結論
オプトランは、スマホのカメラレンズなどに薄い膜をつける真空成膜装置の専業メーカーだ。顧客はLarganやSunny Opticsなど、中国と台湾のレンズ大手である。
筆者の結論は「やや割高」だ。理由は 1 つ。受注が戻っても、利益が戻る保証が薄いからだ。2025 年 12 月期は受注が 27% 増えたのに、営業利益は半減した。
強みは確かにある。光学薄膜の装置で培った技術は一流で、純現金は時価総額の 3 割に達する。借金はなく、利益を超える自社株買いも続けてきた。この現金は、事業が崩れた時の安全域になる。
弱みは稼ぎ方にある。主力のスマホ向けは数が伸びない。中国のメーカーが追い上げ、顧客は大手 2 社に偏る。会社が描く「光電融合」の新事業は、まだ売上の柱ではない。2025 年の期初計画は売上 500 億円だったが、実績は 339 億円にとどまった。
10 年後の姿を考えると、中立では売上は 560 億円前後、営業利益率は 18% 前後だ。昔の 20% 超には戻らないと見る。倍率は 11〜12 倍が妥当で、この水準だと今の値段は 10 年先の価値をやや上回る。
ただし上振れの余地はある。AI 向け光通信の部品に成膜装置が要る時代になれば、数量が一段上がる。その時は利益率も 20% を超え、割安に転ぶ。見るべきは受注の中身と、利益率が戻るかどうかだ。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、オプトランは「良い技術の会社だが、オーナーとして持ち続けたい事業とまでは言えない」と見る。
理由は、稼ぐ力の見通しが利かないことだ。装置の売上は顧客の設備投資の波で上下する。10 年先の利益を 1 つに決めにくい。見通しが利かない事業には、確信度を下げて、割り引いて見る。
稼いだ利益のうち、株主に残るお金を見る。この会社は研究開発に売上の 1 割を使い、装置の開発は大きな固定費になる。利益が 100 あっても、まるまる株主の手元に残るわけではない。
安全域は現金にある。純現金は時価総額の約 3 割で、事業が崩れても会社の価値の底を支える。悲観の筋書きでも、会社が持つ現金は残る。この点が、同じ規模の装置メーカーと違う。
一方、事業の部分だけを見ると、値段は高い。今の値段が前提にしているのは、利益率が昔の 20% 超に戻り、売上が 10 年で 7 割近く増えることだ。筆者は、そこまでは織り込めないと見る。現金を差し引いた事業の価値は、中立の筋書きでは今の値段に届かない。
購入の判断は読者に任せるが、評価のポイントは 2 つに絞れる。受注が利益に変わるか、新領域が柱になるかだ。
何で稼ぐ会社か
オプトランは、ガラスやレンズの表面に薄い膜をつける装置を作って売る会社だ。膜は反射を抑えたり、赤外線を切ったり、光の色を選んだりする。スマホのカメラレンズでは欠かせない部品加工である。
売るのは装置で、1 台が数千万円から数億円。売上の中心は光学領域だ。スマホのカメラの高画素化と多眼化が、レンズ 1 枚ごとの膜の枚数を増やし、装置の需要を押し上げてきた。最近は車載カメラ、車内ディスプレイ、AR・VR、光通信の部品にも広がる。
もう 1 つの柱が「半導体光学・電子デバイス」だ。ALD(原子を 1 層ずつ積む成膜)、ドライエッチング、そしてシリコンフォトニクス向けの装置を指す。シリコンフォトニクスとは、電気の代わりに光で信号をやり取りする半導体で、AI のデータセンターの配線に使われ始めている。会社は中長期で、この関連の売上を全体の 2 割以上にする目標を掲げる。
事業の周りでは 2 つの動きがある。2023 年に設立したナノリソティックスは、ナノインプリント(型で微細な模様を転写する技術)の加工装置を作る。2025 年にはAIメカテックに約 33 億円を出資し、FPD(ディスプレイ)や半導体パッケージの装置と組む形を作った。
生産は主に中国と台湾で、顧客も中国が多い。取引はドル建てが多く、仕入れや賃金は人民元建てが多い。研究開発費は売上の 1 割を超え、技術で稼ぐ会社である。連結の従業員は約 620 人と小さく、1 人あたりの利益の振れは大きい。
優良さと弱いところ
優良さは「技術はあるが、堀は中くらい」と見る。堀とは、他社がまねできない強みのことだ。
良い点から書く。まず財務が強い。純現金は約 310 億円、自己資本比率は 66%。借金に頼らず、不況でも潰れない。次に、利益率の実績がある。2018 年から 2024 年までの営業利益率は 20〜26% で、並の装置メーカーより一段高い。蒸着・スパッタ・ALD・エッチングと方式をそろえ、顧客の注文に合わせて装置を作り込む力も、その高い利益率を支えた。
弱い点も多い。第 1 に顧客の偏りだ。2024 年はLarganが売上の 18%、Sunny Opticsが 11.5% を占めた。大手が装置の仕様と値段を決める力を持つ。第 2 に競争だ。国内にはシンクロン、欧州にはライボルトやエバテックのような競合があり、中国勢も育ってきた。会社も「激しい競争」と有報に書いている。第 3 に利益の振れだ。2025 年は売上が横ばいなのに営業利益は半分に落ちた。ALD 装置の販売減と棚卸資産の評価損が重なった。
経営の資本の使い方は評価が割れる。2024〜25 年に利益を超える還元を続けた点は、株主に優しい。一方で、2025 年の期初計画を大きく外した点は、見通しの甘さを示す。筆者は、新領域の売上が積み上がるまで、堀の評価を上げない。
最後に、最大株主は中国のレンズ・光学部品大手、浙江水晶光電科技(議決権の約 16%)だ。顧客でもあり株主でもあるため、方針が変われば影響が出る。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
この会社の景気は、スマホのカメラと、その先の光の用途の設備投資で決まる。スマホ向けの装置は、新機種のカメラ仕様が変わる年に需要が立つ。2017〜2018 年に売上が 2 倍になった時は、カメラが 2 眼、3 眼と増えた。その後は数が増えず、売上は 300 億円台で止まった。
スマホの台数は世界で横ばいだ。レンズの枚数もほぼ頭打ちになった。筆者は、スマホ向けの装置の数量は 10 年でわずかに伸びる程度と見る。伸びるなら、AI を載せたスマホの新しいカメラ・センサー、折りたたみ型の増加、買い替え需要が理由になる。
光学の外に目を向けると、成長の種は 3 つある。車載カメラと車内ディスプレイ、AR グラスなどの装着型機器、そして AI データセンターの光通信だ。光通信では、光の信号を分ける・選ぶ膜が数多く要る。シリコンフォトニクスの本格化は、成膜装置の新しい市場を作る。ただし時期も規模もまだ読みにくい。
競争の構図は変わりつつある。中国のレンズ大手は自国の装置を使いたがる。政治の面でも、輸出管理の強化が通商の壁を高くする可能性がある。装置の値段を決める力は顧客側に傾きやすい。
今の位置は、循環の底から戻る途中だ。2025 年 12 月期の受注は 410 億円で、受注残は 313 億円まで積み上がった。この受注が売上に変わる 2026〜27 年は、会社の計画どおり売上は 380〜430 億円になる見込みだ。ただし 10 年で見れば、受注の戻りは出発点にすぎない。
資本政策と M&A
還元は手厚いが、方針の一貫性は弱い。配当は 2020〜2023 年に据え置き、その後わずかに増やして 2025 年は 4% の増配だった。自社株買いは 2018〜2023 年は無かったが、2024 年に約 48 億円、2025 年に約 41 億円と急に増えた。2025 年の総還元性向は利益の 2 倍を超える。
会社の方針は、成長・戦略投資を優先し、運転資金を確保したうえで、安定した還元を続けるというものだ。つまり純現金の一部は、買収や出資に回る。2025 年のAIメカテックへの出資(約 33 億円)がその例だ。
M&A の目はこの会社に向かうかもしれない。最大株主の浙江水晶光電科技は議決権の約 16%を持ち、顧客でもある。時価総額は 1,000 億円を割る規模で、純現金が 3 割を占める。買う側にとって割安に見える可能性はある。ただしこれは憶測で、会社の公式の動きとは別だ。
政策保有株の大きな存在は確認できなかった。この会社の資本の論点は、現金をどこまで株主に返し、どこから事業に投じるかにある。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
受注が答えを出している。2025 年 12 月期の受注は 410 億円と前の期から 27% 増え、受注残は 313 億円に積み上がった。これは、2026 年の売上 382 億円の計画に、すでに高い見通しがあることを意味する。
利益率は必ず戻る。2025 年の営業利益率 9.8% は、ALD 装置の販売減と棚卸資産の評価損という一時の要因で落ちた。2018〜2024 年は 20% を超える年が多く、光学の装置の稼ぐ力は変わっていない。計画どおり 2027 年に営業利益 80 億円(利益率 18.6%)に戻れば、そこが出発点になる。
さらに、成長の道が広がる。AI データセンターの光通信が増えれば、シリコンフォトニクスの部品に成膜装置が要る。会社は関連売上を全体の 2 割にする目標を置き、ナノリソティックスやAIメカテックとの協業で、成膜の外にも手を広げる。この領域の単価は光学より高く、台数が増えれば全体の利益率を押し上げる。
最後に、現金だ。純現金 310 億円は時価総額の 3 割にあたる。この現金は、利益を超える還元に使える。事業が想定以上に伸びれば、現金と事業の両方が株主のものになる。
慎重な見方
受注が戻っても、利益は戻らなかった。受注は 27% 増えたのに、営業利益は 49% 減った。売上計上のタイミングと原価の悪化で、装置の利益は簡単に消える。計画を信じる前に、実績を見る必要がある。
2025 年の期初計画は売上 500 億円で、光学 340 億円・非光学 160 億円だった。実績は 339 億円、つまり計画の 7 割にとどまった。特に非光学の「半導体光学」は、期待ほど立ち上がっていない。同じことが 2026 年に起きれば、計画の 382 億円も割り込む。
主力のスマホ向けは頭打ちだ。顧客はLarganとSunny Opticsの 2 社に偏り、値段の交渉力は顧客にある。中国のレンズ大手は自国の装置を育てたい。最大株主の浙江水晶光電科技も、中国の光学部品メーカーである。装置の調達先を自国に寄せる動きは、いつでも起こり得る。
現金は事業の価値ではない。純現金 310 億円のうち、運転資金と前受金に見合う分は、自由に使えない。しかも会社は現金を買収や出資にも使う。2025 年のAIメカテックへの出資は、その一例だ。事業の価値だけを見ると、今の値段は高い。
どちらに重みを置いたか
結論は、慎重な見方がわずかに強い。受注の戻りは事実だが、2025 年に利益が半分になった事実と、計画を外した実績が重い。利益率は 20% 超には戻らず、10 年で 18% 前後止まりと見る。
確率は、中立に 36% を置き、残りは悲観側を厚く(やや悲観 22%・悲観 12%)、楽観側を薄く(やや楽観 20%・楽観 10%)した。AI 光通信の可能性は否定しないが、まだ売上の柱になっていない。新事業の確かさが増したら、楽観側へ寄せる。
現金は事業の価値とは別に計上した。戻し方の実績があるため、全額を評価に入れている。
10 年後の 5 つの筋書き(2035/12 期)
確率で加重した株価時価総額 3,373 円1,346 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 1,115 円445 億円)。 今の値に割り戻すと 2,367 円944 億円、今との差 +4.5%、 期待の年率 +7.1%(資本コスト 7.8%)→ 適正
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 10% | 6,775 円2,703 億円 | 1,404 円560 億円 | +261.1% | +13.7% | 818 円326 億円 |
| やや楽観 | 20% | 5,054 円2,016 億円 | 1,303 円520 億円 | +180.7% | +10.9% | 1,272 円507 億円 |
| 中立 | 36% | 3,671 円1,465 億円 | 1,203 円480 億円 | +115.2% | +8.0% | 1,755 円700 億円 |
| やや悲観 | 22% | 1,254 円500 億円 | 1,003 円400 億円 | −0.4% | 0.0% | 496 円198 億円 |
| 悲観 | 12% | 727 円290 億円 | 501 円200 億円 | −45.8% | −5.9% | 147 円59 億円 |
| 加重平均 | 100% | 3,373 円1,346 億円 | 1,115 円445 億円 | +98.1% | +7.1% | 4,488 円1,790 億円 |
今の株価時価総額 2,265 円904 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 7.8% を下回るほど割高。
楽観 10% AI の光通信が柱に育ち、光学も定着 利益 138 億円 · PER 18.5 倍 · 株価時価総額 6,775 円2,703 億円
AI データセンターの光通信が本格化し、光を分ける・選ぶ膜の装置需要が立つ。シリコンフォトニクス向けの装置が年に 90 台規模まで増え、半導体光学・電子デバイスの売上は 300 億円を超える。光学では車載カメラ、AR グラス、AI スマホの新しいセンサーが、スマホ向けの頭打ちを補う。
会社は顧客の偏りを薄め、光学薄膜の装置から、光電融合の装置と材料の会社へ変わる。新しい装置は単価が高く、利益率は光学を上回る。2035 年 12 月期の売上は 790 億円、営業利益率は 22% に届く。
資本の使い方は変わらず、利益の 6 割強を配当と自社株買いで返す。現金は事業の拡大にも使うが、純現金は保たれる。
- 光学薄膜装置(スマホ・車載・AR・光通信などの光学領域):数量 245(装置の販売台数(台・推定))× 価格 1.96(1 台あたりの販売額(億円・名目))→ 売上 480 億円・営業利益 110 億円。市場の伸び・シェア維持で台数 1.2 倍、単価は車載・AR 向けの大型機で 1.40 倍、営業利益率 23%
- 半導体光学・電子デバイス向け装置(ALD・ドライエッチング・シリコンフォトニクス・ナノインプリント):数量 90.0(装置の販売台数(台・推定))× 価格 3.44(1 台あたりの販売額(億円・名目))→ 売上 310 億円・営業利益 62 億円。光通信・ALD 向けで台数 3.8 倍、単価 1.40 倍、営業利益率 20%
倍率:事業の純利益 135 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 18.4% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 13.1%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)200 億円。全体の PER 18.51 倍、時価総額 2,703 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:シリコンフォトニクス関連が全売上の 2 割を超える水準まで育つには、AI 投資の持続と顧客採用の両方が要る。事業の実績がまだ小さいので 1 割に抑えた。
やや楽観 20% 光学が定着し、新領域が半分育つ 利益 106 億円 · PER 17.6 倍 · 株価時価総額 5,054 円2,016 億円
スマホ向けは頭打ちのまま、車載・AR・光通信の用途で光学の台数がわずかに伸びる。半導体光学・電子デバイスの装置は年に 70 台近くまで増え、売上は 230 億円前後になる。
利益率は、2027 年の計画(営業利益率 18.6%)の水準をほぼ保ち、2035 年 12 月期に営業利益 130 億円台に乗る。一方、顧客の偏りと中国勢の追い上げは続き、20% 超の利益率にはならない。
還元は純利益の 6 割半ばで、現金は大きく動かない。会社が掲げる ROE 10% は超えるが、成長の物語が広がるほどではない。筆者は、この筋書きを「手堅く成功した」形と見る。
- 光学薄膜装置(スマホ・車載・AR・光通信などの光学領域):数量 228(装置の販売台数(台・推定))× 価格 1.92(1 台あたりの販売額(億円・名目))→ 売上 437 億円・営業利益 94 億円。台数 1.14 倍、単価 1.37 倍、営業利益率 21.5%
- 半導体光学・電子デバイス向け装置(ALD・ドライエッチング・シリコンフォトニクス・ナノインプリント):数量 68.0(装置の販売台数(台・推定))× 価格 3.35(1 台あたりの販売額(億円・名目))→ 売上 228 億円・営業利益 39 億円。台数 2.8 倍、単価 1.36 倍、営業利益率 17%
倍率:事業の純利益 103 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 15.8% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 11.8%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 17.6 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 17.6 倍 + 余った現金(戻り方込み)200 億円。全体の PER 17.6 倍、時価総額 2,016 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:光学の受注が計画どおり戻り、新領域が半分だけ育つ筋書き。実績で確かめられた部分が中心で、楽観より厚く置いた。
中立 36% 光学は横ばい、新領域は小さく育つ 利益 80 億円 · PER 16.4 倍 · 株価時価総額 3,671 円1,465 億円
スマホ向けの装置は台数が横ばいで、車載・AR 向けがわずかに上乗せする。光学の売上は 400 億円に届く。半導体光学・電子デバイスは年に 50 台前後まで増えるが、売上は 160 億円ほどで、全体の 3 割に満たない。
利益率は光学で約 19.5%、新領域で約 14%。中国勢の価格圧力と、顧客の値引き要求が、昔の 20% 超への復帰を妨げる。全体の営業利益は 100 億円、利益率は 17〜18% で落ち着く。
還元は純利益の 7 割弱を続け、現金は大きく減らさない。会社が掲げる ROE 10% は、ぎりぎり達成する。
- 光学薄膜装置(スマホ・車載・AR・光通信などの光学領域):数量 212(装置の販売台数(台・推定))× 価格 1.88(1 台あたりの販売額(億円・名目))→ 売上 398 億円・営業利益 78 億円。台数 1.06 倍、単価 1.34 倍(物価並み)、営業利益率 19.5%
- 半導体光学・電子デバイス向け装置(ALD・ドライエッチング・シリコンフォトニクス・ナノインプリント):数量 48.0(装置の販売台数(台・推定))× 価格 3.30(1 台あたりの販売額(億円・名目))→ 売上 158 億円・営業利益 22 億円。台数 2 倍、単価 1.34 倍、営業利益率 14%
倍率:事業の純利益 77 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 13.0% が k 7.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 10.4%、10 年より先の名目の伸び g 4.0% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 16.4 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 16.4 倍 + 余った現金(戻り方込み)200 億円。全体の PER 16.38 倍、時価総額 1,464 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:受注の戻りは本物だが、利益率は昔に戻らず、新領域も半分は育たない。実績とのずれを見て、もっとも起こりやすい形に厚く置いた。
やや悲観 22% 中国勢に押され、利益率が落ちる 利益 41 億円 · PER 9.0 倍 · 株価時価総額 1,254 円500 億円
中国のレンズ大手が自国の装置を使う割合を上げ、オプトランの光学の台数は 1 割強減る。値段も競争で上がりにくく、10 年の単価の伸びは物価より 1 割ほど低い。新領域は期待ほど立ち上がらず、年に 28 台、売上は 80 億円ほどで利益もほとんど出ない。
営業利益は 50 億円前後、利益率は 12% に落ちる。研究開発費は売上の 1 割を下回れず、固定費の重さが利益率を削る。
還元は縮み、10 年で利益の 8 割強を返すのがやっとになる。現金は買収・出資・谷での使用で、今の 0.75 倍まで減る。
- 光学薄膜装置(スマホ・車載・AR・光通信などの光学領域):数量 185(装置の販売台数(台・推定))× 価格 1.79(1 台あたりの販売額(億円・名目))→ 売上 332 億円・営業利益 46 億円。中国勢にシェアを奪われ台数 0.93 倍、単価 1.28 倍、営業利益率 14%
- 半導体光学・電子デバイス向け装置(ALD・ドライエッチング・シリコンフォトニクス・ナノインプリント):数量 28.0(装置の販売台数(台・推定))× 価格 2.95(1 台あたりの販売額(億円・名目))→ 売上 83 億円・営業利益 5 億円。台数 1.2 倍、単価 1.20 倍、営業利益率 6%
倍率:ROE は約 6% で k 7.75% を下回るため、貯めた利益の価値は帳簿を下回り、PER は上限 1÷k(11.4 倍)の 8 割弱(9 倍)に置いた。稼ぐ力が落ちた構造的な負けの筋書きなので、7 割には引き上げない。余った現金は 0.75 倍の 150 億円で足す。
確率:顧客の偏りと中国勢の追い上げは、2025 年の実績(利益半減・計画未達)が示す現実的な懸念で、単なる悲観より厚めに置いた。
悲観 12% 装置が自国製に置き換わり、構造的に縮む 利益 17 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 727 円290 億円
中国のレンズ・光学部品大手が自国の装置に切り替え、オプトランは主力のスマホ向けで台数を 4 割失う。値段も競争で上がらず、10 年の単価は 1.15 倍にとどまる。新領域の売上は 40 億円足らずで、赤字寸前の事業に終わる。
売上は 230 億円、営業利益は 20 億円弱、利益率は 8% に落ちる。かつての 2016 年(売上 149 億円)を少し上回る水準だ。
配当は削られ、自社株買いは止まる。現金は残るが、事業は優良さを失う。
顧客は値段を押し下げ、新領域の装置も中国勢に先行を許す。研究開発費だけが固定費として残り、利益の大半を食う。会社は縮小均衡に入り、買収の対象にもなりやすい。
- 光学薄膜装置(スマホ・車載・AR・光通信などの光学領域):数量 120(装置の販売台数(台・推定))× 価格 1.61(1 台あたりの販売額(億円・名目))→ 売上 193 億円・営業利益 17 億円。台数 0.6 倍、単価 1.15 倍、営業利益率 9%
- 半導体光学・電子デバイス向け装置(ALD・ドライエッチング・シリコンフォトニクス・ナノインプリント):数量 14.0(装置の販売台数(台・推定))× 価格 2.71(1 台あたりの販売額(億円・名目))→ 売上 38 億円・営業利益 1 億円。台数 0.58 倍、単価 1.10 倍、営業利益率 3%
倍率:ROE は 3〜4% で k を大きく下回り、稼ぐ力(事業の純利益÷k)は約 190 億円、これに余った現金の戻り(0.5 倍の 100 億円)を足しても、純現金と売れる資産の税後 290 億円に届かない。床の額をとり、今の自己資本 574 億円に PBR 0.5 倍を掛けた形で置いた。
確率:顧客が中国のレンズ大手で、最大株主も中国の光学部品メーカー。調達の自国化は、政治の条件が変われば急に進むため、1 割強を置いた。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
光学薄膜装置(スマホ・車載・AR・光通信などの光学領域)
レンズやフィルターに反射防止などの膜をつける真空成膜装置。主力で、スマートフォンのカメラ向けが長く稼ぎ頭だった。
| 数量装置の販売台数(台・推定) | 価格1 台あたりの販売額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 200 | 1.40 | 280 | 30 |
| 10 年後 中立 | 212 | 1.88 | 398 | 78 |
取り方:開示は単一セグメントで、台数・単価は非開示。2024/12 の光学 285 億円と 2025/12 の売上 339 億円から光学を 280 億円と推定し、平均 1.4 億円の装置を 200 台売った形に置いた(推定)。営業利益は ALD 装置の落ち込みと棚卸評価損を半導体光学側に寄せて 30 億円と置いた(推定)。
半導体光学・電子デバイス向け装置(ALD・ドライエッチング・シリコンフォトニクス・ナノインプリント)
光通信の部品や半導体、全固体電池などに膜をつける装置と、ナノインプリントなどの加工装置。光学に次ぐ第二の柱に育てる領域。
| 数量装置の販売台数(台・推定) | 価格1 台あたりの販売額(億円・名目) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2025/12 | 24.0 | 2.46 | 59 | 3 |
| 10 年後 中立 | 48.0 | 3.30 | 158 | 22 |
取り方:2024/12 の非光学 39 億円から 2025/12 は 59 億円と推定(ALD 装置の販売減はあるが、半導体光学の装置は好調と有報にある)。ALD など 1 台 2.5 億円前後の装置が 24 台売れた形に置いた(推定)。利益は小さく 3 億円と置いた。 10 年の台数(中立は 24 台→48 台)は実物の装置の台数で、名目の市場の伸びを置いたものではない。理由は、光通信向けのシリコンフォトニクスと ALD の新規需要が立ち上がることで、価格は物価並み(1.34 倍)に別に掛けている。
リスクと懸念
顧客 2 社への依存
2024 年 12 月期はLarganが売上の 18%、Sunny Opticsが 11.5% を占めた。どちらかが設備投資を絞るか、仕入れ先を変えれば、売上と利益は急に落ちる。値段交渉も顧客が握る。
中国勢の追い上げと自国化
競争は国内の同業、欧州の装置メーカー、中国勢に及ぶ。中国の顧客は自国の装置を使いたがり、時間とともに中国製が技術を詰める。最大株主も中国の光学部品大手で、調達の方針が変われば影響が出る。
利益率の不安定さ
2025 年は受注が 27% 増えたのに営業利益は 49% 減った。ALD 装置の販売減と棚卸資産の評価損が重なった。装置は 1 台ごとの作り込みで、原価が読みにくい。
新領域の立ち上がりの遅れ
シリコンフォトニクス関連の売上を 2 割にする目標は、まだ道半ばだ。2025 年の期初計画(売上 500 億円)が 339 億円にとどまった実績は、新領域の立ち上がりの見通しが甘かったことを示す。
中国・台湾への集中と輸出管理
生産は主に中国と台湾で、顧客も中国が多い。地政学の変化、関税、安全保障貿易管理の強化は、納品や検収の遅れ、顧客の離反につながる。
現金の使い方
純現金は時価総額の約 3 割。買収や出資に回して価値を壊すか、自社株買いで返すかで、株主の取り分が変わる。2025 年は約 33 億円をAIメカテックに出資した。
今後の分かれ目
- 2026 年 12 月期の営業利益が、計画の 62 億円に届き、2027 年の 80 億円も見通せる
- 楽観・やや楽観の確率を上げてよい。利益率が昔の水準に近づくなら、筋書きの中心を上へ動かす。
- 受注は増えるが、営業利益率が 2 年続けて 12% を下回る
- 装置の値段か原価に構造の問題がある。やや悲観・悲観の確率を上げる。
- シリコンフォトニクス向けの装置で、特定の大口顧客や量産ラインの採用が開示される
- 半導体光学の売上が柱になる道が見える。新領域の台数と単価を上方に直す。
- LarganやSunny Opticsの売上比率が下がり、顧客が分散する
- 値決め力の弱さが和らぐ。価格圧力の見立てを緩め、資本コストの見方も見直す。
- 中国のレンズ大手が自国製の成膜装置の採用を公表する
- 悲観の筋書きに近づく。光学の台数と単価を下げ、悲観の確率を上げる。
- 純現金を使った大型の買収や出資が発表される
- 現金の戻り方の評価を 0.5 に下げ、買収先の稼ぐ力で価値の増減を見直す。
見ておくもの
- 受注高と受注残(売上へ変わる時期)
- 営業利益率(20% への復帰の有無)
- 光学と半導体光学の売上の内訳
- 顧客上位 2 社の売上比率
- 自社株買いと現金の使い方(出資・買収)
- 中国の顧客の自国装置採用の動き
倍率と資本コストの決め方
倍率は式で置いた。事業の ROE と k から、中立は正当化 PER の約 8.6 割、ROE が k を上回るので 1÷k(約 11.4 倍)を下限とした。今の株価・今の PER や同業の倍率は使っていない。今の値段が倍でも半分でも、価値の数字は動かない。余った現金は帳簿の 200 億円(純現金 310 億円から運転資金・前受金の分 110 億円を除く)で、戻り方は還元の実績から 1.0。数量は台数、価格は物価並みの 1.34 倍が基本で、競争の厳しい筋書きだけ下げた。決算期は 12 月でリース会計の形は今と同じ形(家賃を営業費用に入れた形)でそろえた。工場は自社所有が中心で、リースの影響は小さいと見ている(有報で確認できていない)。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 13.5→18.51 倍・やや楽観 PER 12.5→17.6 倍・中立 PER 11.5→16.38 倍)。
資本コスト 7.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。