結論
新晃工業は、ビル・工場・病院に入る大型空調機(空気調和機)を、注文に応じて作る専業メーカーだ。工事と保守まで自前でこなし、国内では首位級とされる。ダイキン工業も 5% 超の株を持つ。
筆者の結論は、今の値段はほぼ妥当で、10 年の確率の加重では 1 割ほど上回るというものだ。いちばんの理由は、データセンター(DC)向けの空調機が伸びる一方、本業の機器販売は台数が増えないことだ。
会社は 2032 年度までに DC 向けを 6 割増産する。津山工場の出荷は 600 台から約 1,000 台になる。DC 向けの売上は 50 億円前後と全体の 1 割に満たず、今の稼ぎを支えるのは国内の一般向けである。
2026 年 3 月期は売上が過去最高の 593 億円、営業利益は 94 億円だった。ただ利益は前期を割った。機器の出荷が想定を下回り、人件費と物流費が重かった。中国は赤字が続く。
純現金は 90 億円あり、財務は堅い。配当性向 50% と自社株買いで、利益のほとんどを株主に返している。ただ成長の余地は国内の更新需要と DC に限られ、利益が 2 倍になる姿は描きにくい。
筆者は、堅い会社が堅い値段で売られている、と見る。割安と呼ぶには、DC がもう一段伸びる必要がある。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、まず事業が 10 年後も続くかを問う。ビルに空調は欠かせず、更新も保守も続く。この点は文句がない。AI 向けの DC 空調は、水冷との競争があるものの、需要は大きい。
次に、株主に残る利益を見る。設備投資は軽く、稼いだ利益の半分を配当に、残りの多くを自社株買いに回しても、現金は減らない。オーナー利益は、純利益に近いと見てよい。
堀は広くない。国内のトップ級という地位と保守収益はあるが、大手が本気で価格を攻めれば守りきれない。ROE が 10% 前後と、堀の強い会社に比べて低いのもそのためだ。
経営は、資本を株主に返す姿勢が明確だ。割高な自社株買いを続けていないか、今後も見ておく必要はある。
安全域は、純現金が時価総額の 1 割ある点に出ている。ただ筆者は、本業の利益が 10 年で 2 倍になる筋書きは描けない。値段が妥当なら、持ち続ける理由は還元と DC の伸びに限られる。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの中心は、セントラル空調と呼ぶ建物全体の空調だ。空気を冷やし温め、ダクトで各部屋に送る大型の空気調和機(AHU)を、案件ごとに設計して作る。売上の 9 割がこの機器で、残りはビル管理などだ。
地域は日本が 86%、アジア(中国中心)が 14% である。日本は利益率が 18% を超える。アジアは価格競争が厳しく、赤字が続く。機器の販売と工事・保守の内訳は開示されていない。
成長の柱は 3 つある。1 つ目は DC 向けの空調機だ。24 時間止められない設備で、故障時の対応力が評価される。2 つ目は工事とメンテナンスで、納入した機器の更新と保守を取り込む。3 つ目はヒートポンプ式の AHU など、環境対応の機器である。
中期経営計画 move.2027 は、2027 年 3 月期に売上 600 億円、営業利益 100 億円を掲げた。会社の予想は 630 億円と 100 億円で、目標に届く見込みだ。
機器は受注生産で、納期が長い。工場の稼働を平らに保てるかが、利益率を左右する。納入後の保守契約は、この波をならす役目も持つ。
優良さと弱いところ
この会社の強みは、機器を売って終わりにせず、工事と保守まで手がける点だ。納入した空調機は 15 年から 20 年使われ、更新のたびに声がかかる。ビルの持ち主にとって、設計から面倒を見る相手を替える手間は小さくない。
財務は堅い。自己資本比率は 68% で、純現金が 90 億円ある。営業利益は支払利息の 200 倍を超える。ROE は 10% 前後で、会社の目標(10% 以上)に届いている。
弱みは 3 つある。1 つ目は規模の小ささだ。ダイキンや三菱電機のように価格で攻められると、体力で見劣りする。2 つ目は中国で、赤字が続いている。3 つ目は DC への依存が今後高まる点で、顧客が数社に偏れば値決めが難しくなる。
利益率の波にも注意が要る。過去 10 年の営業利益率は 11% から 20% まで動いた。2020 年 3 月期の 20% は一時の山で、平均は 15% 前後だ。
堀は広いとは言えない。国内のトップ級という地位と保守の収益で守られた、普通の堀と見る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
国内の空調は、更新が中心の成熟市場だ。ビルの新築は人口とともに細り、機器の出荷台数は増えにくい。それでも、築年数の進んだビルの更新と、省エネ・ヒートポンプ化の需要が下支えする。
競合は、ダイキン工業、木村工機、昭和鉄工などだ。ダイキンは新晃の株も持つ。AHU は案件ごとの仕様が違い、受注生産で価格の比較がしにくいのが救いである。
DC 向けの空調は、成長の中心だ。生成 AI の普及で熱が増え、水で冷やす方式(水冷)が広がる。ただ会社は、部屋全体を冷やす空冷の需要もなお大きいと見る。この判断が外れると、DC 向けの伸びは計画を割る。
DC の建設は、電力の確保や工期の遅れで後ろ倒しになる例も出ている。受注の波は大きい。
中国は不動産の停滞で需要が弱く、日本勢は価格競争にさらされる。新晃のアジアの受注高は前期を 2 割割った。
業界全体の見通しは、データセンターが年 9% 前後、空調全体が年 4% 前後の拡大という調査がある。ただし新晃の主戦場は国内で、ここは数量が伸びない前提で置いた。上の数字は世界全体のもので、日本の空調機の市場は、これよりずっと小さい。
資本政策と M&A
還元は手厚い。配当性向 50% と、自己資本に対する配当(DOE)3.5% を下限とする方針で、利益のおよそ半分を配当に回している。自社株買いは 2029 年 3 月期までの 5 年で 100 億円の枠を設け、すでに 93 億円を実行した。
自社株買いの資金には、新株予約権付社債(転換社債)も使った。買い戻しを借金で賄い、純現金の厚さを保ったまま自己資本を圧縮する形だ。ROE を 10% 台に保つ意図がうかがえる。
投資の枠は、DX に 87 億円以上、DC やヒートポンプなどの成長分野に 47 億円以上である。大型の M&A の実績は目立たない。
筆頭株主は明晃(18.6%)で、次いで信託銀行、自己株、ダイキン工業(5.6%)が並ぶ。明晃がどういう会社かは確認できなかった。
ダイキンが競合でありながら株主でもある点は、再編の余地を残す。参考として、10 年以内の TOB(株式公開買い付け)の確率を 2 割ほどとする試算もある。ただし個別の動きは何も確認していない。
還元の点検(P3 2026-10-19):方針は配当性向50%・DOE3.5%下限で、100億円の自社株買い枠は93億円を実行ずみ(株数に反映)。中立の還元を純利益の合計の60%から55%(配当50%+追加の自社株買い)に下げ、留保は自己資本に残した。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
DC 向けの空調は、まだ序盤だ。生成 AI の普及で熱は増える一方で、部屋全体を冷やす空冷の需要は、水冷が広がってもなお大きい。津山工場は 2032 年度までに 600 台から約 1,000 台へ増産する計画で、受注は印西、箕面、北九州の案件で積み上がっている。DC 向けの上期の売上は前年の 1.8 倍に伸びた。
本業の守りも固い。国内の AHU は首位級で、納めた機器の更新と保守が続く。工事・保守は会社の計画を上回って推移し、機器販売の波を和らげている。自己資本比率は 68%、純現金は 90 億円あり、不況でも揺らがない。
還元は配当性向 50% と DOE 3.5% が下限で、自社株買いの枠も使い切りに近い。利益が伸びなくても、1 株あたりの値打ちは育つ。中国の赤字は縮小し、工事案件が利益に寄与し始めた。DC が計画どおり伸びれば、営業利益率は 17% 台に乗り、ROE は 11% を超える。
慎重な見方
利益の中心である日本の機器販売は、台数が減っている。2026 年 3 月期は機器の出荷が想定を下回り、営業利益が前期を割った。人件費と物流費の上昇を値上げで吸収しきれていない。国内の新築着工は人口とともに細り、更新需要だけで台数を保てる保証はない。
DC は期待が先行している。売上は 50 億円前後と全体の 1 割に満たず、会社の目標も 55 億円どまりである。建設は電力の確保などで後ろ倒しになる例が出ている。水冷が主流になれば、空冷の空調機の出番は減る。顧客が数社に偏れば、値決めの力も弱い。
ダイキンや木村工機など、体力のある競合が価格で攻めてくれば、受注生産の小さな会社は守りきれない。中国は赤字が続き、受注残は 3 割減った。
ROE は 10% 前後で、資本コストを少ししか上回らない。堀の薄さを考えれば、利益が増えても倍率は上がらない。中立の筋書きですら、会社の目標の延長にすぎず、下振れの余地のほうが大きいと見るべきだ。
どちらに重みを置いたか
DC の伸びは本物だが、全体の 1 割に満たず、本業の機器は台数が伸びない。この 2 つを並べると、中立は会社の計画の延長線で置くのが妥当だ。堀が広くないので、倍率は上限の 8 割に抑えた。
確率は、中立に 4 割弱を置いた。DC が計画を上回る上振れと、水冷への置き換えや価格競争で崩れる下振れは、ほぼ釣り合うと見る。そのうえで、受注生産の小さな会社が価格で攻められるリスクを重く見て、やや悲観に 2 割強を置いた。
純現金と還元の手厚さで下は固く、10 年の悲観でも今の時価総額を割る額は限られる。結果として、ほぼ妥当からやや割安に収まった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,239 円1,504 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 648 円436 億円)。 今の値に割り戻すと 1,633 円1,097 億円、今との差 +33.9%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 6.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 3,682 円2,474 億円 | 807 円542 億円 | +268.2% | +13.9% | 449 円302 億円 |
| やや楽観 | 24% | 2,942 円1,977 億円 | 719 円483 億円 | +200.3% | +11.6% | 879 円590 億円 |
| 中立 | 38% | 2,411 円1,620 億円 | 655 円440 億円 | +151.5% | +9.7% | 1,165 円783 億円 |
| やや悲観 | 21% | 1,051 円706 億円 | 543 円365 億円 | +30.8% | +2.7% | 335 円225 億円 |
| 悲観 | 7% | 397 円267 億円 | 460 円309 億円 | −29.7% | −3.5% | 60 円40 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,239 円1,504 億円 | 648 円436 億円 | +136.9% | +9.0% | 2,887 円1,940 億円 |
今の株価時価総額 1,219 円819 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 10% DC 増産が当たり、国内空調の首位が固まる 利益 129 億円 · PER 18.9 倍 · 株価時価総額 3,682 円2,474 億円
国内の AI 向けデータセンター建設が続き、空冷の空調機はなお主役を張る。津山工場の増産は計画を超え、DC 向けは台数が今の 2.8 倍になる。値決めも通り、利益率は 18% に乗る。
一般のビル・工場・病院向けでは、更新と保守の需要を取り込み、国内のシェアは 16.5% まで上がる。ヒートポンプ対応の機器も売れ、工事の人手不足は協力会社の囲い込みでしのぐ。
中国は工事案件が積み上がり、赤字を脱して 7% の利益率を出す。この筋書きでは自己資本利益率(ROE)は 12% を超え、会社の目標 10% を余裕で上回る。
- データセンター向け空調機:数量 1,700(DC 向け空調機の出荷台数(台、推定))× 価格 0.11(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 182 億円・営業利益 33 億円。DC 向け空調機 1700 台(津山工場、推定)、営業利益率 18.0%
- 国内の一般空調(機器・工事・保守):数量 3,150(国内の DC 以外のセントラル空調(機器・更新工事・保守)の市場規模(億円、今の値段で測った実質、推定))× 価格 22.1%(当社売上 ÷ 市場規模(シェア)× 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 697 億円・営業利益 132 億円。国内の DC 以外の市場(実質)×シェア 16.5%、営業利益率 19.0%
- アジア(中国中心):数量 2,200(当社が狙うアジアの空調市場(億円、実質、推定))× 価格 7.4%(当社売上 ÷ 市場規模(シェア)× 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 162 億円・営業利益 11 億円。アジアの対象市場(実質)×シェア 5.5%、営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 128 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)50 億円。全体の PER 18.92 倍、時価総額 2,474 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:DC 向けが会社の増産計画を超えて伸び、更新・保守も厚くなる。上振れの条件がそろう道は細く、確率は 1 割にとどめた。
やや楽観 24% DC は計画どおり伸び、本業も底堅い 利益 107 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 2,942 円1,977 億円
DC 向けは津山工場の増産が計画どおり進み、台数は今の 2.3 倍になる。AI 投資の熱は冷めても、既設の DC の増設と更新が続く。
一般向けは国内のシェアを 16% に保ち、更新・保守の比率が上がって利益率は 18% で落ち着く。人件費と物流費の上昇は、値上げでほぼ吸収できる。
中国は価格競争が続くが、工事案件で黒字になる。ROE は 11% 前後で、会社の目標 10% を少し上回る 10 年になる。
この筋書きでは、保守と工事の比率が上がり、機器販売の波が目立たなくなる。会社の中計の延長線にあたり、自己資本利益率(ROE)は目標を超えて安定する。
- データセンター向け空調機:数量 1,350(DC 向け空調機の出荷台数(台、推定))× 価格 0.11(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 145 億円・営業利益 25 億円。DC 向け空調機 1350 台(津山工場、推定)、営業利益率 17.5%
- 国内の一般空調(機器・工事・保守):数量 3,000(国内の DC 以外のセントラル空調(機器・更新工事・保守)の市場規模(億円、今の値段で測った実質、推定))× 価格 21.4%(当社売上 ÷ 市場規模(シェア)× 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 643 億円・営業利益 116 億円。国内の DC 以外の市場(実質)×シェア 16.0%、営業利益率 18.0%
- アジア(中国中心):数量 2,000(当社が狙うアジアの空調市場(億円、実質、推定))× 価格 6.7%(当社売上 ÷ 市場規模(シェア)× 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 134 億円・営業利益 6 億円。アジアの対象市場(実質)×シェア 5.0%、営業利益率 4.5%
倍率:事業の純利益 107 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)50 億円。全体の PER 18.06 倍、時価総額 1,977 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社の増産計画(2032 年度に 1.7 倍)をほぼなぞる道で、実現の見込みは高めに見る。
中立 38% DC は伸びるが、本業の機器販売は横ばい 利益 92 億円 · PER 17.3 倍 · 株価時価総額 2,411 円1,620 億円
DC 向けは台数が今の 1.8 倍になる。会社の増産計画(1.7 倍)に近い。水冷の広がりで一部は奪われるが、部屋全体を冷やす空冷の需要は残る。
一般向けは国内の市場が縮まず、シェアも 15.5% で変わらない。機器の台数は伸びないが、更新と保守が下支えする。人件費の上昇で利益率は 17% に落ち着く。
中国は市場が縮み、シェアをかろうじて保って 2.5% の利益率にとどまる。売上は 10 年で 840 億円、営業利益率は 15%、ROE は 9.6% 程度。
この筋書きは、会社の計画をそのまま延ばした姿だ。DC の伸びが本業の弱さを埋め、売上は名目で年 3% 弱の成長になる。保守・更新の積み上げが、利益の底を支える。
- データセンター向け空調機:数量 1,100(DC 向け空調機の出荷台数(台、推定))× 価格 0.11(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 118 億円・営業利益 20 億円。DC 向け空調機 1100 台(津山工場、推定)、営業利益率 17.0%
- 国内の一般空調(機器・工事・保守):数量 2,910(国内の DC 以外のセントラル空調(機器・更新工事・保守)の市場規模(億円、今の値段で測った実質、推定))× 価格 20.8%(当社売上 ÷ 市場規模(シェア)× 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 604 億円・営業利益 103 億円。国内の DC 以外の市場(実質)×シェア 15.5%、営業利益率 17.0%
- アジア(中国中心):数量 1,900(当社が狙うアジアの空調市場(億円、実質、推定))× 価格 6.0%(当社売上 ÷ 市場規模(シェア)× 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 115 億円・営業利益 3 億円。アジアの対象市場(実質)×シェア 4.5%、営業利益率 2.5%
倍率:事業の純利益 91 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.7% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍 + 余った現金(戻り方込み)50 億円。全体の PER 17.25 倍、時価総額 1,620 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:国内の機器は台数が伸びず、DC と更新・保守が増分を作る中心の道。会社の計画の延長線で、いちばん厚く置く。
やや悲観 21% 本業の機器が値下がりし、DC も頭打ち 利益 65 億円 · PER 9.3 倍 · 株価時価総額 1,051 円706 億円
DC 向けは建設の遅れと水冷への切り替えで、台数は今の 1.3 倍で頭打ちになる。値段も物価ほど上がらない。
一般向けは新築の着工が細り、ダイキンや木村工機との価格競争でシェアを 14.5% に落とす。工事と保守の人件費が重く、利益率は 14.5% まで下がる。
中国は赤字から抜けられず、利益はゼロにとどまる。売上は 700 億円、営業利益は 88 億円、ROE は 7% 程度で資本コストを下回る。
この筋書きでは、会社の掲げる成長分野が思うように育たない。保守の収益は残るので赤字には落ちないが、増やした固定費が重くのしかかる。
- データセンター向け空調機:数量 800(DC 向け空調機の出荷台数(台、推定))× 価格 0.10(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 81 億円・営業利益 11 億円。DC 向け空調機 800 台(津山工場、推定)、営業利益率 14.0%
- 国内の一般空調(機器・工事・保守):数量 2,730(国内の DC 以外のセントラル空調(機器・更新工事・保守)の市場規模(億円、今の値段で測った実質、推定))× 価格 19.4%(当社売上 ÷ 市場規模(シェア)× 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 530 億円・営業利益 77 億円。国内の DC 以外の市場(実質)×シェア 14.5%、営業利益率 14.5%
- アジア(中国中心):数量 1,700(当社が狙うアジアの空調市場(億円、実質、推定))× 価格 5.4%(当社売上 ÷ 市場規模(シェア)× 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 91 億円・営業利益 0 億円。アジアの対象市場(実質)×シェア 4.0%、営業利益率 0.0%
倍率:ROE 7.2% が k 6.75% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値なので PER は 1÷k = 13.3 倍まで。ROE が k 6.75% を下回り、上限は 1÷k の 13.3 倍。稼ぐ力を重く見て上限の 7.0 割に置いた。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9.33 倍・時価総額 634 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:DC の計画未達と本業の値崩れが重なる道。建築需要の循環の谷を一度は通る業種で、2 割強の確率を置く。
悲観 7% DC が水冷に置き換わり、価格競争で堀が崩れる 利益 35 億円 · PER 7.2 倍 · 株価時価総額 397 円267 億円
DC は水冷が主流になり、津山工場の空冷機は台数が今の 0.75 倍に減る。値段も物価を大きく下回る。
一般向けは新築が細り、大手の攻勢でシェアを 12.5% まで落とす。固定費の重い工場と施工体制が重しになり、利益率は 11% まで下がる。
中国は撤退に近い縮小で、赤字と減損が出る。営業利益は 48 億円まで減り、ROE は 4% まで落ちる。優良会社ではなくなった姿である。
この筋書きでは、会社は縮小と立て直しを迫られる。保守の収益と純現金が下支えになり、財務が傷むところまでは行かないが、成長会社としての顔は失われる。
- データセンター向け空調機:数量 450(DC 向け空調機の出荷台数(台、推定))× 価格 0.09(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 41 億円・営業利益 4 億円。DC 向け空調機 450 台(津山工場、推定)、営業利益率 9.0%
- 国内の一般空調(機器・工事・保守):数量 2,550(国内の DC 以外のセントラル空調(機器・更新工事・保守)の市場規模(億円、今の値段で測った実質、推定))× 価格 16.8%(当社売上 ÷ 市場規模(シェア)× 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 427 億円・営業利益 47 億円。国内の DC 以外の市場(実質)×シェア 12.5%、営業利益率 11.0%
- アジア(中国中心):数量 1,500(当社が狙うアジアの空調市場(億円、実質、推定))× 価格 4.0%(当社売上 ÷ 市場規模(シェア)× 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 60 億円・営業利益 −2 億円。アジアの対象市場(実質)×シェア 3.0%、営業利益率 -4.0%
倍率:ROE 4.1% が k 6.75% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値。PER は 1÷k = 13.3 倍が上限で、目減りは ROE÷k = 0.55 に比例するので、上限 × 0.60 × 0.9 で 7.2 倍になる。7.2 倍に置いた。やや悲観の 9.3 倍より低い。構造的に負けた筋書き。余った現金は別に足す。
確率:DC が水冷に移り、国内の本業はダイキンなど大手に押される。構造的に負ける道で、確率は 1 割を割る。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
データセンター向け空調機
データセンター向けの大型空調機(空冷)。津山工場で作る。
| 数量DC 向け空調機の出荷台数(台、推定) | 価格1 台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 600 | 0.08 | 48 | 8 |
| 10 年後 中立 | 1,100 | 0.11 | 118 | 20 |
取り方:売上の DC 向けは開示がない。中期計画の目標(27/03 期に 55 億円、25/03 期の 1.3 倍)と 25 年 4〜9 月の 22 億円(前年同期 +76%)から、26/03 期を 48 億円と推定した。津山工場の出荷 600 台(2025 年度)で割ると 1 台 0.08 億円。利益率は日本セグメントの 18.6% を参考に 17% と置いた。 数量は台数(実物)で、会社の増産計画(1.7 倍)に近い置き方。名目の市場の伸びから置いたものではない。価格は物価の 1.34 倍。
国内の一般空調(機器・工事・保守)
オフィス・工場・病院向けのセントラル空調機器と、更新工事・保守。
| 数量国内の DC 以外のセントラル空調(機器・更新工事・保守)の市場規模(億円、今の値段で測った実質、推定) | 価格当社売上 ÷ 市場規模(シェア)× 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,000 | 15.5% | 465 | 87 |
| 10 年後 中立 | 2,910 | 20.8% | 604 | 103 |
取り方:26/03 期の日本の売上 513 億円から DC 推定 48 億円を引いた 464.5 億円を、国内の DC 以外のセントラル空調(機器+更新工事+保守)の市場 3,000 億円で割り、シェア約 15.5% と置いた。市場は富士経済の国内空調・熱源機器 2030 年 7,246 億円の予測の枠内の推定で、開示はない。営業利益は日本のセグメント利益 95.4 億円から DC の分を引いた。
アジア(中国中心)
中国を中心とした空調機器の販売と工事。赤字が続く。
| 数量当社が狙うアジアの空調市場(億円、実質、推定) | 価格当社売上 ÷ 市場規模(シェア)× 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 4.0% | 81 | −1 |
| 10 年後 中立 | 1,900 | 6.0% | 115 | 3 |
取り方:26/03 期のアジアの売上 80.9 億円を、狙う市場 2,000 億円(推定)で割り、シェア約 4% と置いた。損失 1.2 億円(前期は 2.8 億円)。物価の分は価格に入れ、数量は市場の大きさ(実質)で置いた。
リスクと懸念
DC 向けが水冷に置き換わる
生成 AI の発熱で、サーバーを水で冷やす方式が広がっている。会社は空冷の需要もなお大きいと見るが、主流が水冷に移れば、津山工場の増産は過剰になる。DC は今後の成長の中心なので、外れたときの傷は大きい。
国内の機器の台数が戻らない
2026 年 3 月期は、機器の出荷が想定を下回って営業利益が前期を割った。新築の着工は人口とともに細る。更新と保守が台数の減りを補えなければ、利益率の高い機器販売が縮み、日本の 18% 台の利益率は保てない。
大手との価格競争
ダイキンや木村工機、昭和鉄工などが価格で攻めると、受注生産の小さな会社は守りにくい。ダイキンは新晃の株主でもあり、競合としての動きは読みづらい。値決めの力は強くない。
人件費と物流費の上昇
工事と保守は人手に頼る。人件費と物流費の上昇は、すでに利益率を押し下げた。値上げで吸収できなければ、利益率の水準が切り下がる。協力会社の確保も課題になる。
中国の赤字が続く
アジアは価格競争で機器の採算が合わず、赤字が続く。2026 年 3 月期は受注高が 2 割減、受注残が 3 割減と先行きも弱い。撤退や縮小で減損が出る可能性がある。
DC の顧客の偏りと建設の遅れ
DC 向けは顧客が数社に偏りやすい。建設は電力の確保や工期の遅れで後ろ倒しになる例も出ている。受注の波が大きく、年によって売上が大きく振れる。
今後の分かれ目
- DC 向けの売上が、会社の目標 55 億円を大きく超えたら
- やや楽観・楽観の確率を上げる。津山工場の増産計画の前倒しがあるかも見る。
- 水冷の DC が主流になり、空冷機の受注が減り始めたら
- やや悲観・悲観の確率を上げる。増産投資の回収が遅れるかを見る。
- 日本の機器の出荷台数が回復に転じたら
- 利益率 17% 台が続くと見て、中立の確率を上げる。
- ダイキンなど大手が価格を下げて攻め始めたら
- やや悲観側に確率を移す。値決めの力の判断を見直す。
- 中国で工事案件が積み上がり、黒字化したら
- アジアの利益率の前提を上げる。ただし受注高と受注残の先行指標を確認する。
- ダイキンや筆頭株主の明晃の保有に動きが出たら
- 再編の可能性を再評価する。TOB の可能性は確率に別途織り込まない。
見ておくもの
- DC 向け空調機の売上と受注(会社の目標 55 億円)
- 日本の機器の出荷台数と、工事・保守の売上の伸び
- 営業利益率(日本セグメント 18% 台が保てるか)
- 中国の受注高・受注残と損益
- 筆頭株主・ダイキンの保有の変化と自社株買いの実行
倍率と資本コストの決め方
3 つの事業(DC 向け・国内一般・アジア)を、台数や市場規模×シェアと物価並みの価格で積んだ。倍率は利益ベースの正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g)(k 6.75%、g 4.0%)の上限に対し、中立は 8 割、楽観 9 割、やや楽観 8.5 割、やや悲観 7 割に置いた。堀が普通で、DC の外れもありうるため上限すれすれにはしない。悲観の PER は ROE÷k に比例して目減りさせた値(上限 × ROE÷k × 0.9。自己資本の 0.2 倍相当を下限)で、7.2 倍(やや悲観の 9.3 倍より低い)。今の株価・PER・過去の PBR を倍率の根拠にした所はない。新リース会計で BS が膨らむ点は、10 年後も家賃を営業費用に入れた今の形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 15.14→18.92 倍・やや楽観 PER 13.45→18.06 倍・中立 PER 12→17.25 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality 0% = 7.5%。DC 一本足への依存や中国の赤字は k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 7.50% → 6.75%。