結論
オークマは、旋盤やマシニングセンタなどの工作機械を、頭脳にあたるNC装置まで自社で作る会社だ。筆者の結論は「適正」である。技術と財務の質は高いが、安全域は薄く、やや割高に寄った適正だ。
好調な受注が目先の業績を押し上げているが、今期の利益率は6%台にとどまる。ROEも5%前後と、資本コストに届いていない。中計2028は利益率11%、ROE8%を掲げる。達成しても、まだ資本コストの水準だ。
筆者は、10年後の中立でも利益率は11%前後と見る。強みの機械と制御の一体設計は崩れにくい。だが人への投資が重く、中国勢の追い上げもある。
純現金と厚い自己資本は、悪い局面での備えになる。時価総額の1割に満たないので、余剰とは数えなかった。ただ、割安の根拠にもならない。
10年の見方を変えるのは、中計の達成ではなく、その先の利益率だ。
この会社が本当に変わるかは、資本政策で決まる。自己資本の圧縮と政策保有株の縮減が進めば、見方は上向く。
筆者は、事業の質を疑ってはいない。疑っているのは、その質に見合う利益を、株主の手元に残せるかどうかだ。
バリュー投資の観点から
筆者がこの会社を見る軸は、事業のわかりやすさ、資本の使い方、払う値段の安全域の3つだ。事業は工作機械という長い歴史の分野で、中身は明快だ。制御まで自前という強みも、長続きしやすい。
問題は資本の使い方にある。純現金と自己資本が厚い割に、ROEは低い。10年のうち、資本コストを超えた年は限られる。オーナーとして持ち続けたいなら、この点が引っかかる。
中計は資本の圧縮に向かう。方向は正しい。ただ、還元の規模は増えず、政策保有株の売却資金の使い道も語られていない。言葉だけでは足りない。
安全域は薄い。業績は景気の山に近く、今の値段は中計の達成を相応に織り込んでいる。悲観の筋書きでも会社は守られるが、払う値段に余裕があるとは言いにくい。
事業の質が高いことと、株が安いことは別の話だ。質の高い会社でも、利益の回復を先取りした値段では、10年の見返りは細くなる。
何で稼ぐ会社か
オークマの稼ぎ方は、機械を売り、その後の保守と部品で長く稼ぐ形だ。NC旋盤、マシニングセンタ、複合加工機を作り、顧客は自動車、航空機、半導体装置、建機など幅広い。海外の売上が7割を超え、欧州と米州が大きい。
特徴は、制御装置のNC、モーター、検出器まで自社で作ることだ。機械とソフトを一体で設計できるので、稼働データで顧客の工場を見守る診断サービスも、自前で組める。
今期の売上のうち、日本は約15%、アジアが約27%、欧州が約29%、米州が約30%を占める。会社は2028年度に売上2,700億円を目指し、欧州と国内の伸びを見込む。
事業は単一で、部門の開示はない。ここでは新機の販売と、保守・部品・改造に分けて見る。保守の割合は開示がないので、売上の1〜2割と推定した。
新機の受注は、景気や設備投資の波にそのまま乗る。保守・部品は、すでに世界で動いている機械の台数に比例し、波が小さい。工作機械は一度据え付ければ10年以上使われるので、この積み上がりが下支えになる。稼働中の機械が積み上がるほど、収入の土台は厚くなる。
優良さと弱いところ
強みは、機械と制御を一体で作る設計力と、世界に広がる保守網だ。他社が簡単にまねできない強み、つまり堀の核は、この一体設計にある。NC装置を外から買う会社と違い、機械の動きを細かく作り込める。
一方で、堀が広いとは言えない。工作機械は世界に競合が多く、DMG森精機やヤマザキマザックと真正面から競う。中国・台湾勢は汎用機で値段を下げて攻めてくる。値段を自分で決める力は、中程度だ。
最大の弱点は資本効率だ。過去10年のROEの中央値は7%に届かない。自己資本は2,450億円と厚く、自己資本比率は72%に達する。守りは固いが、お金を使い切れていない面がある。
経営の姿勢は堅実だ。大型の買収で背伸びをせず、本業の工作機械に集中してきた。派手さはないが、資本を壊さない点は評価できる。
中計は営業利益率の回復を掲げるが、増益要因のうち最大の減益は人への投資だ。筆者は、ここで本当に利益が残るかを見ている。
顧客の工場の稼働を止めない保守の速さは、数字に出にくい強みだ。米州で2026年6月に稼働するグローバル修理工場は、その延長にある。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
工作機械は、受注の振れが極めて大きい業種だ。2026年上期の受注額は前年同期比で3割強伸び、外需が7割を占めた。中心はAIデータセンター向けの半導体関連と、人手不足を受けた自動化の需要だ。中国と自動車向けは弱いままである。
競争の構図は分散している。日本のDMG森精機、ヤマザキマザック、ドイツ勢、台湾勢、中国勢が並ぶ。世界の順位は、数年前の資料でオークマは7位前後だった。
筆者がいちばん気にしているのは中国だ。内需の不振と国産化の政策が重なり、汎用機で値段が崩れている。高精度機にも波が届くかが、10年の分かれ目になる。
一方、自動化や5軸加工の需要は、世界で構造的に伸びる。前の好況でも、ピークの翌年に受注が大きく落ちた。今回の受注増を、そのまま10年に伸ばさない方が安全だ。
国内は人手不足が深まり、自動化の投資が続く。ただし人口が減る国で、数量が大きく増えるとは考えにくい。伸びの主役は、あくまで海外の自動化と半導体関連である。会社の計画も、2028年度の欧州の売上を830億円へ、国内を470億円へ伸ばす内容だ。
資本政策と M&A
株主還元は、配当性向35%以上に自社株買いを組み合わせる。中計2028の3年間で、還元は220億円以上を見込む。前の計画と同水準を保つ方針で、大きく積み増すわけではない。
資産の見直しも進める。在庫の保有月数を5.0カ月へ下げ、政策保有株は純資産比10%未満を目指す。2024年3月期には5社の株を売った。ただ、売却で生まれた資金をどう使うかは、まだはっきりしない。
大株主は信託銀行と日本生命、取引先持株会、岡谷鋼機などで、支配株主はいない。TOBの報道は見当たらない。外部のモデルは10年内の買収確率を約18%と見る。
M&Aは近年大きいものがなく、手元には純現金が残る。筆者は、資本の使い方こそがこの会社の最大の論点だと見る。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
世界の工作機械は、自動化と半導体の需要で構造的に伸びる。人手不足は先進国で深まり、無人で動く加工機の価値は上がる一方だ。オークマは機械と制御を一体で作れるので、この流れの中心にいる。
受注は強く、米州の拠点と欧州の販売網が伸びを引き受ける。売価の改善と変動費の削減で、利益率は6%台から11%へ戻る余地が大きい。いまの利益は谷に近い水準で、回復の力は大きい。
純現金と72%の自己資本は、不況でも研究と投資を止めずに済む備えだ。政策保有株の縮減と自己資本の圧縮が進めば、ROEは10%を超え、資本コストを上回る。中国勢が強いのは汎用機で、高精度機の牙城は当面崩れない。自動車だけに頼らない顧客の幅も、需要の波をならす。受注が強い今こそ、売価を上げやすい局面でもある。
加えて、保守・部品の収入は稼働台数とともに積み上がる。新機の受注が弱い年でも、この収入が利益の床を支える。2024年に政策保有株を売ったように、資産の見直しも進み始めている。
慎重な見方
ROEは10年を通じて7%前後で、資本コストに届いたことがほとんどない。自己資本を積み上げた結果で、経営の癖に近い。中計のROE目標8%も、資本コストの水準にすぎない。
工作機械は受注の振れが極めて大きい。前の好況の後も、受注が急に落ち込み、営業利益が1年で半分になった年があった。今の好調は、AIデータセンター投資という1つの波に支えられている。波が引けば、受注は急速にしぼむ。
中国の国産化は、内需の不振とあわせて汎用機の値段を崩している。高精度機にも時間をおいて届く。人への投資は最大の減益要因で、売価が上がらなければ利益率は戻らない。還元の規模が増えない以上、ROEの改善は利益の回復だけに頼る。
国内を見ても、人口が減る中で自動車向けの需要は伸びにくい。EV化で部品の加工工程が減れば、旋盤や複合加工機の需要の中身も変わる。今の受注は強いが、10年の構造を保証するものではない。
国内を見ても、人口が減る中で自動車向けの需要は伸びにくい。EV化で部品の加工工程が減れば、旋盤や複合加工機の需要の中身も変わる。今の受注は強いが、10年の構造を保証するものではない。
どちらに重みを置いたか
強気の言い分は、回復の余地と財務の質にある。慎重な言い分は、資本効率の低さと循環にある。筆者は、利益率が11%へ戻ることは認めつつ、それでもROEは資本コストをわずかに超える程度と見る。中立の確率を最も厚くし、悲観側にやや寄せた。10年の価値は今の時価総額を下回り、結論は「適正」だが、下に寄った適正になった。
強気の言い分が当たる場合の上振れは確かにある。ただ、それには利益率が15%に迫る必要があり、確率は1割強に置いた。慎重な言い分が当たる場合の下振れは、純現金と資産で床が支えられる。上下の幅は非対称だが、結論を動かすほどではない。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 7,350 円4,280 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,344 円1,365 億円)。 今の値に割り戻すと 4,904 円2,855 億円、今との差 +8.6%、 期待の年率 +7.9%(資本コスト 8.3%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 14,765 円8,598 億円 | 3,950 円2,300 億円 | +314.5% | +15.3% | 2,246 円1,308 億円 |
| やや楽観 | 22% | 10,662 円6,208 億円 | 3,091 円1,800 億円 | +204.6% | +11.8% | 3,026 円1,762 億円 |
| 中立 | 34% | 7,278 円4,238 億円 | 2,147 円1,250 億円 | +108.7% | +7.6% | 3,204 円1,866 億円 |
| やや悲観 | 20% | 3,067 円1,786 億円 | 1,889 円1,100 億円 | +9.8% | +0.9% | 991 円577 億円 |
| 悲観 | 12% | 1,203 円701 億円 | 687 円400 億円 | −58.1% | −8.3% | 227 円132 億円 |
| 加重平均 | 100% | 7,350 円4,280 億円 | 2,344 円1,365 億円 | +114.7% | +7.9% | 9,694 円5,645 億円 |
今の株価時価総額 4,515 円2,629 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 12% 自動化とAI需要を取り込み、利益率15%近くが定着 利益 566 億円 · PER 15.2 倍 · 株価時価総額 14,765 円8,598 億円
AIデータセンターと自動化の投資が10年途切れず、5軸機と複合加工機が世界で売れ続ける。米州の拠点と欧州の販売網が実を結び、海外比率はさらに上がる。
NC装置まで自社で作る強みは、機械とソフトを一体で売る時代に効いてくる。売価改善と合理化が積み上がり、営業利益率は15%に近づく。保守・部品の収入も、稼働台数とともに厚くなる。
還元で自己資本が抑えられ、ROEは14%台へ上がる。中国勢は汎用機で伸びるが、高精度機の牙城は崩れない。会社が描く最良の10年だ。
この筋書きでは、人への投資が売上の伸びで吸収され、固定費の重さが逆に武器になる。ただし、ここまで届くには世界の需要が長く強い必要がある。
- 工作機械(新機の販売):数量 3,100(世界の工作機械市場で当社が得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円))× 価格 140(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 4,340 億円・営業利益 608 億円。実質年4.5%、価格指数140(物価並みに高付加価値機の上乗せ)
- 保守・部品・改造:数量 585(据付済み機械の稼働に伴う実質の売上(今の値段基準・億円))× 価格 140(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 819 億円・営業利益 172 億円。稼働台数の増加と遠隔診断で実質年5%
倍率:事業の純利益 566 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 14.3% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.2 倍。全体の PER 15.19 倍、時価総額 8,598 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:世界の需要が実質で年4〜5%伸び続け、会社が2030年に描く利益率15%まで届く必要がある。条件が重なるので確率は低めにした。
やや楽観 22% 中計どおり利益率12%近くに届き、穏やかに拡大 利益 440 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 10,662 円6,208 億円
中計2028の目標は、おおむね達成される。AIと自動化の追い風が続き、売価改善と変動費の削減が利益率を12%近くまで押し上げる。
米州と欧州では5軸機と複合加工機が伸び、国内も自動化投資で底堅い。ただしDMG森精機やヤマザキマザックとの競争があり、シェアを一方的に奪う展開にはならない。
配当性向35%以上に自社株買いを合わせた還元が続き、自己資本は膨らまない。ROEは11%台で安定する。2030年ビジョンの15%には届かないが、長く低迷した資本効率が、ようやく資本コストを超える10年になる。
人手不足を背景にした自動化の需要は、国内外で途切れない。売上は10年で2倍弱になる計算だ。
- 工作機械(新機の販売):数量 2,820(世界の工作機械市場で当社が得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円))× 価格 137(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 3,863 億円・営業利益 464 億円。実質年3.5%、価格指数137
- 保守・部品・改造:数量 542(据付済み機械の稼働に伴う実質の売上(今の値段基準・億円))× 価格 137(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 743 億円・営業利益 145 億円。実質年4.2%
倍率:事業の純利益 440 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍。全体の PER 14.11 倍、時価総額 6,208 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:世界の工作機械需要が実質で年3〜4%伸びるという業種ノートの上位レンジ。会社の中計の達成に近い置き方。
中立 34% 中立:国内の主要メーカーとして地位を保つが、利益率は10%台前半どまり 利益 335 億円 · PER 12.7 倍 · 株価時価総額 7,278 円4,238 億円
世界の需要は実質で緩やかに伸び、オークマはほぼ市場並みに成長する。5軸機と複合加工機の拡販が進み、米州も伸びる。
売価改善と合理化は進むが、人への投資と減価償却が利益を削る。中国勢の追い上げで、汎用機の値段は物価ほど上がらない。営業利益率は11%前後で、中計の2028年目標をやや超える程度にとどまる。
堀、つまり他社がまねできない強みは保たれる。自前のNC装置と機械の一体設計は、10年後も簡単には崩れない。普通に強い国内勢という評価に収まる10年だ。
中計の2030年ビジョンの15%には届かず、10年後も利益率は10%台前半にとどまる。
- 工作機械(新機の販売):数量 2,560(世界の工作機械市場で当社が得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円))× 価格 134(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 3,430 億円・営業利益 343 億円。実質年2.5%、価格指数134(物価並み)
- 保守・部品・改造:数量 506(据付済み機械の稼働に伴う実質の売上(今の値段基準・億円))× 価格 134(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 678 億円・営業利益 122 億円。実質年3.5%(据付台数の積み上がり)
倍率:事業の純利益 335 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.1% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.7 倍。全体の PER 12.65 倍、時価総額 4,238 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業種ノートの中立(世界需要が実質で年3〜5%)の下限寄り。ROE が資本コストをわずかに超える程度で収まるという、2人の見方の落としどころ。
やや悲観 20% 中国勢の追い上げで汎用機から利益が削られる 利益 188 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 3,067 円1,786 億円
中国メーカーが中級機まで価格を下げて攻め、世界の需要も伸び悩む。オークマの新機の販売はほぼ横ばいになり、値段は物価の伸びに届かない。
高精度機と保守で利益を守るが、営業利益率は8%に下がる。ROEは6%台と、資本コストを再び下回る。欧州と米州では中国勢の進出が遅れる一方、アジアでは値段で押される。
事業が崩れるわけではない。ただ、人への投資で固定費は重くなっており、売上が伸びない10年は利益に響く。還元は縮小しつつ続く。
景気の山が終わる頃に、人への投資の重さが一気に表に出る筋書きだ。
景気の山が終わる頃に、人への投資の重さが一気に表に出る筋書きだ。
- 工作機械(新機の販売):数量 2,100(世界の工作機械市場で当社が得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円))× 価格 128(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 2,688 億円・営業利益 175 億円。実質年0.5%、価格指数128(中国勢との競争で物価に届かない)
- 保守・部品・改造:数量 416(据付済み機械の稼働に伴う実質の売上(今の値段基準・億円))× 価格 128(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 532 億円・営業利益 80 億円。実質年1.5%
倍率:ROE 6.4% が k 8.25% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値のため PER は 1÷k = 11.8 倍まで。稼ぐ力(純利益 ÷ k)から 9.5 倍に置いた。
確率:中国の自給率上昇が汎用機から中級機に広がり、世界需要も伸びが鈍る想定。業種ノートの悲観寄りのレンジ。
悲観 12% 構造的にシェアを失い、優良さを失う 利益 40 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 1,203 円701 億円
中国・台湾の工作機械が高精度機にも届き、日本の中堅勢は世界で守勢に回る。オークマの新機の取り分は3割縮み、値段も物価に届かない。
人への投資で膨らんだ固定費を削れず、営業利益率は2%台にまで落ちる。保守・部品は新機の減少で伸びなくなる。
厚い純現金と自己資本で会社は持ちこたえ、配当も続けられる。ただ、もはや稼ぐ力で語れる会社ではなく、資産の価値で測る段階になる。
シェアを失った時に、固定費の重い会社がどれほど苦しいかは、2010年3月期の赤字が示している。
シェアを失った時に、固定費の重い会社がどれほど苦しいかは、2010年3月期の赤字が示している。
- 工作機械(新機の販売):数量 1,400(世界の工作機械市場で当社が得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円))× 価格 108(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 1,512 億円・営業利益 15 億円。実質で3割縮む、価格指数108
- 保守・部品・改造:数量 359(据付済み機械の稼働に伴う実質の売上(今の値段基準・億円))× 価格 108(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 388 億円・営業利益 31 億円。新機の販売減で据付台数も伸びず横ばい
倍率:稼ぐ力はほぼ消えるので、純現金+売れる資産の税後を床にした。約 700 億円とみた。PBR はこの床を今の自己資本で割った値。
確率:中国・台湾勢のキャッチアップと自動化需要の一服が重なる筋書き。10年という期間では十分ありうる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
工作機械(新機の販売)
NC旋盤・マシニングセンタ・複合加工機・5軸機などの新機販売。NC装置やモーターも自社製で、機械と制御を一体で売る。
| 数量世界の工作機械市場で当社が得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円) | 価格名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,000 | 100 | 2,000 | 90 |
| 10 年後 中立 | 2,560 | 134 | 3,430 | 343 |
取り方:単一セグメントで開示はない。売上2,359億円のうち、保守・部品・改造を15%(約360億円)と推定し、残る2,000億円を新機とした。利益は全社155億円を、保守の高い利益率(約17%)と新機の約4.5%に割り振った推定。価格は物価の指数(今=100)。
保守・部品・改造
据え付けた機械の修理・部品・改造・遠隔診断。稼働台数に比例して積み上がり、景気の波が小さい。
| 数量据付済み機械の稼働に伴う実質の売上(今の値段基準・億円) | 価格名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 359 | 100 | 359 | 65 |
| 10 年後 中立 | 506 | 134 | 678 | 122 |
取り方:売上の約15%と推定(開示なし)。一般に保守・部品は新機より利益率が高く、約18%とみて65億円。価格は物価の指数(今=100)。
リスクと懸念
受注の循環
工作機械は受注生産の資本財で、需要が急に落ちる年がある。2010年3月期には営業利益率が約−25%まで沈んだ。今の受注増がAI投資の一服で止まれば、利益は短期間で半減しうる。
中国勢の価格競争
中国の国産化政策と内需不振で、汎用機の値段が崩れている。高精度機にも時間をおいて波が届けば、日本勢の世界シェアが構造的に縮む。オークマの強みは高精度・自動化領域に絞られていく。
低いROEと資本の使い方
過去10年のROEの中央値は7%に届かず、資本コストを下回る年が続いた。自己資本比率72%は安全だが、お金を使い切れていない面がある。中計も還元は前の計画と同水準で、大きな改善は約束していない。
人への投資の重さ
中計では増益要因の最大の減益要因が、人への投資だ。固定費が重くなると、売上が伸びない年の利益の落ち込みが大きくなる。売価改善が進まなければ、利益率11%は遠のく。
為替と海外比率
海外売上が7割を超える。為替は10年150円で固定した前提だが、実際の円高は利益を直接削る。欧州と米州の景気にも左右される。
資産の見直しの不透明さ
政策保有株を純資産比10%未満へ縮減する方針だが、売却資金の使い道は示されていない。買収や投資に回して価値を壊すか、還元に回すかで、資本効率の行方が変わる。
今後の分かれ目
- AIデータセンターと自動化の投資が2027年以降も続き、受注が高水準を保つ
- 売価改善と稼働率の上昇で利益率が11%へ戻り、ROEは資本コストを上回る水準へ上がる
- 中国勢の中級機が欧米市場でもシェアを取り始める
- 値段が物価に届かず、利益率は8%前後に低下。ROEは再び資本コストを下回る
- 政策保有株の売却資金を自社株買いに回す
- 自己資本が圧縮され、ROEが上がる。還元の増額は、評価を見直す最も早い材料になる
- 工作機械の受注が急減速する
- 利益は1年で半減しうるが、純現金と72%の自己資本で、配当と研究は続けられる
- 大型のM&Aで事業を広げる
- のれんの減損や統合の失敗が、資本効率をさらに下げる恐れがある。買収先の質を見る
- 他社がTOBをかける
- 政策保有の株主や取引先持株会が多く、友好的な再編が現実的。買収価格は純資産と稼ぐ力の差が目安になる
見ておくもの
- 日本工作機械工業会の月次受注(外需比率)
- 営業利益率とROEの推移(中計の11%・8%)
- 自社株買いと政策保有株の縮減の進み具合
- 米州・欧州の受注と修理拠点の稼働
- 中国メーカーの高精度機の性能とシェア
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価(PER 約22倍)を見ず、その時点のROEと資本コスト 8.25%(基本 7.5% に、循環 +0.75%・値決め力 +0.25%)から正当化 PER を出し、中立までは上限の 8〜9 割に置いた。10年中立のROEは9%台で、過去の中央値に近い水準まで戻るだけで、強い回復は置いていない。やや悲観は稼ぐ力(純利益÷k)、悲観は純現金+売れる資産の税後(約 700 億円)で測った。純現金は時価総額の 8% で基準の 1 割に届かないので、分けずに自己資本に含めた。過去や同業の倍率は使っていない。リースは小さく、10 年後の数字は今と同じ形でそろえた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13→15.19 倍・やや楽観 PER 12→14.11 倍・中立 PER 11.8→12.65 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +1.0% = 8.5%。個別の事情は k に足さず、筋書きと確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.25%。