結論
ホソカワミクロンは、粉をすりつぶし、粒をそろえ、混ぜる機械で世界首位を争う大阪の機械メーカーだ。会社は微粉体の機器で世界シェア約 3 割と説明している。売上の 4 分の 3 が粉体の機械、残りがプラスチックフィルムの製造装置である。強みは、粉の扱いの経験と、据付後に続く部品・保守の売上だ。
筆者の結論は「やや割高」だ。事業は悪くない。ただ、今の時価総額の 3 割は純現金で、その現金が十分に株主へ戻っていない。しかも 2026 年 9 月期は営業利益が前の期の 6 割ほどに落ち込む。ドイツを中心とする欧州の収益悪化と、大型案件の受注の遅れが原因だ。欧州の問題は 3 年続いており、一時的とは言いにくい。
10 年で見ると、電池材料・医薬・先端材料の需要が追い風になり、売上は 1.5 倍ほどに伸びる。それでも営業利益率は 9% 台にとどまり、中立の筋書きでも 10 年後の時価総額は今に届かない。確率を重ねた価値は今より 2 割ほど低く、割高と見る。上振れは会社が掲げる売上 1,500 億円・利益率 12% に近い筋書きだが、実現する確率は 1 割ほどだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、ホソカワは「良い中堅企業」だが、「並外れた事業」とまでは言えない。10 年先も粉を扱う機械の需要は残る。だから事業が消える心配は小さい。堀は普通の厚さで、保守と部品が安定を支え、新設は入札に近い。値段を自分で決められる事業ではない。
オーナーとして見るとき、利益を使う先が気になる。年 50 億円前後の利益から、事業に必要な投資を引いた残りは、ほぼ全部が株主のものになる。ところが過去 5 年は、その大半が現金として会社に残った。経営が現金をどう使うかで、価値は大きく動く。買収で価値を壊す危険も、自社株買いで割高に買う危険もある。
安全域はどうか。純現金が厚く財務は強い。これは大きな安心材料だ。ただ、利益そのものが欧州の不調で傷んでいる。確かな見通しが立たないとき、バリュー投資家は確信度を下げ、払う値段に余裕を求める。筆者が見る本質価値は、今の時価総額に届かない。現金の戻し方が改善し、欧州の回復が見えれば、見方は変わりうる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの柱は粉体関連事業で、売上の 75% を占める。粉砕機、分級機(粒の大きさで選り分ける機械)、混合機、乾燥機、造粒機、集塵機を作り、それらをつないだ製造ラインまで設計して据え付ける。2025 年 9 月期の売上は 586 億円。顧客は電池材料、医薬、化学、食品、セラミックス、トナーなど幅広い。機械は売り切りで終わらない。粉に触れる部品は摩耗するので、交換と保守が続く。会社は保守の売上が増加傾向にあるとしているが、全体に占める比率は開示していない。
もう 1 つの柱がプラスチック薄膜関連事業で、売上の 25% を占める。食品包装などのフィルムを作る押出・インフレーション成形のラインを、ドイツのホソカワアルピネを中心に作る。景気と原油価格に敏感で、顧客の投資が冷えると受注がすぐ減る。2025 年 9 月期の売上は 194 億円。2026 年 9 月期は 3 四半期累計で受注が 1 割強減り、利益は 8 割も減った。粉体の受注が 1 割増えているのとは対照的だ。
海外の売上が大半で、日本は 2 割ほどにとどまる。1980 年代にオランダやドイツなど 5 社を買収して海外の販売・保守網を作った経緯がある。2025 年 9 月期は売上 780 億円、営業利益 70 億円。利益率は粉体、薄膜ともに 11% だった。
優良さと弱いところ
ホソカワの堀、つまり他社がまねしにくい強みは、粉の扱いの経験にある。粉は粒の大きさ、形、湿り気で挙動が変わる。顧客の粉を試せる設備を持ち、結果を機械の設計に返してきた年月が、参入の壁になっている。据付後に部品と保守が続くので、売上が一度で終わらない点も強みだ。世界シェア約 3 割は微粉体に限った話で、粉体処理装置の市場全体では 1 割弱である。
弱みは 3 つある。第 1 は欧州の収益力で、ドイツの拠点は構造改革を何年も続けているのに回復が遅い。第 2 は利益率の頭打ちで、過去 12 年の営業利益率は 5〜11% の間に収まり、中期計画が掲げる 10% は 2026 年 9 月期の見込み(5% 台)から遠い。第 3 は薄膜で、欧州大手との競争と景気の波に翻弄される。
資本効率は低い。自己資本比率は 65% で純現金が時価総額の 3 割ある。過去 10 年の自己資本利益率は中央値で 9.6%、直近は 6.7% に落ちた。堅い財務は安心材料だが、使い道のない現金が利回りを下げている。経営は自社株買いと増配に動いているが、現金の積み上がりには追いついていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
粉体処理装置の世界市場は 2024 年で約 51 億ドル、2030 年に 62 億ドルへ、年 3% で伸びるという推計がある。物価を除けば、実質で年 2% ほどの伸びと見るのが妥当だ。成熟した市場であり、ホソカワは数量を大きく伸ばすより、用途の選び方で勝負する立場にある。
伸びる用途は 3 つ。電池材料は、正極・負極の粉を砕いてそろえる工程で需要がある。ただ、中国や韓国の地場メーカーが安く作るとみられ、値段が厳しい。医薬は、吸入薬や微粒子の薬など高い精度が要り、採算が良い。先端材料は、セラミックスや機能性粉体で、少量多品種だ。食品や化学は成熟していて、更新と保守が中心になる。
競合は、欧州にネッチなど老舗の機械メーカーがいる。国内にも専業の中堅が多い。ホソカワは品ぞろえの広さと、ライン全体を設計できる点で差をつける。
フィルム装置の世界市場は 2026 年で約 12 億ドル、年 3.5% の伸びが見込まれる。ライフェンホイザーなど欧州の大手が主役で、ホソカワは中堅だ。受注が先に動き、売上と利益が半年から 1 年遅れて動く。2026 年は中東情勢で大型案件の決定が遅れ、原油高でフィルムの設備投資も冷えている。今は循環の谷にいる。粉体は顧客が化学・食品・医薬と分散しているので、半導体装置や工作機械ほどは景気で振れない。薄膜のほうが振れ幅は大きい。
資本政策と M&A
還元は厚くなってきたが、現金の積み上がりを止めるほどではない。2025 年 9 月期は配当を据え置き、2026 年 9 月期は創業 110 周年の記念配当を足して年間で 2 割近く増やす。自社株買いも毎年、上限 10 億円ほどで行っている。配当と合わせた還元は純利益の 6 割前後になる。それでも純現金は 5 年で 151 億円から 298 億円に増えた。
買収は 1980 年代の海外 5 社が最後の大型で、近年は目立たない。中期計画は 10 年後に売上 1,500 億円を目標とし、M&A を含むとしている。手元資金は厚いが、買収の実績は古い。成功すれば成長を買えるが、失敗すれば現金が減る。
株主構成は信託銀行の口座と取引銀行、取引先の持ち株会が上位に並び、支配株主はいない。取引先との持ち合いが一部残るとみられる。時価総額が 1,000 億円に満たず、現金が厚い会社なので、買収や TOB の対象になる可能性は否定できない。ただし、本分析の筋書きには織り込んでいない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ホソカワは世界で粉体機器の首位を争う会社で、保守と部品が売上を安定させる。利益が落ちた 2026 年 9 月期は、欧州の構造改革費と受注の遅れという一時的な要因が重なった結果で、構造的な衰えではない。受注高と受注残は粉体で増えており、受注は戻り始めている。
成長の芽は 3 つある。電池材料、医薬、先端材料はどれも粉の品質が価値を決める分野で、粒の大きさと形をそろえる技術が要る。ここで首位級の経験がある。中期計画は売上 1,000 億円・営業利益率 10% を掲げ、10 年後は 1,500 億円・12% を狙う。2022 年からの 2 年で営業利益は 55 億円から 83 億円へ伸びた実績がある。過去に営業利益率は 11% を超えた年もあり、届かない数字ではない。
しかも純現金が 300 億円あり、財務の傷みが小さい。買収で成長を買う余力がある。不況で他社が弱るとき、買い手に回れる。会社は自社株買いと増配も進めており、現金は少しずつ株主に戻っていく。10 年後の利益は 100 億円を超え、今の時価総額を上回る価値になる。
慎重な見方
利益が戻る根拠がない。ドイツのホソカワアルピネは、構造改革の費用を 2024 年から毎年出しているのに、収益は上向かない。欧州の人件費は上がり続け、製造業の不況も長引く。2024 年の 83 億円をピークに営業利益は 2 年続けて落ち、2026 年 9 月期は 45 億円の見込みだ。営業利益率は 5% 台で、中期計画の 10% は 1 年で遠くなった。計画が毎年未達なら、10 年後の目標も信用できない。
電池材料は、需要が大きくても地場の安いメーカーとの競争で値段が厳しい。薄膜は欧州大手と中国の新興に挟まれ、原油が高いだけで受注が止まる。粉体の市場は年 2〜3% しか伸びず、ホソカワの粉体は市場全体では 1 割弱のシェアしかない。世界首位という見出しは、狭い領域の話にすぎない。
現金が 300 億円あっても使い道がない。5 年で現金は 2 倍になったのに、自己資本利益率は 6.7% まで落ちた。買収に使えば失敗の危険があり、戻さなければ価値は眠る。結局、10 年後の利益は 80 億円前後で、今の時価総額の 3 割の現金を除けば、事業の値段はすでに十分に高い。
どちらに重みを置いたか
慎重な主張のほうが少し強い。最大の理由は、欧州の構造改革が 3 年続いても収益が戻っていないことだ。強気の主張の「一時的」という説明は、3 年続いた時点で成り立たなくなる。一方、粉体の事業そのものは需要が長く続き、保守が利益を支える。構造的に崩れる確率は 1 割強にとどめた。確率はやや悲観に 23%、やや楽観に 22% を置き、わずかに慎重側へ寄せた。強気の最良の姿は 10 年目標に近いが、実現は 1 割ほど。現金の戻し方が改善する余地は認め、現金の価値は 5 割で数えた。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/09 期)
確率で加重した株価時価総額 9,991 円1,465 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,005 円294 億円)。 今の値に割り戻すと 6,645 円974 億円、今との差 +7.0%、 期待の年率 +6.8%(資本コスト 6.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 21,149 円3,101 億円 | 2,700 円396 億円 | +284.0% | +14.4% | 2,385 円350 億円 |
| やや楽観 | 22% | 14,414 円2,114 億円 | 2,441 円358 億円 | +171.4% | +10.5% | 3,708 円544 億円 |
| 中立 | 33% | 10,899 円1,598 億円 | 2,148 円315 億円 | +110.1% | +7.7% | 4,306 円631 億円 |
| やや悲観 | 23% | 3,373 円495 億円 | 1,930 円283 億円 | −14.6% | −1.6% | 1,220 円179 億円 |
| 悲観 | 12% | 2,767 円406 億円 | 375 円55 億円 | −49.4% | −6.6% | 377 円55 億円 |
| 加重平均 | 100% | 9,991 円1,465 億円 | 2,005 円294 億円 | +93.2% | +6.8% | 11,995 円1,759 億円 |
今の株価時価総額 6,210 円911 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 10% 電池・医薬が同時に伸び、中計の 10 年目標に届く 利益 147 億円 · PER 20.3 倍 · 株価時価総額 21,149 円3,101 億円
電池材料、医薬、先端材料の 3 つの用途が同時に伸びる。筆者はこの姿を、会社が描く最良の形とみる。粉砕・分級の機械は、粒の大きさと形が製品の性能を左右する工程で使われる。ここで顧客の粉に合わせて作り込める強みが生き、大型の製造ラインの受注が増える。粉体の事業は実質で 1.5 倍を超え、据付後の部品と保守も積み上がって、利益率は 15% に近づく。
ドイツのホソカワアルピネの構造改革は 3 年で終わり、欧州の収益はグループ平均に戻る。フィルム装置も、北米の更新需要と環境規制に合わせた包装材の多層化で回復する。売上は 1,600 億円規模、営業利益率は 12% を超え、会社が 10 年後の姿に掲げる水準に届く。M&A は小さな買い足しにとどまり、還元は純利益の半分ほど。自己資本利益率は 15% 台になる。
- 粉体関連事業(粉砕・分級・混合・乾燥など):数量 6.1(世界の粉体処理装置市場(今の値段で億ドル)× 同社シェア = 同社の実質販売額(億ドル))× 価格 1.38(価格指数(今 = 1.00。物価で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 1,254 億円・営業利益 188 億円。営業利益率 15.0%
- プラスチック薄膜関連事業(フィルム成形装置):数量 1.7(世界のフィルム押出装置市場(今の値段で億ドル)× 同社シェア = 同社の実質販売額(億ドル))× 価格 1.38(価格指数(今 = 1.00。物価で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 348 億円・営業利益 42 億円。営業利益率 12.0%
倍率:事業の純利益 145 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.8% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 20.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 20.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 20.34 倍、時価総額 3,101 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社が 10 年後の姿に掲げる売上 1,500 億円・営業利益率 12% に近い、最良の形。2026 年 9 月期の営業利益率が 5% 台に落ちている現実を考えると、実現は 1 割にとどまる。
やや楽観 22% 欧州が立ち直り、粉体の需要が着実に伸びる 利益 105 億円 · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 14,414 円2,114 億円
欧州の立て直しが進み、粉体の需要が着実に伸びる。ホソカワにとって、無理のない上振れの形だ。電池材料では中国勢の価格が厳しいものの、高い精度が要る医薬や先端材料の用途で、ホソカワの機械が選ばれる場面が増える。粉体の事業は実質で 3 割強伸び、価格も物価並みを少し上回る。
フィルム装置は市況の悪い 2026 年が谷になり、その後はゆっくり戻る。欧州の構造改革費が消え、グループの営業利益率は 10% を超える。売上は 1,350 億円ほど、純利益は 100 億円を超える。手元の現金は配当と自社株買いで少しずつ戻り、還元は純利益の 55% ほど。M&A を使った上乗せは考えないが、会社の 10 年目標の 7 割程度には届く。
- 粉体関連事業(粉砕・分級・混合・乾燥など):数量 5.2(世界の粉体処理装置市場(今の値段で億ドル)× 同社シェア = 同社の実質販売額(億ドル))× 価格 1.36(価格指数(今 = 1.00。物価で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 1,060 億円・営業利益 138 億円。営業利益率 13.0%
- プラスチック薄膜関連事業(フィルム成形装置):数量 1.5(世界のフィルム押出装置市場(今の値段で億ドル)× 同社シェア = 同社の実質販売額(億ドル))× 価格 1.34(価格指数(今 = 1.00。物価で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 299 億円・営業利益 31 億円。営業利益率 10.5%
倍率:事業の純利益 103 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.7% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 19.01 倍、時価総額 2,114 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:欧州の立て直しが進み、電池・医薬の大型案件が戻れば届く姿。粉体は市場が広く、中期的な追い風は確かにあるので、中立の次に重い 2 割強を置いた。
中立 33% 粉体は伸びるが、利益率は 9% 台で頭打ちになる 利益 84 億円 · PER 17.8 倍 · 株価時価総額 10,899 円1,598 億円
粉体の市場は実質で年 2% ほど伸び、ホソカワのシェアも少し上がる。価格は物価並みに上がる。粉体の事業は、数量が 10 年で 2 割増え、売上は 940 億円ほどになる。利益率は 12%。過去の最高に近い水準まで戻るが、それ以上にはならない。
フィルム装置は景気に左右されながら、数量は 5% 増にとどまる。利益率は 9%。欧州の構造改革は終わるが、高い人件費は残る。全社の売上は 1,598 億円、営業利益は 115 億円で、利益率は 9% 台。会社が掲げる 10% には届かない。現金は還元しても減らず、自己資本は 930 億円ほどに増える。ホソカワは優良な中堅の機械メーカーのまま、成長も利益率も、今の延長にとどまる。
- 粉体関連事業(粉砕・分級・混合・乾燥など):数量 4.7(世界の粉体処理装置市場(今の値段で億ドル)× 同社シェア = 同社の実質販売額(億ドル))× 価格 1.34(価格指数(今 = 1.00。物価で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 943 億円・営業利益 113 億円。営業利益率 12.0%
- プラスチック薄膜関連事業(フィルム成形装置):数量 1.4(世界のフィルム押出装置市場(今の値段で億ドル)× 同社シェア = 同社の実質販売額(億ドル))× 価格 1.34(価格指数(今 = 1.00。物価で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 273 億円・営業利益 25 億円。営業利益率 9.0%
倍率:事業の純利益 82 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.4% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)150 億円。全体の PER 17.77 倍、時価総額 1,598 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:粉体の市場が年 2% ほど実質で伸び、価格が物価並みに上がり、欧州の収益がようやく平均に戻る、いちばん普通の道。ただし利益率は過去の天井圏(10〜11%)に届かないとみて、確率は 3 分の 1 にとどめた。
やや悲観 23% 欧州の赤字が居座り、価格競争で利益が細る 利益 42 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 3,373 円495 億円
欧州の赤字が居座り、価格競争で利益が細る。ドイツ拠点は 3 年間構造改革を続けても収益が戻らず、人件費の上昇が利益を食い続ける。電池材料向けの粉砕・分級装置は、中国の地場メーカーが安く売り、価格が物価に届かない。粉体の数量は横ばいにとどまる。
薄膜は原油高と設備投資の冷え込みが続き、数量が 15% 減る。利益率は 4% まで落ちる。全社の売上は 970 億円、営業利益は 57 億円で、利益率は 6% 近い。2026 年 9 月期の落ち込みが、そのまま新しい水準になる姿だ。配当は今の水準を維持できず減らされる。還元は純利益の 7 割まで高まるが、利益そのものが細る。自己資本利益率は資本コストを下回る。
- 粉体関連事業(粉砕・分級・混合・乾燥など):数量 3.9(世界の粉体処理装置市場(今の値段で億ドル)× 同社シェア = 同社の実質販売額(億ドル))× 価格 1.30(価格指数(今 = 1.00。物価で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 762 億円・営業利益 69 億円。営業利益率 9.0%
- プラスチック薄膜関連事業(フィルム成形装置):数量 1.1(世界のフィルム押出装置市場(今の値段で億ドル)× 同社シェア = 同社の実質販売額(億ドル))× 価格 1.25(価格指数(今 = 1.00。物価で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 206 億円・営業利益 8 億円。営業利益率 4.0%
倍率:事業の ROE は 5.9% で k 6.75% に届かない。新しく投じるお金は投じた額未満の価値になり、正当化 PER=(1−g÷ROE)÷(k−g)=10.2 倍が上限。欧州の赤字と薄膜の低迷で利益の質も低いので 9.5 倍に置いた。余った現金は 0.75 倍の 112.5 億円を 0.5 の戻り方で足す(谷で食う分を見込む)。
確率:欧州拠点の構造改革が 3 年続いても収益が戻っていない事実は重い。薄膜の投資の冷え込みも長引きやすい。強気の主張より慎重な主張のほうに説得力があるので、やや楽観より少し重く 2 割強とした。
悲観 12% 粉体も薄膜も競争に敗れ、構造的に稼げなくなる 利益 −2 億円 · PBR 0.6 倍 · 株価時価総額 2,767 円406 億円
粉体も薄膜も競争に敗れ、構造的に稼げなくなる。電池材料の粉砕・分級は中国メーカーが技術でも並び、大型ラインの入札で値段が通らなくなる。医薬や食品も、現地メーカーが安い機械で取りに来る。粉体の数量は 2 割減り、価格は物価の半分も上がらない。
薄膜は欧州大手と中国の新興に挟まれ、数量が 4 割減って赤字に落ちる。大型案件で原価が膨らむ失敗も重なる。全社の営業利益はほぼゼロ、欧州の営業権や在庫の評価損で自己資本も減る。配当は大きく減らし、赤字の年も、現金の取り崩しと保有資産の売却で払う。ただし、実質無借金で現金が厚いので、債務の問題にはならない。現金と、売れる資産の価値が、株価を支える床になる。
- 粉体関連事業(粉砕・分級・混合・乾燥など):数量 3.1(世界の粉体処理装置市場(今の値段で億ドル)× 同社シェア = 同社の実質販売額(億ドル))× 価格 1.20(価格指数(今 = 1.00。物価で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 563 億円・営業利益 17 億円。営業利益率 3.0%
- プラスチック薄膜関連事業(フィルム成形装置):数量 0.8(世界のフィルム押出装置市場(今の値段で億ドル)× 同社シェア = 同社の実質販売額(億ドル))× 価格 1.10(価格指数(今 = 1.00。物価で 10 年 1.34 倍が基本))→ 売上 128 億円・営業利益 −5 億円。営業利益率 -4.0%
倍率:赤字で稼ぐ力では測れないので、売れる資産の床で置く。純現金 298 億円の 8 割と、事業用の資産 374 億円の 45% を合わせた 406 億円(内訳は floor_assets_why)。今の自己資本 672 億円に掛けると 0.60 倍。積み上げた自己資本には掛けていない。
確率:電池材料の設備は中国勢の安値に押され、薄膜は欧州大手と中国の新興に挟まれる。大型案件の失敗が重なれば赤字が居座る。事業が小さく、1 件の失敗の影響が大きいので 1 割強の確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
粉体関連事業(粉砕・分級・混合・乾燥など)
粉をすりつぶす・粒をそろえる・混ぜる・乾かす機械と、それらをつないだ製造ラインの設計・据付、摩耗部品の交換と保守。電池材料・医薬・化学・食品・先端材料向け。
| 数量世界の粉体処理装置市場(今の値段で億ドル)× 同社シェア = 同社の実質販売額(億ドル) | 価格価格指数(今 = 1.00。物価で 10 年 1.34 倍が基本) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 3.9 | 1.00 | 586 | 65 |
| 10 年後 中立 | 4.7 | 1.34 | 943 | 113 |
取り方:世界の粉体処理装置市場は 2024 年で約 51 億ドル(調査会社推計)。粉体関連の売上 586 億円は 150 円換算で約 3.9 億ドルで、市場全体のシェアは 8% 弱になる(会社が言う世界 3 割は微粉体という狭い領域の話)。セグメント利益 64.6 億円(利益率 11.0%)。
プラスチック薄膜関連事業(フィルム成形装置)
食品包装などのプラスチックフィルムを作る押出・インフレーション成形ラインの製造・販売。ドイツのホソカワアルピネが中心。
| 数量世界のフィルム押出装置市場(今の値段で億ドル)× 同社シェア = 同社の実質販売額(億ドル) | 価格価格指数(今 = 1.00。物価で 10 年 1.34 倍が基本) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/09 | 1.3 | 1.00 | 194 | 21 |
| 10 年後 中立 | 1.4 | 1.34 | 273 | 25 |
取り方:インフレーションフィルム押出機械の世界市場は 2026 年で約 11.7 億ドル(調査会社推計)。薄膜関連の売上 194 億円は約 1.3 億ドルで、シェア 1 割強と推定。セグメント利益 21.2 億円(利益率 11.0%)。2026/09 期は 3 四半期累計で利益が 8 割減っており、直近の利益率は大きく落ちている。
リスクと懸念
欧州拠点の収益が戻らない
ドイツのホソカワアルピネを中心に、構造改革費が 2024 年から 3 年続いている。人件費の上昇と製造業の不況が重なると、赤字の拠点がグループ全体の利益を押し下げる。粉体の利益が伸びても、欧州に食われる展開がありうる。
大型案件の受注の遅れと失敗
受注生産の大型案件は、顧客の投資判断が中東情勢や関税で延びると売上が立たない。案件ごとの採算も振れやすい。原価の見積もりを誤れば、1 件で利益の数か月分が消える。事業の規模が小さいぶん、影響は大きい。
電池材料の価格競争
電池材料向けの粉砕・分級装置は、中国や韓国の地場メーカーが安く作るとみられる。需要が伸びても、価格が物価に届かないと、数量が増えても利益が増えない。成長の柱とされる分野で、利益率が下がる危険がある。
フィルム装置の景気の波
薄膜は欧州大手との競争が厳しく、顧客は食品包装などの素材メーカーだ。原油価格が高止まりして投資意欲が冷えると、受注が止まる。粉体と違って保守の売上が薄く、谷では利益が残りにくい。2026 年 9 月期は 3 四半期累計で利益が 8 割減り、粉体の稼ぎを食っている。
現金が使われず価値が眠る
純現金が時価総額の 3 割ある。株主に戻さず、事業にも使わなければ、資本効率は下がり続ける。かといって大型買収に動けば、過去の失敗の例のとおり、現金が減るだけに終わる危険もある。使い道が経営の最大の分かれ目だ。
中期計画の未達が続く
第 18 次中期計画は 2027 年 9 月期に売上 1,000 億円・営業利益率 10% を掲げるが、2026 年 9 月期の見込みは売上 830 億円、利益率 5% 台。計画が毎年下方修正されると、経営への信頼が下がり、倍率が縮む。
今後の分かれ目
- ドイツの構造改革が終わり、欧州の営業利益が黒字で安定したら
- やや楽観・楽観の確率を上げてよい。グループの利益率が 10% に戻る道が見える。
- 粉体の受注高と受注残が伸び続け、大型案件の売上が立ち始めたら
- 中立の確率が上がる。粉体の数量が 10 年で 2 割以上増える筋書きが現実味を増す。
- 電池材料向けの受注で、価格が物価並みに上がり続けたら
- やや楽観の確率を上げてよい。中国勢の安値に勝てる差別化が確認できる。
- 薄膜の受注が回復せず、赤字に落ちたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。薄膜が持ち直さないと全社の利益率が 8% 台に低下する。
- 自社株買いを大きく増やし、純現金を使い始めたら
- 現金の戻り方の評価を 0.5 から上げてよい。事業の価値は変わらないが、現金の価値が上がる。
- 時価総額に対して大型の買収を発表したら
- 失敗の確率を見直す。1980 年代以来の大型案件で、統合の経験が古いため、慎重にみる。
見ておくもの
- 四半期ごとの粉体・薄膜の受注高と受注残
- 欧州(ホソカワアルピネ)の構造改革費と黒字化の時期
- 電池材料向けの受注単価と、中国メーカーとの競合の動き
- 配当と自社株買いの額、純現金の推移
- 第 18 次中期計画の最終年度(2027 年 9 月期)の達成度
倍率と資本コストの決め方
数量は市場規模×シェア、価格は物価並みの指数で積み上げ、倍率は正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)の上限の 9 割(楽観〜中立)と、稼ぐ力・売れる資産の床(やや悲観・悲観)で決めた。今の株価や過去の PER・PBR は根拠にしていない。今の株価が倍でも半分でも、本質価値の数字は変わらない。10 年後の数字は、家賃を営業費用に入れた今と同じ形でそろえてあり、新リース会計の影響は含めていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16→20.34 倍・やや楽観 PER 14.8→19.01 倍・中立 PER 13.8→17.77 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。