結論
小松製作所は油圧ショベル・ブルドーザー・ダンプトラックなど建設機械と鉱山機械で世界2位、キャタピラーに次ぐ規模を持つ。2017年に完了した米ジョイ・グローバル買収(約3,000億円)で超大型の露天掘り・坑内掘り向け鉱山機械をフルライン化し、今では建設機械・車両セグメントの売上の半分超を鉱山機械が占める。資源価格と鉱山会社の投資サイクルに連動する鉱山機械は、アフターマーケット(部品・サービス)収益の比率が高く、建機単体より利益の質が高い。もう一方の柱の建設機械は、中国の住宅不振と供給過剰による循環的な調整が続く一方、北米のインフラ投資と新興国の都市化が相対的な支えになっている。差別化の軸は「スマートコンストラクション」(測量・設計・施工・検査の一体化)と、2008年に世界で初めて商用化した自動運転ダンプトラックFrontRunner(2026年4月に稼働1,000台)である。
2026年3月期は建機需要の一巡とコスト増で営業利益が13.7%減り、ROE 10.7%が出発点になる。10年では鉱山機械の比率がさらに高まる一方、中国建機の停滞で ROE は資本コスト並みに下がると見る。
結果、10年後の中立の時価総額は今の9割強にとどまり、楽観とやや楽観でようやく今を上回る。確率の加重と資本コスト 7.25% の割引では、本質価値は今の時価総額を 35% ほど下回り、総合で割高と出た。鉱山機械の構造的な拡大と、中国建機の長期停滞・値決め力への懸念の両方を踏まえると、今の株価は高めの評価と判断する。
バリュー投資の観点から
オーナー利益の面では、小松製作所は建機の循環に応じて大きく振れる利益のうち、代理店網の維持とICT・自動化への研究開発に一定の再投資が必要な事業である。鉱山機械のアフターマーケット収益が増えるほど再投資の負担に対して自由に使える利益の比率が上がるため、鉱山機械の比率上昇はバリュー投資の観点では歓迎すべき構造変化だと見る。
堀の持続については、代理店・サービス網の密度とKOMTRAXによる予防保全の仕組み、坑内掘り・露天掘り双方をフルラインで持つ数少ない会社という位置づけを評価するだろう。ただし10年後も予測できる事業かという点では、中国メーカーの価格競争力向上という構造的な変化が、新興国市場での値決め力を徐々に削っていく可能性を警戒するはずだ。資源価格や顧客の投資サイクルという自分でコントロールできない変数に業績が強く依存する点も、予測可能性を下げる要因として一次審査で引っかかる。
資本配分についてはジョイ・グローバル買収を評価し、以後大型M&Aを避けて規律を保っている点も評価するだろう。しかし最後の安全域の判断では、今のPBR1.5倍・PER14.5倍という値段は、鉱山機械の構造的な拡大というプラス材料をすでにいくらか織り込んだ水準にあり、中国建機の長期停滞という弱材料を十分に差し引いた値段とは言い切れないため、安全域は大きくないと判断するはずだ。
何で稼ぐ会社か
収益の中心は建設機械・車両セグメントで、売上の9割超を占める。油圧ショベル・ブルドーザー・ホイールローダーなど一般建設機械に加え、2017年完了のジョイ・グローバル買収(約3,000億円、当時最大のM&A)によって超大型の露天掘り向けショベル・ダンプトラックや坑内掘り向け機械を取り込み、鉱山機械の売上が建設機械・車両セグメントの半分を超える規模まで拡大した。鉱山機械は銅・鉄鉱石・石炭など資源価格と鉱山会社の投資サイクルに連動し、本体の販売に加えて部品・サービスといったアフターマーケット収益の比率が高いため、建機単体より利益の質が安定しやすい。残りは産業機械・車両他(プレス機械、半導体露光用エキシマレーザー関連のコマツNTC、フォークリフトの日本輸送機など)とリテールファイナンス(販売金融)。
差別化の軸は2つある。1つは「スマートコンストラクション」で、ドローン測量・3次元設計データ作成・ICT建機による施工・ドローン検査までを一体で提供し、2025年3月時点で世界4万件超の工事現場に導入された。もう1つは自動運転ダンプトラックFrontRunner(AHS)で、2008年に世界で初めて商用化し、2026年4月には大型級自動運転トラックの稼働が1,000台を超え、累計運搬量は115億トンを超えた。キャタピラーの自動運転トラック(Command for Hauling)は2024年末時点で690台にとどまり、台数では小松が先行している。顧客は鉱山会社(BHP・リオティント級の大手から中堅まで)、建設会社、レンタル会社、政府インフラ事業など幅広く、代理店網を通じた直販・直接サービス体制がジョイ・グローバル統合後に強化された。
優良さと弱いところ
堀の中心は、世界的な代理店・サービス網と、稼働監視システムKOMTRAXによる予防保全・部品販売の仕組みにある。建機は故障すれば工事が止まるため、部品供給の速さとサービス拠点の密度がブランドの切り替えコストを高めており、キャタピラーと小松の2社が長年世界シェアの上位を占める構造が続いている。鉱山機械は坑内掘り・露天掘りの両方をフルラインでそろえる会社がキャタピラーと小松以外に乏しく、寡占に近い競争環境にある。
ROEは2025年3月期の13.85%から2026年3月期は10.72%まで下がった。中国建機需要の一巡、原材料・労務費の上昇、為替の影響が重なったためで、建機の循環に業績が素直に連動する体質は変わっていない。弱点は中国市場でのシェアと値決め力で、徐工(XCMG)・三一重工(SANY)といった中国メーカーが低価格帯から中価格帯まで急速に台頭し、世界ランキングでも上位に食い込んでいる。日本国内に強い生産基盤を持つ一方、ドル円の変動が業績を振れさせやすい構造も残る。経営面では大型買収をジョイ・グローバル以降は避け、研究開発とICT・自動化への投資を優先する規律ある資本配分が続いている。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
世界建機市場は2025年に3,600億ドル規模で、2026年はCAGR7%前後の拡大が見込まれるが、中国市場は住宅不振と供給過剰を背景に循環的な調整が続いている。北米はインフラ投資法(IIJA)に続く公共投資と、データセンター建設に伴う土木需要が底堅く、インド・インドネシアなど新興国の都市化・インフラ整備も需要を支える。小松の中国依存度は過去より下がっているが、中国メーカーが自国市場で圧倒的なシェアを握り、東南アジア・アフリカなど新興国市場でも低価格機で存在感を強めている構図は変わらない。
鉱山機械は銅・金・リチウムなど資源需要(データセンター向け電力網投資やEV関連需要を含む)に連動する投資サイクルの中にあり、資源価格が高止まりする局面では鉱山会社の設備投資が活発化し、小松とキャタピラーの寡占的な地位を支える。坑内掘り・露天掘りをフルラインで持つ数少ない会社であるため、鉱山機械の循環が建機の循環と異なるタイミングで動くことが、全社の業績の振れを緩和する効果も持つ。
循環の現在地としては、中国の調整が続く一方で北米・資源国が底堅く、世界全体としては谷からやや持ち直す局面にあると見る。中長期では自動運転・電動化・水素など新しい動力源への対応が競争軸として重要になり、2025〜2027年度の中期経営計画「Driving value with ambition」でも、ICT建機・自動化・多様な動力源への対応が成長の柱として位置づけられている。
資本政策と M&A
株主還元は配当と自社株買いの組み合わせで、連結配当性向40%以上を方針としている。2026年3月期の配当は配当性向45.9%相当の実績、2027年3月期は会社計画で配当性向53.8%を見込み、2026年度中に1,000億円規模の自社株買いを発表した。業績が循環的に下がる局面でも配当方針を大きく崩さない姿勢が続いている。
M&Aの歴史では2017年完了のジョイ・グローバル買収(約3,000億円、当時同社最大の買収)が最大の出来事で、超大型の鉱山機械をフルラインに加え、鉱山機械事業の売上規模をキャタピラーに並ぶ水準まで引き上げた。これにより直接販売・直接サービス体制も統合され、以後の鉱山機械事業の収益性向上につながったという意味で、成功したM&Aの代表例として評価されている。
大型買収はジョイ・グローバル以降は行わず、スマートコンストラクションやFrontRunnerなどICT・自動化関連の技術投資と、既存代理店網の強化に資本を使う方針が続いている。資源価格・鉱山投資サイクルの底で小型の技術系M&Aを行う可能性はあるが、ジョイ・グローバル級の大型再編を繰り返す計画は今のところ見られない。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
鉱山機械の拡大は構造的であり、データセンター向け電力網投資やEV関連需要が銅・リチウムなど資源需要を長期にわたって支える。ジョイ・グローバル買収で得たフルライン体制とアフターマーケット収益の積み上がりにより、建設機械・車両セグメントの半分を超えた鉱山機械の比率はさらに上がり、全社のROEとキャッシュフローの安定性を高めていく。坑内掘り・露天掘りの両方を持つ会社はキャタピラーと小松以外にほとんどなく、資源価格が高止まりする限り寡占的な価格決定力は保たれる。
FrontRunnerは2008年の商用化以来、大型級自動運転トラックの稼働台数で1,000台を超え、キャタピラーの690台を上回る規模にある。累計運搬量115億トンという実績は、鉱山会社との長期的な信頼関係と乗り換えコストの高さを示しており、スマートコンストラクションの4万件超の導入実績と合わせて、ICT・自動化の両輪でキャタピラーに対する技術的な優位を広げられる。
北米のインフラ投資とデータセンター建設に伴う土木需要、インド・インドネシアなど新興国の都市化が中国の調整を相殺し、世界建機市場全体では2026年以降もCAGR7%前後の拡大が続く。中国メーカーの台頭は低価格帯が中心で、鉱山機械や大型建機など小松の強みが生きる領域にはまだ本格的に食い込んでいない。配当性向40%以上の方針と自社株買いの継続は、循環の谷でも株主への約束を守る規律として評価できる。
慎重な見方
中国建機市場の長期停滞は循環的な調整ではなく構造的な縮小に近い。住宅不振が続く限り需要の本格回復は見込みにくく、その間に徐工・三一重工など中国メーカーが低価格帯から中価格帯、さらには鉱山機械の一部領域にまで値決め力を侵食していく。世界ランキングでも中国勢が上位に食い込み続けており、新興国市場でも小松・キャタピラーの代理店網による優位が徐々に薄れていく可能性がある。
鉱山機械への依存度が上がることは、資源価格・鉱山会社の投資サイクルという自社でコントロールできない変数への感応度をむしろ高める。資源価格が急落する局面(リーマン級の需要蒸発)では、建機と鉱山機械の両方が同時に落ち込み、業績の下振れが単純な合算以上に大きくなるリスクがある。2026年3月期にROEが13.85%から10.72%まで下がったように、原材料・労務費の上昇とコスト増は今後も業績を圧迫し続ける。
FrontRunnerやスマートコンストラクションは差別化要因だが、キャタピラーも自動運転トラックの台数を2030年までに3倍に増やす計画を公表しており、技術的な差は今後縮まっていく可能性が高い。今のPBR1.5倍・PER14.5倍は、2026年3月期の業績悪化後にもかかわらず過去の谷(PBR1倍前後)より明確に高い水準にあり、鉱山機械の拡大というプラス材料をすでに相当織り込んだ値段になっている。
どちらに重みを置いたか
鉱山機械の構造的な拡大とジョイ・グローバル買収の成功、ICT・自動化での技術的な先行については強気の見方に説得力があるが、中国建機の長期停滞と中国メーカーの値決め力侵食については慎重な見方の指摘も根拠が明確で、どちらか一方が明確に勝っているとは言えない。本質価値の計算では、中立の 10 年後の時価総額は今を 1 割弱下回り、やや楽観と楽観でようやく今を上回る。中立の ROE は資本コストを少し上回る程度で PER は 12〜13 倍にとどまる。確率は中立を最も重く置き、鉱山機械の構造変化を評価して楽観側にもやや厚めの重みを残しつつ、中国建機の長期停滞という構造的な懸念を踏まえて悲観側も標準より厚めに置いた。10 年の本質価値は今の時価総額を 35% ほど下回り、結論は割高になった。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 9,207 円8.17 兆円(+ 配当配当と自社株買いの合計 2,361 円2.09 兆円)。 今の値に割り戻すと 6,236 円5.53 兆円、今との差 −8.0%、 期待の年率 +5.5%(資本コスト 7.2%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 13% | 18,665 円16.55 兆円 | 4,505 円4.00 兆円 | +241.6% | +13.1% | 3,012 円2.67 兆円 |
| やや楽観 | 22% | 13,225 円11.73 兆円 | 3,264 円2.89 兆円 | +143.1% | +9.3% | 3,627 円3.22 兆円 |
| 中立 | 30% | 9,362 円8.30 兆円 | 2,354 円2.09 兆円 | +72.8% | +5.6% | 3,515 円3.12 兆円 |
| やや悲観 | 22% | 3,896 円3.46 兆円 | 1,287 円1.14 兆円 | −23.6% | −2.7% | 1,140 円1.01 兆円 |
| 悲観 | 13% | 1,580 円1.40 兆円 | 526 円4,669 億円 | −68.9% | −11.0% | 274 円2,428 億円 |
| 加重平均 | 100% | 9,207 円8.17 兆円 | 2,361 円2.09 兆円 | +70.6% | +5.5% | 11,568 円10.26 兆円 |
今の株価時価総額 6,782 円6.01 兆円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.2% を下回るほど割高。
楽観 13% 鉱山機械が主力として定着し、自動化・電動化で差別化が続く 利益 8,712 億円 · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 18,665 円16.55 兆円
データセンター向け電力網投資やEV関連需要が10年にわたり資源需要を支え、鉱山機械市場は拡大を続ける。小松は坑内掘り・露天掘りのフルライン体制と自動運転トラックFrontRunnerの実績を武器にシェア17%を維持し、建設機械も自動化・電動化・水素など多様な動力源への対応でキャタピラーとの差を広げ、北米・新興国でシェア11.5%まで回復する。スマートコンストラクションの導入が世界的に広がり、営業利益率は建機14%・鉱山機械20%の高水準に達する。中国メーカーの追随は低価格帯にとどまり、大型・高性能機では小松・キャタピラーの2社体制が崩れない、同社にとって最も理想的な10年になる。
- 建設機械(鉱山機械を除く):数量 1,186(世界建設機械市場(大型・中型、鉱山機械を除く、億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 23(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 27,497 億円・営業利益 3,850 億円。シェア11.5%、営業利益率14%
- 鉱山機械:数量 1,191(世界鉱山機械市場(億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 34(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 40,829 億円・営業利益 8,166 億円。シェア17%、営業利益率20%
- 産業機械・車両他:数量 5,793(産業機械(プレス・板金機・工作機械・エキシマレーザー等)の出荷台数(台、推定))× 価格 12,095(1 台あたりの平均の売上(万円、保守・リテールファイナンスの収益を含む))→ 売上 7,007 億円・営業利益 841 億円。営業利益率12%
倍率:事業の純利益 8,712 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.1% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.2%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍。全体の PER 19 倍、時価総額 165,528 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:10年にわたり資源需要の拡大と建機の構造的な自動化シフトが続く前提で、連続した技術優位の維持が必要なため確度は高くない。
やや楽観 22% 鉱山機械主導で安定した高収益体質に 利益 6,812 億円 · PER 17.2 倍 · 株価時価総額 13,225 円11.73 兆円
鉱山機械市場は資源需要の緩やかな拡大を背景に広がり、小松のシェアは15.5%で安定する。坑内掘り・露天掘り両方のフルライン体制と、ジョイ・グローバル統合以降に積み上げた直販・直接サービス網が、資源価格の変動局面でも顧客の乗り換えを防ぐ役割を果たす。建設機械は中国の調整が徐々に和らぎ、北米・新興国の需要に支えられてシェア10.8%まで回復する。FrontRunnerとスマートコンストラクションの導入が世界的に広がり、アフターマーケット収益の比率が一段と高まって営業利益率は建機12.5%・鉱山機械18%の水準を保つ。中国メーカーとの競争は続くが、坑内掘り・露天掘り双方をそろえる体制の優位は保たれ、株主還元も利益成長に応じて段階的に拡大する10年になる。
- 建設機械(鉱山機械を除く):数量 1,279(世界建設機械市場(大型・中型、鉱山機械を除く、億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 22(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 27,845 億円・営業利益 3,481 億円。シェア10.8%、営業利益率12.5%
- 鉱山機械:数量 1,084(世界鉱山機械市場(億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 31(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 33,868 億円・営業利益 6,096 億円。シェア15.5%、営業利益率18%
- 産業機械・車両他:数量 5,194(産業機械(プレス・板金機・工作機械・エキシマレーザー等)の出荷台数(台、推定))× 価格 12,095(1 台あたりの平均の売上(万円、保守・リテールファイナンスの収益を含む))→ 売上 6,282 億円・営業利益 691 億円。営業利益率11%
倍率:事業の純利益 6,812 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.6% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.4%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.2 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.2 倍。全体の PER 17.19 倍、時価総額 117,098 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:鉱山機械の構造的な拡大が主軸として定着し、建機も緩やかな持ち直しが続く、業界見通しの上位レンジに近い想定。
中立 30% 中立:鉱山機械が主力になるが倍率は資本財らしく平常化 利益 5,010 億円 · PER 15.7 倍 · 株価時価総額 9,362 円8.30 兆円
10年後も鉱山機械市場は緩やかに拡大し、小松のシェアは14.5%で安定する。建設機械は中国の調整が完全には終わらず、新興国需要と相殺してシェア10%で横ばいにとどまる。自動化・電動化への投資は続くが、中国メーカーの中価格帯での台頭もあり、営業利益率は建機11%・鉱山機械15.5%と2026年3月期よりは改善するが、過去の好況期(2018年前後)には届かない水準で安定する。PBR・PERともに資本財企業として標準的な水準まで平常化し、超成長への期待は後退するが、坑内掘り・露天掘り双方を持つ数少ない会社としての地位は保たれる10年になる。
- 建設機械(鉱山機械を除く):数量 1,367(世界建設機械市場(大型・中型、鉱山機械を除く、億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 20(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 27,551 億円・営業利益 3,031 億円。シェア10%、営業利益率11%
- 鉱山機械:数量 943(世界鉱山機械市場(億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 29(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 27,549 億円・営業利益 4,270 億円。シェア14.5%、営業利益率15.5%
- 産業機械・車両他:数量 4,794(産業機械(プレス・板金機・工作機械・エキシマレーザー等)の出荷台数(台、推定))× 価格 12,095(1 台あたりの平均の売上(万円、保守・リテールファイナンスの収益を含む))→ 売上 5,799 億円・営業利益 551 億円。営業利益率9.5%
倍率:事業の純利益 5,010 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.4% が k 7.25% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.7% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 15.7 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 15.7 倍。全体の PER 15.7 倍、時価総額 78,657 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:鉱山機械の構造的な拡大という中心的な見通しに、資本財企業として標準的な倍率への平常化を組み合わせた中心シナリオ。
やや悲観 22% 中国メーカーの追随が中価格帯から上に及ぶ 利益 2,538 億円 · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 3,896 円3.46 兆円
徐工・三一重工などの中国メーカーが中価格帯から高価格帯の一部にも食い込み、小松の建機シェアは9%まで低下する。資源需要の伸びも構造的に鈍化し、鉱山会社の投資サイクルが短くなったことで鉱山機械のシェアも12.5%にとどまる。原材料・労務費の上昇が続く中、値上げが追いつかず営業利益率は建機8%・鉱山機械11%まで後退する。FrontRunnerやスマートコンストラクションは差別化要因として残るが、価格競争の激化を打ち消すほどの効果は持たない。それでも坑内掘り・露天掘りのフルライン体制自体は失われず、業界2番手を明確に上回る規模は保つ。株主還元は利益の鈍化に合わせて成長ペースが落ち着き、投資家の見る目も成熟した資本財企業へと変わっていく10年になる。
- 建設機械(鉱山機械を除く):数量 1,431(世界建設機械市場(大型・中型、鉱山機械を除く、億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 18(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 25,964 億円・営業利益 2,077 億円。シェア9%、営業利益率8%
- 鉱山機械:数量 784(世界鉱山機械市場(億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 25(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 19,755 億円・営業利益 2,173 億円。シェア12.5%、営業利益率11%
- 産業機械・車両他:数量 3,995(産業機械(プレス・板金機・工作機械・エキシマレーザー等)の出荷台数(台、推定))× 価格 12,095(1 台あたりの平均の売上(万円、保守・リテールファイナンスの収益を含む))→ 売上 4,832 億円・営業利益 338 億円。営業利益率7%
倍率:ROE 4.6% が k 7.25% 以下で、ためた利益は額面を下回る価値なので PER は 1÷k = 12.5 倍まで。中国メーカーの値下げで建機の利益が細り、ROE が k を下回る筋書き。稼ぐ力(純利益 ÷ k)から、上限の 8.5 割の 10.6 倍に置いた。 純有利子負債 9,013 億円を今の値で足した EV ÷ 営業利益は 8.2 倍。
確率:中国メーカーの技術力向上が中価格帯から高価格帯の一部にも及び、資源需要の伸びも鈍化する想定。寡占市場でも2位との差が縮むシナリオは十分にあり得る。
悲観 13% 構造的に値決め力を失い、優良企業の地位から後退 利益 248 億円 · PBR 0.4 倍 · 株価時価総額 1,580 円1.40 兆円
徐工・三一重工などの中国メーカーが坑内掘り・露天掘り向け大型機でも技術的に追いつき、小松の建機シェアは7.5%まで低下する。資源価格も長期低迷し、鉱山会社の投資が細って鉱山機械のシェアも9.5%にとどまる。かつての寡占的な地位は崩れ、価格競争が激しくなって営業利益率は建機2%・鉱山機械4%まで落ち込む。FrontRunnerやスマートコンストラクションといった技術的な強みも、顧客の投資余力自体が細る中では収益に結びつきにくくなる。会社は代理店網の再編やコスト構造の見直しで立て直しを図るが、かつての優良企業としての評価は過去のものになる10年になる。 配当は谷の前の年の利益と手元資金で払い、足りない分は政策保有株など不要資産の売却も充てて、減配の幅を抑える。
- 建設機械(鉱山機械を除く):数量 1,433(世界建設機械市場(大型・中型、鉱山機械を除く、億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 15(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 21,664 億円・営業利益 433 億円。シェア7.5%、営業利益率2%
- 鉱山機械:数量 587(世界鉱山機械市場(億ドル、今の値段で測った実質))× 価格 19(実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍))→ 売上 11,249 億円・営業利益 450 億円。シェア9.5%、営業利益率4%
- 産業機械・車両他:数量 3,396(産業機械(プレス・板金機・工作機械・エキシマレーザー等)の出荷台数(台、推定))× 価格 12,095(1 台あたりの平均の売上(万円、保守・リテールファイナンスの収益を含む))→ 売上 4,107 億円・営業利益 0 億円。営業利益率0%
倍率:中国メーカーに値決めの力を奪われ、鉱山でも守れなくなる構造悲観。稼ぐ力はほぼ消えるので、純現金+売れる資産の税後を床にした。約 1.4 兆円とみた。PBR はこの床を今の自己資本で割った値。 純有利子負債 9,013 億円を今の値で足した EV ÷ 営業利益は 30.7 倍。利益が谷まで落ちた年なので、値は床の資産で測っており、EV の倍率は参考にしない。
確率:中国メーカーが高価格帯にも技術的に追いつき、資源価格の長期低迷も重なる複合シナリオ。寡占企業が10年で優位性を失う例は資本財業界でも繰り返されてきたため無視できない確率を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
建設機械(鉱山機械を除く)
油圧ショベル・ブルドーザー・ホイールローダーなど一般建設機械・車両の製造販売。
| 数量世界建設機械市場(大型・中型、鉱山機械を除く、億ドル、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 1,207 | 15 | 18,111 | 1,992 |
| 10 年後 中立 | 1,367 | 20 | 27,551 | 3,031 |
取り方:建設機械・車両セグメント(売上の91.3%)のうち鉱山機械を除く約48%を建設機械と推定し、世界建機市場(鉱山機械を除く主要機種、約1,200億ドル規模)に対するシェア約10%から逆算。 数量は今の値段で測った市場規模(実質)にし、物価の分は価格(シェア × 150 円 × 物価の倍率)に入れた。今の価格はシェア 10%。
鉱山機械
超大型の露天掘り向けショベル・ダンプトラック、坑内掘り向け機械。ジョイ・グローバル買収(2017年完了)で獲得した事業。
| 数量世界鉱山機械市場(億ドル、今の値段で測った実質) | 価格実質の市場 1 ドルあたりの当社売上(円)=シェア × 150 円 × 物価の倍率(3 年 1.09・10 年 1.34 倍) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 900 | 22 | 19,621 | 3,139 |
| 10 年後 中立 | 943 | 29 | 27,549 | 4,270 |
取り方:建設機械・車両セグメントのうち鉱山機械が50%超(会社開示)という比率から、世界鉱山機械市場(約900億ドル規模と推定)に対するシェア約14.5%として逆算。 数量は今の値段で測った市場規模(実質)にし、物価の分は価格(シェア × 150 円 × 物価の倍率)に入れた。今の価格はシェア 14.5%。
産業機械・車両他
プレス機械、半導体露光用レーザー関連(コマツNTC)、フォークリフト(日本輸送機)、リテールファイナンス(販売金融)など。
| 数量産業機械(プレス・板金機・工作機械・エキシマレーザー等)の出荷台数(台、推定) | 価格1 台あたりの平均の売上(万円、保守・リテールファイナンスの収益を含む) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 3,995 | 9,000 | 3,596 | 539 |
| 10 年後 中立 | 4,794 | 12,095 | 5,799 | 551 |
取り方:産業機械他(全社の約 6%)とリテールファイナンスの収益(約 3%)を合わせた 3,595 億円を、コマツ産機の大型プレス・板金機、コマツNTC の工作機械、ギガフォトンのエキシマレーザーなど年約 4,000 台(推定)の出荷で割り、1 台あたり約 9,000 万円(保守とファイナンス収益を含む)と置いた。台数は自動車・半導体の設備投資に沿ってゆっくり伸び、価格は物価並み。
リスクと懸念
中国建機市場の長期停滞
中国の住宅不振と供給過剰による建機需要の調整は循環的な範囲を超え、構造的な縮小に近づいている可能性がある。回復が遅れる間に徐工・三一重工など中国メーカーが低価格帯から中価格帯への浸透を進め、他の新興国市場でもシェアを侵食するリスクが続く。
資源価格・鉱山投資サイクルへの連動
鉱山機械の比率が上がるほど、銅・鉄鉱石・石炭などの資源価格と鉱山会社の投資サイクルへの感応度が高まる。資源価格が急落する局面では建機と鉱山機械の需要が同時に落ち込み、業績の下振れが単純な合算より大きくなりやすい。
中国メーカーの技術力向上
徐工・三一重工など中国メーカーは世界ランキングで上位に食い込みつつあり、大型建機や鉱山機械の一部領域でも技術的な差を縮めている。長期的には小松・キャタピラーの寡占的な地位そのものが揺らぐ可能性がある。
原材料・労務費の上昇と値上げ力
2026年3月期にROEが13.85%から10.72%まで下がったように、鋼材・部材価格や労務費の上昇に値上げが追いつかない局面が続くと、利益率の圧迫が長期化するリスクがある。中国メーカーとの価格競争が激しい地域では値上げの余地がさらに限られ、コスト増を吸収しきれない期間が続く可能性もある。
為替変動
売上の大半が海外であるため、ドル円が前提の150円から想定以上に振れると、円高局面では採算が悪化しやすい。ドル円を10年固定する前提自体が崩れた場合、業績の前提も見直しが必要になる。生産拠点の海外展開は進んでいるが、部材の国内調達や研究開発コストは円建てで発生する部分が多く、円高の影響を完全には打ち消せない。
自動運転・電動化投資の競争
キャタピラーも自動運転トラックの台数を2030年までに3倍に増やす計画を公表しており、FrontRunnerの技術的な優位が今後縮まる可能性がある。電動化・水素など新しい動力源への投資が先行者利益を生むか、コスト負担だけが先に乗ってくるかは不確実である。
今後の分かれ目
- 中国の住宅市場が底を打ち、建機需要が回復に転じたら
- 楽観・やや楽観の筋書きの確率を上げてよい。中国でのシェア・販売台数の開示で確認する。
- 資源価格(銅・鉄鉱石など)が長期にわたって下落したら
- やや悲観・悲観側の筋書きに重みを移す。鉱山会社の資本支出計画と合わせて見る。
- 徐工・三一重工が大型建機・鉱山機械で大型受注を獲得したら
- 中国メーカーの技術力向上が高価格帯にも及んだとみて、長期の悲観側の前提を見直す。
- 会社が大型のM&Aを発表したら
- ジョイ・グローバル買収の成功例を踏襲できるか、価格と事業の相性を個別に確認したうえで価値を見直す。
- FrontRunnerの稼働台数やスマートコンストラクションの導入件数が計画を上回るペースで伸びたら
- ICT・自動化の差別化が効いているとみて、楽観側の確率を上げてよい。
- キャタピラーが自動運転トラックの台数で小松に追いついたら
- 技術優位の縮小とみて、やや悲観側の確率を上げる。
見ておくもの
- 建設機械・車両セグメント内の鉱山機械比率の開示
- 中国での販売台数・シェアの推移
- 資源価格(銅・鉄鉱石)と主要鉱山会社の資本支出計画
- FrontRunner稼働台数・スマートコンストラクション導入件数の開示
- 中期経営計画の更新タイミング
倍率と資本コストの決め方
建設機械・鉱山機械は実質の市場×シェアと物価並みの価格、産業機械他は出荷台数×単価で売上を積み上げ、利益ベースの正当化 PER=(1−g÷RONIC)÷(k−g)(RONIC は k を超える分の半分が残る値、k 7.25%=基本 7.5% に quality +0.5%、g 4%)を引いた。楽観は上限の 8.5 割、やや楽観は 8 割、ROE が資本コスト並みの中立は 1÷k に近い水準(PER 12〜13 倍)に置いた。やや悲観は稼ぐ力(純利益÷k)で、悲観は純現金+売れる資産の税後の床(約 1.4 兆円)で測った。旧版で会社計画に合わせて「その他」に押し込んでいた売上の伸びは外し、実質の伸びに直してある。鉱山機械の拡大を倍率に先に織り込むことはせず、過去や今の PER・PBR は根拠にしていない。今の株価に寄せた所はない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.9→19 倍・やや楽観 PER 11.81→17.19 倍・中立 PER 11.62→15.7 倍)。
資本コスト 7.2% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。k = 基本 7.5% + quality +0.5% = 8.0%。中国建機の長期停滞や値決め力の侵食は k の循環・値決めに入れた分のほか、悲観側の確率で表す。 2026-10-22 に循環と借金を過去の数字で付け直し、k は 8.00% → 7.25%。
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