結論
オリエンタルチエン工業は、石川県白山市のチェーンメーカーだ。機械の動力を伝えるローラチェーンと、ものを運ぶコンベヤチェーンを作る。売上は41億円で、9割強がチェーンだ。
筆者の結論は、今の値段は大きく割高というものだ。時価総額64億円は、増資後の自己資本29億円の2倍を超える。一方で、営業利益率は過去12年で最も高い年でも5%に届かない。ROE(自己資本に対する純利益の割合)は資本コストの9%を大きく下回る。
2025年6月に新しい経営陣が就き、値上げ、他社との業務提携、新株予約権による資金集めを進めた。2027年3月期は営業利益率6.5%を見込む。立て直しの姿勢は評価できる。
ただ、チェーンの市場は国内で伸びず、首位の椿本チエインが規模で先を行く。10年後の営業利益率は5%弱、純利益は2億円弱とみる。その稼ぎに見合う値段は、今の時価総額を大きく下回る。増資で株が2割増えたことも、1株あたりの取り分を薄めている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、オリエンタルチエン工業は「立て直しの途中にある、普通の部品会社」だ。
10年後も存在するか。チェーンは工場と物流に要り続けるので、おそらく残る。堀は広がるか。首位の椿本チエインと海外の安い品に挟まれ、広がる根拠は乏しい。
オーナー利益、つまり設備の更新を引いて自由に使える利益は、年に1億円前後だ。増資で増えた自己資本29億円に対して、かなり薄い。
経営の資本の使い方には、変化の兆しがある。値上げを通し、寺田精工を買ってスプロケットを内製にした。ただ、増資で株数を2割増やしたことは、既存の株主の取り分を薄めた。
安全域はどうか。時価総額は自己資本の2倍を超える。利益率が過去の天井を大きく超え続けない限り、この値段に見合う稼ぎは出ない。筆者は、立て直しの成功を値段がすでに先取りしていると見る。
何で稼ぐ会社か
オリエンタルチエン工業は、チェーンひと筋の会社だ。本社と工場は石川県白山市にある。
売上の93%がチェーン事業だ。自転車のチェーンと同じ形のローラチェーンを、工場の機械や農業機械の動力を伝える部品として売る。コンベヤチェーンは、食品や部品を運ぶ搬送のラインに使う。チェーンにかみ合う歯車のスプロケットも作り、2024年には長年の仕入れ先だった寺田精工を買って内製にした。
2つ目の事業が金属射出成形だ。金属の粉を樹脂と混ぜて型に流し込み、焼き固めて小さな精密部品を作る。医療機器と自動車の部品で伸び、売上は2.5億円だ。
3つ目は東京のオフィスビルの賃貸で、売上は小さいが安定して稼ぐ。
売上の85%は国内だ。北米の売上は、米国の通商政策の影響で前期から4割減った。
会社は大形のチェーンで世界一の品質を掲げ、特注のチェーンに力を入れる。汎用の品は値段で比べられやすいためだ。2026年7月には東京営業所を閉じ、ほかの営業所にまとめた。小さな会社が固定費を削りながら、得意な品に絞る姿が見える。従業員は数百人ほどの規模だ。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは小さい。ローラチェーンは規格の決まった部品で、首位の椿本チエインや大同工業、海外の安い品と並んで比べられる。オリエンタルチエンは、特注の品と短い納期で生き残ってきた。
数字がそれを示す。営業利益率は過去12年で0.3〜4.9%にとどまり、2026年3月期は0.4%だった。原材料と人件費の値上がりに、値上げが追いつかなかった。ROEが資本コストを上回った年は、自己資本が小さかった頃の一時期だけだ。
財務は改善した。新株予約権の行使で自己資本は29億円に増え、自己資本比率は56%になった。ただ、営業利益で利払いを賄う力はまだ弱い。
新しい経営陣は値上げを実行し、2027年3月期の第1四半期は営業利益1億円を出した。この変化が続くかどうかが、優良さを測る試金石になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
チェーンの市場は、成熟した設備の部品の市場だ。数量は工場の設備投資、農業機械、物流の搬送ラインで決まり、景気にゆるやかに連動する。国内の製造業の設備は老朽化しており、取り替えの需要は底堅い。
競争の形ははっきりしている。椿本チエインが国内の首位で、世界でも大手だ。大同工業、日本の中堅数社、中国やインドの安いメーカーが続く。汎用のローラチェーンは値段で決まりやすく、中堅の会社は特注の品や納期で差を付ける。
伸びる分野もある。物流の倉庫の自動化で、搬送のコンベヤは増える。食品や医薬の工場では、さびにくいチェーンや油の要らないチェーンが選ばれる。ただ、こうした高い付加価値の品でも、椿本チエインが先に手を打っている。
値段は物価並みに上がるとみる。鋼材と人件費の値上がりを受け、業界全体が値上げに動いた。ただし、輸入の安い品があるので、汎用の品の値上げには限りがある。筆者は、チェーンの数量は国内で横ばい、海外で少し伸びるとみる。米国の通商政策が続く限り、北米で取り返すのは難しい。国内の取り替えの需要が、売上の土台であり続ける。
資本政策と M&A
資本政策は、新しい経営陣の下で大きく動いた。2025年12月に第三者割当で新株予約権を出し、2026年4〜6月にすべて行使された。株数は2割増え、自己資本は21億円から29億円になった。資金は財務の立て直しと設備に向かう。
配当は2026年3月期に増やしたが、今期は利益に合わせて減らす予定だ。配当性向は3割ほどを目安にする。
中期経営計画は、外部の会社との資本業務提携を検討すると書く。4社の間の業務提携もすでに結んだ。業界の再編の受け皿になるか、大手に組み込まれるかは、まだ見えない。
2026年3月期の純利益は、投資有価証券の売却益で押し上げられた。本業の稼ぎは、今期の予想の1億円ほどが実力に近い。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
新しい経営陣は、言うだけでなく実行している。値上げを通し、2027年3月期の第1四半期には営業利益1億円を出した。前の期の1年分の7倍だ。会社は今期の営業利益率を6.5%と見込み、過去12年の天井を超える。
財務の不安も消えた。新株予約権の行使で自己資本は29億円に増え、自己資本比率は56%になった。借入に頼る経営から抜け出し、設備と人に投資できる。
事業の芽もある。物流の倉庫の自動化で、搬送のコンベヤチェーンは増える。金属射出成形は医療機器と自動車で伸び、売上は1割強増えた。寺田精工の買収で、スプロケットまで一貫して作れるようになった。
4社の間の業務提携や、検討中の資本業務提携は、業界の再編の入口になりうる。小さな会社が提携先と組めば、規模の弱さは補える。利益率が7%に届けば、純利益は今の数倍になる。財務の重しが取れた今こそ、攻めに転じられる。新しい経営陣の下で、会社はようやく変わり始めた。
慎重な見方
立て直しの期待を割り引いても、値段が高すぎる。営業利益率は過去12年で一度も5%を超えていない。今期の6.5%の見込みが実現しても、ROEは資本コストの9%に届かない。
チェーンは規格の決まった部品だ。椿本チエインが国内の首位で、世界でも規模で勝る。中国やインドの安い品も入ってくる。値上げが一度通っても、次の値上げが通る保証はない。
増資の中身も見るべきだ。株数は2割増え、既存の株主の取り分は薄まった。自己資本が増えた分、同じ利益でもROEは下がる。2026年3月期の純利益は投資有価証券の売却益で膨らみ、本業は経常赤字だった。
北米の売上は米国の通商政策で4割減った。海外で伸びる道も細い。時価総額64億円は、今期予想の純利益1億円の60倍を超える。この値段は、立て直しが完全に成功した後の姿を先に払っている。失敗した時の下値の支えは薄い。帳簿の自己資本の2倍を払う理由は、まだ数字のどこにも見当たらない。
どちらに重みを置いたか
経営陣の実行力は認める。それでも、12年の利益率の天井と、首位の椿本チエインとの規模の差が、慎重な見方を強くする。
確率は、中立の35%を中心に、汎用品の値段の比べられやすさと海外の弱さから、悲観側を楽観側より厚くした。立て直しが続く余地は認め、やや楽観に18%を置いた。12年の実績を超える姿は、数字で2期続くのを見てから厚くする。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 930 円17 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 190 円3 億円)。 今の値に割り戻すと 517 円9 億円、今との差 −85.0%、 期待の年率 −10.6%(資本コスト 9.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 7% | 2,302 円42 億円 | 382 円7 億円 | −22.0% | −2.5% | 188 円3 億円 |
| やや楽観 | 18% | 1,636 円30 億円 | 327 円6 億円 | −42.9% | −5.5% | 353 円6 億円 |
| 中立 | 35% | 1,091 円20 億円 | 218 円4 億円 | −61.9% | −9.2% | 458 円8 億円 |
| やや悲観 | 26% | 257 円5 億円 | 109 円2 億円 | −89.4% | −20.1% | 95 円2 億円 |
| 悲観 | 14% | 185 円3 億円 | 0 円0 億円 | −94.6% | −25.3% | 26 円0 億円 |
| 加重平均 | 100% | 930 円17 億円 | 190 円3 億円 | −67.4% | −10.6% | 1,121 円21 億円 |
今の株価時価総額 3,440 円63 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.0% を下回るほど割高。
楽観 7% 値上げと提携で、利益率が7%に乗る 利益 4 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 2,302 円42 億円
新しい経営陣の値上げが定着し、提携先と組んで調達と販売の規模の弱さを補う。物流の倉庫の自動化で搬送のチェーンが増え、重量は15%伸びる。単価は物価をやや上回る1.40倍だ。
金属射出成形は医療機器で伸び、売上は3倍近くになる。営業利益率はチェーンで7%、全社で7%を超える。過去の天井を大きく超える姿だ。
純利益は4億円近くになる。配当性向3割で、10年で7億円を配る。
それでも、椿本チエインとの規模の差は残る。会社は特注と短い納期の得意な中堅として、利益を確かなものにする。提携先との共同の調達で、鋼材の値上がりにも強くなる。
- チェーン:数量 2,930(出荷重量(トン))× 価格 210(1トンあたりの平均価格(万円))→ 売上 62 億円・営業利益 4 億円。重量1.15倍・単価1.40倍・利益率7%
- 金属射出成形:数量 543(出荷個数(万個))× 価格 135(1個あたりの平均価格(円))→ 売上 7 億円・営業利益 1 億円。個数2.2倍・単価1.35倍
- 不動産賃貸:数量 1,000(賃貸面積(平方メートル))× 価格 5.10(1平方メートルあたりの年間の賃料(万円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。賃料1.38倍
倍率:事業の純利益 4 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 42 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12年の利益率の天井4.9%を大きく超え続ける必要がある。今期の会社予想6.5%と第1四半期の回復は芽だが、続いた実績はまだない。
やや楽観 18% 値上げが定着し、利益率は5%台 利益 3 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,636 円30 億円
値上げは一度で終わらず、物価に合わせて毎年少しずつ通る。チェーンの重量は物流の自動化で7%増え、単価は1.37倍になる。
金属射出成形は医療機器と自動車で伸び、売上は2.4倍だ。営業利益率はチェーンで5.5%、全社で6%弱になる。
純利益は2.7億円ほど。配当性向3割で、10年で5億円を配る。
ROEは6%台にとどまる。増資で自己資本が厚くなったため、利益が増えても資本の効率は大きくは上がらない。それでも、赤字と黒字を行き来した時代からは抜け出す。寺田精工の内製の効果も、スプロケットの原価に表れる。
- チェーン:数量 2,730(出荷重量(トン))× 価格 205(1トンあたりの平均価格(万円))→ 売上 56 億円・営業利益 3 億円。重量1.07倍・単価1.37倍・利益率5.5%
- 金属射出成形:数量 445(出荷個数(万個))× 価格 134(1個あたりの平均価格(円))→ 売上 6 億円・営業利益 1 億円。個数1.8倍・単価1.34倍
- 不動産賃貸:数量 1,000(賃貸面積(平方メートル))× 価格 5.00(1平方メートルあたりの年間の賃料(万円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。賃料1.35倍
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 6.4% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 30 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:値上げは実行済みで、第1四半期の営業利益は1億円を超えた。過去の天井をわずかに超える水準は、届く範囲。
中立 35% 値上げは物価並み、利益率は過去の天井 利益 2 億円 · PER 11.1 倍 · 株価時価総額 1,091 円20 億円
チェーンの重量は10年で横ばいだ。国内の設備の取り替えは底堅いが、新しい需要は椿本チエインと分け合う。単価は物価並みの1.34倍になる。
金属射出成形は売上が2倍になる。営業利益率はチェーンで4%、全社で5%弱だ。過去の天井に並ぶが、超えはしない。既存の工場の償却は取得した時の値段のままで、更新の分だけが新しい値段で足される。
純利益は1.8億円ほど。配当性向3割で、10年で4億円を配る。
ROEは4%台で、資本コストを大きく下回る。立て直しは赤字を止めたが、優良な会社にまでは変えない。東京の賃貸ビルの賃料が、谷の年の小さな支えになる。
- チェーン:数量 2,550(出荷重量(トン))× 価格 201(1トンあたりの平均価格(万円))→ 売上 51 億円・営業利益 2 億円。重量横ばい・単価1.34倍・利益率4%
- 金属射出成形:数量 370(出荷個数(万個))× 価格 134(1個あたりの平均価格(円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。個数1.5倍・単価1.34倍
- 不動産賃貸:数量 1,000(賃貸面積(平方メートル))× 価格 4.96(1平方メートルあたりの年間の賃料(万円))→ 売上 1 億円・営業利益 0 億円。賃料1.34倍
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.7% が k 9.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 11.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 11.1 倍。全体の PER 11.11 倍、時価総額 20 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:過去12年の利益率は0.3〜4.9%。値上げで天井近くまでは戻るが、汎用品の値段の比べられやすさで、それを大きく超えない姿が最も自然。
やや悲観 26% 値上げが続かず、利益は細る 利益 1 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 257 円5 億円
値上げは一度で止まり、輸入の安いチェーンに押されて汎用品の値段が上がらない。チェーンの重量は1割減り、単価は1.27倍にとどまる。
金属射出成形は伸びるが、売上は1.2倍にとどまる。営業利益率は全社で2%を切る。人件費と鋼材は物価で上がり続ける。
純利益は0.6億円ほど。配当性向3割で、10年で2億円を配る。
増資で集めた資金は設備に消え、稼ぎは戻らない。資本業務提携も進まず、会社は小さな中堅のまま、景気の波に揺られる。株を2割増やした増資は、結果として稼ぎを薄めただけになる。値段の支えは、稼ぐ力の小ささに見合った低い所まで下がる。
- チェーン:数量 2,295(出荷重量(トン))× 価格 190(1トンあたりの平均価格(万円))→ 売上 44 億円・営業利益 1 億円。重量0.9倍・単価1.27倍・利益率1.5%
- 金属射出成形:数量 296(出荷個数(万個))× 価格 125(1個あたりの平均価格(円))→ 売上 4 億円・営業利益 0 億円。個数1.2倍・単価1.25倍
- 不動産賃貸:数量 1,000(賃貸面積(平方メートル))× 価格 4.60(1平方メートルあたりの年間の賃料(万円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。賃料1.24倍
倍率:ROEは約1.5%でkを大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)の約9割の8.0倍で、中立の倍率以下に置いた。東京の賃貸ビルは賃料を利益に入れているので、価値を別に足さない。
確率:一度の値上げの後、輸入品との比較で次の値上げが通らない例は多い。過去12年の大半は利益率3%台以下で、起きやすい姿。
悲観 14% 汎用チェーンで負け、赤字に戻る 利益 0 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 185 円3 億円
輸入の安いチェーンが汎用品の市場を奪い、国内の設備投資も谷に入る。チェーンの重量は25%減り、単価は1.17倍しか上がらない。
営業赤字に戻り、利益はほとんど残らない。配当は止まる。資本業務提携は、相手に有利な条件で株を出す形になり、既存の株主の取り分は薄まる。
値段の床は、工場と在庫を処分して借入を返した後の残りと、東京の賃貸ビルの価値の一部になる。ただし、清算されない限り、その使い方は少数株主には決められない。増資の資金も、赤字の穴埋めに消えていく。中堅のチェーン会社として、再編で大手に安く組み込まれる道も見えてくる。
- チェーン:数量 1,913(出荷重量(トン))× 価格 175(1トンあたりの平均価格(万円))→ 売上 33 億円・営業利益 −1 億円。重量0.75倍・単価1.17倍・赤字
- 金属射出成形:数量 247(出荷個数(万個))× 価格 120(1個あたりの平均価格(円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。個数横ばい・単価1.2倍
- 不動産賃貸:数量 1,000(賃貸面積(平方メートル))× 価格 4.30(1平方メートルあたりの年間の賃料(万円))→ 売上 0 億円・営業利益 0 億円。賃料1.16倍
倍率:赤字の筋書きで稼ぐ力では値が付かない。売れる資産の床(約3.4億円)を、直近の決算期末の自己資本21億円に対する0.162倍で書いた。
確率:首位との規模の差・輸入品・設備投資の谷が重なる構造的な負け。2009〜2010年と2020〜2021年に赤字の実績があり、同領域の会社より厚くした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
チェーン
伝動用ローラチェーン、コンベヤチェーン、スプロケット。工場の機械、農業機械、搬送ラインに使う。
| 数量出荷重量(トン) | 価格1トンあたりの平均価格(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 2,550 | 150 | 38 | 0 |
| 10 年後 中立 | 2,550 | 201 | 51 | 2 |
取り方:2026年3月期のチェーン事業の売上38.25億円(決算説明)を、大形と小形を混ぜた平均単価をトン150万円として重量に直した推定(約2,550トン)。営業利益は全社0.15億円から賃貸と金属射出成形の推定を引いた。
金属射出成形
金属の粉を型に流して焼き固める小さな精密部品。医療機器と自動車向け。
| 数量出荷個数(万個) | 価格1個あたりの平均価格(円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 247 | 100 | 2 | 0 |
| 10 年後 中立 | 370 | 134 | 5 | 0 |
取り方:売上2.47億円(決算説明、前期比13.5%増)を1個百円前後の平均単価で個数に直した推定。利益率6%の推定。
不動産賃貸
東京都のオフィスビルの賃貸。
| 数量賃貸面積(平方メートル) | 価格1平方メートルあたりの年間の賃料(万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,000 | 3.70 | 0 | 0 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 4.96 | 1 | 0 |
取り方:売上0.37億円(決算説明)を、賃貸面積を約1,000平方メートルとして割った推定。利益率は償却の軽い賃貸として7割弱の推定。
リスクと懸念
値上げの持続
2027年3月期の回復は値上げに支えられる。汎用のローラチェーンは輸入品と比べられ、次の値上げが通らなければ、利益率は過去の0〜5%に戻る。
首位との規模の差
椿本チエインは国内の首位で世界でも大手だ。高付加価値のチェーンでも先に手を打たれ、中堅の会社は特注と納期でしか差を付けにくい。
海外の弱さ
北米の売上は米国の通商政策で4割減った。海外の比率は15%ほどで、国内の設備投資の波をそのまま受ける。
株の希薄化
新株予約権の行使で株数は2割増えた。資本業務提携で再び株を出せば、既存の株主の取り分はさらに薄まる。
設備投資の谷
工場と農業機械の投資が落ちると、チェーンの注文は2〜3割減る。固定費の重い工場は、谷の年に赤字に落ちやすい。
今後の分かれ目
- 2027年3月期に営業利益率6%を超え、翌期も続いたら
- 値上げの定着とみて、やや楽観の確率を厚くする。
- 資本業務提携の相手と中身が示されたら
- 規模の弱さを補えるかで、楽観か悲観に寄せる。
- 汎用チェーンで値下げの圧力が強まり、利益率が3%を割ったら
- やや悲観・悲観の確率を厚くする。
- 金属射出成形の売上が5億円を超えたら
- 第2の柱が育ったとみて、楽観の確率を上げる。
- 大手による買収の提案が出たら
- 提案の値段を確かめ、楽観の確率を上げる。
見ておくもの
- 営業利益率(過去の天井5%を超え続けるか)
- 値上げの浸透とチェーンの受注
- 資本業務提携の相手と中身
- 金属射出成形の売上
- 北米の売上
倍率と資本コストの決め方
今の株価は見ずに、チェーンの重量×トン単価、金属射出成形の個数×単価、賃貸の面積×賃料で10年後の利益を積んだ。チェーンの重量は横ばい、単価は物価の1.34倍。中立の営業利益率は5%弱で、過去12年の山4.9%並み(今期の会社予想6.5%は一度の値上げの効果として中立に延ばさなかった)。ROEが資本コストに届かないので、PERは1÷k(約11.1倍)を上限に、汎用品の利益の質から約75%に置いた。今の時価総額と比べたのは最後。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→11.11 倍・やや楽観 PER 9.2→11.11 倍・中立 PER 8.3→11.11 倍)。
資本コスト 9.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。