結論
平田機工は、自動車や半導体の工場に納める生産ラインを一品ずつ設計して作る会社だ。熊本に本社を置き、売上は自動車関連が半分弱、半導体関連が4割弱を占める。筆者の結論は割高である。事業は伸びるが、稼ぎの質が資本コストに届かないからだ。
追い風は、生成AI向けの半導体投資だ。ウェーハを運ぶ装置の需要が増え、半導体関連の売上は直近1年で2割近く伸びた。ただし利益は逆に減った。部品の値上がりを客先の価格に移せず、保証費用もかさんだ。売上が伸びても儲けが増えない。ここが最大の弱点である。
自動車関連は利益率が1割を超え、いまは会社の屋台骨になっている。ただしエンジンや変速機の設備が先細る中、電動化向けへ乗り換えられるかが問われる。
10年後の中立では、半導体が主役になり営業利益は今の1.6倍ほどになる。それでも自己資本の利益率は7%台にとどまる。資本コストの9%を下回る水準で、積み上げた利益は額面どおりの価値を持たない。筆者は、この会社の本質価値は今の時価総額の半分前後だと見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、この会社を「持ち続けたい事業」とは見にくい。稼いだ利益のうち、設備や在庫、売掛金に回る分が多く、株主の手元に残るお金が細いからだ。大型ラインは検収後にしか入金がなく、売上が伸びるほど運転資金がかさむ。
良い点はある。半導体の搬送装置で、世界の需要の波に乗る位置にいる。自動車関連も利益率が1割を超え、営業の習熟が進んでいる。経営は前の計画の未達を認め、収益の改善を最優先に置いた。この率直さは評価できる。
だが、堀は浅い。価格を決める力は弱く、部品の値上がりを転嫁できない年がある。ROEが資本コストを超えるまでは、積み上げる利益は額面どおりの価値を持たない。
安全域の目で見ると、今の値段は、半導体の伸びと利益率の改善が両方うまくいく姿を相当に前提にしている。筆者は、中立の10年でROEが7%台にとどまるとみる。その場合、払うべき値段は今よりずっと低い。割高と言い切る。
何で稼ぐ会社か
稼ぎの源は、注文を受けてから作る専用の生産設備だ。顧客の工場の要望に合わせ、搬送ロボットや組立機を組み合わせたラインを納める。一台として同じものはない。
自動車関連が最大で、エンジン・変速機・電動化部品の組立ラインや、車載の電子部品の組立設備を、国内と北米の自動車メーカーに納めている。バッテリーの充放電設備も手がける。顧客の投資計画に左右される点は、受注生産の宿命である。
半導体関連は成長の担い手だ。ウェーハを製造装置に出し入れするロードポートやEFEM、真空ロボットなどを作る。300ミリと200ミリのウェーハに加え、角形の大型パネルにも対応する。中期経営計画は、ここの生産能力を5割増やし、海外に2拠点を設ける方針だ。
その他自動省力機器は、液晶パネルや家電の設備が中心で、縮小を前提に続ける事業と位置づけられている。
新しい芽も育てている。電池、制御盤、電動化部品を2027年度にそれぞれ50億円規模にする目標を掲げ、がん治療用の超音波装置の薬事承認も狙う。ただし、いまの利益への寄与はごく小さい。
優良さと弱いところ
堀、つまり他社がまねできない強みは、深くはない。受注生産のラインは、顧客の設計と一体で作るため、納めた後の保守や増設では優位がある。だが新規の入札では、価格と納期で競る場面が多い。
半導体関連では、ウェーハ搬送の世界大手に川崎ロボティクス・ローツェ・ブルックスなどがおり、上位の寡占に平田は入っていない。装置の前面をまとめて一式で納められる点は強みだが、価格を自由に決められる立場ではない。
利益率の低さが何よりの弱点だ。営業利益率は過去10年のほぼ全期間で4〜10%に収まる。自己資本の利益率の中央値は7%台で、資本コストを超えたことが少ない。売上が伸びる年でも、部品の値上がりを転嫁できず、保証費用が膨らむと利益が消える。
資金繰りの形も重い。大型ラインは工期が長く、代金が検収後に入るため、営業のお金の流れがマイナスになりやすい。中期経営計画も、前受金を顧客に求める方針を示している。
経営の姿勢は前向きだ。前の中計の目標を未達と認め、収益改善を最優先に掲げた。2025年に社長が交代し、前田繁氏(64歳)が率いる。まだ結果は出ていない。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
半導体関連の追い風は本物だ。生成AI向けのチップを作る工場が増え、ウェーハを運ぶ装置の台数が伸びている。筆者は、装置前面の搬送モジュールの市場が10年で5割弱増えるとみる。ただし、競合のローツェやブルックス、川崎ロボティクスも同じ波に乗る。シェアが勝手に増える保証はない。
自動車関連は逆風と追い風が入り混じる。エンジンや変速機の設備は先細る。一方、電動化部品やバッテリー、車載電子部品の設備は増える。国内の車の台数は人口減で減る。差し引きでは、市場の量は10年でやや縮むと筆者は見る。
自動車の組立ラインの競合は、ドイツのクカなどの欧州勢と国内の設備メーカーだ。新興国の設備メーカーが力をつければ、価格の競り合いは強まる。
その他の液晶や家電の設備は、投資が国外に移り、先細る領域だ。
循環のどこにいるかといえば、半導体は上昇の途中、自動車は横ばいから緩やかな下りの手前だ。生成AIの投資は波があり、一度は調整が入るとみておくのが安全だろう。受注生産の会社は、その調整を受注の減少として真っ先に受ける。
業界全体のノートでは、機械要素部品・FA機器の中立は年率3〜5%の拡大とされる。平田の半導体は市場の平均より速く、自動車とその他は遅い。これを足し合わせると、会社全体では名目で年4%台の伸びになる。
資本政策と M&A
還元は連結配当性向35%が目安だ。中期経営計画は3年間で150億円の還元を見込み、株価や自己資本比率を見て自社株買いも検討するとしている。実際に2024年11月に10億円までの買い付けを決めた。ただし規模は小さい。
お金の使い道は、成長投資が主だ。3年で設備投資に80億円超、研究開発に50億円、戦略投資に40億円超を充てる。借金は、買収や提携に使う考えを示している。筆者は、ここに気を配っている。受注生産で利益率の低い会社が借金で買収を重ねれば、価値を壊しかねない。
過去には、2007年3月期と2018年3月期に株が増えた期がある。希薄化は過去にあり、同じことが再び起きないとは言えない。
株主は信託銀行の口座が最大で、創業家の持ち分は小さい。経営を縛る大株主がいないため、買収の提案を受ける余地はある。ただし、そうした動きは確認できていない。政策保有株は売却を進める方針で、上場株の保有は4銘柄とされる。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
半導体の追い風は構造的だ。生成AI向けの投資が10年にわたって続き、ウェーハ搬送の装置は台数も単価も伸びる。会社は半導体の生産能力を5割増やし、海外に2拠点を設ける。能力が増えれば、受注を取りこぼさず、売上が積み上がる。
利益率は上がる余地が大きい。いま半導体の利益率が1桁にとどまるのは、部品の値上がりを客先に移せなかった一時的な要因が大きい。価格の見直しが進めば、利益率は1割を超え、2桁台に入る。自動車関連はすでに1割を超えており、エンジニアリング中心への転換で、さらに安定する。
電動化への移行も追い風だ。バッテリー、制御盤、電動化部品の設備は新しい柱で、2027年度に3つで150億円規模をめざす。がん治療装置が承認されれば、まったく新しい収益源になる。
資本政策も動く。中計はROE9.3%を掲げ、自社株買いも検討すると明言した。経営が資本効率に本気で向き合うなら、10年で利益は大きく伸び、評価も変わる。
慎重な見方
ROEは過去10年のほぼ全期間で資本コストを下回ってきた。売上が伸びた年も、利益は伸びない。直近の半導体関連は、売上が2割近く伸びたのに、営業利益は減った。伸びることと儲かることは別だと、数字が示している。
半導体の搬送は、ローツェ、ブルックス、川崎ロボティクスなど、実績ある大手がひしめく。平田は上位の寡占に入っておらず、価格を決める力が弱い。生成AIの需要が一巡すれば、設備投資は急に冷える。受注生産の会社は、その波をまともに受ける。
自動車関連は、エンジンや変速機の設備が先細る。電動化の設備に乗り換えられるかは、顧客の投資計画しだいだ。新興の設備メーカーが力をつければ、価格競争は強まる。
収益の質も見劣りする。半導体関連の利益率は1桁で、売上が伸びても儲けの増え方が鈍い。同じ装置を作る大手が増産を進めれば、平田が値段を守れる保証はない。電動化向けの新しい設備も、受注のたびに採算が違うので、計画どおりに積み上がるとは限らない。
お金の面も重い。大型ラインは代金が検収後に入るため、成長するほど運転資金が膨らむ。ROEを9%台に乗せるという中計の目標は、前の計画でも掲げて未達だった。同じ計画を繰り返しているだけだ。
どちらに重みを置いたか
半導体の需要の強さは強気の見方が正しい。だが、需要が強いことと株主の取り分が増えることは別で、利益率とROEの低さを指摘する慎重な見方のほうが重い。そのため確率は中立に最も厚く置いたうえで、悲観側に少しだけ寄せた。
中立では、10年後の営業利益は今の1.6倍ほどに伸びるが、ROEは7%台にとどまる。資本コストを下回るので、積み上がった利益の価値は額面に届かない。楽観でも倍率は伸びにくい。結論は割高。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 3,790 円1,161 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 933 円286 億円)。 今の値に割り戻すと 2,390 円732 億円、今との差 −31.3%、 期待の年率 +3.1%(資本コスト 8.0%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 8,098 円2,480 億円 | 1,698 円520 億円 | +181.5% | +10.9% | 980 円300 億円 |
| やや楽観 | 22% | 5,434 円1,664 億円 | 1,143 円350 億円 | +89.0% | +6.6% | 1,447 円443 億円 |
| 中立 | 34% | 3,837 円1,175 億円 | 980 円300 億円 | +38.4% | +3.3% | 1,638 円502 億円 |
| やや悲観 | 24% | 1,526 円467 億円 | 620 円190 億円 | −38.3% | −4.7% | 515 円158 億円 |
| 悲観 | 10% | 1,142 円350 億円 | 294 円90 億円 | −58.7% | −8.5% | 144 円44 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,790 円1,161 億円 | 933 円286 億円 | +35.7% | +3.1% | 4,723 円1,446 億円 |
今の株価時価総額 3,480 円1,066 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 10% 半導体が主役になり、利益率も2桁に乗る 利益 166 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 8,098 円2,480 億円
生成AI向けの半導体投資が10年にわたって続き、ウェーハ搬送の市場は今の2倍に育つ。平田は増やした生産能力と海外の拠点を生かし、装置前面を一式で納める強みで受注を伸ばして、シェアも少し上げる。部品の値上がりは価格に移せるようになり、半導体関連の利益率は1割を大きく超える。
自動車関連は、北米と国内の大型案件に絞り、エンジニアリング中心の事業へ転換して、利益率は1割を超えたまま安定する。電池・制御盤・電動化部品も新しい柱に育つ。
会社は余剰の資金を配当と自社株買いに回し、還元は純利益の半分近くに達する。全社の営業利益率は12%台、ROEは12%近くまで上がる。受注生産屋から、半導体の搬送で稼ぐ会社へ変わる、最も理想的な10年である。
- 自動車関連:数量 60.0(自動車向け生産設備(組立・搬送・検査ライン)の市場規模(億ドル、推定、今の値段で測った実質))× 価格 9.71(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 583 億円・営業利益 73 億円。営業利益率12.5%
- 半導体関連:数量 60.0(半導体製造装置の前面搬送モジュール(ロードポート・EFEM・搬送ロボット)の市場規模(億ドル、推定、実質))× 価格 19(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 1,113 億円・営業利益 150 億円。営業利益率13.5%
- その他自動省力機器:数量 22.5(液晶・家電などの自動省力機器の市場規模(億ドル、推定、実質))× 価格 6.74(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 152 億円・営業利益 9 億円。営業利益率6.0%
倍率:事業の純利益 166 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.9% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍。全体の PER 14.94 倍、時価総額 2,480 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:生成AI向け投資の長期化、半導体の価格転嫁の定着、電動化設備の拡大が10年のあいだ重なる必要があり、確度は高くない。10%に置いた。
やや楽観 22% 半導体が着実に伸び、自動車は安定する 利益 124 億円 · PER 13.4 倍 · 株価時価総額 5,434 円1,664 億円
半導体は市場の拡大に乗って着実に伸び、搬送市場は今の1.7倍になる。価格転嫁も部分的に進み、半導体関連の利益率は1割台に乗る。シェアは少し上がる。
自動車関連は、エンジンや変速機の設備が先細る一方、電動化部品とバッテリーの設備が穴を埋める。利益率は1割強で安定する。液晶や家電の設備は縮小を続ける。
全社の営業利益率は11%近くまで上がり、中計の目標である営業利益100億円を大きく超える。還元は純利益の4割弱。ROEは9%台に乗るが、資本コストをわずかに上回る程度で、倍率の伸びは限られる。事業は良くなるが、投資家の取り分が劇的に増えるわけではない10年である。
- 自動車関連:数量 58.8(自動車向け生産設備(組立・搬送・検査ライン)の市場規模(億ドル、推定、今の値段で測った実質))× 価格 9.71(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 571 億円・営業利益 66 億円。営業利益率11.5%
- 半導体関連:数量 51.0(半導体製造装置の前面搬送モジュール(ロードポート・EFEM・搬送ロボット)の市場規模(億ドル、推定、実質))× 価格 17(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 872 億円・営業利益 100 億円。営業利益率11.5%
- その他自動省力機器:数量 22.0(液晶・家電などの自動省力機器の市場規模(億ドル、推定、実質))× 価格 6.74(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 148 億円・営業利益 8 億円。営業利益率5.5%
倍率:事業の純利益 124 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.3% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 13.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 13.4 倍。全体の PER 13.42 倍、時価総額 1,664 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体の伸びと利益率の改善が部分的に進む、実現性の比較的高い組み合わせ。受注生産の利益率は過去の実績から急には上がらないが、能力増強の効果は出る。
中立 34% 中立:半導体は伸びるが、ROEは資本コストに届かない 利益 94 億円 · PER 12.5 倍 · 株価時価総額 3,837 円1,175 億円
半導体関連は、生成AI向けの需要に支えられ、搬送市場が今の1.5倍近くまで伸びる。平田はシェアを保ち、売上は今の2倍になる。ただし競合との競り合いが続き、部品の値上がりを転嫁しきれない年も出る。利益率は1割に届かない。
自動車関連は、エンジンや変速機の設備が先細り、電動化の設備で補う。市場の量は少し縮み、利益率は1割強を保つ。液晶や家電の設備は縮む。
全社の営業利益率は9%台で、今よりわずかに上がる程度である。還元は配当性向35%に自社株買いが少し加わる程度で、ROEは7%台にとどまり、資本コストの9%を下回る。事業は大きくなるが、株主にとっての稼ぎの質は変わらない10年だ。
- 自動車関連:数量 57.0(自動車向け生産設備(組立・搬送・検査ライン)の市場規模(億ドル、推定、今の値段で測った実質))× 価格 9.71(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 554 億円・営業利益 58 億円。営業利益率10.5%
- 半導体関連:数量 43.5(半導体製造装置の前面搬送モジュール(ロードポート・EFEM・搬送ロボット)の市場規模(億ドル、推定、実質))× 価格 16(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 702 億円・営業利益 67 億円。営業利益率9.5%
- その他自動省力機器:数量 22.0(液晶・家電などの自動省力機器の市場規模(億ドル、推定、実質))× 価格 6.74(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 148 億円・営業利益 7 億円。営業利益率5.0%
倍率:事業の純利益 94 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.4% が k 8.00% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 12.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 12.5 倍。全体の PER 12.5 倍、時価総額 1,175 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:半導体は市場並みより速く伸び、自動車は先細る。利益率は1割に届かない。会社の過去の実績と、機械要素部品・FA機器の中立の置き方に最も近い。
やや悲観 24% 半導体の競争が強まり、自動車も縮む 利益 50 億円 · PER 7.5 倍 · 株価時価総額 1,526 円467 億円
半導体の搬送は、大手の競合が増産で攻勢をかけ、平田は価格を下げて受注を守る。シェアは1割ほど落ち、利益率は6%に低下する。自動車関連は、電動化設備への乗り換えが遅れ、エンジンや変速機の設備の縮小が進んで、市場の量は今の85%になる。
国内と北米のメーカーが投資を絞る年が続き、受注の振れも大きくなる。利益率は8%まで下がる。液晶や家電の設備はほぼ撤退に近づく。
全社の営業利益率は6%台で、ROEは4%台に落ちる。会社は中計の目標を再び達成できず、還元は配当性向35%どまりとなる。事業は残るが、資本コストを大きく下回る稼ぎのまま10年がたつ。
- 自動車関連:数量 51.0(自動車向け生産設備(組立・搬送・検査ライン)の市場規模(億ドル、推定、今の値段で測った実質))× 価格 9.23(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 471 億円・営業利益 38 億円。営業利益率8.0%
- 半導体関連:数量 34.5(半導体製造装置の前面搬送モジュール(ロードポート・EFEM・搬送ロボット)の市場規模(億ドル、推定、実質))× 価格 15(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 501 億円・営業利益 30 億円。営業利益率6.0%
- その他自動省力機器:数量 18.8(液晶・家電などの自動省力機器の市場規模(億ドル、推定、実質))× 価格 6.06(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 114 億円・営業利益 2 億円。営業利益率2.0%
倍率:ROE 4.4% が k 8% を大きく下回り、PER は 1÷k = 11.1 倍が上限。競争の激化で利益率が 6% に落ち、稼ぐ力は細る。上限の 7 割に届かない 7.5 倍に置いた。
確率:ROEが資本コストを下回り続けてきた実績が最も素直に続く形で、半導体の競争激化と自動車の縮小が重なる。慎重な見方の指摘が重いので、やや悲観に24%を置いた。
悲観 10% 構造的に競り負け、赤字の受注生産屋になる 利益 0 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 1,142 円350 億円
半導体では、ローツェやブルックスなど実績のある大手に競り負け、平田のシェアは3割近く落ちる。生成AI向けの投資が一巡して設備投資が冷え込み、受注が急に細る。自動車関連は、電動化の流れについていけず、エンジンや変速機の設備の需要が消える。新興の設備メーカーにも価格で押される。
大型ラインの代金が検収後にしか入らないため、売上が落ちると運転資金の負担が重く、借金に頼る。保証費用が膨らみ、営業利益はほぼゼロになる。工場や在庫の評価損も出て、自己資本が減る。
配当は大きく削られ、増資や資産売却で資金を確保する局面もありうる。優良な受注生産屋としての評価は失われ、売れる資産の価値が株価の床になる、同社にとって最も厳しい10年である。
- 自動車関連:数量 39.0(自動車向け生産設備(組立・搬送・検査ライン)の市場規模(億ドル、推定、今の値段で測った実質))× 価格 8.25(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 322 億円・営業利益 6 億円。営業利益率2.0%
- 半導体関連:数量 25.5(半導体製造装置の前面搬送モジュール(ロードポート・EFEM・搬送ロボット)の市場規模(億ドル、推定、実質))× 価格 11(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 288 億円・営業利益 −1 億円。営業利益率-0.5%
- その他自動省力機器:数量 12.5(液晶・家電などの自動省力機器の市場規模(億ドル、推定、実質))× 価格 5.39(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍))→ 売上 67 億円・営業利益 −3 億円。営業利益率-5.0%
倍率:稼ぐ力はほぼ消えるので、純現金と売れる資産の税後を床にした。約 350 億円とみた。PBR はこの床を今の自己資本 767 億円で割った値。
確率:半導体で競り負け、自動車も電動化の波に乗れず、赤字が続く。過去に赤字の期(2009年3月期)があり、増資の履歴もあるため、10%の確率は残す。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
自動車関連
エンジン・変速機・電動化部品・車載電子部品の組立ラインやバッテリーの充放電設備を、国内と北米の自動車メーカーに納める事業。
| 数量自動車向け生産設備(組立・搬送・検査ライン)の市場規模(億ドル、推定、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 60.0 | 7.25 | 435 | 51 |
| 10 年後 中立 | 57.0 | 9.71 | 554 | 58 |
取り方:売上 434.8 億円・営業利益 51.4 億円(2026/03 期の開示)。市場規模は世界の自動車向け生産設備を約 60 億ドルと推定した(開示は無く、組立・搬送・検査ラインの投資規模からの目安)。今のシェアは約 4.8%。数量は今の値段で測った実質、物価の分は価格に入れた。
半導体関連
ロードポート・EFEM・真空ロボットなど、ウェーハを製造装置に出し入れする搬送装置。300ミリ・200ミリと大型パネルに対応。
| 数量半導体製造装置の前面搬送モジュール(ロードポート・EFEM・搬送ロボット)の市場規模(億ドル、推定、実質) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 30.0 | 12 | 361 | 24 |
| 10 年後 中立 | 43.5 | 16 | 702 | 67 |
取り方:売上 361.1 億円・営業利益 24.2 億円(同)。市場規模はウェーハ搬送の前面モジュールを約 30 億ドルと推定した(川崎ロボティクス・ローツェ・ブルックスなどの規模と装置の台数からの目安)。今のシェアは約 8.0%。数量は実質、物価の分は価格に入れた。
その他自動省力機器
液晶パネルや家電などの生産設備。縮小を前提に続ける事業。
| 数量液晶・家電などの自動省力機器の市場規模(億ドル、推定、実質) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 25.0 | 5.03 | 126 | 7 |
| 10 年後 中立 | 22.0 | 6.74 | 148 | 7 |
取り方:売上 125.7 億円・営業利益 6.7 億円(同)。液晶・家電などの市場を約 25 億ドルと推定した(推定)。今のシェアは約 3.4%。数量は実質、物価の分は価格に入れた。
リスクと懸念
半導体の利益率が上がらない
半導体関連は売上が2割近く伸びたのに、営業利益は減った。部品の値上がりを客先の価格に移せず、保証費用もかさんだ。この構造が続けば、伸びが利益に結びつかず、10年の筋書き全体が崩れる。
大型ラインの運転資金
大型の生産ラインは工期が長く、代金が検収後にしか入らない。成長するほど運転資金が膨らみ、営業のお金の流れがマイナスになりやすい。有利子負債が増えれば、金利上昇の影響も受ける。中計は前受金の受領を顧客と協議するとしている。
顧客の投資計画への依存
受注生産のため、自動車メーカーや半導体メーカーの投資計画が1年ずれるだけで、売上と利益が大きく振れる。生成AI向けの投資が一巡すれば、半導体関連の受注も急に冷える。
自動車の電動化への移行
エンジンや変速機の組立設備は、長期では先細る。電動化部品やバッテリーの設備で穴を埋められるかは、顧客の投資の方向しだいで、平田が選べる話ではない。新興の設備メーカーの台頭も重い。
大手との競争
ウェーハ搬送では、川崎ロボティクスやローツェ、ブルックスなど実績ある大手が先行する。増産で攻勢をかけられれば、平田は価格を下げて受注を守る場面が出る。
計画の未達の繰り返し
前の中計は、営業利益100億円、ROE11%の目標を掲げて未達に終わった。今の計画も同じ営業利益100億円を2027年度に再び掲げており、達成できなければ経営への信頼が揺らぐ。
今後の分かれ目
- 半導体関連の営業利益率が2桁に乗り、2期続けて維持されたら
- 価格転嫁が定着した証拠であり、楽観・やや楽観の確率を上げてよい。受注の単価と保証費用の推移を確認する。
- 半導体関連の売上が伸びても営業利益が減る状態が続いたら
- 利益率の構造的な低さが確認されたとして、やや悲観・悲観側に確率を移す。
- 生成AI向けの半導体投資が急に冷え込んだら
- 半導体関連の受注が減り、やや悲観側の確率を上げる。受注残の変化を確認する。
- 営業のお金の流れが2期続けて大きなマイナスになったら
- 運転資金の負担が重いと見て、悲観側の確率を上げ、有利子負債の推移を確認する。
- ROE 9%台と営業利益100億円を2027年度に達成したら
- 中計が機能している証拠として、やや楽観側に寄せる。ただしROEが9%を超え続けるかを見る。
- 他社が平田に買収や資本提携を持ちかけたら
- 買う側の価格を含め、再編の筋書きを別に考える。いまは確認できていない。
見ておくもの
- 半導体関連の売上と営業利益率の推移(価格転嫁の定着)
- 営業のお金の流れと有利子負債の推移
- 受注残と、自動車の電動化設備の受注の割合
- 中計の目標(営業利益100億円・ROE9.3%)の達成度と自社株買いの実績
倍率と資本コストの決め方
自動車・半導体・その他の3つに分け、実質の市場規模×シェア、物価並みの価格で10年の売上を積んだ。市場規模とシェアは開示が無く推定。倍率は、ROE が k を下回る中立は 1÷k を上限に、稼ぎの質から決めた(楽観・やや楽観は式の正当化 PER の 9 割・8.5 割)。k は基本 7.5% に quality +1.5% で 9.0%、g は 4%。今の株価・PER・PBR は倍率の根拠にしていない。悲観は稼ぐ力でなく売れる資産の床(約 350 億円、推定)を今の自己資本に掛けた。純負債は小さくリースの約束は重くないので、家賃は今と同じ形のまま置いた。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 11.1→14.94 倍・やや楽観 PER 9.6→13.42 倍・中立 PER 8.9→12.5 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +1.5% = 9.0%。大型ラインの検収が遅れて運転資金が重いことや、顧客投資の波は筋書きと確率で表し、k には足さない。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 9.00% → 8.00%。