結論
タクミナは、薬液を一定量だけ送る定量ポンプの専業メーカーだ。小型の定量ポンプでは国内トップとされ、水処理、殺菌、環境、電子材料の現場で使われる。
筆者の結論は割安だ。今の値段は、会社の稼ぐ力から見て低い。一番の理由は、営業利益率が14〜15%で安定し、借金がなく現金も厚いのに、市場が足元の1四半期の落ち込みを重く見ていることだ。
事業の質は高い。ポンプは水処理や電子材料の工程に組み込まれ、一度採用されると替えにくい。消耗品と保守が続き、景気の谷でも傷は浅い。自己資本比率は78%、ROEは11%台だ。
弱みは、規模が小さいことと、電子材料向けの設備投資に左右されることだ。直近の4〜6月期は営業利益が7割以上減った。通期の会社予想は据え置かれたが、筆者は確かめるべき点と見る。
鍵は高性能ポンプの受注の戻りだ。ここが戻れば、利益はさらに伸びる。
経営の資本の使い方も堅実だ。2024年には、銀行など政策保有株主の売却に応じ、自社の株を買い戻した。買い取った価格は市場より低く、既存の株主に有利に働いた。筆者は、この会社を「小さいが、質の高い現金創出機」と見る。
バリュー投資の観点から
バリュー投資の観点では、「小さくても質の高い、持ち続けたい会社」に入る。
理由は3つある。1つ目は、利益がきちんと現金になることだ。営業利益16億円に対し、設備投資と減価償却がともに3億円台で、年に10億円前後の現金が手元に残る。2つ目は、資本の使い方が堅実なことだ。借金に頼らず、買い戻しも割安な価格で行った。3つ目は、事業の予測がしやすいことだ。水と薬液の送液という用途は、10年後も変わらない。
気になる点は、規模の小ささと、電子材料向けの波、そして直近の利益の落ち込みだ。ただし、そうした波で一時的に株価が下がる局面は、バリュー投資家にとって安全域をつくる機会になる。
筆者は、10年後の利益の質を高く評価し、今の値段は安全域があると見る。
現金が厚く借金がないため、悲観の筋書きでも会社の価値は純現金を大きく割りにくい。上振れの余地は大きく、下振れの傷は小さい。この非対称さが、バリュー投資で最も好ましい形だ。
何で稼ぐ会社か
事業は、定量ポンプとその周辺機器を一括して売る形だ。2026年3月期の売上111.6億円の内訳は、高性能ソリューションポンプが40億円、汎用型薬液注入ポンプが30億円、残りが計測機器、流体機器、移送ポンプ、タンクなどだ。
高性能ソリューションポンプの代表は、スムーズフローポンプだ。ダイヤフラム式のポンプは、液を押し出す瞬間に流れが脈打つのが弱点だった。同社は流れを連続して一定にし、スラリー(微粒子を含む液)にも対応する。電子材料や医薬など、精度の要求が厳しい工程で選ばれる。
汎用型薬液注入ポンプは、水処理や滅菌で薬液を一定量だけ注入する小型のポンプだ。数が出る分野で、同社の土台になっている。
売り先の市場は、ケミカル・電子材料が35%、滅菌・殺菌が23%、プラント・環境が22%、空調・ボイラーが10%だ。国内が88%を占め、海外は12%まで下がった。
2024年4月にはポンプのサブスクリプションを始めた。従業員は324人で、研究開発費は売上の4%にあたる4.4億円を投じている。
収益の源は、機器の販売だけではない。ダイヤフラムや弁などの消耗部品、保守、校正が毎年続く。顧客は工場の工程に合わせてポンプを選ぶため、同じ型を使い続ける傾向が強い。
優良さと弱いところ
優良な会社だ。堀、つまり他社がまねできない強みは普通よりやや強いと筆者は見る。
強みは3つある。1つ目は、小型定量ポンプでの国内トップの座だ。2つ目は、工程に組み込まれた製品だという点だ。薬液の量が少しずれれば製品の品質に響くため、顧客は実績のあるポンプを替えにくい。3つ目は、消耗品と保守が続く収益だ。
数字がそれを示す。営業利益率は過去5年、14〜15%を保った。ROEは過去10年の中央値が11.8%で、資本コストを上回り続けている。赤字の年はない。
弱みは、値段をすべて自分で決められるわけではないことだ。入札や代理店経由の案件では価格競争もある。海外の大手と国内の同業が競合し、電子材料では顧客の設備投資の波を受ける。
財務は堅い。現金は約30億円、借金は約4億円で、自己資本比率は78%だ。投資も慎重で、設備投資は年3〜4億円にとどまる。
業界はいまどこにいて、どこへ向かうか
需要は、水・薬液を扱う現場の数と、その品質要求の高さで決まる。
世界の定量ポンプ市場は、調査会社の推計で2025年に60〜66億ドル、2034年に約105億ドルへ伸びる。名目の年率は5%前後だ。国内の市場規模は公表されていないが、成熟した人口減の市場で、数量はほぼ横ばいと筆者は見る。伸びる場所は、電子材料、医薬、電池などの高精度の薬液供給と、海外の水処理だ。
競合は、海外ではProMinentやMilton Roy、LEWA(日機装グループ)といった大手がいる。国内ではイワキや日機装エイコーがある。同社は小型で国内トップ、高性能ではスムーズフローポンプという独自の製品で戦う。
循環は、水処理や殺菌が景気に強く、電子材料が弱い。直近は電子材料向けが減り、プラント・環境向けが増えている。構造の変化としては、半導体工場の国内新設と、衛生管理・排水規制の強化が追い風になる。
10年の中立は、数量が実質で1割前後増え、価格が物価並みに上がる姿だ。
悲観の筋書きは、海外の大手や新興メーカーに押される姿だ。価格が物価に届かず、固定費の重い開発体制が重荷になる。分かれ目は、電子材料向けの高性能ポンプの受注と、国内の更新需要が続くかどうかだ。
資本政策と M&A
資本政策は堅実で、少数株主への配慮もある。配当性向は約30%で、今期の予想は前期並みだ。
2024年には、銀行などの政策保有株主の売却に応じて、自己株式の公開買付けを実施した。36万株、約6億円を市場より安い価格で買い取った。割安な価格で株を買い戻した点を、筆者は評価する。
現金は約30億円、借金は約4億円だ。事業に要る分を除いた約12億円を余った現金とみる。使い道は配当、自社株買い、M&Aのどれにもなりうる。M&Aの実績は目立たず、本業の拡大が中心だ。
大株主は、個人が13.7%を持つほか、合同会社が約8%、海外の金融会社が約5%だ。親会社はなく、支配株主もいない。株主優待は実施していない。
買収される可能性は、小さいが無視できない。自己資本が厚く、利益率が高い小型株だからだ。
強気の見方と慎重な見方
強気の見方
ポンプは薬液を扱う工程の心臓部で、一度採用されれば長く使われる。実績ある製品を替えるには、顧客は工程の再検証という大きな手間を負う。この切り替えの難しさが、14〜15%の利益率を5年続けさせた。
直近の4〜6月期の落ち込みは、高性能ポンプの大型案件の納期ずれで説明がつく。通期の会社予想は据え置かれており、受注が戻れば取り返せる。
財務は盤石で、借金がなく現金が厚い。配当性向は30%で、買い戻しの実績もある。余った現金は還元に回る余地が大きい。電子材料、医薬、電池など、高精度の薬液供給の需要は、世界で伸びる。同社の独自の製品が採用を広げれば、利益はさらに伸びる。
サブスクリプションなどのストック収益も、景気の谷での底を固くする。10年後の中立でも、純利益は19億円に届く。
もう一つの追い風は、薬液の品質管理が厳しくなることだ。水の再利用や排水規制、医薬の品質基準が強まるほど、精度の高い定量ポンプへの置き換えが進む。
慎重な見方
小さな会社には、顧客の設備投資の波を乗り越える体力に限りがある。電子材料向けは売上の35%を占め、直近は減少している。4〜6月期の営業利益が7割以上減ったのは、一時的でない可能性がある。
競合は海外の大手と新興メーカーだ。ProMinentなどは販売網が広く、価格も下げてくる。入札や代理店経由の案件では、同社も値下げを迫られる。
海外の売上比率は12%まで下がり、成長の道筋が見えない。国内は人口減で、汎用ポンプの数量は伸びない。固定費の重い開発体制と、高い利益率の維持はどちらも難しい。
10年の中立でも、物価の上昇分を価格へ移せなければ、利益率は下がる。ROEは自己資本が積み上がって薄まり、買い戻しも続く保証がない。
経営陣は内部の人材中心で、大きな買収や新規事業の実績が乏しい。余った現金が非効率に使われる恐れもある。さらに、スムーズフローポンプのような独自製品も、特許が切れれば模倣される。
どちらに重みを置いたか
中立が最も確からしいと見て、確率は中立40%、やや楽観22%に寄せた。強気の根拠である切り替えの難しさと財務の厚さは、10年の数字に裏づけがある。慎重な見方の指摘する小ささと価格競争は、やや悲観22%と悲観8%に残した。
直近の落ち込みの原因が確認できない点は、やや悲観の確率を厚めにして織り込んだ。
10 年後の 5 つの筋書き(2036/03 期)
確率で加重した株価時価総額 4,699 円325 億円(+ 配当配当と自社株買いの合計 722 円50 億円)。 今の値に割り戻すと 2,966 円205 億円、今との差 +85.9%、 期待の年率 +13.0%(資本コスト 6.8%)→ 割安
| 筋書き | 確率 | 10 年後の株価時価総額 | 配当の合計還元の合計配当+自社株買い | トータルリターン10 年・配当込み | 年率 | 確率 × (株価+配当時価総額+還元) |
|---|---|---|---|---|---|---|
| 楽観 | 8% | 7,784 円539 億円 | 954 円66 億円 | +447.8% | +18.5% | 699 円48 億円 |
| やや楽観 | 22% | 6,325 円438 億円 | 824 円57 億円 | +348.2% | +16.2% | 1,573 円109 億円 |
| 中立 | 40% | 5,302 円367 億円 | 737 円51 億円 | +278.7% | +14.2% | 2,416 円167 億円 |
| やや悲観 | 22% | 2,272 円157 億円 | 665 円46 億円 | +84.1% | +6.3% | 646 円45 億円 |
| 悲観 | 8% | 795 円55 億円 | 289 円20 億円 | −32.0% | −3.8% | 87 円6 億円 |
| 加重平均 | 100% | 4,699 円325 億円 | 722 円50 億円 | +239.8% | +13.0% | 5,421 円375 億円 |
今の株価時価総額 1,595 円110 億円(2026-10-22)から見たトータルリターン。加重平均の年率がこの 10 年に期待できる年率で、資本コスト 6.8% を下回るほど割高。
楽観 8% 電子材料と医薬で高性能ポンプが主役になる 利益 28 億円 · PER 19.0 倍 · 株価時価総額 7,784 円539 億円
半導体や電池材料、医薬の製造で、薬液を脈動なく一定に送る要求が強まる。スムーズフローポンプが標準仕様として採用され、高性能ポンプの台数は1.7倍に増える。
付加価値の高い装置が増えるため、単価は物価を上回って1.45倍になる。営業利益率は17%台に乗り、過去12年の山である15.5%を上回る。これには、値上げの実績と製品の組み合わせの変化という裏づけが要る。
国内の水処理と殺菌も堅調で、汎用ポンプは1.25倍に伸びる。海外の比率は1割台から2割台へ戻る。
余った現金は配当と自社株買いで戻る。ただし、過去最高の営業利益率を10年続ける筋書きは重く見ない。
- 高性能ソリューションポンプ:数量 6,834(出荷台数(台))× 価格 1.45(1台当たり平均単価(百万円))→ 売上 99 億円・営業利益 21 億円。高性能ソリューション
- 汎用型薬液注入ポンプ:数量 24,875(出荷台数(台))× 価格 0.21(1台当たり平均単価(百万円))→ 売上 51 億円・営業利益 9 億円。汎用薬液注入
- 計測機器・流体機器・移送ポンプ・タンクほか:数量 11,902(受注件数(件・セット))× 価格 0.54(1件当たり平均単価(百万円))→ 売上 65 億円・営業利益 7 億円。計測・周辺
倍率:事業の純利益 27 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 12.6% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.7%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 19.0 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 19.0 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 19 倍、時価総額 528 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:高性能ポンプが電子材料・医薬の新設備に広く採用され、価格も実質で上がる姿。直近は高性能ポンプの売上が3年ぶりに減っており、この筋書きが10年続く確率は高くない。
やや楽観 22% 半導体・医薬が戻り、利益率を保つ 利益 22 億円 · PER 18.6 倍 · 株価時価総額 6,325 円438 億円
電子材料向けの設備投資が戻り、高性能ポンプは1.45倍に増える。単価は物価並みの1.40倍で、台数の増える分だけ製品の組み合わせも良くなる。
汎用ポンプは1.15倍、計測機器や周辺は1.10倍にとどまる。電子材料の波に左右されない水処理と殺菌が、全体の足取りを支える。営業利益率は15%台を保ち、過去12年の山を超えない。純利益は22億円ほどに伸び、買い戻しも含めた還元が続く。
海外は韓国などの拠点を軸にじわじわ伸びる。筆者は、直近の落ち込みを取り返すこの姿を、十分にありうると見る。半導体の設備投資が一巡しても、更新需要と医薬向けが埋め合わせる。純利益は22億円ほどに伸び、自己資本の厚みで還元の余力も大きい。サブスクリプションなどのストック収益が積み上がり、景気の谷の傷も浅くなる。
- 高性能ソリューションポンプ:数量 5,829(出荷台数(台))× 価格 1.40(1台当たり平均単価(百万円))→ 売上 82 億円・営業利益 16 億円。高性能ソリューション
- 汎用型薬液注入ポンプ:数量 22,885(出荷台数(台))× 価格 0.20(1台当たり平均単価(百万円))→ 売上 46 億円・営業利益 7 億円。汎用薬液注入
- 計測機器・流体機器・移送ポンプ・タンクほか:数量 11,385(受注件数(件・セット))× 価格 0.54(1件当たり平均単価(百万円))→ 売上 61 億円・営業利益 6 億円。計測・周辺
倍率:事業の純利益 22 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.8% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 9.3%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.5 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.5 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 18.55 倍、時価総額 421 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近の高性能ポンプの落ち込みは、顧客の設備投資の谷による一時的なもので、需要は戻るという筋書き。営業利益率は直近5年の14〜15%を保つ。
中立 40% 国内の底堅い需要に支えられ、利益率は今の水準 利益 19 億円 · PER 18.1 倍 · 株価時価総額 5,302 円367 億円
水処理、殺菌、環境、電子材料の需要が緩やかに増え、高性能ポンプは1.25倍、汎用ポンプは1.10倍になる。国内の人口減は効くが、設備の更新と衛生管理の高度化が数量を支える。
価格は物価並みの1.34倍に上がる。原材料と人件費も同じだけ上がるため、営業利益率は今の水準である15%近辺に落ち着く。減価償却は取得時の値段のままで、年3億円が新しい設備の分だけ増え、10年後に4億円台になる。更新の投資は建築費の上昇で膨らみ、償却を上回る分は現金が出る。
売上は170億円ほど、純利益は19億円になる。自己資本比率の高さを生かした還元が続くが、ROEは薄まる。
筆者は、これが最も確からしい10年だと見る。
- 高性能ソリューションポンプ:数量 5,025(出荷台数(台))× 価格 1.34(1台当たり平均単価(百万円))→ 売上 67 億円・営業利益 13 億円。高性能ソリューション
- 汎用型薬液注入ポンプ:数量 21,890(出荷台数(台))× 価格 0.20(1台当たり平均単価(百万円))→ 売上 44 億円・営業利益 7 億円。汎用薬液注入
- 計測機器・流体機器・移送ポンプ・タンクほか:数量 10,868(受注件数(件・セット))× 価格 0.54(1件当たり平均単価(百万円))→ 売上 58 億円・営業利益 6 億円。計測・周辺
倍率:事業の純利益 19 億円(余った現金の利息を除く)・事業の ROE 11.0% が k 6.75% を上回る。残る割合 0.50(moat=normal)で RONIC 8.9%、10 年より先の名目の伸び g 3.2% から正当化 PER = (1−g÷RONIC)÷(k−g) = 18.1 倍の上限そのものに置き、事業の純利益 × 18.1 倍 + 余った現金(戻り方込み)9 億円。全体の PER 18.1 倍、時価総額 346 億円(2026-10-22 機械で置き直した。手で上限から割り引かない:利益の質は moat と k で数え済み)。
確率:直近5年の営業利益率は14〜15%で安定し、需要は水処理・殺菌・環境といった景気に左右されにくい分野が半分を占める。足元の1四半期の落ち込みは気になるが、通期の会社予想は据え置かれ、中立は今の力が続く姿とする。
やや悲観 22% 電子材料向けが細り、価格競争で利益率が落ちる 利益 12 億円 · PER 11.0 倍 · 株価時価総額 2,272 円157 億円
電子材料向けの設備投資が伸びず、高性能ポンプの台数は横ばいに終わる。競合との価格競争で、単価は物価に届かない1.25倍にとどまる。
汎用ポンプも海外製の安い電磁式ポンプとの競争で、台数は3%減る。営業利益率は11%台に下がり、10年を通じて今の水準を下回る。
固定費の重い研究開発は減らしにくく、利益率に響く。配当性向は保たれるが、自社株買いは止まる。純利益は12億円ほどで、今の水準から増えない。物価の上昇を価格へ移せないぶん、実質の利益は減る。現金は積み上がるが、事業の成長に使われず、ROEは8%台に落ちる。
- 高性能ソリューションポンプ:数量 4,020(出荷台数(台))× 価格 1.25(1台当たり平均単価(百万円))→ 売上 50 億円・営業利益 8 億円。高性能ソリューション
- 汎用型薬液注入ポンプ:数量 19,303(出荷台数(台))× 価格 0.19(1台当たり平均単価(百万円))→ 売上 37 億円・営業利益 5 億円。汎用薬液注入
- 計測機器・流体機器・移送ポンプ・タンクほか:数量 9,832(受注件数(件・セット))× 価格 0.51(1件当たり平均単価(百万円))→ 売上 50 億円・営業利益 4 億円。計測・周辺
倍率:事業のROEは8%台でkをわずかに上回る程度。正当化PERは約14.6倍だが、価格競争で利益の質が落ちるので約75%の11倍に置いた。
確率:直近の1四半期は営業利益が7割以上減っており、高性能ポンプの受注に陰りが見える。国内外の競合との価格競争が強まる筋書きは軽くない。
悲観 8% 競合に押され、小さな専業に戻る 利益 4 億円 · PBR 0.5 倍 · 株価時価総額 795 円55 億円
海外の大手と新興メーカーが国内の電子材料・水処理に入り込み、高性能ポンプの台数は3割減る。単価も1.1倍と物価に大きく届かない。
汎用ポンプも台数が2割減り、営業利益率は数%に落ちる。固定費の重い開発体制を維持できず、人員の整理と設備の売却が進む。
評価は稼ぐ力ではなく、持っている現金と換金できる資産で決まる。配当は減り、自社株買いは止まる。
この筋書きは確率が低いが、小さな専業が大手の価格攻勢に押される例は多い。現金が厚いので、会社の存続は揺らがない。海外の大手が日本の販売網を広げ、代理店経由の案件が奪われる流れは、すでに水処理の一部で見られる。同社の強みである独自の製品が、標準化される恐れもある。
- 高性能ソリューションポンプ:数量 2,814(出荷台数(台))× 価格 1.10(1台当たり平均単価(百万円))→ 売上 31 億円・営業利益 2 億円。高性能ソリューション
- 汎用型薬液注入ポンプ:数量 15,920(出荷台数(台))× 価格 0.17(1台当たり平均単価(百万円))→ 売上 27 億円・営業利益 2 億円。汎用薬液注入
- 計測機器・流体機器・移送ポンプ・タンクほか:数量 8,280(受注件数(件・セット))× 価格 0.46(1件当たり平均単価(百万円))→ 売上 38 億円・営業利益 1 億円。計測・周辺
倍率:事業が縮み、稼ぐ力では値が付かない。純現金と売れる資産の価値まで下がる。内訳は floor_assets_why に書いた。
確率:海外の大手(ProMinentなど)や安い新興勢の進出で、国内の電子材料向けのシェアを失う。顧客の内製化や海外調達への切り替えも重なる構造的な負けの姿。
セグメント:数量 × 価格
いまの数量と価格、中立の筋書きの 10 年後。売上と営業利益は億円。
高性能ソリューションポンプ
脈動のない連続送液のスムーズフローポンプとその応用装置。電子材料・医薬・精密な薬液供給向け。
| 数量出荷台数(台) | 価格1台当たり平均単価(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 4,020 | 1.00 | 40 | 8 |
| 10 年後 中立 | 5,025 | 1.34 | 67 | 13 |
取り方:決算説明資料の品目別売上40.2億円(ピークは2025年3月期の43.4億円)。台数と単価は開示がないため、1台約100万円と仮定して約4,020台とした。営業利益は全社16.3億円を、装置性が高く利益率が高い順に割り振った推定(18.9%)。
汎用型薬液注入ポンプ
水処理や殺菌で薬液を一定量注入する小型の定量ポンプ。電磁式が中心。
| 数量出荷台数(台) | 価格1台当たり平均単価(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 19,900 | 0.15 | 30 | 5 |
| 10 年後 中立 | 21,890 | 0.20 | 44 | 7 |
取り方:決算説明資料の品目別売上29.85億円。1台約15万円と仮定して約19,900台とした(推定)。営業利益は全社を割り振った推定(16%)。
計測機器・流体機器・移送ポンプ・タンクほか
計測機器・装置、流体機器、ケミカル移送ポンプ、ケミカルタンク、その他の合計。
| 数量受注件数(件・セット) | 価格1件当たり平均単価(百万円) | 売上 | 営業利益 | |
|---|---|---|---|---|
| 今 2026/03 | 10,350 | 0.40 | 41 | 4 |
| 10 年後 中立 | 10,868 | 0.54 | 58 | 6 |
取り方:品目別売上の合計41.4億円(計測機器・装置15.1、移送ポンプ8.7、タンク7.5、流体機器5.4、その他4.7)。1件約40万円と仮定して約10,350件とした(推定)。営業利益は残りの9.4%。
リスクと懸念
電子材料向けの設備投資の波
売上の35%を占める電子材料向けは、顧客の設備投資で大きく振れる。直近は高性能ポンプの売上が44億円から40億円へ減り、4〜6月期は営業利益が7割以上減った。回復が遅れれば、中立の前提が崩れる。
価格競争
海外の大手と国内の同業が競合する。入札や代理店経由では値下げを迫られ、物価並みの値上げを続けられなければ利益率が下がる。
海外の伸び悩み
海外比率は21%から12%まで下がった。国内の人口減を補う成長の源が見えにくい。
規模の小ささ
従業員324人の小さな会社で、研究開発費は年4億円台。大手の投資力に対し、開発の速度が見劣りする懸念がある。
直近の落ち込みの原因が不明
4〜6月期の売上は13.8%減、営業利益は76%減。通期予想は据え置かれたが、原因が公表資料から確認できず、通期の達成は不透明だ。
資本の使い方
余った現金は還元の方針が強くない。M&Aに使えば成否が結果を左右する。
今後の分かれ目
- 次の四半期で営業利益が前年並みに戻る
- 落ち込みは一時的と判断し、やや悲観の確率を下げて中立〜やや楽観に寄せる。
- 高性能ポンプの売上が2期続けて前年を下回る
- 電子材料向けの構造的な後退と見て、やや悲観・悲観の確率を上げる。
- 配当性向を40%以上に引き上げる、または自社株買いを再開する
- 余った現金の戻り方を0.75から1.0へ上げる。差がさらに広がる。
- 海外比率が20%を回復する
- 成長の源が見えたと判断し、楽観寄りに確率を動かす。
- 海外の大手がタクミナを買収する提案をする
- プレミアムが期待できる。ただし、独立した価値は10年の筋書きで評価済み。
- 営業利益率が2期続けて12%を割る
- 価格競争が効いた合図。やや悲観の確率を上げる。
見ておくもの
- 高性能ポンプの売上と受注
- 営業利益率(四半期)
- 電子材料向けの比率と半導体設備投資
- 海外売上比率
- 配当性向と自社株買い
倍率と資本コストの決め方
倍率は式から置いた。事業のROEは10%前後でkを上回るが、堀は普通の2分の1とし、正当化PERの約9割以下に置いた。今の株価や同業の倍率には寄せていない。数量は水処理・殺菌の成熟需要と電子材料の伸びから1割前後、価格は物価並みの1.34倍を基本とした。営業利益率は過去12年の山(15.5%)以下。セグメントの数量・単価は開示がなく推定。 2026-10-22 の見直し(溜まる現金を事業の ROE から外す・k の目安を対称に・楽観〜中立は上限そのものに置く・ROE が k 以下は配り方から出す式)で、倍率を機械で置き直した(第 1 段より前 → 今:楽観 PER 16→19 倍・やや楽観 PER 15→18.55 倍・中立 PER 14→18.1 倍)。
資本コスト 6.8% = 無リスク金利 3% + β — × 5%。