結論
トリニティ工業は、自動車工場の塗装ラインをつくる設備会社だ。内装・外装の樹脂部品に加飾(きれいな表面加工)をする部品事業も持つ。トヨタ自動車が議決権の36.6%を持ち、売上の過半はトヨタ系の商社を通じて入る。
筆者の結論は「適正」だ。10年後の中立の純利益は30億円ほど。これに資本コスト並みの低い倍率を掛け、余った現金を足すと、今の時価総額196億円に近い値になる。
強みは財務だ。純現金は100億円と時価総額の半分あり、自己資本比率は78%を超える。受注残も前の期末に10%増えた。設備事業は営業利益率が14%と、重い資本財にしては高い。
弱みは二つある。一つは需要の偏りで、売上の4割強をトヨタ系の商社2社が占める。もう一つは波の大きさだ。設備は一件が数十億円の受注生産で、今期の会社予想は営業利益が37%減る。
強気の筋書きは、トヨタ系の新工場向け塗装ラインの受注が続き、利益率が9%台に乗る展開だ。慎重な筋書きは、塗装工程そのものが簡素化され、設備の受注と部品の数量が同時に細る展開である。確率で重みづけした価値は、今の時価総額を6%ほど下回る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「財務の厚い、堅実な受注生産の会社」だ。借金がなく、純現金が時価総額の半分を占める。ここまでは評価できる。
オーナー利益、つまり事業を維持したうえで株主のものになる利益は、営業利益の8割ほど。設備事業は工場を持たない面もあり、投資の重さは軽い。一方、全社費用が約20億円と大きく、事業の利益52億円の4割が本社費で消える。
経営の資本配分は、堅実だ。配当を増やし、自社株買いも行い、現金を使い切っている。この姿勢は、少数株主にとって好ましい。ただし、トヨタという大株主の存在が、将来の資本政策の自由度を縛る。
安全域はどうか。現金は安全域になる。しかし事業の稼ぐ力は、資本コストに届かない。自己資本利益率は7%前後で、これを資本コスト並みの低い倍率で評価する。
筆者は、この会社を「悪くない会社だが、値段も悪くない」と見る。安く買えた時にだけ、持ち続けたい会社だ。割安と呼べる差は、今のところない。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は二つある。売上の約4分の3を占める設備事業と、約4分の1の自動車部品事業だ。
設備事業は、塗装プラントや塗装システム、熱や水・空気を有効に使う設備を設計・製作・据付までまとめて請け負う。1ラインが数十億円規模で、完成まで1年以上かかる案件もある。売上は294億円、営業利益は42億円で、営業利益率は14%に達する。
自動車部品事業は、センタークラスター、シフトパネル、インストルメントパネル、ハンドルなどの内装・外装部品を成形し、塗装する。軸になるのは「トライデコ」という、環境負荷の小さい三次元直接加飾とレーザー加飾の工法だ。売上は96億円、営業利益は11億円で、前の期は利益が19%減った。
顧客は、豊田通商が売上の25.5%、豊通マシナリーが18.8%を占める。トヨタ自動車そのものは2.9%だが、商社を通してトヨタ系の工場に納める形だ。受注残は99億円で、1年で10%増えた。
従業員は連結で約960人と小さい。研究開発費は8億円、2025年には技術開発センターを開いた。設備投資は前の期に26億円で、新しい工法の量産化に振り向けている。
全社の費用(本社と研究)が約20億円あり、2つの事業の利益52億円から引くと、連結の営業利益は32億円になる。
優良さと弱いところ
堀は狭いが、深い。トヨタ系の工場に塗装ラインを納める実績と、上流の設計から据付までを一貫して請け負う体制は、一度入れば長く続く。ライン1本が数十億円の案件を、実績のない会社に任せる客は少ない。
ただし、客は強い。受注は商社を通じてトヨタ系の投資計画に左右され、値段を決めるのは客だ。世界の塗装設備ではドイツのデュールが大手で、国内には大気社もある。トヨタ系の枠の外へ出るのは簡単でない。
資本効率は悪くない。営業利益率は過去12年の最高が前の期の8.2%で、自己資本利益率は10年の中央値が7%近い。2年前の営業利益率は7.6%、その前は3.3%と、振れは大きかった。
財務は強い。借金がなく、純現金が厚い。受注が崩れても、数年は耐えられる。配当は4年で2倍以上に増え、自社株買いも2017年と2022年に行った。2025年には、資本コストと株価を意識した経営の対応を開示した。
経営の構図も見ておきたい。トヨタが議決権の36.6%を持つため、少数株主に不利な買収には動きにくいが、トヨタが望めば完全子会社化もありうる。
結論として、強い客に依存するが、技術と財務で選ばれ続ける会社だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要の源は、自動車メーカーの工場投資だ。新しい工場を建てる、ラインを入れ替える、電気自動車の工場に切り替えるといった時に、塗装設備の受注が出る。数量は「ライン数」で、年によって大きく振れる。
2026年は受注が堅調だ。前の期の受注は3%増の395億円、期末の受注残は10%増えた。ただ、会社の今期の営業利益予想は20億円と、前の期から4割近く減る。受注の山が一巡し、売上の計上時期と原価の見え方が変わる影響が大きいとみる。
構造の変化は二つある。電気自動車の工場は、塗装工程を簡素化する動きがある。塗装を使わない外装、一体成形、塗装工程の短縮が進めば、塗装ラインの数と大きさが減りうる。もう一つは、環境規制だ。塗装は有機溶剤を使うため、省エネ・低排出の設備への更新需要がある。
競争は、世界のデュール、国内の大気社のような同業と、客の内製から来る。トヨタ系の枠は強いが、他の自動車メーカーの大型案件は取りにくい。
部品側は、車の内装の質感を上げる加飾の需要が支えだ。ただし、台数は国内生産の縮小で細りやすい。
業界全体の構図は、受注は波が大きいが、一度入れば長く続く固定客型の商売だという点にある。10年の見通しは、波を均して物価並みに伸びると置くのが妥当だ。
資本政策と M&A
還元は、配当を中心に引き上げてきた。年間の配当は4年で2倍以上に増え、純利益の4割ほどになる。自社株買いは2017年と2022年に行い、自己株は発行済みの11%にあたる。
純現金は100億円で、前の期の80億円から増えた。5年前も108億円で、この間に純利益の累計100億円ほどを、設備投資と配当・自社株買いで使い切った。現金を積み上げ続けているわけではない点は評価できる。
ただし、受注生産の設備事業は、前受金と運転資金の波が大きい。純現金の全部が自由に使えるお金ではない。売上の1.5か月分、約50億円は事業に必要な現金とみる。
M&Aは目立たない。政策保有株は上場株で約41億円と、時価総額の2割ほどある。配当は利益に入っているので、価値として別に足さない。
大株主はトヨタ自動車で、議決権の36.6%を持つ。完全子会社化の可能性は排除できない。ただし、買収の価格を決めるのはトヨタで、少数株主の取り分はその時の交渉しだいだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
この会社は、強い客と固い受注残に支えられている。期末の受注残は10%増えて99億円。会社予想は営業利益が37%減るが、前の期の実績は予想を大きく上回った。保守的な予想で、実績は上に出る。
設備事業の利益率は14%と、重い資本財にしては高い。ライン1本が数十億円で、実績のある会社でなければ任せられない。トヨタ系が新しい工場に投じる限り、受注は続く。
財務は盤石だ。純現金が100億円、自己資本比率が78%。景気が悪化しても受注の谷を耐え、技術開発センターで新しい加飾工法を育てている。トライデコの量産が軌道に乗れば、部品事業の利益率も戻る。
株主還元の姿勢も変わった。配当は4年で倍以上になり、資本コストを意識した経営の対応も開示した。トヨタの持分は、安定株主でもあり、買収を後押しする存在でもある。完全子会社化されれば、プレミアムが乗る可能性がある。
この条件がそろえば、営業利益率は9%台に乗り、純利益は45億円を超える。余った現金を足せば、価値は今の2倍を超える。
慎重な見方
受注の波が大きい。今期の会社予想は営業利益が20億円と、前の期の32億円から4割近く減る。第1四半期の営業利益は38%減だった。受注残が増えても、利益が計上されるまで時間がかかり、波は避けられない。
客は強く、偏っている。売上の4割強はトヨタ系の商社2社で、トヨタ自動車の投資計画が細れば、受注が同時に落ちる。値段を決めるのは客だ。
構造の変化も逆風だ。電気自動車の工場は塗装工程を簡素化する方向にあり、塗装ラインの数や大きさが減りうる。部品事業も、国内の自動車生産が縮めば数量が細る。前の期は部品の利益が19%減った。
全社費用が約20億円と、事業の利益52億円の4割を占める。物価で費用が増えるのに、客の値下げ要求で価格転嫁が追いつかなければ、利益率は削られる。
自己資本利益率は7%前後と、資本コストの8.5%に届かない。ためた利益は額面ほどの価値を持たない。現金は厚いが、それは前受金と運転資金の波に対する備えでもあり、全部を株主のものとして数えるのは危うい。
どちらに重みを置いたか
筆者は、強気と慎重の言い分がほぼ釣り合うとみる。強気の根拠である財務の厚さと設備事業の高い利益率は本物だ。慎重の根拠である受注の波と客の偏りも、実績に裏づけられている。
そのため、中立に重みを置き、やや楽観を20%、やや悲観を26%とした。悲観の9%は、塗装工程の簡素化とトヨタ系投資の細りを映している。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 2,191 円354 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 575 円93 億円)。 今の値に割り戻すと 1,406 円227 億円、今との差 +17.5%、 期待の年率 +8.7%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 4,407 円712 億円 | 947 円153 億円 | +347.3% | +16.2% | 375 円61 億円 |
| やや楽観 | 20% | 3,157 円510 億円 | 743 円120 億円 | +225.8% | +12.5% | 780 円126 億円 |
| 中立 | 38% | 2,615 円423 億円 | 619 円100 億円 | +170.2% | +10.5% | 1,229 円199 億円 |
| やや悲観 | 26% | 829 円134 億円 | 415 円67 億円 | +3.9% | +0.4% | 323 円52 億円 |
| 悲観 | 9% | 464 円75 億円 | 186 円30 億円 | −45.7% | −5.9% | 58 円9 億円 |
| 加重平均 | 100% | 2,191 円354 億円 | 575 円93 億円 | +131.1% | +8.7% | 2,766 円447 億円 |
今の株価時価総額 1,197 円193 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 7% トヨタ系の新工場向け受注が続き、設備の利益率が15%に迫る 利益 49 億円 · PER 13.8 倍 · 株価時価総額 4,407 円712 億円
トヨタ系の新工場や電気自動車向けの塗装ラインの受注が途切れず、設備の数量は2割増える。ライン1本の単価は、省エネ・低排出の高機能化で物価を上回る1.38倍になる。設備の利益率は14.5%に上がる。
トライデコの量産が軌道に乗り、部品事業の数量は1割増え、利益率は12%に戻る。全社費用は物価並みに増えるが、売上が伸びる分、負担は軽くなる。
営業利益は61億円、営業利益率は9.6%と、前の期の8.2%を超える。純利益は49億円。配当性向は45%に上がり、10年の還元は約153億円だ。
ただし、この水準は過去に例がなく、客の投資が長く続く前提が要る。
- 設備(塗装プラント・塗装システム):数量 18.0(塗装ライン換算(本・推定))× 価格 27(1 ラインあたり売上(億円・名目))→ 売上 486 億円・営業利益 71 億円。ライン換算1.2倍・価格1.38倍、利益率14.5%
- 自動車部品(内外装・加飾):数量 0.9(搭載車両台数相当(百万台・推定))× 価格 163(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 143 億円・営業利益 17 億円。数量1.1倍・価格1.36倍、利益率12%
倍率:事業の純利益 48 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.8 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.8 倍 + 余った現金(戻り方込み)50 億円。全体の PER 13.82 倍、時価総額 712 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:トヨタ系の新工場・更新投資、トライデコの量産化、全社費用の抑制が重なる必要がある。波の大きい会社なので7%にとどめた。
やや楽観 20% 受注残が利益に変わり、会社の目標どおり利益率が8%に戻る 利益 38 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,157 円510 億円
前の期末に10%増えた受注残が順調に利益に変わり、設備の数量は1割増える。単価は物価に少し上乗せして1.36倍になる。設備の利益率は13.5%を保つ。
部品事業は、数量は横ばいで利益率が10.5%に戻る。営業利益は46億円、営業利益率は8.0%で、直近の高い水準を保つ。
純利益は38億円、10年の還元は約120億円。トヨタ系の投資が続く限り、波は小さく、利益は安定して積み上がる。
今期の営業利益の落ち込み(20億円)は一時的なもので、2年後には32億円規模へ戻る。
部品事業のトライデコは新しい車種に採用され、国内の生産縮小を単価の高い新製品で補う。全社費用は物価並みに増えるが、売上の伸びで薄まる。トヨタ系の取引は安定し、他の自動車メーカーからの引き合いも少しずつ増える。
- 設備(塗装プラント・塗装システム):数量 16.5(塗装ライン換算(本・推定))× 価格 27(1 ラインあたり売上(億円・名目))→ 売上 439 億円・営業利益 59 億円。ライン換算1.1倍・価格1.36倍、利益率13.5%
- 自動車部品(内外装・加飾):数量 0.8(搭載車両台数相当(百万台・推定))× 価格 161(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 129 億円・営業利益 14 億円。数量横ばい・価格1.34倍、利益率10.5%
倍率:事業の純利益 37 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.0% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)50 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 510 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注残の増加、前の期までの利益率の高さが続く、会社の計画に近い筋書き。過去の山(8.2%)に近いので20%に抑えた。
中立 38% 中立:受注は物価並みに伸び、利益率は7%台に落ち着く 利益 31 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 2,615 円423 億円
設備は、受注が波を打ちながら物価並みに伸びる。数量は横ばいで、単価は1.34倍になる。利益率は直近の14%から13%へ少し戻る。
部品は、国内の自動車生産の縮小で数量が5%減り、客の値下げ要求で単価は1.30倍にとどまる。利益率は10%で、前の期の11%より低い。
全社費用は物価で増え、約27億円になる。営業利益は36億円、営業利益率は7.0%。前の期の8.2%から少し戻るのは、全社費用が売上の伸びほど薄まらないからだ。
純利益は31億円。配当性向は4割で、10年の還元は約100億円。借金がないので、金利の上昇は現金の利息を増やし、利益を押し上げる。
「受注の波を乗り越えて、堅実に積み上げる会社」という姿が、中立の10年後だ。
- 設備(塗装プラント・塗装システム):数量 15.0(塗装ライン換算(本・推定))× 価格 26(1 ラインあたり売上(億円・名目))→ 売上 394 億円・営業利益 51 億円。ライン換算横ばい・価格1.34倍、利益率13%
- 自動車部品(内外装・加飾):数量 0.8(搭載車両台数相当(百万台・推定))× 価格 156(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 118 億円・営業利益 12 億円。数量0.95倍・価格1.30倍、利益率10%
倍率:事業の純利益 30 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.7% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)50 億円。全体の PER 12.5 倍、時価総額 422 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:設備は物価並みに伸び、部品は国内の縮小で微減、利益率は直近の高さから少し戻る。会社予想と過去の実績の中間にあたる中心。
やや悲観 26% 受注が細り、客の値下げ要求で利益率が3%台に落ちる 利益 14 億円 · PER 7.1 倍 · 株価時価総額 829 円134 億円
トヨタ系の投資が一巡し、設備の数量が1割減る。客の値下げ要求で単価は物価の上昇に届かず、1.30倍にとどまる。利益率は10%に下がる。
部品は、国内生産の縮小と電気自動車での内装の簡素化で数量が1割減り、利益率は7%になる。全社費用は物価で増え、約27億円のまま残る。
営業利益は15億円、営業利益率は3.3%。2023年3月期の10億円に近い、谷の水準だ。純利益は14億円で、配当は4割を守り、10年で約67億円になる。
財務は崩れず、純現金は残る。ただし、資本効率は3%台まで下がる。
受注残が細ると、設備の売上の計上は先送りされ、工場の稼働が下がる。固定費の重さが利益を直撃し、全社費用の負担感が増す。トヨタ系の枠で受注は途切れないが、大型案件が出にくく、採算の悪い案件を受けざるをえない局面も出る。
- 設備(塗装プラント・塗装システム):数量 13.5(塗装ライン換算(本・推定))× 価格 25(1 ラインあたり売上(億円・名目))→ 売上 344 億円・営業利益 34 億円。ライン換算0.9倍・価格1.30倍、利益率10%
- 自動車部品(内外装・加飾):数量 0.7(搭載車両台数相当(百万台・推定))× 価格 151(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 109 億円・営業利益 8 億円。数量0.9倍・価格1.26倍、利益率7%
倍率:事業の ROE 3.4%は k 8%を大きく下回る。PER の上限は 1÷k=11.76 倍で、やや悲観は上限の 6 割の 7.06 倍に置いた(7 割へは引き上げない)。余った現金は谷で食うので今の 0.75 倍の 37.5 億円とし、戻り方 1.0 で足した。
確率:受注の谷が長引き、部品の数量が減る筋書き。2023年3月期(営業利益率3.3%)の実績があるので26%を置いた。
悲観 9% 構造的に負ける:塗装工程が簡素化され、トヨタ系の投資も細る 利益 −5 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 464 円75 億円
電気自動車の工場で、塗装を使わない外装や一体成形が広がり、塗装ラインの数が3分の2に減る。トヨタ系の投資も、国内生産の縮小で細る。単価は物価の上昇にも届かず、1.20倍にとどまる。設備の利益率は5%に落ちる。
部品は、国内生産の縮小で数量が3割減り、利益率は2%に沈む。全社費用は人員の整理で22億円まで削るが、事業の利益を食いつぶす。営業利益は9億円の赤字、純利益は5億円の赤字だ。
減損や工場の閉鎖費用で、自己資本は10年で約110億円減る。配当は、3割に落とした水準を維持するのがやっとだ。
ただし、純現金は残る。小さな株主には現金の使い方を決める力がなく、半分ほどが戻る前提で価値を置く。
- 設備(塗装プラント・塗装システム):数量 9.8(塗装ライン換算(本・推定))× 価格 23(1 ラインあたり売上(億円・名目))→ 売上 229 億円・営業利益 12 億円。ライン換算0.65倍・価格1.20倍、利益率5%
- 自動車部品(内外装・加飾):数量 0.6(搭載車両台数相当(百万台・推定))× 価格 138(百万台あたり売上(億円・名目))→ 売上 77 億円・営業利益 2 億円。数量0.7倍・価格1.15倍、利益率2%
倍率:赤字で稼ぐ力はほぼゼロ。ROE が k を大きく下回るので利益から倍率を出さず、純現金と売れる資産の半分から成る約 75 億円を床にした。今の自己資本 346 億円に対する倍率では約 0.22 倍。減損後の自己資本は 236 億円。EV÷営業利益は赤字のため意味を持たない。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PBR 0.3178 倍・時価総額 75 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:電気自動車の工場で塗装工程が簡素化され、設備の数量と部品の数量が同時に細る変化は無視できない。トヨタ系の取引で守られるので9%にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
設備(塗装プラント・塗装システム)
自動車工場の塗装ラインや、熱・水・空気を使う設備を設計から据付まで請け負う。
| 数量塗装ライン換算(本・推定) | 価格1 ラインあたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 15.0 | 20 | 294 | 42 |
| 10 年後 中立 | 15.0 | 26 | 394 | 51 |
取り方:ライン数は開示がない。1 ラインが数十億円規模という会社の説明から、小さな案件も含めた平均を 1 ラインあたり約 20 億円とし、売上 293.7 億円を割って約 15 本相当と置いた。営業利益はセグメント利益 41.6 億円(開示)。
自動車部品(内外装・加飾)
センタークラスター、シフトパネル、インパネ、ハンドルなどを成形し、塗装・加飾する。
| 数量搭載車両台数相当(百万台・推定) | 価格百万台あたり売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 0.8 | 120 | 96 | 11 |
| 10 年後 中立 | 0.8 | 156 | 118 | 12 |
取り方:車両台数は開示がない。1 台あたり搭載額を推定して売上 95.9 億円を割り、約 80 万台相当と置いた。営業利益はセグメント利益 10.6 億円(開示、前年比 −19%)。
リスクと懸念
受注の波と会社予想の落ち込み
設備は1件が数十億円の受注生産で、利益が大きく振れる。今期の会社予想は営業利益20億円と前の期の32億円から4割近く減り、第1四半期も38%減だった。売上の計上時期と原価の見え方で、一時的に大きく見劣りする年が出る。
トヨタ系への偏り
売上の44%は豊田通商と豊通マシナリーの2社で、トヨタ自動車が議決権の36.6%を持つ。トヨタ系の工場投資が細れば、受注が同時に落ちる。値段を決めるのは客で、他の自動車メーカーの大型案件は取りにくい。
塗装工程の簡素化
電気自動車の工場では、塗装を使わない外装や一体成形、工程の短縮が進む可能性がある。塗装ラインの数や大きさが減れば、設備の数量が長期で細る。省エネ・低排出の更新需要で補えるかが分かれ目だ。
全社費用の重さ
本社と研究の費用が約20億円あり、事業の利益52億円の4割を食う。物価で増える一方、客の値下げ要求で転嫁が追いつかなければ、利益率が下がる。規模の小さい会社では、固定の費用が重い。
部品事業の弱さ
自動車部品は前の期に利益が19%減った。国内の自動車生産が縮み、内装の簡素化が進めば、数量と価格が同時に細る。新工法トライデコの量産化に先行投資がかさんでいる。
トヨタによる完全子会社化
トヨタが完全子会社化に動けば、価格の交渉でトヨタに有利な値段が付くおそれがある。少数株主には上振れも下振れもありうる。経営が資本効率を高める誘因は、大株主がいる分、弱い。
今後の分かれ目
- 期末の受注残が前年から増え続けたら
- 設備の売上が数年先まで確保され、強気側の確率を上げる。
- 設備の営業利益率が14%を割り込んだら
- 価格競争が強まった証拠で、中立の利益率を下げる。
- トライデコの量産が新しい車種に採用されたら
- 部品事業の利益率が戻る道筋が見え、やや楽観の確率を上げる。
- 自動車メーカーが塗装を使わない外装の採用を広げたら
- 設備の数量が長期で細る証拠で、やや悲観と悲観の確率を上げる。
- トヨタが完全子会社化や株の買い増しを発表したら
- 価格しだいで少数株主に上振れも下振れもある。余った現金の戻り方が変わる。
- 自社株買いや増配の発表があったら
- 余った現金の戻りが確かになり、価値を上げて見られる。
見ておくもの
- 期末の受注残と四半期ごとの受注高
- 設備セグメントの営業利益率
- 部品セグメントの利益(トライデコの量産)
- 全社費用の水準
- 豊田通商・豊通マシナリー向けの売上比率
倍率と資本コストの決め方
数量(塗装ライン換算・搭載車両台数相当)は実質、価格は物価 3%を含む名目として別に置いた。本社・研究の費用 20.3 億円は、物価で 27.2 億円に増やした。10 年の償却費は、今の設備の分が物価で増えず、更新投資と技術開発センターの分が新しい値段で足されると置き、利益率は直近の 8.2%より低い 7.0%にした。倍率は資本コスト 8%(基本 7.5%+quality 1.0%)から、ROE が k 以下なので上限 1÷k の 7.5 割に置き、今の株価(PER 7 倍台)や過去の PBR には寄せていない。余った現金は戻り方 1.0 で別に足し、金利の上昇は現金の利息を増やして純利益に入れた。上場株の配当は利益に入れて、価値としては別に足していない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.59→13.82 倍・やや楽観 PER 9.41→12.5 倍・中立 PER 8.82→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% に quality +1.0% を足した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。