結論
日本金銭機械は、紙幣を読み取って本物かどうかを見分ける機械、紙幣識別機の専業メーカーだ。売上の半分強は北米を中心としたカジノのスロット機向けで、残りは券売機、セルフレジ、パチンコ店の貸機ユニットに入る。
筆者の結論は、事業は良いが値段に対して儲けが薄い、というものだ。2026年3月期の営業利益は25億円で、時価総額354億円の7%にすぎない。手元の純現金は126億円と厚いが、その半分は戻し方の実績が弱く、満額では数えられない。
10 年後の見立ては、現金を使う賭けがカジノの中で残るかどうかに尽きる。残れば堅実に稼ぐ会社のままで、キャッシュレス賭けが広がれば部品として値下がりする。確率で加重した本質価値は、今の時価総額を4割ほど下回り、判定は割高だ。ただ純現金が下支えするため、悲観の筋書きでも傷は浅い。
なお、この会社は指示書では遊技機の領域に入っていたが、遊技機そのものは作らない。パチンコ店向けは売上の1割で、稼ぎの中心は北米のカジノ向け部品だ。そのため市場の見通しは、遊技機の縮小ではなく、カジノの設備投資とキャッシュレス化で置いた。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社は「良い部品、小さい市場、薄い儲け」の三つで言い表せる。
事業の質は悪くない。北米カジノの識別機は、他社が簡単に入れない市場で、純現金で借金もなく、倒れる心配が小さい。ここは安全域になる。
一方、儲けは薄い。10年中立の営業利益は42億円ほどで、売上の10%に届かない。この利益で、帳簿の純資産(358億円)を超える価値を生むのは難しい。純現金のうち事業に要らない90億円は別に足すが、その半分しか株主に戻らない前提で見た。
筆者が一番気にするのは、現金を使う賭けが10年先もカジノの機械に残るかだ。残れば今のままの堅実な会社、消えれば部品として値崩れする。この賭けの結末は読めない。読めない事業には安全域を厚く取るのが原則で、今の値段にはその厚みが足りない。
配当と自社株買いの姿勢が変われば、評価は動く。ただ、それは経営の決断の問題で、事業の力とは別に見る。
何で稼ぐ会社か
日本金銭機械は、紙幣識別機を作る専業メーカーだ。紙幣の真贋と金額を見分ける小さな部品で、機械の中に組み込まれて動く。売上は4つの事業に分かれる。
最大はグローバルゲーミングで、2026年3月期の売上316億円のうち約2/3を占める。カジノのスロット機に載せる識別機と、賭け金を紙のチケットで出し入れするユニットで、北米のシェアが特に高い。主力は「iVIZION」という接触型のイメージセンサを使った製品で、読み取りの精度が売りだ。
海外コマーシャルは、欧州を中心にセルフレジ、券売機、自販機向けの識別機を売る。国内コマーシャルは、飲食チェーンの券売機に入る紙幣還流ユニットだ。遊技場向機器は、パチンコ店の貸機ユニットなどで、売上の1割ほど。
稼ぎ方は、機械メーカーへの納入が中心の部品売りだ。カジノでは新設と入替のたびに数量が出る。国内は2024年の新紙幣への切り替えで更新需要が出たが、その特需は終わった。スマート遊技機の専用ユニットの特需も終息し、2026年3月期は売上が17%減った。
製品は、機械メーカーが自社のスロット機や券売機に組み込む。顧客の機械が売れた分だけ台数が出るため、最終需要は機械の入替と新設で決まる。単価は1台数万円と小さく、利益の大半は北米のスロット機向けで出る。
優良さと弱いところ
強みは、北米カジノという高い要求水準の市場で、識別機の首位級にいることだ。カジノの機械は読み取りミスが顧客の損失に直結する。認証の取得にも時間がかかり、一度採用された部品はすぐには替わらない。筆者はこれをこの会社の堀と見る。
弱みは、規模の小ささと利益率の低さだ。売上の最大は316億円。営業利益率は直近で8%、山の2025年3月期でも13%にとどまる。長期ビジョンの2033年3月期に営業利益55億円、売上550億円という目標を掲げるが、2026年3月期はその道から外れた。
競合は、米クレーンの傘下にあるCPI(旧MEI)や英国のITLなど。接触型の読み取り技術で先行したが、先行の幅は縮んだ可能性がある。
資本の使い方は、堅実だが保守的だ。借金はなく、純現金が積み上がる一方、配当性向は2割台と控えめだった。配当性向30%以上を基本とする方針だが、余った現金をどう戻すかの姿勢が問われる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
識別機の需要は、機械が動く台数と、入替のサイクルで決まる。カジノでは、新しい店の開業、既存店のスロット機の入替、ticket-in ticket-out(チケットで賭け金を出し入れする仕組み)の導入が山を作る。コロナ禍で売上が170億円まで落ちた後、北米の設備投資の回復で2025年3月期に378億円まで戻った。
構造の変化は二つある。一つは、現金を使わない賭けだ。スマホの電子財布から直接賭ける仕組みがカジノ内にも入り始め、紙幣口の要らない機械が増える可能性がある。もう一つは、新市場の開拓だ。日本の統合型リゾートやアジアの新設が実現すれば、台数は増える。
商業向けは、人手不足でセルフレジと無人店が増える追い風と、キャッシュレス決済の普及で現金の取り扱いが減る逆風が同時にある。海外では新市場への進出が遅れ、欧州の販売も低調だった。
遊技場向機器は、パチンコ店の数が減り続けるため、長い目で縮む。ここは遊技機の領域の見通し、すなわち台数が年に2〜4%ずつ縮む前提を、この小さなセグメントだけに当てはめた。
資本政策と M&A
配当は連結配当性向30%以上を基本とし、2026年3月期の配当は約11億円、配当性向は2割台前半だった。自社株買いも機動的に使うとしているが、規模は小さい。
過去の資本の使い方で目立つのは、旧本社の不動産や遊休地の売却と、現金の蓄積だ。買収で価値を壊した履歴は目立たない。一方、純現金は126億円と時価総額の3割台まで積み上がり、株主に戻る道筋が見えにくい。
2026年5月に中期経営計画と買収防衛策の継続が開示された。時価総額が小さく、純現金が厚い会社なので、買収や再編の対象になりうる。ただし防衛策があるため、無条件に買われる前提は置かない。株主還元の厚さが、この会社の評価を大きく左右する。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
識別機はカジノの機械の心臓部で、読み取りを誤れば顧客が損をする。この市場で首位級の自社は、認証の壁と実績に守られている。北米では設備投資の回復が続き、ゲーミングは直近も堅調だった。2026年3月期の売上減は、国内の新紙幣特需とスマート遊技機専用ユニットの特需が終わった反動で、本業の弱さではない。実際、2027年3月期の第1四半期は売上が35%増えている。
純現金126億円は時価総額の3割を超え、下値は固い。配当性向の引き上げや自社株買いに踏み切れば、一気に評価が変わる。日本の統合型リゾート、インド、東南アジアで新設が進めば、台数は今の1.2倍以上に増える。長期ビジョンの売上550億円、営業利益55億円は夢物語ではない。
識別機は一度採用されれば、部品の入替まで長く使われる。入替と補修の需要が収益を支える点も、見逃せない。
競合に対する優位は、接触型イメージセンサによる読み取り精度の高さにある。カジノの運営者は、誤認識で止まる機械を嫌う。精度が高い部品は、多少高くても選ばれる。値段を物価並みに上げ続けても、離れにくい構造だ。
慎重な見方
利益が薄すぎる。2026年3月期の営業利益は25億円で、売上316億円の8%。山の年でも13%だった。部品メーカーとして、値段は機械メーカーとカジノ事業者に握られている。中期計画の目標は、前の3か年でも達せなかった。
キャッシュレス賭けが広がれば、紙幣口そのものが要らなくなる。北米の一部の州ではすでに電子財布での賭けが始まっている。識別機は他社の機械に載せる部品なので、機械の側の設計が変われば、一気に不要になる。
純現金は厚いが、戻る保証がない。10年で純現金が積み上がる一方、配当性向は2割台にとどまった。戻らない現金は、帳簿の額面の価値がない。直近の純利益47億円も、営業外や特別要因の一過性で、本業の稼ぎは25億円。
将来の賭けの形が変われば、積み上げた技術の優位は部品ごと失われる。小さな会社が市場の転換期を乗り切るには、資金の余力に加えて、新しい柱が要る。
競合のCPIは大手の傘下で資金力があり、ITLなど新興も技術を追う。精度の差が縮めば、値段で競う局面になる。会社自身も、海外の新市場への進出が遅れたと認めている。成長の手札が少ないことが、足元の弱さだ。
どちらに重みを置いたか
事業の質は強気の見方に分があるが、値段に対する儲けの薄さと、キャッシュレス化という置き換えの脅威は慎重な見方が重い。中立を最も厚く置き、慎重側の確率をやや強めた。本質価値は今の時価総額を下回るが、純現金が下支えするため、悲観でも傷は浅い。強気の言い分は、北米の首位と現金の厚みという事実に基づく。慎重な言い分は、薄い利益と置き換えの脅威という、将来の見立てに基づく。事実より見立てのほうが外れやすいので、極端に寄せず、慎重側を少しだけ厚くした。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 1,636 円445 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 460 円125 億円)。 今の値に割り戻すと 1,050 円285 億円、今との差 −19.0%、 期待の年率 +4.9%(資本コスト 8.3%)→ やや割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 3,072 円835 億円 | 736 円200 億円 | +193.6% | +11.4% | 305 円83 億円 |
| やや楽観 | 20% | 2,239 円608 億円 | 626 円170 億円 | +120.9% | +8.2% | 573 円156 億円 |
| 中立 | 34% | 1,935 円526 億円 | 552 円150 億円 | +91.8% | +6.7% | 846 円230 億円 |
| やや悲観 | 25% | 969 円263 億円 | 258 円70 億円 | −5.5% | −0.6% | 307 円83 億円 |
| 悲観 | 13% | 329 円90 億円 | 184 円50 億円 | −60.4% | −8.8% | 67 円18 億円 |
| 加重平均 | 100% | 1,636 円445 億円 | 460 円125 億円 | +61.6% | +4.9% | 2,097 円570 億円 |
今の株価時価総額 1,297 円352 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.3% を下回るほど割高。
楽観 8% カジノ投資と新市場の追い風で、識別機の首位が一段と太る10年 利益 54 億円 · PER 14.1 倍 · 株価時価総額 3,072 円835 億円
北米の既存カジノに加え、日本の統合型リゾート、インド、東南アジアで新設が進み、識別機の需要が今より広がる。自社は読み取り精度の高さで北米の首位を守り、新市場でも先に認証を取って台数を増やす。海外コマーシャルは、人手不足でセルフレジと無人店舗が増える欧州で伸びる。中期計画の 10 年目標(売上 550 億円、営業利益 55 億円)に近い規模に届く。
営業利益率は 12% 台に乗る。過去 12 年の山である 13% には届かない。余った現金は買収に使わず、配当と自社株買いで厚く戻す。現金を使う賭けが残り、識別機が装置の中の必須部品であり続けた世界だ。
- グローバルゲーミング:数量 50.0(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 7.40(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 370 億円・営業利益 78 億円。50万台・単価7.4万円、営業利益率21.0%
- 海外コマーシャル:数量 38.0(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 2.20(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 84 億円・営業利益 8 億円。38万台・単価2.2万円、営業利益率9.0%
- 国内コマーシャル:数量 6.5(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 5.30(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 3 億円。6.5万台・単価5.3万円、営業利益率10.0%
- 遊技場向機器:数量 3.6(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 12(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 43 億円・営業利益 4 億円。3.6万台・単価11.9万円、営業利益率10.0%
倍率:事業の純利益 53 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.7% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.0%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 14.09 倍、時価総額 833 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:新市場の立ち上がりと北米の首位の維持が重なる必要があり、連続して当たる確率は高くない。過去の中計の目標(売上 550 億円)も未達で、楽観は低めに置いた。
やや楽観 20% 現金の需要が残り、北米の首位を守って堅実に伸びる10年 利益 40 億円 · PER 12.9 倍 · 株価時価総額 2,239 円608 億円
現金とチケットで遊ぶ習慣は、カジノの中ではしぶとく残る。北米のスロット機の入替が続き、自社の台数は今より 1 割ほど増える。値段は物価並みに上がり、新しい読み取り技術で値崩れを避ける。
海外コマーシャルも欧州で売上を積むが、利益率は低いままだ。国内は新紙幣の特需が消えた後の平常に戻り、遊技場向機器は店舗数の減少でじわりと縮む。全社の営業利益率は 10% 強。強気の筋書きほどの勢いはないが、会社の計画に近い道だ。還元は配当性向 4 割台で続く。
長期ビジョンの売上 550 億円には届かず、460 億円ほどで足踏みする。規模が増えても、本社費と開発費が物価で重くなるため、利益の伸びは売上より緩い。
- グローバルゲーミング:数量 45.0(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 7.10(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 320 億円・営業利益 64 億円。45万台・単価7.1万円、営業利益率20.0%
- 海外コマーシャル:数量 35.0(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 2.04(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 71 億円・営業利益 6 億円。35万台・単価2.04万円、営業利益率8.0%
- 国内コマーシャル:数量 6.0(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 5.09(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 31 億円・営業利益 3 億円。6.0万台・単価5.09万円、営業利益率9.0%
- 遊技場向機器:数量 3.4(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 11(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 39 億円・営業利益 4 億円。3.4万台・単価11.4万円、営業利益率9.0%
倍率:事業の純利益 39 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.5% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 12.91 倍、時価総額 590 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:北米カジノの設備投資が堅調で、現金の需要が残る見方。直近の売上が 376 億円から 316 億円へ落ちたが、ゲーミングは北米の牽引で堅調だった。
中立 34% 現金は減るが残り、台数は横ばいで物価分だけ稼ぐ10年 利益 34 億円 · PER 12.4 倍 · 株価時価総額 1,935 円526 億円
識別機は、現金を扱う装置が動き続ける限り入替の需要がある。北米のカジノはキャッシュレス化の話が出ても、スロット機の台数は大きくは減らず、自社の出荷は今の 40 万台を少し上回る程度で落ち着く。
値段は物価並みの 1.34 倍。人件費と部材も同じだけ上がるため、利益率は大きく動かない。営業利益率は 10% 弱で、過去 12 年の山を超えない。国内の新紙幣特需は終わり、遊技場向機器は店の減少で縮むが、いずれも全体では小さい。稼ぎの 7 割はゲーミングが握る構図は変わらない。配当性向は 5 割ほどに引き上げられ、純現金は大きく増えも減りもしない。
- グローバルゲーミング:数量 42.0(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 7.10(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 298 億円・営業利益 58 億円。42万台・単価7.1万円、営業利益率19.5%
- 海外コマーシャル:数量 33.0(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 2.04(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 67 億円・営業利益 5 億円。33万台・単価2.04万円、営業利益率7.0%
- 国内コマーシャル:数量 5.5(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 5.09(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 28 億円・営業利益 2 億円。5.5万台・単価5.09万円、営業利益率8.0%
- 遊技場向機器:数量 3.2(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 11(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 37 億円・営業利益 3 億円。3.2万台・単価11.4万円、営業利益率9.0%
倍率:事業の純利益 33 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 8.6% が k 8.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 12.3 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.3 倍 + 余った現金(戻り方込み)90 億円。全体の PER 12.35 倍、時価総額 494 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:識別機の需要が横ばいで、値段が物価並みに上がる中心の筋書き。強気と慎重のどちらにも極端に寄せず、最も厚くした。
やや悲観 25% キャッシュレス賭けが広がり、台数も値段も押される10年 利益 16 億円 · PER 10.1 倍 · 株価時価総額 969 円263 億円
カジノで現金を使わない遊び方が広がる。スマホの電子財布から直接賭ける仕組みで、チケットと紙幣を機械で受ける場面が減る。自社の出荷は 1 割ほど減り、識別機そのものの値段も、中国勢などの安い製品に引かれて物価に追いつかない。
海外コマーシャルは新市場の開拓が遅れたまま、遊技場向機器は店舗数の減少で小さくなる。営業利益率は 6% 弱まで下がり、赤字の年も混じる。会社は配当を守るが、自社株買いは止まる。ためた現金は事業の穴埋めに少し使われる。
北米の首位は残るが、市場そのものが細るため、首位であることの価値が目減りする。国内の新紙幣特需は戻らず、欧州の商業向けも伸びない。会社は固定費の削減で営業黒字は保つが、成長の絵は描けなくなる。
- グローバルゲーミング:数量 36.0(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 6.40(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 230 億円・営業利益 37 億円。36万台・単価6.4万円、営業利益率16.0%
- 海外コマーシャル:数量 28.0(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 1.80(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 50 億円・営業利益 2 億円。28万台・単価1.8万円、営業利益率4.0%
- 国内コマーシャル:数量 4.8(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 4.60(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 22 億円・営業利益 1 億円。4.8万台・単価4.6万円、営業利益率5.0%
- 遊技場向機器:数量 2.6(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 10(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 27 億円・営業利益 1 億円。2.6万台・単価10.2万円、営業利益率5.0%
倍率:事業の ROE が k 8.25% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値なので PER は 1÷k = 11.4 倍まで。キャッシュレス化で台数と値段が押される筋書き。稼ぐ力(純利益 ÷ k)を上限に、その 9 割弱の 10.08 倍に置いた。余った現金は谷で食う前提で 0.75 倍の 67.5 億円(戻り方 0.5)を別に足した。
確率:キャッシュレス化の流れは世界で確かで、慎重な見方に十分な根拠がある。ただし賭場での全面移行には規制と利用者の慣れが要り、速度は読みにくい。
悲観 13% カジノの現金が消え、識別機が部品として値下がりする10年 利益 −6 億円 · PBR 0.3 倍 · 株価時価総額 329 円90 億円
北米の主要州でキャッシュレス賭けが標準になり、スロット機から紙幣口が消える。識別機は新設の機械には載らず、既存機の補修用に縮む。出荷は今の半分近くまで落ち、値段も崩れる。
固定費が重く、営業損益は赤字に沈む。会社は固定費の削減と事業の縮小を進めるが、技術の優位は市場ごと失われる。残るのは手元の現金と、売れる資産だ。配当は最低水準に絞られる。
手元の現金は、赤字の穴埋めと構造改革の費用で、半分ほどに目減りする。かつての「北米カジノの識別機の首位」という評価は、部品の一つに格下げされる。それでも、無借金のため会社が倒れることはなく、清算に近い価値が下の床になる。
- グローバルゲーミング:数量 22.0(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 5.00(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 110 億円・営業利益 7 億円。22万台・単価5.0万円、営業利益率6.0%
- 海外コマーシャル:数量 20.0(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 1.50(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 30 億円・営業利益 1 億円。20万台・単価1.5万円、営業利益率2.0%
- 国内コマーシャル:数量 3.0(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 3.80(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 11 億円・営業利益 0 億円。3.0万台・単価3.8万円、営業利益率3.0%
- 遊技場向機器:数量 1.5(自社の出荷台数(万台/年))× 価格 8.50(1 台あたり平均販売額(万円・名目))→ 売上 13 億円・営業利益 0 億円。1.5万台・単価8.5万円、営業利益率3.0%
倍率:赤字で稼ぐ力に値段が付かないため、床は純現金と売れる資産の税後で見る。今の自己資本 358 億円に 0.25 倍。
確率:識別機が部品として値崩れし、主要市場で現金が消える構造的な負け。技術の置き換えは起きれば速いので、5% を超える確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
グローバルゲーミング
カジノのスロット機に載せる紙幣識別機とチケット処理ユニット。北米が中心で、マカオ・欧州にも出す。
| 数量自社の出荷台数(万台/年) | 価格1 台あたり平均販売額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 40.0 | 5.30 | 212 | 38 |
| 10 年後 中立 | 42.0 | 7.10 | 298 | 58 |
取り方:世界のカジノ向け識別機の出荷を年 100 万台前後、自社シェアを 4 割と推定し、40 万台と置いた(独立の統計は無く、スロット機の設置台数と入替年数からの推定)。売上 212 億円を台数で割って 1 台 5.3 万円。営業利益は開示が無く、全社 25 億円を本社費 19.5 億円とセグメントに割った推定。
海外コマーシャル
セルフレジ・券売機・自販機・キオスク向けの紙幣識別機と還流ユニット。欧州が中心。
| 数量自社の出荷台数(万台/年) | 価格1 台あたり平均販売額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 31.0 | 1.52 | 47 | 3 |
| 10 年後 中立 | 33.0 | 2.04 | 67 | 5 |
取り方:売上 47 億円(決算説明の通期見通し)を、1 台 1.5 万円前後の単価から 31 万台と推定した。台数は開示が無い。営業利益は推定。
国内コマーシャル
飲食チェーンの券売機などに入る紙幣還流ユニット。2024 年の新紙幣更新の特需が終わった。
| 数量自社の出荷台数(万台/年) | 価格1 台あたり平均販売額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 6.0 | 3.80 | 23 | 2 |
| 10 年後 中立 | 5.5 | 5.09 | 28 | 2 |
取り方:通期見通しの 20 億円に、その他の売上を足した約 23 億円。1 台 3.8 万円として 6 万台と推定。新紙幣特需の反動が出た年なので、台数は山より低い。営業利益は推定。
遊技場向機器
パチンコ店の貸機ユニット・紙幣搬送などの周辺機器。スマート遊技機の専用ユニットの特需が終わった。
| 数量自社の出荷台数(万台/年) | 価格1 台あたり平均販売額(万円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4.0 | 8.50 | 34 | 3 |
| 10 年後 中立 | 3.2 | 11 | 37 | 3 |
取り方:通期見通しの 32 億円に端数を足して約 34 億円。専用ユニットの単価を 8.5 万円前後とみて 4 万台と推定。台数は開示が無い。営業利益は推定。
リスクと懸念
キャッシュレス賭けへの置き換え
カジノの賭けがスマホの電子財布などへ移れば、スロット機から紙幣口が消える。識別機は機械に載せる部品なので、機械の設計が変わると需要が一気に減る。いちばん大きな構造リスク。
北米カジノの設備投資の波
売上は2021年3月期の170億円から2025年3月期の378億円まで振れた。カジノの設備投資は景気と規制に左右され、谷では識別機の入替が先送りされる。固定費が重く、利益は売上よりもはるかに大きく動く。
新紙幣特需の反動と国内の縮小
2024年の新紙幣への切り替え需要は終わり、国内コマーシャルは平常に戻る。遊技場向機器もパチンコ店の減少で長期に縮む。2026年3月期の減収はその表れで、同じ特需は20年に一度しか来ない。
米国の通商政策
北米向けの売上が大きく、関税や通商の摩擦で価格や調達の条件が変われば、利益が圧迫される。会社も次期の逆風に米国の通商政策リスクを挙げている。
競合の技術追随と値下げ
CPIやITLなど大手が読み取り技術で追いつけば、先行の価値が薄れる。新興国の安価な製品に引かれて、値段が物価に追いつかなくなる恐れもある。
余った現金が戻らない
純現金が時価総額の3割台まで積み上がり、配当性向は低かった。増配の動きはあるが、自社株買いの規模は小さい。現金が使われず眠るなら、その分の価値は割り引かれる。
今後の分かれ目
- 北米の主要カジノで電子財布での賭けが標準になり、新設の機械に紙幣口が載らなくなったら
- やや悲観・悲観の確率を大きく上げる。識別機の台数と値段の前提を見直す。
- 配当性向を5割以上に引き上げるか、数十億円規模の自社株買いを続けたら
- 余った現金の戻り方を0.5から1.0に引き上げて見る。評価は大きく上がる。
- 日本の統合型リゾートやインドなどで新設が決まり、識別機の受注が増えたら
- 楽観・やや楽観の確率を上げる。台数の伸びを1.2倍以上で見る。
- 2027年3月期の営業利益が会社の予想30億円を下回ったら
- 利益率の前提を下げる。部品の値決め力が弱いと見る。
- 海外コマーシャルが欧州で新市場を取り込み、売上が60億円を超えたら
- ゲーミング以外の柱ができたと見て、寿命の評価を上げる。
- 他社からの買収提案や再編の動きが出たら
- 防衛策の扱いと提示の価格を確かめる。純現金の価値が反映されるかを見る。
見ておくもの
- 北米カジノの設備投資と、スロット機の入替台数
- グローバルゲーミングの売上と営業利益率
- 電子財布で賭ける仕組みの規制と普及の状況
- 配当性向と自社株買いの規模、純現金の水準
- 中期経営計画の進み具合(売上550億円、営業利益55億円)
倍率と資本コストの決め方
台数はカジノ向け識別機の市場を年100万台、自社シェアを4割と置いた推定で、独立の統計は無い。価格は物価並み(10年1.34倍)を基本にし、弱気では競争で1.2倍とした。営業利益率は過去12年の山である13%を超えない範囲で、中立は10%弱。倍率は利益ベースの正当化PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(kは8.25%=基本7.5%にquality +1.25%、gは4%、残る割合は普通の1/2)の上限に、楽観8.5割、やや楽観8割、中立9割で置いた。ROEがkを下回るやや悲観・悲観は稼ぐ力を上限にした。純現金126億円のうち、運転資金36億円を除く90億円を余った現金として分け、戻り方は実績が弱いので0.5にした。直近の純利益47億円は一過性とみて、流れの起点は予想の23億円にした。新リース会計基準は、店舗を持たない製造業なので影響は小さい。今の株価に合わせて決めてはいない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10.9→14.09 倍・やや楽観 PER 9.3→12.91 倍・中立 PER 9.9→12.35 倍・やや悲観 PER 9.5→10.08 倍)。
資本コスト 8.3% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +1.25% = 8.75%。北米の首位という強みとキャッシュレス化の脅威は、前者を堀に、後者を寿命と筋書きに分けて表した。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.75% → 8.50%。