結論
赤阪鐵工所は、静岡県焼津の工場で船のエンジンを作る会社だ。主に国内の港を結ぶ内航船の主機関、つまり船を動かす中速のディーゼルエンジンを手がける。売上83億円の半分強は、納めたエンジンの部品と修理である。
筆者の結論は、割高だ。本業はほとんど稼げていない。資材と人件費の値上がりをエンジンの値段に移せず、2026年3月期は営業赤字だった。過去12年の営業利益率は、ほぼゼロの近くを行き来している。
今の時価総額36億円を支えているのは、本業ではなく株だ。会社はジャパンエンジンコーポレーションやしずおかフィナンシャルグループなど、50億円の政策保有株を持つ。だがその多くは取引の維持のためで、売る数値の方針は無い。配当は既に利益に入っている。少数株主にとって、この株の価値は手の届かない所にある。
明るい材料もある。主機関の受注残は1年で5割増え、内航船の建て替えの山も近い。それでも値上げを転嫁できない構造が変わらない限り、本業の稼ぎで今の値段を説明するのは難しいと筆者は見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、本業の稼ぎで値段を説明できない会社だ。
事業の価値は、毎年いくら稼ぐかで決まる。赤阪鐵工所の営業利益は、過去12年でほぼゼロの近くを行き来した。部品と修理の稼ぎはあるが、主機関の赤字がそれを食う。株主のものになる利益は、配当と助成金を足しても年2億円ほどだ。資本コストを9.25%とすると、その値打ちは20億円台にとどまる。
残るのは政策保有株だ。税後でも30億円台の値打ちがある。だがその多くは取引の維持のために持ち、売る数値の方針は無い。少数株主は、会社にそれを売らせることも、配らせることもできない。配当という形で利益に入っている以上、別に数えれば二重になる。
10年後もこの会社はエンジンを作り、修理を続けているだろう。だが値上げを転嫁できない構造が変わらない限り、持ち続けて報われる事業ではない。安全域は、会社が株を売って株主に戻すと決めた時に初めて生まれる。
何で稼ぐ会社か
赤阪鐵工所は1910年の創業で、焼津で漁船のエンジンを作ることから始まった。今は内航船や近海船の主機関を主力とし、鋳物から機械加工、組み立てまでを焼津の工場で一貫して手がける。
事業は内燃機関関連の一本で、セグメントは分けていない。中身は大きく2つだ。1つは主機関で、2026年3月期の受注は20億円と前期から43%減ったが、受注残は61億円と49%増えた。船の建造には2〜3年かかり、受注から売上までの間が長い。
もう1つは部分品と修理工事で、受注は45億円と安定している。エンジンは20年以上使われ、その間に部品の交換と修理が続く。納めたエンジンの数が、そのまま将来の稼ぎの土台になる。
ほかに陸上の鋳物や機械加工品、潤滑油の清浄装置、バイオディーゼル燃料の製造といった新しい事業を育てている。次世代の燃料のエンジンや、自動運航船のシステムの開発も進める。
主な顧客は内航海運の船主と造船所だ。売上の1割を超える取引先はない。大型船の主機関で使うUE機関の実施権を持ち、その関係でジャパンエンジンコーポレーションの株を保有している。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、納めたエンジンの部品と修理にある。
船のエンジンは20年以上動き、その間の部品と修理は、作った会社に頼むのが普通だ。内航の船主は小さな会社が多く、長年の付き合いのある修理の窓口を変えたがらない。部品と修理の受注が年45億円で安定しているのは、この積み重ねの結果だ。
だが主機関そのものの堀は弱い。内航船の主機関では、阪神内燃機工業やヤンマー、ダイハツインフィニアースと競う。造船所と船主は相見積もりを取り、資材の値上がりを値段に移せない。2026年3月期は原価率が大幅に悪化し、営業赤字に落ちた。
数字がそれを示す。営業利益率は過去12年でマイナス3%からプラス4%の間にある。ROEは中央値で1%強で、資本コストの9%に遠い。
工場の機械はほぼ償却が済み、更新の時期が来ている。新しい値段で更新すれば、償却費は増え、現金は出ていく。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
内航の主機関の需要は、内航船の建て替えに連動する。
内航船は国内の港を結び、鉄鋼や石油、セメント、雑貨を運ぶ。船の数は貨物の量と船員の数に縛られる。国内の貨物は人口とともに細り、船員は高齢化で不足している。船の数は長い目で減る方向にある。
一方で、建て替えの山は来る。内航船は船齢14年を超える船が多く、古い船ほど燃費が悪い。環境規制が強まるほど、低燃費の新しいエンジンへの建て替えが進む。赤阪鐵工所の受注残が1年で5割増えたのも、この流れに乗っている。
値段の面では苦しい。鋼材と人件費、購入品は上がり続けるが、造船所も船主も小さな会社が多く、値上げを受け入れる余力は乏しい。内航の主機関は国内の数社で分け合う市場で、値段を上げれば注文を他社に取られる。
長い目で見た分かれ目は、燃料の転換だ。アンモニアや水素、バイオ燃料に合うエンジンの開発には大きなお金がかかる。大型船ではジャパンエンジンコーポレーションが先行し、内航でも大手が有利になる。
筆者の見立てでは、主機関の台数は10年で5%ほど減る。単価は物価にわずかに届かない。
資本政策と M&A
還元は配当だけだ。2026年3月期の配当は総額0.4億円で、利益が無い年も配当を続けてきた。2027年3月期の配当は未定としている。自社株買いの実績は乏しい。
大きな論点は政策保有株だ。投資有価証券は50億円あり、時価総額の36億円を超える。最大はジャパンエンジンコーポレーションの28億円で、UE機関の実施権を保つための保有だ。しずおかフィナンシャルグループが14億円、飯野海運が4億円と続く。
2026年2月には22銘柄を一部売り、2.5億円を得た。名村造船所とTOKAIホールディングスは全株を売った。ただ縮減の数値目標は示していない。配当は年0.8億円ほどで、既に利益に入っている。
借入と社債は15億円、リース債務は5億円あり、現金と長期預金でほぼ相殺される。前受金にあたる契約負債も10億円ある。実質的に余った現金は無い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
建て替えの山が来ている。内航船は古い船が多く、環境規制が強まるほど低燃費の新しいエンジンが要る。主機関の受注残は1年で49%増えた。2027年3月期の売上は90億円と、前期から1割近く伸びる計画だ。
部品と修理は安定した稼ぎだ。エンジンは20年以上動き、その間に部品と修理が続く。受注は年45億円あり、景気に左右されにくい。会社もここを柱に据え、海外にも販路を広げる。
新しい事業も芽を出している。潤滑油の清浄装置、バイオディーゼル燃料、自動運航船のシステムは、いずれも脱炭素と人手不足という大きな流れに乗る。
そして資産がある。政策保有株は50億円で、時価総額を超える。2026年2月には22銘柄を売り、名村造船所の株も手放した。縮減は既に始まっている。売った代金を株主に戻せば、今の値段は安すぎる。ジャパンエンジンの株は造船の好況で3倍以上に上がった。
焼津で鋳物から組み立てまでを一貫して手がける工場は、国内でも数少ない。造り手が減るほど、残った工場の値打ちは上がる。
慎重な見方
本業が稼げない。資材と人件費の値上がりをエンジンの値段に移せず、2026年3月期は営業赤字だった。過去12年の営業利益率はほぼゼロで、2015年、2019年、2021年にも赤字を出した。受注残が増えても、値上げを転嫁できなければ、売るほど損が出る。
主機関の受注は43%減った。受注残が尽きた後の谷は、過去にも何度も来た。内航の船の数は、貨物と船員の減少で長い目で細る。
競争も厳しい。阪神内燃機工業やヤンマー、ダイハツインフィニアースと値段で競い、燃料の転換では開発の資金に勝る大手が有利だ。
政策保有株は、少数株主の物ではない。最大のジャパンエンジン株は実施権のための保有で、売れない。縮減の数値目標も無い。配当は既に利益に入っている。株価の上昇で膨らんだ含み益は、造船の好況が終われば消える。本業の稼ぎで値段を説明できない会社に、資産の厚さを理由に高い値段は払えない。
工場の機械はほぼ償却が済み、更新の時期が来ている。新しい値段で買い替えれば、薄い利益はさらに削られる。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方に分がある。建て替えの山と部品・修理の安定は本物だが、値上げを転嫁できない構造は12年の数字が示す。政策保有株は厚いが、売る方針の無い株は少数株主の価値にならない。確率は中立を厚くし、悲観側を厚めに置いた。株を売って株主に戻す方針が数字で出れば、見方を大きく改める。主機関の値上げが2期続けて通った時も同じだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,970 円26 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 305 円4 億円)。 今の値に割り戻すと 1,009 円14 億円、今との差 −61.3%、 期待の年率 −1.4%(資本コスト 9.3%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 5,290 円71 億円 | 598 円8 億円 | +125.9% | +8.5% | 471 円6 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,422 円46 億円 | 448 円6 億円 | +48.5% | +4.0% | 774 円10 億円 |
| 中立 | 37% | 1,831 円25 億円 | 336 円5 億円 | −16.8% | −1.8% | 802 円11 億円 |
| やや悲観 | 22% | 598 円8 億円 | 149 円2 億円 | −71.3% | −11.7% | 164 円2 億円 |
| 悲観 | 13% | 411 円6 億円 | 75 円1 億円 | −81.4% | −15.5% | 63 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,970 円26 億円 | 305 円4 億円 | −12.7% | −1.4% | 2,275 円30 億円 |
今の株価時価総額 2,606 円35 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.3% を下回るほど割高。
楽観 8% 内航船の建て替えの波を取り込む 利益 7 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 5,290 円71 億円
内航船は船齢14年を超える船が多く、建て替えの山が来る。環境規制に合う低燃費の新しい機関が採用され、主機関の台数は1.15倍、単価は資材の値上がりを転嫁して1.36倍になる。利益率は4%と、長い赤字から抜け出す。
部品と修理は納めた機関の数に比例して増え、値上げも通る。利益率は9%だ。
ほぼ償却の済んだ機械を新しい値段で更新するため、償却費は増える。それでも営業利益は9億円に迫り、純利益は6.5億円になる。配当は増え、10年の還元は8億円。それでもROEは5%に届かず、資本コストの9%に遠い。政策保有株の売却が進めば、その分は別に価値に加わる。
- 舶用内燃機関(主機関):数量 46.0(主機関の納入台数(台))× 価格 1.29(1台あたりの平均単価(億円))→ 売上 59 億円・営業利益 2 億円。台数1.15倍・単価1.36倍・利益率4%
- 部分品・修理工事ほか:数量 34.5(部品・修理の件数(千件))× 価格 2.06(1千件あたりの平均売上(億円))→ 売上 71 億円・営業利益 6 億円。件数1.15倍・単価1.36倍・利益率9%
倍率:事業の純利益 7 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.6% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 71 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:内航船の建て替えの山、環境規制に合う新しい機関の採用、部品と修理の値上げがそろう必要がある。2008年3月期に営業利益率10%の実績はあるが、それ以来5%に届いたことがない。
やや楽観 20% 部品と修理で稼ぎ、主機関は赤字を脱する 利益 4 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 3,422 円46 億円
主機関の受注残が積み上がり、工場の稼働が上がる。値上げの転嫁も少しずつ進み、主機関はわずかな黒字に戻る。台数は1.05倍、単価は物価並みの1.34倍だ。
部品と修理は、納めた機関が長く使われるほど増える。件数は1.08倍、利益率は7.5%になる。潤滑油の清浄装置やバイオ燃料も小さく育つ。
営業利益は5億円台、純利益は4億円台だ。配当は年0.5億円前後に戻し、10年の還元は6億円。自己資本は130億円台に積み上がるが、その4分の1は政策保有株の含み益である。焼津の工場の機械の更新は、借入でなく手元の現金で賄える範囲にとどまる。
- 舶用内燃機関(主機関):数量 42.0(主機関の納入台数(台))× 価格 1.27(1台あたりの平均単価(億円))→ 売上 53 億円・営業利益 1 億円。台数1.05倍・単価1.34倍・利益率1%
- 部分品・修理工事ほか:数量 32.4(部品・修理の件数(千件))× 価格 2.02(1千件あたりの平均売上(億円))→ 売上 66 億円・営業利益 5 億円。件数1.08倍・単価1.34倍・利益率7.5%
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 3.2% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 46 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:会社は部品と修理の受注拡大を柱に据え、主機関の受注残は1年で49%増えた。値上げの転嫁が少しずつ進む形にした。過去の実績から、利益率の山は低めに置いた。
中立 37% 部品と修理が支え、主機関は赤字が続く 利益 2 億円 · PER 10.8 倍 · 株価時価総額 1,831 円25 億円
内航の船の数は人口と貨物の量に合わせて細り、主機関の台数は0.95倍になる。資材と人件費は上がるが、競合の阪神内燃機工業やヤンマーと値段で競い、転嫁は遅れる。単価は1.30倍、利益率はマイナス2%だ。
部品と修理は台数が横ばいで、単価は1.32倍、利益率は6%とみる。
ほぼ償却の済んだ機械は、更新のたびに新しい値段で償却が足される。会計の利益は物価で膨らんで見えるが、更新の投資で現金は細る。
営業利益は2.6億円、配当と助成金を足して純利益は2.3億円だ。配当は年0.4億円ほどで、10年の還元は4.5億円。ROEは2%にとどまる。
- 舶用内燃機関(主機関):数量 38.0(主機関の納入台数(台))× 価格 1.24(1台あたりの平均単価(億円))→ 売上 47 億円・営業利益 −1 億円。台数0.95倍・単価1.30倍・利益率−2%
- 部分品・修理工事ほか:数量 30.0(部品・修理の件数(千件))× 価格 1.99(1千件あたりの平均売上(億円))→ 売上 60 億円・営業利益 4 億円。件数横ばい・単価1.32倍・利益率6%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 1.9% が k 9.25% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.8 倍。全体の PER 10.81 倍、時価総額 24 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:主機関は1990年代から値上げを転嫁しにくく、過去12年の営業利益率はほぼゼロの近くにある。部品と修理の稼ぎで全社が小さな黒字を保つ姿が最も自然とみた。
やや悲観 22% 主機関の受注が細り、赤字が広がる 利益 0 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 598 円8 億円
内航の新造船の発注が途切れ、主機関の台数は0.8倍に減る。値上げは通らず、単価は1.22倍、利益率はマイナス5%だ。
部品と修理も、廃船が進むほど件数が減る。件数は0.9倍、利益率は3%に下がる。
営業損益は赤字に近く、配当と助成金で純利益はほぼゼロだ。配当は止まりがちで、10年の還元は2億円にとどまる。焼津の工場の稼働は落ち、ほぼ償却の済んだ機械を更新する余力も乏しい。
自己資本は108億円あるが、その3割は政策保有株の含み益だ。稼ぐ力はほとんど無く、残る価値は売れる株と現金に限られる。その株も、売るかどうかを決めるのは経営だ。少数株主の手に届く分は小さい。
- 舶用内燃機関(主機関):数量 32.0(主機関の納入台数(台))× 価格 1.16(1台あたりの平均単価(億円))→ 売上 37 億円・営業利益 −2 億円。台数0.8倍・単価1.22倍・利益率−5%
- 部分品・修理工事ほか:数量 27.0(部品・修理の件数(千件))× 価格 1.89(1千件あたりの平均売上(億円))→ 売上 51 億円・営業利益 2 億円。件数0.9倍・単価1.25倍・利益率3%
倍率:稼ぐ力(純利益約0.2億円÷k)は約2億円。ジャパンエンジン株を除く政策保有株の税後から純負債を引いた額に戻り方0.5を掛けた床(約8億円)の方が大きく、今の自己資本109.6億円の0.073倍に置いた。
確率:2026年3月期の主機関の受注は43%減った。受注残が尽きた後の谷は過去にも何度も来ており、2015年・2019年・2021年に営業赤字を出している。
悲観 13% 内航の主機関から押し出される 利益 −1 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 411 円6 億円
内航の船は船員の不足と貨物の減少で数が減る。アンモニアや水素など新しい燃料への転換で、開発の資金に勝る大手が主機関の注文をさらう。赤阪鐵工所の台数は0.6倍に縮み、単価は1.10倍しか上がらない。利益率はマイナス10%だ。
部品と修理も件数が0.75倍に減り、利益は出ない。
営業損失は2.5億円に達し、配当で埋めても赤字が続く。配当は止まり、10年の還元は1億円にとどまる。
赤字の穴埋めに政策保有株を売り、その分の価値も細る。残る価値は小さい。焼津の工場は部品と修理のために小さく残るが、株主に報いる力は失われる。
- 舶用内燃機関(主機関):数量 24.0(主機関の納入台数(台))× 価格 1.05(1台あたりの平均単価(億円))→ 売上 25 億円・営業利益 −3 億円。台数0.6倍・単価1.10倍・利益率−10%
- 部分品・修理工事ほか:数量 22.5(部品・修理の件数(千件))× 価格 1.74(1千件あたりの平均売上(億円))→ 売上 39 億円・営業利益 0 億円。件数0.75倍・単価1.15倍・利益率0%
倍率:赤字で稼ぐ力の床は無い。ジャパンエンジン株を除く政策保有株の税後から赤字で膨らむ純負債を引き、戻り方0.5を掛けた床(約5.5億円)で、今の自己資本109.6億円の0.05倍に置いた。
確率:内航の船の数の減少、燃料の転換に乗り遅れること、大手の機関メーカーとの価格競争が重なる構造的な負け。部品と修理は納めた機関が動く限り残るので1割強にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
舶用内燃機関(主機関)
内航船や近海船を動かす中速の主機関(ディーゼルエンジン)。静岡県焼津の工場で鋳物から組み立てまで一貫して作り、造船所や船主に納める。
| 数量主機関の納入台数(台) | 価格1台あたりの平均単価(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 0.95 | 38 | −3 |
| 10 年後 中立 | 38.0 | 1.24 | 47 | −1 |
取り方:単一セグメントで内訳の開示は無い。2026年3月期の売上83.34億円のうち、主機関を約38億円(受注残と部分品の受注45億円から推定)、1台約0.95億円で約40台と置いた推定。営業損失1.88億円は、値上げを転嫁できない主機関に寄ると置いた。
部分品・修理工事ほか
納めた主機関の部品の販売と修理工事、鋳物・機械加工品、潤滑油清浄装置、バイオディーゼル燃料などの新規事業。
| 数量部品・修理の件数(千件) | 価格1千件あたりの平均売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 1.51 | 45 | 1 |
| 10 年後 中立 | 30.0 | 1.99 | 60 | 4 |
取り方:2026年3月期の部分品及び修理工事の受注45.46億円(短信)を売上の目安とし、陸上部門と新規事業を含めて約45億円。件数の開示は無く、1件約15万円として約3万件と置いた推定。
リスクと懸念
値上げを転嫁できない構造
資材と人件費、購入品は上がり続けるが、造船所と船主は値上げを受け入れにくい。2026年3月期は原価率が大幅に悪化し、営業赤字に落ちた。受注残が増えても、転嫁が進まなければ売るほど損が出る。
主機関の受注の山谷
主機関の受注は2026年3月期に43%減った。内航船の建造は数年おきに山と谷があり、受注残が尽きた後の谷で赤字が続いた年が過去に何度もある。
内航の船の数の減少
国内の貨物は人口とともに細り、船員は高齢化で不足している。船の数が減れば、主機関だけでなく部品と修理の件数も細る。
燃料の転換と開発の負担
アンモニアや水素、バイオ燃料に合うエンジンの開発には大きなお金がかかる。開発に遅れれば、大手に主機関の注文を奪われる。
政策保有株の値下がり
投資有価証券50億円の半分強はジャパンエンジン株で、造船の好況で3倍以上に上がった。好況が終われば含み益は大きく縮み、自己資本も減る。
設備の更新
工場の機械はほぼ償却が済んでいる。新しい値段で更新すれば償却費は増え、現金が出ていく。利益の薄い会社には重い負担になる。
今後の分かれ目
- 主機関の値上げが通り、営業利益率が2期続けて3%を超えたら
- 転嫁の構造が変わったとみて、やや楽観の確率を厚くする。
- 政策保有株の縮減の数値目標と、売却代金の還元の方針が示されたら
- 売る分の税後を価値に足し、戻り方を上げる。
- 主機関の受注残が減り始め、営業赤字が2期続いたら
- やや悲観の確率を厚くする。
- 次世代の燃料のエンジンで大口の受注を取ったら
- 主機関の台数を上げ、楽観側の確率を厚くする。
- ジャパンエンジン株が大きく値下がりしたら
- 悲観側の床を見直す。本業の価値は変えない。
見ておくもの
- 主機関の受注高と受注残
- 部分品・修理工事の受注
- 営業利益率と値上げの転嫁
- 政策保有株の売却と使い道
- 配当の方針
- 設備の更新の投資
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、主機関と部品・修理の数量と単価、利益率から10年後の利益を積んだ。ROEはどの筋書きでも資本コスト9.25%に届かないので、PERは1÷k(約11.1倍)を上限に利益の質で7〜9割に置いた。政策保有株は配当が利益に入り、売る数値の方針も無いので価値に足さず、悲観側の床にだけジャパンエンジン株を除いた分の税後を戻り方0.5で数えた。今の時価総額が政策保有株で説明されていても、それには寄せていない。中立のPBRが0.15倍と低いのは、自己資本の3割が足さない政策保有株の含み益で、本業のROEが2%しかないためだ。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→10.81 倍・やや楽観 PER 9.3→10.81 倍・中立 PER 8→10.81 倍)。
資本コスト 9.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。