
- プレス・ばね機械、自動機:数量 92.0(出荷台数(台))× 価格 0.67(1台あたりの平均単価(億円))→ 売上 62 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 4.0%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.9% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 52 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:銃弾の安定と新ラインの立ち上げを認めつつ、機械の山谷と自動車部品の値下げ圧力を差し引いた落としどころ。過去の利益率の範囲に収まる最も自然な姿。
やや悲観 22% 新ラインが重荷になり、利益が消える 利益 0 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 615 円14 億円
電気自動車の普及が遅れ、次世代車の部品ラインは半分しか埋まらない。加工品の数量は1.2倍、単価は1.2倍で、償却と利息が利益を食う。利益率は3.5%だ。
プレス機械は電池工場の投資が止まり、台数は1割減る。利益率は1.5%しか残らない。
銃弾は備蓄が一巡し、数量は1.05倍で止まる。利益率は11%を保つ。
全社費を引くと、営業利益はほぼゼロだ。純利益は受取配当で0.3億円が残るだけになる。配当は減り、10年の還元は10億円。
持ち合い株を売って借入を返す道はあるが、それを決めるのは経営だ。少数株主は、帳簿に残る資産が還元に回るのを待つしかない。銃弾の利益だけが、会社を黒字の側に引き留める。
- 小口径銃弾:数量 40.8(納入発数(百万発))× 価格 158(1発あたりの平均単価(円))→ 売上 65 億円・営業利益 7 億円。営業利益率 11.0%
- 精密金属加工品:数量 164(出荷個数(百万個))× 価格 36(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 59 億円・営業利益 2 億円。営業利益率 3.5%
- プレス・ばね機械、自動機:数量 82.8(出荷台数(台))× 価格 0.65(1台あたりの平均単価(億円))→ 売上 54 億円・営業利益 1 億円。営業利益率 1.5%
倍率:稼ぐ力(純利益0.3億円÷k)は約4億円。政策保有株の税後から純負債を引き、戻り方0.75を掛けた床(約14億円)の方が大きく、今の自己資本の0.1倍に置いた。
確率:今期の会社予想は営業利益5千万円で、第1四半期は営業赤字。電気自動車の普及の遅れと機械の受注残の減少は現に起きている。
悲観 11% 銃弾の調達が細り、機械と部品が赤字 利益 −9 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 349 円8 億円
防衛予算は装備品や無人機に向かい、小口径の銃弾は輸入品との競争にさらされる。数量は0.85倍に減り、利益率は8%に下がる。
次世代車の部品ラインは顧客の車種の打ち切りで遊休になり、加工品は赤字になる。プレス機械は中国勢の価格攻勢で台数が3割減り、赤字が続く。
全社費を賄えず、営業損失は9億円に達する。純損失は8億円台だ。
持ち合い株を売って借入の返済に回し、配当は止まる。10年の還元は5億円。自己資本は100億円まで減る。
深絞りの技術そのものは残るが、それを生かす市場が細る。会社は事業の縮小と資産の切り売りで生き延びる形になる。
- 小口径銃弾:数量 33.1(納入発数(百万発))× 価格 150(1発あたりの平均単価(円))→ 売上 50 億円・営業利益 4 億円。営業利益率 8.0%
- 精密金属加工品:数量 123(出荷個数(百万個))× 価格 33(1個あたりの平均単価(円))→ 売上 41 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率 -3.0%
- プレス・ばね機械、自動機:数量 64.4(出荷台数(台))× 価格 0.60(1台あたりの平均単価(億円))→ 売上 39 億円・営業利益 −2 億円。営業利益率 -5.0%
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。政策保有株の売却代金と土地から純負債を引き、戻り方0.75を掛けた床(約8億円)で、今の自己資本の0.057倍。
確率:防衛予算の振り向け先の変化や輸入品への切り替えで銃弾が減り、電動化の失速と中国の機械メーカーの価格攻勢が重なる構造的な負け。銃弾の需要は消えないので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
小口径銃弾
防衛省に納める小銃・機関銃用の銃弾。深絞りで薬きょうを作り、組み立てまで行う。納入先はほぼ100%防衛省。
| 数量納入発数(百万発) | 価格1発あたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 38.9 | 120 | 47 | 5 |
| 10 年後 中立 | 44.7 | 161 | 72 | 9 |
取り方:2026年3月期の小口径銃弾の売上46.65億円(決算補足資料)。発数の開示は無く、単価を約120(円/発)として約3,890万発と推定。利益は精密加工事業部の利益8.08億円を、原価に利益を乗せる官需の銃弾に約5.3億円(11%強)、加工品に約2.8億円と配分した推定。
精密金属加工品
深絞りによる自動車部品(次世代車の部品を含む)、エアバッグなどの安全部品、水晶振動子のケースなど。
| 数量出荷個数(百万個) | 価格1個あたりの平均単価(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 137 | 30 | 41 | 3 |
| 10 年後 中立 | 192 | 38 | 72 | 4 |
取り方:2026年3月期の精密金属加工品の売上41.08億円(自動車22.9・安全部品6.5・水晶振動子4.0・その他7.7。補足資料)。個数の開示は無く、平均単価を約30(円/個)として約1.37億個と推定。利益は事業部の利益の配分(約7%)。
プレス・ばね機械、自動機
電池缶などを作る大型プレス機械、ばね機械、自動車向けの自動機・専用機。受注生産。
| 数量出荷台数(台) | 価格1台あたりの平均単価(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 92.0 | 0.50 | 46 | 1 |
| 10 年後 中立 | 92.0 | 0.67 | 62 | 2 |
取り方:2026年3月期の機械事業部の売上46.19億円(プレス31.4・ばね7.3・自動機7.1)と利益0.52億円(短信)。台数の開示は無く、平均単価0.5億円として約92台と推定。
リスクと懸念
防衛省への依存
銃弾の納入先はほぼ100%防衛省で、売上の34%を占める。予算の振り向け先が変わる、輸入品が選ばれる、備蓄が一巡する、のいずれでも数量は落ちる。買い手が1つの事業は、その方針で全てが決まる。
次世代車の部品ラインの成否
34億円を借りて2026年2月に動き出した。電気自動車の普及の遅れや顧客の車種の打ち切りがあれば、償却と利息だけが残る。今期の会社の予想は営業利益5千万円にとどまる。
プレス機械の受注の山谷
電池缶向けの大型機は、少数の顧客の工場投資で決まる。韓国のSangsin向けは売上の15%から6%に落ちた。受注残は前年の8割に減った。
全社費の重さと低い利益率
全社費7.4億円が事業部の利益の大半を食う。営業利益率は過去12年の最高でも6.6%、ROEの中央値は2.9%。物価で全社費が膨らめば、利益率の改善は難しい。
経営の目標の空白
2026年4月に中期経営計画を取り下げ、新しい計画はまだ無い。資本の使い道と還元の方針が数字で示されていない。
今後の分かれ目
- 次世代車の部品ラインを含む精密加工が2期続けて利益率9%を超えたら
- やや楽観の確率を厚くする。
- 防衛省の弾薬の調達額が次の防衛力整備計画でさらに増えたら
- 銃弾の数量を上げ、楽観側の確率を厚くする。
- 政策保有株の売却と自社株買いの方針が数字で示されたら
- 持ち合い株を余り資産として別に数え、中立の値を上げる。
- プレス機械の受注残がさらに半分に減ったら
- やや悲観の確率を厚くする。
- 古河電気工業など大株主が保有の見直しや再編に動いたら
- 買収の筋書きを別に考え、確率を見直す。
見ておくもの
- 小口径銃弾の売上と防衛省の弾薬予算
- 次世代車の部品ラインの稼働と精密加工の利益率
- 機械事業部の受注高と受注残
- 新しい中期経営計画と還元の方針
- 政策保有株の残高
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、銃弾・加工品・機械の数量と単価、全社費から10年後の利益を積んだ。ROEはどの筋書きも資本コスト8%を下回るため、PERは1÷k(約12.1倍)を上限に利益の質で8〜9割に置いた。悲観側は稼ぐ力が小さいので、政策保有株の税後から純負債を引き、持ち合いを考えて戻り方0.75を掛けた床で置いた。自己資本の厚さや今のPBRには寄せていない。中立のPBRが0.3倍を割るのは、ROEが3%に届かないためである。新リース会計基準の影響は小さい。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→12.5 倍・やや楽観 PER 10.3→12.5 倍・中立 PER 9.7→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。