結論
プラコーは、ポリ袋や食品包装のフィルムを作るインフレーション成形機と、燃料タンクなどの中空品を作るブロー成形機の専門メーカーだ。筆者の結論は割高である。保守で客とつながる地盤はあるが、10 年後も営業利益は 2 億円ほどにとどまり、今の時価総額を支えられない。
2026 年 3 月期は 3 期ぶりの黒字に戻ったが、営業利益は 1.4 億円にすぎない。前の期は大型案件の追加工事で赤字になった。小さな受注生産の会社は、1 件の失敗で 1 年の利益が飛ぶ。
会社は M&A で時価総額 300 億円をめざし、IT と人材派遣の会社を株式交換で買った。ただ、人を時間で売る仕事は AI エージェントに置き換えられやすい。筆者は、この多角化が資本の稼ぎを上げるとは見ていない。今の値段は、まだ形になっていない成長への期待を多く含んでいる。
救いは、納めた機械の保守で客と長くつながっていることだ。ここは景気が悪くても細く続く。ただ、その稼ぎだけでは帳簿の 1.4 倍という値段は説明できない。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、プラコーは「わかる事業」と「わからない事業」が同居する会社だ。成形機と保守はわかる。20 年使われる機械の面倒を見る仕事は地味だが、客は簡単には離れない。ただ、規模が小さく、1 件の大型案件の失敗で利益が消える。
気になるのは資本の使い方だ。稼ぐ力が資本コストに届かない会社が、自社株を渡して人の時間を売る会社を買っている。株を通貨にした買収は、自社の株が高い時には理にかなうが、買った事業が AI で細るなら価値を薄める。
安全域は見えない。今の値段は利益の 30 倍近く、帳簿の 1.4 倍だ。ROE 5% の会社にこの値段を払う理由は、M&A が当たるという賭けしかない。筆者なら、保守の稼ぎと成形機の利益率が 2〜3 年続けて安定するのを見てから考える。それまでは、払う値段に見合う安全域はない。
何で稼ぐ会社か
本業はプラスチックの成形機である。インフレーション成形機は、溶かした樹脂を筒状にふくらませて薄いフィルムにする機械で、売上の約半分を占める。食品や医療の包装、ゴミ袋のフィルムを作る中小の加工会社が主な客だ。ブロー成形機は、樹脂を型の中でふくらませて容器や自動車の燃料タンクを作る。
このほか、使い終わったフィルムを再び原料に戻すリサイクル装置と、納めた機械の保守・部品・オーバーホールを手がける。保守は売上の 2 割弱だが、景気に左右されにくい稼ぎの芯だ。顧客の 9 割は国内で、海外はアジアへの輸出が少しある。
2024 年からは IT・人材の事業を加えた。中国人技術者を中心にシステム開発と技術者派遣をするクラウドサービスと、事務派遣と人材紹介の PBB だ。合わせて約 100 人で、売上の 2 割に近づいた。工場は埼玉県の岩槻にあり、全社で 100 人ほどの小さな会社である。
稼ぎ方は 2 つの流れに分かれる。機械を 1 台売れば数千万円の売上が一度に立つが、その年の受注しだいで大きく振れる。保守は小さな注文の積み重ねで、機械が工場で動く限り続く。
優良さと弱いところ
強みは、納めた成形機との長い付き合いだ。成形機は 20 年以上使われ、その間の部品交換とオーバーホールは作ったメーカーに頼むのが早い。フィルムの厚みや層の設計を客と一緒に詰めるノウハウもある。
弱さは規模と値決めだ。インフレーション成形機は国内に住友重機械モダンやトミー機械工業などがあり、海外には独ウィンドミラー&ヘルシャーのような大手がいる。プラコーは客の要望に合わせる受注生産で、大きな案件ほど設計の手直しで原価が膨らむ。2024 年 3 月期と 2025 年 3 月期の赤字はその例だ。
資本の稼ぎも細い。過去 12 年の営業利益率は −7.5% から 15.9% まで振れ、ならせば 5% 前後だ。新しく加えた IT・人材は、人の時間を売る商売で、他社がまねできない強みはない。経営は小さな会社をまとめる方向に動いているが、本業の稼ぎを厚くする手立ては見えにくい。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
フィルムの成形機は成熟した市場だ。国内の包装フィルムの量は人口とともにゆっくり細り、新しい機械の需要は古い機械の更新が中心になる。ナフサの値段が上がると、加工会社は設備投資を手控える。2026 年は中東の情勢で樹脂の原料が急に高くなり、受注の先行きは読みにくい。
追い風もある。人手不足で、フィルムの巻き取りや交換を自動にする省人化の投資が続く。リサイクル材を使うフィルムや、食品・医療向けの高い機能のフィルムには新しい機械が要る。ブロー成形機では、EV 一辺倒だった自動車の投資が内燃機関にも戻り、燃料タンクの需要が持ち直した。
ただし、燃料タンクは 10 年先には EV の広がりで細る分野だ。筆者は、国内の台数は 10 年で横ばい、値段は物価並みと見る。IT 派遣と事務派遣は、AI エージェントが仕事の一部を引き取る逆風を正面から受ける。
競争の相手は国内の数社と、欧州・アジアの大手だ。大きな包装フィルムの工場は海外の高速機を選び、国内の中小の加工会社が日本のメーカーの客として残る。値段の勝負では、規模の差がそのまま効く。
資本政策と M&A
還元は配当だけで、性向 30% 以上をめざし、1 株あたりの配当を据え置いている。2026 年 3 月期の配当の総額は 0.6 億円で、利益の 7 割にあたる。株主優待はない。
財務は借入と現金がほぼ見合う。現預金 9.6 億円に対し借入が 9.6 億円あり、純負債は 0.5 億円ほどだ。土地は再評価済みで帳簿に 2.7 億円ある。
資本政策の芯は M&A だ。会社は時価総額 300 億円を目標に掲げ、2 件の買収をどちらも自社株を渡す株式交換で行った。株が増えるので、買った会社の利益が株数の増え方を上回らなければ、既存の株主の取り分は薄まる。2025 年には新しい大株主の大量保有の届け出もあり、経営の主導権をめぐる動きは注意して見ておきたい。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
成形機の更新の波が来ている。ここ数年は設備投資が抑えられ、古い機械が多く残っている。人手不足で巻き取りや交換を自動にする改造の依頼も増え、2026 年 3 月期の保守の売上は 13% 伸びた。保守は利益率が高く、ここが厚くなれば全社の稼ぎは安定する。
ブロー成形機も追い風だ。自動車の投資が内燃機関に戻り、燃料タンクを作る大型の機械に引き合いがある。高い技術が要る分野で、プラコーの経験が生きる。リサイクル装置は海外の調達で原価を下げ、値段で勝負できるようになった。
IT・人材は利益こそまだ小さいが、売上は 5 億円まで来た。プラコーの客の工場に技術者や事務の人を出す協業もできる。会社は M&A で時価総額 300 億円を掲げる。小さな会社なので、1 件の当たりで姿が大きく変わる。
財務も無理がない。借入と現金がほぼ見合い、土地は再評価済みで帳簿に載っている。赤字の年が来ても、保守の稼ぎで持ちこたえられる。
慎重な見方
利益の振れが大きすぎる。営業利益率は 12 年で −7.5% から 15.9% まで動き、2 期続けて赤字の年もあった。客ごとに作る機械は、大型案件の手直し 1 件で 1 年の利益が飛ぶ。足元の第 1 四半期も売上が 4 割減った。
成形機の市場は成熟している。国内の包装フィルムの量は人口とともに細り、燃料タンクは EV が広がれば先細る。大手の住友重機械モダンや海外勢と比べて、規模でも値段でも勝てない。
M&A の中身も心配だ。SES と事務派遣は、人の時間を売る仕事で、AI エージェントに真っ先に置き換えられる。そこへ自社株を渡して入るのは、資本の稼ぎを薄める道だ。今の値段は利益の 30 倍近い。ROE 5% の会社には高すぎる。
経営の動きも読みにくい。新しい大株主が現れ、旧来の株主は持ち分を減らした。M&A と株の発行が続けば、今の株主の取り分はさらに薄まる。保守の網があるといっても、大手も同じ網を持っている。
どちらに重みを置いたか
慎重な見方が強い。保守の稼ぎと更新の需要は認めるが、利益の振れと市場の成熟は構造の話で、M&A で買った人月の事業は AI で細る側にある。確率は中立を厚くし、悲観側を 4 割に置いた。M&A の大当たりは楽観の小さな確率に入れるにとどめた。保守の網と土地は悲観でも残るので、悲観の確率は 15% にとどめた。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 117 円11 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 53 円5 億円)。 今の値に割り戻すと 81 円8 億円、今との差 −68.8%、 期待の年率 −4.1%(資本コスト 9.5%)→ 割高
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 5% | 293 円28 億円 | 83 円8 億円 | +45.2% | +3.8% | 19 円2 億円 |
| やや楽観 | 15% | 209 円20 億円 | 73 円7 億円 | +8.7% | +0.8% | 42 円4 億円 |
| 中立 | 40% | 140 円14 億円 | 62 円6 億円 | −21.8% | −2.4% | 81 円8 億円 |
| やや悲観 | 25% | 43 円4 億円 | 42 円4 億円 | −67.5% | −10.6% | 21 円2 億円 |
| 悲観 | 15% | 31 円3 億円 | 16 円2 億円 | −81.9% | −15.7% | 7 円1 億円 |
| 加重平均 | 100% | 117 円11 億円 | 53 円5 億円 | −34.3% | −4.1% | 170 円16 億円 |
今の株価時価総額 259 円25 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 9.5% を下回るほど割高。
楽観 5% 更新の波と燃料タンクで成形機が伸び、保守が厚くなる 利益 3 億円 · PER 10.6 倍 · 株価時価総額 293 円28 億円
古い成形機の更新が 10 年かけて進み、省人化の改造と保守の依頼が積み上がる筋書きだ。リサイクル材を使うフィルムの機械も新しい柱になり、ブロー成形機は燃料タンクと工業部品で受注を重ねる。台数は 2 割増え、値段は物価をやや上回る。
営業利益率は 10% と、2019〜2020 年の好調期並みに戻る。IT・人材は AI エージェントに仕事を削られながらも、成形機の客の工場に人を出す協業で人数を保つ。営業利益は 4 億円近くになり、ROE は資本コストをわずかに上回る。それでも配当は性向 30% 台で、株主の取り分は少しずつしか増えない。
- プラスチック成形機:数量 65.0(成形機・装置の台数(台、保守を含む換算、推定))× 価格 0.55(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 36 億円・営業利益 4 億円。65 台(1.19 倍)× 0.55 億円(1.38 倍)、営業利益率 10%
- IT・人材:数量 100(稼働するスタッフの人数(人))× 価格 0.07(1 人あたりの年の売上(億円))→ 売上 7 億円・営業利益 0 億円。100 人(横ばい。AI の売り物の開示がないので 1.0 倍まで)× 0.067 億円(1.34 倍)、5%
倍率:事業の純利益 3 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 9.9% が k 9.50% を上回る。残る割合 0.33(moat=weak)で RONIC 9.6%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 10.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.6 倍。全体の PER 10.64 倍、時価総額 28 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:営業利益率 10% 超は過去 12 年で 2 期だけで、更新の需要と保守の伸び、M&A の成功が重なる必要がある。5% とした。
やや楽観 15% 保守と省人化の改造で、利益率が好調期の手前まで戻る 利益 2 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 209 円20 億円
成形機の台数が 1 割増え、保守が全社の稼ぎをならす筋書きだ。食品・医療の高い機能のフィルムを作る機械に引き合いが続き、燃料タンクのブロー成形機も 10 年の前半は堅い。大型案件の手直しは、設計の標準化で減る。
営業利益率は 8% になる。IT・人材は AI エージェントの広がりで人数が 15% 減るが、紹介の手数料で利益は少し出る。営業利益は 2.8 億円ほどで、ROE は 8% 弱。資本コストにはわずかに届かない。配当は利益とともに少しずつ増える。リサイクル装置は値段の下がった新製品で、フィルムの加工会社の中に客を広げる。
- プラスチック成形機:数量 60.0(成形機・装置の台数(台、保守を含む換算、推定))× 価格 0.54(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 32 億円・営業利益 3 億円。60 台(1.10 倍)× 0.54 億円(1.35 倍)、営業利益率 8%
- IT・人材:数量 85.0(稼働するスタッフの人数(人))× 価格 0.07(1 人あたりの年の売上(億円))→ 売上 6 億円・営業利益 0 億円。85 人(0.85 倍、AI エージェント代替)× 0.067 億円(1.34 倍)、4%
倍率:事業の純利益 2 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 7.9% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 20 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:保守の売上は直近で 13% 伸び、更新の需要も見えている。利益率 8% は 2017 年 3 月期の 7.1% をやや上回る水準で、届く可能性は十分ある。15% とした。
中立 40% 成形機は横ばい、IT・人材は AI に削られて縮む 利益 1 億円 · PER 10.5 倍 · 株価時価総額 140 円14 億円
成形機の台数は横ばいで、値段は物価並みに上がる筋書きだ。更新の需要と保守の伸びが、包装フィルムの量の細りをちょうど埋める。燃料タンクの機械は 10 年の後半に EV の広がりで細り、リサイクル装置がその穴を少し埋める。
営業利益率は過去のならしに近い 6% に落ち着く。IT・人材は AI エージェントが SES と事務の仕事を引き取り、人数は 3 割減る。M&A は続くが、株式交換で株が増える分を上回る稼ぎは生まない。営業利益は 1.9 億円、ROE は 6% ほどで資本コストに届かない。配当は今の水準を守る。
- プラスチック成形機:数量 54.5(成形機・装置の台数(台、保守を含む換算、推定))× 価格 0.54(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 29 億円・営業利益 2 億円。54.5 台(横ばい)× 0.536 億円(物価並み 1.34 倍)、営業利益率 6%
- IT・人材:数量 70.0(稼働するスタッフの人数(人))× 価格 0.07(1 人あたりの年の売上(億円))→ 売上 5 億円・営業利益 0 億円。70 人(0.70 倍、AI エージェント代替の人月の型)× 0.067 億円(1.34 倍)、3%
倍率:事業の純利益 1 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 5.9% が k 9.50% 以下。ためた利益は投じた額より値が低いので伸びは数えず、稼ぐ力の値 PER = 1÷(k−g)(g=0) = 10.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 10.5 倍。全体の PER 10.53 倍、時価総額 14 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:更新と保守の追い風と、市場の成熟・大型案件の振れが打ち消し合う落としどころで、最も起こりやすい。40% とした。
やや悲観 25% 大型案件の失敗が繰り返され、利益が薄いまま 利益 0 億円 · PER 8.0 倍 · 株価時価総額 43 円4 億円
成形機の需要が細り、大型案件の手直しで利益が出ない年が繰り返される筋書きだ。樹脂の原料高で加工会社が設備投資を絞り、台数は 1 割強減る。大手と海外勢に値段で押され、値上げは物価に届かない。
営業利益率は 3% にとどまる。IT・人材は AI エージェントで人数が半分近くに減り、利益は出ない。営業利益は 0.7 億円ほどで、配当は減らさざるをえない。株主の価値は、保守の細い稼ぎと土地に支えられる。
M&A で入った会社ののれんも、稼ぎが落ちれば減損の対象になる。経営の主導権をめぐる動きがあれば、本業の立て直しはさらに遅れる。
- プラスチック成形機:数量 48.0(成形機・装置の台数(台、保守を含む換算、推定))× 価格 0.50(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 24 億円・営業利益 1 億円。48 台(0.88 倍)× 0.50 億円(1.25 倍、物価に届かない)、3%
- IT・人材:数量 55.0(稼働するスタッフの人数(人))× 価格 0.06(1 人あたりの年の売上(億円))→ 売上 3 億円・営業利益 0 億円。55 人(0.55 倍)× 0.06 億円(1.20 倍)、0%
倍率:ROE 2.5% は k 9.5% を大きく下回る。稼ぐ力(純利益÷k)で見て 1÷k の 10.5 倍の 7.6 割の 8.0 倍。中立の 8.4 倍は超えない。
確率:2024〜2025 年に追加工事で 2 期連続の赤字を出したばかりで、受注生産の振れは構造の話だ。原料高で客の投資が冷える可能性もある。25% とした。
悲観 15% 成形機で負け、赤字が続いて土地と保守だけが残る 利益 −1 億円 · PBR 0.2 倍 · 株価時価総額 31 円3 億円
成形機で大手と海外勢に負ける筋書きだ。包装フィルムの量が細り、燃料タンクは EV で消え、台数は 3 割近く減る。大型案件の失敗が重なり、営業赤字が続く。
IT・人材は AI エージェントに仕事を奪われ、人数は 4 割になる。配当は打ち切られ、赤字で自己資本が削られる。株主の価値は、再評価済みの土地と、運転資金を回収して残る額に近づく。保守の網を目当てに同業に安く買われる道も現実味を帯びる。
のれんは全額が減損になり、自己資本は今の 6 割ほどまで減る。株主に配当が戻る見込みは薄く、価値は資産の切り売りで決まる。
- プラスチック成形機:数量 40.0(成形機・装置の台数(台、保守を含む換算、推定))× 価格 0.48(1 台あたりの売上(億円))→ 売上 19 億円・営業利益 −1 億円。40 台(0.73 倍)× 0.48 億円(1.20 倍)、−4%
- IT・人材:数量 40.0(稼働するスタッフの人数(人))× 価格 0.06(1 人あたりの年の売上(億円))→ 売上 2 億円・営業利益 0 億円。40 人(0.40 倍)× 0.055 億円、−3%
倍率:赤字なので PBR で置く。床は土地の売却の税後と投資有価証券、運転資金の回収から借入を返した残りの約 3 億円で、今の自己資本 16.7 億円の 0.18 倍。
確率:2008〜2010 年と 2024〜2025 年に赤字の期があり、小さな受注生産の会社が構造的に負ける道は現実にある。15% とした。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
プラスチック成形機
インフレーションフィルム成形機・ブロー成形機・リサイクル装置の製造販売と、納入機の保守・部品・オーバーホール。
| 数量成形機・装置の台数(台、保守を含む換算、推定) | 価格1 台あたりの売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 54.5 | 0.40 | 22 | 1 |
| 10 年後 中立 | 54.5 | 0.54 | 29 | 2 |
取り方:台数の開示がないため推定。セグメント売上 21.8 億円(インフレーション 12.8・ブロー 3.7・リサイクル 1.1・保守 4.2)を、保守の売上を按分した 1 台あたり約 4,000 万円で割った約 55 台。利益はセグメント利益 1.44 億円。
IT・人材
クラウドサービス(システム受託開発・SE 派遣)と PBB(一般事務派遣・人材紹介・SES)。
| 数量稼働するスタッフの人数(人) | 価格1 人あたりの年の売上(億円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 100 | 0.05 | 5 | 0 |
| 10 年後 中立 | 70.0 | 0.07 | 5 | 0 |
取り方:短信の「約 100 名のスタッフ」とセグメント売上 5.0 億円(PBB は 4 か月分)から 1 人 500 万円。利益は経営指導料 0.24 億円を含むセグメント損失 0.04 億円。AI エージェント代替の人月の型。
リスクと懸念
大型案件の原価の膨らみ
客ごとに設計する受注生産で、大型の案件では手直しの追加工事が出やすい。2024 年 3 月期と 2025 年 3 月期はこれで連続の赤字になった。会社の規模が小さいので、1 件の失敗が 1 年の利益を消す。
包装フィルムの量の細り
国内の包装フィルムの量は人口とともにゆっくり減る。脱プラスチックの規制や紙への置き換えが進めば、インフレーション成形機の更新の需要も細る。売上の半分がこの機械に頼っている。
AI エージェント代替
IT・人材の事業は、SES と事務派遣という人の時間を売る仕事だ。AI エージェントがプログラムの作成や事務の作業を引き取れば、派遣の人数そのものが減る。売上の 2 割がこの型にある。
株式交換による薄まり
会社は M&A を成長の柱に置き、2 件とも自社株を渡して買った。買った会社の利益が増えた株の分を上回らなければ、既存の株主の取り分は薄まる。時価総額 300 億円という目標は、さらに大きな買収を示唆する。
原料高と客の投資の冷え込み
2026 年は中東の情勢で樹脂の原料が急に高くなった。フィルムの加工会社は利益が圧迫されると設備投資を先に延ばす。足元の第 1 四半期の売上は 4 割減った。
今後の分かれ目
- 保守の売上が 3 期続けて 1 割以上伸び、全社の営業利益率が 8% を超えたら
- 保守が稼ぎをならす構造ができた証拠として、やや楽観の筋書きの確率を上げる。
- 大型案件の追加工事で再び営業赤字になったら
- 受注生産の振れが直っていないとみて、やや悲観の確率を上げる。
- 株式交換でさらに大きな会社を買ったら
- 買った事業の型(人月か、堀のある事業か)と株の増え方を見て、価値を積み直す。
- IT・人材の人数が 2 期続けて減ったら
- AI エージェント代替が進んでいる証拠として、中立の人数をさらに下げる。
- 同業や大株主から買収や資本提携の提案が出たら
- 保守の網と国内の客の基盤に値段が付き、再編が筋書きに入る。
見ておくもの
- 受注高と受注残、大型案件の損益
- 保守・メンテナンスの売上の伸び
- IT・人材の人数とセグメント利益
- 株式交換による株数の増え方
- 樹脂の原料の値段と包装フィルムの生産量
倍率と資本コストの決め方
倍率は今の株価や PER 約 29 倍を見ずに、ROE と k 9.5% から決めた。中立の ROE は 6% ほどで k を下回るので、PER の上限は 1÷k の 10.5 倍になり、その 8 割を使った。中立の営業利益率は過去 12 年の山 15.9% より下で、ならした 6% に置いた。M&A の大当たりは楽観の 5% にだけ入れた。純負債はほぼゼロで余った現金は立てていない。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 10→10.64 倍・やや楽観 PER 9→10.53 倍・中立 PER 8.4→10.53 倍)。
資本コスト 9.5% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。