結論
島精機製作所は、セーターなどを編むコンピュータ横編機の老舗であり、縫い目のない一着を丸ごと編む「ホールガーメント」で知られる。筆者の結論は、割高である。いちばんの理由は、帳簿の厚みと稼ぐ力が、大きくかけ離れていることだ。
自己資本は823億円あり、時価総額の2.7倍に当たる。ただ、営業利益は2026年3月期も17億円の赤字で、直近12期のうち6期が営業赤字だった。経常と純利益が黒字になったのは、為替と受取配当などの営業外の収益のおかげにすぎない。棚卸資産は244億円と売上の7割を超え、売上債権も189億円ある。
会社は中期経営計画の目標を、今年5月に売上550億円・営業利益70億円から、410億円・3億円へ大きく引き下げた。受注は前期に18%減り、受注残は4割減った。今期の第1四半期も営業損失で、通期の黒字には下期の大きな回復が要る。
筆者は、10年後の中立で売上520億円、営業利益34億円、営業利益率6%台と見る。ROEは3%ほどにとどまり、資本コストに届かない。帳簿の厚さは、そのまま株主の価値にはならない。確率で重みをつけた価値は、今の時価総額の4割ほどにとどまる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、島精機は「立派な看板を持つが、稼げていない会社」に映る。
技術の堀は本物に見える。ホールガーメントは独自で、顧客が一度機械を入れれば、ソフトと部品でつながり続ける。ただ、堀があっても、それが利益に変わっていない。営業利益は12期で6期が赤字で、利益率が18〜20%だった2017〜2018年の姿は、遠い。
本質価値は、10年後に株主の手元に残る利益で測る。筆者は、10年後の中立の純利益を27億円ほどと見る。自己資本823億円に対するROEは3%ほどで、資本コストに届かない。帳簿の厚さは、ためた利益が額面未満の価値しか生んでいないことを意味する。
資本の使い方も気になる。棚卸資産が売上の7割を超え、中計の目標は何度も引き下げられた。研究開発費を削る決断が見えない。
安全域は、資産の厚さにある。現預金と売上債権、土地・建物は、悪い筋書きでも時価総額の3割から4割を支える。ただ、特別に安い値段ではない。
何で稼ぐ会社か
島精機の稼ぎ方は、機械を売り、その後の部品と保守で稼ぎ続けることだ。
中心は横編機で、2026年3月期の売上は239億円と全体の7割を占める。セーターやニット製品を編む機械で、コンピュータで編み方を制御する。特にホールガーメントは、縫い合わせの工程をなくし、一着を丸ごと編む。布を裁断して縫う手間と、余った生地の無駄を省けるのが売りだ。
デザインシステムは、編み物のデザインを画面上で作り、編み機に送るソフトと機器で、売上は30億円。手袋・靴下編機は5億円と小さい。その他の60億円には、自動裁断機や部品などが入る。
売上の約8割は海外で、中国、バングラデシュ、イタリアなどに顧客がいる。生産は和歌山県に集中し、研究開発費は33億円と売上の1割に近い。
セグメントの利益は合計で44億円あるが、研究開発費などの全社の費用が約61億円あり、営業利益は赤字になる。ここが、この会社の構造的な課題である。
創業は1961年、和歌山市で三伸精機として始まり、翌年に今の社名になった。研究・設計・生産の中心は今も和歌山にあり、海外には英国・イタリア・韓国・スペイン・米国・タイ・中国・香港などに販売・サービスの子会社を置く。
優良さと弱いところ
島精機の強みは、編み機の技術と、デザインから編みまでをつなぐ一貫したシステムにある。ホールガーメントは、他社がまねしにくい独自の技術だ。顧客が一度機械を入れると、デザインソフトと部品・保守で、長く付き合う関係が続く。会社は、コンピュータ横編機の世界シェアは首位級だと説明する。
弱みは三つある。第一に、市場の見方との食い違いだ。調査会社は世界の横編機市場を約21億ドル、つまり3,000億円強と見る。島精機の横編機の売上239億円は、その1割にも届かない。首位級の自己申告と、調査の数字が合わない。
第二に、中国の低価格機との競争だ。有価証券報告書も、競争の激化を挙げた。第三に、費用の重さだ。研究開発費と全社費用が、売上の2割近くを食う。
資本効率は低い。ROEは過去10年の中央値がマイナス1.5%、直近は1.0%だ。自己資本比率は75%と厚いが、それは使われない資本の積み上がりでもある。
経営の評価は厳しくなる。前の中計は、ホールガーメントの販売が想定を下回って未達に終わり、今回の中計もわずか2年で目標を大きく引き下げた。10年後に売上2,000億円・営業利益率25%という姿は、筆者には現実の計画というより願望に見える。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
島精機が属するのは、ニットを編む機械の世界市場だ。
調査会社によれば、横編機の世界市場は2025年に約21億ドルで、2030年に約29億ドルへ年6.6%で伸びる。アジアが最大で、最も速く伸びるとされる。ただしこの数字は名目の出荷額で、島精機の取り分が伸びる保証にはならない。
いま起きているのは、地域ごとの二極化だ。バングラデシュは2024年7月の混乱から回復し、島精機の主力機種の販売が戻った。イタリアでは、高級ブランドと取引先が持ち直した。一方、中国は、香港系の大口顧客の影響で数量が前年を下回り、低価格機の投入も遅れた。
ファッション業界は、大量生産の在庫を減らし、受注に応じて作る方向に動いている。縫い目のないニットを作れるホールガーメントには、この流れが追い風になりうる。ただ、実際の販売は想定を下回ってきた。
循環の位置は、受注が前期に18%減り、受注残が4割減ったため、底の近くにある。会社は今期の売上を22%増の410億円と見るが、第1四半期は前年を27%下回った。
従業員は連結で1,654人。市場の回復が遅れると、固定費の重さが利益を直撃する構造は変わらない。
資本政策と M&A
株主還元の方針は、安定配当を基本に、連結配当性向40%を目安とする。2026年3月期の配当性向は79%だった。自社株買いは、市場環境を見て判断するとされ、実績はない。
資金の面では、有利子負債が約137億円ある。現預金156億円と相殺すると、純負債はほぼゼロだ。財務の強さは自己資本比率75%で十分に保たれている。
政策保有株式は、上場9銘柄で簿価が56億円ほどある。今期は三菱UFJフィナンシャル・グループの株を全て売却した。取締役会は毎年、保有の可否を見直すとしている。
大株主は、和島興産が8.85%、信託銀行、紀陽銀行、三菱UFJ銀行などだ。筆頭株主の持ち分は1割に満たず、買収の防衛は固くない。別の試算では10年内の公開買付けの確率は2割ほどとされるが、具体的な開示はない。
還元の置き方:10年の中立で、純利益の合計の6割ほどを配る。年7億円ほどの配当の水準を最低限とし、利益が出ない筋書きでは配当を減らす前提だ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
島精機は、技術で勝てる会社だ。ホールガーメントは、縫う手間と生地の無駄を省く独自の技術で、世界の縫製工場が人手不足と環境規制に直面する中で、価値が高まる。バングラデシュは回復し、イタリアの高級ブランド向けも戻った。中国の落ち込みは、顧客の大口案件の影響が大きく、構造的な負けとは言い切れない。
会社の財務は厚い。自己資本は823億円、自己資本比率は75%で、時価総額の2.7倍だ。仮に利益が戻れば、評価は大きく切り上がる。過去には営業利益率が20%を超えた時期があり、2018年3月期には営業利益が149億円あった。固定費が重い分、売上が増えれば利益は急に増える。
構造改革も動き始めた。三菱UFJ株の売却、経営基盤の再構築、中計の目標の現実的な見直しは、立て直しの出発点だ。自動裁断機やソリューションの新しい柱も育つ。今の値段は、帳簿に対しても、過去の稼ぐ力に対しても、あまりに安い。
仮に10年後に売上が過去の山の7割まで戻れば、営業利益は100億円に迫る。株価は、その可能性をほとんど織り込んでいない。
慎重な見方
島精機は、稼げない構造を直せていない。営業利益は12期で6期が赤字で、2026年3月期も17億円の損失だった。黒字の純利益は、営業外の収益のおかげにすぎない。今期の第1四半期も営業損失で、売上は27%減った。通期の黒字予想には、下期に大きな回復が要るが、受注残は4割減っている。
中国の低価格機の競争は強く、有価証券報告書も競争の激化を挙げる。島精機は、価格では勝てず、技術の差だけで勝つ必要がある。ホールガーメントの販売は、前の中計の想定を大きく下回った。
帳簿の厚さは、見かけほど価値がない。棚卸資産は売上の7割を超え、売上債権は長い回収期間が問題になる。前期は棚卸の評価損、貸倒引当、減損で143億円の純損失を出した。ROEが資本コストに届かない会社では、ためた利益は額面未満の価値になる。
研究開発費は売上の1割ある。それでも新製品が売れていない。会社は10年後に売上2,000億円・営業利益率25%を描くが、願望にしか見えない。
どちらに重みを置いたか
強い方は慎重な見方だ。技術の堀は認めるが、それが利益に変わった実績が12期のうち半分で欠けている。確率は、中立に3割、やや悲観と悲観に合わせて4割台を置いた。強気の当たりは、前の中計でも外れた経緯があり、確率を低く抑えた。
なお、現預金・売上債権・土地が悲観の床を支えるため、悲観の深さは、今の自己資本の1割台にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 821 円278 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 199 円67 億円)。 今の値に割り戻すと 457 円155 億円、今との差 −48.0%、 期待の年率 +1.5%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 2,500 円848 億円 | 492 円167 億円 | +240.0% | +13.0% | 239 円81 億円 |
| やや楽観 | 17% | 1,248 円423 億円 | 251 円85 億円 | +70.3% | +5.5% | 255 円86 億円 |
| 中立 | 30% | 835 円283 億円 | 221 円75 億円 | +20.1% | +1.8% | 317 円107 億円 |
| やや悲観 | 27% | 398 円135 億円 | 147 円50 億円 | −38.0% | −4.7% | 147 円50 億円 |
| 悲観 | 18% | 280 円95 億円 | 59 円20 億円 | −61.5% | −9.1% | 61 円21 億円 |
| 加重平均 | 100% | 821 円278 億円 | 199 円67 億円 | +15.8% | +1.5% | 1,019 円346 億円 |
今の株価時価総額 880 円298 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 8% ホールガーメントが量産の標準になり、横編機が一気に息を吹き返す 利益 81 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 2,500 円848 億円
ホールガーメントが縫製のいらない服の作り方として量産の主流に入る。縫い合わせの人手を省けることが、バングラデシュなどの工場でも決め手になり、受注は実質で7割増える。サステナビリティの規制が、在庫を持たない受注生産の編み方を後押しする。
自動裁断機やデザインシステムのソリューション事業も伸び、売上の4割ほどを占める。部品・保守の収入が厚くなり、利益率が安定する。
研究開発費の売上比は下がり、10年後の売上は750億円、営業利益率は13%台。過去の山(20%超)には届かないが、赤字体質を完全に抜ける。ここまで来れば、市場は島精機を循環株ではなく、省人化の技術株として評価する。
- 横編機(コンピュータ横編機・ホールガーメント):数量 406(当社の実質の取り分(世界の横編機市場 × シェア、今の値段基準・億円))× 価格 138(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 560 億円・営業利益 123 億円。実質1.7倍(ホールガーメントの採用拡大)、価格指数138
- デザインシステム・手袋靴下編機・その他:数量 135(当社が売る機器・ソフト・部品の実質の量(今の値段基準の売上・億円))× 価格 138(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 186 億円・営業利益 45 億円。実質1.4倍(裁断機・デザインシステム・部品)、価格指数138
倍率:事業の純利益 80 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.6% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 848 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:ホールガーメントの採用が10年で何倍にも広がり、中国の低価格機との差も保たれるという、強気の当たりが重なる必要がある。前の中計も販売の下振れで大きく未達に終わっており、確度は低い。
やや楽観 17% 横編機が中国を除く新興国と欧州で戻り、黒字を取り戻す 利益 40 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 1,248 円423 億円
横編機は、バングラデシュなどの新興国と欧州で戻る。中国は低価格機の遅れが響き、取り分は減るが、全体としては増える。
自動裁断機とデザインシステムは着実に伸び、保守・部品の収入も積み上がる。研究開発費の見直しが進み、全社の費用が売上の伸びほどには増えない。
10年後の売上は630億円、営業利益は50億円ほど。会社の中計が掲げる25%の利益率からは遠いが、赤字の連続からは脱する。配当は40%の方針を守り、自己資本は増え続ける。ただし、それでもROEは4%台にとどまり、資本コストには届かない。ホールガーメントの採用は進むが、爆発的な広がりにはならない。
- 横編機(コンピュータ横編機・ホールガーメント):数量 346(当社の実質の取り分(世界の横編機市場 × シェア、今の値段基準・億円))× 価格 135(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 467 億円・営業利益 89 億円。実質1.45倍、価格指数135
- デザインシステム・手袋靴下編機・その他:数量 121(当社が売る機器・ソフト・部品の実質の量(今の値段基準の売上・億円))× 価格 135(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 163 億円・営業利益 34 億円。実質1.25倍、価格指数135
倍率:事業の純利益 40 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 4.2% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 423 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:バングラデシュの回復とイタリアの高級ブランド向けの戻りが続き、中国の落ち込みを埋める。会社の今期予想が実現する程度の回復が、10年で続くという堅い見立て。
中立 30% 中立:横編機は薄く戻り、黒字には復帰するが、利益率は低いまま 利益 27 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 835 円283 億円
横編機は、市場の回復に連れて数量が実質で2割ほど戻る。バングラデシュとイタリアは持ち直すが、中国は低価格機の競争で取り分が細る。ホールガーメントは高級ブランドや一部の量産向けで広がるが、期待ほどの伸びにはならない。価格は物価を下回る年2.7%の上昇にとどまる。
自動裁断機とデザインシステム、部品・保守は堅調で、利益率は2割ほどを保つ。
全社の費用は、研究開発費を計画の37億円から33億円へ減らした実績があり、物価ほどには増やさない。10年後の売上は520億円ほど、営業利益は34億円、営業利益率は6%台だ。黒字には戻るが、ROEは3%ほどにとどまる。
- 横編機(コンピュータ横編機・ホールガーメント):数量 286(当社の実質の取り分(世界の横編機市場 × シェア、今の値段基準・億円))× 価格 130(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 372 億円・営業利益 71 億円。実質1.2倍、価格指数130(中国の低価格機との競争で物価を下回る)
- デザインシステム・手袋靴下編機・その他:数量 108(当社が売る機器・ソフト・部品の実質の量(今の値段基準の売上・億円))× 価格 134(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 145 億円・営業利益 30 億円。実質1.12倍、価格指数134(物価並み)
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 2.9% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 283 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:市場全体は名目で年6%台の伸びとされるが、中国の低価格機との競争で島精機の取り分は広がらない。会社の今期予想(営業利益3億円)と、第1四半期の営業損失を見ると、回復は緩やかだ。
やや悲観 27% 黒字に戻れず、赤字を減らしながら縮小する 利益 −5 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 398 円135 億円
横編機の数量は戻らず、価格は中国メーカーの攻勢で物価を下回る。ホールガーメントの採用は伸び悩み、新製品の開発費だけが重くのしかかる。
全社の費用は、研究開発費の見直しで少し減らすが、売上の落ち込みに追いつかない。営業赤字は10年たっても続き、年10億円ほどの損失が出る。
配当は40%の方針を守れず、減らされる。ただ、自己資本比率が75%と厚く、現預金と売上債権もあるので、すぐには資金が尽きない。評価は稼ぐ力ではなく、持っている資産の価値で決まる。縮小の費用も重く、帳簿の厚さがそのまま手元に残るわけではない。
- 横編機(コンピュータ横編機・ホールガーメント):数量 239(当社の実質の取り分(世界の横編機市場 × シェア、今の値段基準・億円))× 価格 122(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 291 億円・営業利益 38 億円。実質横ばい、価格指数122(競争で物価を大きく下回る)
- デザインシステム・手袋靴下編機・その他:数量 96.4(当社が売る機器・ソフト・部品の実質の量(今の値段基準の売上・億円))× 価格 122(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 118 億円・営業利益 20 億円。実質横ばい、価格指数122
倍率:黒字に戻れず稼ぐ力は負のままなので、売れる資産の税後を床にした(約 135 億円)。PBR はこの床を今の自己資本で割った値。
確率:営業赤字が直近12期のうち6期あり、前期も営業段階では赤字だった。中国の低価格機が広がり、費用の削減が間に合わない姿は、十分にありうる。
悲観 18% 中国勢に市場を奪われ、赤字が止まらない 利益 −50 億円 · PBR 0.1 倍 · 株価時価総額 280 円95 億円
中国メーカーの低価格機が、汎用の横編機の市場をほとんど奪う。島精機は高級ブランド向けだけに絞られ、数量は実質で3割減る。ホールガーメントは採用が進まず、開発費を回収できない。
固定費は売上ほどには減らせず、営業損失は年50億円を超える。棚卸資産や売上債権の評価損も積み上がり、設備と在庫の一部は減損になる。
配当はほぼ止まり、自己資本は大きく減る。ただ、現預金と土地・建物が残り、清算に近い値は時価総額の3割ほどに支えられる。会社の価値は、資産の売却価値でしか測れなくなる。10年後の売上は270億円ほどまで縮み、研究開発費を大きく削らないと赤字を止められない。
- 横編機(コンピュータ横編機・ホールガーメント):数量 167(当社の実質の取り分(世界の横編機市場 × シェア、今の値段基準・億円))× 価格 110(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 184 億円・営業利益 6 億円。実質0.7倍、価格指数110(値崩れ)
- デザインシステム・手袋靴下編機・その他:数量 77.1(当社が売る機器・ソフト・部品の実質の量(今の値段基準の売上・億円))× 価格 110(名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる))→ 売上 85 億円・営業利益 7 億円。実質0.8倍、価格指数110
倍率:中国勢に市場を奪われ、赤字が続いて稼ぐ力はない。事業の縮小と閉鎖の費用を見込み、売れる資産の税後を床にした(約 95 億円)。PBR はこの床を今の自己資本で割った値。
確率:中国の低価格機が汎用の横編機を奪い、ホールガーメントも伸びず、赤字が10年続く、という二重の負けが必要。実際に営業赤字は直近12期で6期あり、FY2025は119億円の営業損失を出した。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
横編機(コンピュータ横編機・ホールガーメント)
セーターなどのニット製品を編む機械の製造・販売と、保守・部品。縫い目のない一着を編むホールガーメントが技術の核。
| 数量当社の実質の取り分(世界の横編機市場 × シェア、今の値段基準・億円) | 価格名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 239 | 100 | 239 | 26 |
| 10 年後 中立 | 286 | 130 | 372 | 71 |
取り方:有価証券報告書の横編機セグメント(売上238.7億円・利益25.6億円)を置いた。台数と市場規模の開示が無く、調査会社の市場規模(約21億ドル)と会社の首位級の説明が合わないため、シェアは置かず、売上を実質の取り分として置く。価格は物価の指数(今=100)、rev_factor=0.01で億円に換算する。数量は実質で、物価は価格の側に入れた。
デザインシステム・手袋靴下編機・その他
編み物のデザインシステム、手袋・靴下編機、自動裁断機や部品などの事業を合算したもの。
| 数量当社が売る機器・ソフト・部品の実質の量(今の値段基準の売上・億円) | 価格名目の価格指数(今=100。物価3%の分だけ上がる) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 96.4 | 100 | 96 | 18 |
| 10 年後 中立 | 108 | 134 | 145 | 30 |
取り方:デザインシステム関連(売上30.4億円・利益6.7億円)、手袋靴下編機(5.2億円・0.8億円)、その他(60.8億円・10.5億円)を合算した。数量は開示が無いので売上を実質の量として置く。価格は物価の指数(今=100)、rev_factor=0.01で億円に換算する。
リスクと懸念
営業赤字の常態化
2026年3月期の営業利益は17億円の赤字で、直近12期のうち6期が営業赤字だった。経常・純利益の黒字は営業外の収益に頼っている。全社の費用が約61億円と、セグメント利益の合計44億円を上回る構造が変わらなければ、黒字化は難しい。
中国の低価格機との競争
有価証券報告書も、競争の激化を中国メーカーの台頭として挙げた。中国での販売は前年を下回り、低価格機の投入も遅れた。汎用の横編機で価格競争に巻き込まれれば、高級ブランド向けだけに絞られる。
ホールガーメントの採用の遅れ
前の中計は、ホールガーメント横編機の販売が想定を下回ったため、大きく未達になった。技術の優位が実際の量産の採用につながっていない。縫い合わせの人手が安い国では、導入の理由が弱い。
棚卸資産と売上債権の重さ
棚卸資産は244億円と売上の7割を超え、売上債権は189億円。顧客の支払いが長く、回収の遅れも有価証券報告書が挙げる。前期は評価損・貸倒引当・減損で純損失143億円を出しており、再発の恐れがある。
中計の信頼性
中計は2年で売上550億円から410億円、営業利益70億円から3億円へ引き下げた。今期の第1四半期も営業損失で、通期予想の達成は下期の大きな回復が前提になる。10年後に売上2,000億円・営業利益率25%を描く姿は、実績と離れている。
生産の和歌山への集中
生産が和歌山県に集中し、自然災害や感染症の影響を受けやすい。売上の約8割が海外で、為替と貿易摩擦、輸出管理の影響も受ける。
今後の分かれ目
- 横編機の受注残が3年続けて増え、営業利益が黒字になる
- 赤字体質を抜けた証拠になり、強気側の確率を引き上げる材料になる。
- 全社の費用(研究開発費など)を売上の1割未満に絞る
- セグメントの利益が営業利益に残りやすくなり、中立の営業利益が大きく上がる。
- 2027年3月期の営業利益が会社予想の3億円に届かない
- 中計の信頼がさらに下がり、やや悲観側の確率を引き上げる。
- 中国メーカーが高級品の領域にも低価格で入り込む
- ホールガーメントの優位が薄れ、悲観側の筋書きに近づく。
- 自己株式の取得や大幅な配当の引き上げが発表される
- 厚い自己資本の還元が進み、資本効率の評価が上がる。ただし利益が戻らないままの還元は、体力を削る。
- 第三者が公開買付けを提案する
- 時価総額が帳簿の4割にとどまる点が、買い手の動機になる。少数株主にはプレミアムの機会になる。
見ておくもの
- 横編機の受注高・受注残(四半期)
- 営業利益の黒字化と、全社費用(研究開発費など)の削減
- 棚卸資産と売上債権の圧縮
- 中国・バングラデシュ・イタリアの販売の動き
- ホールガーメントの新規顧客・量産の採用事例
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価(PBR 0.37倍)を見ずに、その時点のROEと資本コスト9.5%から正当化PERを出した。ROEがkを大きく下回るので、中立は上限1÷kの9割に置いた。やや悲観と悲観は稼ぐ力が負なので、売れる資産の税後(約135億円と約95億円)を床にした。数量は実質、価格は物価1.34倍が基本で、競争のある筋書きは下げた。全社の費用は、研究開発費を計画の37億円から33億円に減らした実績の分だけ、物価の伸びより抑えた。調査会社の市場規模と会社の首位級の説明が合わないため、シェアは根拠にしていない。過去や同業の倍率は使っていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 8.21→10.53 倍・やや楽観 PER 6.45→10.53 倍・中立 PER 5.85→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +2.0% = 9.5%。赤字が続くが、自己資本比率75%で存続の疑いはなく、上乗せ(extra)はしない。