結論
石川製作所は、機雷や魚雷などの防衛機器と、段ボールの製函機械を作る会社だ。売上の8割近くが防衛機器で、防衛省が売上の半分を占める。筆者の結論は、本質価値は今の時価総額を下回る「やや割高」。理由は、防衛の追い風で利益が山にある一方、増産のための借入が重く、財務の余裕が小さいことだ。
足元は好調だ。2026年3月期の売上は14%、営業利益は9割近く増え、防衛機器の利益率は15%に迫った。ただし受注は前年を3割以上割り、会社は2027年3月期の営業利益を2割減と見ている。
財務は危うい。営業キャッシュフローは2期連続の赤字で、短期借入は111億円と自己資本の2倍近い。自己資本比率は23%に下がった。
防衛の参入障壁は高く、需要も当面は強い。しかし、10年先まで山の利益が続くとは考えにくい。
筆者がいちばん気にしているのは、利益の大きさではなく、そこへ至る資金の流れだ。利益が出ても現金が出ていく構図が、2期続いている。この流れが反転する確証が出るまでは、評価を厚くできない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、事業と財務を分けて見る必要がある会社だ。防衛の事業は、参入障壁が高く、需要も強い。ここだけを見れば、持ちたい事業だ。
しかし財務が違う。自己資本61億円に対し、借入が128億円ある。営業キャッシュフローは2期連続の赤字で、利益は出ても現金が出ていく。山の利益の最後にあるのは、借入の返済と金利の上昇だ。利益が減れば、借入の重さが一気に前面に出る。
株主のものになる利益は、年に数億円だ。足元の最高水準の利益が10年続くとは筆者は考えない。
安全域は薄い。悲観の姿では、売れる資産が借入に届かない。わからない点は、防衛予算が2027年度のあとにどう動くかだ。借入が減り、営業キャッシュフローが黒字に戻る確証が出るまで、評価は上げられない。防衛の事業が良いことと、株価が妥当なことは、別々に考える必要がある。
何で稼ぐ会社か
稼ぎ口の中心は、防衛機器だ。機雷、魚雷、地雷といった水中兵器と、航空機に載せる電子機器を作る。1954年に防衛装備品の製造許可を取った老舗で、国内で作れる会社は限られる。売上の半分強が防衛省、2割弱が三菱重工業だ。納入は数年に一度の大型の案件が中心で、売上は件数と時期で大きく動く。
二つ目の稼ぎ口が、紙工機械だ。段ボールの箱を作る印刷・製函の機械で、レンゴーを含む段ボール会社が買う。レンゴーは議決権の約2割を持つ大株主でもある。売上は27億円と小さく、国内の段ボール需要が縮む中で、赤字が続いている。
三つ目が、他社の製品を作る受託生産で、売上は11億円ほどだ。
防衛機器の仕事は、受注から納入まで1年以上かかる。完成までの仕掛品と在庫を先に積むため、運転資金が膨らみやすい。棚卸資産は52億円ある。納入と代金の回収が年度末に寄ると、営業キャッシュフローが大きく赤字になる。
従業員は石川県白山市の本社と工場に集中しており、熟練の技能者が競争力の源だ。人手の確保と技能の継承が、増産のボトルネックになる。
優良さと弱いところ
堀は、防衛装備品の製造許可と、長年の実績だ。機雷や魚雷は、設計から検査まで厳しい基準があり、新規の参入は難しい。防衛省も供給の途絶を避けたいので、既存の会社と長く付き合う。ただし顧客が防衛省と三菱重工の2社に偏り、値段の交渉は顧客に有利になりやすい。
収益性は上向いた。営業利益率は2022年3月期の1%台から、2026年3月期の7.1%へ上がった。過去の最高水準だ。防衛機器の利益率は15%近い。ただし紙工機械の赤字と全社費用で、全体は7%台にとどまる。
財務は弱い。自己資本は61億円に対し、借入は約128億円で、その大半が短期だ。営業利益で支払利息の8倍しか稼げていない。借入の金利が上がる局面では、利益が削られる。
経営は増産の投資に積極的だが、資金の大半を借入に頼る。配当は利益の2割で、株主への還元は小さい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
防衛の市場は、国の予算で決まる。2023年度から5年で43兆円の計画が始まり、2027年度に防衛関連の支出を国内総生産の2%へ引き上げる目標だ。機雷や魚雷のような水中の装備と、艦艇・航空機の電子機器は、島しょ防衛と海上交通の守りの要になる。需要は当面強い。
問題は、その先だ。2027年度で計画が終わったあとの予算は、財政の制約の中で読めない。足元で受注が前年を3割強割り込んでいるのも、案件の時期のずれを映している。防衛の仕事は、予算の増額を受注に変える作業に時間がかかる。
競争の形は、国内の寡占だ。三菱重工、川崎重工、IHI、日本電気などの大手が主契約者で、石川製作所は部品や装備の専門の中堅だ。大手との関係が売上の2割弱を占め、大手の下請けの面もある。
段ボールの機械は、国内の段ボール需要が人口減と通販の包装の簡素化で伸びない。10年でみて、防衛は増え、紙工機械は縮むと筆者は見る。
中国の海軍力の拡大と海上交通の緊張は、水中装備の需要を長期で支える。ただし需要が強いことと、会社が増産に成功することは別の話だ。人手と設備の制約の中で、納入の遅れが利益を削るおそれもある。
資本政策と M&A
還元は小さい。2026年3月期の配当は、前期の2倍に当たる年1億円強で、配当性向は2割ほどだ。2027年3月期も同じ水準を計画する。自社株買いは行っていない。利益の大半を増産の投資と運転資金に回している。
資金は、金融機関からの借入に頼る。2026年3月期は営業キャッシュフローが34億円の赤字で、財務キャッシュフローで39億円を調達した。短期借入が111億円まで増え、借り換えの条件に敏感な構造だ。増資や資産の売却の可能性は、無視できない。
レンゴーが議決権の約2割を持つ大株主で、紙工機械の顧客でもある。買収の可能性は、防衛の許認可があるぶん、民間の買い手には現実的でない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
防衛費は2027年度に国内総生産の2%を目指す計画で、機雷や魚雷のような水中装備の需要は当面強い。参入には製造許可が要り、国内で作れる会社は限られる。受注残は230億円あり、数年の売上を支える。
2026年3月期の営業利益は9割近く増え、防衛機器の利益率は15%近い。第1四半期の営業利益も前年を35%上回った。増産の投資が実を結べば、借入も営業キャッシュフローで返せる。
紙工機械の赤字が止まれば、全体の利益率はさらに上がる。レンゴーという安定した大株主がいる点も、経営の安定につながる。防衛の仕事は、一度入れば更新と整備で長く続く。需要が確かな事業に、借入を使って先に投資するのは、合理的な判断だ。強い需要に先回りして設備を整えた会社が、その後の予算の継続で報われる例は多い。島しょ防衛の整備が長く続く中で、水中装備の更新と補充の需要は、数十年の単位で積み上がる。国内で機雷や魚雷を継続して作れる会社は限られ、防衛省にとって供給の途絶は避けたい。この立場の強さが、値段の交渉でも効く。
慎重な見方
強気の見方は、山の利益を水準と取り違えている。利益は山にいる。会社自身が2027年3月期の営業利益を2割減と見ており、受注も前年を3割強割り込んだ。受注残は1年で40億円ほど減った。防衛予算の増額が一巡する2027年度のあとは読めない。
財務が重い。営業キャッシュフローは2期連続の赤字で、短期借入は自己資本の2倍近い。借入の金利が上がれば、利益は数億円削られ、借り換えに失敗すれば増資で株主の持ち分が薄まる。
顧客が防衛省と三菱重工の2社に偏り、値段の交渉は顧客に有利だ。紙工機械は赤字が続く。配当は利益の2割で、増える見込みが薄い。防衛費の増額が一巡した時に、増産で積んだ設備と人員は、固定費として重くのしかかる。会社の予想も、2027年3月期の利益は減るとしている。顧客が二つに偏る事業では、一件の案件のずれで通期の数字が大きく動く。防衛の需要が強くても、自社の財務が耐えられなければ、株主は報われない。借入を返す順番は、株主より先にある。
どちらに重みを置いたか
防衛の事業の強さは認めるが、借入の重さと山の利益が価値を押し下げる。確率は中立に厚く、やや悲観を4分の1弱に置いた。強気の見方では、受注残の厚みが説得力を持つが、足元の受注の減少を打ち消せない。弱気の見方では、営業キャッシュフローの赤字の続き方が重い。両者を比べて、財務の脆さを重く見た。防衛の需要の強さは、事業の価値を支えるが、株主の取り分を保証しない。借入を返す順番が、株主より先にある。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,576 円161 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 326 円20 億円)。 今の値に割り戻すと 1,415 円88 億円、今との差 −12.0%、 期待の年率 +6.1%(資本コスト 8.0%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 6,499 円405 億円 | 561 円35 億円 | +339.1% | +15.9% | 565 円35 億円 |
| やや楽観 | 22% | 4,343 円271 億円 | 449 円28 億円 | +198.0% | +11.5% | 1,054 円66 億円 |
| 中立 | 37% | 2,598 円162 億円 | 353 円22 億円 | +83.5% | +6.3% | 1,092 円68 億円 |
| やや悲観 | 23% | 457 円29 億円 | 192 円12 億円 | −59.6% | −8.7% | 149 円9 億円 |
| 悲観 | 10% | 343 円21 億円 | 80 円5 億円 | −73.7% | −12.5% | 42 円3 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,576 円161 億円 | 326 円20 億円 | +80.5% | +6.1% | 2,902 円181 億円 |
今の株価時価総額 1,608 円100 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 8% 防衛費の拡大が続き、機雷・魚雷の増産が追いつく 利益 24 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 6,499 円405 億円
防衛費の拡大が2027年度以降も続き、機雷・魚雷・航空機搭載の電子機器の調達が増える。受注残は再び積み上がり、納入件数は10年で6割増える。値段は物価に加え、仕様の高度化で1.4倍になる。営業利益率は10%近くまで上がる。
増産に必要な設備投資は、利益と借入で賄える。営業キャッシュフローがプラスに戻り、借入の増加が止まる。紙工機械は小さく黒字を保つ。
配当は利益の3割に引き上がり、財務は改善する。ただしこの姿は、防衛予算の継続と、一社でこなせる生産能力の拡大が両方そろったときだけ現れる。筆者は低い確率と見る。
- 防衛機器:数量 44.8(納入・契約の件数(件・年、推定))× 価格 7.10(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 318 億円・営業利益 45 億円。44.8×7.098、営業利益率 14.0%
- 紙工機械(段ボール製函印刷機械):数量 18.0(販売台数(台・年、推定))× 価格 2.01(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 36 億円・営業利益 2 億円。18.0×2.01、営業利益率 6.0%
- 受託生産・その他:数量 192(受託加工の作業量(千時間・年、推定))× 価格 0.13(1 千時間あたり売上(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 2 億円。192.0×0.134、営業利益率 8.0%
倍率:事業の純利益 24 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.0% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.3 倍。全体の PER 16.29 倍、時価総額 396 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防衛費が2027年度以降も伸び、受注が積み上がり、増産投資の借入を利益で返せる、という条件がそろう必要がある。受注は足元で前年を大きく割っており、確度は低い。
やや楽観 22% 防衛は堅調に伸び、借入の増加は止まる 利益 17 億円 · PER 15.3 倍 · 株価時価総額 4,343 円271 億円
防衛費が高い水準で続き、納入件数は10年で4割増える。値段は物価並みか少し上回り、営業利益率は8%台に上がる。営業キャッシュフローがプラスに戻り、借入の増加が止まる。
紙工機械は赤字を脱し、受託生産も増える。本社の費用は物価の分だけ増える。
還元は配当性向2〜3割に引き上がるが、増産の投資を優先する。財務は改善するが、自己資本比率は3割台にとどまる。筆者は、これを現実に近い上振れと見る。納入が年度末に寄る問題は残るが、運転資金の波は縮み、営業キャッシュフローは黒字に戻る。値段も、仕様の高度化で物価の分を上回って通る年がある。
- 防衛機器:数量 39.2(納入・契約の件数(件・年、推定))× 価格 6.95(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 272 億円・営業利益 35 億円。39.2×6.9459、営業利益率 13.0%
- 紙工機械(段ボール製函印刷機械):数量 17.1(販売台数(台・年、推定))× 価格 2.01(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。17.1×2.01、営業利益率 4.0%
- 受託生産・その他:数量 176(受託加工の作業量(千時間・年、推定))× 価格 0.13(1 千時間あたり売上(億円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 2 億円。176.0×0.134、営業利益率 7.0%
倍率:事業の純利益 17 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.5% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.3%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.3 倍。全体の PER 15.26 倍、時価総額 262 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防衛費の高止まりと受注残の厚みは、足元の数字が裏づけている。受注の山が続くなら、現実的な範囲に入る。
中立 37% 防衛は高止まりで緩やかに増え、利益率は6%台 利益 11 億円 · PER 13.7 倍 · 株価時価総額 2,598 円162 億円
防衛費は高い水準で続き、当社の納入件数は10年で25%増える。機雷や魚雷、航空機搭載の電子機器は参入できる会社が限られる。値段は物価並みに上がるが、増産に必要な人手と設備のコストを吸収し、営業利益率は6%台にとどまる。足元の7%台は、納入が重なった年の山と見る。
紙工機械は、国内の段ボール需要が縮み、数量が5%減る。利益は薄く、ほぼ損益ゼロで推移する。受託生産は横ばいに増える。
借入の金利が上がる分が、利益を数億円削る。還元は配当性向2割強を保ち、利益の大半を設備と運転資金に回す。
全体では、売上が290億円台、営業利益が20億円近くになる。
- 防衛機器:数量 35.0(納入・契約の件数(件・年、推定))× 価格 6.79(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 238 億円・営業利益 29 億円。35.0×6.7938、営業利益率 12.0%
- 紙工機械(段ボール製函印刷機械):数量 17.1(販売台数(台・年、推定))× 価格 2.01(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 1 億円。17.1×2.01、営業利益率 2.0%
- 受託生産・その他:数量 160(受託加工の作業量(千時間・年、推定))× 価格 0.13(1 千時間あたり売上(億円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 1 億円。160.0×0.134、営業利益率 6.0%
倍率:事業の純利益 11 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.6% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.7 倍。全体の PER 13.66 倍、時価総額 156 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:防衛費は2027年度までの計画で大きく増え、その後は高止まりと見る。受注残は230億円あるが、足元の受注は前年を割っており、増産には借入が要る。過去の利益率と最も近い水準に置き、厚く置いた。
やや悲観 23% 防衛予算が頭打ちになり、増産の投資だけが残る 利益 2 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 457 円29 億円
防衛費の増額が2027年度で一巡し、受注は頭打ちになる。納入件数は10年でほぼ横ばいで、値段は物価の分を取り切れない。増産のために積んだ人手と設備が、固定費として残る。営業利益率は3%台に落ちる。
紙工機械は赤字が続き、数量は2割減る。受注残が減り、納入が遅れる年は、運転資金が膨らんで借入が増える。
配当は2割の性向を保てず、減らす。借入の金利は、借り換えのたびに上がる。短期借入が多いので、金利の上昇が利益を直撃する。財務の余裕が小さく、投資の判断も縛られる。受注が戻っても、納入が遅れれば運転資金の負担が先に来る。熟練の技能者の確保も、重い課題として残る。
- 防衛機器:数量 28.0(納入・契約の件数(件・年、推定))× 価格 6.49(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 182 億円・営業利益 18 億円。28.0×6.4896、営業利益率 10.0%
- 紙工機械(段ボール製函印刷機械):数量 14.4(販売台数(台・年、推定))× 価格 1.80(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 −1 億円。14.4×1.8、営業利益率 -2.0%
- 受託生産・その他:数量 144(受託加工の作業量(千時間・年、推定))× 価格 0.13(1 千時間あたり売上(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 1 億円。144.0×0.125、営業利益率 3.0%
倍率:稼ぐ力は小さく、借入が重いので、価値は自己資本の半分ほどに落ちる。純現金は無く、売れる資産(棚卸・有形固定資産)も借入に届かないので、資産の床は使えない。防衛省との契約と受注残の価値を見て、今の自己資本61億円に0.467倍を掛けた(稼ぐ力の純利益2億円÷k 8%=約28億円の範囲)。借入を含む EV で見ても営業利益の20倍で、割安とは言えない。
確率:防衛費は2027年度の計画のあとが読めない。足元の受注は前年より3割強減り、営業キャッシュフローは2期連続で赤字で、借入に頼る構図が続いている。
悲観 10% 防衛の受注が細り、短期借入の借り換えが詰まる 利益 −8 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 343 円21 億円
防衛費が頭打ちから減額に転じ、受注が細る。納入件数は3割減り、値段は物価ほど上がらない。営業利益率は赤字になる。増産に積んだ設備と在庫が重荷になり、運転資金が詰まる。
短期借入111億円の借り換えが難しくなる。会社は増資や資産の売却で資金を手当てし、株主の持ち分は大きく薄まる。
この姿では、稼ぐ力ではなく手持ちの資産が借入を下回り、株主の取り分は小さい。ただし防衛省との契約と受注残の価値は残るので、ゼロにはならない。それでも、株主の取り分は自己資本の3分の1に満たない水準まで下がり、増資に応じるかどうかが焦点になる。
- 防衛機器:数量 19.6(納入・契約の件数(件・年、推定))× 価格 5.83(1 件あたり売上(億円・名目))→ 売上 114 億円・営業利益 6 億円。19.6×5.8305、営業利益率 5.0%
- 紙工機械(段ボール製函印刷機械):数量 10.8(販売台数(台・年、推定))× 価格 1.65(1 台あたり売上(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 −1 億円。10.8×1.65、営業利益率 -6.0%
- 受託生産・その他:数量 112(受託加工の作業量(千時間・年、推定))× 価格 0.11(1 千時間あたり売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。112.0×0.11、営業利益率 0.0%
倍率:稼ぐ力は赤字で、価値は自己資本の3分の1ほどに落ちる。借入128億円に対し売れる資産(棚卸52億円・有形固定資産31億円)は届かず、純現金も無いので、資産の床は使えない。防衛省との契約と受注残の価値が残ることを見て、今の自己資本61億円に0.35倍を掛けた。
確率:防衛予算の見直しと、営業キャッシュフローの赤字が続く中での借り換えの失敗が重なる姿。確度は低いが、短期借入が自己資本の2倍近い構造は無視できない。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
防衛機器
機雷・魚雷・地雷などの水中兵器と、航空機搭載の電子機器を、防衛省と三菱重工業向けに作る。
| 数量納入・契約の件数(件・年、推定) | 価格1 件あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 28.0 | 5.07 | 142 | 21 |
| 10 年後 中立 | 35.0 | 6.79 | 238 | 29 |
取り方:防衛機器の売上は2026年3月期に142億円(売上の77%)、利益は21億円(利益率14.8%、全社費用を配分する前)。防衛省との公共調達は2017〜2023年度で134件、年約19件で、三菱重工業向けを加えて年約28件、1件あたり平均約5億円と推定した。件数は開示が無く推定。受注残は230億円、連結の受注高は前期比35.5%減。
紙工機械(段ボール製函印刷機械)
段ボールの箱を作る印刷・製函の機械。大株主のレンゴーなど段ボール会社が顧客。
| 数量販売台数(台・年、推定) | 価格1 台あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 18.0 | 1.50 | 27 | 0 |
| 10 年後 中立 | 17.1 | 2.01 | 34 | 1 |
取り方:売上27億円、営業損益は0.2億円の赤字(前期比で売上10.8%減、受注22%減)。1台あたり約1.5億円とみて、年約18台と推定した。開示は金額のみ。
受託生産・その他
他社の製品の受託加工と、その他の小さな事業。
| 数量受託加工の作業量(千時間・年、推定) | 価格1 千時間あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 160 | 0.10 | 16 | 1 |
| 10 年後 中立 | 160 | 0.13 | 21 | 1 |
取り方:受託生産11億円とその他約5億円の合計(連結売上185億円との差から算出)、利益は受託生産の0.8億円。1時間あたり約1万円とみた推定。開示は金額のみ。
リスクと懸念
防衛予算の見直し
2027年度までの計画のあとの予算は読めない。受注が前年を3割強割り、受注残も1年で40億円ほど減っている。増額が止まれば、増産の投資が重荷になる。
短期借入と借り換え
短期借入は111億円で自己資本の2倍近い。営業キャッシュフローは2期連続の赤字だ。借り換えの条件が悪化すれば、増資で株主の持ち分が薄まる可能性がある。
顧客の偏り
防衛省が売上の52%、三菱重工業が17%を占める。納入時期や仕様の変更で、売上と利益は年ごとに大きく動く。
運転資金の重さ
防衛機器は受注から納入まで長く、仕掛品と在庫を先に積む。納入と回収が年度末に寄ると、営業キャッシュフローが大きく赤字になる。
金利の上昇
借入の大半は短期で、借り換えのたびに金利が上がる。借入が120億円規模のままなら、金利の上昇で年に数億円の利益が削られる。
紙工機械の赤字
段ボール需要が国内で縮み、紙工機械は赤字が続く。受注は前期比22%減った。再建か撤退の判断が遅れれば、全社の足を引っ張る。
今後の分かれ目
- 防衛省が2027年度のあとも防衛費を増やし続ける計画を示したら
- 受注が積み上がる。数量を上げ、楽観とやや楽観の確率を上げてよい。
- 営業キャッシュフローが2期続けて黒字になり、短期借入が減り始めたら
- 財務の改善が確かになる。借金の k を下げ、悲観の確率を下げる。
- 受注が2期続けて前年を下回り、受注残が200億円を割ったら
- 利益の山が過ぎている。やや悲観の確率を上げる。
- 会社が増資や資産の売却を発表したら
- 財務の余裕が尽きている。希薄化を織り込み、悲観の確率を上げる。
- 紙工機械の再建か撤退が発表されたら
- 全社の利益率が1ポイントほど変わる。中立の利益率を見直す。
見ておくもの
- 防衛機器の受注高と受注残
- 営業キャッシュフローと短期借入の推移
- 防衛省の予算(2027年度以降の見通し)
- 自己資本比率
- 紙工機械の受注と損益
倍率と資本コストの決め方
倍率は、k 8%と長期の成長率4%から、利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)で決めた。中立のROEは9%ほどで k をわずかに超えるので、PERは下限の1÷k(11.8倍)に置いた。今の株価や過去のPER・PBRは使っていない。今の株価が自己資本の1.6倍で、利益が山にあることは、倍率の根拠にしていない。借入が時価総額を超えるので、EV÷営業利益も見たが、20倍を超える水準ではない(中立で借入を含め約6倍)。減価償却は物価で増やさず、今ある設備は取得時の値段のままで、増産の設備投資分だけ新しい値段で足した。設備の投資は年7億円と償却を上回り、借入の増加で賄うため、利払いを純利益に入れた。純利益÷営業利益は過去の中央値0.75に近づけた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14→16.29 倍・やや楽観 PER 12.5→15.26 倍・中立 PER 11.8→13.66 倍・やや悲観 PBR 0.44→0.467 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。