結論
オーエスジー(OSG)は、ネジ穴を切るタップで世界首位、ドリルやエンドミルも手がける切削工具の専業メーカーだ。筆者の結論は「やや割高」である。事業の質は高いが、いまの株価は過去最高水準の利益が続くことをかなり織り込んでいる。
工具は摩耗して買い替える消耗品で、機械メーカーより景気の振れが小さい。売上の3分の2は海外で、タップではAブランドが世界の主要市場で日本並みに売れている。この地位は簡単には崩れない。
ただ、今期の営業利益率は16%台に乗り、ほぼ過去の最高圏にある。10年で見れば、利益率が過去の中央値を大きく上回り続ける保証はない。中立では15%台半ばを見込む。
資本の使い方は変わりつつある。中期計画は還元に最大500億円を充て、ROE10%超を掲げる。自己資本は厚く、純現金もある。守りは堅い。
一方で、自動車向けは売上の4割強を占め、電動化でタップやドリルの用途が減る恐れがある。中国の安い超硬工具との競争もある。
こうした点を確率に織り込むと、本質価値は今の時価総額の85%ほどにとどまる。良い会社だが、いまは払いすぎの領域に入っている。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の目で見ると、OSGは「良い事業を、やや高く買わされる」会社だ。
事業は分かりやすい。消耗品を、信頼を武器に世界中へ売る。好ましいのは、この繰り返しの買い替え需要だ。景気が悪くなっても工具は使われ、赤字に落ちたのは過去20年で一度だけだった。
資本の使い方は、ようやく攻めに変わった。かつては自己資本をため込み、ROEは資本コスト並みにとどまった。いまは自社株買いと新工場の両方に資金を向けている。方向は正しい。ただ、結果が出るのはこれからだ。
気がかりは利益の水準だ。今期の営業利益率は16%台と、ほぼ最高圏にある。これを平均と見ると、先の利益を大きく見誤る。利益が伸びても、過去の中央値より1〜2割高い水準で落ち着くと筆者は見る。
安全域は、財務の厚さにある。純現金で自己資本比率7割近くなら、悲観の筋書きでも会社は守られる。だが、今の値段は利益の最高圏を前提にしており、楽観が起きても上積みは小さい。確信度は中程度にとどまる。
何で稼ぐ会社か
OSGの稼ぎ方は、消耗品を世界中の工場に売り続けることだ。切削工具とは、金属に穴をあけたりネジ山を切ったり、削ったりする刃物のことである。タップ(ネジ穴を切る工具)、ドリル、エンドミル(側面や溝を削る工具)が主力で、機械が動く限り摩耗して買い替えが起きる。
顧客は自動車、航空・エネルギー、一般機械、金型、医療と広い。売上に占める自動車関連は4割強、航空・エネルギーは2割弱だ。海外売上は約7割で、日本、米州、欧州・アフリカ、アジアでほぼ同じ規模に分かれる。
OSGは「穴加工で世界一」を目標にしている。創業製品のタップは世界シェアが3割を超え、中期計画では4割を目指す。2015年に生まれたAブランドは旗艦の製品群で、高い値段でも売れる新製品を短い周期で出し続ける土台になった。
周辺では、ダイヤモンドコーティング工具、歯科用の微細工具、半導体や医療向けの微細・精密工具を伸ばす。世界16カ国にコーティングの拠点を持ち、工具に膜をつける加工の受託も手がける。
2028年には、超硬エンドミルの新工場を大池に建てる計画だ。国内では電力設備向けの特殊カッターも受注が旺盛で、増産を急いでいる。利益の厚い製品へ構成を寄せる動きが、いまの高い利益率を支えている。
優良さと弱いところ
OSGの強みは、世界の工場に張りついた販売と技術の網だ。タップで世界3割超というシェアは、工具の中でも専業ならではの地位である。工具は加工の最後の工程に使うため、不具合が出ると高価な部品が台無しになる。顧客は少しの値段差で工具を替えたがらない。
Aブランドが北米・欧州・中国で日本と同じ規模で売れているのは、この信頼の証拠だ。値段を物価並みに上げやすい事業と筆者は見る。
弱みは三つある。一つは、自動車向けが売上の4割強を占めることだ。電動車は変速機やエンジン部品が減り、タップやドリルを使う場面が減る。会社は一般部品、航空、微細・精密へ構成を寄せているが、道は半ばだ。
二つめは競合の層の厚さだ。欧州のサンドビックなど大手に加え、日本の住友電工、タンガロイ、微細工具のユニオンツールがいる。中国の安い超硬工具も力をつけている。
三つめは資本効率だ。ROEは長く8%前後で、資本コストの8%と同じ水準にとどまった。純現金で自己資本比率が7割近い財務は安心だが、資本を使いきれていない証拠でもある。中期計画のROE10%超が実現するかが、これからの試金石になる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
切削工具の需要は、世界の製造業の稼働と設備更新で決まる。工作機械が台数で動くのに対し、工具は加工量そのものに連動するため、受注の山と谷が浅い。2009年11月期に営業赤字へ落ちたのが唯一の例外で、そのときも1年ほどで戻った。
足元は強い。人工知能向けの電子部品・半導体の投資が広がり、工作機械の受注も大きく伸びた。OSGでも日本、米州、欧州、アジアの全地域で上期は利益が前年を上回った。電力設備や航空向けの需要も底堅い。
構造の変化は二つある。一つは電動化だ。内燃機関の部品は穴が多く、工具の消費が大きい。電動車はこれが減る。もう一つは、人手不足による自動化と無人加工の広がりだ。無人で回すほど工具の寿命と信頼が重くなり、高性能な工具に有利に働く。
競争は、欧州勢(サンドビックなど)、日本の大手、中国の新興勢の三つどもえだ。汎用の超硬工具は中国勢の値下げに押される。一方、航空機の難削材や微細加工のような高い精度が要る領域では、技術の差が残る。
10年を通じて、世界の切削工具の実質の需要は年2%前後で伸びる、というのが筆者の見立てだ。成熟した需要だが、AI関連と電力設備が下支えする。
資本政策と M&A
還元の方針は明快だ。配当は連結の配当性向45%か、自己資本に対する配当率3.5%の高い方を基本にする。今期は期初から配当予想を大きく引き上げた。
中期計画の3年間は、還元に最大約500億円を充てる。内訳は配当が約170億円、自社株買いが約270億円だ。上期には自己株式の取得と消却も実行した。前の中計の3年間も、約440億円を還元している。
投資は積極的だ。3年で戦略投資に600億円から700億円をかけ、新工場や微細・精密工具の増産、自動化に使う。原資は営業のキャッシュ800億円から900億円と、社債270億円だ。借入を使って資本の平均コストを下げる方針も掲げている。
政策保有株の削減も進める方針だ。上場の保有は6銘柄と少なく、含み益で評価を大きく動かす規模ではない。
買収は、周辺の技術や販路を買う小型のものが中心で、前の3年間で約90億円だった。大きな買収で価値を壊すタイプではない。
買収される可能性は低くないと筆者は見る。時価総額は3,000億円台で、海外の工具大手や投資会社には射程に入る大きさだ。ただ創業家の関わりや経営の意思は確かめられておらず、予測には入れていない。
還元は方針(配当性向45%かDOE3.5%の高い方、中計3年で最大約500億円)に沿い、中立は純利益の合計の約77%。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
タップで世界3割超、Aブランドの浸透で4割をうかがう。この伸びしろは本物だ。Aブランドは日本、北米、欧州、中国で同じ規模で売れており、世界の穴加工で標準になりつつある。
利益率は上がる余地が大きい。価格を決める力のある高付加価値品の比率が上がるほど、粗利は厚くなる。今期はすでに営業利益率が16%台に乗り、中期計画の目標を前倒しで達成する勢いだ。
自動車向けの減少は、電動車向けの新しい工具で埋められる。モーターの部品、電池、ギヤの加工には新しい工具が要る。航空・エネルギー向けと、半導体・ロボット・医療向けの微細・精密工具は、世界の需要より速く伸びる。電力設備向けの特殊カッターは、受注が旺盛で増産が追いつかない。
資本の使い方も変わった。中計は還元に約500億円を充て、新工場にも資金を回す。借入を活用して資本コストを下げる方針で、ROEは10%を超えて上がる。買収で新しい分野に入る力もある。
人手不足による自動化と無人加工の広がりは、高性能な工具に追い風だ。10年の間に利益が今の2倍に伸びる筋書きは、十分に現実的である。
慎重な見方
今の利益は最高圏にある。為替の追い風、値上げの浸透、電力設備のような一時的な大型需要が重なった結果だ。これが平常に戻ると見るのが自然で、先の利益を今の水準で伸ばす読みは危ない。
自動車向けは売上の4割強を占める。電動化が進むと、エンジンや変速機の部品が減り、タップやドリルの消費が減る。会社は構成を変えようとしているが、4割強の売上が別の需要で簡単に埋まるとは限らない。
中国の超硬工具メーカーは、汎用の領域で急速に力をつけている。値下げ競争は、いずれ欧州・日本の中堅工具にも及ぶ。OSGが強いタップでも、安い製品で置き換えられる場面は増えるだろう。
資本効率も課題だ。ROEは長く8%前後で、資本コスト並みだった。中計はROE10%超を掲げるが、新工場への投資600〜700億円は、需要が伸びなければ重い固定費に変わる。
循環の谷も忘れられない。2009年11月期は営業赤字に落ちた。世界の製造業が止まれば、工具の買い替えも止まる。今の値段は、この谷を考えずに払う値段になっている。
どちらに重みを置いたか
事業の質は高く、地位は固い。ただ、足元の利益率は最高圏にあり、先の10年でそれを保つ根拠は弱い。中立では利益率を15%台半ばに置いた。今の値段が前提とする楽観の確率は1割強にとどめた。自動車の電動化と中国勢の値下げは、どちらも10年の間に現実になりうるため、やや悲観と悲観を合わせて3割に厚くした。強気の見方にも十分な根拠はあるが、利益率が最高圏から動かない前提に頼りすぎている。結果は、本質価値が今の時価総額の85%ほどで「やや割高」になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/11 期)
確率で加重した株価時価総額 5,400 円4,440 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,024 円1,664 億円)。 今の値に割り戻すと 4,030 円3,313 億円、今との差 +12.9%、 期待の年率 +7.6%(資本コスト 7.5%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 9,833 円8,084 億円 | 2,756 円2,266 億円 | +252.5% | +13.4% | 1,511 円1,242 億円 |
| やや楽観 | 23% | 7,395 円6,080 億円 | 2,338 円1,922 億円 | +172.5% | +10.5% | 2,238 円1,840 億円 |
| 中立 | 35% | 5,743 円4,722 億円 | 2,036 円1,674 億円 | +117.8% | +8.1% | 2,723 円2,238 億円 |
| やや悲観 | 20% | 2,230 円1,833 億円 | 1,789 円1,471 億円 | +12.5% | +1.2% | 804 円661 億円 |
| 悲観 | 10% | 633 円521 億円 | 851 円700 億円 | −58.4% | −8.4% | 148 円122 億円 |
| 加重平均 | 100% | 5,400 円4,440 億円 | 2,024 円1,664 億円 | +107.9% | +7.6% | 7,424 円6,104 億円 |
今の株価時価総額 3,571 円2,936 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.5% を下回るほど割高。
楽観 12% Aブランドが世界標準になり、利益率が高止まりする 利益 433 億円 · PER 18.7 倍 · 株価時価総額 9,833 円8,084 億円
Aブランドが世界のタップ市場で標準になり、シェアは4割へ届く。ねじ加工の売上は実質で年4.5%伸び、価格も物価を上回る。ドリルとエンドミルは、航空・エネルギー、半導体、医療向けの微細・精密工具が牽引して年4%で伸びる。電動車向けの新しい工具が、減る内燃機関の需要を埋める。
超硬ドリルの価格競争力も回復し、中国勢の攻勢は汎用品の一部にとどまる。営業利益率は18%台に乗り、高付加価値品の比率が高い構造が定着する。新工場の稼働で供給力が増え、投資の回収も順調に進む。
還元は純利益の7割に達し、ROEは15%台まで上がる。世界の製造業の自動化が進むなか、OSGは穴加工の標準を握る。最も理想的な10年になる。
- ねじ加工工具(タップ・転造工具):数量 932(世界のねじ加工工具市場でOSGが得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円))× 価格 140(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 1,305 億円・営業利益 274 億円。シェア4割・価格は物価を上回る
- 穴加工・フライス・その他工具(ドリル・エンドミル・ダイヤモンド工具・歯科ほか):数量 1,489(世界の穴加工・フライス工具市場でOSGが得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円))× 価格 140(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 2,085 億円・営業利益 344 億円。電動車向けと微細・精密が牽引
倍率:事業の純利益 433 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.6% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.5%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.7 倍。全体の PER 18.67 倍、時価総額 8,084 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:タップのシェア4割、電動車向けの新工具、高付加価値品の比率上昇が同時に起きる必要があり、実現すれば強いが、連続して当たる確度は高くない。
やや楽観 23% 自動車の減少を他の需要で埋め、中計を達成して成長が続く 利益 350 億円 · PER 17.4 倍 · 株価時価総額 7,395 円6,080 億円
中期計画の目標はおおむね達成される。ねじ加工は実質で年3.5%、ドリル・エンドミルは年3%で伸びる。自動車向けは電動化で減るが、一般部品、航空・エネルギー、微細・精密が補い、売上の構成は少しずつ変わる。
利益率は平均で16%台後半に高止まりする。ただ、中国勢の価格攻勢があり、汎用の超硬ドリルでは値上げが物価に届かない場面も出る。Aブランドの比率が上がることで、平均の値段は物価をわずかに上回る。
還元は純利益の7割近い。新工場の償却が重くなる時期もあるが、売上の伸びで吸収する。ROEは13%近くで、資本コストを安定して上回る。
大きな成功ではないが、普通に強い優良企業として評価される10年になる。
- ねじ加工工具(タップ・転造工具):数量 846(世界のねじ加工工具市場でOSGが得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円))× 価格 137(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 1,159 億円・営業利益 232 億円。実質年3.5%、価格指数137
- 穴加工・フライス・その他工具(ドリル・エンドミル・ダイヤモンド工具・歯科ほか):数量 1,352(世界の穴加工・フライス工具市場でOSGが得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円))× 価格 137(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 1,852 億円・営業利益 269 億円。実質年3%、新工場が稼働
倍率:事業の純利益 350 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.4 倍。全体の PER 17.37 倍、時価総額 6,080 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:中期計画のROE10%超を達成し、需要の構成が自動車から広がる、という会社計画の上位に近い想定。業界の見通しの上位レンジに沿う。
中立 35% 中立:地位は保つが、利益率は最高圏から落ち着く 利益 292 億円 · PER 16.2 倍 · 株価時価総額 5,743 円4,722 億円
工具の需要は、世界の製造業の拡大とともに緩やかに伸びる。ねじ加工は実質で年2.5%、ドリル・エンドミルは年2%の成長だ。価格は物価並みに上がり、10年で1.34倍になる。
自動車向けは電動化でゆっくり減るが、航空・エネルギー、一般部品、微細・精密が穴を埋める。Aブランドは主要市場で浸透を続け、タップの世界シェアは3割台半ばから後半に上がる。ただ、4割には届かない。
営業利益率は、今の最高圏から落ち着き、15%台半ばになる。値上げと高付加価値品の比率が過去の中央値を押し上げる一方、中国勢の安値と新工場の償却負担が上値を抑える。
還元は純利益の6割台後半、ROEは11%近い。資本コストを小さく上回る、堅実な優良企業という姿に収まる10年だ。
- ねじ加工工具(タップ・転造工具):数量 768(世界のねじ加工工具市場でOSGが得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円))× 価格 134(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 1,029 億円・営業利益 196 億円。実質年2.5%、価格指数134(物価並み)
- 穴加工・フライス・その他工具(ドリル・エンドミル・ダイヤモンド工具・歯科ほか):数量 1,226(世界の穴加工・フライス工具市場でOSGが得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円))× 価格 134(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 1,643 億円・営業利益 222 億円。実質年2%、価格指数134
倍率:事業の純利益 292 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 10.9% が k 7.50% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.2%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.2 倍。全体の PER 16.17 倍、時価総額 4,722 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:業界の見通しの中心値と、過去の利益率の中央値より1割ほど高い水準での落ち着きを組み合わせた中心の筋書き。
やや悲観 20% 電動化と中国勢で数量が伸びず、利益率が10%台前半に戻る 利益 194 億円 · PER 9.5 倍 · 株価時価総額 2,230 円1,833 億円
自動車の電動化が想定より速く進み、ねじ加工の数量はほとんど伸びない。ドリル・エンドミルも、中国勢の値下げに押されてほぼ横ばいになる。価格は物価に届かず、10年で1.30倍にとどまる。
今期の高い利益率は、為替と値上げの追い風が消えて、10年のうちに崩れる。営業利益率は、過去の中央値に近い12%台に戻る。新工場の償却も負担になり、高付加価値品の比率が上がっても吸収しきれない。
還元は続くが、投資との両立で余裕は薄い。ROEは8%程度と、資本コストと同じ水準にとどまる。
ブランドの地位は残るものの、利益を増やす力が失われ、普通の機械メーカーの水準に戻る10年になる。
- ねじ加工工具(タップ・転造工具):数量 650(世界のねじ加工工具市場でOSGが得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円))× 価格 130(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 845 億円・営業利益 135 億円。実質年0.8%、価格は物価に届かない
- 穴加工・フライス・その他工具(ドリル・エンドミル・ダイヤモンド工具・歯科ほか):数量 1,037(世界の穴加工・フライス工具市場でOSGが得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円))× 価格 130(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 1,348 億円・営業利益 142 億円。実質年0.3%、中国勢の値下げ
倍率:ROE 8.2% は k 7.5% と同じ水準で、ためた利益が額面を下回る価値しか持たない。PER の上限は 1÷k = 12.5 倍で、数量が伸びず利益率が戻る筋書きなので、稼ぐ力だけで測り上限へ引き上げず 9.5 倍に置いた。
確率:自動車向けの減少と中国勢の値下げが同時に進み、中期計画の目標が未達になる、という慎重な見方の中心。十分ありうる。
悲観 10% 構造的に負ける:電動化と中国の安値で、優良さを失う 利益 48 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 633 円521 億円
電動車が一気に普及し、自動車向けのタップとドリルの需要は構造的に縮む。中国勢の超硬工具は汎用領域を奪い、ハイエンドにも手が届く。ねじ加工の数量は2割、ドリル・エンドミルは3割縮み、価格も物価に届かず10年で1.15倍にとどまる。
営業利益率はねじ加工で8%、その他で3%へ落ちる。固定費の重い新工場は稼働率が上がらず、減損の恐れが出る。Aブランドの浸透も、安値の波に押される。
還元は配当にほぼ絞られる。稼ぐ力は大きく落ち、価値は稼ぐ力と、売れる資産の大きい方に寄る。
堀そのものが侵食され、もはや優良な工具専業とは言えない10年になる。
- ねじ加工工具(タップ・転造工具):数量 480(世界のねじ加工工具市場でOSGが得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円))× 価格 115(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 552 億円・営業利益 44 億円。ねじ加工の数量2割減、価格は物価未満
- 穴加工・フライス・その他工具(ドリル・エンドミル・ダイヤモンド工具・歯科ほか):数量 700(世界の穴加工・フライス工具市場でOSGが得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円))× 価格 115(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 805 億円・営業利益 24 億円。数量3割減、利益率3%
倍率:数量が構造的に縮み、稼ぐ力はほぼ消える。稼ぐ力(純利益÷k)は約600億円だが、ROE が k を大きく下回る筋書きでは額面で数えない。売れる資産の税後 約520億円(floor_assets_oku)で値が付くとみて、これを床にした。PBR はこの額を今の自己資本1,808億円で割った値。
確率:自動車向けの構造的な縮小と、中国勢の超硬工具の台頭が同時に起き、価格を決める力を失う。10年の間にはそれなりの確度で起こりうる。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
ねじ加工工具(タップ・転造工具)
タップ(ネジ穴を切る工具)や転造ダイスなど、ネジを作る工具。OSGの創業製品で世界首位。
| 数量世界のねじ加工工具市場でOSGが得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円) | 価格名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 600 | 100 | 600 | 100 |
| 10 年後 中立 | 768 | 134 | 1,029 | 196 |
取り方:2025年11月期の連結売上1,606億円のうち、タップなどねじ加工工具を約600億円と推定(会社は製品別の売上を細かく開示しないため、タップが世界3割超のシェアという開示と売上の構成から推定)。営業利益は全社平均より高い16〜17%と置いた。
穴加工・フライス・その他工具(ドリル・エンドミル・ダイヤモンド工具・歯科ほか)
超硬ドリル、エンドミル、ダイヤモンド工具、歯科用などの微細工具、工具へのコーティング加工を含む。
| 数量世界の穴加工・フライス工具市場でOSGが得ている実質の取り分(市場規模×シェア、今の値段基準・億円) | 価格名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/11 | 1,006 | 100 | 1,006 | 103 |
| 10 年後 中立 | 1,226 | 134 | 1,643 | 222 |
取り方:全社売上1,606億円からねじ加工を引いた約1,006億円(ドリル・エンドミル・ダイヤモンド・コーティング・測定など)。営業利益は全社の203億円からねじ加工の100億円を引いて103億円(営業利益率約10%)と推定。エンドミルは競争が厳しく、利益率はねじ加工より低い。
リスクと懸念
自動車の電動化
売上の4割強を占める自動車向けは、電動車の普及で穴あけやネジ切りの工程が減る。内燃機関の部品は工具の消費が大きく、電動化が進むと数量が構造的に縮む。会社は航空・エネルギー、微細・精密へ構成を寄せているが、置き換えには時間がかかる。
利益率の平常化
今期の営業利益率は16%台と、過去の最高圏にある。値上げ、為替、電力設備の大型需要が重なった結果で、平常に戻れば利益は大きく減る。10年の利益を今の水準で伸ばす読みは、見立てを誤りやすい。
中国勢の価格攻勢
中国の超硬工具メーカーは汎用領域で力をつけ、値下げ競争が欧州・日本の中堅工具に及んでいる。OSGが強いタップやドリルでも、安い製品に置き換えられる場面が増える。海外売上が約7割あり、影響が出る場面は広い。
景気の谷
工具は工作機械より振れが浅いが、世界の製造業が止まれば買い替えも止まる。2009年11月期は営業赤字へ落ち、2020年11月期も営業利益が半分以下になった。谷では固定費が重く、利益率が一気に下がる。
大型投資の回収
3年で戦略投資に600〜700億円を使い、超硬エンドミルの新工場などを建てる。需要が計画ほど伸びなければ、減価償却と固定費が重い負担になる。借入と社債で資金を足す方針もあり、財務の余裕は今より薄くなる。
為替の振れ
海外売上が約7割あり、円安は利益を押し上げてきた。本分析は為替を1ドル150円で固定して筋書きを置いている。実際には円高に動けば、円換算の売上と利益が目減りする。足元の高い利益率には、円安の追い風が含まれている。
今後の分かれ目
- Aブランドのタップが北米・欧州・中国で順調に伸び、世界シェアが4割へ近づく
- 高付加価値品の比率が上がり、営業利益率が16%台を保つ可能性が出る。楽観の筋書きの確率が上がる
- 電動車向けの新しい工具(モーター・電池・ギヤ向け)が、減る自動車の需要を埋める
- 自動車依存の構造リスクが和らぎ、悲観の確率が下がる
- 中国の超硬工具が、タップやドリルのハイエンド領域にも広がる
- 価格競争が強まり、利益率が10%台前半へ圧迫される。やや悲観以下の筋書きが現実味を帯びる
- 世界の製造業が急減速し、工具の買い替えが止まる
- 営業利益が半分以下へ落ちる。ただ純現金と自己資本比率7割弱の財務で、会社は耐えられる
- 中計のROE10%超が達成され、還元約500億円が計画どおり実行される
- 資本効率の改善が確かになり、中立の倍率の上限に近づく
- 新工場への投資が重荷になり、減損や増産計画の見直しが出る
- 資本の使い方への信頼が揺らぎ、慎重な見方が強まる
見ておくもの
- 日本工作機械工業会の月次受注(外需比率・電子部品向け)
- OSGの地域別の営業利益率(米州・欧州の回復)
- Aブランドのタップ・ドリルの売上比率と世界シェア
- 自動車向けの売上比率の推移(43%から下がるか)
- 中国の超硬工具メーカーの輸出価格と品質
- 超硬エンドミル新工場(2028年度)の進捗と償却負担
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価(PER・PBR)を見ずに、その筋書きのROEと資本コスト7.5%から正当化PERの上限を出し、楽観〜中立では利益の質に応じて上限の8〜8.5割に置いた(工具は消耗品で景気の山谷が浅いが、自動車の電動化と中国勢のリスクがあるため、上限すれすれにはしない)。やや悲観は稼ぐ力(ROEがkに届かないので1÷k未満)で、悲観は稼ぐ力と売れる資産の大きい方で測った。今期の利益率は最高圏にあるため、10年の中立は過去の中央値より1割ほど高い15%台半ばに置き、今の水準を延ばさなかった。純現金は約30億円(時価総額の1%)で、余った現金としては分けていない。過去の倍率・同業の倍率は使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 14.03→18.67 倍・やや楽観 PER 12.63→17.37 倍・中立 PER 11.52→16.17 倍)。
資本コスト 7.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本7.5% + quality +0.5% = 8.0%。同じ領域の工作機械メーカー(8.5〜8.8%)より低く置いたのは、工具は消耗品で需要が安定するため。電動化と中国勢のリスクは k に足さず、筋書きと確率で表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.50%。