結論
エコムは、浜松市で乾燥や焼成に使う工業炉をオーダーメイドで作り、他社製を含む炉の点検と改造を請け負う会社だ。筆者の結論は、今の値段はほぼ適正である。法律で毎年の点検が義務づけられた乾燥炉の保守は景気に強く、省エネや電化の改造の需要も 10 年続く。
2026 年 7 月期の営業利益は 5 億円を超え、利益率は 2 割に届いた。借金はなく、時価総額の半分近い現金を持つ。一方で、売上の 3 分の 2 を自動車の工場に頼り、新しい炉の受注は設備投資の波に揺れる。創業家が株の 4 割強を持ち、配当性向は 2 割ほどで、厚い現金が株主に戻る道は細い。
筆者は、保守と改造が積み上がる仕組みを評価する。ただ、現金の半分しか株主の価値に数えられないことと、自動車の投資の波を考えると、大きな安全域があるとまでは言えない。配当性向を約束どおり 3 割に上げ、現金の使い道を示せるかが、評価を一段上げる鍵になる。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、エコムは「小さいが筋のよい事業」だ。法律で義務づけられた点検は、毎年の仕事を約束してくれる。客の工場に入るたびに省エネの改造を提案でき、やがて炉の入れ替えにもつながる。この循環は、資本をあまり使わずに利益を生む。
事業の自己資本利益率は高い。手元の現金を除けば、使っている資本は小さく、稼ぎは資本コストを大きく上回る。だから利益を事業に再び投じられるなら、価値は増える。問題は、その再投資の場が限られていることだ。現金は毎年たまり、配当は控えめで、M&A の額は小さい。
オーナーとして持ちたいかと問われれば、筆者は事業には魅力を感じる。ただし、厚い現金が株主に戻る保証はなく、その半分ほどしか価値に数えられない。払う値段は、事業の価値と現金の半分を足した額にほぼ見合っている。
何で稼ぐ会社か
事業は二つだ。産業システム事業は、塗装の乾燥炉や部品の熱処理炉、セラミックの焼成炉などを、客の工場に合わせて一から設計して作る。2026 年 7 月期の売上は 16 億円、利益は 4 億円あまりだった。強みは本社のテストセンターで行うヒートトライアル、つまり客の製品を実際に温めて最適な熱のかけ方を試す仕組みで、受注の約 7 割がここから生まれる。ガス、電気、赤外線、マイクロ波など熱源の種類が多いことが、他社との違いだ。
もう一つの保守サービス事業は、炉の点検と修理、省エネの改造を請け負う。売上は 10.6 億円で、その 8 割強は他社が作った炉が相手だ。乾燥炉は労働安全衛生法で年 1 回以上の点検が義務で、仕事は毎年めぐってくる。国内にある約 4 万基の工業炉のうち、エコムが手がけるのは 2% 弱にすぎず、伸びしろは大きい。
保守で客の工場に入り、省エネの改造を提案し、やがて炉の入れ替えを受注する。この循環がエコムの稼ぎ方だ。2026 年 8 月には同業のゴダイエンジニアリングを買い、2027 年 7 月期から連結する。
優良さと弱いところ
優良さの核は保守の積み上げにある。点検は法律で義務づけられ、炉を止めれば客の工場も止まるので、値段より信頼で選ばれる。他社製の炉も診られる技術者を抱える会社は多くない。保守の利益率は 2 割台半ばで、景気の谷でも大きく崩れにくい。
新しい炉の側は、ヒートトライアルで客の製品に合った熱のかけ方を先に示せることが強みだ。客は試してから買えるので、失敗の危険が小さい。中外炉工業のような大手が大型の炉を得意とするのに対し、エコムは中小型のオーダーメイドで小回りを利かせる。
弱みは規模と客の偏りだ。売上は 30 億円に満たず、自動車の工場が売上の 3 分の 2 を占める。電気自動車の電池やモーターの仕事も増えているが、自動車の投資が冷えれば受注は落ちる。財務は無借金で自己資本比率は 86% と堅い。ただ、現金をため込みがちで、資本の使い方はまだ発展の途中だ。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
工業炉の需要は、新設より更新と改造に軸足が移っている。国内の製造業の工場は古くなり、炉も同じく年をとる。そこへ脱炭素の流れが加わり、ガスの炉を電気に替える、排熱を回収するバーナを付ける、断熱を強めるといった改造の需要が増えている。電気代やガス代が上がる世界では、省エネの改造は客にとって元の取れる投資だ。
新しい炉の需要は景気の波に乗る。自動車の工場の投資は電気自動車への移り方を見極める動きで一部慎重だが、半導体やデータセンターに関わる部材の工場は投資を増やしている。人手不足で、自動で動く炉や遠くから見守る仕組みの需要も出てきた。エコムは関西電力と組んで、炉を遠隔で見守るクラウドの仕組みを売っている。
競合は、大型の炉の中外炉工業、熱処理の炉の各社、ガス会社の系列など多い。業界は小さな会社が多く、後継ぎのいない会社の買収の機会もある。筆者は、国内の炉の基数は横ばいでも、改造と保守の仕事は物価以上の速さで増えると見る。新しい炉の需要は、自動車の工場の投資の波に合わせて上下を繰り返すだろう。保守の比率が高い会社ほど、この波に強い。
資本政策と M&A
還元の方針は配当性向 30% を目指すとしているが、2026 年 7 月期の実績は 2 割に届かない。増配は続けているものの、利益の大半は現金として社内に残ってきた。創業家の髙梨家が 4 割強、社員持株会が 1 割強を持ち、関西電力とノリタケも少し出資する。
現金は 17 億円ほどあり、運転に要る分を除いても 12 億円は事業に使われていない。経営はこれを M&A に使う方針で、2024 年には豊通テックからバーナの事業を譲り受け、2026 年にはゴダイエンジニアリングを約 1 億円で買った。いずれも小さく、値段も手ごろだ。
創業家の支配が強いので、外からの買収は起きにくい。逆に、上場の維持の費用を嫌って非上場に戻る選択も、将来は排除できない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
保守の仕事は国内 4 万基の工業炉が相手で、エコムのシェアは 2% 弱にすぎない。点検は法律の義務で、景気に左右されない。ノリタケとの協業や関西電力との見守りの仕組みで、他社製の炉の保守を取り込む余地はまだ大きい。保守のシェアが少し上がるだけで、売上は物価以上に伸びる。点検で客の工場に入れることは、営業の費用をかけずに次の注文を取れることを意味する。
脱炭素は 10 年の追い風だ。ガスの炉の電化、排熱の回収、断熱の強化は、電気代とガス代が上がる世界で客の元が取れる投資になる。ヒートトライアルで効果を先に示せるエコムは、この改造の需要を取りやすい。半導体や電池の部材の工場も新しい炉を求めている。
資本の使い方にも伸びしろがある。12 億円の余った現金で、後継ぎのいない小さな炉の会社を買えば、保守の客の数を一気に増やせる。ゴダイエンジニアリングの買収はその第一歩だ。2026 年 7 月期の利益は中期経営計画の目標をすでに超えており、経営の実行力も確かめられた。
慎重な見方
売上の 3 分の 2 は自動車の工場が相手で、その投資は電気自動車への移り方しだいで大きく揺れる。エンジンの部品の熱処理炉は、電気自動車が増えれば数が減る。新しい炉の受注は数件の大きな案件で決まり、1 件の遅れで年の利益が大きく振れる。上場から日が浅く、谷の年の姿をまだ市場に見せていないことも気になる。2026 年 7 月期の 2 割の利益率は、大型の案件と値上げが重なった山と見るべきだ。
規模の小ささも弱みだ。売上 30 億円の会社は、技術者が数人辞めるだけで保守の質が揺らぐ。中外炉工業のような大手や、ガス会社の系列が改造の市場に本腰を入れれば、値段の競争になる。電化の改造では、電力会社の系列の工事会社も競争相手になる。
資本の使い方には疑問が残る。創業家が 4 割強を持ち、配当性向は 2 割ほどで、現金はたまる一方だ。余った現金が株主に戻らなければ、その価値は帳簿の半分にも満たない。小さな会社の M&A は、高値でつかめば価値を壊す危険もある。
どちらに重みを置いたか
強気の見方がやや強い。保守が法律の義務に支えられ、脱炭素の改造が 10 年続くという点は、慎重な見方も崩せない。ただ、自動車への偏りと 2026 年 7 月期の利益率の高さは割り引くべきで、中立の利益率は今より少し低く置いた。確率は楽観側をやや厚くし、悲観は 1 割にとどめた。現金の戻り方は半分とみた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/07 期)
確率で加重した株価時価総額 4,308 円79 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 565 円10 億円)。 今の値に割り戻すと 2,380 円44 億円、今との差 +16.1%、 期待の年率 +9.0%(資本コスト 8.0%)→ やや割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 12% | 7,628 円140 億円 | 817 円15 億円 | +312.0% | +15.2% | 1,014 円19 億円 |
| やや楽観 | 23% | 5,886 円108 億円 | 676 円12 億円 | +220.1% | +12.3% | 1,509 円28 億円 |
| 中立 | 37% | 4,548 円83 億円 | 583 円11 億円 | +150.3% | +9.6% | 1,898 円35 億円 |
| やや悲観 | 18% | 1,628 円30 億円 | 381 円7 億円 | −2.0% | −0.2% | 362 円7 億円 |
| 悲観 | 10% | 629 円12 億円 | 272 円5 億円 | −56.0% | −7.9% | 90 円2 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,308 円79 億円 | 565 円10 億円 | +137.7% | +9.0% | 4,873 円89 億円 |
今の株価時価総額 2,050 円38 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 8.0% を下回るほど割高。
楽観 12% 保守の網と電化の改造で倍の規模に 利益 8 億円 · PER 16.3 倍 · 株価時価総額 7,628 円140 億円
ガスの炉の電化と排熱の回収が、電気代とガス代の高い世界で一気に進む。エコムはヒートトライアルで効果を先に示し、改造と入れ替えの受注を積み上げる。半導体や電池の部材の工場からの新しい炉の受注も増える。
保守では、後継ぎのいない小さな炉の会社をいくつか買い、関東にも拠点を広げて、保守を請け負う炉は 1,300 基に増える。点検の仕事が改造と入れ替えを呼ぶ循環が回り、売上は今の 2 倍を超える。利益率は 2 割を少し上回る水準を保つ。配当性向は 30% に上がり、余った現金の一部が株主に戻る。遠隔の見守りの仕組みも保守の客をつなぎ止める。
- 産業システム(工業炉の製造):数量 48.0(工業炉の受注・納入の件数(件・年、推定))× 価格 0.70(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 34 億円・営業利益 7 億円。48 件 × 1 件 0.70 億円(今の 1.40 倍)、営業利益率 22%
- 保守サービス(点検・修理・省エネ改造):数量 1,300(保守を請け負う工業炉の基数(基、推定))× 価格 0.02(1 基あたり年間の保守・改造の売上(億円・名目))→ 売上 24 億円・営業利益 7 億円。1,300 基 × 1 基 0.0185 億円(今の 1.40 倍)、営業利益率 27%
倍率:事業の ROE(現金の利息を除く純利益÷現金を除く自己資本)は 2 割前後で k 8% を大きく上回る。RONIC=k+1/2×(ROE−k)、g 4% から正当化 PER は約 15 倍。保守の積み上げで質の高い利益なので上限の約 9 割に置いた。余った現金 12 億円は戻り方 0.5 を掛けて足した。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 16.3 倍・時価総額 136 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:保守のシェアの上昇、電化の改造の波、M&A の成功がそろう必要がある。いずれも筋は通るが、小さな会社が同時にこなすのは容易でないので 12% にした。
やや楽観 23% 保守の客が増え、改造が続く 利益 6 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 5,886 円108 億円
保守を請け負う炉は、ノリタケとの協業と遠隔の見守りの仕組みで 1,150 基に増える。点検のたびに省エネの改造を提案し、1 基あたりの売上も物価以上に伸びる。新しい炉は、自動車の電池やモーター、半導体の部材の工場からの受注で件数が 3 割増える。
ゴダイエンジニアリングとの客の紹介し合いも効く。利益率は 2 割をやや下回る水準で落ち着き、営業利益は今の 1.7 倍になる。配当は少しずつ増えるが、現金はなお社内にたまる。株主にとっては、事業の伸びの割に価値の伸びが鈍く見える。それでも事業の自己資本利益率は高いまま保たれる。
- 産業システム(工業炉の製造):数量 42.0(工業炉の受注・納入の件数(件・年、推定))× 価格 0.69(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 29 億円・営業利益 6 億円。42 件 × 1 件 0.69 億円(今の 1.37 倍)、営業利益率 20.5%
- 保守サービス(点検・修理・省エネ改造):数量 1,150(保守を請け負う工業炉の基数(基、推定))× 価格 0.02(1 基あたり年間の保守・改造の売上(億円・名目))→ 売上 21 億円・営業利益 5 億円。1,150 基 × 1 基 0.0183 億円(今の 1.38 倍)、営業利益率 26%
倍率:事業の純利益 6 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.4% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.7%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 15.65 倍、時価総額 103 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:保守のシェアが少しずつ上がり、改造の需要が物価以上に伸びる筋書き。中期経営計画の延長にあり、2026 年 7 月期にすでに計画の利益に届いたので、中立に次ぐ重みにした。
中立 37% 保守が積み上がり、新しい炉は波を描く 利益 5 億円 · PER 14.9 倍 · 株価時価総額 4,548 円83 億円
保守を請け負う炉は 1,000 基に増える。法律の点検の仕事は景気に関係なく続き、省エネの改造の提案で 1 基あたりの売上も物価よりやや速く伸びる。新しい炉は、ゴダイエンジニアリングの分と半導体の部材向けで件数が 2 割ほど増えるが、自動車の投資は一進一退だ。
利益率は 2026 年 7 月期の 2 割から少し下がり、16% 前後で落ち着く。営業利益は今の 1.3 倍になる。配当は配当性向 25% 前後まで上がるが、現金は毎年たまり、使い道は小さな M&A に限られる。事業は堅いが、資本の使い方は今とあまり変わらない。
- 産業システム(工業炉の製造):数量 38.0(工業炉の受注・納入の件数(件・年、推定))× 価格 0.67(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 26 億円・営業利益 5 億円。38 件 × 1 件 0.67 億円(今の 1.34 倍)、営業利益率 19%(今の 26% は山とみる)
- 保守サービス(点検・修理・省エネ改造):数量 1,000(保守を請け負う工業炉の基数(基、推定))× 価格 0.02(1 基あたり年間の保守・改造の売上(億円・名目))→ 売上 18 億円・営業利益 5 億円。1,000 基 × 1 基 0.0180 億円(今の 1.36 倍。改造の比率が少し上がる)、営業利益率 25%
倍率:事業の純利益 5 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 8.00% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.9%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 14.9 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 14.9 倍 + 余った現金(戻り方込み)6 億円。全体の PER 14.91 倍、時価総額 78 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:保守と改造が物価をやや上回って伸び、新しい炉は自動車の投資の波で横ばい気味という、今の延長の筋書き。強気と慎重の言い分の落としどころとして最も重く置いた。
やや悲観 18% 自動車の投資が冷え、新しい炉が細る 利益 2 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,628 円30 億円
電気自動車への移り方が定まらず、自動車の工場は炉の入れ替えを先送りする。エンジンの部品の熱処理炉は数が減り、新しい炉の件数は今より少なくなる。値段の競争も起き、利益率は 1 割台前半に下がる。
保守は法律の点検に支えられて底堅いが、改造の提案は客の財布のひもが固く伸び悩む。営業利益は今より 4 割近く減る。配当は据え置き、現金は社内にたまり続ける。余った現金の一部は、思ったほど効果のない買収に使われる。それでも借金がないので、会社が揺らぐことはない。保守の客の数は大きくは減らず、谷が過ぎれば受注は戻る。
- 産業システム(工業炉の製造):数量 30.0(工業炉の受注・納入の件数(件・年、推定))× 価格 0.62(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 19 億円・営業利益 2 億円。30 件 × 1 件 0.62 億円(今の 1.24 倍)、営業利益率 12%
- 保守サービス(点検・修理・省エネ改造):数量 900(保守を請け負う工業炉の基数(基、推定))× 価格 0.02(1 基あたり年間の保守・改造の売上(億円・名目))→ 売上 15 億円・営業利益 3 億円。900 基 × 1 基 0.0172 億円(今の 1.30 倍)、営業利益率 22%
倍率:事業の ROE は 5% 前後で k 8% を下回るので、PER の上限は 1÷k の約 11.8 倍。受注の細りを映して上限の約 7 割半に置いた。余った現金は谷で一部を使うとみて 0.75 倍に戻り方 0.5 を掛けて足した。(2026-10-22 の式の直しで機械で置き直し、今は PER 9 倍・時価総額 25 億円。上の倍率は置き直す前の値)
確率:自動車の工場の投資が長く冷え、新しい炉の受注が細る筋書き。売上の 3 分の 2 を自動車に頼る以上、無視できない重みを置いた。
悲観 10% 炉の需要が構造的に縮む 利益 0 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 629 円12 億円
自動車の国内の生産が海外へ移り、工場そのものが減る。新しい炉の受注は今の 3 分の 2 に落ち、値段の競争で利益はほぼ出なくなる。電化の改造の市場には大手やガス会社の系列が本腰を入れ、エコムは小回りの強みを生かしきれない。
保守の客も工場の閉鎖で減り、技術者の採用難で受けられる仕事も限られる。営業利益はほぼゼロになる。株主の価値を支えるのは手元の現金だけだが、創業家が経営を握る中で、その現金が配られる保証はない。会社は小さく生き残るが、株主の価値は細っていく。保守の技術者の高齢化も重なり、事業の縮みは止まらない。
- 産業システム(工業炉の製造):数量 22.0(工業炉の受注・納入の件数(件・年、推定))× 価格 0.55(1 件あたりの売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 0 億円。22 件 × 1 件 0.55 億円(今の 1.10 倍)、営業利益率 3%
- 保守サービス(点検・修理・省エネ改造):数量 750(保守を請け負う工業炉の基数(基、推定))× 価格 0.02(1 基あたり年間の保守・改造の売上(億円・名目))→ 売上 12 億円・営業利益 2 億円。750 基 × 1 基 0.0159 億円(今の 1.20 倍)、営業利益率 18%
倍率:稼ぐ力がほぼゼロなので PER は使わず、facts の自己資本 33 億円に PBR 0.35 倍を掛けた。値は床の資産(純現金に戻り方 0.5 を掛けた額と本社の土地の税後)にそろえた。
確率:自動車の国内の生産が大きく縮み、改造でも大手に負ける構造的な負け。保守が法律の義務に支えられ底が固いので、1 割にとどめた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
産業システム(工業炉の製造)
乾燥・焼成・熱処理などの工業炉を、ヒートトライアルで条件を詰めてオーダーメイドで作る。
| 数量工業炉の受注・納入の件数(件・年、推定) | 価格1 件あたりの売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 32.0 | 0.50 | 16 | 4 |
| 10 年後 中立 | 38.0 | 0.67 | 26 | 5 |
取り方:件数の開示は無いので、中小型のオーダーメイドの炉の平均を 1 件 0.5 億円と置き、セグメント売上 16.06 億円から年 32 件と推定した(推定)。数量は件数(実質)、物価と炉の大型化・電化による値上がりは 1 件あたりの売上に入れる。
保守サービス(点検・修理・省エネ改造)
自社製と他社製の工業炉の法定点検・修理・省エネの改造と、遠隔の見守り。
| 数量保守を請け負う工業炉の基数(基、推定) | 価格1 基あたり年間の保守・改造の売上(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/07 | 800 | 0.01 | 11 | 3 |
| 10 年後 中立 | 1,000 | 0.02 | 18 | 5 |
取り方:会社の説明の「国内約 4 万基のうちシェア 2% 弱」から、保守を請け負う炉を約 800 基と推定し、セグメント売上 10.58 億円を割って 1 基あたり年 0.0132 億円とした。基数は実質、物価と改造の比率の上昇は 1 基あたりの売上に入れる。
リスクと懸念
自動車への偏り
売上の 3 分の 2 は自動車の工場が相手だ。電気自動車への移り方を見極める動きで投資が先送りされれば、新しい炉の受注は落ちる。エンジンの部品の熱処理炉は、長い目で見れば数が減る。電池やモーターの仕事で補えるかが分かれ目だ。
大型の案件の振れ
新しい炉は 1 件の金額が大きく、売上 30 億円の会社では数件の遅れで年の利益が大きく変わる。2026 年 7 月期の利益率 2 割は、案件の巡り合わせが良かった面がある。毎年この水準が続くとは限らない。
技術者の確保
保守と改造は人の技術で支えられている。他社製の炉も診られる技術者は育つのに時間がかかり、数人が辞めるだけで受けられる仕事が減る。人件費の上昇を値段に移せなければ、利益率は削られる。
現金の使い道
12 億円ほどの余った現金は、配当性向 2 割では株主に戻りにくい。M&A に使う方針だが、小さな会社の買収は統合の手間がかかり、高値でつかめば価値を壊す。使い道がなければ、現金は帳簿の値打ちを下回る。
創業家の支配
創業家と社員持株会で株の半分以上を持つ。経営の安定には効くが、少数株主の声は届きにくい。将来、上場の費用を嫌って非上場に戻る時、その値段が少数株主に有利になるとは限らない。
今後の分かれ目
- 配当性向を約束どおり 30% 以上に上げ、自己株の取得も始めたら
- 余った現金が株主に戻る道が開け、戻り方を高く見てよくなる。価値は 1 割ほど上がる。
- ゴダイエンジニアリングに続き、保守の客を持つ会社を手ごろな値段で買い続けたら
- 保守の基数が早く増え、やや楽観の筋書きに近づく。
- 自動車の工場の投資が数年にわたり止まったら
- 新しい炉の受注が落ち、やや悲観の筋書きに重みが移る。保守がどこまで支えるかを見る。
- ガスの炉の電化に補助金や規制の後押しが強まったら
- 改造と更新の需要が前倒しで増え、楽観の筋書きに近づく。
- 利益率が 2 年続けて 15% を割ったら
- 2026 年 7 月期は山だったと見て、中立より下の筋書きに重みを移す。
見ておくもの
- 保守サービス事業の売上の伸びと利益率
- ヒートトライアルの件数と受注の残高
- 自動車以外の客の比率
- 配当性向と自己株の取得
- M&A の件数と値段
倍率と資本コストの決め方
倍率は、事業の自己資本利益率が資本コスト 8% を上回ることから、正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g) で上限を出し、その約 8〜9 割に置いた。余った現金 12 億円は事業と分け、戻り方 0.5 を掛けて足した。今の株価は見ていない。facts の実績が 2025 年 7 月期までだったので、2026 年 7 月期の短信の数字(自己資本・純利益・株数)を起点にした。2027 年 7 月期から連結に移り、数字の形が少し変わる。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→16.3 倍・やや楽観 PER 12.8→15.65 倍・中立 PER 12→14.91 倍)。
資本コスト 8.0% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。基本 7.5% + quality 1.0%。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.50% → 8.00%。